説明

キメラ溶解性ハイパーIL−11およびその使用

本発明は、2つの可溶性成分、可溶性インターロイキン11受容体(sIL-11 R)およびインターロイキン11(IL-11)、をそれらの自然配列を使用して融合して構築された、H11と命名された新規のデザイナーサイトカインに関し、そして増殖性疾患、細胞障害、放射線障害、IL-11依存炎症性疾患、IL-11依存変性疾患およびIL-11依存または媒介軟部組織異常からなる群から選択された疾患の治療または予防のための医薬品の製造のための、その使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの可溶性成分、可溶性インターロイキン11受容体(sIL-11 R)およびインターロイキン11(IL-11)、をそれらの自然配列を使用して融合して構築された、H11と命名された新規のデザイナーサイトカインに関し、増殖性疾患、細胞障害、放射線障害、IL-11依存炎症性疾患、IL-11依存変性疾患およびIL-11依存もしくは媒介軟部組織異常からなる群から選択された疾患の治療または予防のための医薬品の製造のための、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IL-11は機能的に多面性のサイトカインである(Duほかの概説、1997(非特許文献1))。もともとこれは、IL-6依存マウス形質細胞腫細胞株の増殖を促進する分子として1990年に同定された(Paulほか、1990(非特許文献2))。後に、IL-11は造血系に多重効果を発揮するだけでなく、肝臓、消化管、肺、心臓、中枢神経系、骨、関節および免疫系の多数の異なる細胞型にも作用することが実証された(Duほかの概説、1997(非特許文献1)およびSchwertschlagほか、1999(非特許文献3))。IL-11はほかの増殖因子と相乗的に作用して、インビボおよびインビトロのいずれにおいても造血の種々の段階を活性化し、さらに前駆細胞、巨核球形成および血小板新生、赤血球生成、骨髄造血への影響も含まれる。IL-11は造血微細環境にも影響する(Duほか、1997(非特許文献1))。それには造血活性があるため、IL-11は化学療法誘導および骨髄移植誘導の重篤な血小板減少症でテストされてきた。動物モデルにおける実験で、IL-11は血小板増加を促進すること(Hawleyほか、1996(非特許文献4))、骨髄移植後の末梢血の好中球および血小板の回復を増進することが明らかにされた(Duほか、1993(非特許文献5))。がん患者における第I相および第II相臨床試験で、IL-11が多分化造血回復を促進し、血小板減少症を緩和する可能性のあることが実証された(Gordonほか、1996(非特許文献6): Teplerほか、1996(非特許文献7): Isaacsほか、1997(非特許文献8))。IL-11は、米国のFDAによる化学療法誘導の血小板減少症の治療の承認を既に受けている。IL-11は、その核因子kB(NF-kB)の核転座を阻害する能力のあることから、抗炎症活性を示すことが明らかになっており(Trepicchioほか、1997(非特許文献9))、これにより腫瘍壊死因子(TNF)などのマクロファージで分泌された炎症促進サイトカイン, IL-1β、IL-6、IL-12の産生を低減する(Trepicchioほか、1996(非特許文献10): Lengほか、1997(非特許文献11): Redlichほか、1996(非特許文献12))。動物モデルおよび臨床試験における多数の研究で、炎症性大腸炎(Petersonほか、1998(非特許文献13))、放射線誘発肺損傷(Redlichほか、1996(非特許文献12))、敗血症(Changほか、1996(非特許文献14))、関節リウマチ(Anguitaほか、1999(非特許文献15): Walmsleyほか、1998(非特許文献16))、炎症性肝疾患(Bozzaほか、1999(非特許文献17))、粘膜炎(Sonisほか、1997(非特許文献18))および乾癬(Trepicchioほか、1999(非特許文献19))を含む炎症性疾患の治療におけるIL-11の有効性を実証した。したがってIL-11は種々の炎症性疾患における可能性のある治療薬と考えられる。上記のように、IL-11はさらにリンパ造血系外で複数の生物活性を実証している。これらには肝細胞における急性期タンパク質合成の誘導(Baummanほか、1991(非特許文献20))、含脂肪細胞におけるリポタンパクリパーゼ活性の抑制(Ohsumiほか、1994(非特許文献21))、不死化海馬神経における分化の誘導(Mehlerほか、1993(非特許文22))、破骨細胞の発達への寄与(Girasoleほか、1994(非特許文献23))、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤の産生の促進(Maierほか、1993(非特許文献24))が含まれる。さらにIL-11R欠失マウスは、着床に対する子宮の反応に不具合があるため不妊であることから、IL-11は女性の受胎能力において重要な役割を果たしてしていることが明らかになった(Robbほか、1998(非特許文献25))。排卵周期中のヒト子宮内膜におけるIL-11およびIL-11Rの発現は、IL-11の活性がヒト女性の受胎能力における主要因子となり得ることを示唆している(Dimitriadisほか、2000(非特許文献26): Karpovichほか2003(非特許文献27))。
【0003】
IL-11は、IL-6、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン1(CT-1)とともに造血サイトカイン系に属し(IL-6型またはgp130サイトカインと命名)、これらは構造類似性ならびに共通の受容体サブユニット(gp130)を共有している(Bazanほか、1990(非特許文献28))。IL-6型サイトカインのそれぞれは特定の(固有の)受容体複合体を必要としているが、gp130の少なくとも一つの分子が常に関与している。初めリガンド(IL-6, IL-11, CNTF)はそのアルファ−非シグナル伝達受容体サブユニットに特異的に結合し、次いでシグナル伝達受容体鎖を漸加する。IL-6およびIL-11はシグナルを変換するのにgp130ホモ二量体を使用し、一方LIF、CNTF、CT-1はヘテロ二量体gp130/LIFRを利用している。OSMはgp130/OSMRまたはgp130/LIFRヘテロ二量体のいずれかを漸加する(Heinrichほかの概説2003(非特許文献29): Bravoほか、2000(非特許文献30))。
【0004】
IL-6型サイトカインの三次構造は、近年活発に調査された。LIF(Robinsonほか、1994(非特許文献31))、CNTF(McDonaldほか、1995(非特許文献32))、IL-6(Somersほか、1997(非特許文献33))およびOSM(Dellerほか、2000(非特許文献34))の結晶構造が決定された。これらの研究によってそれぞれのリガンドは、長さにおいてアミノ酸15から22個の範囲にある4つの詰め込まれたα‐ヘリックス(A、B、CおよびDと命名)からなる、長連鎖4-へリックスバンドル・トポロジーを示すことが明らかになった。そのヘリックスは、ポリペプチドループによって上−上−下−下の配置でつながれている。A‐BループとC‐Dループは、平行なヘリックスを繋いでいるので相対的に長く、一方B‐Cループは1対の逆平行のヘリックスを繋いでいるので短くなっている。IL-6型サイトカインの詳細な構造解析と突然変異誘発の研究によって、3つの受容体結合部位(I、II、IIIと命名)が明らかになり、これらはgp130系に保存されるように思われる(Bravoほかの概説、2000(非特許文献29))。リガンドがその非シグナル伝達受容体に結合することを可能にする部位Iは、A‐BループのC‐末端部およびDヘリックスのC-末端残基からのアミノ酸で形成される。部位IIはIL-6型サイトカインのすべてのメンバーに対する全共通gp130結合部位と思われ、ヘリックスAおよびC上の露出した残基を含んでいる。部位IIIは、ヘリックスDのN-末端半等分部分、A‐BループのN-末端部およびC‐Dループの端部のアミノ酸残基でできている。この部位は、リガンドの一致性に応じて、第2のシグナル伝達受容体、gp130、LIFRまたはOSMR、が常に占有している。
【0005】
IL-6型サイトカインシグナル伝達に関連した受容体は、タイプIの膜タンパク質に属する。これらの受容体は、細胞外N-末端および膜貫通ドメインを1つ有している(CNTFRは例外で、脂質アンカーによって膜に結合されている(Davisほか、1991(非特許文献35)))。それらの細胞外領域における共通構造モチーフのため、これら受容体はサイトカイン受容体クラスI系に分類される(Bazanほか、1990(非特許文献28))。この系は、D2およびD3と命名された2つのフィブロネクチンIII型様ドメイン(FNIII)からなる、少なくとも1つのサイトカイン結合相同ドメイン(CHD)の存在によって特徴付けられる。CHDは約200個のアミノ酸で構成されており、N-末端ドメインにおける4つの位置に保存されたシステイン残基およびC-末端ドメインにおける特徴的な保存されたTrp-Ser-X-Trp-Ser(WSXWS)モチーフを有している。さらに各受容体サブユニットはIg様ドメインを包含しており、これは膜近位CHDのN-末端にある。IL-6型受容体は、αサブユニットとβサブユニットの2群に分けられる。(IL-6、IL-11およびCNTFのための)受容体αはシグナル変換に関与していない。シグナル変換受容体鎖であるサブユニットβは、αサブユニットよりかなり大きい細胞質部分を包含しており、3つの膜近位FNIIIドメインを有しており、これらが膜貫通受容体二量体の安定化および/または配向においてある役割を果たしている可能性がある(Bravoほかの概説、2000(非特許文献30): Heinrich ほか、2003(非特許文献29))。膜結合型のIL-6型受容体サブユニットのほかに、それらの可溶形が生体液で発見された(Marzほかの概説、1999(非特許文献36))。これらは膜結合型受容体の制限を受けたタンパク質分解(脱落)またはディファレンシャルスプライスされたmRNAからの翻訳のいずれかで形成される。
【0006】
Czuprynほかが提案した構造モデルによれば、IL-11は4つのヘリックス束トポロジーを有している(Czuprynほか、1995(非特許文献37))。広範な構造解析および突然変異誘発研究で、IL-6またはCNTFの部位I、IIおよびIIIに場所が相似している3つの受容体結合部位が決定された。これらの部位はマウスならびにヒトIL-11において特徴付けられた(それぞれBartonほか、1999(非特許文献38): Tackenほか、1999(非特許文献39))。部位IはIL-11のαIL-11 Rへの結合を可能にし、一方部位IIおよびIIIは2つの異なるgp130分子への結合を仲介する。カルボキシ末端側欠失の突然変異誘発研究によって、最後の4つのアミノ酸を除去すると組み替えヒトIL-11(rhIL-11)の活性が25倍低下するが、C-末端残基を8つ以上除去すると、その活性が完全に失われることが明らかにされた(Czuprynほか、1995(非特許文献37))。リガンド−受容体の相互作用部位の詳細研究で、新規の強力なIL-11抑制因子ならびに作用物質の作出が可能になった(それぞれUnderhill-Dayほか、2003(非特許文献40): Harmegniesほか、2003(非特許文献41))。上記の分子は1つまたは2つのアミノ酸をほかのアミノ酸で置換することによって作出され、これはリガンド/受容体の形成の抑制と増大にそれぞれ至った。
【0007】
IL-11 R αサブユニットがマウスとヒトにおいて記述された(それぞれHiltonほか、1994(非特許文献42); Cherelほか、1995(非特許文献43):およびNandrukarほか、1996(非特許文献44))。ヒトIL-11 R α−鎖のイソ型が2つ同定された(Cherelほか、1996(非特許文献45))。これらはその細胞質ドメインにおいて異なっているが、一方細胞外および膜貫通部分は同一である。最初のイソ型(IL-11 R α1)は短い細胞質ドメインを有しており、ほか(IL-11 α2)はこの領域を欠いている。gp130でトランスフェクトされたBa/F3細胞で試験すると、いずれのイソ型も類似の機能と特性を発揮した(Lebeauほか、1997(非特許文献46))。αIL-11 Rの細胞外部分は構造的には、Ig様ドメイン(D1)、および2つのFNIIIドメイン(D2とD3)からなる1つのCHDの3つのドメインに分けられる(Cherelほか、1995(非特許文献43))。これまでIL-11 RのCHDについては構造の情報が得られなかったので、リガンド結合に関与するIL-11 R α-鎖におけるアミノ酸残基についてはほとんど判明していない。Schleinkoferほかの最近の研究で、D3ドメインの結合能力が全長受容体のそれと同程度に高いので、D3ドメインがリガンドの相互作用に主に関与していることが明らかになった(Schleinkoferほか、2001(非特許文献47))。しかし、テンプレートとして、ヒト成長ホルモンとその受容体複合体のX-線構造(de Vosほか、1992(非特許文献48))ならびにヒトCNTF構造(McDonaldほか、1995(非特許文献32)に基づいて作成されたIL-11/IL-11 R複合体のそれらの分子モデルは、IL-11の部位Iに結合するIL-11 Rの領域は、領域D2とD3のドメイン内にあることを明らかにした。D3ドメインはリガンド結合には十分であるがgp130との関連には十分でないとする(Ozbekほか、1998(非特許文献48))このモデルならびにIL-6/IL-6R相互作用の類似に基づいて、SchleinkeferグループはD2ドメインが以下に関与しているように思えると仮定した:(i) ドメイン間の安定、(ii) 供給特異性、または(iii) gp130サブユニットとのインタフェースの形成、または(iv) gp130との相互作用に必要とされるリガンドの部位IIIにおいて立体構造変化を誘導することが必要である(Schleinkoferほか、2001(非特許文献47))。IL-11 RのIg様ドメインの役割は定義されていないが、IL-6 Rの場合には、機能的受容体のアセンブリーには必要ないが(Yawataほか、1993(非特許文献48))、それは細胞内移動の間受容体を安定化する(Vollmerほか、1999(非特許文献49))。
【0008】
高親和性のIL-11受容体複合体の化学量論が、2つのIL-11分子、2つのIL-11 R α鎖およびgp130分子のホモ二量体からなる六量体複合体であるとインビトロで決定された(Bartonほか、2000(非特許文献50))。IL-11は部位Iを経て、gp130のCHDは部位IIを経て、また第2のgp130のIg様ドメインは部位IIIを経て、αIL-11Rに結合すると予測された。しかしIL-11リガンド/受容体複合体の化学量論は未解決のままである。Grotzingerほかは、四量体の複合体が形成され、そこではIL-11が特定のα受容体のCHDに最初に結合すること、そしてgp130の2つの分子を持ったサイトカインの部位IIおよびIIIを経て四量体が次にアセンブリーすることを示唆した(Grotzingerほか、1997(非特許文献51))。IL-6の場合には、四量体はさらなるIL-6/IL-6 R複合体に結合可能で、六量体ではあるが非シグナル伝達の複合体を形成する(Grotzingerほか、1999(非特許文献52))。Neddermannほかは、2つのIL-11、2つのIL-11 Rおよび1つのgp130分子で構成されたインビトロの五量体複合体の形成を提案した。しかし彼らは、六量体の受容体複合体の形成に貢献する、同定されていない別のβ鎖があると示唆した(Neddermannほか、1996(非特許文献53))。最近Harmegniesほかは、このデータを立証した(Harmegniesほか、2003(非特許文献41))。彼らは部位Iにおける疎水性の増大のあるIL-11突然変異タンパク質を作出し、これは強力なIL-11作用物質であることが証明され、多様性のある生物活性が明らかになった。野生型IL-11と比較して、突然変異させたIL-11では、活性の評価で使用する細胞モデルに依存してアゴニスト特性が増大または低下したりする。一方、IL-11抑制因子での研究でBartonほかによって提案された六量体複合体が立証された(Underhill-Dayほか、2003(非特許文献40))。
【0009】
IL-11 R α鎖(sIL-11R)の可溶形の存在することが仮定されたが、これまで体液中では確認されていない。その存在はIL-11Rの可溶形をコード化する可能性のある転写物の同定に基づいている(Robbほか、1996(非特許文献54))。組み換えsIL-11RはインビトロでIL-11作用物質として作用する(Baumannほか、1996(非特許文献55): Neddermannほか、1996(非特許文献53): Karowほか、1996(非特許文献56): Curtisほか、1997(非特許文献57))。さらに、sIL-11 Rは通常IL-11に反応する細胞でIL-11の効果を増強したばかりでなく、IL-11のみの存在下でgp130分子を発現する細胞におけるシグナル変換を仲介した(Baumannほか、1996(非特許文献55): Karowほか、1996(非特許文献56))。しかしsIL-11 Rを使用した生物学的反応を仲介するのに必要なIL-11の濃度は、膜受容体を使用する場合より10〜20倍以上高くなければならなかった(Curtisほか、1997(非特許文献57))。gp130は人体のすべての細胞に存在するが、IL-11 Rの発現はある細胞型に限定されているので、sIL-11 Rの使用はIL-11の生物活性の範囲を有意に拡大する。さらに、IL-11 Rおよびgp130の膜結合形態を発現している細胞でテストすると、sIL-11 RがIL-11抑制因子として作用可能であることが観察された(Curtisほか、1997(非特許文献57))。観察された拮抗作用は、組み換えsIL-11 RとIL-11に対する膜貫通IL-11 R間の競争に起因し、および/またはgp130の分子数に依存するものであった。しかしこれらの所見は、sIL-11 Rの生理学的な役割がsIL-6Rよりずっと複雑であることおよびsIL-6 Rに対して得られた結果がsIL-11 Rにそのまま適用できないことを示唆している。
【0010】
