説明

キャップ外し装置

【課題】簡単な構成で、マイクロチューブから取り外したキャップを確実に回収し、キャップの取り外し動作を常に確実に行うとともに、取り外したキャップが周囲に散乱したり、別のマイクロチューブ上に落下して内容物を汚染することのないキャップ外し装置を提供すること。
【解決手段】複数のピッキング軸棒110を軸方向に移動させ傾倒させてマイクロチューブMTからキャップCを取り外すキャップ外し装置であって、複数の溝143を有する櫛歯金具141が、ピッキング軸棒110が傾倒した状態で溝143内に収容可能な位置に固定的に配置されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入されたキャップを取り外すキャップ外し装置に関し、特に、創薬(drug discovery)、すなわち、医学、生物工学および薬学において薬剤を発見したり設計したりするプロセスにおいて、創薬用試料を封入するために使用される保管ラックに収容されている複数のマイクロチューブを密封するキャップを保管ラックの列単位でまとめて取り外すために使用されるキャップ外し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、創薬研究の分野においては、大量の試料を低温で保管したり分析したりする実験を高効率で行う必要がある。
そのため、試料を溶解した溶液をマイクロチューブと呼ばれる円筒状または四角筒状の小型容器に封入し、このマイクロチューブをSBS(Society for Biomolecular Screening)規格に準拠した16行×24列の合計384個の区画を有する保管ラック(以下、「384ラック」と称す)に縦列収容し、保管や搬送を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
マイクロチューブMTは、図1の拡大斜視図に示すように、略四角筒形状であり底部に向けて細くなっているとともに外側面の角部に面取りが施されている。そして、その開口部は、円柱形状で頭部に円形状の凹部C1が形成されたキャップCが嵌合するような形状に成形されている。
【0004】
一方、保管ラックRは、フレームの内側に格子状に区画された隔壁を有しており、この格子状の区画に前述したマイクロチューブMTの底部が嵌合する。
なお、マイクロチューブMTおよび保管ラックRの形状は、互いに安定した状態で嵌合するものであれば、それらの形状は、特に限定されるものではない。
【0005】
キャップCは、図2に示すように、マイクロチューブの開口部に挿入される挿入部C3と、この挿入部C3の外周径よりも大きな外周径を有しマイクロチューブの開口部から突出する把持部C2を有している。そして、キャップCの挿入部C3には、先端に向けて細くなるテーパC6が形成されている。
【0006】
キャップCの挿入部C3と把持部C2との境界に段差が形成されているとともに、挿入部C3の境界近傍に、マイクロチューブの開口部の内壁と密着しないくびれC4が形成されている。
このくびれC4が設けられていることにより、キャップCの挿入部C3の外周面と創薬用マイクロチューブの開口部の内壁との間に形成される気密嵌合面C5の面積が小さくなり、気密嵌合面C5に生じる接触面圧が大きくなるため、キャップCとマイクロチューブの開口部との気密性が向上する。
このキャップCは、弾性に抗してキャップ外し装置のピッキング軸棒と嵌合する必要があるため、弾性力に優れたポリエチレン等により形成されている。
【0007】
このような384ラックは、区画のピッチが4.5mmときわめて短いため、384ラックに収容されているマイクロチューブの開口部の密封に着脱可能なキャップを用いた場合、機械によるキャップの装着、取り外しが、きわめて困難であった。
【0008】
そこで、本発明者らは、ピッキング軸棒を保管ラックのピッチ間隔に離間させて平行かつ直線状に固設して軸方向に移動させるとともに、傾倒部材により傾倒させながらマイクロチューブからキャップを外す、キャップ外し装置を開発した(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
上記公知のキャップ外し装置は、マイクロチューブのキャップの凹部に、このキャップが有する弾性に抗して嵌合可能な外径を有するピッキング軸棒を有している。
