説明

キノロン抗生物質の新規使用

【課題】口腔の細菌感染の治療薬の提供。
【解決手段】8−シアノキノロン抗生物質(1)。


式中、Xは、水素、ハロゲン、C1−4−アルキルなどを表しYは、ピペラジンなどの窒素含有複素環を表し、R1は、1個ないし3個の炭素原子を有するアルキル基、シクロプロピル、2−フルオロエチル、メトキシ、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニルまたはメチルアミノを表し、、R2は、水素または、メトキシ−もしくは2−メトキシエトキシ−置換されていることもある1個ないし6個の炭素原子を有するアルキル、およびまた、シクロヘキシル、ベンジル、2−オキソプロピル、フェナシル、エトキシカルボニルメチル、ピバロイルオキシメチルを表し、Aは、=C(CN)を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔の細菌感染を制御するための、特に獣医学における、ある種のキノロン抗生物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔の感染において頻繁に遭遇するものを含む嫌気性細菌に対する様々なフルオロキノロン抗生物質のインビトロでの作用は、既に記載されてきた(Sobotka I et al.: In vitro activity of moxifloxacin against bacteria isolated from odontogenic abscesses. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 46, 4019-4021, 2002; Muller HP et al.: In vitro antimicrobial susceptibility of oral strains of Actinobacillus actinomycetemcomitans to seven antibiotics. Journal of Clinical Periodontology 29, 736-742, 2002; Pfister W et al.: Activity of quinolones against anaerobic and capnophilic bacteria in vitro. Deutsche Zahnaerztliche Zeitschrift 56, 189-192, 2001; Goldstein EJC et al.: In vitro activities of a new des-fluoroquinolone, BMS 284756, and seven other antimicrobial agents against 151 isolates of Eikenella corrodens. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 46, 1141-1143, 2002; Hecht DW, Osmolski JR (2003): Activities of garenoxacin (BMS-284756) and other agents against anaerobic clinical isolates. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 47, 910-916 参照)。
【0003】
さらに、WO01/45679は、局在的または局所的に使用されるフルオロキノロン抗生物質が、特に口腔における、例えば歯科における歯根(root)処置中の、細菌性障害の処置に適すると記載している。
【0004】
さらに、シプロフロキサシンは、歯周炎(=歯周部の疾患)の治療に使用されてきた。しかしながら、メトロニダゾールとの組合せ治療が推奨されている (Mombelli AW, van Winkelhoff AJ: The systemic use of antibiotics in periodontal therapy. In: Proceedings of the 2nd European Workshop on Periodontology. Chemicals in Periodontics. Eds.: Lang NP, Karring T, Lindhe J. Thurgau, Switzerland, 1996. Quintessenz Books, Berlin, 38-77 参照)。
【0005】
イヌおよびネコの歯周炎の治療のための、エンロフロキサシンとメトロニダゾールの組合せも記載されてきた (Nielsen D: Clinical Experience with an Enrofloxacin-Metronidazole Combination in the Treatment of Periodontal Disease in Dogs and Cats. In: Proceedings of the Third International Veterinary Symposium on Baytril. Ed. Ford RB. Seville, Spain, 1999, 88-94 参照)。
プラドフロキサシン(Pradofloxacin)およびその抗菌作用は、WO97/31001に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単独でまたは他の抗生物質もしくは化学療法剤と組み合わせて全身的に適用されて、口腔の細菌性障害を処置するのに適する活性化合物への要望が依然としてある。ここで、口腔の障害に典型的な嫌気性細菌に対し、可能な限り高い活性および可能な限り広い活性スペクトルが望ましい。好ましくは、このようにして、従来の組合せ治療を不要にでき、1つだけの活性化合物を用いる単剤治療で十分である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、口腔の細菌感染を全身的に処置するための医薬を製造するための、
a)8−シアノキノロン抗生物質、または、
b)ガレノキサシン(garenoxacin)、マルボフロキサシン(marbofloxacin)、イバフロキサシン(ibafloxacin)、ダノフロキサシン(danofloxacin)、ジフロキサシン(difloxacin)およびオルビフロキサシン(orbifloxacin)からなる群から選択されるキノロン抗生物質、
の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
8−シアノキノロンは、特に、式(I)
【化1】