一部の分子薬剤の潜在的な生物活性を増大し修飾するために、自然に存在する2つの可溶性成分を結合するアイデアが仮定された。生物活性をサポートするのにより低い有効量で、その融合タンパク質がより安定していることが期待され、かつ必要とされた。このような組み換え融合タンパク質は既に記述されている。IL-12(p35とp40)の別途コードされたサブユニットがポリペプチドリンカーで連結された(Lieschkeほか、1997(非特許文献58))。ハイパーIL-6は新規のデザイナー薬剤のもう一つの例で、ポリペプチドリンカーを経てIL-6に連結されたIL-6 R α鎖のD2ドメインおよびD3ドメインからなる(Fischerほか、1997(非特許文献59)、WO 97/32891(特許文献1))。IL-6の場合、膜IL-6 Rを欠く細胞の刺激に必要なIL-6およびsIL-6 Rの有効濃度は非常に高いことが観察された(Rose-Johnほか、1990(非特許文献60))。さらにIL-6/sIL-6 R複合体の平均半減期は、IL-6/sIL-6 R/gp130複合体をアセンブルするのに必要な時間より短いかもしれない(Wellsほか、1996(非特許文献61))。IL-6/sIL-6 R複合体の安定性は、融合タンパク質(ハイパーIL-6)を作出するために両成分を結合することによって強化された(WO 97/32891(特許文献1))。ハイパーIL-6は、そのシグナル変換受容体サブユニットに直接結合し、IL-6活性を強化することができる。ハイパーIL-6は完全活性の融合タンパク質で、可溶IL-6とsIL-6 R分子の組み合わせと比較して、10〜1000倍低用量で応答を仲介する(Fischerほか、1997(非特許文献59))。同様に、IL-11/R-FPと命名されたIL-6型ファミリーに別の超作用物質がデザインされた(Pflanzほか1999(非特許文献62))。IL-11/R-FPはIL-11 RのD2ドメインとD3ドメイン(L/109〜G/318位)を、21アミノ酸リンカーを使用してIL-11(P/29〜L/199位)で共有結合的に結合して作出し、IL-11とsIL-11 Rの組み合わせより50倍高い活性をインビトロで実証した。しかしこの構成は、ヒトIL-11 RおよびIL-11の切断セグメンツで構成されており、したがってそれぞれの受容体およびサイトカインの自然に存在する部分に欠ける。さらに、使用した人工のリンカーは、ヒト患者の治療に使用した場合、IL-11/R-FPの免疫原性に貢献する、自然に発生する配列ではない。
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【発明の開示】
【0011】
このように本発明の1つの目的は、自然に存在する成分で構成され、ヒト宿主において免疫原性をほとんどまたはまったく誘発することがなく、従来技術のIL-11/R-FPより優れた抗腫瘍反応をインビボで生じることのできる、新規のデザイナーサイトカインハイパーIL-11(H11)の構築である。
【0012】
本発明の第2の目的は、増殖性疾患、細胞障害、放射線障害、IL-11依存炎症性疾患、IL-11依存変性疾患およびIL-11依存もしくは媒介軟部組織異常の治療および/または予防のためのH11の使用である。
【0013】
本発明の第3の目的は、がん細胞ならびにほかの哺乳類細胞の修飾のためのH11を考慮した、ベクター系、特にレトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノウイルスベクターの構築と、かかる修飾細胞、たとえばがん、特にメラノーマ、腎がんもしくは膵がんの治療および/または予防のための遺伝子修飾腫瘍ワクチン(GMTV)の使用である。
【0014】
本発明のさらなる目的は、バキュロウイルス発現システムを含む、種々の発現システムにおける融合タンパク質H11の産生および増殖性疾患、細胞障害、放射線障害、IL-11依存炎症性疾患、IL-11依存変性疾患およびIL-11依存もしくは媒介軟部組織異常の治療または予防のためのこのタンパク質の使用を含む。
発明の要約
【0015】
インターロイキン11(IL-11)は、当初はIL-6依存マウス形質細胞腫細胞株T1165の増殖を促進する因子として同定された多面性サイトカインである(Paulほか、1990)。今日ではIL-11は、種々の造血および非造血細胞型と相互に作用することが知られている(Duほか、1997)。
【0016】
IL-11受容体複合体は、特定のαサブユニットおよびgp130からなる。IL-6 RのIL-6に対するのと同様に、sIL-11 RはIL-11に対して作動活性のあることが実証されている(Baumannほか、1996)。さらに、IL-11のB78H1細胞、マウスのメラノーマ細胞株への形質導入が腫瘍成長を抑制することが示された(Dams-Kozlowskaほか、2000)。しかしIL-11 R修飾B78H1細胞とIL-11分泌B78H1細胞の混合物は、IL-11のみで比較すると、腫瘍成長に対して優れた影響を与えることはなかった。インビボにおけるIL-11活性を促進するために、我々はハイパーIL-11(H11)と呼ぶ新規のサイトカインをデザインし、これはインビボにおける改善された抗腫瘍活性を示した。H11の構築は、αIL-11 Rの可溶形(αIL-11 Rの細胞外部分で、分泌を行なうためにそのシグナル配列を含む)をIL-11配列(そのシグナル配列の大部分を有するまたは有していない)と結合させることに基づいている。
【0017】
従って本発明は一局面において、下記からなる群から選択されるポリヌクレオチドを提供する:
(a) 融合インターロイキン-11受容体(IL-11 R)をコードするポリヌクレオチドおよび配列番号1に示される推定アミノ酸配列を有する少なくとも1つのsIL-11 Rを含むIL-11ポリペプチド(H11)および配列番号2に示される推定アミノ酸配列を有する成熟IL-11;
(b) 配列番号4に示されるsIL-11 Rのコード配列およびH11をコードする配列番号:5に示されるコード配列IL-11を含むポリヌクレオチド;
(c) (a)〜(b)のいずれか1のポリヌクレオチドでコードされるH11のフラグメントおよび/もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドで、前記誘導体において、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、前記H11と比較して控えめに置換され、前記フラグメントおよび/もしくは誘導体はインビボにおける抗腫瘍活性を有している;
(d) (a)〜(c)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドに少なくとも70%同一で、インビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;および、
(e) その相補鎖が、好ましくはストリンジェントな条件下で、(a)〜(d)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドにハイブリダイズし、インビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
またはかかるポリヌクレオチドの相補鎖。
【0018】
好適な実施形態において、sIL-11 Rをコードするポリヌクレオチドは、成熟IL-11をコードするポリヌクレオチドに関して5'末端に位置している。
【0019】
好適な実施形態において、sIL-11 Rならびに成熟IL-11をコードするポリヌクレオチド配列に介入するヌクレオチド配列は、非免疫原性ペプチドをコードする。
【0020】
好適な実施形態において、sIL-11 Rならびに成熟IL-11をコードするポリヌクレオチドは直接結合されている。
【0021】
好適な実施形態において、ポリヌクレオチドは下記からなる群から選択される:
(a) 配列番号3に示す推定アミノ酸配列を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
(b) 配列番号6に示すH11のコード配列を含むポリヌクレオチド;
(c) (a)〜(b)のいずれか1のポリヌクレオチドでコードされるH11のフラグメントおよび/もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドで、前記誘導体において、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、前記H11と比較して控えめに置換され、前記フラグメントおよび/もしくは誘導体はインビボにおける抗腫瘍活性を有している;
(d) (a)〜(c)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドに少なくとも70%同一で、イン
ビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;および
(e) その相補鎖が、好ましくはストリンジェントな条件下で、(a)〜(d) のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドにハイブリダイズし、インビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
またはかかるポリヌクレオチドの相補鎖。
【0022】
本発明のポリヌクレオチドの好適な実施形態において、該ポリヌクレオチドはDNA、ゲノムDNAまたはRNAである。
【0023】
本発明のさらなる局面は、少なくとも1の本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0024】
本発明のベクターの好適な実施形態において、該ポリヌクレオチドは、原核宿主細胞および/または真核宿主細胞において発現を可能にする発現制御配列に動作可能に結合されている。
【0025】
本発明のベクターの好適な実施形態において、発現制御配列はCMV、SV40、ポリヘドリンプロモータ、レトロウイルスLTRs、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、伸長因子1-α(EF1α)およびホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼ(PEPCK)からなる群から選択される。
【0026】
本発明のベクターの好適な実施形態において、ベクターは、プラスミド;ファージミド(phagemid);ファージ;コスミッド;人工哺乳類染色体;人工酵母染色体;ノックアウトまたはノックイン構成物;ウイルス、特にアデノウイルス、ワクシニアウイルス、弱毒化ワクシニアウイルス、カナリア痘ウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、特に単純ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ライノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、フィロウイルスおよびその遺伝子組み換え型;ビロソーム;ウイルス様粒子;およびリポソーム からなる群から選択される。
【0027】
本発明のさらなる局面は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターで遺伝子組み換えされた宿主細胞である。
【0028】
好適な実施形態において、宿主細胞は昆虫細胞、特にイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)およびヨトウガ(Spodoptera frugiperda);哺乳動物細胞、特に幹細胞、肝細胞、含脂肪細胞、ニューロン、破骨細胞、子宮内膜細胞、皮膚細胞、心筋細胞、粘膜細胞、造血細胞または腫瘍細胞、たとえばマウス骨髄腫細胞株−NSO;細菌性細胞、特にエシェリキア(Escherichia)属またはバシラス(Bacillus)属のものおよび酵母細胞、特にPischia種またはサッカロミセス(Saccharomyces)種のもの からなる群から選択される。
【0029】
より好適な実施形態において、宿主細胞は腎がん細胞、メラノーマ細胞、膵がん細胞、白血球、パッケージング細胞、特に両種性またはエコトロピックパッケージング細胞 からなる群から選択される。
【0030】
本発明の宿主細胞の好適な実施形態において、該宿主細胞は少なくともさらに1のポリヌクレオチドを発現するよう遺伝子組み換えされる。
【0031】
本発明の宿主細胞の好適な実施形態において、該さらなるポリヌクレオチドがサイトカイン、特にGM-CSF、IL-6、IL-11、IL-15、EPO、インターフェロン、LIF、OSM、CNTF、CT-1およびsIL-6 R/IL-6融合タンパク質(たとえばハイパーIL-6)をコードする。
【0032】
本発明のさらなる局面は、本発明のベクターを使用してインビトロで細胞を遺伝子組み換えすることを含む、H11を発現することのできる細胞を産生するプロセスであり、前記H11は本発明のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0033】
本発明のさらなる局面は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされたH11ポリペプチドを産生するプロセスであり、本発明の宿主細胞を培養し、前記ポリヌクレオチドでコードされたH11ポリペプチドを復元することからなる。
【0034】
本発明のさらなる局面は、本発明のポリヌクレオチドでコードされたアミノ酸配列を有するまたは本発明のプロセスで得られるH11ポリペプチドである。
【0035】
本発明のさらなる局面は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされたまたは本発明のプロセスで得られるポリペプチドに特異的な抗体であり、sIL-11 RおよびIL-11に本質的に非特異的である。
【0036】
本発明のさらなる局面は、本発明のまたは本発明のプロセスにしたがって得られる宿主細胞、または本発明のもしくは本発明のプロセスにしたがって得られるH11融合ポリペプチドを含む薬剤組成物で、さらに賦形剤、安定剤、保護剤、緩衝剤および/もしくは添加剤を含む。
【0037】
本発明のさらなる局面は、本発明のもしくは本発明のプロセスにしたがって得られる宿主細胞、または本発明のもしくは本発明のプロセスにしたがって得られるH11融合ポリペプチドの、下記からなる群から選択される疾患の予防または治療のための医薬品の製造のための使用である:増殖性疾患、細胞障害、放射線障害、IL-11依存炎症性疾患、IL-11依存変性疾患およびIL-11依存もしくは媒介軟部組織異常。
【0038】
好適な実施形態において該増殖性疾患は、消化管または結腸直腸、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮内膜、卵巣、睾丸、皮膚、眼のがん、メラノーマ、口腔粘膜異形成、侵襲的口腔がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん、ホルモン依存性乳がん、ホルモン非依存性乳がん、移行上皮がんおよび扁平上皮細胞がん、神経芽細胞腫を含む神経悪性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液学的新生物、リンパ腫およびそのほかの骨髄増殖性疾患およびリンパ増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、アデノーマ、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患およびウイルス誘発増殖性疾患;特にメラノーマ、膵がんおよび腎がん からなる群から選択される。
【0039】
好適な実施形態において該細胞障害は、血小板減少症、血球減少症および汎血球減少症からなる群から選択される。
【0040】
好適な実施形態において放射線障害は、放射線治療の間、特に増殖性疾患の治療中に誘発される損傷である。
【0041】
好適な実施形態において該IL-11依存炎症性疾患は、肝臓障害;肝炎;肝障害;敗血症;化学療法誘引または放射線誘引組織障害、特に肺損傷;炎症性疾患、特に炎症性腸疾患、関節リウマチ、炎症性肝疾患;粘膜炎;アレルギー;子宮内膜症;脈管炎;内皮炎症に関連した血管疾患、特に虚血性心疾患または末梢血管障害;および乾癬 からなる群から選択される。
【0042】
好適な実施形態において該IL-11依存変性疾患は、変性CNS疾患、PNS疾患および骨関節炎からなる群から選択される。
【0043】
好適な実施形態において該IL-11依存または媒介軟部組織異常は、肥満および突発性女性不妊からなる群から選択される。
【0044】
さらに好適な実施形態において、H11またはH11発現宿主細胞の投与前、投与と同時または投与後にさらなるサイトカインが投与される。
【0045】
本発明のさらなる局面は、幹細胞治療の間のアジュバント療法のための医薬品の製造のための、本発明のまたは本発明のプロセスにしたがって得られるH11融合ポリペプチドの使用である。
【0046】
本発明のさらなる局面は、インビトロにおける細胞、特に幹細胞または前駆細胞、の分化のための、本発明のまたは本発明のプロセスにしたがって得られるH11融合ポリペプチドの使用である。
【0047】
発明の詳細な説明
自然に存在する成分でできた、新規のデザイナーサイトカイン・ハイパーIL-11(H11)が構築された。これは、それらの自然配列を使って成熟ヒトIL-11と結合された完全長ヒトsIL-11 Rを包含している。かかる構成は2つの大きな利点を有している:(i) その成分が両タンパク質の自然野生型形態に可能な限り近い、(ii) したがって従来技術で知られていた、可能性のある免疫原性および自然に発生する分子から分化する、すなわち"より弱い野生型"である、組み替え剤によるそのほかの副作用が避けられる。
【0048】
したがって一局面において、本発明は下記からなる群から選択されるポリヌクレオチドを提供する:
(a) 少なくとも配列番号1に示される推定アミノ酸を有するsIL-11 Rと配列番号2に示される推定アミノ酸を有する成熟IL-11を含む、融合インターロイキン-11受容体(IL-11R)およびIL-11ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b) 配列番号4に示されるsIL-11 Rのコード配列と、配列番号5に示されるIL-11のコード配列を含み、H11をコードするポリヌクレオチド;
(c) (a)〜(b)のいずれかのポリヌクレオチドでコードされるH11のフラグメントおよび/もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドで、前記誘導体において1またはそれ以上のアミノ酸残基が前記H11と比較して控えめに置換され、前記フラグメントおよび/もしくは誘導体はインビボにおける抗腫瘍活性を有している;
(d) (a)〜(c)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドに少なくとも70%同一で、イン
ビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;および
(e) その相補鎖が、好ましくはストリンジェントな条件下で、(a)〜(d) のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドにハイブリダイズし、インビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
またはかかるポリヌクレオチドの相補鎖。
【0049】
