説明

キャップ及びそれを備えたエアゾール装置

【課題】残留ガス廃棄中に火気類方向にガスを放出させることを防止することができるエアゾールキャップ及びそれを備えたエアゾール装置を提供すること目的とする。
【解決手段】エアゾール容器40に装着させる装着部21を備えたキャップ本体10と、ステム38を押下させるボタン部1と、ステム38から噴出されたエアゾール容器40のガスが外部へ噴射される噴射口35と、噴射口35の近傍に移動可能なカバー部11と、を有し、カバー部11が噴射口35の近傍に移動されることによってガスの噴射方向が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾールキャップ及びそれを備えたエアゾール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器は缶の中に液状や粉状の内容物と液化ガスを詰め、ボタンを押すとガスの圧力で内容物が霧状に吹き出す製品として防虫剤や消毒剤などに使用されている。このエアゾール容器は、一般に、使い切った場合でも、使用済みエアゾール容器内に内容物放出用のガスが残っていることが多い。このガスが残ったままゴミとして出されると、収集処理過程で圧縮された際にエアゾール容器が破裂し、火気類等に引火し火災に至ることがある。
【0003】
このような事態を回避すべく、近年では残留ガスを完全に抜いてから廃棄することが行われている。残留ガスを完全に抜くためには、使用者がボタン部を自ら押圧し押圧状態を維持することによって放出させたり、予めエアゾールキャップに備えられた残留ガス廃棄機構を用いて放出させること等が行われている。(例えば、特許文献1)
【0004】
【特許文献1】特開2004−168356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、残留ガスを放出させる際に使用者がガス噴射方向に火気類があることを確認せず誤ってそのまま放出させてしまい、放出したガスに火気が引火し、発火、爆発等思わぬ事態を生じることがある。また、残留ガス廃棄機構によって放出させる場合でもいたずら等によって、残留ガス廃棄中にエアゾール装置の噴射口を火気類方向に向けてしまうことも考えられる。
【0006】
本発明の課題は、残留ガス廃棄中に火気類方向にガスを放出させることを防止することができるエアゾールキャップ及びそれを備えたエアゾール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) ステムが押下されることによってステムから内容物が噴出されるエアゾール容器に装着されるキャップであって、
前記エアゾール容器に装着させる装着部を備えたキャップ本体と、
前記ステムを押下させるボタン部と、
前記ステムから噴出された前記内容物が外部へ噴射される噴射口と、
前記噴射口の近傍に移動可能なカバー部と、を有し、
前記カバー部が前記噴射口の近傍に移動されることによって前記噴射口から噴射される前記内容物の噴射方向が変更されることを特徴とするキャップ。
(2) 前記キャップ本体は、前記ステムを押下する作動板と、前記作動板を挟んで対向するように形成されたカム部と、を備え、
前記ボタン部は前記カム部に対して摺動するスライダー部を備え、
前記スライダー部を前記カム部に摺動させることによって前記ステムの押下具合が調整されることを特徴とする(1)に記載のキャップ。
(3) 前記ステムを押下する前記作動板の押圧力と、前記ステムの反発力とによって、前記スライダー部が所定位置に保持され前記ステムの押下具合が維持されることを特徴とする(2)に記載のキャップ。
(4) 前記ボタン部は突起部を備え、
前記ボタン部の移動によって前記突起部が前記カバー部に当接し、前記カバー部が前記噴射口の近傍に移動されることによって前記内容物の噴射方向が変更されることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のキャップ。
(5) 前記(1)〜(4)の何れかに記載のキャップを備えたことを特徴とするエアゾール装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるキャップは、噴射口の近傍に移動可能なカバー部が設けられ、使用者がエアゾール容器内のガスを抜く際には、そのカバー部が噴射口の近傍に移動されるように構成されている。したがって、噴射口から噴射された内容物がカバー部にぶつかることによって、通常の噴射方向とは異なる方向に内容物が噴射されるため、使用者が誤って噴射口を火気類に向けてしまった場合でも、直接火気類に内容物を噴射することがなく火災等を未然に防止することが可能である。
【0009】