式中、
Xは、水素、ハロゲン、C1−4−アルキル、C1−4−アルコキシ、NHを表し、
Yは、構造
【化2】

[式中、Rは、ヒドロキシル−またはメトキシ−置換されていることもある直鎖または分枝鎖のC1−4−アルキル、シクロプロピル、1個ないし3個の炭素原子を有するアシルを表し、
は、水素、メチル、フェニル、チエニルまたはピリジルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表す]
の基を表し、そして、
は、1個ないし3個の炭素原子を有するアルキル基、シクロプロピル、2−フルオロエチル、メトキシ、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニルまたはメチルアミノを表し、
は、水素または、メトキシ−または2−メトキシエトキシ−置換されていることもある1個ないし6個の炭素原子を有するアルキル、およびまた、シクロヘキシル、ベンジル、2−オキソプロピル、フェナシル、エトキシカルボニルメチル、ピバロイルオキシメチルを表し、
Aは、=C(CN)を表す、
のもの、並びにそれらの医薬的に許容し得る塩および水和物である。
【0009】
好ましいのは、式中、
Aが=C−CNを表し、
がハロゲン−置換されていることもあるC−アルキルまたはシクロプロピルを表し、
が、水素またはC1−4−アルキルを表し、
Yが、構造
【化3】

[式中、Rは、ヒドロキシル−置換されていることもある、直鎖または分枝鎖のC−アルキル、1個ないし4個の炭素原子を有するオキソアルキルを表し、
は、水素、メチルまたはフェニルを表し、
は、水素またはメチルを表し、
およびRは、水素を表す]
の基を表す、
式(I)の化合物並びにそれらの医薬的に許容し得る水和物および塩である。
【0010】
特に好ましいのは、式中、
Aが=C−CNを表し、
がシクロプロピルを表し、
が、水素、メチルまたはエチルを表し、
Yが構造
【化4】

[式中、Rは、メチルまたは、ヒドロキシル−置換されていることもあるエチルを表し、
は、水素またはメチルを表し、
は、水素またはメチルを表し、
およびRは、水素を表す]
の基を表す、
式(I)の化合物並びにそれらの医薬的に許容し得る塩および水和物である。
【0011】
言及し得る特に好ましい8−シアノキノロンは、プラドフロキサシンである;この化合物は、系統名8−シアノ−1−シクロプロピル−7−((1S,6S)−2,8−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン−8−イル)−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−キノリンカルボン酸および式
【化5】