H11のフラグメントは、IL-11もしくはsIL-11 R部のいずれか1または両部においてN-末端欠失および/またはC-末端欠失を有する融合タンパク質である。IL-11は199個のアミノ酸長を有するタンパク質として発現し、うちN-端末のアミノ酸21個がIL-11の突然変異の間に開裂される。本発明のH11において配列番号2にしたがって含まれるIL-11フラグメントは、アミノ酸19〜199を含み、すなわち成熟タンパク質には存在しない3つのアミノ酸"AVA"を含む。これら3つのアミノ酸は、可溶IL-11受容体と成熟IL-11の機能部間の自然の"スペーサ"と考えることができる。
【0050】
H11の一部としての配列番号2によるIL-11のC-末端部の欠失は、アミノ酸6個より大きくてはならず、僅か5、4、3、2または1アミノ酸であることが好ましい。IL-11のN-末端部欠失は、H11の関連ではIL-11のインビボの機能に与える影響は目覚しいものではなく、したがってH11内のIL-11のN-末端部が10アミノ酸と1アミノ酸間で欠ける可能性があるが、それにもかかわらずN-末端は10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、1未満のアミノ酸を欠くことが望ましい。
【0051】
理論によって縛られることは望まないが、Pfanzほかの融合のような従来技術のIL11融合ポリペプチドに対する本H11融合ポリペプチドの驚くべき利点は、sIL-11 R、すなわちPfanzほかがAA109から始めたsIL-11 Rフラグメント、の大部分の欠失による新規の免疫原性エピトープの作出の回避に一部は依存し、またPfanzほかの融合には欠けている、融合タンパク質のD1ドメインの包含に依存するものと本発明者らは信じている。したがって、可溶IL-11受容体の大部分の欠失はインビボの抗腫瘍活性を低下させ、インビボの免疫原性を増大させることがあるので、避けるべきである。使用するsIL-11 R分子は、最低限IL-11 RのD1、D2およびD3ドメインを含むべきである。配列番号1によるsIL-11 Rタンパク質は、そのC-末端および/またはN-末端において欠失可能で、好ましくはC-末端の1〜5間より好ましくはC-末端の4、3、2または1アミノ酸の欠失を有することが可能である。単独で発現したsIL-11 RおよびIL-11との関連で発現したsIL-11 Rの両者の成熟の間、すなわちsIL-11 R-IL-11融合タンパク質として、約22個のアミノ酸がsIL-11 RのN-末端から切り取られる。その結果、N-末端部分を欠く、さもなければタンパク質の処理で開裂されるH11タンパク質を発現可能であり、したがって一部の好ましい実施形態において、sIL-11 RはN-末端において22個のアミノ酸の欠失を行う。D1ドメインはH11のsIL-11 RのAA 37から始まり、したがってもしH11のsIL-11 R部が欠失を有するように操作されると、それは好ましくは1から37のN-末端アミノ酸を欠く。N-末端は37未満の、36未満の、35未満の、34未満の、33未満の、32未満の、31未満の、30未満の、29未満の、28未満の、27未満の、26未満の、25未満の、24未満のそして23未満のアミノ酸を欠くことがさらに好ましい。
【0052】
H11の"誘導体"は20以下の(たとえば20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、6、5、4、3、2または1以下)同類置換のあるポリペプチドである。同類置換は当技術分野では既知であり、典型的にはたとえば別の極性アミノ酸を有する一つの極性アミノ酸および別の酸性アミノ酸を有する一つの酸性アミノ酸の置換を含む。したがって、同類置換は好ましくはアミノ酸の下記の群にある置換を含む:グリシン、アラニン、バリン、プロリン、イソロイシンおよびロイシン(無極性、脂肪族側鎖);アスパラギン酸およびグルタミン酸(マイナスに帯電した側鎖);アスパラギン、グルタミン、メチオニン、システイン、セリンおよびスレオニン(極性非荷電側鎖);リジン、ヒスチジンおよびアルギニン;およびフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン(芳香族側鎖);およびリジン、アルギニン ヒスチジン(プラスに帯電した側鎖)。たとえばpKIなどに与えるある置換の影響の測定法は当技術分野では既知である。1つ以上の同類置換を有するポリペプチドについて必要なのは、抗腫瘍反応をインビボで引き出すためのデザイナーサイトカインH11の能力を、それが少なくとも10%(たとえばすくなくとも10%、20%;30%;40%;50%;60%;70%;80%;90%;95%;98%;99%;99.5%;もしくは100%またはそれ以上)有していることのみである。
【0053】
KarlinとAltshul(1993)の数学アルゴリズムを使用して、2つの配列間の百分率同一性の測定が達成された。このようなアルゴリズムは、Altschulほか(1990)のBLASTNおよびBLASTPプログラムに含まれている。比較の目的でギャップのあるアライメントを得るには、Gapped BLASTをAltschulほか(1997)の記載通りに使用する。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラムのデフォルトのパラメータを使用する。
【0054】
2つの核酸配列間の相同を決めるのにハイブリダイゼーションを使用できる。本明細書またはその一部で開示されたH11ポリペプチドをコードする核酸配列は、標準のハイブリダイゼーション技法によるハイブリダイゼーションプローブとして使用可能である。ハイブリダイゼーション条件は当事者には既知であり、分子生物学における現在のプロトコル、John Wiley & Sons, N.Y., 6.3.1-6.3.6 (1991)に見つけることができる。適度なハイブリダイゼーション条件は、2X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中での30℃におけるイブリダイゼーション、続いて1 X SSC、0.1% SDS中で50℃での洗浄 に等しいと定義される。非常にストリンジェントな条件は、6X 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中での45℃におけるイブリダイゼーション、続いて0.2 X SSC、0.1% SDS中で65℃での洗浄 に等しいと定義される。
【0055】
本発明のH11融合タンパク質のインビボにおける抗腫瘍活性は、腫瘍細胞を移植されたマウスモデルにおける腫瘍成長を含む、種々の従来技術の方法で評価可能である。インビボにおける抗腫瘍反応の評価に使用可能な評価システムの一例は、後述の実施例8に開示されている。"インビボにおける抗腫瘍活性"を有すると考えられるH11融合ポリペプチドは、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の、配列番号3によるH11ポリペプチドの活性を有していなければならない。
【0056】
本発明に記載されたH11ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号4〜6に示された配列との類似点に基づいて同定可能である。たとえば、同定は配列同一性に基づくことができる。ある好適な実施例において、本発明の特徴は、以下と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同等な、単離された核酸分子である:(a) 配列番号1〜3のポリペプチドをコードする核酸分子または(b)配列番号4〜6のヌクレオチド配列;およびインビボでの抗腫瘍活性を有するH11ポリペプチドのためのコード。
【0057】
好適な実施例において、sIL-11 Rをコードするポリヌクレオチドは、成熟IL-11をコードするポリヌクレオチドに関して、5'末端に位置している。この配置は、IL-11のC-末端領域がsIL-11 Rへの融合によって妨げられないままで残るので、好ましい。
【0058】
上記に指摘したように、本発明の目的は強力なアゴニスト作用、インビボ抗腫瘍効果および低抗原性を有するデザイナーサイトカインを提供することである。したがって本発明のポリヌクレオチドの好適な実施形態において、sIL-11 Rをコードするポリヌクレオチド配列と成熟IL-11をコードするポリヌクレオチド配列間のヌクレオチド配列は、本質的に非免疫原性ペプチドをコードする。より好適には、本質的に非免疫原性ペプチドによって結合されるポリヌクレオチドは、成熟IL-11をコードするポリヌクレオチドに関して、sIL-11 Rが5'末端に位置するように配置される。本質的に"非免疫原性ペプチド"の用語は、ペプチド結合を経て連結された長さが1〜10のアミノ酸、好適には9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満のアミノ酸の長さの短ポリアミノ酸伸長を意味し、介在ペプチドを持たない類似の融合ペプチドと比較して、sIL-11 R IL-11融合ポリペプチドに対して免疫反応を実質的に増大させることはない。
【0059】
免疫反応の程度は、たとえばB-細胞刺激を測定するアッセイなどの、種々の当技術分野の既知の方法を使って評価可能である。ポリペプチドリンカーの免疫原性を評価するもう一つのアプローチは、もし実験動物がそのポリペプチドリンカーを特異的に認識する抗体を産生するのであれば、融合ポリペプチドのsIL-11 R部とIL-11部間のペプチドリンカーを含む本発明のH11ポリペプチドで実験動物に免疫付与することとそれに続く測定である。認識の特異性は観察されたペプチドリンカーへの結合量と、無関係のタンパク質で観察された結合量を比較することで決められる。このような無関係のタンパク質の例は、実験動物に内因性でないタンパク質で、たとえばウシ血清アルブミン、乳タンパク質などである。実験動物のポリクローナル血清が無関係のタンパク質と比較して、ペプチドリンカーに対する5倍以下、好適には4倍以下、より好適には3倍以下そして最も好適には2倍以下の特異性を示せば、該ペプチドリンカーは本質的に非免疫原性と考えられる。
【0060】
本質的に非免疫原性であるリンカーの例は、たとえばグリシン、アラニン、バリン、トレオニンまたはセリンなどの小さな側鎖の付いたアミノ酸の伸長で、次の化学式で表される:Nx、式中、Nは独立して長さxのペプチド鎖の各位置においてA、G、S、TまたはVを意味し、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10を意味する。リンカー配列は、配列番号3によるsIL-11 R-IL-11融合において達成されるように、H11のIL-11 R部とIL-11部間で、すなわちIL-11 RのAA 314におけるD3サブドメインの端部と、IL-11のAA 35におけるIL-11の最初に予測された らせん領域の間で、同一距離を維持する目的を果たすことが可能である。この距離が本発明の好適なポリペプチド、配列番号3、67 AA内にあり、62 AAから72 AAの範囲においてリンカーの欠失および/または挿入を経て維持しなければならない。したがって、配列番号2のIL-11の"自然リンカー"が欠失すると、上記に概説したようにこの配列をリンカーで置換して、該距離を上記に概説した範囲に維持可能である。たとえば、配列番号1によるC-末端sIL-11 Rが1〜5 AAの欠失を有し、配列番号2によるIL-11のN-末端が1〜6 AAの欠失を有すれば、リンカーを挿入して2つの基準点間の全体の距離を維持可能である。62〜72 AAの範囲内、好適には63、64、65、66、67、68、69、70または71 AAの範囲内に該距離を維持するためにリンカーが挿入されることが好ましい。リンカーの全長はできるだけ短く維持して、潜在的に有害な免疫原性の抗原決定基の作出を避けなければならない。本発明の好適な配列において、sIL-11 RはN-末端に位置し、IL-11タンパク質はC-末端に位置する。
【0061】
したがって好適な実施形態においてリンカーは、下記からなる群から選択される:A、G、S、T、V:AA、AG、AS、AT、AV、GA、GG、GS、GT、GV、SA、SG、SS、ST、SV、TA、TG、TS、TT、TV、VA、VG、VS、VT、VV;AAA、AAG、AGA、GAA、AAS、ASA、SAA、AAT、ATA、TAA、AAV、AVA、VAA、GGG、GGA、GAG、AGG、GGS、GSG、SGG、GGT、GTG、TGG、GGV、GVG、VGG、SSS、SSA、SAS、ASS、SSG、SGS、GSS、SST、STS、TSS、SSV、SVS、VSS、VVV、VVA、VAV、AVV、VVG、VGV、GVV、VVS、VSV、SVV、VVT、VTV、TVV、AGS、ASG、GAS、GSA、SAG、SGA、AGT、ATG、GAT、GTA、TAG、TGA、AGV、AVG、GAV、GVA、VAG、VGA、AST、ATS、SAT、STA、TAS、TSA、ASV、AVS、SAV、SVA、VAS、VSA、GST、GTS、SGT、STG、TGS、TSG、GSV、GVS、SGV、SVG、VGS、VSG、STV、SVT、TSV、TVS、VSTおよびVTS。
【0062】
本発明のポリヌクレオチドの特に好適な実施形態において、sIL-11 Rおよび成熟IL-11をコードするポリヌクレオチドが直接結合される。この関連で"直接結合される"は、非自然発生的なリンカーペプチドをコードする非自然発生的なヌクレオチドは、ポリヌクレオチドをコードするsIL-11 RとIL-11間に位置していないことを意味する。
【0063】
さらに好適な実施形態において、該ポリヌクレオチドは下記からなる群から選択される:
(a) 配列番号3に示される推定アミノ酸配列を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
(b) 配列番号6に示されるH11のコード配列を含むポリヌクレオチド;
(c) (a)〜(b)のいずれかのポリヌクレオチドでコードされるH11のフラグメントおよび/もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドで、前記誘導体において1つ以上のアミノ酸残基が前記H11と比較して控えめに置換され、前記フラグメントおよび/もしくは誘導体はインビボにおける抗腫瘍活性を有している;
(d) (a)〜(c)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドに少なくとも70%同一で、イン
ビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;および
(e) その相補鎖が、好ましくはストリンジェントな条件下で、(a)〜(d) のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドにハイブリダイズし、インビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
またはかかるポリヌクレオチドの相補鎖。
【0064】
好適な実施形態に関連して使用される用語"フラグメント"、"誘導体"および"インビボ腫瘍活性"は、上記に概説したように同じ意味を有している。
【0065】
本発明の核酸分子をコードするH11は、DNA、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAもしくはRNAであって、二本鎖もしくは一本鎖、センスおよび/もしくはアンチセンス鎖であり得る。これら分子のセグメンツも本発明の範囲内にあると考えられ、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で産生可能、または1つ以上の制限エンドヌクレアーゼを使用した処理で生成可能である。リボ核酸(RNA)分子は、たとえばインビトロ転写によって産出可能である。
【0066】
本発明のポリヌクレオチド分子は自然発生配列または自然に発生するものとは異なる配列を含むことができるが、遺伝子コードの縮重により、同じポリペプチド、たとえば配列番号1〜3のポリペプチド、をコードする。該ポリヌクレオチド分子は、3'および/または5'末端において追加のポリヌクレオチドを含むことができ、それはさらなるポリペプチドをコードする。
【0067】
本発明の融合ポリヌクレオチド分子のポリヌクレオチドは、インビトロで合成可能で(たとえばホスホラミダイトがベースの合成)、または細菌、酵母、昆虫または哺乳動物の細胞などの細胞から得ることができる。
【0068】
本発明の更なる局面は、本発明のポリヌクレオチド(ひとつあるいは複数)を含むベクターまたは本発明のポリヌクレオチドでコードされるH11融合タンパク質である。用語"ベクター"は、たとえばタンパク質もしくはポリヌクレオチドまたはそれらの混合物を含め、細胞中に導入され得るもしくはタンパク質を導入され得るおよび/または本発明のポリヌクレオチドを細胞中に導入できる手法を意味する。あるベクターは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを一部の特定の細胞型のみへ導入することに特に適しており、一方ほかのベクターは種々の異なる細胞型へ導入され得る。当業者は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが導入される細胞型によって、特定のベクターを選択する方法を承知している。
【0069】
本発明のベクターの好適な実施形態において、ベクターは、本発明のベクターはプラスミド;ファージミド(phagemid);ファージ;コスミッド;人工染色体、特に人工哺乳動物染色体または人工酵母染色体;ノックアウトまたはノックイン構成物;ウイルス、特にアデノウイルス、ワクシニアウイルス、弱毒化ワクシニアウイルス、カナリア痘ウイルス、レンチウイルス(ChangとGay、2001)、ヘルペスウイルス、特に単純ヘルペスウイルス(HSV-1、Carlezonほか、2000)、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV、CarterとSamulski、2000)、ライノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、フィロウイルスおよび上記のウイルスの遺伝子組み換え型(たとえばKobingerほか、2001を参照);ビロソーム;"裸の"DNA、リポソーム;ウイルス様粒子;および核酸被覆粒子、特にゴールドスフィア(gold sphere)を含む。特に好適なのは、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター(Lindemannほか、1997およびSpringerほか、1998)のようなウイルスベクターである。このような組み換えウイルスベクターの生成を可能にするプラスミドの例として、pFastBac1(Invitrogen Corp. カリフォルニア州カールスバッド)、pDCCMV(Wiznerowiczほか、1997)およびpShuttle-CMV(Q-biogene、カリフォルニア州カールスバッド)がある。
【0070】
