説明

キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの取扱い方法およびそれに使用する袋

【課題】キシリレンジアミン系ポリアミドペレットに含有される切り粉や破砕片等の微粉を除去するキシリレンジアミン系ポリアミド樹ペレットの取扱い方法を提供する。
【解決手段】微粉を含有するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを、袋の最内層がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列で負側にある樹脂層である包装用袋に充填し、ペレットを取り出す際に、前記微粉を包装用袋の最内層に付着させ、包装用袋内に残留させることを特徴とするキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの取扱い方法およびその袋による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの取扱い方法およびそれに使用する袋に関し、詳しくはキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットに含有される切り粉や破砕片等の微粉を除去するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの取扱い方法およびそれに使用する袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、耐衝撃性、耐摩擦・摩耗性などの機械的強度に優れ、耐熱性、耐油性などにも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、自動車部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、機械部品、建材・住設関連部品などの分野で広く使用されており、近年更に使用分野が広がっている。
【0003】
ポリアミド樹脂には、例えばポリアミド6、ポリアミド66など多くの種類が知られているが、キシリレンジアミンとアジピン酸等のα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66などとは異なって主鎖に芳香族環を有し、高い機械的強度と弾性率を有し、低吸水率で、耐油性に優れ、また成形においては、成形収縮率が小さく、引けやソリが小さいことから精密成形にも適しており、極めて優れたポリアミド樹脂として位置付けられる。また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂をガラス繊維、無機充填材等で強化したものは、エンジニアリングプラスチックのなかでも最高ランクの強度と剛性を実現することができ、金属代替材料として構造部品等にも適用可能である。
これらのことから、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の様々な分野での成形材料として近年ますます広く利用されてきている。
【0004】
このようなキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、溶融重合等により製造された後、必要に応じて各種添加剤や無機充填材等の他の成分を予め混合し、又は、これらの成分を直接押出機等の混練機に投入・配合しながら、押出機等のスクリュー等の機械的な動力によって、溶融・混練され、ダイノズルより断面が円又は楕円状等のストランドとして押し出される。押し出された時点でストランドは高温溶融状態にあり、このままではペレタイザー等によるカッティングができないため、冷却・固化後、ペレタイザー等のカッターによって切断されることにより通常1mm程度〜20mm程度のペレットとされる。
【0005】
このような工程においては、ストランドをペレタイザー等のカッターで切断する際、その衝撃によって、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの端部等が破砕して、切り粉等の微粉が発生する。このような微粉の発生は、ペレタイズの条件、カッターの損耗状態や、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂中の無機充填材の含有量によっても変動するが、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂においては、特に、無機充填材で強化されたキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のような高剛性の樹脂は、ストランドの硬度が高く、そのためカッターが損耗し易いという理由もあり、その結果、発生する微粉の量も、他の樹脂に比して多い傾向にある。発生した微粉は、ペレットに付着した状態で包装用の袋に収納され、製品として出荷される。また、出荷されたペレットは、搬送中におけるペレット同士又は包装用袋とペレット間の摩擦や衝撃等により、包装用袋内でさらに微粉が発生することになる。
【0006】
この微粉は、例えば、粒径1mm以下程度の微粉状であり、押出機や射出成形機等の材料供給タンクへペレットを空気輸送する際や成形時の計量の際に、安定した輸送や計量を阻害したり、成形サイクル等に悪影響を与える場合がある。特に連続型のホッパードライヤーを使用して射出成形機にペレットを供給する場合には、吸引ローターや、投入部のフィルター詰まりが発生するといった重大な問題となる。
【0007】
熱可塑性樹脂ペレットに付着している微粉を除去する方法や装置については、従来から種々の提案がなされている。
例えば、円筒状のケーシング内の中央部に円錐体を配置し、この円錐体の円錐面に沿ってペレットを落下させながら、ケーシングと円錐体との間に上昇空気を送り、ペレットから微粉を分離、除去する方法(特許文献1)、ペレットを連続して落下させながら、これに高速の高圧清浄空気を噴出させて、ペレット表面またはペレット間に混在する微粉を除去する方法(特許文献2)、ペレットに帯電している静電気を中和する静電気除去装置と、内部に傾斜分離板と誘導板を交互に多段に、かつ、各段毎に落下間隔を有するように設けて、ペレットをジグザグ状に誘導しつつ落下させる分離塔とを併用したペレットの微粉除去装置(特許文献3)、また、成形機に供給する原料ペレットにイオン化した空気を吹き付けて除電し、かつ、この原料ペレットを旋回させながらケーシング内を降下させ、原料ペレットから分離した微粉をケーシング内に設けたメッシュフィルターを通してケージング内から除去することが可能な微粉除去装置(特許文献4)、ペレットの静電気を中和除去する静電気除去装置、ペレットと微粉を分離するための微粉分離装置、分離された微粉を収納するための微粉収納装置と、微粉の取り除かれたペレットを収納するためのペレット収納装置を有していて、ペレットを落下させながら静電気除去装置から出るイオン化エアーにより静電気を除去すると共に、分離された微粉を吹き飛ばして微粉とペレットとを分離する装置(特許文献5)等が提案されている。
