説明

キャップの洗浄方法及びインクジェット装置

【課題】凹部に古い保管液が残るのを防止することが可能となるキャップの洗浄方法を提供する。
【解決手段】インクを吐出するノズル8を下面4aに有しているインクジェットヘッド4を、凹部31に溜めている保管液R1に当該下面4aを浸漬させて、保管するためのキャップ30を洗浄する方法である。キャップ30を蓋部材11により上から覆った状態とし、洗浄液と空気との内の一方又は双方を、凹部31の底面32よりも上から当該底面32に供給しながら、蓋部材11と凹部31との間を吸引し、保管液R1を底面32よりも上から吸い出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドを保管する際に用いられるキャップの洗浄方法、及び、キャップ及びキャップを洗浄する洗浄装置を備えているインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカラー液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられるカラーフィルタを効率よく製造する装置として、インクジェット装置が提案されている。このインクジェット装置は、下面に多数のノズルが形成されているインクジェットヘッド(以下、ヘッドという)を備えていて、ガラス基板上に形成された多数の微細な画素部に、R、G、Bの各インクを前記ノズルから吐出して、R、G、Bの色画素をガラス基板上に形成している。
このようなインクジェット装置では、ノズルでインクが乾燥すると目詰まりが生じ、インクが正常に吐出されず、製品(カラーフィルタ)の品質を低下させてしまう場合がある。特に、このようなインクの乾燥は、塗布作業を休止している際に発生しやすい。そこで、所定期間ヘッドを使用しない場合、ノズルでのインクの乾燥を防止するため、ヘッドの下部にキャップを取り付けて保管することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−245136号公報(図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、キャップの凹部に保管液を溜めておき、ヘッドの下部(インクの吐出面)を当該保管液に浸漬させた状態としてヘッドを保管している。このようにしてヘッドを保管する場合においても、後に行う塗布作業のためにインクの吐出面をきれいな状態としておく必要があり、このために、キャップ内の保管液が汚れていることは好ましくない。そこで、定期的にキャップ内の保管液を入れ替える必要がある。
【0005】
特許文献1に記載の構成では、キャップ内の保管液を吸引する吸引ポンプが設けられていて、この吸引ポンプは、キャップの凹部の底面にある吸い込み口にパイプを介して接続されている。この構成によれば、吸引ポンプによってキャップ内の保管液の大部分を吸い出すことができるが、吸い込み口に到達できなかった古い保管液は、凹部の底面に残ることがある。この場合、新しい保管液をキャップに供給しても、残存している古い保管液と混ざってしまうおそれがある。
そこで、本発明は、凹部に古い保管液が残るのを防止することが可能となるキャップの洗浄方法、及び、キャップ及びこのキャップを洗浄する洗浄装置を備えているインクジェット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のキャップの洗浄方法は、インクを吐出するノズルを下面に有しているインクジェットヘッドを、凹部に溜めている保管液に当該下面を浸漬させて、保管するためのキャップを洗浄する方法であって、前記キャップを蓋部材により上から覆った状態とし、洗浄液と空気との内の一方又は双方を、前記凹部の底面よりも上から当該底面に供給しながら、前記蓋部材と前記凹部との間を吸引し、前記保管液を当該底面よりも上から吸い出すことを特徴とする。
本発明によれば、洗浄液と空気との内の一方又は双方を上から凹部の底面に供給しながら、凹部に溜められている保管液を当該底面よりも上から吸い出すので、凹部に古い保管液が残るのを防止することが可能となる。
【0007】
また、前記キャップの洗浄方法では、前記洗浄液と前記空気との内の一方又は双方を、前記凹部の周縁部よりも内側の部分における底面に供給しながら、前記蓋部材と前記凹部との間を、当該周縁部から吸引するのが好ましい。
この場合、洗浄液と空気との内の一方又は双方を、凹部の周縁部よりも内側の部分における底面に供給するので、凹部の内側から周縁部へと保管液を流し出すことができる。そして、凹部の周縁部から吸引するので、凹部の周縁部に流れてくる保管液、さらには、凹部の周縁部から溢れようとする保管液があっても、その保管液を吸引することができる。
