説明

キシリレンジアミン(XDA)の製造法

以下の工程:キシレンをフタロニトリルへとアンモ酸化する工程、その際、前記アンモ酸化工程の蒸気状の生成物を液体の有機溶剤と直接接触させる(クエンチ)、及び得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液中でフタロニトリルを水素化する工程を含むキシリレンジアミンの製造法において、有機溶剤がN−メチル−2−ピロリドン(NMP)であることを特徴とする、キシリレンジアミンの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の工程:
キシレンをフタロニトリルへとアンモ酸化する工程、その際、前記アンモ酸化工程の蒸気状の生成物を液体の有機溶剤と直接接触させる(クエンチ)、及び
得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液中でフタロニトリルを水素化する工程
を含むキシリレンジアミンの製造法に関する。
【0002】
キシリレンジアミン(ビス(アミノメチル)ベンゼン)は、例えばポリアミド、エポキシ樹脂の合成のための、又はイソシアナートの製造のための中間生成物として有用な出発材料である。
【0003】
「キシリレンジアミン」(XDA)という用語には、3種の異性体であるオルト−キシリレンジアミン、メタ−キシリレンジアミン(MXDA)及びパラ−キシリレンジアミンが含まれる。
【0004】
「フタロニトリル」(PN)という用語には、3種の異性体である1,2−ジシアノベンゼン=o−フタロニトリル、1,3−ジシアノベンゼン=イソフタロニトリル=IPN及び1,4−ジシアノベンゼン=テレフタロニトリルが含まれる。
【0005】
キシレンをアンモ酸化し、得られたフタロニトリルを引き続き水素化することによるキシリレンジアミンの2段階合成は公知である。
【0006】
EP−A2−1113001(Mitsubishi Gas Chem. Comp.)には、相応する炭素環式又は複素環式化合物のアンモ酸化によるニトリル化合物の製造法が記載されており、その際、反応生成物からの過剰のアンモニアが再利用される。アンモ酸化工程の蒸気状の生成物を液体の有機溶剤と直接接触させることも記載されており、その際、前記の液体の有機溶剤は特に脂肪族又は芳香族炭化水素である。(段落[0045]及び[0046])。
【0007】
EP−A2−1193247及びEP−A1−1279661(双方ともMitsubishi Gas Chem. Comp.)は、それぞれイソフタロニトリル(IPN)を精製するための方法及び純粋なXDAの製造法に関し、その際、フタロニトリルはキシレンのアンモ酸化により合成され、その際、アンモ酸化工程の蒸気状の生成物は液体の有機溶剤と直接接触される(クエンチ)。有機溶剤は、アルキルベンゼン、複素環式化合物、芳香族ニトリル及び複素環式ニトリルから選択されており、かつフタロニトリルを下回る沸点を有する(EP−A2−1193247:第4欄、段落[0018]及び[0019];EP−A1−1279661:第4−5欄、段落[0023]及び[0024])。
【0008】
EP−A2−1193244(Mitsubishi Gas Chem. Comp.)には、予備工程においてキシレンのアンモ酸化により合成されたフタロニトリルの水素化によるXDAの製造法が記載されており、その際、アンモ酸化工程の蒸気状の生成物は液体の有機溶剤と直接接触され(クエンチ)、得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液は水素化に供給される。
【0009】
有利な有機溶剤は、C〜C12−芳香族炭化水素、例えばキシレン及びプソイドクメンである(第6欄、段落[0027]及び[0028])。
【0010】
DE−A−2164169には、第6頁、最終段落に、IPNをNi触媒及び/又はCo触媒の存在下に溶剤としてのアンモニア中で水素化し、メタ−XDAに変換することが記載されている。
【0011】
それぞれ同一の出願日を有する5つの類似のBASF特許出願はそれぞれXDAの製造法に関する。
【0012】
本発明の課題は、高純度のキシリレンジアミン、特にメタ−キシリレンジアミンを高い収率及び空時収率(STY)で製造するための改善された経済的に実現可能な方法を提供することであり、該方法によって、公知の方法(例えばEP−A2−1193244)と同等の処理量で、減少した流れ、特に溶剤流(再利用流を含む)の結果として、より小型の装置及び機器が可能となる。
【0013】
出願人は、以下の工程:
キシレンをフタロニトリルへとアンモ酸化する工程、その際、前記アンモ酸化工程の蒸気状の生成物を液体の有機溶剤と直接接触させる(クエンチ)、及び