このピッキング軸棒は、保管ラックの列単位の数と同数分設けられ、保管ラックのピッチ間隔に離間されて、平行かつ直線状に軸棒ホルダに固設されている。
そして、軸棒ホルダは、上下移動用アクチュエータのスライダ部に取り付けられていて、ピッキング軸棒の軸方向に移動可能になっている。
【0010】
また、ピッキング軸棒の直径よりも大きくキャップの外径より小さな幅の溝を保管ラックのピッチ間隔と同間隔で、保管ラックの列単位の数と同数分櫛歯状に形成し、これらの溝の各々の幅方向中央にピッキング軸棒が収まるように櫛歯金具が配置されている。
そして、上下移動用アクチュエータと櫛歯金具は傾倒部材に固設されている。
【0011】
軸棒ホルダを上下移動用アクチュエータによって降下させて、ピッキング軸棒の先端をキャップの凹部にキャップの弾性に抗して嵌合させ、傾倒部材を傾倒させることによって、ピッキング軸棒の先端に嵌合しているキャップを傾倒させてマイクロチューブの開口部から外す。
【0012】
そして、キャップがマイクロチューブの開口部から外れたら、櫛歯金具がキャップボックスの上方に位置するように傾倒部材をさらに傾倒させ、上下移動用アクチュエータにより軸棒ホルダをさらに上方に引き上げることで、ピッキング軸棒の先端に嵌合していたキャップが櫛歯金具によって離脱し、キャップボックスの中に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−33061号公報(第6頁、図1)
【特許文献2】特開2010−096627号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような公知のキャップ外し装置によれば、櫛歯金具が傾倒部材に固設されているため、静電気やキャップの食い込み等により櫛歯金具にキャップが付着した場合は、次のキャップ取り外し動作時にキャップの付いたマイクロチューブ上に付着したキャップが重なるように押し出されてしまい、本来取り外すべきキャップにピッキング軸棒を挿入できないという問題があった。
【0015】
また、櫛歯金具にキャップが一時的に付着して落下のタイミングがずれた場合や、ピッキング軸棒からの離脱時に下方以外に弾かれたり、落下点でバウンドした場合、キャップボックス外に落下して、周囲に散乱するという問題があった。
【0016】
特に取り外したキャップにはマイクロチューブの内容物が付着しているため、取り外したキャップが既にキャップが取り外された別のマイクロチューブ上に落下すると、異なるマイクロチューブの内容物が混じることとなり、試験や実験で使用する創薬等の用途においては致命的な障害となる虞があった。
【0017】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、簡単な構成で、マイクロチューブから取り外したキャップを確実に回収し、キャップの取り外し動作を常に確実に行うとともに、取り外したキャップが周囲に散乱したり、別のマイクロチューブ上に落下して内容物を汚染することのないキャップ外し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本請求項1に係る発明は、マイクロチューブのキャップの凹部に弾性に抗して嵌合可能な外径を有するピッキング軸棒と、複数の該ピッキング軸棒を平行かつ直線状に固設する軸棒ホルダと、該軸棒ホルダをピッキング軸棒の軸方向に移動させる上下移動用アクチュエータと、前記軸棒ホルダおよび上下移動用アクチュエータを一体に傾倒させる傾倒部材と、前記ピッキング軸棒の先端に嵌合したキャップを離脱させるキャップ回収手段とを有するキャップ外し装置であって、前記キャップ回収手段が、前記ピッキング軸棒を個別に収容する複数の溝を持つ櫛歯金具を有し、該櫛歯金具が、前記軸棒ホルダおよび上下移動用アクチュエータが傾倒した状態で、前記ピッキング軸棒を前記溝内に収容可能な位置に固定的に配置されていることにより、前記課題を解決したものである。
【0019】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係るキャップ外し装置の構成に加えて、前記櫛歯金具の複数の溝が、金具本体の端縁にU字状に形成され、前記傾倒部材が垂直位置方向に回動して前記ピッキング軸棒が収容される方向に開口していることにより、前記課題を解決したものである。