リポソームも好適なベクターで、通常は小さな単層または多重膜小胞で、陽イオン、中性および/または陰イオン脂質でできており、たとえばリポソーム懸濁液の超音波処理で作られる。ポリヌクレオチドは、たとえばリポソームの表面にイオン結合可能かまたはリポソーム内部に封入可能である。適当な脂質混合物は当技術分野では既知で、たとえばDOTMA(1,2-ジオレイルオクソプロピル-3-トリメチル臭化アンモニウム)(1, 2-Dioleyloxpropyl-3-trimethylammoniumbromide)およびDPOE(ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミン)(Dioleoylphosphatidyl-ethanolamine)からなり、いずれも種々の細胞株で使用されてきた。
【0071】
核酸被覆粒子は、本発明のポリヌクレオチドを、粒子を機械的に細胞内に導入することの出来るいわゆる"遺伝子銃"を使用して細胞中に導入するもう一つの手段である。好適には粒子そのものは不活性であって、したがって好適な実施形態において、粒子はゴールドスフェアからできている。
【0072】
さらなる局面において、本発明のポリヌクレオチドは、原核宿主細胞および/または真核宿主細胞において発現を可能にする1つ以上の発現制御配列に動作可能に結合されている。上記に参照した転写/翻訳調節因子は誘導可能なおよび非誘導の、構造性の、細胞周期調節された、代謝的に調節されたプロモータ、エンハンサー、オペレータ、サイレンサー、リプレッサーおよび、当業者に既知で、遺伝子発現を促進するかさもなければ調節するほかの因子を含むが、これらに限定されることはない。かかる調節因子は、下記を含むがこれらに限定されることはない:構造的発現を方向付ける調節要素、たとえばRNAポリメラーゼIIIで転写されるプロモータ、たとえばsnRNA U6またはscRNA 7SK遺伝子のプロモータ、サイトメガロウイルスhCMV前初期遺伝子, SV40アデノウイルスの早期プロモーターまたは後期プロモーター、たとえばNBV、肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、エブスタイン−バーウイルス(EBV)、ヒトT-細胞白血病ウイルス(HTLC)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)またはHIVなどが由来のウイルスプロモータおよび活性化因子配列;これらは誘導可能な発現、たとえばCUP-1プロモータ、たとえばtet-onまたはtet-offシステム、lacシステム、trpシステムで使用されるtetリプレッサー を可能にする;たとえばcdc2、cdc25CまたはサイクリンAプロモータのような細胞周期特異的発現を方向付ける調節要素;またはTACシステム、TRCシステム、ファージAの主要なオペレータ領域なならびにプロモータ領域、fd外皮タンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(3- phosphoglycerate kinase)(PGK)のプロモータ、酸性ホスファターゼ(acid phosphatase)のプロモータ、および酵母 α-またはa-接合因子のプロモータ。特に好適なプロモータは構造性CMV前初期遺伝子プロモータ、早期または後期SV40プロモーター、ポリヘドリンプロモータ、レトロウイルスLTRs、PGKプロモータ、伸長因子1-α(EF1-α)およびホスホエノールピルビン酸塩カルボキシキナーゼ(phosphoenolpyruvate carboxy kinase)(PEPCK)である。
【0073】
本明細書で使用される"動作可能に結合された"は、発現制御配列が問題のコード配列の発現を効果的に制御するように、遺伝子的構造体の中に導入されることを意味する。
【0074】
本発明のもう一つの局面は、上記に概説した本発明のポリヌクレオチド(一つもしくは複数)またはベクター(一つもしくは複数)を用いて、遺伝子操作された宿主細胞である。本発明の目的に使用できる宿主細胞は下記を含むがこれらに限定されることはない:細菌(たとえば、E.coliおよびB.subtilis)のような原核細胞で、たとえば本発明のポリヌクレオチド分子を含有する組み換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミッドDNA発現ベクターでトランスフォーム可能であるもの;単純真核細胞様酵母(たとえばサッカロミセスおよびピチア(Pichia))で、たとえば本発明のポリヌクレオチド分子を含有する組み換え酵母発現ベクターでトランスフォーム可能であるもの;昆虫細胞系、たとえばヨトウガ(Spodoptera frugiperda)およびイラクサギンウワバ(Trichoplusioa ni)細胞株、たとえばSf9またはHi5細胞で、たとえば本発明のポリヌクレオチド分子を含有する組み換えウイルス発現ベクター(たとえばバキュロウイルス)でインフェクト可能であるもの;たとえばプラスミドを注入可能なアフリカツメガエル卵母細胞(Xenopus oocytes);植物細胞系で、組み換えウイルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)またはタバコモザイク病ウイルス(TMV))でインフェクト可能な、またはヌクレオチド配列をコードするH11ポリペプチドを含有する組み換えプラスミド発現ベクター(たとえばTiプラスミド)でトランスフォーム可能であるもの;あるいは哺乳動物細胞系(たとえば、COS、CHO、BHK、HEK293、VERO、HeLa、MDCK、Wi38、NSOおよびNIH 3T3細胞)で、たとえば哺乳動物ウイルス(たとえばアデノウイルス後期プロモーターおよびワクシニアウイルス7.5 Kプロモータ)由来の、または細菌ウイルス(たとえば、tet-リプレッサー結合がtet-onおよびtet-off系に使用されている)由来の哺乳動物細胞のゲノム(たとえばメタロチオネイン(metallothionein)プロモーター)由来のプロモータを含有する組み換え発現構造体でトランスフォーム可能であるもの。さらに宿主細胞として有用なのは、哺乳動物から直接入手し、プラスミドベクターでトランスフェクトされもしくはウイルスベクターでインフェクトされた一次細胞または二次細胞である。本発明のポリヌクレオチドを導入するのに使用された宿主細胞およびそれぞれのベクターに依存して、該ポリヌクレオチドはたとえば染色体もしくはミトコンドリア DNAに組み込み可能であるか、またはたとえばエピソーム様に、染色体外で維持可能か、または単に細胞中に一時的に包含可能である。好適な宿主細胞はヨトウガ(Spodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ(Trichoplusuioa ni);哺乳動物細胞、特に幹細胞、造血細胞、肝細胞、含脂肪細胞、ニューロン、破骨細胞、子宮内膜細胞、皮膚細胞、心筋細胞、粘膜細胞、造血細胞または腫瘍細胞;細菌性細胞、特にエシェリキア属もしくはバシラス属のものおよび酵母細胞、特にピチア(Pischia)種もしくはサッカロミセス種のものである。
【0075】
本発明者らによって、本発明のポリヌクレオチド(一つもしくは複数)またはベクター(一つもしくは複数)で遺伝子組み換えした腫瘍細胞または細胞株は、種々の増殖性疾患の予防あるいは治療に使用可能であることが発見された。該腫瘍細胞または細胞株は、多種多様な腫瘍ならびに種から導き出すことが可能である。腫瘍細胞を導き出すことが可能な種は好適には、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ヤギ、ウサギ、ネズミ、ラット、モルモット、ハムスターもしくはアレチネズミの群から選択される哺乳動物、特にヒトである。遺伝子組み換えされた腫瘍細胞は、腫瘍から直接導き出すことが可能か、または遺伝子組み換えに先立ってさらに二次培養可能である。腫瘍細胞を長期に二次培養すると、通常主にクローン細胞でできた細胞株が作られることになる。腫瘍細胞または細胞株は任意の腫瘍から導出可能であるが、下記のがんから導出された腫瘍細胞が好適である:消化管もしくは結腸直腸、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮内膜、卵巣、睾丸、皮膚、眼のがん、メラノーマ、口腔粘膜異形成、侵襲的口腔がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん、ホルモン依存性乳がん、ホルモン非依存性乳がん、移行上皮がんおよび扁平上皮細胞がん、神経芽細胞腫を含む神経悪性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液学的新生物、リンパ腫およびそのほかの骨髄増殖性疾患およびリンパ増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、アデノーマ、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患およびウイルス誘発増殖性疾患。特に好適なのは、メラノーマ、膵がんおよび腎がん由来の腫瘍細胞または細胞株である。本発明のポリヌクレオチド(一つもしくは複数)またはベクター(一つもしくは複数)で遺伝子組み換えされ、一つの種において後に増殖性疾患の予防または治療に使用される腫瘍細胞株は、同一の種(同種異系起源)から、または治療中の被験体そのもの(自己由来起源)からでさえ導出されることが好適である。このように、好適な実施形態において、治療中の患者由来のもしくは同じまたは類似の腫瘍型を有する別の患者由来のヒト腫瘍細胞もしくはヒト腫瘍細胞株は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで遺伝子組み換えられ、ヒト患者において増殖性疾患の予防または治療に使用される。遺伝子組み換え可能な好適な腫瘍細胞株には、NSO、B78H1、Renca、Hep G2、B9、ヒトメラノーマ、腎がん、特に腎細胞がん、膵臓がん、自己由来および同種異系T-細胞が含まれるがこれに限定されない。
【0076】
本発明の一つの好適な局面には、本発明のポリヌクレオチドで遺伝子組み換えされて、すなわち単に注入によって、細胞を生成するのに便利なツールである特定のウイルスベクターへの本発明のポリヌクレオチドの移送が関与するので、本発明のポリヌクレオチドで遺伝子組み換えされた宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド(一つまたは複数)をウイルス中にパッケージできる細胞であることも想定される。このように、宿主細胞のもう一つの好適なタイプはパッケージング細胞、特に両種性パッケージング細胞、たとえばPA 317、GP+E86のような同種指向性のパッケージング細胞、ヒト胎児腎細胞-239である。PA 317は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターDCCMVで適切に対とされ、H11配列を含む組み換えレトロウイルス粒子を生成する。
【0077】
さらに、細胞を遺伝子組み換えして少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドからなるようにすると、本発明のポリヌクレオチド(一つもしくは複数)またはベクター(一つもしくは複数)で遺伝子組み換えした宿主細胞、特に腫瘍細胞または細胞株、によって発揮されるインビボ抗腫瘍効果がさらに増強されることが本発明者らによって観察された。したがって、好適な実施形態において本発明の宿主細胞は、少なくとも1つのさらなるポリペプチドをコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドで遺伝子組み換えされる。これはベクターを使用して、特にH11に関して上記に示したベクターの1つを使用して、そして続いてまたは同時にこの(これらの)ベクター(一つもしくは複数)を宿主細胞に導入することによって選択的に達成される。一つ以上の追加のポリヌクレオチドは、別のベクターまたはポリヌクレオチドをコードするH11と同一のベクター内に構成可能である。宿主細胞は、H11タンパク質ならびに少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドでコードされる少なくとも1つのさらなるタンパク質の両方を同時に発現することが好ましい。好適な実施形態において、宿主細胞に導入された少なくとも1のさらなるポリヌクレオチドはサイトカイン、特にGM-CSF、IL-6、IL-11、IL-15、抗-TGF、EPO、インターフェロン、LIF、OSM、CNTF、CT-1およびsIL-6 R/IL-6融合タンパク質、特にハイパー-IL-6をコードする。この関連でさらに、該宿主細胞はH11に関して、上記に示した好適な宿主細胞、すなわち腫瘍細胞または細胞株、の1つから選択されることが好ましい。
【0078】
したがって、本発明の少なくとも1つのH11ポリペプチドならびに少なくとも1つのさらなるポリペプチド、特にサイトカイン(たとえばGM-CSF、IL-6もしくはIL-11)を発現する宿主細胞は、下記に関連した組織を起源とする細胞または細胞株から導出されることが特に好適である:増殖性疾患、好適には消化管もしくは結腸直腸、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮内膜、卵巣、睾丸、皮膚、眼のがん、メラノーマ、口腔粘膜異形成、侵襲的口腔がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん、ホルモン依存性乳がん、ホルモン非依存性乳がん、移行上皮がんおよび扁平上皮細胞がん、神経芽細胞腫を含む神経悪性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液学的新生物、リンパ腫およびそのほかの骨髄増殖性疾患およびリンパ増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、アデノーマ、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患およびウイルス誘発増殖性疾患。特に好適なのは、メラノーマ、膵臓もしくは腎臓がん由来の腫瘍細胞または細胞株である。この場合も、腫瘍細胞または細胞株は自己由来、同種異系もしくは異種であることができる。
【0079】
本発明のさらなる局面は、H11を発現できる細胞を生成するプロセスである。このプロセスは、本発明の少なくとも1つのベクターで、インビトロで細胞を遺伝子組み換えすることを含み、ここでは前記H11(一つまたは複数)は本発明のポリヌクレオチド(一つまたは複数)でコードされる。トランスフォームされ得る細胞型には制限がなく、該細胞を遺伝子組み換えするのに使用するそれぞれのベクターまたはベクター系に依存する。ある細胞型の形質転換に好適なベクターおよびベクター系が上記に示された。加えて、上記に概要を説明した特定の細胞および細胞株が、本発明のこのプロセスで採用されることが好適である。
【0080】
本発明のさらなる局面は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるH11ポリペプチドの産生のためのプロセスで、本発明の宿主細胞を培養し、前記ポリヌクレオチドでコードされたH11ポリペプチドを復元することを含む。当業者は、異種タンパク質の高レベル発現をもたらし、したがって本発明のH11ポリペプチドの産生に使用可能な種々の発現システムを承知している。発現システムの選択は、タンパク質の必要量および必要な修飾に依存している。一方、異種タンパク質の発現には単一の細胞有機体を使用するのが標準で、多細胞生物由来の細胞を使用することも可能である。原則として、このような細胞の培養は、それが脊椎動物の培地であろうと無脊椎動物の培地であろうと、実行可能である。哺乳動物の細胞に加えて、これらは組み替えウイルス発現ベクター(たとえば、キュロウイルス)でインフェクトされた昆虫細胞系;組み替えウイルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイク病ウイルス、TMV)でインフェクトされたまたは組み換えプラスミド発現ベクター(たとえば、Tiプラスミド)でトランスフォームされた植物細胞系;プラスミドまたは人工染色体でトランスフォームされた酵母、およびプラスミド、コスミド、一つまたはそれ以上のH11ポリペプチドコード配列を含むファージミドまたはファージでトランスフォームされた原核細胞を含む。
【0081】
有用な昆虫系において、Autograph california核多角体病ウイルス(AcNPV)が外来遺伝子を発現するベクターとして使用される。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)およびイラクサギンウワバ(Trichoplusion ni)細胞で成長する。ヨトウガ(Spodopteria frugiperda)細胞は該ウイルスの増幅に使用され、H11産生にはイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)より単離されたH5細胞が使用された。H11ポリペプチドコード配列は、ウイルスの非必須領域(たとえば、ポリヘドリン遺伝子)へクローン化され、AcNPVプロモータ(たとえば、ポリヘドリンプロモータ)の制御下におかれる。
【0082】
コード配列がうまく挿入されると、ポリヘドリン遺伝子の不活性化と非閉塞組み換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子でコードされたタンパク質様被覆を欠くウイルス)の産生が行われる。次いでこれらの組み換えウイルスはヨトウガ(Spondoptera frugiperda)細胞をインフェクトするのに使用され、この細胞内で挿入された遺伝子が発現する(たとえば、米国特許第4,215,051号、Smith、参考のため本明細書に援用)。組み換えウイルスを生成するのに使用可能なベクターの例は、上記に示された。
【0083】
有用な哺乳動物宿主細胞株はVEROおよびHeLa細胞、CHO細胞株、WI38、BHK、COS-7、293、HepG2、NIH3T3、RIN、NSOおよびMDCK細胞株である。加えて、挿入した配列の発現を調節するかまたは修飾し、所望の特定の態様で遺伝子産物を処理する宿主細胞株を選ぶことができる。タンパク質産物のかかる修飾(たとえばグリコシル化)および処理(たとえば開裂)は、タンパク質の機能にとって重要である。様々な宿主細胞が、タンパク質の翻訳後処理および修飾のための特徴的で固有の機序を有している。適切な細胞株または宿主系を選択して、発現した外来タンパク質の正しい修飾と処理を確実に行うことが出来る。本発明のH11タンパク質を発現するのに適切ないろいろな哺乳動物発現システムが知られており、たとえばGS遺伝子発現システム(Lonza Biologicals、英国、スロー)がこれに含まれ、グルタミンシンテターゼ、(GS)欠損細胞または細胞株、たとえばGSの欠落またはGSの十分量の欠落を補完するためにメチオニンスルホキシミン(methionine sulphoximine)(MSX)およびグルタミンシンテターゼ遺伝子を含むベクターによってグルタミン欠乏に感作されたCHO細胞のような細胞を使用している。
【0084】