さらに、前記凹部の全周縁部のうち部分的に形成されたスロットから吸引するのが好ましく、この場合、凹部の周縁部から吸い出す保管液の流速が早くなり、迅速に古い保管液を外部へ吸い出すことができる。
【0008】
また、本発明のインクジェット装置は、インクを吐出するノズルを下面に有しているインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを保管する際に前記下面を浸漬させる保管液を溜める凹部を有しているキャップと、必要に応じて前記キャップ上に位置し前記凹部を洗浄する洗浄装置とを備え、前記洗浄装置は、前記キャップを上から覆う蓋部材と、前記蓋部材によって覆われている前記凹部の底面に洗浄液を当該底面よりも上から供給する洗浄液供給部と、前記蓋部材と前記凹部との間に空気を供給するためのエア供給部と、前記蓋部材と前記凹部との間を吸引して前記凹部の前記保管液を前記底面よりも上から吸い出す吸引部とを有していることを特徴とする。
本発明によれば、洗浄液供給部が、前記凹部の底面に洗浄液を当該底面よりも上から供給しながら、吸引部が、前記蓋部材と前記凹部との間を吸引して凹部に溜められている保管液を当該底面よりも上から吸い出したり、エア供給部が、空気を前記蓋部材と前記凹部との間に供給しながら、吸引部が、前記蓋部材と前記凹部との間を吸引して凹部に溜められている保管液を当該底面よりも上から吸い出したりするので、凹部に古い保管液が残るのを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凹部に古い保管液が残るのを防止することが可能となるので、凹部に入れた新しい保管液が、残った古い保管液によって汚れることを防ぐことができ、インクジェットヘッドを適切な状態としてキャップにより保管することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】インクジェット装置の実施の一形態を示している概略図であり、(a)は全体斜視図、(b)はその一部の平面図、(c)はその一部を側方から見た断面図である。
【図2】キャップ及び洗浄ユニットの図であり、(a)は側方から見た断面図、(b)はそのb−b断面における断面図である。
【図3】洗浄方法のフロー図である。
【図4】洗浄装置の動作を説明するタイムチャート図である。
【図5】洗浄ユニットの他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)は、インクジェット装置の全体の概略を示している斜視図である。このインクジェット装置は、床面に置くベースフレーム2、このベースフレーム2上に設けられ基板Wが載置されるステージ3、塗布ガントリ5及びカメラガントリ6を備えている。
ステージ3は、図示していない吸引ポンプによって基板Wをその上面に吸着して保持することができ、また、基板Wの位置決めを行うために、Z軸回りに回転駆動されるとともにY軸方向に駆動される。なお、Z軸方向は鉛直方向であり、X軸方向及びY軸方向は水平面上の方向であり、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は相互に直交する。
【0012】
塗布ガントリ5は、ヘッド搭載部(ヘッド搭載フレーム)5aを搭載していて、図1(b)の部分平面図に示しているように、ヘッド搭載部5aは、複数個のインクジェットヘッド4(以下、ヘッド4という)を整列させて有している。図1(c)の側方から見た断面図に示しているように、各ヘッド4は、その下面4aに複数のノズル8を有している。このノズル8からステージ3上の基板Wにインクが吐出される。つまり、下面4aはインクの吐出面となる。また、図1(a)において、塗布ガントリ5は、ノズル8からインクを吐出してステージ3上の基板Wにインクを塗布するために、X軸方向に駆動される。
カメラガントリ6は、基板Wの位置調整のためのカメラ9a、及び、ヘッド4が吐出したインクを撮像するためのカメラ9bを搭載していて、カメラガントリ6は、前記位置調整及び前記インクの撮像のために、X軸方向に移動することができる。また、カメラ9a,9bはそれぞれ、カメラガントリ6上をY軸方向に移動することができる。
【0013】