を有する。
【0012】
本発明のために、プラドフロキサシンをその医薬的に許容し得るプロドラッグおよび塩の形態で使用できる。また包含されるのは、これらの化合物の水和物および他の溶媒和物である。適するプロドラッグおよび塩は、例えばWO97/31001に記載されている;この文書を、出典明示により本明細書の一部とする。プラドフロキサシンが、特に口腔の感染において役割を果たす微生物に対して、広い抗菌活性のスペクトルを有することが見出された。従って、プラドフロキサシンは、口腔の細菌性障害の単剤治療に特に適する。
【0013】
8−シアノキノロン類に加えて、他のキノロン類、即ち、マルボフロキサシン(例えば、EPA−259804参照)、イバフロキサシン(例えば、EP−A−109284参照)、ダノフロキサシン(例えば、EPA−215650参照)、ジフロキサシン(例えば、EP−A−131839参照)およびオルビフロキサシン(例えば、EP−A−242789参照)も、本発明による使用に適する。ガレノキサシン(BMS−284756)、即ち、6−デフルオロキノロンにも言及し得る。本発明のために、これらの化合物も、それらの塩、水和物およびプロドラッグの形態で使用できる。
【0014】
適する塩は、医薬的に許容し得る酸付加塩および塩基性塩である。
医薬的に許容し得る塩は、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、エンボン酸(embonic acid)、グルタミン酸またはアスパラギン酸の塩を意味すると理解されるものである。本発明による化合物を酸性または塩基性イオン交換剤に結合させることもさらに可能である。言及し得る医薬的に許容し得る塩基性塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばマグネシウムまたはカルシウム塩;亜鉛塩、銀塩およびグアニジン塩である。
【0015】
水和物は、フルオロキノロン類自体の水和物およびそれらの塩の水和物の両方を含むと理解される。
本発明によると、言及されるキノロン類のエナンチオマーおよびエナンチオマー混合物の両方を使用することが可能である。
【0016】
キノロン類の製造は既知である(例えば、プラドフロキサシンの製造について、WO97/31001参照)か、または、既知方法と同様に実行できる。
【0017】
細菌に起因する口腔の障害は、特に、歯肉炎、歯周炎、口内炎および口内の膿瘍(oral abscesses)である。
【0018】
これらの障害で役割を果たす細菌は、特に、嫌気性細菌、特に、ポルフィロモナス属(Porphyromonas spp.)、プレボテラ属(Prevotella spp.)、バクテロイデス属(Bacteroides spp.)、アクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium spp.)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus spp.)、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、カプノサイトファーガ・オクラセア(Capnocytophaga ochracea)およびカンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)である。本発明によると、問題の嫌気性細菌に対する良好な活性が達成される。
【0019】
上述のキノロンを使用して、ヒトおよび動物(生産的動物、動物園の動物、研究室の動物、実験動物および愛玩動物)の口腔の細菌性障害を全身的投与により処置することが可能である。
【0020】
生産的家畜には、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、スイギュウ、ロバ、ウサギ、ダマジカ、トナカイ、毛皮動物(例えば、ミンク、チンチラ、アライグマ)などの哺乳動物;例えば、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、アヒル、ハト、ダチョウ、家庭および動物園で飼われる鳥類の種などの鳥類が含まれる。養殖魚および観賞魚も含まれる。
【0021】
研究室の動物および実験動物には、マウス、ラット、モルモット、ゴールデンハムスター、イヌおよびネコが含まれる。
愛玩動物には、イヌおよびネコが含まれる。
哺乳動物、特にイヌまたはネコを処置するのが好ましい。
【0022】
投与は、予防的および治療的に実行できる。
言及されるキノロン類の広い活性スペクトル−嫌気性細菌に対しても−のために、それらは、単剤治療に特に適する。
活性化合物は直接または適する製剤の形態で、経腸的または非経腸的に使用される。
【0023】
活性化合物は、経腸で、例えば経口で、粉末剤、坐剤、錠剤、カプセル剤、ペースト剤、飲料剤(drink)、顆粒剤、水薬(drench)、巨丸剤、薬用飼料または飲料水の形態で投与される。非経腸投与は、例えば、注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内)の形態で、またはインプラントにより実行される。
【0024】
適する製剤は以下のものである:
注射用液剤、経口用液剤、希釈後に経口投与するための濃縮剤(concentrate)などの液剤;
経口投与および注射用の乳剤および懸濁剤;半固体製剤;
活性化合物が水中油または油中水乳液基材に組み込まれている製剤;
粉末剤、プレミックス(premix)または濃縮剤、顆粒剤、ペレット剤、錠剤、巨丸剤、カプセル剤などの固体製剤;エアゾル剤および吸入剤、活性化合物を含有する成形物(shaped article)。
【0025】
注射用液剤は、静脈内、筋肉内または皮下に投与される。
注射用液剤は、活性化合物を適する溶媒に溶解し、適するならば、可溶化剤、酸、塩基、緩衝塩、抗酸化剤および防腐剤などの添加物を添加することにより製造する。液剤は、濾過滅菌され、吸引(drawn off)される。
【0026】
以下のものが溶媒として言及され得る:水などの生理的に許容し得る溶媒;エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、グリセロールなどのアルコール類;炭化水素、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、N−メチルピロリドン、およびこれらの混合物。
適するならば、活性化合物を、注射に適する生理的に許容し得る植物油または合成油に溶解することもできる。
【0027】
可溶化剤として以下のものに言及し得る:主溶媒への活性化合物の溶解を高めるか、またはその沈殿を防止する溶媒。例は、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチル化ヒマシ油、ポリオキシエチル化ソルビタンエステル類である。
【0028】
防腐剤は、ベンジルアルコール、トリクロロブタノール、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、n−ブタノールである。
【0029】
経口用液剤は、直接投与される。濃縮剤は、あらかじめ投与濃度に希釈された後に経口投与される。経口用液剤および濃縮剤は、注射用液剤について上記した通りに製造され、滅菌条件下の作業を省くことが可能である。
【0030】
製造中に増粘剤(thickener)を添加することが有利であり得る。増粘剤は、ベントナイト、コロイド状ケイ酸、モノステアリン酸アルミニウムなどの無機増粘剤、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール類およびそれらのコポリマー、アクリル酸塩およびメタクリル酸塩などの有機増粘剤である。
【0031】
言及し得る溶媒は、水、アルカノール類、グリコール類、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、グリセロール、芳香族性アルコール類、例えばベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジル、エーテル類、例えばアルキレングリコールアルキルエーテル類、例えばジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、芳香族性および/または脂肪族炭化水素類、植物または合成油、DMF、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、2−ジメチル−4−オキシメチレン−1,3−ジオキソランである。
【0032】
着色料は、動物に使用するために発売され、溶解または懸濁できる全ての着色料である。