また、本発明によるキャップは、スライダー部をカム部に摺動させることによってステムの押下具合を調整するように構成されている。したがって、スライダー部の摺動量の変化に応じてステムの押下具合が調整されるので、エアゾール容器内の内容物の噴出量をも調整することが可能である。
【0010】
また、本発明によるキャップは、ステムを押下する作動板の押圧力と、ステムの反発力とによって、スライダー部が所定位置に保持されステムの押下具合が維持されるように構成されている。すなわち、ボタン部がスライダー部の保持によって所定位置に維持されているので、使用者がボタン部から指を離しても容易にステムの押下具合が変更されることがなく噴射維持状態を保つことが可能である。
【0011】
また、本発明によるキャップは、カバー部は、キャップ本体あるいはボタン部と一体となっている。したがって、キャップの部品点数を減らし、組立工程を容易にすることが可能である。
【0012】
また、本発明によるキャップは、ボタン部が所定量以上移動されると、突起部がカバー部に当接し、カバー部が噴射口の近傍に移動されることによって内容物の噴射方向が変更されるように構成されている。したがって、所定量までの移動であれば移動量に対してステムの押下具合すなわち噴射量が比例するので、噴射量の調節が可能である。そして、ボタン部が所定量以上移動されると、突起部によって移動されたカバー部が噴射口から噴射された内容物とぶつかることによって、通常の噴射方向とは異なる方向に内容物が噴射されるため、使用者が誤って噴射口を火気類に向けてしまった場合でも、直接火気類に内容物を噴射することがなく火災等を未然に防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るキャップ及びそれを備えたエアゾール装置の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るエアゾール装置の上面図、図2は図1に示すエアゾール装置のA−A´断面図、図3は本実施形態に係るエアゾール容器に装着されるキャップの底面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るキャップ30は、キャップ本体10と、キャップ本体10の上側に装着されるボタン部1及びキャップ本体部10の正面側に装着された噴射口11とを備えている。そしてキャップ30がエアゾール容器40に装着されることによってエアゾール装置50が得られる。
【0016】
(ボタン部1の構成)
まず、ボタン部1の構成について説明する。図1及び図2に示すようにボタン部1は、略立方体の胴体部4と、胴体部4の正面から突出した突起部2と、左右側面からそれぞれ突出したスライダー部3,3と、底面から突出した滑動部6とを有している。胴体部4の上面には円形の窪みが形成され、ボタン部1の押圧面5として使用者の指先を誘導する部位となっている。
【0017】
突起部2は胴体部4の正面から板状に突出されており、その突起部2の先端部2aの一部には胴体部4側に向かって斜めに切欠かれた切欠面2bが形成されている。このように切欠面2bを設けることによって、突起部2は先端部2aから切欠面2bの順に、図1及び図2に示すカバー部11と当接するのでカバー部11を滑らかに回動させることができる。
【0018】
スライダー部3,3は、胴体部4の左右側面からそれぞれ断面L字状に突出しており、ボタン部1の正面断面は略Ω形状を有している(図6参照)。スライダー部3,3を図1に示すキャップ本体部10のカム部18,18に摺動させることによって、ボタン部1にカム部18,18の形状に応じた動作が伝えられる。
【0019】
滑動部6は、図2に示すように胴体部4の底面略中央から突出しており、先に説明したスライダー部3,3と幅方向に一列に並ぶように形成されている。ボタン部1は、滑動部6を図1及び図2に示す被滑動部13に嵌め合わせることでキャップ本体部10に対して位置決めされる。さらに滑動部6を被滑動部13に摺動させることによってボタン部1を被滑動部13の範囲内で移動させることができる。
【0020】
(キャップ本体10の構成)
次に、キャップ本体10の構成について説明する。図1に示すようにキャップ本体10は、上面視円形状を有し、指先案内凹部19を介して上部左右に厚肉の天板部17,17が形成されている(図6参照)。そして図2に示すように天板部17,17より下部は空洞を有し、内側下部の周縁には装着部21が形成されている。本実施形態において、キャップ本体10は装着部21によってエアゾール容器40に嵌合されている。
【0021】