塗布作業を行う場合、ヘッド4からインクが吐出されるが、塗布作業を休止する場合、つまり、所定期間ヘッド4を使用しない場合、ノズル8でのインクの乾燥(吐出面の乾燥)を防止するため、インクジェット装置は、ベースフレーム2上に、ヘッド4を保管するためのキャップ30を備えている。図1(c)において、キャップ30は、上に開口している皿形状であり、凹部(ヘッド嵌入部)31を有している。凹部31には保管液R1が溜められていて、ヘッド4を保管する際に、ヘッド4の下面4aを含むヘッド下部をこの保管液R1に浸漬させる。なお、保管液R1は、ヘッド4の吐出面におけるインクの乾燥を防止するための液体であり、例えば、ヘッド4から吐出されるインクの主溶媒を主成分とするものや、当該主溶媒以外を含むものであってもよい。
【0014】
キャップ30の凹部31の底面32(図2参照)は平坦な面である。また、図1(b)に示しているように、ヘッド4毎にキャップ30が設けられていて、複数のキャップ30は、ヘッド4の配置と同じ配置でベース部材33上に設けられている。このベース部材33は、図示していない駆動機構によってZ軸方向に駆動され、ヘッド4を保管する際に、ベース部材33が待機位置から上昇し、キャップ30をヘッド4に下から被せることができる。
【0015】
さらに、インクジェット装置は、キャップ30の凹部31を洗浄する洗浄装置10を備えている。図1(b)に示している洗浄装置10は、複数(3つ)のキャップ30を一組として同時に洗浄する構成である。つまり、洗浄装置10は、一組(3つ)のキャップ30をそれぞれ個別に洗浄する同数(3つ)の洗浄ユニット16と、これら洗浄ユニット16を搭載している装置フレーム15と、この装置フレーム15をZ軸周りに回動させる回動駆動機構(図示せず)と、装置フレーム15をY軸方向に移動させる直線駆動機構(図示せず)とを有している。キャップ30の洗浄が必要な場合、待機位置にある装置フレーム15(図1(b)の状態)をベース部材33上へと回動させ、洗浄ユニット16がキャップ30に対向した状態で洗浄することができる。そして、装置フレーム15がY軸方向に所定ピッチずつ移動することにより、洗浄装置10が、ベース部材33上にある多数のキャップ30を、一組(3つ)ずつ洗浄することができる。
なお、一組(3つ)を同時に洗浄しなくてもよく、1つずつ洗浄を行ってもよい。さらに、洗浄ユニット16の数は増減変更可能であり、同時に3つ以上を洗浄できる構成としてもよい。
【0016】
三つの洗浄ユニット16はいずれも同じ構成である。図2は、一つのキャップ30及び当該キャップ30を洗浄する一つの洗浄ユニット16の図であり、(a)は側方から見た断面図、(b)はそのb−b断面における断面図である。この洗浄ユニット16は、キャップ30を上から覆う蓋部材11と、キャップ30に洗浄液を供給する洗浄液供給部12と、キャップ30に空気を供給するエア供給部13と、キャップ30の凹部31に溜められている保管液R1を吸い出す吸引部14とを有している。
【0017】
蓋部材11は外蓋17と中蓋18とを有していて、外蓋17の上壁部の内面17aと中蓋18の上面18aとの間に、平面状の第一流路21が形成されている。外蓋17は、キャップ30の周壁34の上面に接触する側壁20を有している。蓋部材11(側壁20)をキャップ30上に載せた状態とすると、外蓋17とキャップ30との間で閉塞空間が得られる。また、外蓋17(蓋部材11)をキャップ30上に載せると、中蓋18の下面18cと凹部31の底面32との間に隙間dが形成されるように、中蓋18が外蓋17に取り付けられている。この隙間dが、保管液R1、洗浄液及び空気が流れる流路となる。
そして、図2(b)に示しているように、外蓋17の側壁20の内面20aと中蓋18の側面18bとの間に第二流路22が形成されている。この実施形態の第二流路22は、側壁20全周の内面20aの四隅と、中蓋18の全周の側面18bの四隅との間に、部分的に形成されているスロットからなる。すなわち、第二流路(スロット)22は、凹部31の四隅に配置された構成となる。
【0018】
図2(a)において、第二流路22は第一流路21と繋がっていて、さらに、第一流路21は吸引部14が有している吸引ノズル23と繋がっている。このため、凹部31に存在している保管液R1は、第二流路22、第一流路21を経て吸引ノズル23から洗浄ユニット16外へと、吸引部14が有している吸引ポンプ14aによって吸い出される。
前記吸引部14は、吸引ノズル23及び吸引ポンプ14aの他に、図示しないが液溜め部を有している。吸引ポンプ14aが作動すると、蓋部材11と凹部31との間、つまり、中蓋18と凹部31との間であって保管液R1が溜められる空間を上から吸引して、凹部31の保管液R1を、底面32よりも上にある前記流路22,21及び吸引ノズル23から吸い出すことができ、吸い出した液を前記液溜め部へ送ることができる。
【0019】