【0020】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係るキャップ外し装置の構成に加えて、前記櫛歯金具の金具本体の端縁が、複数の前記ピッキング軸棒の先端を結ぶ線と所定の角度傾斜するように構成され、前記櫛歯金具の複数の溝が、複数の前記ピッキング軸棒の先端に嵌合したキャップと同時に接触しないよう配置されていることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0021】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るキャップ外し装置の構成に加えて、前記キャップ回収手段が、離脱したキャップをキャップボックスまで誘導する誘導通路と、前記櫛歯金具の下方に設けられ離脱したキャップを誘導通路側に落下させるキャップ受部とを有することにより、前記課題を解決したものである。
【0022】
本請求項5に係る発明は、請求項4に係るキャップ外し装置の構成に加えて、前記櫛歯金具の複数の溝の開口部の前方に、前記ピッキング軸棒の挿入スペースを開けて前記キャップ受部上に落下したキャップの上方への飛散防止用カバーが配置され、前記櫛歯金具、キャップ受部、飛散防止用カバーおよび誘導通路で前記ピッキング軸棒の挿入スペース以外を覆う閉空間が形成されていることにより、前記課題を解決したものである。
【0023】
本請求項6に係る発明は、請求項5に係るキャップ外し装置の構成に加えて、前記キャップ回収手段が、左右に前記誘導通路を配し、該誘導通路の上端を結ぶよう前記櫛歯金具、キャップ受部および飛散防止用カバーを配し、全体として門型に形成されていることにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0024】
本請求項1に係るキャップ外し装置は、マイクロチューブのキャップの凹部に弾性に抗して嵌合可能な外径を有するピッキング軸棒と、複数の該ピッキング軸棒を平行かつ直線状に固設する軸棒ホルダと、該軸棒ホルダをピッキング軸棒の軸方向に移動させる上下移動用アクチュエータと、軸棒ホルダおよび上下移動用アクチュエータを一体に傾倒させる傾倒部材と、ピッキング軸棒の先端に嵌合したキャップを離脱させるキャップ回収手段とを有することにより、保管ラックに垂直に並び立てて収容されている複数のマイクロチューブのキャップを列単位でまとめて取り外すことができるため、キャップの取り外し作業を短時間で行うことができる。
【0025】
また、キャップ回収手段がピッキング軸棒を個別に収容する複数の溝を持つ櫛歯金具を有し、該櫛歯金具が軸棒ホルダおよび上下移動用アクチュエータが傾倒した状態で、ピッキング軸棒を溝内に収容可能な位置に固定的に配置されていることにより、静電気やキャップの食い込み等により取り外されたキャップが櫛歯金具に付着しても、次のキャップ取り外し動作には何等の影響を与えることはない。
【0026】
さらに、櫛歯金具が固定的に配置されているため、キャップが一時的に付着して落下のタイミングがずれた場合でも常に同じ位置に落下するため、キャップが周囲に散乱することを防止し、別のマイクロチューブ上に落下して内容物を汚染することを防止することができる。
【0027】
本請求項2に係るキャップ外し装置によれば、請求項1に係るキャップ外し装置が奏する効果に加えて、櫛歯金具の複数の溝が、金具本体の端縁にU字状に形成され、傾倒部材が垂直位置方向に回動してピッキング軸棒が収容される方向に開口していることにより、溝の開口部が形成される金具本体の端縁を下向きに傾斜して設け、上方を金具本体によりカバーすることが可能となるため、キャップがピッキング軸棒から離脱時する際に下方以外に弾かれて周囲に散乱することを抑制することができる。
【0028】
本請求項3に係るキャップ外し装置によれば、請求項1または請求項2に係るキャップ外し装置が奏する効果に加えて、櫛歯金具の金具本体の端縁が、複数のピッキング軸棒の先端を結ぶ線と所定の角度傾斜するように構成され、櫛歯金具の複数の溝が、複数のピッキング軸棒の先端に嵌合したキャップと同時に接触しないよう配置されていることにより、それぞれのピッキング軸棒からキャップが離脱するタイミングが分散されて上下移動用アクチュエータにかかる最大負荷が小さくなり、円滑にキャップを列単位でまとめて取り外すことができる。