得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液中でフタロニトリルを水素化する工程
を含むキシリレンジアミンの製造法において、
有機溶剤がN−メチル−2−ピロリドン(NMP)であることを特徴とする、キシリレンジアミンの製造法によって前記課題が達成されることを見い出した。
【0014】
本発明による方法は、有利に、予備工程においてメタ−キシレンのアンモ酸化により合成されたイソフタロニトリル(IPN)の水素化によりメタ−キシリレンジアミン(MXDA)を製造するために適用される。
【0015】
本発明による方法を以下のように実施することができる:
アンモ酸化工程:
キシレン(o−キシレン、m−キシレン又はp−キシレン)から相応するフタロニトリル(オルト−キシレン→o−フタロニトリル;メタ−キシレン→イソフタロニトリル;パラ−キシレン→テレフタロニトリル)へのアンモ酸化を、一般に当業者に公知の方法により実施する。
【0016】
メチル芳香族化合物のアンモ酸化は、有利に複合酸化物触媒上でアンモニア及び酸素含有ガス(酸素又は空気又は双方)を用いて流動床型反応器又は管(束)型反応器中で実施される。
【0017】
反応温度は一般に300〜500℃、有利に330℃〜480℃である。
【0018】
触媒は有利にV、Sb及び/又はCrを含有し、更に有利にそれぞれ非担持触媒としてか又は不活性支持体上で[V、Sb及びアルカリ金属]又は[V、Cr、Mo及びB]から構成されている。
【0019】
有利な不活性支持体は、SiO、Al又は両者の混合物又はステアタイトである。
【0020】
そのような処理方式は例えばBASF特許出願EP−A−767165及びEP−A−699476に記載されており、この場合、上記刊行物について明確に参照される。
【0021】
BASF特許出願EP−A−222249、DE−A−3540517及びDE−A−3700710にも、適当なアンモ酸化触媒が開示されている。
【0022】
アンモ酸化は、冒頭で引用された出願EP−A2−1113001、EP−A2−1193247、EP−A1−1279661及びEP−A2−1193244に記載された方法によって実施することもできる。
【0023】
クエンチ:
アンモ酸化の際に生じた、有用な生成物であるフタロニトリルを含有する蒸気は、液体の有機溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と直接接触される(クエンチ液体、クエンチ剤としてのNMPを用いたクエンチ)。
【0024】
クエンチのために使用されるNMPは、既に溶解されたか又は懸濁されたフタロニトリル(有利に、合成されたPNに相当する異性体)を含有してもよい。
【0025】
蒸気状のフタロニトリルと液体の有機溶剤であるNMPとが接触する際に急激に温度が低下する(クエンチ)ことにより、フタロニトリルの品質低下、及び最終的にXDAの品質低下を招く望ましくない副生成物又は分解生成物の形成が低減される。
【0026】
蒸気状のフタロニトリルはクエンチによって液体のNMP溶剤中に直接吸収され、その際、直接後処理することが可能な溶液及び/又は懸濁液が生じる。
【0027】
新鮮な供給物として、一般に>99質量%、特に>99.5質量%の純度を有する工業等級のNMPが使用される。
【0028】
該方法から回収されるNMPをクエンチ液体として使用することは有利である。ここで、特に、不純物が該方法において異質でない物質(即ち特に水、アンモニア、ベンゾニトリル、トルニトリル、キシレン、o−、m−又はp−メチルベンジルアミン、ベンジルアミン、キシリレンジアミン)である場合には、クエンチ液体の純度は≦99質量%、例えば90〜98質量%であってもよい。
【0029】
使用されるNMP溶剤の量は、一般に、15〜75質量%、有利に25〜60質量%のフタロニトリル含分を有する溶剤/懸濁液が得られるような量である。
【0030】
フタロニトリル(PN)を含有するアンモ酸化の蒸気状の排出物の、液体NMPへの導入は、クエンチ装置中で、例えば有利に流下液膜型凝縮器(薄膜凝縮器、細流液膜凝縮器又は流下凝縮器)中で、ジェット装置中又は塔中で行われる。前記装置内で、蒸気状のフタロニトリルを液体溶剤と並流又は向流で導くことができる。並流の場合、蒸気状のフタロニトリルは上部からクエンチ装置に導入される。クエンチ装置の内壁の完全な湿潤を達成するために、流下液膜型凝縮器の頂部での液体の溶剤の接線方向の供給又は1つ以上のノズルによる液体の溶剤の供給は有利である。
【0031】
クエンチ塔の場合、アンモ酸化からのガスは塔底で導入され、かつ溶剤は塔頂で供給される。クエンチ装置には、凝縮のために利用可能な表面積の拡大のために、内部構造物、例えばトレー、構造化充填物又はランダム充填物が備えられていてよい。