【0008】
しかしながら、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、それ自体帯電し易く、高い帯電量を有する樹脂ペレットに微粉が静電気を帯びて付着しているため、付着した微粉は簡単には除去できず、上記のような分離装置により分離した場合でも、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットには相当量の微粉が依然として付着したままである。また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、前述したように、微粉発生量が他の樹脂に比べ多いという特徴があり、従って、従来からの技術では、微粉量が十分少ないキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のペレットを得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−30359号公報
【特許文献2】特開平8−196997号公報
【特許文献3】特開平10−620号公報
【特許文献4】特開2007−50354号公報
【特許文献5】特開平8−39550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したようにキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットは、付着した微粉が簡単には除去され難く、上記のような分離装置により分離した場合でも、相当量の微粉が依然として付着しており、また、上記したように、仮に微粉を完全に除去したペレットでも、その後の取扱いに際しての摩擦や衝撃により、微粉が発生してしまう。
本発明は、このような状況に鑑み、出荷されたキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを顧客側で成形に用いる際において、微粉含有量が極めて少ないペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ペレットを出荷するために使用する包装用袋として、袋の最内層が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列で負側にある樹脂層とした袋を使用し、これにキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを充填すれば、成形のためペレットを取り出す際には、これら微粉が包装用袋の最内層に付着して残留することによって、微粉の少ない高品質なペレットを成形に供することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、微粉を含有するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを、袋の最内層がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列で負側にある樹脂層である包装用袋に充填し、ペレットを取り出す際に、前記微粉を包装用袋の最内層に付着させ、包装用袋内に残留させることを特徴とするキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの取扱い方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、最内層の樹脂層の表面抵抗率が1×1014Ω/□以上であることを特徴とする取扱い方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明よれば、第1または第2の発明において、該袋に投入されるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの表面抵抗率が、1×1013Ω/□以上であることを特徴とする取扱い方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、最内層の樹脂層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする取扱い方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が、無機充填材を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、20〜250質量部含むものであることを特徴とする取扱い方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、包装用袋が、最内層から外層に向かって順に、ポリオレフィン樹脂層、アルミニウム層、ポリアミド樹脂層、ポリオレフィン樹脂層の少なくとも4層から構成されたものであることを特徴とする取扱い方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、最内層のポリオレフィン樹脂層の厚みが20〜100μm、アルミニウム層の厚みが3〜40μm、ポリアミド樹脂層の厚みが3〜30μm、ポリオレフィン樹脂層の厚みが10〜200μmであることを特徴とする取扱い方法が提供される。
【0019】
さらに、本発明の第8の発明によれば、微粉を含有するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを充填し、ペレットを取り出す際には前記微粉が最内層に付着して残留する袋であって、袋の最内層が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列で負側にある樹脂層であることを特徴とするキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの包装用袋が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分離装置により予め微粉を除去していなくても、またペレット充填後の物流搬送や取扱いの状況にかかわらず、ペレットを袋から取り出した際には、微粉が包装用袋の最内層に付着して残留することによって、微粉付着の極めて少ない高品質なキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを得ることができる。
