キャブマウント構造
【課題】 振動遮断性を損ねることなく、チルトロックが容易にできるキャブマウント構造の提供。
【解決手段】 振動遮断用のラバーブッシュ機構(16、16)は、ラバーブッシュ圧入部(18)と、ラバーブッシュ圧入部(18)内に収納されたラバーブッシュ(19)とを有し、該ラバーブッシュ(19)は、外筒(19a)と、内筒(19b)と、外筒(19a)と内筒(19b)の間に挟まれた弾性体(19c)と、で形成され、外筒(19a)と内筒(19b)の間に複数のストッパ(30)が設けられている。
【解決手段】 振動遮断用のラバーブッシュ機構(16、16)は、ラバーブッシュ圧入部(18)と、ラバーブッシュ圧入部(18)内に収納されたラバーブッシュ(19)とを有し、該ラバーブッシュ(19)は、外筒(19a)と、内筒(19b)と、外筒(19a)と内筒(19b)の間に挟まれた弾性体(19c)と、で形成され、外筒(19a)と内筒(19b)の間に複数のストッパ(30)が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブマウント構造に関する。より詳細には、貨物自動車のチルト可能なキャブをシャシフレームに対して脱着自在とするため、一端をシャシフレーム側に固定し且つ他端をキャブメインメンバ側に固定したチルトシリンダと、フロントキャブマウント及びリヤキャブマウントとを設け、フロントキャブマウントに取付ブラケットを介して振動遮断用のラバーブッシュ機構を備えたキャブマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブオーバ型貨物自動車においては、エンジン及びエンジン周辺の点検あるいは補修のために、キャブ全体をチルト(前傾斜)させる構造のものが多い。図7は、そのような車両の簡略図である。図7において、左方を前方、右方を後方として説明する。
【0003】
図7において、シャシフレーム4の前端部にチルトヒンジ5が設けられている。キャブ2は、チルトヒンジ5を枢軸として回動可能に、シャシフレーム4に固定されている。
図7において、符号8は、キャブ2をチルトさせるためのチルトシリンダである。符号2cは、キャブ2の後端部に設けられたチルトロック装置である。
【0004】
チルトロック装置2cは、リヤキャブマウント12に係合するようになっている。チルトロック装置2cでは、キャブ2をチルトさせる場合以外は、係合が解除されない。
【0005】
図8は、キャブ2をシャシフレーム4に搭載する機構を示している。
図8において、仮想線(1点鎖線)で示すキャブ2が、キャブメインメンバ6に固定されている。
キャブメインメンバ6の前部は、ブラケット15の上部に固定されている。キャブメインメンバ6の後部は、前記チルトロック装置2cにより、リヤキャブマウント12の上部に係合されている。
フロントキャブマウント10を示す図9を参照して、さらに説明する。
【0006】
図8及び図9において、ブラケット15の下部は、ラバーブッシュ機構16Aを介して、キャブサスリンク13のアーム14に、回動可能に支持されている。図10に、キャブサスリンク13を示している。
再び図9において、キャブサスリンク13のアーム14の前部及び後部に、ラバーブッシュ機構16Aが取り付けられている。
ラバーブッシュ機構16Aについては、図12及び図13で後記する。
【0007】
図9において、アーム14の前部は、ラバーブッシュ機構16Aを介して、ヒンジブラケット17の上部に、回動可能に固定されている。
ヒンジブラケット17の下部は、シャシフレーム4に固定されている。
【0008】
図9において、アーム14の前部上部と、ブラケット15の前部下部との間に、エアスプリング27が配置されている。また、アーム14の前部とブラケット15の前部との間に、ショックアブソーバ28が配置されている。
【0009】
図8において、チルトシリンダ8の上部は、キャブメインメンバ6の下端部に回動自在に取り付けられている。また、チルトシリンダ8の下部は、シャシフレーム4に回動自在に取り付けられている。
【0010】
図11は、図8で示された、リヤキャブマウント12のX矢視図である。
図12において、キャブ2の下部にチルトロック装置2cが設けられている。チルトロック装置2cは、ロックピン12pに係合するように構成されている。ただし、図11においては、チルトロック装置2cとロックピン12pとは、係合していない状態が示されている。
ロックピン12pは、メンバ40に固定されている。メンバ40は、シャシフレーム6に上下動自在に設けられている。メンバ40とシャシフレーム4との間に、エアスプリング39が配置されている。
【0011】
上記構成によって、4個のラバーブッシュ機構16Aを介して、シャシフレーム4とキャブメインメンバ6とが結合されている。
また、前部のエアスプリング27及びシャックアブソーバ28と、後部のエアスプリング39によって、キャブ2がシャシフレーム4に弾性的に懸架されている。
