説明

キノコ菌糸体を用いた肉類似物の製造方法、これにより製造された肉類似物、肉類似物を含む低カロリーの代用肉、肉香味料、および肉香味増強物

キノコ菌糸体を用いた肉類似物の製造方法、該方法を用いて製造された肉類似物、該肉類似物を用いた低カロリーの代用肉および肉香味料を提供する。肉類似物は、短期間でコストおよび労力的に効率のよい方法でキノコ菌糸体から製造することができる。従来の大豆タンパク質と比較して改善された肉らしい食感および香味を有する肉類似物を製造することができ、したがって該肉類似物を用いた低カロリーの代用肉および肉香味料を製造することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、植物性タンパク質の一種である肉類似物に係り、キノコ菌糸体を量産し、これから肉類似物を製造する方法、この方法によって製造された肉類似物、この肉類似物を利用した低カロリーの代用肉及び肉香味料に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
本来、肉類似物は、菜食主義者の食材料を多様化するために由来したものであるが、最近には、一般需要者の間でも慢性疾患予防などの健康及び栄養学的な関心と共に、環境にやさしい清浄食品に対する選好度が高まって、肉類似物に対する市場規模がさらに拡大されると予想される。したがって、肉類似物を製造するための新たな食品素材の開発及び生産技術の開発が要求されている実情である。
【0003】
肉類似物の生産においては、低カロリー、低脂肪の健康及び栄養学的な価値を考慮せねばならず、摂取時の生理的な反応及び安全性も考慮せねばならない。さらに、肉類の香味と食感とを再現することも非常に重要である。特に、肉類似物の開発において、何より重要なのは、肉類と類似した食感、水分及び脂肪の保有特性によって口内で感じられる特有なマウスフィール及び潤滑性である。
【0004】
そのような肉類似物は、大豆タンパク質を中心に開発されてきたが、大豆タンパク質は、外形的に肉類の構造及び形態を有することはできるが、肉類特有の食感を有するには限界があって、主にバーガー、ミートボールなどの薄く切った肉または細かく刻んだ肉の形態としてのみ利用されてきた。大豆タンパク質は、分留物によって食感を形成できるゲル強度が異なるが、通常、小麦グルテンを利用して肉類の食感を摸倣した繊維状構造の製品に開発されもした。しかし、大豆タンパク質の豆臭いにおいを含む苦味や一部消費者の小麦グルテンによるアレルギー反応のため、その利用が制限されている実情である。また、大豆タンパク質あるいは小麦タンパク質などを利用した豆科類、穀類素材肉類似物は、肉類の食感を模倣することが不可能であるだけでなく、肉類似物としての香味も有さないため、新たな食品素材の開発が必要である。
【0005】
菌類タンパク質は、土壌などに生息している好気性微細菌類が生産する炭水化物をタンパク質に変換させて作った物質であって(Sadler,M.J.,Myco−protein、in Encyclopedia of Food Sci.,Food Technol.,Nutr.,1993,pp.3191−3196,R.Macrae et al.(ed.),Academic Press(非特許文献1))、1960年代からこれを食品として利用するための研究が続いてきた。しかし、今のところ“Quorn”という菌類タンパク質のみが食品用としての生産及び利用に成功した。“Quorn”は、英国のQuorn社で1964年からフザリウム グラミネアラム(Fusarium graminearum)を利用して生産したカビ肉類似物であって、1984年に安全性が確認された(Trinci,A.P.J.,Evolution of the Quorn Registered myco−protein fungus,Fusarium graminearum A3/5.Microbiology,140(9),pp.2181−2188,1994(非特許文献2))。しかし、このようなカビ肉類似物に対しては、食品アレルギー誘発可能性やカビに対する消費者の否定的な認識のため、それを利用した肉類似物の市場拡大は、限界があった。
【0006】
したがって、肉類似物のための新たな食品素材として、繊維状構造を有しており、肉類の香味を有しているキノコが注目されている。キノコは、大豆タンパク質に比べて相対的に低いタンパク質含量を有しているが、硫黄含有アミノ酸の含量が高く、グルタミン酸の含量が高くて口内での感じ及び香味を増強させる効果が大きい特徴がある。また、キノコは、繊維状の炭水化物で構成されており、大豆タンパク質に比べて、肉らしい食感の再現に有利である。また、カビに対しては否定的な認識があるとは異なり、キノコは、古代から食用として頻繁に利用されており、最近には、キノコに多様な生理機能物質が含まれているという事実が消費者の間に広く知られているので、大豆タンパク質やカビ菌類タンパク質に比べて、キノコを利用した肉類似物の価値が高いと期待される。