また、キャップがピッキング軸棒から離脱する動作が円滑に行われることにより、離脱する際に弾性により意図しない方向に弾かれることを抑制することができる。
【0029】
本請求項4に係るキャップ外し装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るキャップ外し装置が奏する効果に加えて、キャップ回収手段が、離脱したキャップをキャップボックスまで誘導する誘導通路と、櫛歯金具の下方に設けられ離脱したキャップを誘導通路側に落下させるキャップ受部とを有することにより、ピッキング軸棒から離脱したキャップが周囲に散乱することなく、キャップをキャップボックスに収容することができる。
【0030】
本請求項5に係るキャップ外し装置によれば、請求項4に係るキャップ外し装置が奏する効果に加えて、櫛歯金具の複数の溝の開口部の前方に、ピッキング軸棒の挿入スペースを開けてキャップ受部上に落下したキャップの上方への飛散防止用カバーが配置され、櫛歯金具、キャップ受部、飛散防止用カバーおよび誘導通路でピッキング軸棒の挿入スペース以外を覆う閉空間が形成されていることにより、キャップボックスに収容するまでの経路上でキャップが外にバウンドすることが防止される。
【0031】
本請求項6に係るキャップ外し装置によれば、請求項5に係るキャップ外し装置が奏する効果に加えて、キャップ回収手段が、左右に前記誘導通路を配し、該誘導通路の上端を結ぶよう前記櫛歯金具、キャップ受部および飛散防止用カバーを配し、全体として門型に形成されていることにより、誘導通路を垂直方向にキャップの取り外し動作に必要な構成を避けて下方まで伸びる構成とし、キャップボックスをマイクロチューブよりも下方に配置することができる。
【0032】
このことにより、キャップボックスに収容されたキャップを回収する作業を行う際に、万一、作業者が誤ってキャップを散乱させても、キャップの取り外し動作に影響を与えることが防止でき、別のマイクロチューブ上に落下して内容物を汚染することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例であるキャップ外し装置が対象とするマイクロチューブと保管ラックの斜視図。
【図2】図1のマイクロチューブのキャップ斜視図。
【図3】本発明の一実施例であるキャップ外し装置の斜視図。
【図4】図3の別角度からの斜視図。
【図5】図3の側面図。
【図6】本発明の一実施例であるキャップ外し装置のキャップ回収手段の斜視図。
【図7】図6のキャップ回収手段の櫛歯金具の斜視図。
【図8】図7の側面図。
【図9】図7の正面図。
【図10】本発明の一実施例であるキャップ外し装置の初期動作を示す概略側面図。
【図11】図10の後の傾倒動作を示す概略側面図。
【図12】図11の後のキャップ離脱動作の初期動作を示す概略側面図。
【図13】図12の拡大概略側面図。
【図14】図12の後の傾倒動作を示す拡大概略側面図。
【図15】図14の後のピッキング軸棒の進入動作を示す拡大概略側面図。
【図16】図15の後のピッキング軸棒の溝への収容動作を示す拡大概略側面図。
【図17】図16の後のピッキング軸棒からのキャップ離脱動作を示す拡大概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のキャップ外し装置は、マイクロチューブのキャップの凹部に弾性に抗して嵌合可能な外径を有するピッキング軸棒と、複数の該ピッキング軸棒を平行かつ直線状に固設する軸棒ホルダと、該軸棒ホルダをピッキング軸棒の軸方向に移動させる上下移動用アクチュエータと、軸棒ホルダおよび上下移動用アクチュエータを一体に傾倒させる傾倒部材と、ピッキング軸棒の先端に嵌合したキャップを離脱させるキャップ回収手段とを有するキャップ外し装置であって、キャップ回収手段が、ピッキング軸棒を個別に収容する複数の溝を持つ櫛歯金具を有し、該櫛歯金具が、軸棒ホルダおよび上下移動用アクチュエータが傾倒した状態で、ピッキング軸棒を溝内に収容可能な位置に固定的に配置され、簡単な構成で、マイクロチューブから取り外したキャップを確実に回収し、キャップの取り外し動作を常に確実に行うとともに、取り外したキャップが周囲に散乱したり、別のマイクロチューブ上に落下して内容物を汚染することがないものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0035】