このような微粉付着の極めて少ないキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを成形に用いることにより、部分付着により生じる種々の問題、具体的には、高温雰囲気下におけるペレット同士又はペレットと包装体内壁との融着の問題、押出成形や射出成形時に、材料供給タンクへペレットを空気輸送する際の輸送や成形時の計量性への悪影響、特に連続型のホッパードライヤーを使用して射出成形機にペレットを供給する場合の、吸引ローターや、投入部のフィルター詰まりといった問題が発生することなく、押出性や成形加工性を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明においては、微粉を含有するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを、袋の最内層がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列で負側にある樹脂層である包装用袋に充填し、ペレットを取り出す際に、微粉を包装用袋の最内層に付着させ、包装用袋内に残留させることによって、微粉付着の極めて少ない高品質なキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを得る。
【0022】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを充填するための包装用袋は、その最内層として、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列で負側にある樹脂層で構成される。
すなわち、最内層樹脂層が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して、帯電列が負側に偏っている(マイナスに帯電し易い)ことを要件とする。最内層をこのようにすることで、袋内層をマイナス側に帯電させ、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットに付着している微粉を袋内層に付着残留させる。
【0023】
なお、本発明において、微粉とは、前述したようなキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂あるいはそのペレットの製造過程あるいはその搬送、取扱い、保管等の過程で発生するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレット由来の粉体を意味し、基本的にはペレットの径(通常1〜25mm)よりも小さいものである。
【0024】
帯電列とは、電子を放ち易いもの、あるいは、電子を受け取りやすいものの順序であり、異なる物質を互いに接触・摩擦させ、正に帯電する物質、負に帯電する物質を順に並べたものである。物質の帯電特性は、接触・摩擦させる相手物質によって変わり、帯電列の正側の物質と負側の物質を接触・摩擦させると、正側の物質が正に、負側の物質が負に帯電する。
帯電列については、多くの種類の素材について報告されており、例えば「プラスチックの帯電防止」p30〜p31(橘高重著 日刊工業新聞社 1967年初版発行)などから帯電列を知ることができる。
【0025】
また、主な樹脂や材料についての帯電列は下記が知られている。
[プラス側(プラスに帯電)]
ガラス
雲母
ポリアミド
レーヨン


木材
ガラス繊維
アルミニウム

ゴム
ポリスチレン
ポリプロピレン
ポリエステル
アクリル
ポリエチレン
ポリ塩化ビニル
ポリテトラフルオロエチレン
[マイナス側(マイナスに帯電)]
【0026】
帯電列順位が不明でどちらが負側にあるかを判定するには、その物質同士を摩擦させたときに、プラスに帯電するか、マイナスに帯電するかにより容易に測定することができる。例えば、室温、低湿度雰囲気下(例えば25℃、10%RH)で、異種の材料を接触帯電させたときの帯電の符号から2つの材料の帯電の序列(帯電列)を知ることができ、このような方法で帯電列を決定することができる。このときの帯電の符号は、市販の電位測定器(例えば、シシド静電気株式会社製STATIRON DXなど)を用いて測定することができる。
【0027】
包装用袋の最内層に用いる樹脂材料としては、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と帯電列が離れていればいるほど、微粉の付着残留効果が顕著となるので、好ましい。
また、最内層樹脂層の表面抵抗率は大きいほど、上記効果が高くなるので、最内層樹脂層の表面抵抗率は、1×1013Ω/□以上であることが好ましく、より好ましくは1×1014Ω/□以上、特には1×1015Ω/□以上である。
また、最内層樹脂層の表面抵抗率は、包装用袋に充填するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の表面抵抗率と差が小さいほど、微粉の付着残留効果が顕著となるので好ましい。
【0028】
最内層樹脂層を構成するのに好ましい樹脂としては、ポリオレフィン樹脂を挙げることができる。ポリオレフィン樹脂は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列の差が大きく、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に接触させたときの帯電性が高いので、微粉の付着残留効果が大きく、さらには、フィルムとしたときの強度と製袋時のヒートシール性等にも優れる。
ポリオレフィン樹脂としては、各種ポリオレフィン樹脂が使用できるが、なかでも、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン、ヘキセン、又はオクテンとのエチレン系共重合体、プロピレンと、ブテン、ヘキセン、又はオクテンとのプロピレン系共重合体が好ましく用いられる。特に好ましくは、エチレン、プロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンの共重合体、エチレンとブテン、ヘキセンまたはオクテンとの共重合体である。好ましいエチレンの単独または共重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリオレフィン樹脂のメルトインデックスとしては、190℃、21.18Nの条件で測定された値として、1〜10g/10min程度のものが好ましい。
また、最内層ポリオレフィン樹脂層の厚みは、10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜80μmがさらに好ましい。
【0029】