【0007】
技術的課題
しかしながら、キノコ農家から供給されるキノコは、1kg当り7,000ウォン〜10,000ウォンと高く、裁培に20〜30日がかかるため、量産を通じた商業化には限界がある。したがって、キノコ菌糸体を用いた肉類似物、ならびに代用肉、肉香味料、および肉香味増強物などの様々な製品を開発できるように、比較的低コストで大量のキノコ菌糸体を生産する技術を開発する必要がある。
【0008】
【非特許文献1】Sadler,M.J.,Myco−protein、in Encyclopedia of Food Sci.,Food Technol.,Nutr.,1993,pp.3191−3196,R.Macrae et al.(ed.),Academic Press
【非特許文献2】Trinci,A.P.J.,Evolution of the Quorn Registered myco−protein fungus,Fusarium graminearum A3/5.Microbiology,140(9),pp.2181−2188,1994
【発明の開示】
【0009】
技術的解決
本発明は、キノコ菌糸体の培養のための最適の培地づくり及び培養条件を確立して、キノコ菌糸体から肉類似物を製造する方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、本発明の方法によって製造された肉類似物を提供し、これを利用して、従来の大豆タンパク質に比べて肉らしい食感及び香味に優れた代用肉を提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明の方法によって製造された肉類似物を利用して、従来の加水分解植物性タンパク質(HVP:Hydrolysated Vegetable Protein)及び化学調味料(グルタミン酸ナトリウム)の使用量を30〜40%減らせる肉香味料および肉香味増強物を提供する。
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、キノコ菌糸体を生産する工程と、前記生産されたキノコ菌糸体にタンパク質補充物と結合物質とを添加して混合する工程と、前記混合工程の組成物からタンパク質をテクスチャライズする工程と、を含むキノコ菌糸体を用いた肉類似物の製造方法において、キノコ菌糸体生産工程は、サトウキビ抽出物を含む液体培地でキノコ菌糸体または胞子を培養することを特徴とする肉類似物の製造方法を提供する。
【0013】
本発明によるキノコ菌糸体生産工程で使われるキノコ菌糸体または胞子は、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、マッシュルーム(Agaricus bisporus)、エノキタケ(Flammulina velutipes)、エリンギ(Pleurotus eryngii)など食用として広く使われるキノコや、レイシ(Ganoderma mushroom)、コルジセプス(Cordyceps)をはじめとした機能性キノコが使われうる。
【0014】
望ましくは、本発明による方法で使われるキノコ菌糸体または胞子は、マッシュルームでありうる。
【0015】
また、本発明による方法で使われる液体培地に、サトウキビ抽出物は、10g/l〜30g/lの濃度で含まれうる。
【0016】
本発明による方法で使われる液体培地は、窒素源として硝酸ナトリウムをさらに含みうる。
【0017】
望ましくは、本発明で使われる液体培地は、硝酸ナトリウムを1g/l〜10g/lの濃度で含みうる。
【0018】
また、本発明による方法で使われる液体培地は、1g/l〜10g/lの濃度の酵母抽出物をさらに含みうる。
【0019】
また、本発明は、前記肉類似物の製造方法によって製造された肉類似物、この肉類似物を主材料とする低カロリーの代用肉、及びこの肉類似物を利用した肉香香味料および肉香味増強物を提供する。
【0020】
本発明の肉類似物の製造方法の前記キノコ菌糸体の生産工程は、菌株を分離して原菌を得、これを適切な培地に接種して培養増殖させて種菌を準備する種菌準備工程と、前記種菌準備工程の種菌から接種源を製造するための前培養工程と、前記前培養工程で得られた接種源から目的とする菌糸体を大量増殖するための本培養工程とからなる通常のキノコ菌糸体の液体培養方法で構成される。
【0021】