前記洗浄液供給部12は、洗浄液を溜めるタンク(図示せず)と、このタンク内の洗浄液を送り出す送液手段12aと、蓋部材11を上下貫通して設けられ送液手段12aによって送り出された洗浄液を通過させる洗浄液ノズル24とを有している。なお、前記送液手段12aは、例えばタンクを加圧することで洗浄液を送り出す機構や、ポンプとすることができ、以下ではポンプ12aとして説明する。そして、ポンプ12aが作動すると、タンクから洗浄液を洗浄液ノズル24へ送り出し、当該洗浄液を、蓋部材11によって覆われているキャップ30の凹部31の底面32に当該底面32よりも上から吹き付けて供給することができる。
【0020】
エア供給部13は、大気中の空気を送り出す空気送出手段13aと、蓋部材11を上下貫通して設けられ空気送出手段13aによって送り出された空気を通過させるエアノズル25とを有している。なお、前記空気送出手段12aは、例えば空気タンクを加圧することで空気を送り出す機構や、ポンプとすることができ、以下ではポンプ13aとして説明する。そして、ポンプ13aが作動すると、大気中の空気をエアノズル25へ送り出し、エアノズル25内を空気が流れ、当該空気を蓋部材11とキャップ30の凹部31との間に供給することができる。特に、ポンプ13a及びエアノズル25を有していることから、ポンプ13aによって加圧した状態にある空気を、蓋部材11によって覆われているキャップ30の凹部31の底面32に、当該底面32よりも上から吹き付けて供給することができる。
【0021】
また、図2(a)に示しているように、中蓋18の縁部は、水平方向外側に向かって厚さが薄くなるように、中蓋18の上面18aと下面18cとのうちの一方又は双方に傾斜面18d(18e)が形成されている。この傾斜面18d(18e)により、保管液R1、洗浄液及び空気は、スムーズに流れることができる。なお、傾斜面18d(18e)の勾配は、水平面(中蓋18の上面18aと下面18c)に対して45°以上とすることができるが、45°未満とし、傾斜をなだらかとするのが好ましい。なお、前記傾斜面18d(18e)を省略してもよい。
【0022】
以上のように構成されたインクジェット装置において実行されるキャップ30の洗浄方法について説明する。図3は洗浄方法のフロー図であり、説明を容易とするために模式的に表した洗浄ユニット16を共に記載している。図4は、洗浄装置10(洗浄ユニット16)の動作を説明するタイムチャート図である。
キャップ30の凹部31には保管液R1が溜まっている状態にある。吸引部14により吸引動作を開始した洗浄ユニット16を(図4のt0)、キャップ30に対して接近させる(図3のステップS1,S2)。蓋部材11をキャップ30上に載せた状態とし、外蓋17とキャップ30との間に閉塞空間を形成する。なお、吸引部14がこの閉塞空間を吸引することで、外蓋17とキャップ30との接触面は密着する。
【0023】
その後、吸引部14によって吸引動作がされたままの状態で、前記エア供給部13により空気の噴出を開始し(図3のステップS3、図4のt1)、所定時間(例えば5秒)継続する。所定時間経過後、エア供給部13による空気の噴出を停止する(図3のステップS4、図4のt2)。これにより、凹部31の古い保管液R1は、噴出された空気によって凹部31の周縁部へと押され、かつ、保管液R1が空気と共に、凹部31の周縁部から、第二流路22、第一流路21及び吸引ノズル23を経て、洗浄ユニット16外へと吸い出される。また、エア供給部13による空気の圧送圧力(ポンプ13aにおける吐出圧)は、所定の圧力に設定される。
【0024】
そして、吸引部14による吸引動作が継続している状態で、前記洗浄液供給部12により洗浄液の噴出を開始し(図3のステップS5、図4のt2)、所定時間(例えば10秒〜15秒)継続する。所定時間経過後、洗浄液供給部12による洗浄液の噴出を停止する(図3のステップS6、図4のt3)。これにより、凹部31に保管液R1が残留していても、当該保管液R1は、噴出された洗浄液によって凹部31の周縁部へと押され、かつ、当該洗浄液と共に保管液R1が、凹部31の周縁部から、第二流路22、第一流路21及び吸引ノズル23を経て、洗浄ユニット16外へと吸い出される。なお、洗浄液は、ヘッド4から吐出されるインクの固形成分を流すことのできる成分(溶かすことが可能な成分)を有していて、凹部31に付着しているインクを洗い流すことができる。また、洗浄液の圧送圧力(ポンプ12aにおける吐出圧)は、所定の圧力に設定される。
【0025】