抗酸化剤は、亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロールである。
【0033】
乳剤は、経口で、または注射として投与できる。
乳剤は、油中水タイプまたは水中油タイプのいずれかである。
それらは、活性化合物を疎水または親水相のいずれかに溶解し、適する乳化剤および、適するならば、着色料、吸収増強剤、防腐剤、抗酸化剤、光安定化剤、粘性増加物質などの他の補助剤を利用して、他方の相の溶媒と均質化することにより製造する。
【0034】
疎水相(油)として、以下のものに言及し得る:パラフィン油、シリコン油、天然植物油、例えばゴマ油、アーモンド油、ヒマシ油、合成トリグリセリド、例えばカプリル/カプリン酸ビグリセリド(biglyceride)、鎖長C8−12の植物性脂肪酸または他の特別に選択される天然脂肪酸とのトリグリセリド混合物、ヒドロキシル基も含有し得る飽和または不飽和脂肪酸の部分的グリセリド混合物、およびC/C10−脂肪酸のモノ−およびジグリセリド。
脂肪酸エステル、例えばステアリン酸エチル、アジピン酸ジ−n−ブチリル、ラウリン酸ヘキシル、ペラルゴン酸ジプロピレングリコール、中程度の鎖長の分枝鎖脂肪酸と鎖長C16−C18の飽和脂肪アルコールとのエステル、ミリスチル酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鎖長C12−C18の飽和脂肪アルコールのカプリル/カプリン酸エステル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、オレイン酸エチル、乳酸エチル、蝋様の脂肪酸エステル、例えばフタル酸ジブチル、アジピン酸ジイソプロピル、後者などに関するエステル混合物、脂肪アルコール、例えばイソトリデシルアルコール、2−オクチルドデカノール、セチルステアリルアルコール、オレイルアルコール。
例えばオレイン酸などの脂肪酸およびその混合物。
【0035】
親水相として以下のものに言及し得る:
水、アルコール類、例えばプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールおよびそれらの混合物。
【0036】
乳化剤として以下のものに言及し得る:
非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチル化ヒマシ油、ポリオキシエチル化ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、グリセロールモノステアレート、ポリオキシエチルステアレート、アルキルフェノールポリグリコールエーテル類;
両性界面活性剤、例えばジナトリウムN−ラウリル−β−イミノジプロピオネートまたはレシチン;
陰イオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、脂肪アルコールエーテル硫酸塩、モノ/ジアルキルポリグリコールエーテルオルトリン酸エステル類のモノエタノールアミン塩;
陽イオン性界面活性剤、例えばセチルトリメチル塩化アンモニウム。
【0037】
他の補助剤として以下のものに言及し得る:
粘性増加物質および乳剤を安定化する物質、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロースおよび他のセルロースおよびスターチ誘導体、ポリアクリル酸塩、アルギン酸塩、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマー、ポリエチレングリコール類、蝋、コロイド状ケイ酸または上述の物質の混合物。
【0038】
懸濁剤は、経口または注射の形態で投与できる。それらは、活性化合物を担体液体中に、適するならば湿潤剤、着色料、防腐剤、抗酸化剤、光安定化剤などのさらなる補助剤を添加して、懸濁することにより製造する。活性化合物を充填したイオン交換剤の懸濁剤もまた適する。
言及し得る担体液体は、全ての均質な溶媒および溶媒混合物である。
言及し得る湿潤剤(分散剤)は、さらに上記で示した界面活性剤である。
言及し得るさらなる補助剤は、さらに上記で示したものである。
【0039】
半固体製剤は、経口投与できる。それらは、粘性が高いことのみで上記の懸濁剤および乳剤と異なっている。
【0040】
固体製剤を製造するために、活性化合物を適する担体と、適するならば補助剤を添加して混合し、混合物を所望の通りに製剤化する。
【0041】
言及し得る担体は、全ての生理的に許容し得る固体の不活性物質である。そのようなものとして適するのは、無機および有機物質である。そのような無機物質の例は、塩化ナトリウム、炭酸塩、例えば炭酸カルシウム、重炭酸塩、酸化アルミニウム、ケイ酸、クレイ、沈殿またはコロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩である。
【0042】
有機物質の例は、糖類、セルロース、食物および動物飼料、例えば乾燥乳、動物の粉餌、粗挽きの穀物粉を含む穀物粉、スターチである。
補助剤は、既にさらに上記した防腐剤、抗酸化剤、着色料である。
他の適する補助剤は、潤滑剤および滑沢剤(gliding agent)、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ベントナイト、崩壊剤、例えばデンプンまたはクロスリンクしたポリビニルピロリドン、結合剤、例えばスターチゼラチンまたは直鎖ポリビニルピロリドン、およびまた乾燥結合剤、例えば微結晶セルロースである。
【0043】
本発明に従い使用されるキノロン類は、他の活性化合物と組み合わせて、即ち、一製剤中に一緒に、または、適するならば異なる時間にも投与できる異なる製剤において、用いることができる。
【0044】
以下のものとの組合せが特に強調され得る:
他の抗生物質/化学療法剤、例えばベータ−ラクタム類(例えばアモキシシリン、適するならばクラブラン酸と組み合わせて)、セファロスポリン類(例えばセフォペラゾン);マクロライド系抗生物質(例えばエリスロマイシン);アミノグリコシド類(例えばゲンタマイシン);テトラサイクリン類(例えばドキシサイクリン)およびスルホンアミド。
経口殺菌剤(例えばクロルヘキシジン)
コルチコイド類(SAID=ステロイド性抗炎症薬)、例えばプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、フルメタゾン。
非ステロイド性消炎剤(NSAID)、例えばフェニルブタゾン、ナプロキセン、ケトプロフェン、カルプロフェン(carprofen)、ベダプロフェン(vedaprofen)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、フルニキシン(flunixin)、トルフェナム酸、メロキシカム。
【0045】
上記に列挙した他の抗生物質/化学療法剤は、連続的治療において異なる時間に投与される組合せにも特に適する。
【0046】
すぐに使用できる(ready-to-use)製剤は、各場合で10ppmないし20重量パーセント、好ましくは0.1ないし10重量パーセントの濃度で活性化合物を含む。
【0047】
投与に先立ち希釈される製剤は、各場合で0.5ないし90重量パーセント、好ましくは1ないし50重量パーセントの濃度で活性化合物を含む。
【0048】
一般に、1日に体重1kgにつき約0.5ないし約50mg、好ましくは1ないし20mgの量の活性化合物を投与するのが、効果的な結果を達成するために有利であると明らかになった。
【0049】
他の活性化合物との混合物では、本発明に従い使用されるキノロン抗生物質は、1:0.1−10ないし1:1−10の比で存在する。1:5の比が好ましい。
【0050】
活性化合物は、動物の飼料または飲料水と一緒に投与することもできる。
飼料および食糧は、0.01ないし250ppm、好ましくは0.5ないし100ppmの活性化合物を、適する食用物質との組合せ中に含む。
そのような飼料および食糧は、治療目的および予防目的の両方で使用できる。
【0051】
そのような飼料または食糧は、0.5ないし30重量%、好ましくは1ないし20重量%の活性化合物を食用有機または無機担体との混合物中に含む濃縮物またはプレミックスを、常套の飼料と混合することにより製造される。食用担体は、例えば、好ましくは塵の形成を防止するためにトウモロコシ油またはダイズ油などの少量の食用油を含有する、トウモロコシ粉またはトウモロコシおよびダイズ粉または無機塩である。次いで、得られるプレミックスを、動物に与える前に全部の飼料に添加し得る。
【実施例】
【0052】
実施例
実施例A:インビトロの研究結果
標準的なメトロニダゾールと比較した、イヌおよびネコから単離された嫌気性細菌のMIC値の幾何平均(幾何平均MIC;GMIC)(μg/ml表記)。2回のインビトロ研究の結果:
【表1】