まず、本発明の菌株は、キノコ子実体の組織または胞子を通じて獲得し、これを原菌とする。一般的に、原菌とは、種菌を製造する時にその種の起源となる菌株を称し、種菌は、必要とする目的キノコ菌のみを純粋に培養した増殖体であって作物の種子のような役割を行うものを意味し、接種源とは、培地に移し置く菌株であって、種菌培養時に原菌から直接多量の種菌を製造できないため、中間工程として作る増殖用種菌を意味する。
【0022】
一方、キノコの裁培において、菌糸が育つように稲わらや堆肥、麦芽、ジャガイモなどを加工処理して栄養分、酸度を調節した基質を培地または培養器という。キノコ菌糸体を分離または大量増殖するためには、基本的に菌糸の生理的特性に適した培地を作って使用せねばならない。培地は、キノコ菌の生長のための栄養源及び水分を提供するので、炭素源、窒素源、ビタミン、無機塩類のように、生命維持に必要な要素を何れも含有せねばならない。
【0023】
種菌準備工程において、培地としては、従来のキノコ培養のための培養培地や種培養菌培地として使われたポテトデキストロース寒天培地、酵母麦芽ブドウ糖培地(Yeast Extract Malt Extract Glucose medium)などの栄養培地を使用しうる。この工程の目的は、微生物学的に安定した条件で純粋培養した菌を利用して、多量の種菌を作るためである。
【0024】
次いで、キノコ菌糸体の量産のためには、大量の種菌を一時に使用せねばならないが、原菌から種菌を培養するためには、過度な時間及び努力が要求されるので、中間培養工程で接種源を製造した後、種菌を培養するために前培養工程を経るが、前培養工程の培地は、15〜25g/lの濃度のポテトデキストロースブロス、10g/lの濃度の酵母抽出物、2〜5g/lの濃度の麦芽抽出物、2〜5g/lの濃度のソイトーンを含むことが望ましい。前培養工程の培地は、ポテトデキストロースブロス24g/l、酵母抽出物10g/l、麦芽抽出物5g/l、ソイトーン5g/lの組成である時にさらに望ましい。そして、前培養工程は、約3〜4日間持続することが望ましい。
【0025】
最後に、本培養工程は、前培養工程で得られた接種源から菌糸体を大量増殖させる工程である。この工程では、濾過された圧縮空気を吹き込んで液体培地とキノコ菌の混合物とを撹拌させて菌糸体に養分の接触を均一にし、静置された液体状態で不足しやすい酸素濃度を高める効果を与える。
【0026】
本培養工程で、培養培地の炭素源としてはサトウキビ抽出物を利用し、窒素源としてはソイトーンを利用することが、菌糸体生長の側面で最も望ましいが、経済的な側面まで考慮すれば、ソイトーンよりは硝酸ナトリウムを利用することが望ましい。サトウキビ抽出物とは、サトウキビの汁を絞って濃縮及び結晶化したものを称す。本発明において、サトウキビ抽出物は、炭素と共に成長因子を提供する役割を行う。このとき、サトウキビ抽出物の濃度は、10g/l未満である場合には、菌糸体の生長がよくなされず、30g/lを超える場合には、滲透圧が高く、非経済的であるので、10gl〜30g/lであることが望ましい。硝酸ナトリウムは、無機窒素源であって、キノコ菌糸体によって付加価値の高い有機窒素に転換される。また、窒素源として他のアンモニアベースを利用する場合、培地内のpHが変動される問題点があるが、硝酸ナトリウムを利用する場合、培地内のpHを調節する役割を行うことで、pHが一定に維持される効果も得られる。硝酸ナトリウムの濃度は、1g/l未満である場合には、菌糸体の生長に必要な窒素源が不足し、10g/lを超える場合には、菌糸体成長に大差がないので、1〜10g/lであることが望ましい。ここに、1〜10g/l濃度の酵母抽出物をさらに含む場合、マッシュルーム菌糸体の生長にさらに望ましい。特に、本培養工程の培地は、サトウキビ抽出物15〜25g/l、硝酸ナトリウム5〜10g/l、酵母抽出物5〜10g/lを含むことがさらに望ましい。前培養工程及び本培養工程の培地において、残りの構成部分は、蒸溜水または滅菌した飲用水を使用する。
【0027】
一般的にキノコ菌糸菌糸生長の可能な温度範囲は、3〜30℃であって、特にマッシュルームの場合には、生長適温は24〜25℃であり、生長のための最適酸度(pH)は6.8〜7.0であると知られている。本発明の前記前培養工程及び前記本培養工程は、28〜30℃の温度で培養することが望ましく、特に、28℃の温度条件がさらに望ましい。そして、本発明によれば、前培養工程及び本培養工程の培地は、初期pHが6.0〜6.5である時に、菌糸体の生長が最も良好であると分かった。
【0028】
本発明で、本培養工程は、3〜10日間持続することが望ましい。3日未満である場合には、菌糸体の生長が不足し、10日を超える場合には、経済的な側面で望ましくない。菌糸体の最大収率及び経済性を考慮する時に、最も望ましい本培養期間は、3日〜6日である。これは、従来のキノコ菌糸体の液体培養時に通常14日〜15日以上がかかったのに比べて、非常に短縮された期間といえる。
【0029】