【0012】
図12及び図13に、従来のラバーブッシュ機構16Aを示している。
図9のX1矢視である図12において、ブラケット15或いは17に、ラバーブッシュ機構16Aが取り付けられている。
ラバーブッシュ機構16Aは、ラバーブッシュ圧入部18と、ラバーブッシュ19と、クッション20とで構成されている。
図12において、符号23はピンを示しており、当該ピン23は、ラバーブッシュ機構16Aをブラケット15或いは17に取り付けるための部材である。
【0013】
図13で示す様に、ラバーブッシュ19は、外筒19aと、内筒19bと、円筒状の弾性体19cとで構成されており、弾性体19cは、外筒19aと内筒19bとの間に接着されている。
弾性体19cは、キャブ2とシャシフレーム4との結合のためには、ある程度硬く(バネ定数を高く)する必要がある。しかし、結合の際の柔軟性や、振動遮断性のためには柔らかい(バネ定数が低い)ほうが好ましい。
ラバーブッシュ19は、外筒19aがラバーブッシュ圧入部18に圧入されている。
【0014】
クッション20は、円板状の金属製座板に、図示しない弾性材が貼り付けられて構成されている。クッション20は、内筒19bに固定されている。
ラバーブッシュ19の内筒19bに、ピン23が挿入され、ブラケット15或いは17に、取り付けられている。
【0015】
上記構成によるラバーブッシュ機構16Aは、シャシフレーム6からキャブ2にかかる前後、左右力及び上下力を、弾性体19cの弾性によって柔らかく支持している。また、クッション20の弾性材が、運転時におけるラバーブッシュ圧入部8とクッション20との干渉音を抑制する作用を果たしている。
【0016】
このような従来のラバーブッシュ機構16Aにおける問題点を、主として図11を参照しつつ説明する。
図11において、チルトロック装置2cの山型状の案内切り込み2dが、ピン12pの芯とδだけ左右にずれている。
このずれδは、チルトシリンダ8がチルト作業を始めたときに、発生する。
【0017】
チルトシリンダ8の推力において、特に水平分力F(図8参照)が、ラバーブッシュ機構16Aの弾性体19cを変形させる。
なお、チルトシリンダ8の推力における垂直方向分力は、シャシフレーム4とキャブ2との水平方向の位置を変化させる様には作用しないので、無視してよい。
【0018】
このチルトシリンダ8の推力は、直接には、左側のキャブメインメンバ6にのみ作用する。その結果、キャブサスリンク13の剛性も影響して、左側のラバーブッシュ機構16Aの弾性体19cの変形が、右側の弾性体19cの変形よりも大きくなる。そして、キャブ2とシャシフレーム6との位置がずれて、キャブ2がねじれる。
キャブ2とシャシフレーム6との位置のずれは、後部において最大となる。その結果、図11において示す様に、チルトロック装置2cの左右ずれδが生じる。
ずれδの存在によって、チルトされたキャブ2を正規の水平位置に戻すときに、チルトロックが困難になってしまう。
【0019】
チルトキャブを1本のシリンダ8でチルトさせる構造を採用する貨物車両に関する従来技術では、上述したような問題を解決する技術は、未だに提案されていない。
その他の従来技術として、サスペンションのラバーブブッシュの変形を抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。しかし、係る従来技術(特許文献1)はエアサス用のラバーブッシュに係る技術であって、上述した様な問題を解決するものではない。
また、ラバーブッシュの構造に関する従来技術も存在する(特許文献2参照)が、係る技術(特許文献2)はラバーブッシュを連結する技術であって、上述した問題を解消するものではない。
【特許文献1】特開平7−1342号公報
【特許文献2】実開昭63−101341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、貨物自動車のチルト可能なキャブをシャシフレームに対して脱着自在とするキャブマウント構造であって、振動遮断性を損ねることなく、チルトロックが容易にできるキャブマウント構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のキャブマウント構造は、(貨物自動車のチルト可能なキャブ(2)をシャシフレーム(4)に対して脱着自在とするため、)一端をシャシフレーム(4)側に固定し且つ他端をキャブメインメンバ(6)側に固定したチルトシリンダ(8)と、フロントキャブマウント(10)及びリヤキャブマウント(12)とを設け、フロントキャブマウント(10)に取付ブラケット(15)を介して振動遮断用のラバーブッシュ機構(16)を備えたキャブマウント構造において、前記振動遮断用のラバーブッシュ機構(16)は、ラバーブッシュ圧入部(18)と、ラバーブッシュ圧入部(18)内に収納されたラバーブッシュ(19)とを有し、該ラバーブッシュ(19)は、外筒(19a)と、内筒(19b)と、外筒(19a)と内筒(19b)の間に挟まれた弾性体(19c)とで構成されており、外筒(19a)と内筒(19b)との相対変位を抑制する複数のストッパ(30)が設けられている(請求項1)。