例えば、本発明のキャップ外し装置が対象とするマイクロチューブは、円筒形状のものであっても、四角筒形状のものであっても、キャップ外し動作に何ら支障はない。
また、本発明のキャップ外し装置に用いられる上下移動用アクチュエータや傾倒部材の機構は、サーボモータを用いたものやリニアモータを用いたもの、あるいは流体圧で駆動されるものなど、どのような形式のアクチュエータであっても構わない。
【実施例】
【0036】
本発明の一実施例であるキャップ外し装置100は、図3乃至図5に示すように、マイクロチューブのキャップCの凹部に弾性に抗して嵌合可能な外径を有するピッキング軸棒110を有している。
このピッキング軸棒110は、保管ラックRの列単位の数と同数分、すなわち、本実施例においては、16本設けられている。
【0037】
ピッキング軸棒110は、保管ラックRのピッチ間隔に離間されて、平行かつ直線状に軸棒ホルダ120に固設されている。
軸棒ホルダ120は、上下移動用アクチュエータ130のスライダ部132に取り付けられ、ピッキング軸棒110の軸方向に移動可能になっている。
【0038】
傾倒部材150は、上下移動用アクチュエータ130を有しているとともに、側面にピッキング軸棒110とキャップCが嵌合する位置と略同じ高さ且つ同じ前後位置に傾倒軸152を有し、傾倒軸152を中心として、ピッキング軸棒110、軸棒ホルダ120および上下移動用アクチュエータを一体に傾倒させることができる。
【0039】
保管ラックRはラックホルダテーブル162上に載置され、該ラックホルダテーブル162は、水平移動用アクチュエータ160によって水平に移動可能となっている。
保管ラックRは、水平移動用アクチュエータ160による進退動作により、任意のマイクロチューブの列がピッキング軸棒110の真下に来るように順次移動可能に構成されている。
【0040】
傾倒部材150に設けられた傾倒軸152の片側には、傾倒部材150を傾倒させるための傾倒用モータ170が連結され、該傾倒用モータ170、上下移動用アクチュエータ130および水平移動用アクチュエータ160を適宜駆動することで、後述するマイクロチューブからのキャップ外し動作およびピッキング軸棒110からのキャップ離脱動作が行われる。
【0041】
傾倒部材150の傾倒側には、ピッキング軸棒110からキャップを離脱するキャップ回収手段140が、全体として門型に形成されてラックホルダテーブル162の移動経路をまたぐように固定されている。
キャップ回収手段140の下方には、キャップ回収手段140で離脱したキャップを収容するキャップボックス180が配置されている。
【0042】
キャップ回収手段140は、図6に示すように、左右に配された誘導通路146と、該誘導通路146の上端を結ぶよう櫛歯金具141、キャップ受部144および飛散防止用カバー145からなり、左右に配された誘導通路146の下端部、櫛歯金具141の複数の溝143およびピッキング軸棒110の挿入スペース以外は閉空間となるように構成されている。
【0043】
櫛歯金具141は、図7乃至図9に示すように、金具本体142の上部の下方に屈曲し、その端縁147には複数の溝143が設けられている。
複数の溝143は、ピッキング軸棒110の直径よりも大きくキャップCの外径より小さな幅のU字状に形成されており、ピッキング軸棒110と同一数設けられて、各々の溝143にピッキング軸棒110が収まるよう構成されている。
【0044】
また、櫛歯金具141の金具本体142の複数の溝143を有する端縁147は、図9に示すように、複数のピッキング軸棒110の先端を結ぶ線(水平な線)と所定の角度傾斜するように構成されている。
【0045】
本実施例では、キャップ回収手段140は、図3乃至図6に示すように、左右に配された誘導通路146とキャップ受部144が一体に構成され、キャップ受部144の傾倒部材150側の側部に櫛歯金具141がその反対側側部から上部に飛散防止用カバー145が固定され、櫛歯金具141によってピッキング軸棒110から離脱したキャップが、左右に配された誘導通路146の下端部の開口部からキャップボックス180に落下するように構成されている。