本発明の前培養工程及び本培養工程において、従来には、菌糸粒子を培地に均一に分布させるために得られた種菌を接種する前に均質器を利用したが、この場合、菌糸粒子が過度に小さくなって菌糸体の生育において非効率的であるので、ブレンダを利用して菌糸を培地内に均一に分散させることが望ましい。
【0030】
さらに、本発明の前培養工程及び本培養工程は、撹拌または振盪培養することが望ましいが、この場合、収率を最大にするために、培養容器の回転数は200rpmが望ましい。
【0031】
本発明の肉類似物の製造方法によって生産されたキノコ菌糸体にタンパク質補充物と結合物質とを添加して混合する工程において、タンパク質補充物としては、大豆タンパク質、穀類タンパク質などの加水分解植物性タンパク質(HVP)のような従来の肉類似物の素材が利用されることもあり、牛肉や鶏肉などの肉類や魚類または野菜類や堅果類が利用されることもある。結合物質としては、卵白アルブミンが利用されうる。前記混合工程において、前記タンパク質補充物及び前記結合物質以外に、グルカン、ヌクレオチド、硫黄含有アミノ酸、グルタミン酸、澱粉、食餌繊維が混合され、香料及び発色剤がさらに混合されることもある。
【0032】
前記混合工程の組成物からタンパク質にテクスチャライズする工程は、押し出し成形法によってなされる。押し出し成形時に原料組成比、原料投入量、水分含量、スクリュー回転速度、バレル加熱温度を調節しうる。このとき、水分の含量を40%ほどに高めて押し出し成形して100〜170℃の温度条件下で100〜1000psiの圧力で押し出し成形しうる。タンパク質のテクスチャライズのために、クーリングダイまたはサーキュラダイを使用しうる。
【0033】
本発明の代用肉は、前記製造方法によって製造された肉類似物を利用し、ここにタンパク質、炭水化物、脂肪、香料及び発色剤など公知の副材料を添加して製造する。このとき、前記代用肉の全体タンパク質のうち10〜100%は、前記肉類似物からなりうる。
【0034】
本発明の肉香味料および肉香味増強物は、前記製造方法によって製造された肉類似物を利用して、公知の香味剤生産方法によって製造する。
【0035】
最良の形態
以下、本発明の例示的な態様を示した添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の態様に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、これらの態様は、本開示内容が詳細かつ完全となり、本発明の概念が当業者に完全に伝わるように提供される。
【0036】
実施例1:肉類似物のためのキノコ菌糸体の液体培養による量産
(1)菌株分離及び接種源準備
本発明の菌株は、マッシュルームの組織培養を通じて獲得して、ポテトデキストロース寒天培地(PDA)を利用して25℃の温度で3週間培養した後、4℃でマッシュルーム菌株を保存した。
【0037】
接種源の準備は、固体培養の場合、冷蔵保管したPDA平板培地の中央部で菌糸体の一部を分離して接種した後、25℃の恒温器で培養して使用した。液体培養の場合には、500mlのフラスコにポテトデキストロースブロス(PDB)20g/l、酵母抽出物10g/l、麦芽抽出物5g/l、ソイトーン5g/lで構成されたPDBYMS培地100mlを121℃で15分間高圧滅菌させて準備した後、菌糸体の一部を前記PDBYMS培地接種して25℃の温度で200rpmで撹拌させて培養した。
【0038】
(2)種菌のためのキノコ菌糸体の前培養
種菌前培養のための最適の条件を調べるために、表1のような条件で培地を調製して500mlの三角フラスコに各培地100mlずつ入れて121℃で15分間高圧滅菌した後、無菌状態で均質化された接種源を1%(v/v)接種して、25℃の恒温器で200rpmで4日間振盪培養しながら菌糸の生長を測定した。
【0039】
【表1】

【0040】
菌糸体の生長は、菌糸体が含有されている三角フラスコをガーゼで濾過した後、超遠心分離機で1500rpmで10分間濾過分離した後に60℃の乾燥オーブンで24時間乾燥させて重量を測定した。
【0041】
前記表1から分かるように、PDB 24g/l、酵母抽出物10g/l、麦芽抽出物2〜5g/l、ソイトーン2〜5g/lである時に、菌糸生長が最も良好であった。したがって、種菌前培養のための基本培地としてPDB 24g/l、酵母抽出物10g/l、麦芽抽出物5g/l、ソイトーン5g/lで構成されたPDBYMS培地を使用した。
【0042】
(3)本培養
生物反応装置は、BIOFLO IIc Batch/Continuous Fermentor(New Brunsdwick Scientific.)を利用した。
【0043】