図3に示すように、キャップ本体10内側の天板部17,17の略中央近傍にはカム部18,18が形成されている。板状の作動板12を挟んで対向して形成されたカム部18,18はその中央を頂点18a,18aとするV字状を有し、ボタン部1にはカム部18,18のV字形状に応じた動作が伝えられる。すなわち、ボタン部1のスライダー部3,3をカム部18,18の最後端側からステム38がある方向に移動させる(カム部18,18の最後端から頂点18a,18aへ向かう方向に摺動させる)ことによってボタン部1に所定の動作を伝えることができる。
【0022】
また、図2に示すようにキャップ本体10の正面下部から斜め上方に向かって伸びた傾斜部22を有する板状の作動板12が指先案内凹部19に沿って設けられている。キャップ本体10の正面下部には楕円形状の開口部14を有し、ボタン部1が押下されると開口部14の側縁部を支点として作動板12が連動して押下される。
【0023】
図2及び図3に示すように、作動板12の略中央部内側にはエアゾール容器40の内容物が噴出されるステム38と嵌合するステム嵌合筒15が形成され、図2に示すように、噴射口35とステム嵌合筒15とを結ぶ噴射経路16がステム嵌合筒15と垂直に形成されている。また、作動板12の外側面には楕円形状の窪みが形成されており、前述した滑動部6が嵌め合わされる被滑動部13となっている。
【0024】
さらに、作動板12の噴射経路16先端付近からは直角部11bを有するカバー部11が一体的に形成されている。このように、カバー部11をキャップ本体10と一体として形成することによって、キャップ30の部品点数を減らし、組立工程を容易にすることが可能である。
【0025】
また、本実施形態において、エアゾール容器40内のガス抜きを行う際にはカバー部11が前述したボタン部1の突起部2と当接しながら回動することによって、噴射口35が正面11d、左右側面11c,11c、及び上面11aによって覆われるように構成されている。
【0026】
ここで、本実施形態においてキャップ本体10とカバー部11とは薄肉のヒンジ部11eによって一体として形成されているが、別構造としてもよい。例えば、キャップ本体10にカバー部11を装着させるために、例えば、カバー部11の幅方向両端にピンを設け、キャップ本体10側にピン穴を設ければピンをピン穴に挿入するだけでキャップ本体10にカバー部11を装着させることも可能である。また、軸と軸穴あるいは挿入孔とを用いて装着させることも可能である。
【0027】
(噴射口35の構成)
噴射口35は噴射経路16の先端に接続されている。ステム38から噴出された内容物はステム嵌合筒15から噴射経路16を通って噴射口35から噴射される。本実施形態においては、噴射口35がカバー部11に覆われることによって、噴射方向が変更される。
【0028】
次に、上述したように構成される本実施形態におけるキャップ30の作用効果を説明する。
(非噴射状態から通常噴射状態へ移行する場合)
図1及び図2に示す非噴射状態において、使用者は指先をボタン部1の押圧面5に添え押圧面5を押圧し、ボタン部1を押し下げる。このときボタン部1と連動してキャップ本体10の作動板12が開口部14の側縁部を支点として揺動する。さらに作動板12と連動して、ステム38が押下されることによって通常噴射状態へ移行する。このように、ステム38は押圧面5よりも開口部14(支点)により近いところに位置しているのでステム38を比較的小さな力で押下することが可能である。
【0029】
(非噴射状態から噴射維持状態へ移行する場合)
図4は噴射維持状態のエアゾール装置50の上面図であり、図5は図4のB−B´線断面図であり、図6は図4のC−C´線断面図である。
【0030】
まず、図1及び図2に示す非噴射状態において、使用者は噴射口35の反対側からキャップ本体10の指先案内凹部19に指を案内されつつ、指先をボタン部1の押圧面5に添える。次に、ボタン部1に指先を添えたまま指を図4に示す矢印F方向に動かしボタン部1を移動させる。
【0031】
このとき、ボタン部1の滑動部6が被滑動部13に沿って摺動されることによってボタン部1の位置を図1及び図2に示す後端位置から図4及び図5示す中央位置に移動させることができる。さらに、滑動部6が被滑動部13に沿って摺動されるのと同時に、スライダー部3,3がカム部18,18に摺動されることによって、ボタン部1にカム部18,18のV字形状に応じた動作が伝えられる。すなわち、図5に示すようにスライダー部3がカム部18の頂点18aと当接するまでの間にカム部18のV字状の傾斜に応じた角度だけ作動板12が開口部14を支点として図5に示す矢印G方向に傾斜する。
【0032】