【0032】
クエンチのためのNMPを一回の導通で、又は循環液体として使用することができる。
【0033】
有利に、クエンチ溶液又はクエンチ懸濁液の一部を再循環させる。
【0034】
循環路内に組み込まれた熱交換器を用いて、クエンチ溶液又はクエンチ懸濁液を冷却する。
【0035】
循環媒体の温度及び循環流量を、所望の温度がクエンチ出口で達成されるように設定し、かつ相互に調整する。溶解度及び融点並びにクエンチ装置の水圧限度を考慮しなければならないが、循環媒体の流量が少ない程、循環媒体の温度はそれだけ低く選択され、かつその逆も当てはまる。
【0036】
新たに供給されるNMPの流量はクエンチ温度に依存し、それというのも、温度の上昇に伴って、蒸気状のクエンチ排出物中に存在する溶剤が多くなるためである。該流量は、PN溶液又はPN懸濁液の所望の濃度が得られるように調節される。温度の上昇と共にNMP中のPNの溶解度が増加するため、クエンチ出口温度の上昇と共に、NMP中でのより高いPN濃度を導くことができる。
【0037】
循環媒体は新鮮な溶剤と一緒か又は新鮮な溶剤と別個に、クエンチ装置の適当な箇所で供給される。
【0038】
向流で運転されるクエンチ塔の場合、新鮮なNMPは塔頂で供給され、かつ循環媒体は更に下方で、塔のほぼ中央部で供給される。
【0039】
一般に、使用されるNMP及び/又は循環媒体の加熱により、液体のクエンチ排出物の温度は40〜180℃、有利に50〜120℃、特に80〜120℃に調節される。
【0040】
1〜100ミリバールの範囲内で、フタロニトリルの沸点はNMPの沸点を約60ケルビン上回る。
【0041】
クエンチの過程における絶対圧力は一般に0.5〜1.5バールである。有利に、わずかに高められた圧力で運転される。
【0042】
アンモ酸化の蒸気状の排出物中に通常存在するキシレン、水、NH、CO、N等はクエンチ条件下にクエンチNMP溶剤中に部分的にのみ溶解されるか又は実質的に溶解されず、クエンチ装置から大部分がガス状で除去される。
【0043】
クエンチ温度が低い程、液体のクエンチ排出物中での水及び(同一の圧力で)PNよりも低い沸点を有する副成分(例えばベンゾニトリル、トルニトリル)の割合は高くなる。
【0044】
従って、本発明による方法の特別な実施態様において、フタロニトリルの水素化の前に、得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液から、水及び(同一の圧力で)フタロニトリルよりも低い沸点を有する全ての生成物(低沸点成分;例えばそれぞれ水との異相共沸混合物としての、未反応のキシレン、ベンゾニトリル、トルニトリル、水、ベンゾニトリル、トルニトリル;(同一の圧力での)沸点の増加に伴う列挙;及び幾つかの場合においては更にo−、m−又はp−メチルベンジルアミン、ベンジルアミン、キシリレンジアミン、この場合、前記アミンは水素化工程から再利用された溶剤に由来する)を部分的にか又は完全に蒸留により除去することができる。
【0045】
低沸点成分の前記の除去は有利に蒸留塔内で塔頂を介して行われる。
【0046】
有利に、分離効率を高めるための慣用の内部構造物、例えばトレー、構造化充填物又はランダム充填物等が備えられている蒸留塔が有利に使用される。
【0047】
塔の設計(特に分離段数、供給箇所、還流比等)を、溶液又は懸濁液の個々の組成に適合させて、当業者によって、当業者に公知の方法によって行うことができる。有利に、塔底温度を制限するために減圧下に運転される。
【0048】
水素化:
得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液を引き続き水素化へ供給する。場合により、更なるNMP又は更なる有機溶剤、例えばキシレン、ベンジルアミン、o−、m−又はp−メチルベンジルアミン、キシリレンジアミン及びその混合物を予めクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液に添加することができる。
【0049】
このように、中間生成物として得られるフタロニトリルを実質的には単離しないことが本発明による方法の1つの特徴点である。水素化すべきフタロニトリルが水素化工程のためにクエンチ工程において使用されるNMPから除去されることはない。
【0050】
本発明による方法において、有利に、高沸点成分、即ち(同一の圧力で)フタロニトリルよりも高い沸点を有する生成物をクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液から除去しない。
【0051】