通常、包装用袋最内層には、包装用袋製造時のフィルム成形性(フィルムの巻取り等)の観点から帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等を配合するが、本発明は、これらの成分をできるだけ少ない量で含有させ絶縁性にすることにより、静電気を起こし易くするという逆の発想に基づくものである。
【0030】
さらに、包装用袋は、上記の最内層から外層に向かって、順に、ポリオレフィン樹脂層、アルミニウム層、ポリアミド樹脂層、ポリオレフィン樹脂層の少なくとも4層から構成されたものであることが好ましい。
【0031】
アルミニウム層を設けるのは、吸湿によって最内層の負の帯電性能が低下することを防止するためであり、また同様に、充填したキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレット微粉の正の帯電性能が吸湿により低下するのを防止するためである。包装用袋に充填後のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの水分率は、0.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下である。
アルミニウム層の厚みは、1〜50μmが好ましく、3〜40μmがより好ましく、5〜35μmがさらに好ましい。
【0032】
ポリアミド樹脂層を設けるのは、耐衝撃性向上のためであり、ペレットを充填した包装袋の輸送・搬送・取扱い時に衝撃を受けても破袋等の袋破損を防止することができる。
ポリアミド樹脂層に用いるポリアミド樹脂は、主鎖に−CONH−結合を有し、加熱溶融できるものであり、単独重合体でも共重合体でも良い。具体的には、ラクタムの重縮合物、ジアミンとジカルボン酸との重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種ポリアミド樹脂、又はそれ等の共重合ポリアミド樹脂やブレンド物等である。
【0033】
ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、(2,2,4−又は2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナンメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の脂肪族、脂環式、芳香族のジアミンが挙げられる。
【0034】
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂肪族、脂環式、芳香族のジカルボン酸が挙げられる。
【0035】
ω−アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
【0036】
これらの原料から重縮合されてなるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド56、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66共重合体、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド6I/6T共重合体、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT等が挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
なかでも、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体を単独又は混合して使用するのが好ましい。
【0037】
本発明で用いるポリアミド樹脂はJIS K6810に準拠して測定した相対粘度が1.5〜7.5のものが好ましく、3〜6のものがより好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が1.5未満では機械的強度が低下し、7.5を越えるとフィルム製膜性が低下するので、好ましくない。
【0038】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度は、重合体分子量、熱安定性の観点から、好ましくは10〜140eq/ton、より好ましくは30〜100eq/tonである。また、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度は、重合体分子量、熱安定性の観点から、好ましくは10〜140eq/ton、より好ましくは30〜100eq/tonである。
【0039】
ポリアミド樹脂層の厚みは、1〜40μmが好ましく、3〜30μmがより好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0040】
また、さらに外側には、ポリオレフィン樹脂層を配置することで、強度維持、耐傷付き性の向上と内側のポリアミド樹脂層の保護をするのが好ましい。
このポリオレフィン樹脂としては、前記の最内層ポリオレフィン樹脂と同様のポリオレフィン樹脂を使用することができるが、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン等が特に好ましい。
このポリオレフィン樹脂層の厚みは、10〜200μmが好ましく、15〜180μmがより好ましく、30〜160μmがさらに好ましい。
【0041】
包装用袋は、さらに他の樹脂層を配置してもよく、また各層の間には接着層を配置してもよい。特に、ポリアミド樹脂層とポリオレフィン樹脂層の間には、接着層を配置するのが好ましい。
接着層としては、変性ポリオレフィン樹脂や、イソシアネート系やエポキシ系の接着剤が挙げられ、これらを単独または併用して使用することができる。特に、ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂層とを接着させる場合は、変性ポリオレフィン樹脂を接着層として配置するのが好ましい。
【0042】
変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィン樹脂を変性剤を用いて変性したものである。変性剤としては、不飽和酸、不飽和酸無水物及び/又はそれらの誘導体が挙げられる。
変性剤としては、好ましくはマレイン酸、イタコン酸、クロロマレイン酸、シトラコン酸、ブテニルコハク酸、テトラヒドロフタル酸、及びこれらの無水物並びにマレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等のこれらの酸ハライド、アミド、イミド、炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステルが挙げられ、より好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸である。