また、図5及び図6に示すように、作動板12の傾斜と連動して、ステム38が押下される。ステム38が押下されると図示せぬバルブ内のスプリングによって図5に示す矢印H方向の反発力が作動板12に作用し、カム部18,18によって伝えられた作動板12の押圧力(矢印G)と、ステム38の反発力(矢印H)とが釣り合ったときにスライダー部3とカム部18の頂点18aとの当接状態が維持され、ステム38の押下具合が維持される。
【0033】
このように本実施形態におけるキャップ30は、カム部18,18によって伝えられた力(矢印G)と、ステム38の付勢力(矢印H)との釣り合いによって当接状態が維持され、使用者がボタン部1から指を離しても噴射維持状態を保つように構成されている。したがって、使用者は、指一本で容易に噴射維持状態まで移行させることができる。
【0034】
一方、ボタン部1の滑動部6が被滑動部13に沿って摺動されるのに伴い、ボタン部1の突起部2の先端部2aがカバー部11と当接し、さらに切欠面2bがカバー部11と当接及び摺動することによって、カバー部11はヒンジ部11eを軸として図5に示す矢印I方向へ回動する。図5に示すようにカバー部11が回動すると、噴射口35が正面11d、左右側面11c,11c、及び上面11aの4つの面に覆われることによって、噴射方向が変更される。
【0035】
本実施形態においては、突起部2の長さ及び被滑動部13の長さを適宜設定しておくことによってボタン部1の摺動量を変えることも可能である。このように構成することによって、所定量までの摺動であれば摺動量に対して作動板12及びステム38の押下具合すなわち噴射量が比例するので、噴射量の調節が可能となる。
【0036】
また、本実施形態においてはボタン部1に突起部2を設けたが、ボタン部1から突起部2を取り除くことも可能である。このように、突起部2を取り除いた場合には、ボタン部1を初期位置から摺動させるときにステム38がある方向へ摺動させても、突起部2によってカバー部11が回動されることがなく、噴射口35が覆われることがない。すなわち、エアゾール容器40の内容物の噴射方向は変更されないので、作動板12の押圧力(矢印G)と、ステム38の反発力(矢印H)とが釣り合ったところでステム38の押下具合が維持されると通常の噴射方向での連続噴射状態を維持することも可能である。
【0037】
このように本実施形態におけるキャップ30によれば、使用者がエアゾール容器40内のガスを抜く際には、ガスの噴射方向が、通常の噴射方向から噴射口35よりも下側方向へ変更されるように構成されている。したがって、使用者がエアゾール容器40内のガスを抜く際に、誤って噴射口35を火気類に向けてしまった場合でも、直接火気類に内容物を噴射することがなく、火災等を未然に防止することが可能である。さらに、本実施形態におけるキャップ30の作動板12は傾斜部22を有しているので、カバー部11によって噴射方向が変更された際には、傾斜部22の傾斜に沿った噴射物の逃げ道が形成され、噴射物が霧状に広がることによってカバー部11の周辺が濡れてしまうのを防ぐことができる。
【0038】
また、本実施形態におけるキャップ30によれば、エアゾール容器40内のガス抜きを行う際にはカバー部11が前述したボタン部1の突起部2と当接しながら回動することによって、噴射口35が正面11d、左右側面11c,11c、及び上面11aによって覆われるように構成されている。このように噴射口35が4つの面によって覆われることによって、エアゾール容器40内の内容物の噴射方向が変更されるので、噴射口35の正面方向に火気類が存在していた場合でも、直接火気類に内容物を噴射することがなくなる。
【0039】
また、作動板12とカバー部11との接続部分は薄肉のヒンジ部11e(弱剛性部)として構成されており、カバー部11はヒンジ部11aを軸として回動する。比較的小さな力で容易にカバー部を回動させることが可能であり、指1本でも操作することができるので使い勝手のよいキャップ30を提供することができる。
【0040】
次に、本発明にかかるキャップ及びキャップを備えたエアゾール装置の第2の実施形態について説明する。
【0041】
図7は、本実施形態に係るエアゾール装置の上面図、図8は図7に示すエアゾール装置のD−D´線断面図である。
【0042】
図7及び図8に示すように、本実施形態に係るキャップ30は、キャップ本体10と、キャップ本体10の上側に装着されるボタン部1及びキャップ本体10の正面側に装着された噴射口11から構成されている。そしてキャップ30がエアゾール容器40に装着されことによってエアゾール装置50が得られる。このように本実施形態に係るキャップ30の主要構成は第1の実施形態にかかるキャップ30と同様であるので、以下重複する構成要素についての説明は割愛する。
【0043】
(ボタン部1の構成)