【0053】
実施例B:適応症の歯周炎についての臨床研究
16匹のメスのビーグルを使用して研究を実行した。プラドフロキサシンを7日間にわたり、1日1回3mg/kgの用量で投与した。
プラドフロキサシンによる処置は、歯周ポケットの深さ(付着の減損)の有意な減少(p=0.02)をもたらした。
プラドフロキサシン処置の終了後、歯周ポケットの嫌気性細菌の総数は、有意に減少していた(p<0.0001)。これは、処置の3週間後、28日目でも同じであった(p=0.0007)。
【0054】
実施例C:インビトロの研究
この研究では、各場合で歯周炎原因菌の2系統を単離し、それらのプラドフロキサシン感受性をインビトロで判定した(μg/mlのMIC)。結果は以下の通りであった:
アクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンス:MIC<0.25(両系統)
エイケネラ・コローデンス:MIC<0.25(両系統)
カプノサイトファーガ・オクラセア:MIC<0.25(両系統)
ポルフィロモナス・ジンジバリス(gingivalis):MIC<0.25(両系統)
ポルフィロモナス・カノリス(canoris):MIC<0.25(両系統)
ポルフィロモナス・カンジンジバリス(cangingivalis):MIC=0.5およびMIC=1
ポルフィロモナス・カンサルシ(cansulci):MIC<0.25(両系統)
プレボテラ・インターメディア(intermedia):MIC<0.25(両系統)
フゾバクテリウム・ヌクレアツム(nucleatum):MIC=0.5およびMIC=1
カンピロバクター・レクタス:MIC<0.25(両系統)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔の細菌感染を全身的に処置するための医薬を製造するための、
a)8−シアノキノロン抗生物質、または、
b)ガレノキサシン、マルボフロキサシン、イバフロキサシン、ダノフロキサシン、ジフロキサシンおよびオルビフロキサシンからなる群から選択されるキノロン抗生物質、
の使用。
【請求項2】
式(I)
【化1】