これらの変性剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0043】
また、ラジカル発生剤を変性剤と同時に配合してもよい。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物などを挙げることができる。
【0044】
有機過酸化物の具体例として、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;例えば、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシオクタン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;例えば、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類;例えば、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
【0045】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられる。
【0046】
上記のラジカル発生剤の中では、耐衝撃性の観点から、10時間での半減期温度が120℃以上のラジカル発生剤が好ましい。なお、ラジカル発生剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0047】
ポリオレフィン樹脂を変性する方法は、公知の方法によればよく、好ましくは、ポリオレフィン樹脂と変性剤と必要に応じて添加されるラジカル発生剤とを予め混合して、押出機等の混練機によって溶融混練し、変性剤を反応させる方法を採用する。
【0048】
接着層の厚みは、1〜20μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。
【0049】
包装用袋を作成するにあたっては、先ず、包装用袋の最内層を構成するフィルム、好ましくは、上記した構成からなる多層フィルムを製造する。
単層および多層フィルムの製造方法は公知の各種方法で製造できるが、好ましくはインフレーション成形、押出し成形またはラミネート加工、あるいはこれを組み合わせて製造することができる。
多層フィルムを製造する場合は、各層を形成する樹脂を所定厚さになるように、インフレーションあるいは溶融押出し成形を行ったフィルム状物を冷却して引き取り、これらをラミネ−ト加工する方法、あるいは多層インフレーション又は多層押出しにて、積層フィルムを得る方法を採用することができる。この際、単層あるいは多層を延伸する工程を設けることもできる。また、積層に先だって、接着性向上のための、表面前処理(例えばコロナ放電等)を行っても良い。
【0050】
製袋は、公知の方法で行うことができ、例えば、この単層または多層フィルムの最内層同士の袋端部となるヒートシール部をヒートシールすることにより行う。
また、包装用袋には、クラフト紙からなる外袋を被せて使用してもよい。
また、量産化の場合にはこの製袋と共に、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの包装用袋への充填は、一連の自動包装システムの中で行われる形態をとってもよい。
【0051】
次に、本発明の包装用袋に充填されるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットについて説明する。
本発明において、ペレットの主成分樹脂であるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であり、好ましくは、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であり、特には、メタキシリレンジアミン55〜100モル%及びパラキシレンジアミン45〜0モル%、好ましくはメタキシリレンジアミン60〜100モル%及びパラキシレンジアミン0〜40モル%とからなる混合ジアミンと、α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるものである。
【0052】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いるメタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。原料ジアミン成分として、メタキシリレンジアミン以外のジアミンを使用する場合は、これらの中でも、耐熱性の点から、パラキシリレンジアミンを使用することが好ましい。
ジアミン成分として、メタキシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン酸構成単位の30モル%未満であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
【0053】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でも柔軟性の点からアジピン酸又はセバシン酸が好ましい。
【0054】
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸、安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0055】
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、イソフタル酸を用いることが好ましい。イソフタル酸の割合は、ジカルボン酸構成単位の30モル%未満であり、好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
【0056】
このようなキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の相対粘度(96%硫酸中、濃度1g/100ml、温度25℃の測定条件)は、好ましくは1.6〜3であり、より好ましくは1.7〜2.9であり、最も好ましくは1.8〜2.8である。相対粘度が低すぎると成形物の機械的強度が不十分で、高すぎると成形性が低下しやすい。
【0057】
樹脂ペレットには、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の他に、他のポリアミド樹脂を含んでもよい。他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられる。
また、さらに他の熱可塑性樹脂を含有させたポリマーアロイでもよく、例えばポリアミド樹脂の耐薬品性及び摺動性改良の観点から、変性ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、衝撃性改良の観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂、ABS樹脂等を配合したものでもよい。