哺乳動物細胞で使用する発現ベクターは、通常、(必要に応じて)複製起点、任意の必要なリボソーム結合部位に沿って、発現すべき遺伝子の前に位置しているプロモータ、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列を含む。複製起点は、DV40もしくはほかのウイルス(たとえばポリオーマ、アデノ、CMV、VSV、BPV)源から導出できるような外来起点を含むように構築されたベクターによって提供でき、または宿主細胞染色体複製機序によって提供できる。ベクターが宿主細胞染色体に組み込まれると、後者は十分な場合が多い。
【0085】
プロモータは哺乳動物細胞のゲノム(たとえばメタロチオネインプロモータ)または哺乳動物ウイルス(たとえばアデノウイルス後期プロモータ;ワクシニアウイルス7.5 Kプロモータ)から導出できる。さらに、H11ポリヌクレオチドと通常関連しているプロモータまたは制御配列を利用することが可能で、そして望ましいが、かかる制御配列が使用の宿主細胞系と両立している必要がある。
【0086】
多数のウイルスをベースにした発現システムを利用でき、たとえば一般的なプロモータはポリオーマ、アデノウイルス2そして最も頻繁にはシミアンウイルス40(SV40)から導出される。SV40ウイルスの早期プロモータと後期プロモータは、いずれもフラグメントとしてウイルスから容易に入手され、さらに複製のSV40ウイルス起点を含んでいるので、特に有用である。より小さいまたはより大きいSV40フラグメントも使用されるが、HindIII部位から複製のウイルス起点にあるBglII部位に向けて伸張している約250の塩基対配列が含まれている必要がある。
【0087】
アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合は、コード配列はアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、たとえば後期プロモータと3部リーダー配列、にライゲートできる。次いでこのキメラ遺伝子は、インビボまたはインビトロ組み換えによってアデノウイルスゲノムに挿入できる。ウイルスゲノムの非必須領域(たとえば、領域E1、E3またはE4)に挿入すると、生存可能で感染宿主においてH11融合ポリペプチドを発現できる組み換えウイルスとなる。
【0088】
H11融合ポリペプチドコード配列の効率的な翻訳のためには、特定の開始シグナルも必要となることがある。これらのシグナルにはSTG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。ATG開始コドンを含む外来翻訳制御シグナルの追加の提供が必要になることがある。当業者はこれを容易に決定し、必要なシグナルを提供できるであろう。インサート全体の翻訳を確実にするため、開始コドンは、所望のコード配列のリーディングフレームと同フレーム(または同相)になければならないことはよく知られている。これらの外来翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然でも合成でも、多数の起点となり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサー要素ならびに転写ターミネータの包含により改善される。真核発現において、もし対象がオリジナルのクローン化セグメントに含まれていなければ、それは適切なポリアデニル化部位(たとえば、5'-AATAAA-3')を転写単位に組み込むことをも典型的には必要とするであろう。典型的には、ポリA追加部位は、転写終結の前の位置で、タンパク質の終結部位から約30〜2000ヌクレオチド"下流"に置かれる。
【0089】
組み替え融合ポリペプチドの長期、高収率産生のためには、安定した発現が好ましい。たとえば、H11融合ポリペプチドをコードする構造を安定して発現する細胞株を遺伝子組み換えできる。複製のウイルス起点を含む発現ベクターを使用する代わりに、適切な発現制御要素(たとえば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択可能なマーカーで制御されるベクターを使用して、宿主細胞はトランスフォーム可能である。外来DNAの導入に続いて、遺伝子組み換えした細胞を強化培地において1〜2日培養される場合があり、続いて選択培地に移される。組み換えプラスミドにおける選択可能なマーカーは、選択に対する抵抗性を付与し、細胞がプラスミドを安定に細胞の染色体中に組み込んで、成長してフォーカスを形成し、これが順にクローン化し得て、細胞株中に拡大することを可能にする。
【0090】
多数の選択系、これらに限定されることはないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)、ヒポキサンチングアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(hgprt)およびアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(agrt)遺伝子が、それぞれtk-、hgprt-またはaprt-細胞において使用できる。また、メトトレキサートに対する抵抗性を付与するジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr);ミコフェノール酸に対する抵抗性を付与するgpt;アミノグリコシドG-418に対する抵抗性を付与するネオマイシン(neo);ハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するハイグロマイシン(hygro)の選択のベースとして抗代謝抵抗が使用可能である。
【0091】
動物細胞は、培養の大部分にわたって懸濁液中で成長する非固定依存細胞として、または増殖のために固体基質への固定が必要な固定依存細胞(すなわち単層型の細胞増殖)として、2つのモードにおいてインビトロで増殖可能である。
【0092】
連続樹立細胞株由来の非固定依存または懸濁培地は、細胞ならびに細胞産物の大規模産生で最も広く使用されている手段である。しかし懸濁培養された細胞には、腫瘍形成能および接着細胞より低いタンパク質産生のような限度がある。
【0093】
組み換えタンパク質の産生のための一般的な方法は、撹拌タンクにおける哺乳動物細胞の大規模懸濁培養である。2つの懸濁培地リアクターデザイン、撹拌リアクターとエアリフトリアクターは広く使用されている。撹拌デザインは8000リッター容量でインターフェロンの産生に首尾よく使用されてきた。細胞は、高さ対直径比が1:1〜3:1のステンレス鋼製のタンクで増殖する。培地は通常、ブレード付きのディスクまたは船舶用のプロペラ様式からなる1つ以上のアジテータで混合される。ブレードより少ないせん断力を出すアジテータシステムが記述されてきた。アジテーションは、磁気的に連結された駆動装置で直接または間接的に駆動できる。間接駆動は、撹拌軸上のシール経由の微生物汚染のリスクを低減する。
【0094】
エアリフトリアクターも当初は微生物発酵のために記述され、その後哺乳動物培地用に改作されており、培地を混合し酸素を供給するためのガス流に依存している。ガス流はリアクターのライザー部から入り、循環を行う。ガスは培地表面で離れ、ガス泡のない濃密な液体をリアクターの下降部において下方へと移動させる。このデザインの大きな利点は、簡易なことと機械的混合の必要がないことである。典型的には、高さ対直径比が10:1である。エアリフトリアクターは比較的容易にスケールアップでき、ガスの質量移動が良好で、発生するせん断力は比較的小さい。
【0095】
本発明のH11融合ポリペプチドは、細胞から上清に分泌可能かまたは細胞内に維持可能である。細胞上清は、以下に概要を示したさらなる精製ステップに直接供することができるが、細胞内にあるタンパク質をさらに精製できるようにする必要がある。細胞を破壊するのに種々な方法があり、これには化学的方法、たとえばカオトロフィック(chaotrophic)剤(たとえば尿素、チオシアン酸ナトリウム(sodium thiocyanate)、GuHCl)、高塩度および/または洗浄剤および機械的手法、たとえばフレンチプレス、解凍および/または音波処理がある。本発明に関連して好適な、本質的に正しく折り畳まれた非変性タンパク質を得るには、たとえば適度な洗剤条件下における、解凍およびフレンチプレスの組み合わせのような非変性手法の採用が好ましい。
【0096】
このように可溶化されたタンパク質または上清にあるタンパク質は、当技術分野で周知のさらなる精製ステップに供することができ、それは沈殿、クロマトグラフおよび親和性精製の使用を含むがこれに限定されることはない。使用できるクロマトグラフ法には、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、色素吸着などが含まれる。親和性精製手法は、IL-11、IL-11 R、sIL-11 Rで被覆された樹脂もしくはその一部;IL-11、sIL-11 RもしくはH11融合ポリペプチド内に含まれるタグのいずれかに特異的な抗体;またはH11融合ポリペプチド内に含まれるタグが使用可能であり、これらは他の化合物もしくは樹脂と特異的に相互作用する。かかるタグの例は6xHis、FLAG、myc-タグ、キチンタグ、グルタチオン S-トランスフェラーゼ・タグなどである。好適には該タグは、本発明のH11融合ポリペプチドのC-末端および/またはN-末端を含む。こうすれば、たとえばエンドペプチダーゼでタグを除去できる。したがって最終の精製されたH11タンパク質は、好適にはいかなるタグも含まず、一度患者に投与すると免疫反応を誘発できる。
【0097】
本発明のもう一つの局面は、本発明のポリヌクレオチドでコードされたアミノ酸配列を有するまたは上記のプロセスで得られるH11ポリペプチドである。用語"ポリペプチド"ならびに"タンパク質"は置き換え可能に使用され、長さまたは翻訳後修飾とは無関係に、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を言う。
【0098】
本発明のさらなる局面は、上記のポリヌクレオチド、ベクターおよび/または宿主細胞を含むトランスジェニック非ヒト動物である。該動物はモザイク動物であり得て、これは身体を作っている一部の細胞のみが本発明のポリヌクレオチド、ベクターおよび/もしくは細胞を含むことを意味し、または、該動物はトランスジェニック動物であり得て、これは該動物のすべての細胞が、本発明のポリヌクレオチドおよび/もしくはベクターを含み、または本発明の細胞から導出されることを意味する。モザイクまたはトランスジェニック動物は、細胞に包含される本発明のポリヌクレオチドに関して、ホモ接合性または異種接合のいずれかであり得る。好適な実施例において、トランスジェニック動物は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子に関して、ホモ接合性もしくは異種接合のノックアウトまたはノックイン動物のいずれかである。該動物は、原則として任意の動物であり得るが、好適には非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはアレチネズミの群から選択される動物である。
【0099】
本発明のもう一つの局面は、本発明のポリヌクレオチドでコードされるH11を産生するプロセスで、上記の宿主細胞を培養し、前記ポリヌクレオチドでコードされたポリペプチドを復元することを含む。宿主細胞とベクターの好適な組み合わせは上記に概説したとおりで、さらなる組み合わせは、当業者には容易に明らかであろう。復元されたペプチドのその後の意図する使用に依存し、適切な細胞型が選択可能である。細胞によって産生されたタンパク質が、グリコシル化の本質的に自然のパターンを示すことが所望されるなら、真核細胞が好適に選ばれ、もし、たとえば、真核細胞のみのタンパク質に通常導入されるグリコシル化もしくはほかの修飾を所望しないまたは必要ない場合は、原核細胞が選ばれる。
【0100】
本発明の融合タンパク質の発現を検出するには、sIL-11 RまたはIL-11のいずれかに抗して増加したほとんどの抗体が使用可能である。しかしsIL-11 R、IL-11の発現と形成されたそれらの融合タンパク質を区別するには、本発明の一部の局面においては、融合タンパク質を特異的に検出するが、sIL-11 RおよびIL-11のみには弱い特異性または本質的に特異性を示さない抗体を持つことがこのましい。したがって、さらなる局面において、本発明は本発明のポリヌクレオチドでコードされるまたはH11ポリペプチドを産生するための本発明のプロセスで得られるポリペプチドに特異的な抗体に関しており、この抗体はsIL-11 RおよびIL-11に本質的に非特異的である。タンパク質内において特定の抗原決定基を認識するのみの抗体の作り方は当技術分野では既知である。たとえば、哺乳動物、特にマウスまたはウサギを、sIL-11 RとIL-11間の接合を含むペプチドで免疫性を与えることが可能である。こうすれば融合タンパク質を特異的に認識する抗体に至ることになる。このようにして作られた抗体から、IL-11およびsIL-11 Rに対して弱い特異性を示すのみまたは本質的に特異性を示さないものがさらに選択される。
【0101】
上記に概要を示したように、本発明のH11ポリペプチドはそのように使用するかまたは宿主細胞の関連で使用可能であり、すなわち宿主細胞中にトランスフェクト可能である。いずれの実施形態においても、H11ポリペプチドそれ自体、または宿主細胞は単独でもしくは追加の物質と組み合わせて使用可能で、したがってさらなる局面において本発明は少なくとも1つのポリペプチドおよび/または少なくとも1つの本発明の宿主細胞およびリポソーム、ブィロソーム、マイクロスフェア、ニオソーム、デンドリマー、安定剤、緩衝材、賦形剤、および添加剤からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む薬剤組成物に関する。
【0102】
本発明の組成物の製造と投与を容易にする賦形剤は、当業界で公知の賦形剤で、たとえばアルギン酸塩、炭酸カルシウム、デキストロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、マルトデキストリンなどを含む。安定剤も当業界で公知で、たとえばα-トコフェロールおよび種々の炭水化物からなる。
【0103】
本発明のH11ポリペプチドを発現する宿主細胞をマウスに投与すると、強力な抗腫瘍反応があることが本発明者たちによって観察された。加えて、H11はそのままでIL 11Rの強力な作用物質であることが示され、したがって治療または改善のためにIL-11の作用を必要とする疾患の治療に採用し得る。したがって、本発明のさらなる局面は、下記の群から選択される疾患の治療または予防のための医薬品の製造のために、本発明の宿主細胞または本発明のプロセスの一つにしたがって得られる宿主細胞または本発明のH11ポリペプチドの使用である:増殖性疾患、細胞障害、放射線障害、IL-11依存炎症性疾患、IL-11依存変性疾患およびIL-11依存または媒介軟部組織異常。
【0104】
H11ポリペプチドおよびH11ポリペプチドを発現する宿主細胞、特にH11ポリペプチドを発現する宿主細胞は、種々の異なる増殖性疾患の治療および/または予防に使用可能であるが、本発明したがって治療できるまたは予防できる好適な増殖性疾患は、下記からなる群から選択される:消化管または結腸直腸、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮内膜、卵巣、睾丸、皮膚、眼のがん、メラノーマ、口腔粘膜異形成、侵襲的口腔がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん、ホルモン依存性乳がん、ホルモン非依存性乳がん、移行上皮がんおよび扁平上皮細胞がん、神経芽細胞腫を含む神経悪性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液学的新生物、リンパ腫およびそのほかの骨髄増殖性疾患およびリンパ増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、アデノーマ、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患およびウイルス誘発増殖性疾患、特に好適なのは、メラノーマ、膵臓または腎臓がん。特に増殖性疾患の治療の関連で、患者は疾患の任意の症状を発症する前に(すなわち保護免疫付与を受ける)、または患者が疾患の症状を発症後に(すなわち治療ワクチン接種を受ける)、"がんワクチン"で免疫付与されることが想定される。
【0105】
H11を発現する宿主細胞および少なくとも1つのさらなるサイトカイン、特にGM-CSFはある腫瘍の関連において、H11のみを発現する細胞より強くさえあるインビボ抗腫瘍反応を提供可能である。したがって、H11を発現する細胞および少なくとも1つのさらなるサイトカインが、増殖性疾患の予防または治療のための医薬品の製造に使用されることが好ましい。
【0106】
H11ポリペプチドおよびH11を発現する宿主細胞、特にH11ポリペプチドは種々の血球減少症の治療に使用できるが、本発明の使用にしたがって治療できるまたは予防できる好適な血球減少症は、血小板減少症、血球減少症および汎血球減少症からなる群から選択される。
【0107】
自発的にもしくは非自発的に放射線、とりわけx-線、α、βおよびγ-放射にさらされた人または動物は、その放射の期間と強さによるが、重篤な局所または全身毒性に苦しむことがある。特に種々の疾患(増殖性疾患を含む)の放射線治療において、放射線治療に関連した毒性は、治療に適用し得る用量および/または放射線治療の頻度をしばしば制限している。しかし例えば、放射線で毎日治療した場合の乳がんの局所再発の可能性は50%で(Barkerほか、1980)、1日2回治療すると局所再発の可能性はわずか20〜27%である(Fastenbergほか、1985)ことが知られている。したがって非自発的な放射線被ばくの結果を改善することが可能な物質ならびに、同じレベルの毒性でより高い放射線量を施すことができるかまたはより低いレベルの毒性で現在使用している放射線治療と同じ放射線量を施すことができる物質を発見することが望ましい。驚くべきことに発明者たちは、H11ポリペプチドおよび/またはH11を発現する宿主細胞、特にH11ポリペプチドが、放射線の影響を防止するおよび/または治療するおよび/または改善するのに使用可能であること、すなわち放射線保護剤として作用可能であることを発見した。この目的を達成するために、H11ポリペプチドおよび/またはH11を発現する宿主細胞を、放射線被ばくの前、その間および/または放射線被ばくの後に投与可能である。特に放射線治療の関連から、療法の前と療法の後にH11が投与されることが好適である。
【0108】
さらに、H11ポリペプチドおよび/またはH11を発現する宿主細胞、特にH11ポリペプチドはさまざまなIL 11依存炎症性疾患の治療に使用可能であるが、本発明の使用にしたがって治療できるまたは予防できる好適なIL 11依存炎症性疾患は、下記からなる群から選択される:肝臓障害;肝炎;肝障害;敗血症;化学療法誘引または放射線誘引組織障害、特に肺損傷;炎症性疾患、特に炎症性腸疾患、関節リウマチ、炎症性肝疾患;粘膜炎;アレルギー;子宮内膜症;脈管炎;内皮炎症に関連した血管疾患、特に虚血性心疾患もしくは末梢血管障害;および乾癬。
【0109】