菌糸体の生育のための最適の培養温度を調べるために、500mlの三角フラスコに前記基本培地を100ml入れて121℃で15分間高圧滅菌した後、無菌状態で均質化された接種源1%(v/v)を接種して、25℃、28℃、30℃の温度に設定された恒温器で200rpmの条件で4日間振盪培養しつつ菌糸生長を調べた。その結果、28℃及び30℃で菌糸体の生長が良好であり、特に、28℃で最大量を表した。
【0044】
菌糸体の生育のための最適の初期pHを調べるために、500mlの三角フラスコに前記基本培地を100ml入れて燐酸と50%の水酸化ナトリウム(NaOH)とで初期pHを4.0〜9.0に0.5単位で調節して、前記培地を121℃で15分間高圧滅菌した後、無菌状態で均質化された接種源1%(v/v)を接種して25℃で200rpmの条件で4日間振盪培養しつつ菌糸体の生長を調べた。その結果、pH6.0で菌糸体の生長が最も良好であると分かった。
【0045】
培養期間による影響を調べるために、500mlの三角フラスコに前記基本培地を100ml注入して初期pHを6.0〜6.5に調節した後、121℃で15分間高圧滅菌した後、無菌状態で均質化された接種源1%(v/v)を接種して25℃で200rpmの条件で10日間振盪培養して菌糸体の生長を調べた。その結果、菌糸体の生長は、培養2日目までは緩やかな増加を示し、培養3日以後から早く生育する対数期の典型的な形態を表した。最大菌糸体量は、培養9日目に2.43g/100mlであると分かり、それ以後には、菌糸体の生長が減少する傾向を表した。
【0046】
本培養のための最適の培地選定のために、前記基本培地を変形して菌糸体の生育を調べた。すなわち、炭素源としてPDB、葡萄糖、サトウキビ抽出物(Sugar Cane Extract:CJ)各20g/lに、酵母抽出物10g/l、麦芽抽出物5g/l、ソイトーン5g/lを混合して、培地のpHを6.0〜6.5に調節した後、500mlの三角フラスコに前記培地を100ml注入して121℃で15分間高圧滅菌して実験培地を準備した。ここに、無菌状態で均質化された接種源1%(v/v)を接種して、25℃で200rpmの条件で4日間振盪培養して菌糸の生長を調べた。その結果、炭素源としてサトウキビ抽出物を利用する時に、最も菌糸体の生長が効率的であると分かった。
【0047】
次いで、最適の炭素源の濃度を選定するために、サトウキビ抽出物を1g/l、5g/l、10g/l、15g/l、20g/lとし、各実験群に酵母抽出物10g/l、麦芽抽出物5g/l、ソイトーン5g/lを混合して、培地のpHを6.0〜6.5に調節した後、500mlの三角フラスコに前記培地を100ml注入して121℃で15分間高圧滅菌して培地を準備して、炭素源選抜実験と同一に菌糸体の生長を調べた。その結果、サトウキビ抽出物の濃度が10〜20g/lである時に菌糸体の生長が良好であると分かった。
【0048】
菌糸体の生育のための最適の窒素源及び濃度を調べるために、PDBYMS培地に最適の炭素源であるサトウキビ抽出物を20g/lの濃度に添加した後、窒素源として硝酸ナトリウム、窒酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ソイトーンを各10g/lずつ添加してpHを6.0〜6.5に調節した後、500mlの三角フラスコに前記培地を100ml注入して121℃で15分間高圧滅菌して培地を準備して、炭素源の選抜実験と同一に菌糸体の生長を調べた。その結果、窒素源としてソイトーンを使用するとき、最も菌糸体の生長が優秀であると分かり、硝酸ナトリウムがその次であった。経済的な面まで考慮する場合、硝酸ナトリウムが窒素源として最も望ましい。
【0049】
次いで、最適の窒素源の濃度を選定するために、硝酸ナトリウムの濃度を1g/l、3g/l、5g/l、7g/l、10g/lに異ならして、前記窒素源の選抜実験と同一に菌糸の生長を調べた。その結果、硝酸ナトリウムの濃度が10g/lである時に菌糸体の生長が最も良好であると分かった。ここに、酵母抽出物を5g/lの濃度に混合した時に菌糸体の生長が最大であった。したがって、サトウキビ抽出物20g/l、硝酸ナトリウム10g/l、酵母抽出物5g/lを混合した培地を最適の本培養培地と決定した。
【0050】
前記本培養培地2lに無菌状態に均質化された接種源1%(v/v)を接種して空気注入量0.25v/v/mの条件で生物反応装置のインペラー回転数をそれぞれ200rpm、250rpm、300rpmに設定して4日間培養した後に生体重量を測定した後、7日間凍結乾燥して乾体重量を測定した。その結果、インペラー回転数が200rpmである場合、最大菌糸体量が得られた。
【0051】
実施例2:肉類似物の製造