【0046】
次に、本実施例のキャップ外し装置100がマイクロチューブMTのキャップCを取り外し、キャップCを回収する動作について説明する。
【0047】
まず、上下移動用アクチュエータ130が垂直である状態において、水平移動用アクチュエータ160によって、キャップCを列単位で取り外す対象となる列がピッキング軸棒110の真下に来るように、保管ラックRが載置されたラックホルダテーブル162を移動させる。
【0048】
そして、軸棒ホルダ120を上下移動用アクチュエータ130によって降下させて、図10に示すように、ピッキング軸棒110の先端をキャップCの凹部にキャップCの弾性に抗して嵌合させる。
なお、図10の拡大図に示された二重線で示された部材は、向こう側の傾倒軸152を示している。
【0049】
なお、図10および後述する図11乃至図17は側面図であるため、1つのピッキング軸棒110とキャップCの状態のみ図示しているが、図の裏表方向に平行に配置された全てのピッキング軸棒110とキャップC(本実施例では16本)は、同時に同一の状態となる。
【0050】
次に、図11に示すように、傾倒用モータ170を駆動して傾倒部材150を傾倒させることによって、ピッキング軸棒110の先端に嵌合しているキャップCを傾倒させてマイクロチューブMTの開口部から外す。
【0051】
この時、キャップCの挿入部の形状によっては、ピッキング軸棒110の傾倒角度が大きくなる過程でキャップCとマイクロチューブMTの開口部の内周面との間にかかる力や摩擦が問題となることがある。
その場合は、適宜のタイミングでマイクロチューブMTが傾倒方向と逆方向にスライドするように水平移動用アクチュエータ160によってラックホルダテーブル162を移動させてもよい。
【0052】
キャップCがマイクロチューブMTの開口部から外れると、図12および図13に示すように、傾倒部材150をさらに傾倒させてピッキング軸棒110がキャップ回収手段140に近接する位置まで傾倒させるとともに、上下移動用アクチュエータ130により軸棒ホルダ120を上昇させ、ピッキング軸棒110の先端に嵌合されたキャップCがキャップ回収手段140の櫛歯金具141より上方に来る位置まで引き上げられる。
【0053】
そして、図14に示すように、傾倒部材150をさらに傾倒させて、ピッキング軸棒110をキャップ回収手段140の挿入スペースに挿入可能な位置まで傾倒させた後、図15に示すように、上下移動用アクチュエータ130により軸棒ホルダ120を下降させ、キャップCが櫛歯金具141の溝より下方に来る位置まで引き下げられる。
【0054】
次に、図16に示すように、傾倒部材150を逆に起立させて、ピッキング軸棒110を櫛歯金具141に完全に収容される位置まで起立させた後、上下移動用アクチュエータ130により軸棒ホルダ120を上昇させることで、図17に示すように、キャップCが櫛歯金具141によってピッキング軸棒110の先端から離脱し、キャップ回収手段140の閉空間内に落下する。
落下したキャップCは、キャップ回収手段140の閉空間内を落下して、下方に設置されたキャップボックス180に収容される。
【0055】
このような一連の動作を繰り返すことによって、保管ラックRに垂直に並び立てて収容されたマイクロチューブMTのキャップCを、保管ラックRの列単位でまとめて取り外し、散乱することなく確実にキャップボックス180に収容される。
【0056】
なお、櫛歯金具141には、図6に示すように、キャップ付着検知手段190が設けられても良い。
該キャップ付着検知手段190は、櫛歯金具141の両サイドに設けられた発光手段192と受光手段193(これらの配置は左右どちらでも構わない。)からなり、発光手段192から複数の溝143の下方を横切る光191を発光し、受光手段193で当該光191を検出するように構成されている。
【0057】
このことで、櫛歯金具141にキャップの付着を、受光手段193に達する光量が光191が遮られて減少することで検知でき、当該検知信号を受けて、警報を発し作業者に排除を促す等、適宜の動作を行うことができる。
【0058】