まず、ボタン部1の構成について説明する。本実施形態におけるボタン部1は、第1の実施形態にかかるボタン部1の突起部2をカバー部41に置き換え、ボタン部1とカバー部41を一体として形成したものである。このように一体形成することによって、キャップ30の部品点数を減らし、組立工程を容易にすることが可能である。
【0044】
図8に示すようにカバー部41は、1の開口部41dを有し、開口部41dは通常噴射状態においてはキャップ30の底面に向かって開口している。開口部41dの反対側には斜面41cが形成されており、さらに図7に示すようにその斜面41cの上り方向に沿って延伸された延伸板41b,41bが形成されている。このように、本実施形態におけるカバー部41は1の開口部41dから噴射口35を覆うように構成されている。そして、カバー部41はヒンジ部41a(弱剛性部)によって胴体部4と接続され、ヒンジ部41aを軸として回動するように構成されている。
【0045】
ここで、本実施形態においてボタン部1とカバー部41とは薄肉のヒンジ部41aによって一体として形成されているが、別構造としてもよい。例えば、カバー部41の幅方向両端にピンを設け、胴体部4側にピン穴を設ければピンをピン穴に挿入するだけでボタン部1にカバー部41を装着させることも可能である。また、軸と軸穴あるいは挿入孔とを用いて装着させることも可能である。
【0046】
(キャップ本体10の構成)
次に、キャップ本体10の構成について説明する。本実施形態におけるキャップ本体10は第1の実施形態にかかるキャップ本体10からカバー部11をとりのぞき、天板部17,17の一部をつなぐ接続板45を新たに設けたものである。
【0047】
本実施形態においてエアゾール容器40内のガス抜きを行う際には、図8に示すようにカバー部41の斜面41c及び延伸板41bがキャップ部10の接続板45に対して順に摺動されながら、ヒンジ部41aを軸としてカバー部41が回動することによって、噴射口35が開口部41dによって覆われるように構成されている。このように噴射口35が開口部41dによって覆われることによって、エアゾール容器40内の内容物の噴射方向が変更されるので、噴射口35の正面方向に火気類が存在していた場合でも、直接火気類に内容物を噴射することがなくなる。
【0048】
次に、上述したように構成される本実施形態におけるキャップ30の作用効果を説明する。なお、非噴射状態から通常噴射状態へ移行する場合の作用効果は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0049】
(非噴射状態から噴射維持状態へ移行する場合)
図9は噴射維持状態のエアゾール装置50の上面図であり、図10は図9のE−E´線断面図である。
【0050】
まず、図7及び図8に示す非噴射状態において、使用者は噴射口35の反対側から指先をボタン部1の押圧面5に添える。次に、ボタン部1に指先を添えたまま指を図9に示す矢印J方向に動かしボタン部1を移動させる。
【0051】
このとき、ボタン部1の滑動部6が被滑動部13に沿って摺動されることによってボタン部1の位置を図7及び図8に示す後端位置から図9及び図10示す中央位置に移動させることができる。さらに、滑動部6が被滑動部13に沿って摺動されるのと同時に、スライダー部3,3がカム部18,18に摺動されることによって、ボタン部1にカム部18,18のV字形状に応じた動作が伝えられる。すなわち、図10に示すようにスライダー部3がカム部18の頂点18aと当接するまでの間にカム部18のV字状の傾斜に応じた角度だけ作動板12が開口部14を支点として図10に示す矢印K方向に傾斜する。
【0052】
また、図10に示すように、作動板12の傾斜と連動して、ステム38が押下される。ステム38が押下されると図示せぬバルブ内のスプリングによって図10に示す矢印L方向の付勢力が作動板12に作用し、カム部18,18によって伝えられた力(矢印K)と、ステム38の付勢力(矢印L)とが釣り合ったときにスライダー部3とカム部18の頂点18aとの当接状態が維持される。
【0053】
このように本実施形態におけるキャップ30も、カム部18,18によって伝えられた力(矢印K)と、ステム38の付勢力(矢印L)との釣り合いによって当接状態が維持され、使用者がボタン部1から指を離しても噴射維持状態を保つように構成されている。したがって、使用者は、従来のような煩わしい操作を伴うことなく指一本で容易に噴射維持状態まで移行させることができる。
【0054】
一方、ボタン部1の滑動部6が被滑動部13に沿って摺動されるのに伴い、ボタン部1のカバー部41の斜面41c及び延伸板41b,41bがキャップ部10の接続板45に対して順に摺動されながら、ヒンジ部41aを軸としてカバー部41が回動することによって、噴射口35が開口部41dによって覆われるように構成されている。なお、図10に示すように本実施形態において、カバー部41の延伸板41bの先端が接続板45を乗り越えたときに開口部41dによって噴射口35が完全に覆われ、噴射方向が変更されるように構成されている。