通常の植物性タンパク質の製造方法(韓国食品開発研究院、高等菌類を利用した新機能食品素材の開発及び応用研究、最終研究報告書、農林部、2002年11月18日)によって実施し、前記実施例1で製造した本発明のキノコ菌糸体40%にコーンハル30%、卵白30%の割合で混合して、水分含有量を40%にして、100〜170℃の温度条件下で100〜1000psiの圧力で押し出し成形した。押し出し成形によるタンパク質生成のために、クーリングダイを使用した。
【0052】
実施例3:肉類似物からの代用肉の調製
通常の代用肉の製造方法を用いて代用肉を製造した。前記実施例2で製造した本発明の肉類似物50重量%を添加し、少量の調味料、香辛料、色素を添加して代用肉を製造した。
【0053】
実施例4:肉類似物からの肉香味料の調製
前記実施例2で製造した本発明の肉類似物を粉末化し、内臓を除去した鰯、洗浄して切断した昆布及びワカメを準備して、水100重量%に対して鰯20重量%、昆布20重量%、ワカメ20重量%を入れて100℃で加熱して、水の量が1/2になるまで抽出してブロスを得た。前記ブロスにカタクチイワシ、昆布、ワカメを12時間浸漬した後、これを乾燥して粉末化した。前記粉末化された肉類似物65重量%、カタクチイワシ粉末10重量%、昆布粉末10重量%、ワカメ粉末5重量%を混合して、肉香味料を製造した。
【0054】
産業上の利用可能性
本発明による肉類似物の製造方法によれば、所定の培地及び条件下でキノコ菌糸体を液体培養して3〜6日の短期間に大量に菌糸体を生産して肉類似物を製造することによって、時間、コスト、労力面で経済的であり、かつ従来の大豆タンパク質やカビタンパク質に比べて優れた食感及び香味を有する肉類似物及び代用肉が得られる。そして、本発明による代用肉は、添加された香料、色素が調理過程で抽出されないなど安定した特性がある。また、前記肉類似物を利用した肉香味料を使用することによって、従来の植物性タンパク質(HVP)及び化学調味料(グルタミン酸ナトリウム)の使用量を30〜40%減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による肉類似物、代用肉、および肉香味料、および肉香味増強物製造の概略的な模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコ菌糸体を生産する工程;
該キノコ菌糸体をタンパク質補充物および結合物質と混合する工程;および
前記混合工程で調製された混合物を押し出し成形してタンパク質形状へとテクスチャライズする工程
を含む、キノコ菌糸体を用いた肉類似物の製造方法であって、
前記キノコ菌糸体を生産する工程が、サトウキビ抽出物を含む液体培地中でキノコ菌糸体または胞子を培養することを含む、方法。
【請求項2】
液体培地中でのキノコ菌糸体または胞子の培養が、完了前に3〜6日間行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
液体培地中で培養されるキノコ菌糸体または胞子が、マッシュルーム(Agaricus bisporus)の菌糸体または胞子である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
液体培地が10g/l〜30g/lのサトウキビ抽出物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
液体培地が窒素源として硝酸ナトリウムをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
硝酸ナトリウムの濃度が1g/l〜10g/lの範囲内である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
液体培地が1g/l〜10g/lの酵母抽出物をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の方法を用いて製造された肉類似物。
【請求項9】
請求項8記載の肉類似物を含む代用肉。
【請求項10】
請求項8記載の肉類似物を含む肉香味料。

【図1】
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【公表番号】特表2009−538128(P2009−538128A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511952(P2009−511952)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002553
【国際公開番号】WO2007/139321
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(505196200)シージェー コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】