以上のように、本発明のキャップ外し装置によれば簡単な構成で、マイクロチューブから取り外したキャップを確実に回収し、キャップの取り外し動作を常に確実に行うとともに、取り外したキャップが周囲に散乱したり、別のマイクロチューブ上に落下して内容物を汚染することがないなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0059】
100 ・・・キャップ外し装置
110 ・・・ピッキング軸棒
120 ・・・軸棒ホルダ
130 ・・・上下移動用アクチュエータ
132 ・・・スライダ部
140 ・・・キャップ回収手段
141 ・・・櫛歯金具
142 ・・・金具本体
143 ・・・溝
144 ・・・キャップ受部
145 ・・・飛散防止用カバー
146 ・・・誘導通路
147 ・・・端縁
150 ・・・傾倒部材
152 ・・・傾倒軸
154 ・・・傾倒軸穴
160 ・・・水平移動用アクチュエータ
162 ・・・ラックホルダテーブル
170 ・・・傾倒用モータ
180 ・・・キャップボックス
190 ・・・キャップ付着検知手段
191 ・・・光
192 ・・・発光手段
193 ・・・受光手段
MT ・・・マイクロチューブ
C ・・・キャップ
C1 ・・・凹部
C2 ・・・把持部
C3 ・・・挿入部
C4 ・・・くびれ
C5 ・・・気密嵌合面
C6 ・・・テーパ
R ・・・保管ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチューブのキャップの凹部に弾性に抗して嵌合可能な外径を有するピッキング軸棒と、複数の該ピッキング軸棒を平行かつ直線状に固設する軸棒ホルダと、該軸棒ホルダをピッキング軸棒の軸方向に移動させる上下移動用アクチュエータと、前記軸棒ホルダおよび上下移動用アクチュエータを一体に傾倒させる傾倒部材と、前記ピッキング軸棒の先端に嵌合したキャップを離脱させるキャップ回収手段とを有するキャップ外し装置であって、
前記キャップ回収手段が、前記ピッキング軸棒を個別に収容する複数の溝を持つ櫛歯金具を有し、
該櫛歯金具が、前記軸棒ホルダおよび上下移動用アクチュエータが傾倒した状態で、前記ピッキング軸棒を前記溝内に収容可能な位置に固定的に配置されていることを特徴とするキャップ外し装置。
【請求項2】
前記櫛歯金具の複数の溝が、金具本体の端縁にU字状に形成され、前記傾倒部材が垂直位置方向に回動して前記ピッキング軸棒が収容される方向に開口していることを特徴とする請求項1に記載のキャップ外し装置。
【請求項3】
前記櫛歯金具の金具本体の端縁が、複数の前記ピッキング軸棒の先端を結ぶ線と所定の角度傾斜するように構成され、
前記櫛歯金具の複数の溝が、複数の前記ピッキング軸棒の先端に嵌合したキャップと同時に接触しないよう配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャップ外し装置。
【請求項4】
前記キャップ回収手段が、離脱したキャップをキャップボックスまで誘導する誘導通路と、前記櫛歯金具の下方に設けられ離脱したキャップを誘導通路側に落下させるキャップ受部とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャップ外し装置。
【請求項5】
前記櫛歯金具の複数の溝の開口部の前方に、前記ピッキング軸棒の挿入スペースを開けて前記キャップ受部上に落下したキャップの上方への飛散防止用カバーが配置され、
前記櫛歯金具、キャップ受部、飛散防止用カバーおよび誘導通路で前記ピッキング軸棒の挿入スペース以外を覆う閉空間が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のキャップ外し装置。
【請求項6】
前記キャップ回収手段が、左右に前記誘導通路を配し、該誘導通路の上端を結ぶよう前記櫛歯金具、キャップ受部および飛散防止用カバーを配し、全体として門型に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のキャップ外し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−111509(P2012−111509A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261494(P2010−261494)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】