そして、吸引部14による吸引動作が継続している状態で、再び、前記エア供給部13により空気の噴出を開始し(図3のステップS7、図4のt3)、所定時間(例えば3〜5秒)継続する。所定時間経過後、洗浄ユニット16とキャップ30とを離反させ(図3のステップS8)、さらに、エア供給部13による空気の噴出を停止する(図3のステップS9、図4のt4)。そして、吸引部14による吸引動作を停止する(図3のステップS10、図4のt5)。また、この際の空気の圧送圧力(ポンプ13aにおける吐出圧)は、所定の圧力に設定される。
これにより、凹部31に残留している保管液R1及び洗浄液は、噴出された空気によって凹部31の周縁部へと押され、かつ、当該空気と共に保管液R1及び洗浄液が、凹部31の周縁部から、第二流路22、第一流路21及び吸引ノズル23を経て、洗浄ユニット16外へと吸い出される。以上より、キャップ30の洗浄が完了する。
【0026】
そして、この後、新しい保管液をキャップ30の凹部31に供給する。
または、図4のステップS8とステップS9との順番を入れ替え、空気の噴出を先に終え、洗浄ユニット16をキャップ30から離反させる前に、新しい保管液をキャップ30の凹部31に供給してもよい。この場合、洗浄ユニット16は新しい保管液を供給するための保管液供給部を備えていて、蓋部材11をキャップ30上に載せた状態で、保管液供給部が有しているノズル26(図2(b)参照)から、新しい保管液を供給するように構成してもよい。
または、洗浄ユニット16を上昇させながら、保管液供給部が新しい保管液を供給してもよく、この場合、洗浄ユニット16からの液垂れを抑制することができる。
【0027】
以上のように、本発明のキャップ30の洗浄方法は、当該キャップ30を蓋部材11により上から覆った状態とし、洗浄液供給部12によって洗浄液を、又は、エア供給部13によって空気を、キャップ30の凹部31の底面32よりも上から当該底面32に吹き付けて供給しながら、吸引部14によって蓋部材11と凹部31との間を上に吸引し、凹部31に存在していた保管液R1を当該底面32よりも上から吸い出すことによって行われる。この洗浄方法によれば、洗浄液及び空気を、上から凹部31の底面32に吹き付けて供給しながら、保管液R1を、当該底面32よりも上から吸い出すので、凹部31に古い保管液が残らないようにすることが可能となる。
すなわち、前記特許文献1に記載の従来の構成では、キャップの凹部の底面にある開口にパイプを介して液体(保管液)供給手段としてのポンプが接続されているため、凹部から古い保管液を排出しても、当該パイプに古い保管液が残存し、新しい保管液を液体供給手段によりキャップへ供給しても、残存していた古い保管液が混ざってしまう。
しかし、本発明によれば、古い保管液を上から吸い出す構成であるため、凹部31に入れた新しい保管液が、残っている古い保管液と混ざることで汚れるのを防ぐことができ、ヘッド4を汚さない状態としてキャップ30によって保管することが可能となる。また、洗浄作業のすべてを洗浄ユニット16において実現することができ、作業者の手が汚れるのを防ぐことができる。
【0028】
また、図2に示しているように、キャップ30の凹部31の保管液R1を吸い上げるための第二流路22は、凹部31の周縁部の最も外側部分に形成されている。そして、洗浄液ノズル24及びエアノズル25はこの周縁部よりも内側の部分で開口している。このため、洗浄液又は空気(若しくは双方)を、キャップ30の凹部31の周縁部よりも内側の部分における底面32に吹き付けて供給しながら、蓋部材11と凹部31との間を、当該周縁部から吸引することができる。特に図2の実施形態では、キャップ30の凹部31の全周縁部から吸引するのではなく、当該凹部31の全周縁部のうち部分的に(間欠的に)形成されたスロットからなる第二流路22を通じて吸引している。このため、吸引面積を狭くすることができ、吸い出す保管液R1等の流速を早くする(吸引力を向上させる)ことができる。この結果、迅速かつ確実に古い保管液R1等を外部へ吸い出すことができ、作業時間の短縮化が可能となる。
【0029】
図5は、洗浄ユニット16の他の例を説明する図である。図5の実施形態は図2の実施形態と第二流路22の構成が異なるが、その他は同じである。図5の洗浄ユニット16では、キャップ30の凹部31の全周に形成された環状の隙間により、第二流路22が形成されている。つまり、外蓋17の側壁20の内面20aと、中蓋18の側面18bとの間は、全周にわたって隙間が形成されていて、この隙間から凹部31の保管液R1を吸い上げる構成となっている。したがって、図2の実施形態と同様に、図5の実施形態においても、洗浄液又は空気(若しくは双方)を、凹部31の周縁部よりも内側の部分における底面32に吹き付けて供給するので、凹部31の内側から周縁部へと保管液R1を流し出すことができる。そして、凹部31の周縁部から吸引するので、周縁部に流れてくる保管液R1、さらには、周縁部から溢れようとする保管液R1があっても、その保管液R1を吸引することができる。