フタロニトリルから相応するキシリレンジアミン(o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン又はp−キシリレンジアミン)への水素化のために、特に有利に液状のアンモニアが溶液又は懸濁液に添加される。アンモニアの添加は、クエンチ工程の直後か、又は水素化工程になってから行うことができる。
【0052】
この場合、ジニトリル対アンモニアの新たな供給物における質量比は、一般に1:0.15〜1:15、有利に1:0.5〜1:10、更に有利に1:1〜1:5である。
【0053】
水素化のために、前記の反応のために当業者に公知である触媒及び反応器(例えば固定床法又は懸濁法)並びにプロセス(連続式、半連続式、バッチ式)を用いることができる。
【0054】
固定床触媒法の場合、液相法も細流法も可能である。細流法は有利である。
【0055】
これに関して、例えば出願GB−A−852,972(対応出願:DE−A−1119285)(BASF AG)及びDE−A−1259899(BASF AG)及びUS特許第3,069,469号(California Research Corp.)に記載されたプロセスが参照される。
【0056】
水素化反応器は直線通路状で運転されてよい。また、反応器排出物の一部を有利に循環流の予備的な後処理なしに反応器入口に再循環させる循環法も可能である。
【0057】
これによって反応溶液の最適な希釈を達成することができ、これは選択率に有利な影響を及ぼす。特に、循環流を外部熱交換器を用いて単純かつ廉価な方法で冷却することができ、かつそのようにして反応熱を排出することができる。反応器は断熱式に運転されてもよく、その際、反応溶液の温度上昇は冷却された循環流により制限され得る。反応器自体は冷却される必要がないため、単純かつ廉価な構造様式が可能である。代替物は冷却された管束型反応器である。
【0058】
コバルト及び/又はニッケル及び/又は鉄を非担持触媒としてか又は不活性支持体上に含む触媒は有利である。
【0059】
反応温度は一般に40〜150℃、有利に40〜120℃である。
【0060】
圧力は一般に40〜300バール、有利に100〜200バールである。
【0061】
XDAの単離:
水素化の後、使用した溶剤及び使用した全てのアンモニアを留去する。
【0062】
有利に、キシリレンジアミンの精製は、(同一の圧力で)比較的低沸点である副生成物の塔頂を介した留去、及び、比較的高沸点である不純物の塔底を介した蒸留による除去により行われる。
【0063】
水素化の後に、NMP、全てのアンモニア並びに比較的低沸点である全ての副生成物を塔頂を介して留去し、その後、比較的高沸点である不純物をキシリレンから蒸留によって塔底を介して除去する方法は特に有利である。
【0064】
特別な実施態様において、比較的低沸点である副生成物及び比較的高沸点である副生成物の除去を側留塔又は隔壁塔内で行うこともでき、この場合、純粋なキシリレンジアミンを液体又はガス状の側留を介して得ることができる。
【0065】
所望の純度に応じて、生成物(XDA)は付加的に有機溶剤、有利に脂肪族炭化水素、特に脂環式炭化水素、極めて特別にはシクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンで抽出される。
【0066】
前記の抽出による精製は例えばDE−A−1074592に従って行うことができる。
【0067】
本発明による方法の有利な実施態様の概略図を添付の図1に示す。
【0068】
任意のプロセス工程である「水の除去」及び「抽出によるXDAの精製」を破線で示す。
【0069】
実施例
実施例1:
m−キシレンのアンモ酸化、引き続く溶剤としてのNMPを用いた反応ガスのクエンチ、及びアンモ酸化工程で生じるIPNの水素化(図1の処理スキームを参照のこと)。
【0070】
ステアタイト上の組成VSb0.4Cs0.2を有する触媒を固定床として管型反応器中に組み込んだ。装置を外部から400℃に加熱した。反応器に、蒸発されたm−キシレン、ガス状のアンモニア、空気及び窒素を供給した(NH/m−キシレン=8モル/1モル;O/m−キシレン=4モル/1モル)。反応器の最上流部分に不活性床を充填し、出発材料を、予備混合されかつ400℃に予熱された反応領域に到達させた。反応器中では、0.02〜0.03バールのわずかな過圧であった。ホットスポット温度は450℃に達した。79%のm−キシレンの変換率(C)の後、68%のIPNの選択率(S)が達成された。
【0071】