【0058】
本発明方法を適用するペレットは、成形品に反り性能、機械的強度および剛性を付与させるためガラス繊維等の無機充填材をキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に配合したものである場合に、その効果が顕著である。無機充填材の量が多いほど、樹脂自体もろくなりやすく、無機充填材の離脱、剥離により微粉が発生しやすいためである。
無機充填材の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、20〜250質量部、好ましくは、20〜200質量部、特には40〜150質量部である。無機充填材が、20質量部未満では、機械部品等としての強度、剛性を発揮するのが十分でない場合があり、250質量部を超えるとキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が非常に高くなって射出成形等によって成形品を製造するのが困難となりやすい。
【0059】
無機充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維などの無機繊維類、ステンレススチール繊維などの金属繊維類、マイカ、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルク等が挙げられる。
無機充填材は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対し帯電列で正側にあればあるほど帯電列の差が大きくなり、帯電量が多くなりやすく、好ましい。
無機充填材として、より好ましいものは、ガラス繊維、タルク、マイカであり、特にはガラス繊維である。
【0060】
さらに、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて、上述したもの以外に他の成分、例えば、樹脂添加剤等を含有してもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0061】
また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物は、その表面抵抗率が大きいほど、微粉の付着残留効果が高くなるので好ましい。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物の表面抵抗率は、1×1011Ω/□以上であることが好ましく、より好ましくは1×1012Ω/□以上、特には1×1013Ω/□以上である。表面抵抗率にばらつきがある場合は、その最小値を採用する。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物の表面抵抗率は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0062】
このようなキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物のペレットを製造するには、先ず、押出機を使用して、押出機のホッパーにキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を、必要により、これ以外のポリアミド樹脂、無機充填材、各種添加剤等を投入するか、又はサイドフィードするか、あるいはまた、予めこれらを混合して得られた予備混合物をホッパーに投入し、これを溶融混練する。特に、ガラス繊維を使用する場合は、繊維の破損をできるだけ抑制するために、サイドフィードするのが好ましい。
押出機としては、樹脂組成物原料を加熱してスクリューを用いて連続的にダイから押出すタイプのものであって、単軸式押出機、ベント付押出機、多軸式押出機等が通常用いられるが、スクリューを有しない押出機を用いることも可能である。
【0063】
このような押出機により、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物は、溶融混練され、ダイノズルよりストランドとして押出される。ストランドの断面は、円又は楕円等の円に近い形状であることが好ましく、その径は通常1〜5mm、好ましくは1.5〜4.5mmであり、より好ましくは2〜4mmである。
【0064】
ダイノズルより押出されたストランドは、240〜400℃の高温溶融状態であり、このままではペレタイザーによるカッティングができないため、融点以下の温度〜常温に冷却固化する必要がある。通常、この冷却には水が用いられ、ダイノズルより押出されたストランドは水にて冷却される。水冷するには、通常、水を含有する水槽を用い、ストランドを通過させる方法が一般的であるが、ストランドをコンベアベルト上で搬送しながらシャワーを浴びせ冷却する方法も好ましい。冷却に用いる水の温度としては、通常20〜80℃であり、好ましくは30〜60℃である。
【0065】
冷却されたストランドは、ペレタイザーによりカッティングされることによりペレットとなる。ペレットの形状としては、通常、円筒状であり、その長さは通常1〜25mm、好ましくは2〜15mm、より好ましくは2〜8mmである。前述したように、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の場合、発生する粉体の量も、他の樹脂に比して多い傾向にある。
また、前記したように、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの水分率は、0.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下である。さらに、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの表面抵抗率は、1×1011Ω/□以上であることが好ましく、1×1012Ω/□以上がより好ましく、1×1013Ω/□以上がさらに好ましい。このようにすることで本発明の効果をより高めることができる。
【0066】
本発明において、このような微粉含量の多いキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットは、前記包装用袋に充填され、ペレットが充填された包装用袋は、通常、物流業者により搬送されて顧客に納入され、顧客側での使用時に開封され、ペレットが取り出される。
本発明によれば、充填時の微粉の量が多くても、また輸送時や顧客先でのハンドリングの状況にかかわらず、ペレットを袋から取り出した際には、微粉が包装用袋の最内層に付着して残留することによって、微粉付着の極めて少ない高品質なキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定的に解釈されるものではない。