【0022】
前記ストッパ(30)は、ラバーブッシュ(19)の変形量が所定値未満であればラバーブッシュ(19)の変形を抑制しないが、ラバーブッシュ(19)の変形量が所定値以上になるとラバーブッシュ(19)の変形を抑制する様に構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0023】
前記ストッパ(30)は、内筒(19b)の外周面から半径方向外方に向けて放射状に突起しており、ストッパの頂部(30a)と外筒(19a)の内周面(19i)との距離(α)は4mm以下であることが好ましい(請求項3)。
【0024】
前記ストッパ(36)は外筒(19A)の内周面(19J)から半径方向内方に向けて突起しており、ストッパの頂部(36a)と内筒(19b)の外周面(19o)との距離(β)は4mm以下であることが好ましい(請求項4)。
【0025】
前記ストッパ(36)は外筒(19A)が屈曲して形成されていることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0026】
上述する構成を具備する本発明によれば、ラバーブッシュ圧入部(18)内に収納されたラバーブッシュ(19)が、シャシフレーム(4)から入力される上下、前後及び左右振動を軽減すると共に、チルトシリンダ(8)の推力によるラバーブッシュ(19)の過大な上下及び前後方向の変形は、ストッパ(30)によって抑制されるので、従来生じていたキャブ(2)のねじれによるチルトロック困難が解消される。
【0027】
本発明において、外筒(19a)と内筒(19b)との相対変位となるラバーブッシュ(19)の変形量が所定値未満であればラバーブッシュ圧(19)の変形を抑制せず、ラバーブッシュの変形量が所定値以上になるとラバーブッシュ(19)の変形を抑制する様に、前記ストッパ(30)を構成すれば(請求項2)、チルトロック時のラバーブッシュ(19)の過大な変形が抑制できて、チルトロックが困難となってしまう事態が解消される。それと共に、ラバーブッシュ(19)の過大な変形が抑制できるため、ラバーブッシュ(19)の剛性(バネ定数)を下げて、運転時の振動遮断性を向上させることができる。
【0028】
また本発明によれば、ストッパ(30)をラバーブッシュ(19)に内蔵することが出来るので、部品の管理が容易になる。
そして、本発明によれば、製造が容易で且つ軽量化を図ることが可能なラバーブッシュ(39)を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本発明のキャブマウント構造は、ラバーブッシュ機構に特徴を有している。そして、ラバーブッシュ機構以外は、図8〜図11で示した従来の構成と同じである。
そのため、図示の実施形態においては、ラバーブッシュについて、主として説明する。
【0030】
最初に、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1〜図3において、図12及び図13で説明したのと同様な部材は、同様な符号と名称を付している。
【0031】
図9のX1矢視である図1において、ブラケット15或いは17に、ラバーブッシュ機構16が取り付けられている。
【0032】
ラバーブッシュ機構16は、円筒状のラバーブッシュ圧入部18と、ラバーブッシュ19と、クッション20とで構成されている。
図1において、符号23は、ラバーブッシュ機構16をブラケット15或いは17に取り付けるためのピンである。
【0033】
図2及び図3を参照して、ラバーブッシュ19は、外筒19aと、内筒19bと、外筒19aと内筒19bとの間に接着された弾性体19cとで形成されている。
上述した様に、弾性体19cは、キャブ2とシャシフレーム4との結合のためには、ある程度硬くする必要がある。しかし、結合の際の柔軟性や、振動遮断性のためには柔らかい(バネ定数が低い)ほうが好ましい。
ラバーブッシュ19は、外筒19aがラバーブッシュ圧入部18に圧入されている。
【0034】
ラバーブッシュ19の弾性体19cは、外筒19aへ接着される。そして図2で示す様に、弾性体19cには、円周方向へ等間隔にて、4つの空隙19Sが形成されている。
換言すれば、空隙19Sを有する弾性体19cにより、外筒19aと内筒19bとが結合されている。
【0035】
内筒19bの外周面19oには、円周方向へ等間隔に、4本のストッパ30が設けられている。当該4本のストッパ30は、半径方向外方に向けて放射状に突起している。
ストッパ30は、空隙19S内を、半径方向へ延在している。ストッパ30の頂部(半径方向外方端部)30aと、外筒19aの内周面19iとの間の距離αは、4mm以下となる様に設定されている。
【0036】