反応器から排出されたガス混合物を塔内でNMPでクエンチする。クエンチ塔から122℃で、m−キシレン0.6質量%、水1.6質量%、ベンゾニトリル0.1質量%、トルニトリル4質量%、IPN27質量%及びNMP約66.7質量%を含有する、NMP中のIPNの溶液を排出する。クエンチ塔の塔頂を介して、未反応の反応ガス及び不活性ガス並びに未反応のm−キシレン並びに若干のNMPをガス状で排出する。前記ガスを後処理し、有用な材料(特にNH、m−キシレン、NMP並びにトルニトリル)を反応工程又はクエンチ循環路に再循環させることができる。不活性成分及び副成分(HO、ベンゾニトリル、N、CO等)を後処理工程から排出する。
【0072】
m−キシレン0.44g、水1.7g、ベンゾニトリル0.88g、トルニトリル3.1g、IPN24g及びNMP58gから成るクエンチ出口で算出された組成に相応する溶液を、純粋な成分から混合し、水素化に供給した。水素化のために、混合物に液体のNHを計量供給した(NH/IPN=14モル/1モル)。水素化をH及びラネーニッケル触媒5gの存在下に100℃で圧力100バールで撹拌型オートクレーブ中で行った。IPNの変換は定量的であり、使用したIPNに対して92%の収率が得られた。
【0073】
(クエンチ工程の上記のデータは熱力学的シミュレーションの結果である。このシミュレーションにおいて、クエンチは気相と液相とが熱力学的平衡にある装置であると見なされている。関連する成分の純粋な材料データに加え、算出の際には実際のバイナリデータを使用した。このような算出を、商業的な算出プログラム、ここでは当業者に公知であるアスペンプラス(Aspen Plus)を用いて実施することができる)。
【0074】
実施例2:
アンモ酸化を実施例1の通りに実施したが、但し、クエンチからの出口温度は91℃であった。溶液の含水量は5.2質量%であった。溶液を15個の泡鐘段を有する塔に供給する。供給物を第6段目の泡鐘段に供給する。水を他の成分(溶解されたガス、m−キシレン、ベンゾニトリル、トルニトリル、後者は水との共沸混合物として)と一緒に塔頂を介して除去する。IPN約27質量%、NMP67質量%、トルニトリル6質量%及びベンゾニトリル600質量ppmから成る実質的に無水の溶液を塔底を介して得る。
【0075】
純粋な成分から混合したIPN27質量%とNMP73質量%とから成る混合物を、連続運転式の70mlの管型反応器中で非担持コバルト触媒上で80℃でかつ190バールで水素化した。触媒に、毎時、IPN溶液70g及びアンモニア90gを導通した。MXDAの収率は使用したIPNに対して96%であった。
【0076】
(上記のクエンチ工程のデータは、実施例1の通りに実施された熱力学的シミュレーションの結果である。)
実施例3:
純粋な成分から混合したIPN27質量%とNMP73質量%とから成る混合物を、連続運転式の70mlの管型反応器中で非担持コバルト触媒上で80℃でかつ190バールで水素化した。触媒に、毎時、IPN溶液70g及びアンモニア54gを導通した。同一の体積流量を溶剤として再循環させた。MXDAの収率は使用したIPNに対して95.5%であった。
【0077】
実施例4:
純粋な成分から混合したIPN15質量%とNMP85質量%とから成る混合物を、連続運転式の70mlの撹拌型反応器中で非担持コバルト触媒上で80℃でかつ190バールで水素化した。触媒に、毎時、IPN溶液140g及びアンモニア72gを導通した。MXDAの収率は使用したIPNに対して96%であった。
【0078】
実施例5:
m−キシレンのアンモ酸化、引き続く、溶剤としてのNMPを用いた反応ガスのクエンチ
ステアタイト上の組成VSb0.4Ba0.2の触媒を固定床で管型反応器中に組み込んだ。装置を外部から415℃に加熱した。反応器に、蒸発されたm−キシレン、ガス状のアンモニア及び空気を供給した(NH/m−キシレン=14モル/1モル;O/m−キシレン=4モル/1モル)。反応器の半分の一方の触媒をステアタイト球70質量%で希釈し、反応器の半分の他方の触媒をステアタイト球40質量%で希釈した。反応器中では、0.02バールのわずかな過圧であった。ホットスポット温度は430℃に達した。88質量%のm−キシレンの変換率で、71%のIPNへの選択率が得られた。
【0079】
反応器から排出されたガス混合物を塔内でNMPでクエンチする。クエンチ塔から120℃で1.02バール(絶対)で、m−キシレン0.25質量%、水1.3質量%、トルニトリル3.6質量%、IPN27質量%及びNMP約67.7質量%を含有する、NMP中のIPNの溶液を排出する。クエンチ塔の塔頂を介して、未反応の反応ガス及び不活性ガス並びに未反応のm−キシレン並びに若干のNMPをガス状で排出する。前記ガスを後処理し、有用な物質(特にNH、m−キシレン、NMP並びにトルニトリル)を反応工程又はクエンチ循環路に再循環させることができる。不活性成分及び随伴成分(HO、N、CO等)を後処理工程から排出する。
【0080】