式中、
Xは、水素、ハロゲン、C1−4−アルキル、C1−4−アルコキシ、NHを表し、
Yは、構造
【化2】

[式中、Rは、ヒドロキシル−またはメトキシ−置換されていることもある直鎖または分枝鎖のC1−4−アルキル、シクロプロピル、1個ないし3個の炭素原子を有するアシルを表し、
は、水素、メチル、フェニル、チエニルまたはピリジルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表し、
は、水素またはC1−4−アルキルを表す]
の基を表し、そして、
は、1個ないし3個の炭素原子を有するアルキル基、シクロプロピル、2−フルオロエチル、メトキシ、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニルまたはメチルアミノを表し、
は、水素または、メトキシ−もしくは2−メトキシエトキシ−置換されていることもある1個ないし6個の炭素原子を有するアルキル、およびまた、シクロヘキシル、ベンジル、2−オキソプロピル、フェナシル、エトキシカルボニルメチル、ピバロイルオキシメチルを表し、
Aは、=C(CN)を表す、
の8−シアノキノロン抗生物質並びにそれらの医薬的に許容し得る塩および水和物の、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
8−シアノキノロン抗生物質がプラドフロキサシンである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
歯肉炎、口内炎、歯周炎および/または口内の膿瘍を処置するための、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
障害が、ポルフィロモナス属、プレボテラ属、バクテロイデス属、アクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンス、フゾバクテリウム属、ペプトストレプトコッカス属、エイケネラ・コローデンス、カプノサイトファーガ・オクラセア、カンピロバクター・レクタスからなる群の細菌に主に起因する、請求項1に記載の使用。

【公開番号】特開2012−211170(P2012−211170A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−144576(P2012−144576)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2006−522943(P2006−522943)の分割
【原出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(508270727)バイエル・アニマル・ヘルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】BAYER ANIMAL HEALTH GMBH
【Fターム(参考)】