【0030】
また、本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、図2の実施形態では、第二流路22となるスロットの数を4本としたが、この数は大小変更可能である。また、スロットの形成位置も、外蓋17と中蓋18との間の隅部(角部)ではなく、直線部の途中であってもよい。
中蓋18の四角を切り欠くことによって第二流路22となるスロットが構成されているが、(図示しないが)中蓋18の最も外周となるエッジ部よりも少し内側となる周縁部に上下に貫通する孔を形成し、この孔を第二流路22としてもよい。
キャップ30の形状は、矩形以外に、円形や楕円形であってもよく、これに応じて蓋部材11の形状を形成すればよい。
エア供給部13は、ポンプ13aによって強制的に空気をキャップ30へと供給する場合を説明したが、ポンプ13aを省略して、エアノズル25を大気開放し、自然吸気を行う構成としてもよい。又は、吸引側の吸引ポンプ14を省略し、吸引ノズル23を大気開放し、エア供給部13(洗浄液供給部12)において、ポンプ13a(ポンプ12a)によって強制的に空気(洗浄液)をキャップ30へと供給し、エアノズル25(洗浄液ノズル24)により加圧した空気(洗浄液)を噴出させ、前記吸引ノズル23内を凹部31内に対して相対的に負圧状態とし、当該吸引ノズル23から吸引させる構成としてもよい。
また、洗浄作業の際、洗浄液と空気との内の一方のみを、時間を分けてキャップ30に供給した場合を説明したが、洗浄液と空気との双方を同時に供給してもよい。つまり、洗浄液を供給している間、空気の供給が行われていてもよい。
また、インクの種類は限定されず、固形成分の有無に関係なく適用することができる。また、前記実施形態では、カラーフィルタの製造に用いられる塗布装置について説明したが、有機ELを含むフラットパネルディスプレイや太陽電池等の製造に用いられるインクジェット装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0031】
4:ヘッド(インクジェットヘッド)、 4a:下面、 8:ノズル、 10:洗浄装置、 11:蓋部材、 12:洗浄液供給部、 13:エア供給部、 14:吸引部、 22:第二流路(スロット)、 30:キャップ、 31:凹部、 32:底面、 R1:保管液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを下面に有しているインクジェットヘッドを、凹部に溜めている保管液に当該下面を浸漬させて、保管するためのキャップを洗浄する方法であって、
前記キャップを蓋部材により上から覆った状態とし、
洗浄液と空気との内の一方又は双方を、前記凹部の底面よりも上から当該底面に供給しながら、前記蓋部材と前記凹部との間を吸引し、前記保管液を当該底面よりも上から吸い出すことを特徴とするキャップの洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液と前記空気との内の一方又は双方を、前記凹部の周縁部よりも内側の部分における底面に供給しながら、前記蓋部材と前記凹部との間を、当該周縁部から吸引する請求項1に記載のキャップの洗浄方法。
【請求項3】
前記凹部の全周縁部のうち部分的に形成されたスロットから吸引する請求項2に記載のキャップの洗浄方法。
【請求項4】
インクを吐出するノズルを下面に有しているインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを保管する際に前記下面を浸漬させる保管液を溜める凹部を有しているキャップと、
必要に応じて前記キャップ上に位置し前記凹部を洗浄する洗浄装置と、を備え、
前記洗浄装置は、
前記キャップを上から覆う蓋部材と、
前記蓋部材によって覆われている前記凹部の底面に洗浄液を当該底面よりも上から供給する洗浄液供給部と、
前記蓋部材と前記凹部との間に空気を供給するためのエア供給部と、
前記蓋部材と前記凹部との間を吸引して前記凹部の前記保管液を前記底面よりも上から吸い出す吸引部と、を有していることを特徴とするインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−227786(P2010−227786A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76747(P2009−76747)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】