【0055】
このように本実施形態におけるキャップ30によれば、使用者がエアゾール容器40内のガスを抜く際には、ガスの噴射方向が、通常の噴射方向から噴射口35よりも下側方向へ変更されるように構成されている。したがって、使用者がエアゾール容器40内のガスを抜く際に、誤って噴射口35を火気類に向けてしまった場合でも、直接火気類に内容物を噴射することがなく、火災等を未然に防止することが可能である。
【0056】
また、本実施形態においても、斜面41c及び延伸板41bの勾配、被滑動部13の長さを調節することによってボタン部1の摺動量を変えることも可能である。このように構成することによって、所定量までの摺動であればカバー部41が噴射口35を覆うことがなく、摺動量に比例して作動板12及びステム38が押下され、摺動量を調節することによって噴射量の調節が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施形態に係るエアゾール装置の上面図である。
【図2】図1に示すエアゾール装置のA−A´断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るエアゾール装置に装着されるキャップの底面図である。
【図4】第1の実施形態に係る噴射維持状態のエアゾール装置の上面図である。
【図5】図4のB−B´線断面図である。
【図6】図4のC−C´線断面図である。
【図7】第2の実施形態に係るエアゾール装置の上面図である。
【図8】図7に示すエアゾール装置のD−D´線断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る噴射維持状態のエアゾール装置の上面図である。
【図10】図9のE−E´線断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ボタン部
2 突起部
3 スライダー部
4 胴体部
5 押圧面
6 滑動部
10 キャップ本体
11、41 カバー部
12 作動板
13 被滑動部
18 カム部
35 噴射口
38 ステム
40 エアゾール容器
45 接続板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムが押下されることによってステムから内容物が噴出されるエアゾール容器に装着されるキャップであって、
前記エアゾール容器に装着させる装着部を備えたキャップ本体と、
前記ステムを押下させるボタン部と、
前記ステムから噴出された前記内容物が外部へ噴射される噴射口と、
前記噴射口の近傍に移動可能なカバー部と、を有し、
前記カバー部が前記噴射口の近傍に移動されることによって前記噴射口から噴射される前記内容物の噴射方向が変更されることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体は、前記ステムを押下する作動板と、前記作動板を挟んで対向するように形成されたカム部と、を備え、
前記ボタン部は前記カム部に対して摺動するスライダー部を備え、
前記スライダー部を前記カム部に摺動させることによって前記ステムの押下具合が調整されることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記ステムを押下する前記作動板の押圧力と、前記ステムの反発力とによって、前記スライダー部が所定位置に保持され前記ステムの押下具合が維持されることを特徴とする請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記ボタン部は突起部を備え、
前記ボタン部の移動によって前記突起部が前記カバー部に当接し、前記カバー部が前記噴射口の近傍に移動されることによって前記内容物の噴射方向が変更されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のキャップ。
【請求項5】
前記請求項1〜請求項4の何れかに記載のキャップを備えたことを特徴とするエアゾール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−99316(P2007−99316A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289001(P2005−289001)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】