同様に、本発明の使用にしたがって治療できるまたは予防できる好適なIL-11依存変性疾患は、変性CNS疾患、PNS疾患および骨関節炎からなる群から選択される。本発明の使用にしたがって治療できるもしくは予防できるIL-11依存または仲介軟部組織異常は、肥満および突発性女性不妊からなる群から選択される。
【0110】
本発明のIL-11 R作用物質の効果は、一つ以上のサイトカインの同時投与によって増強され得るので、H11またはH11を発現する宿主細胞(そしてもし所望ならサイトカイン)の投与の前、同時にまたはそれに続いて少なくとも1つのさらなるサイトカインを投与することが好ましい。
【0111】
IL-11は細胞の分化を活性化し得ることが知られている。これは、たとえば海馬神経の分化について示された。現在では、部分的に分化した自己、同種異系のまたは異種の幹細胞が患者に注入され、これらが標的組織に局在して末端分化をうけると想定される。この分化プロセスを容易にしかつ支援するために、発明者たちは本発明のH11融合ポリペプチドまたは本発明のプロセスにしたがって得られるH11融合ポリペプチドを、幹細胞療法の間のアジュバント療法のための医薬品の製造に使用することを想定している。多くの様々な幹細胞治療の適用が従来技術において議論され、かかる幹細胞療法の例はパーキンソン病およびADAの治療を含むがこれに限定されない。同様に、本発明のまたは本発明のプロセスにしたがって得られるH11融合ポリペプチドは、細胞、特に幹細胞または前駆細胞のインビトロでの分化の促進に使用可能である。かかる分化細胞は次いで、たとえばパーキンソン病およびADAのような治療そのものに使用可能である。
【0112】
H11発現細胞、たとえばH11修飾メラノーマ細胞は、細胞ワクチン接種の技術分野で公知のさまざまな服用計画およびアプリケーションスキームに適用可能である。服用とアプリケーションは、標的またはワクチン、たとえば腫瘍および/または腫瘍ワクチン、に対する持続的免疫反応を導き出すためにさまざまである。ワクチン接種に対する患者の免疫反応は、当業者に公知のELISAを含めた任意の技法で測定可能であるが、これに限定されない。増殖性疾患の治療と予防においてH11発現細胞、特にH11修飾メラノーマ細胞が、細胞数1×105〜1×1010/1回用量の範囲で、好適には細胞数1×106〜5×108/1回用量の範囲で投与される。用量は当業者に既知の任意の経路で患者に注入可能で、たとえば筋肉内投与(i.m.)、皮内(i.d.)、皮下経路(s.c.)、好適にはs.c.経路で注入される。ワクチン接種の典型的なスケジュールは、誘導期とブースト期の2期からなる。誘導期では、ワクチンは典型的には短期間に数回投与される。たとえば2日〜2週間の間隔で2回〜12回、好適には1〜2週間の間隔で4〜10回、より好適には2週間の間隔で6〜8回、そしてブースト期では月1回投与される。
【0113】
以下の例は本発明の好適な実施態様を実証するために組み入れたものである。発明者たちによって発見された本技法による本例で開示された技法は、本発明の実践においてうまく機能しかつその実践において好ましいモードであろうと考えうることは、当業者によって理解されるべきである。しかし当業者は、本開示に鑑み、付属の請求の範囲に定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施態様に多くの変更がなされ得ることを理解すべきである。すべての引用された参考文献は参考として本明細書に援用された。
【実施例】
【0114】
H11の作出には、M/1−Q/365からの完全sIL-11 Rアミノ酸配列を使用した。蓄積したデータによれば、下記の予測領域を区別可能であった:(i) 単一ペプチド−位置M/1 - S/23、(ii) IG様領域−D1領域、位置G/38−Y/111、(iii) 2つのFNIII領域−D2およびD3ドメインからなるCHDドメイン、位置はそれぞれP/112−R/217およびP/218−T/314、および(iv) 受容体プレメンブレン領域−D3ドメインと膜貫通領域間の部分、位置P/315−Q/365(Nandurkerほか、1996)。一般概念に準拠して、受容体から膜貫通領域のアミノ酸26個と細胞質領域のアミノ酸31個をそれぞれ取り去った。
【0115】
IL-11の使用した配列は完全成熟IL-11タンパク質(配列A/19〜L/199)をコードし、ここではすべての予測した領域、ドメインA、B、C、DおよびループA-B、B-C、C-Dを区別可能であった。上記のようにIL-11はその受容体との相互作用のために3つの特定結合部位(I、II、III)を必要とする。これらの部位は異なるドメインとループからのアミノ酸の組み合わせで形成される。したがって、その活性を表示するには完全サイトカインが必要である。両タンパク質(sIL-11 RとIL-11)はPCR/ライゲーション反応によりcDNAレベルで連結され、リンカーは適用されなかった。融合分子の正しい折り畳みを維持するのに、IL-11 RのC-末端およびIL-11のN-末端の自然配列が使用された。IL-11 Rのプレメンブレン領域(約50個のアミノ酸)は、IL-11の16 N-末端残基と共に、らせんではなく多分フレキシブルで、これが複合体の正しいアセンブリーを可能にしている。図1はアミノ酸(AA)配列を示し、ここでは分子の種々のドメインが示されている。
【0116】
新規のデザイナーサイトカインは、標準のPCR/ライゲーション反応によりcDNAレベルで構築された(実施例1)。実施例1に示したプライマーを使用して、sIL-11 R(位置1〜1095)のcDNAフラグメントを増幅した。順方向プライマーは、制限部位SalIの追加の配列を有している。さらに、ATGの前部のACCポリヌクレオチドとATGの直後の置換A/Gを、コザックのコンセンサスと制限部位NcoIを提供するために、それぞれ導入した。この変異株によって、さらに位置2S→2Gにおけるアミノ酸置換の導入となった。逆方向プライマーは、IL-11の5'配列上で、制限部位XhoIが生じる場所にオーバーラップする追加の配列を有している。IL-11のcDNAは、実施例1に示したプライマーを使用して増幅した(位置55〜600)。増幅されたフラグメントはIL-11リーダー配列を欠いていたが、例外はリーダー配列の最後の3つのアミノ酸(A V A)をコードする自然順序で、これらは今はIL-11成分のN末端にある。逆方向プライマーは追加の制限部位−SalIを含んでいる。増幅されたフラグメントは実施例1にしたがってライゲーションされた。H11の配列を図2に示し、その構築のステップが図3に例証されている。
【0117】
次のステップとして、バキュロウイルス発現系における組み換えタンパクH11の産出が行われた(実施例2)。組み換えドナープラスミドpFastBac1/H11が構築され、組み換えbacmidが部位特異的転位によって生成された。次に、組み換えバキュロウイルスがSf21昆虫細胞において増殖され、ハイファイブBTI-TN-5B1-4昆虫細胞における融合タンパク質H11の産出のための最適化システムで使用された。融合タンパク質の精製はIEXとHICクロマトグラフィーで行われ、その概要を以下に示す。取得されたタンパク質は膜ろ過によって濃縮し、これをインビトロ研究に使用した。
【0118】
さらに、レトロウイルスベクターpDCCMV/H11、MIHV/GM-CSFおよびアデノウイルス移送ベクターpShuttle-CMV/H11が構築され(それぞれ実施例3と4)、マウスメラノーマ(B78H1)と腎がん(Renca)細胞の修飾に使用された(実施例6)。修飾されたがん細胞は融合タンパク質H11を発現、処理および分泌が可能であった(図8と9)。
【0119】
H11修飾がん細胞ならびに精製した組み換えH11から収集した培地は、3つの異なるインビトロバイオアッセイで生物活性をテストされた(実施例7)。ヒト肝がん細胞株HepG2-アッセイではsIL-11 Rが急性期タンパク質の産出を誘引でき、B9(ハイブリドーマ細胞株)バイオアッセイではIL-11が細胞増殖を誘引し、およびBa/Fgp130バイオアッセイではIL-11/sIL-11 R複合体が細胞増殖を誘引する。
【0120】
さらに、マウス腫瘍拒絶モデルを使ってH11のインビボ活性を評価した(実施例8)。マウスメラノーマならびに腎がん細胞のH11修飾で、マウスにおける腫瘍原性が低下し、長続きする抗腫瘍免疫を刺激した。H11とGM-CSFの両者によるRenca細胞の修飾は、このモデルにおいて最も効果的であった(詳細記述は実施例8を参照)。
【0121】
H11修飾ワクチン(GMTV/H11)の抗がん活性に関与した細胞機序を評価するため、実験を2セット実施した(詳細記述は実施例9にあり)。我々はSCIDマウスを使用して、原発腫瘍に対するH11の活性が非特異性免疫反応に関連しているかもしれないことを実証した。免疫細胞浸潤(免疫組織化学)を分析して、免疫反応の誘導期にはCD4+細胞もCD8+細胞も関与していないことをわれわれは見つけた。しかしNK細胞の濃密な浸潤を観察し、これにてH11で修飾された原発腫瘍の成長阻害におけるこれらの細胞の重要な役割を確認した。H11/GMTVで刺激された主なエフェクター細胞はNK細胞ならびに後期ではCD4+Tリンパ球であった。
【0122】
実施例1:新規デザイナーサイトカイン・ハイパーIL-11(H11)の構築
ヒトIL-11のcDNA(配列位置55〜600で、これはアミノ酸残基19〜199に対応する)が、下記のプライマーを使用した標準PCR反応で増幅された:
【0123】
IL-11順方向:5'GCT GCT GCC CCT GGG CCA(配列番号7)
IL-11逆方向:5'TCC GCG GCC GCT ATG GCC GAC GTC GAC TCA CAG CCG AGT CTT CAG(配列番号8)
【0124】
IL-11の増幅されたフラグメントがpGEM-Teasyベクター(Promega、ウイスコンシン州マディソン)にクローン化された。ヒトIL-11 RのcDNA(位置1〜1095で、これはアミノ酸残基1〜365に対応する)が、制限部位SalIを含む順方向プライマーおよびIL-11の5'配列上で、制限部位XhoIが生じる場所にオーバーラップする余分の配列を有する特別逆方向プライマーを使用して、PCR反応で増幅された。使用したプライマーの配列は下記の通りである:
【0125】
sIL-11 R順方向:5' ACG GGT CGA CGC CAC CAT GGG CAG CAG CTG CTC AGG GCT G(配列番号9)
sIL-11 R逆方向:5' AAC TCG AGG GGG GCC AGG TGG TGG CCC AGG GGC GAC AGC CTG CTC CAC AGA GTC CCT(配列番号10)
【0126】
PCR産物がpGEM-Teasyベクター中にクローン化され、次いでSalIおよびXhoI制限酵素で消化された。精製されたフラグメントSalI/XhoIはプラスミドpGEM-Teasy/IL-11のXhoI部位にクローン化され、ハイパーIL-11(H11)と呼ぶsIL-11 RおよびIL-11の融合cDNA(人工的リンカー配列は有していない)の作出に至る。
【0127】
新デザイナーサイトカインH11のヌクレオチド配列が図2に、その構築のステップが図3に例証されている。
【0128】
実施例2:組み換えH11の産出
組み換えドナープラスミド(FastBac1/H11)の構築
プラスミドpFastBac1を使用して組み換えタンパク質H11を発現するウイルスを生成した。pGEM-Teasy/H11プラスミドはSalI/SphI制限酵素で消化され、次に精製フラグメントはSalI/SphI制限部位に、pFastBac1プラスミド(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールスバッド)中にクローン化された(図4)。
【0129】
部位特異的転位による組み換えbacmidの生成
組み換えバキュロウイルスの生成は、E.Coli内に増殖したバキュロウイルス・シャトルベクター(bacmid)への発現カセットの部位特異的転位に基づいている。
【0130】
pFastBac1/H11プラスミドが、mini-attTn7標的部位を有するbacmidとヘルパープラスミドを含むDH10Bacコンピテント細胞中にトランスフォームされた。pFastBac1ドナープラスミド上のmini-Tn7要素は、ヘルパープラスミドによって提供された転位タンパク質の存在下に、bacmid上のmini-attTn7標的部位に転位された。組み換えbacmidを含むコロニーが、抗生物質選択とブルーホワイトスクリーニングで同定された。次に、高分子量のmini-prep DNAが調整された。単離されたDNAをPCR反応で分析して、挿入遺伝子の存在を確認した。下記のプライマーが使用された:
【0131】
順方向#9:5' ACC CAC CCG CTA CCT CAC CT(配列番号11)
逆方向#2;5' GTC AGG AGC ACG GTG CT(配列番号12)
【0132】
組み換えbacmid DNAによるSf21細胞のトランスフェクションと組み換えバキュロウイルスの増殖
Effectene Transfection Reagent(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)を使用してSf21(ヨトウガ(Spodoptera frugiperda))細胞が組み替えbacmid DNAでトランスフェクトされた。3日後に上清を収集し、ウイルスの力価を評価した。ウイルスストックを増幅するために、無血清培地(SEM)に懸濁した1.4 x 106個のSf21細胞を感染の多重度(MOI)0.1で72時間インフェクトした。組み替えH11バキュロウイルスの増幅手順を2回実施し、最後に高品質、高力価(2.87 x 108 pfu/ml)のマスターウイルスストックが得られた。組み替えウイルスストックは 80℃で保管された。
【0133】
異種タンパク質の産出の最適化
組み換えH11タンパク質の最適な産出を達成するために、細胞株(Sf21とイラクサギンウワバ‐ハイファイブBTI-TN-5B1-4)、培地(Sf900 IIおよびExpress 5)、ウイルス感染のパラメータ(MOI)および発現動態などの種々の因子が考慮された。組み替え遺伝子産物を発現するために、細胞密度が1、1.5および2 x 106細胞数/mlのハイファイブ細胞の懸濁培地を、MOI 0.5、1、5および10 pfu/mlでインフェクトし、H11の発現をいろいろな回収時間点においてウエスタンブロット分析でモニターした。組み換えH11タンパク質の最適な産出は、Express 5(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州カールスバッド)培地中のハイファイブBTI-TN-5B1-4細胞を使用して、MOI 5において細胞密度が1 x 106細胞数/mlで48時間かけて達成された。さらに、H11の産出がプロテアーゼ阻害カクテルの存在下で行われ、1:1000の希釈率で培養基(Sigma-Aldrich Corporation、ミシガン州セントルイス)で使用された。
【0134】
組み換えH11タンパク質の精製
回収された上清は、20 mMの1,3ジアミノプロパン緩衝液(pH 11.8)で1:8の比率で希釈された。次に、沈降タンパク質を8,000 g/4℃における遠心分離で除去し、Q XLアニオン交換媒体(Amersham Pharmacia Biotech、英国バッキングハムシャー)を使用してバッチIEXクロマトグラフィーを4℃で一晩実施した。吸着されたタンパク質を、0.5 M NaCl、20 mM 1,3ジアミノプロパン緩衝液(pH 10.5)中で回復させ、NaClの濃度は4 Mに上昇し、カラムHICが実施された。フェニルFF(低基質)媒体(Amersham Pharmacia Biotech、英国バッキングハムシャー)を4 M NaCl、20 mM 1,3ジアミノプロパン緩衝液(pH 10.5)で平衡させ、タンパク質を装填し、高モル開始緩衝液で洗浄し、次いで20 mMの1,3ジアミノプロパン緩衝液(pH 10.5)中で直線下降勾配の塩濃度(4〜0 M NaCl)で溶出させた。組み換えH11タンパク質を含む画分をプールし、カットオフ30 kDaのメンブレン(Millipore Corporation、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して膜ろ過によって濃縮した。
【0135】
実施例3:レトロウイルスベクターDCCMV/H11およびMIHV/GM-CSFの構築と組み替えレトロウイルス粒子の生成
H11のcDNAをNotI制限酵素で消化し、精製したフラグメントをジシストロニック・ダブルコピー・レトロウイルスベクター(DCCMV)(Wiznerowiczほか、1997)のNotI部位にクローン化した。3'LTRのU3領域に置いたDCCMVの発現カセットは、H11下流の発現を促進するCMV-IEプロモータおよびNeo耐性遺伝子を含んでいた。DCCMV/H11の構築のステップは、図5Aに示されている。
【0136】
MIHV/GM-CSFベクターの構築は、NotI消化によって切り取られたマウスGM-CSF cDNAを、pGEM-Teasy/mGM-CSFプラスミドからMIHVレトロウイルスベクターのNotI部位へクローニングすることによって行われた(図5B)。
【0137】
図5Cは、本研究で対照として使用されたレトロウイルスベクターMSCV/hIL-11(マウス幹細胞ウイルス)を示す(Dr.R Hawley、カナダ、トロントからの贈呈)。
【0138】
DCCMV/H11ベクターは、エレクトロポレーション(250 V/104 ms)によって両種性パッケージング細胞株(PA 317)にトランスフェクトされた。抗生物質G418(500μg/ml)の存在下での14日間の選択の後、組み換えレトロウイルスを含む上清が収集され、-80℃で凍結された。hIL-11およびGM-CSFを担持する組み換えレトロウイルスを産生するため、上記の手順が実施された。ただしMIHV/GM-CSFベクターを使用した場合は、ハイグロマイシン(150μg/ml)における選択は例外である。
【0139】
実施例4:アデノウイルス移送ベクターpShuttle-CMV/H11の構築と組み替えアデノウイルスの生成
NotI/SalI制限酵素で消化されたH11のcDNAが、pShuttle-CMV/H11を生成する移送プラスミドpShuttle-CMV(Q-biogene、カリフォルニア州カールスバッド)のNotI/XhoI部位にクローン化された(図6)。次に、PmeI pShuttle-CMV/H11プラスミドで線形化されたものが、アデノウイルス遺伝子pAdEasy1(Q-biogene、カリフォルニア州カールスバッド)を担持するプラスミドと共に細菌中に同時トランスフォームされ、ここで相同組み換えが生じる。カナマイシン(50μg/ml)中で選択の後、組み換えプラスミドが単離され、PacIで線形化されそして、アデノウイルス粒子を生成するのに必要なイントランス(in trans)アデノウイルスタンパク質を提供するQBI-293A細胞(Q-biogene、カリフォルニア州カールスバッド)にトランスフェクトされた。次に、H11を担持する該アデノウイルスがQBI-293A細胞で増幅され、不連続塩化セシウム勾配法で精製され、PBS中で透析され、-80℃で保管された。高品質マスターウイルスストックの力価は1.25 x 108 pfu/mlであった。