【0068】
[包装用袋]
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレット25kgを収納できる下記表1に記載の層構成からなる包装用袋1〜5を、以下に記載したフィルム原料を用いて、下記の方法で準備した。
【0069】
袋1:
3層型T−ダイ押出機にて第3層のポリアミド6と、最外層の低密度ポリエチレン(LDPE)が接着するように、第4層の変性低密度ポリエチレン(m−LLDPE)と共に押出し、ラミネートフィルムを製造した。その後、ドライラミネート方式で、第1層のLDPEと第2層のアルミニウム及び先に製造した第3から第5層のラミネートフィルムを積層し、5層からなる多層フィルムを製造した。得られた多層フィルムの最内層同士をヒートシールし、袋1を製造した。
【0070】
袋2:
ドライラミネート方式で、第1層のLDPEと第2層のアルミニウムと最外層のLDPEを積層して3層からなるラミネートフィルムを製造した。得られたフィルムの最内層同士をヒートシールし、袋2を製造した。
【0071】
袋3:
3層型T−ダイ押出機にて第1層のポリアミド6と最外層のLDPEが接着するように、第4層のm−LLDPEと共に押出し、3層からなるラミネートフィルムを製造した。得られたフィルムの最内層同士をヒートシールし、袋3を製造した。
【0072】
袋4:
T−ダイ押出機にて第1層のLDPEを押出、単層フィルムを製造した。得られたフィルムをヒートシールし、袋4を製造した。
【0073】
袋5:
ドライラミネート方式で、第1層のLDPE−1と第2層のアルミニウムと最外層のLDPEを積層して3層からなるラミネートフィルムを製造した。得られたフィルムの最内層同士をヒートシールし、袋5を製造した。
【0074】
また、包装用袋に使用する積層フィルムから10cm×10cmのフィルムを切り出し、最内層の樹脂層の表面抵抗率を(Ω/□)を、JIS K6911に記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0075】
使用したフィルム原料は以下のとおりである。
・低密度ポリエチレン(「LDPE」):
日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LC600A」
・変性直鎖状低密度ポリエチレン(「m−LLDPE」)
三菱化学(株)製、商品名「モディックM545」
・帯電防止剤含有低密度ポリエチレン(「LDPE−1」)
日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LF244E」
・ポリアミド6:
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ノバミッド1013J」
・アルミニウム:
住軽アルミ箔社製、商品名「8021」(JIS H4160)
【0076】
【表1】

【0077】
[キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物ペレット]
使用した材料成分は以下のとおりである。
(a)メタキシリレンジアミンとアジピン酸を重縮合させてなるポリアミド樹脂(「ポリアミドMX」)
三菱瓦斯化学(株)製、商品名「ポリアミドMXD6#6000」
融点243℃、相対粘度2.14
(b)ポリアミド6(「ポリアミド6」)
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ノバミッド1013J」
融点224℃、相対粘度2.5
(c)無機充填剤−ガラス繊維
日本電気硝子社製、商品名「ECS03T−275H」
(d)無機充填剤−マイカ
山口雲母社製、商品名「B−82」
(e)核剤−タルク
林化成社製、商品名「ミクロンホワイト5000A」
(f)離型剤−モンタン酸エステルワックス
クラリアントジャパン社製、商品名「Licowax E」
【0078】
[キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造]
下記表2に示す組成となるように、各成分を秤量し、ガラス繊維を除く成分をタンブラーにてドライブレンドし、2軸押出機(東芝機械社製「TEM37BS」、バレル13ブロック構成)を用いて、シリンダー温度240〜270℃、スクリュー回転数200rpmの条件下、ガラス繊維は根元側から数えて8番目のブロックからサイドフィード方式で供給し溶融混練を行い、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたペレットは、3mm及び1.5mmのパンチングメタルを備えたペレット選別器により、切り粉や破砕片等の微粉を徹底的に除去し、ペレット長さ3.0±0.4mm、ペレット径2.9±0.4mmのペレットA〜Eを得た。
【0079】
また、各ペレットの表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
測定は、得られた樹脂組成物ペレットを120℃で4時間乾燥した後、射出成形機(ファナック社製「α−100iA」)にて、シリンダー温度240〜280℃、金型温度を120℃の設定条件で射出成形を行い、厚さ3.2mm、直径100mmの円板試験片を作製し、得られた試験片を用い、JIS K6911に記載の方法で、表面抵抗率を測定した。評価結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
(実施例1)
上記の樹脂組成物ペレットA25kgを、前記包装用袋1に静かに投入し、さらに、樹脂組成物ペレットAと同一組成の微粉7.5g(300ppm)を前記包装用袋1に静かに投入し、樹脂組成物ペレットAと混合した。この包装用袋1の開口部をヒートシーラーにより密閉し、30日間放置後、ハサミで開封し、逆さにしてペレットを自然に流しだした。
ペレット取り出し後の袋内に残った微粉の量(g、「微粉付着量*1」)を測定した。
また、ペレットを袋に入れた状態で、30日間放置した後のペレットの水分率(質量%)も測定した。
【0082】
また、別途、包装用袋1に使用する積層フィルムから10cm×10cmのフィルムを切り出し、その最内層側を上にしてガラス板に張り付けた。このガラス板を、45度に傾けた状態で、樹脂組成物ペレットA100g中に5gの微粉を混入させた混合物を、上記積層フィルム上に静かに滑り落とした。このときに、フィルム上に残った微粉の量(g、「微粉付着量*2」)を測定し、微粉付着量の評価を行った。以上の結果を表3に示す。
その結果、微粉付着量*1は6.0gとなり、微粉の多くが袋内壁に付着し、袋から排出されることなく除去されたことが分かった。また、微粉付着量*2の結果からも、包装用袋1は、高い微粉付着性能を有することが分かった。