(上記のクエンチ工程のデータは、実施例1の通りに実施された熱力学的シミュレーションの結果である。)
実施例6:
種々の溶剤中でのIPNの溶解度の試験
NMP中でのIPNの溶解度は60℃で約26質量%であり、かつ90℃で約41質量%である。
【0081】
90℃で、プソイドクメンは単に20質量%の溶解度を達成するに過ぎず、かつメシチレンは単に12質量%の溶解度を達成するに過ぎない。
【0082】
60℃で、メシチレン又はプソイドクメン中でのIPNの溶解度はそれぞれ10質量%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明による方法の有利な実施態様を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
キシレンをフタロニトリルへとアンモ酸化する工程、その際、前記アンモ酸化工程の蒸気状の生成物を液体の有機溶剤と直接接触させる(クエンチ)、及び
得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液中でフタロニトリルを水素化する工程
を含むキシリレンジアミンの製造法において、
有機溶剤がN−メチル−2−ピロリドン(NMP)であることを特徴とする、キシリレンジアミンの製造法。
【請求項2】
メタ−キシレンからイソフタロニトリルへのアンモ酸化工程及びイソフタロニトリルの水素化工程を含む、メタ−キシリレンジアミンを製造するための請求項1記載の方法。
【請求項3】
フタロニトリルの水素化の前に、水、及びフタロニトリルよりも低い沸点を有する全ての生成物(低沸点成分)を、得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液から蒸留により部分的又は完全に除去する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
フタロニトリルの水素化の前に、フタロニトリルよりも高い沸点を有する生成物(高沸点成分)を、得られたクエンチ溶液又はクエンチ懸濁液から除去しない、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
アンモ酸化を、300〜500℃の温度で、非担持触媒としてか又は不活性支持体上でV、Sb及び/又はCrを含む触媒上で実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
NMPを用いたクエンチの際のクエンチ排出物の温度が40〜180℃である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
水素化をアンモニアの存在下に行う、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
水素化を、40〜150℃の温度で、非担持触媒としてか又は不活性支持体上でNi、Co及び/又はFeを含む触媒上で実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
水素化の後に、キシリレンジアミンの精製を、NMP、全てのアンモニア並びに比較的低沸点である全ての副生成物の塔頂を介した留去、及び、比較的高沸点である不純物の塔底を介した蒸留による除去により行う、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
水素化の後に、NMP、全てのアンモニア並びに比較的低沸点である全ての副生成物を塔頂を介して留去し、その後、比較的高沸点である全ての不純物を蒸留により塔底を介してキシリレンジアミンから除去する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
キシリレンジアミンを蒸留の後に後精製のために有機溶剤で抽出する、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
抽出のためにシクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンを使用する、請求項11記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−533614(P2007−533614A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525686(P2006−525686)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009568
【国際公開番号】WO2005/028417
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】