【0140】
実施例5:組み換えH11タンパク質を発現するレンチウイルスの構築
組み換えH11タンパク質を発現するレンチウイルスを構築するため、Didier Trono(たとえば、Dullほか、1988またはZuffereyほか、1998を参照)によって開発されたプラスミドを3つ使うヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくレトロウイルスシステムを使用した。レンチウイルスベクター粒子は、次のプラスミドを有するベクター産生細胞株の一時的トランスフェクションによって生成された:形質導入ベクター、パッケージングベクターおよびエンベロープベクター。形質導入ベクターpWPXLは、パッケージング、逆転写および統合、内部プロモーターおよびエンハンサーおよびcDNAのクローニングのための固有な制限部位に必要なHIVのシス作用配列を含む。パッケージング構築物pCMV-deltaR8.91はGag、Pol、Tatおよびrevウイルスタンパクをコードする。エンベロープベクターpMD2G-VSVGは、VSVの表面糖タンパク質(G)を発現する。pWPXLは3'長末端反復(LTR)に欠失を有する自己不活性化ベクターで、これがLTRプロモータ活性を無効にした。
【0141】
pWPXL-EF1alpa-GFPプラスミドを使用して、EF1alphaプロモーターの制御下で組み替えタンパク質H11を発現するレンチウイルスを生成した。GFPのcDNAはPmeIとEcoRIで切除し、平滑末端を生成するためにDNA Iポリメラーゼ・クレノウ・フラグメントを使用してPmeI制限部位を埋めた。H11のためのcDNAを得るために、pGEM-Teasy/H11プラスミドをSpeIで消化し、DNA Iポリメラーゼ・クレノウ・フラグメントで平滑末端を作成し、ついでプラスミドをEcoRIで消化した。H11の精製フラグメントを、プラスミドpWPXLの平滑末端/EcoRI制限部位にクローン化した。
【0142】
H11 LV-H11を発現するレトロウイルスベクターの産生は、3つのプラスミドpWPXL-H11、pCMV-deltaR8.91、pMD2G-VSVGを有する293FT細胞株(Invitropgen)の同時トランスフェクションに基づいていた。293FT細胞株は293F細胞株から導き出され、SV40ラージT抗原を安定して発現する。293F細胞株は293細胞株の急増殖している変異株で、せん断されたヒトアデノウイルス5 DNA型でトランスフォームされたヒト一次胚腎臓から構築される。
【0143】
LV-H11を使用して293FT細胞株とCD34+一次ヒト細胞を形質導入した。PCR法によって安定した遺伝子導入が確認された。ハイパーIL-11のIL-11部とsIL-11 R部に対応するプライマーを2セット使用して、形質導入細胞から単離されたゲノムDNAからIL-11とsIL-11 Rを増幅した。293FT細胞およびCD34+におけるH11タンパク質の発現を、ウエスタンブロット法で分析した(図7)。
【0144】
実施例6:マウスがん細胞(B78H1およびRenca)の遺伝子組み換え
マウスがん細胞の形質導入のために、H11を考慮した組み換えレトロウイルスを含む、収集された上清を使用した:メラノーマ細胞株(B78H1)と腎がん細胞株(Renca)。形質導入された細胞は、先に述べたようにしてG418中で選択され、次いでいくつかのクローンが単離された。得たクローン由来のRNAが標準ChomczyuskiとSacchi(ChomczyuskiとSacchi、1987)手順にしたがって単離され、H11の発現を、hIL-11およびhIL-11 RのcDNAを特定のプローブとして、ノーザンブロット分析を使って分析した。hIL-11およびhIL-11 RのmRNAが正確に同位置に発見され、いずれの標的配列も1つのmRNA上にあることが示唆された。ノーザンブロット分析によって、最高レベルのH11発現のクローンを選択可能となった。さらに抗IL-11 R抗体を使用して、ウエスタンブロット法でこれらのクローンからの上清を分析し、H11が細胞から分泌されることを例証した(図8)。
【0145】
対照試験のために、MSCV/hIL-11ベクターを使用してB78H1細胞を形質導入し、Renca細胞をMIHV/GM-CSFベクターで修飾した。さらに、Renca/H11細胞をMIHV/GM-CSFで同時形質導入し、ハイグロマイシン(150μg/ml)中で選択した。培養基へインビボで分泌したタンパク質(IL-11とGM-CSF)を、ELISA(RαD、ミネソタ州ミネアポリス)で測定した。
【0146】
さらに、B78H1細胞をH11を担持するアデノウイルスで形質導入した。一晩培養後、媒体を交換し、2日後に培養基におけるH11の存在をウエスタンブロット法で確認した(図9)。
【0147】
実施例7:インビトロにおけるH11活性の評価
3つの異なるバイオアッセイHepG2、B9およびBa/Fgp130で、B78H1/H11を形質導入した細胞由来の組み換えH11および上清の生物活性を分析した。
【0148】
HepG2細胞(ヒト肝がん細胞株)は内因性のIL-11を分泌し、これが細胞を外因性IL-11に対して無反応にしている。しかしIL-11に対するHepG2の無感覚は、sIL-11 Rの添加によって回復可能である。IL-11でなくH11でHepG2細胞を刺激すると、α1-抗キモトリプシンの分泌の増大を生じ(ロケット免疫電気泳動で測定)、融合タンパク質H11がインビトロで生物学的に活性であることを示唆している(図10)。
【0149】
B9細胞(ハイブリドーマ細胞株)はIL-11 R受容体とgp130受容体を所有しており、これがIL-11に対してこれらを反応性にしている。IL-11およびH11(H11を担持するレトルウイルスおよびアデノウイルスで形質導入したB78H1細胞から収集した媒体)でB9細胞を刺激すると、シグナル変換に至り、STAT3分子のリン酸化反応を生じ(図11)、これは最終的にB9細胞の増殖となった(図12と13)。これらの結果は、H11融合タンパク質がインビトロで活性であることをさらに示唆している。
【0150】
Ba/F細胞(pro-Bリンパ球細胞株)の固有な特徴は、IL-11/sIL-11 R複合体に対してこれらの細胞を無反応にしている、gp130膜分子の欠失である。しかしgp130 cDNAでBa/F細胞をトランスフェクションすると、これらはIL-11とsIL-11 Rの組み合わせに対して反応性になる。組み換えH11でBa/Fgp130細胞を刺激すると、MTTテストで測定される場合これらの細胞が増殖した(図14)。
【0151】
得られた結果は、3つの異なる系(バキュロウイルス発現系、ならびにレトロウイルスをおよびアデノウイルスを形質導入した真核細胞によって分泌されたタンパク質)で産生されたH11タンパク質が、インビトロで活性であることを例証した。さらに、レトロウイルスベクターとアデノウイルスベクターの形質導入に続いて、真核細胞から融合タンパク質が分泌された。Ba/Fgp130アッセイで、新規のデザイナーサイトカインH11が複合体として作用していることが証明された。
【0152】
実施例8:動物モデルにおけるH11のインビボ抗腫瘍活性
H11の抗メラノーマ活性を評価するために、形質導入したB78H1細胞(5 x 105)をC57BLxC3Hマウスに皮下注射し、腫瘍増殖と生存をモニターした。対照としてモックとIL-11を形質導入した細胞が使用された。
【0153】
H11のB78H1細胞への形質導入は、IL-11および対照より有意に高いレベルで腫瘍増殖を抑制した。腫瘍は後に出現し、B78H1/H11細胞の注入を受けたマウスにおける腫瘍の平均体積は、対照群より数倍小さかった(図155A)。B78H1/H11細胞を注入されたマウスの全生存は、モックおおびIL-11形質導入B78H1細胞を注入されたマウスより7週間長かった。B78H細胞とB78H1/IL-11細胞を注入した動物は、最長で7週間生存し、一方B78H1/IL-11細胞を注入したマウスの50%は12週間生存した(図15B)。
【0154】
実験の第2シリーズにおいて、投薬を受けたことのないマウスを最初にモックとB78H1形質導入細胞で皮下注射して免疫性を与え、2週間後に親B78H1細胞を再投与した。B78H1細胞で免疫を与えたマウスの90%が7週間目に腫瘍を発症したが、同時にB78H1/H11とB78H1/IL-11を予防接種された動物で腫瘍を発症したのはそれぞれ30%と50%のみであった。H11修飾ワクチンで免疫を与えたマウスにおける腫瘍の平均体積は、対照群と比較した場合、数倍小さかった(図16A)。対照とIL-11を形質導入したワクチンで予防接種したマウスは、9週間生存し、一方H11修飾ワクチンで免疫を与えた動物の70%が12週間生存した(図16B)。
【0155】
さらに、H-11とGM-CSF遺伝子で修飾したがんワクチンを、腎細胞がん(Renca細胞)の腫瘍拒絶モデルにおいて分析した。雌Balb/cマウス(年齢8〜12週)が使用された。それぞれが動物10匹からなる実験群を4つ作出した。対照マウスはモックを形質導入したRenca細胞を投与され、ほかの実験群はGM-CSF、H-11を発現するRenca細胞またはH11とGM-CSFを同時発現する細胞をそれぞれ投与された。免疫付与は5x105の対照または0.125 ml のPBS中に懸濁した遺伝子組み換え細胞をマウスに皮下注射することで実施した。2週間後、マウスに親Renca細胞を皮下注射にて遠位に投与した。ワクチンの有効性は、腫瘍の出現、増殖動態および動物の生存の分析に基づいて評価した。
【0156】
非修飾の細胞で免疫を与えられたマウスでは、投与後4週間で腫瘍が出現し、これはほかの群より速かった。対照群のすべての動物が、親Renca細胞の投与7週間以内に腫瘍を発現した。Renca-GM-CSFで免疫を与えたマウスでは、投与後5週間で腫瘍の発現が始まった。全体の実験を通じて、この群のマウスの20%が腫瘍を発症しないままであった。Renca-H11ワクチンによる免疫付与で、動物の70%が腫瘍から保護され、マウスの30%において、対照またはGM-CSF-分泌Renca細胞を投与された群より遅れて腫瘍が出現した。H11とGM-CSF遺伝子を同時発現するワクチンで免疫付与されたマウスは、移植された親腫瘍細胞を完全に拒絶した(図17A)。
【0157】
モック形質導入Renca細胞で免疫付与されたマウスにおいて、腫瘍増殖の最も特筆すべき動態が観察された。Renca-GM-CSFおよび-H11ワクチンによる免疫付与は、腫瘍増殖の動態を低下させたが、Renca-H11はRenca GM-CSFワクチンより強力な保護効果を実証した。Renca H11/GM-CSF多重遺伝子ワクチンで免疫付与されたマウスでは、腫瘍は観察されなかった(図17B)。
【0158】
対照または遺伝子組み換えRenca細胞で免疫を与えたマウスの生存を、実験の第2セットで分析した。対照Renca細胞で免疫を与えたマウスにおいて最高のそして最速の死亡率が観察された。Renca GM-CSF、H11およびH11/GM-CSFワクチンによる免疫付与は、親Renca細胞を投与されたマウスの生存を改善した。実験の最後において、マウスの20%、70%および100%がそれぞれ依然として生存していた(図17C)。
【0159】
実施例9:IL-11/R-FPと比較したH11のインビボ抗腫瘍活性
H11とIL-11/R-FPの抗腫瘍活性を比較するために、H11またはIL-11/R-FP cDNAを形質導入したB78H1細胞と、モック形質導入修飾細胞が皮下注射にてマウスに注入され、腫瘍原性が分析された。IL-11/R-FPよりH11が、腫瘍増殖において良好な反応を示した(図18AおよびB)。
【0160】
実施例10:H11修飾ワクチン(GMTV-H11)の抗メラノーマ活性に関与する細胞機序の評価
実験の最初のセットではSCIDマウスが使用された。これらマウスはTリンパ球とBリンパ球を欠失しているが、NK細胞を所有しており、これによってH11に仲介された原発腫瘍拒絶におけるこれら細胞の役割の評価が可能になった。B78H1/IL-11およびB78H1/H11細胞を皮下注射にて投与されたマウスにおいて、対照のマウスより1週間遅れて腫瘍が出現した。B78H1/H11細胞を注入されたマウスにおける腫瘍の平均体積は、モックとIL-11形質導入B78H1細胞を注入されたマウスより有意に少なかった(図19A)。B78H1/H11細胞を接種されたSCIDマウスの生存は、対照群と比較して伸びていた。B78H1およびB78H1/IL-11細胞を投与された動物は、それぞれ8週間と9週間生存したが、B78H1/H11で免疫を与えられたSCIDマウスの50%は12週間生存した(図19B)。これらの実験でH11の抗原発腫瘍活性が非特異的免疫反応に関連しているかもしれないことが示唆された。
【0161】
実験の第2のセットにおいて、IL-11およびH11遺伝子組み換え腫瘍ワクチンで誘発された抗メラノーマ免疫反応の誘導期とエフェクター期の分析が行われた。
【0162】
誘導期を、対照とGMTVを未感作マウスに注入することにより、そして免疫細胞の浸潤の分析(免疫組織化学)によって、研究した。対照B78H1細胞は、単一のCD4+およびCD8+ Tリンパ球を浸潤させた。GMTV-IL-11細胞は、CD4+およびCD8+ 細胞を密に浸潤させ、一方B78H1/H11接種マウスではそれらのいずれも検出されなかった。これらの結果は、IL-11およびH11 GMTVによって誘引された抗メラノーマ反応の誘導期は、異なる機序によって仲介されることを示した。さらにB78H1/H11細胞は、NK細胞を密に浸潤させ、原発腫瘍の増殖抑制におけるこれらの細胞の重要な役割が確認された。対照GMTVで事前に免疫付与したマウスに親B78H1細胞を再投与したエフェクター期では、CD4+のみの細胞の浸潤が観察された。しかし、IL-11-GMTVで免疫付与したマウスにおけるB78H1腫瘍は、CD4+およびCD8+を密に浸潤し、一方B78H1/H11による免疫付与ではNK細胞の大量の浸潤が生じた。これらのデータは、CD4+ならびに後期ではCD8+リンパ球がIL-11-GMTVで刺激される主要エフェクター細胞であり、一方H11-GMTVはNKならびに後期ではCD4+細胞を活性化することを示している。
【0163】
図20と21は、IL-11-およびH11-GMTVで誘引された抗メラノーマ免疫反応の誘導期とエフェクター期の分析をまとめたものである。
【0164】
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【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】融合タンパク質H11(配列番号3)の従来の一文字コードを使用したアミノ酸配列を示す。sIL-11 RとIL-11の配列はそれぞれ黒色とグレーで示されている。分子の異なるドメインは次のように示される:N-末端シグナルペプチド(薄い下線)、Ig-様ドメイン(二重下線)、二つの100 AAサブドメイン(D2およびD3)で構成された200 AAヘモポイエチンドメイン(囲み領域とサブドメインは破線で示す)、受容体プレメンブレン領域(配列の頂部のライン)およびIL-11分子、ここではCNTFの公知の三次元構造に従い、予測 -らせん領域が位置しており、太い下線で示されている。
【図2】H11(配列番号6)の核酸配列を示す。sIL-11 RとIL-11の配列はそれぞれ黒色とグレーで示されている。黒色の矢印は、sIL-11 Rフラグメントの増幅に使用されるプライマーの配列を示し、グレーの矢印はIL-11に使用したものを示す。配列の上および下の矢印はそれぞれ順方向プライマーと逆方向プライマーを示す。さらに、両構成要素を接合するのに使用された制限部位XhoIが示されている。
【図3】実施例1に詳細を示した新規のデザイナーサイトカインの構築ステップの略図である。一部の制限部位が示されている:S、X、E、No、N、B、XbはそれぞれSalI、XhoI、EcoRI、NcoI、NotI、BamHI、XbaIを意味する。
【図4】バキュロウイルス発現系(実施例2)。
【図5】GMTV(実施例3)。
【図6】GMTV(図5、実施例3)を生成するためのバキュロウイルス発現系(図4、実施例2)における組み換えタンパク質の発現に使用したベクター、およびアデノウイルス構築(図6、実施例4)のための組み替え移送ベクターpShuttle-CMV/H11の略図である。
【図7】ウエスタンブロットのオートラジオグラムである。形質導入293FT細胞とCD34+細胞由来のならし培地を電気泳動処理し(PAGE/SDS)、PDVメンブレンに移し、抗IL-11および抗sIL-11 R抗体(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州サンタクルズ)と二次抗体としてヤギ抗ウサギIgG/HRP(DAKO、デンマークGlostrup)を使用して分析した。H11を担持する組み換えバキュロウイルスでインフェクトしたハイファイブ細胞から収集した組み替えH1が陽性対照の役目をした。
【図8】ウエスタンブロットのオートラジオグラムである。
【図9】ウエスタンブロットのオートラジオグラムである。形質導入B78H1細胞由来のならし培地を電気泳動処理し(PAGE/SDS)、PDVメンブレンに移し、抗IL-11R抗体(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州サンタクルズ)と二次抗体としてのヤギ抗ウサギIgG/HRP(Dako、デンマークGlostrup)を使用して分析した。この分析で融合タンパク質が適度に発現しており、組み換えレトロ‐およびアデノウイルスで修飾した腫瘍細胞によって分泌したことが示された(それぞれ図8および9、実施例6)。
【図10】ロケット免疫電気泳動の写真である(実施例7)。簡単に説明すると、HepG2細胞を組み替えIL-6および対照細胞とH11修飾B78H1細胞由来のならし培地で、いろいろな濃度刺激(収集した培地の百分率)で刺激した。48時間後に刺激したHepG2細胞から収集した培地を、ロケット免疫電気泳動処理で分析して 1-抗キモトリプシンの存在を調べた。
【図11】ウエスタンブロットのオートラジオグラムで、ここでSTAT3分子の活性化を分析した。簡単に説明すると、下記の種々のサイトカインの存在下で3×106 B9細胞を培養した:ハイパーIL-6、H11(ハイパーIL-6のcDNAとH11のcDNAを有する修飾B78H1細胞からならし培地の50%をそれぞれ収集した)、組み換えIL-11(0.6 ng/ml)、組み換えsIL-11 R(100 ng/ml)および組み替えIL-11/sIL-11 R(0.6/100 ng/ml)の複合体。30分後に細胞を溶解し、タンパク質を電気泳動処理し(PAGE/SDS)、PDVメンブレンに移し、抗-STAT3-P抗体(New England BioLabs、マサチューセッツ州ベバリー)および二次抗体ヤギ抗ウサギIgG/HRP(Dako、デンマークGlostrup)を使用して分析した。
【図12】H11を有する組み換えレトロウイルスを有するB78H1細胞の形質導入後に収集した培地を使用した場合、培養4日日後にMMTテスト。