【0083】
(比較例1)
実施例1において、使用した包装用袋を袋3(キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列が負側にはないポリアミド6を最内層として使用した袋)とした以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。
その結果、微粉付着量*1は1.1g、微粉付着量*2は0.6gとともに少なく、微粉のほとんどが袋から排出されてしまい、微粉除去率が小さく、包装用袋3は微粉付着性能が低いことがわかった。
【0084】
(実施例2〜20)及び(比較例2、3)
包装用袋の種類及びペレットの種類を表3に記載のものにかえた以外は、上記実施例1、比較例1と同様にして、評価を行った。
結果を表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
実施例1〜8及び比較例1〜3の結果から、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物ペレットより帯電列で負側にある樹脂層で最内層が構成された袋を使用した場合、最内層による微粉の付着除去効果が大きく、このような包装用袋を用いることにより、ペレットを袋から取り出した際には、微粉が包装用袋の最内層に付着して残留することによって、微粉の極めて少ない高品質なキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物ペレットを得ることができることが分かる。
実施例1〜8及び実施例9〜12の結果から、最内層の樹脂層の表面抵抗率が高いほど、微粉の付着量が多く、微粉の付着除去効果が高いことが分かる。
実施例1〜8及び実施例13、14の結果から、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物ペレットの表面抵抗率が高いほど、微粉の付着量が多く、微粉の付着除去効果が高いことが分かる。
また、実施例9〜12及び実施例13、14の結果から、最内層の樹脂層とキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物ペレットとの表面抵抗率の差が小さいほど、微粉の付着量が多く、微粉の付着除去効果が高いことが分かる。
実施例1〜8及び実施例15〜20の結果から、袋に収納されたキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物ペレットの水分率が小さいほど、微粉の付着量が多く、微粉の付着除去効果が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、包装用袋へキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを充填する際の微粉の量が多くても、また輸送時や顧客先でのハンドリングの状況にかかわらず、ペレットを袋から取り出した際には、微粉が包装用袋の最内層に付着して残留することによって、微粉量の極めて少ない高品質なキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを得ることができる。このような微粉量の極めて少ないペレットを成形に用いることにより、微粉により生じる種々の問題が発生することなく、押出性や成形加工性を格段に向上させることができるので、産業上の利用価値は非常に高いものがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉を含有するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを、袋の最内層がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列で負側にある樹脂層である包装用袋に充填し、ペレットを取り出す際に、前記微粉を包装用袋の最内層に付着させ、包装用袋内に残留させることを特徴とするキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの取扱い方法。
【請求項2】
最内層の樹脂層の表面抵抗率が1×1014Ω/□以上であることを特徴とする請求項1に記載の取扱い方法。
【請求項3】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの表面抵抗率が、1×1013Ω/□以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の取扱い方法。
【請求項4】
最内層の樹脂層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の取扱い方法。
【請求項5】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が、無機充填材を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、20〜250質量部含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の取扱い方法。
【請求項6】
包装用袋が、最内層から外層に向かって順に、ポリオレフィン樹脂層、アルミニウム層、ポリアミド樹脂層、ポリオレフィン樹脂層の少なくとも4層から構成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の取扱い方法。
【請求項7】
最内層のポリオレフィン樹脂層の厚みが20〜100μm、アルミニウム層の厚みが3〜40μm、ポリアミド樹脂層の厚みが3〜30μm、ポリオレフィン樹脂層の厚みが10〜200μmであることを特徴とする請求項6に記載の取扱い方法。
【請求項8】
微粉を含有するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットを充填し、ペレットを取り出す際には前記微粉が最内層に付着して残留する袋であって、袋の最内層が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に対して帯電列で負側にある樹脂層であることを特徴とするキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ペレットの包装用袋。

【公開番号】特開2012−40715(P2012−40715A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182235(P2010−182235)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】