【図13】B9細胞の増殖アッセイの結果をグラフ表示したものである。簡単に説明すると、B9細胞(2×104細胞数/ウエル)を、B78H1、B78H1/ハイパーIL-6、B78H1/H11細胞から収集したいろいろな濃度の(1〜25%の範囲)培地で、増殖についてテストした。H11を有する組み換えレトロウイルスを有するB78H1細胞の形質導入後に収集した培地を使用した場合、培養4日日後にMMTテスト(Sigma-Aldrich Corporation、ミシガン州セントルイス)を実施した。吸光度は540 nmで測定された(図12)。アデノウイルスの形質導入後に得たH11の活性は、増殖B9細胞による放射性チミジンの組み込みによって測定した([メチル-3H]チミジン、Sigma-Aldrich Corporation、ミシガン州セントルイス)(図13)。
【図14】ハイパーIL-6 cDNAで修飾されたヒトメラノーマA375細胞、およびH11ハイファイブBTI-TN-5B1-4(H11を担持する組み換えバキュロウイルスでインフェクトされた昆虫細胞)を担持する組み換えバキュロウイルスでインフェクトされた細胞から収集した組み換えH11から収集したいろいろな濃度(0.78〜25%の範囲)の培地によって誘導されたBa/Fgp130細胞の増殖を表した結果のグラフ表示である。細胞増殖は、ウエル当たり細胞数10×104 のBa/Fgp 130の播種3日後に定量した。MMTテスト(Sigma-Aldrich Corporation、ミシガン州セントルイス)で生きている細胞数を測定したところ、490 nmでの吸光度に相当した。
【図15】腫瘍拒絶モデルにおけるH11のインビボ活性の解析から得られた結果のグラフ表示である。簡単に説明すると、IL-11のcDNAを形質導入および修飾したモック(mock)およびH11マウスメラノーマ細胞B78H1(マウス当たり細胞数5×105 を0.1 ml PBSに懸濁)を皮下注射でC57BLxC3Hマウス(年齢6〜8週)に注入した。次に、腫瘍増殖動態(パネルA)とマウスの生存(パネルB)をモニターした。
【図16】対照細胞と修飾B78H1細胞で免疫付与したC57BLxC3Hマウスから得られた結果のグラフ表示である。C57BLxC3Hマウスは図15の記述通りに処理された。2週間後に免疫性を与えられたマウスに、以前の注射部位より遠位の部位に、親B78H1細胞(マウス当たり細胞数5×105)を皮下注射にて再投与した。次に、腫瘍増殖の動態(パネルA)と動物の生存(パネルB)をモニターした。
【図17】腎がんの腫瘍拒絶モデルにおける修飾腫瘍ワクチンの有効性の分析のグラフ表示である。雌Balb/cマウス(年齢8〜12週)の右脚に、対照とGM-CSFのcDNAで修飾した遺伝子、H11およびH11/GM-CSF Renca細胞(マウス当たりの細胞数5×105)を皮下注射して免疫性を与えた。2週間後に親Renca細胞をマウスの左脚に皮下注射にて再投与した。次いで、腫瘍の外観の分析(パネルA)、腫瘍増殖動態(パネルB)およびマウスの生存(パネルC)をモニターした。
【図18】H11とIL-11/R-FPで修飾したB78-H1メラノーマ細胞の腫瘍原性を示す。C57BL6xC3Hマウスに、形質導入したモックおよびH-11およびIL-11/R-FPを形質導入したB78-H1細胞を注入した。腫瘍増殖動態(パネルA)およびマウスの生存(パネルB)を週1度モニターした。
【図19】GMTV/H11の抗メラノーマ活性に関与した細胞機序の研究結果のグラフ表示である。SCIDマウス(年齢6〜8週)に、対照およびIL-11のcDNAで修飾した遺伝子およびH11 B78H1細胞(マウス当たりの細胞数5×105)を皮下注射した。H11に仲介された原発腫瘍拒絶における免疫細胞の役割の評価を、腫瘍増殖動態(パネルA)およびSCIDマウスの生存(パネルB)の分析で研究した。
【図20】IL-11-およびH11-GMTVによって導出された免疫反応の誘導期とエフェクター期における、浸潤細胞のCD4+、CD8+およびNK1.1の免疫染色後に得られた結果を要約したものである。
【図21】IL-11-およびH11-GMTVによって導出された免疫反応の誘導期とエフェクター期における、浸潤細胞のCD4+、CD8+およびNK1.1の免疫染色後に得られた結果を要約したものである。簡単に説明すると、C57BLxC3Hマウスを使用した実験を2セット実施した。最初の実験でマウスに対照とIL-11またはH11修飾B78H1細胞(マウス当たりの細胞数5×105)(図20)を皮下注射し、次の実験でマウスに上記のように注射し、2週間後に親B78H1細胞(マウス当たり細胞数5×105)を再投与した(図21)。最初の注射後2、5、9、11日目と2回目の注射後に、マウスを屠殺した。注射部位由来の組織を切除し、液体窒素中に冷凍した。5μmの薄い低温切開片が切り出された。免疫染色のための切片を乾燥し、冷アセトン中に固定し、次いで一次抗体-ビオチン-接合ラット抗マウスCD4+(PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)、ビオチン-接合ラット抗-CD8+(PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)またはマウス抗マウスNK 1.1細胞(PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)で一晩培養した。次にスライドを必要ならビオチン-接合ウサギ抗-マウスIgG(Dako、デンマークGlostrup)で培養した。バックグラウンドペルオキシダーゼ活性をブロックした後、切片をアビジン-ビオチンペルオキシダーゼ複合体ABC/HRP(Dako、デンマークGlostrup)とペルオキシダーゼ基質ジアミノベンジジンDAB(Dako、デンマークGlostrup)中で培養した。洗浄したスライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、Permount(Sigma-Aldrich Corporation、ミシガン州セントルイス)に装着し、そしてカバースリップした。免疫染色した細胞数の評価には以下のスケールを使用した:"−"染色細胞なし、"-/+"染色細胞5%以下、"+"5〜20%、"++"20〜50%および"+++"染色細胞50%以上。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記からなる群から選択されるポリヌクレオチド:
(a) 少なくとも配列番号1に示す推定アミノ酸配列を有する可溶性IL-11 Rと、配列番号2に示す推定アミノ酸配列を有する成熟IL-11を含む、融合インターロイキン-11受容体(IL-11 R)とIL-11ポリペプチド(H11)をコードするポリヌクレオチド;
(b) 配列番号4に示すIL-11 Rのコード配列と、H11をコードする配列番号5に示すIL-11のコード配列を含むポリヌクレオチド;
(c) (a)〜(b)のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるH11のフラグメントおよび/もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、前記誘導体において、1つ以上のアミノ酸残基が前記H11と比較して控えめに置換され、前記フラグメントおよび/もしくは誘導体はインビボにおける抗腫瘍活性を有している;
(d) (a)〜(c)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドに少なくとも70%同一で、イン
ビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;および、
(e) その相補鎖が、好ましくはストリンジェントな条件下で、(a)〜(d)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドにハイブリダイズし、インビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
またはかかるポリヌクレオチドの相補鎖。
【請求項2】
該可溶IL-11 Rをコードする該ポリヌクレオチドが、成熟IL-11をコードするポリヌクレオチドに関して5'末端に位置している、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項3】
該可溶IL-11 Rおよび該成熟IL-11をコードするポリヌクレオチド配列に介入する該ヌクレオチド配列が、非免疫原性ペプチドをコードする、請求項1または2のポリヌクレオチド。
【請求項4】
可溶IL-11 Rおよび成熟IL-11をコードする該ポリヌクレオチドが直接リンクされている、請求項1または2のポリヌクレオチド。
【請求項5】
該ポリヌクレオチドが下記からなる群から選択される、請求項4のポリヌクレオチド;
(a) 配列番号3に示す推定アミノ酸配列を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
(b) 配列番号6に示すH11のコード配列を含むポリヌクレオチド;
(c) (a)〜(b)のいずれか1のポリヌクレオチドでコードされるH11のフラグメントおよび/もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドで、前記誘導体において、1つ以上のアミノ酸残基が、前記H11と比較して控えめに置換され、前記フラグメントおよび/もしくは誘導体はインビボにおける抗腫瘍活性を有している;
(d) (a)〜(c)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドに少なくとも70%同一で、インビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;および
(e) その相補鎖が、好ましくはストリンジェントな条件下で、(a)〜(d)のいずれか1で定義されたポリヌクレオチドにハイブリダイズし、インビボにおける抗腫瘍活性を有するH11をコードするポリヌクレオチド;
またはかかるポリヌクレオチドの相補鎖。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項のポリヌクレオチドがDNA、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたはRNAであるポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1〜6のずれか1項のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項8】
請求項7のベクターであって、該ポリヌクレオチドが発現制御配列に動作可能に結合されており、原核宿主細胞および/または真核宿主細胞における発現を可能にしていることを特徴とするベクター。
【請求項9】
請求項7または8のベクターであって、該発現制御配列がCMV、SV40、ポリヘドリンプロモータ、レトロウイルスLTRs、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、伸長因子1-α(EF1-α)およびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)からなる群から選択されることを特徴とするベクター。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項のベクターであって、該ベクターは、プラスミド;ファージミド(phagemid);ファージ;コスミッド;人工哺乳類染色体;人工酵母染色体;ノックアウトまたはノックイン構成物;ウイルス、特にアデノウイルス、ワクシニアウイルス、弱毒化ワクシニアウイルス、カナリア痘ウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、特に単純ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ライノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、フィロウイルスおよびその遺伝子組み換え型;ビロソーム;ウイルス様粒子;およびリポソーム からなる群から選択されることを特徴とするベクター。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項のポリペプチドまたは、請求項7〜10のいずれか1項のベクターで遺伝子組み換えされた宿主細胞。
【請求項12】
請求項11の宿主細胞であって、該宿主細胞は昆虫細胞、特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda) およびイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni);哺乳動物細胞、特に幹細胞、造血細胞、肝細胞、含脂肪細胞、ニューロン、破骨細胞、子宮内膜細胞、皮膚細胞、心筋細胞、粘膜細胞または腫瘍細胞;細菌性細胞、特にエシェリキア(Escherichia)属またはバシラス(Bacillus)属のものおよび酵母細胞、特にピチア(Pischia)種またはサッカロミセス(Saccharomyces)種 からなる群から選択されることを特徴とする宿主細胞。
【請求項13】
請求項11または12の宿主細胞であって、該宿主細胞は腎がん細胞、膵がん細胞、白血球、メラノーマ細胞、パッケージング細胞、特に両種性またはエコトロピックパッケージング細胞 からなる群から選択されることを特徴とする宿主細胞。
【請求項14】
少なくとも1のさらなるポリヌクレオチドを発現するよう遺伝子組み換えされた、請求項11〜13のいずれかの宿主細胞。
【請求項15】
該さらなるポリヌクレオチドがサイトカイン、特にGM-CSF、IL-6、IL-11、IL-15、抗-TGF、EPO、インターフェロン、LIF、OSM、CNTF、CT-1およびsIL-6 R/IL-6融合タンパク質、特にハイパーIL-6をコードする、請求項14の宿主細胞。
【請求項16】
請求項7〜10のいずれか1項のベクターで、細胞をインビトロで遺伝子組み換えすることを含む、H11を発現することのできる細胞を産生するプロセスであって、前記H11が請求項1〜6のいずれか1項のポリヌクレオチドでコードされることを特徴とするプロセス。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか1項のポリヌクレオチドでコードされるH11ポリペプチドを産生するプロセスであって、請求項11〜15のいずれか1項の宿主細胞を培養し、前記ポリヌクレオチドでコードされるH11ポリペプチドを復元することを含むプロセス。
【請求項18】
請求項1〜6のいずれか1項のポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列を有するH11ポリペプチドまたは請求項17のプロセスで入手できるH11ポリペプチド。
【請求項19】
請求項1〜6のいずれか1項のポリヌクレオチドでコードされるポリペプチドに特異的な抗体または請求項17のプロセスで得られるポリペプチドに特異的な抗体で、可溶IL-11RおよびIL-11に本質的に非特異的である抗体。
【請求項20】
請求項11〜15のいずれか1項の、または請求項16にしたがって入手できる宿主細胞、または請求項18の、もしくは請求項17にしたがって入手できるH11、を含む薬剤組成物で、さらに賦形剤、安定剤、保護剤、緩衝剤および/または添加剤を含む薬剤組成物。
【請求項21】
増殖性疾患、細胞障害、放射線障害、IL-11依存炎症性疾患、IL-11依存変性疾患およびIL-11依存もしくは媒介軟部組織異常からなる群から選択される疾患の治療のための医薬品の製造のための、請求項11〜15のいずれか1項の、または請求項16にしたがって入手できる宿主細胞、または請求項18のH11の使用。
【請求項22】
該増殖性疾患が、消化管または結腸直腸、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮内膜、卵巣、睾丸、皮膚、眼のがん、メラノーマ、口腔粘膜異形成、侵襲的口腔がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん、ホルモン依存性乳がん、ホルモン非依存性乳がん、移行上皮がんおよび扁平上皮細胞がん、神経芽細胞腫を含む神経悪性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液学的新生物、リンパ腫およびそのほかの骨髄増殖性疾患およびリンパ増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、アデノーマ、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患およびウイルス誘発増殖性疾患;特にメラノーマ、膵がんおよび腎がん からなる群から選択される、請求項21の使用。
【請求項23】
該細胞障害が、血小板減少症、血球減少症および汎血球減少症からなる群から選択される、請求項21の使用。
【請求項24】
該IL-11依存炎症性疾患が、肝臓障害;肝炎;肝障害;敗血症;化学療法誘引または放射線誘引組織障害、特に肺損傷;炎症性疾患、特に炎症性腸疾患、関節リウマチ、炎症性肝疾患;粘膜炎;アレルギー;子宮内膜症;脈管炎;内皮炎症に関連した血管疾患、特に虚血性心疾患または末梢血管障害;および乾癬 からなる群から選択される、請求項21の使用。
【請求項25】
該IL-11依存変性疾患が、変性CNS疾患、PNS疾患および骨関節炎からなる群から選択される、請求項21の使用。
【請求項26】
該IL-11依存または仲介軟部組織異常が、肥満および突発性女性不妊からなる群から選択される、請求項21の使用。
【請求項27】
少なくとも1のさらなるのサイトカインが、H11ポリペプチドまたはH11ポリペプチドを発現する宿主細胞の投与前、投与と同時または投与後投与される、請求項21〜26のいずれか1項の使用。
【請求項28】
幹細胞治療の間のアジュバント療法のための医薬品の製造のための、請求項18の、または請求項17のプロセスにしたがって入手できる、IL-11の使用。
【請求項29】
細胞、特に幹細胞または前駆細胞、のインビトロ分化のための、請求項18の、または請求項17のプロセスにしたがって入手できる、IL-11の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2008−502353(P2008−502353A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517092(P2007−517092)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005494
【国際公開番号】WO2005/113591
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506387199)アジルクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】