距離α(例えば4mm)は、ラバーブッシュ19の変形が、チルトロックに支障のない寸法として設定されている。
また距離α(例えば4mm)は、チルトロック後の通常運転時において、弾性変形の範囲内の距離であり、振動遮断のための距離である。
【0037】
クッション20は、円板状の金属製座板に、図示しない円環状の弾性体部分を接着して構成されている。
クッション20は、内筒19bの両端部に、相対する向きに固定されている。
クッション20は、ブッシュ圧入部18よりやや大径に形成されている。
クッション20と、ラバーブッシュ圧入部18の側端部18eとの間は、適宜の距離を有するように配置されている。
【0038】
ラバーブッシュ19の内筒19bに、ピン23が挿入されている。当該ピン23によって、ブラケット15或いは17に、ラバーブッシュ機構16が取り付けられている。
【0039】
上記したラバーブッシュ機構16の作用を説明する。
キャブ2のチルト時に、ラバーブッシュ機構16はチルトシリンダ8の前方向への水平分力F(図9参照)を受ける。
その水平分力Fによって、ラバーブッシュ19の弾性体19cが変形する(撓む)。
弾性体19cにおける撓みは、外筒19aと内筒19bとの相対変位であり、弾性体19cのバネ定数によって決まる。
【0040】
しかし、チルト時のみにかかるチルトシリンダ8の過大な水平分力Fに対しては、ストッパ30が外筒19aの内周面19iと当接(或いは干渉)することにより、ラバーブッシュ19の弾性体19cの変形量或いは撓みを抑制する。
第1実施形態では、半径方向のたわみは、ストッパ30の頂部30aと外筒内周面19iとの距離(距離α=4mm)が、ラバーブッシュ19の弾性体19cの変形量或いは撓みの上限値である。換言すれば、ラバーブッシュ19の弾性体19cの変形量或いは撓みは、その上限値が距離α(=4mm)となる様に抑制されるのである。
弾性体19cのたわみが4mmであれば、実用上では、チルトロック装置2cがロックピン12p(図11参照)と係合する。したがって、チルトロック作業には問題がない。
【0041】
チルトロック時における過大な荷重による弾性体19cのたわみ(変形量)がストッパ30の頂部30aと外筒内周面19iとの当接(干渉)により抑制されるので、ラバーブッシュ19の弾性体19cのバネ乗数を低く設定して、通常運転における振動遮断性を向上することが可能である。
ここで、通常運転時においては、弾性体19cのたわみ(変形量)が4mmを超えることは、殆ど無い。従って、ストッパ30の頂部30aと外筒内周面19iとの当接(干渉)が、通常運転時における乗り心地に悪影響を及ぼすことはない。
【0042】
上記にように、チルト時の過大な力による弾性体19cのたわみは、ストッパ30によって抑制される。そして、チルトロック不具合が解決される。
また、弾性体19cを任意のバネ定数(低いバネ乗数)に選択できるので、通常運転における振動遮断性が向上する。
【0043】
次に、図4〜図6を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図4〜図6では、図1〜図3の第1実施形態とは異なる部分を主に説明する。
【0044】
図4〜図6において、ラバーブッシュ機構16Bは、ラバーブッシュ圧入部18と、ラバーブッシュ39と、クッション20とで構成されている。
図9のX1矢視である図4において、ブラケット15或いは17に、ラバーブッシュ機構16Bが取り付けられている。
【0045】
ラバーブッシュ機構16Bは、円筒状のラバーブッシュ圧入部18と、ラバーブッシュ39と、クッション20とで構成されている。
図4において、符号23はピンを示し、当該ピン23により、ラバーブッシュ機構16Bをブラケット15或いは17に取り付ける。
【0046】
図5及び図6を参照して、ラバーブッシュ39は、外筒19Aと、内筒19bと、外筒19Aと内筒19bとの間に接着された弾性体19Cとで形成されている。
弾性体19Cは、外筒19Aの内周面19Jへ接着されている。
【0047】
外筒19Aを半径方向内方へ向けて折曲して、ストッパ36が形成されている。ストッパ36は、半径方向内方に向けて三角山状に突起している。
第2実施形態では、円周方向に等間隔に4つのストッパ36が形成されており、ストッパ36の半径方向外方には空隙19sが形成されている。
【0048】
ストッパ36の頂部(半径方向内方端部)36aは、内筒19bの外周面19oとの間の距離βが、4mm以下になる様に配置されている。
ストッパ36の頂部(半径方向内方端部)36aと、内筒外周面19oとの間の距離β(第2実施形態では、β=4mm)は、ラバーブッシュ39の変形がチルトロックに支障のない寸法である。
また当該距離β(=4mm)は、チルトロック後の通常運転時において、振動遮断のための弾性変形量(撓み)を吸収出来る程度の数値に設定されている。
【0049】
係るラバーブッシュ機構16Bの作用を説明する。
キャブ2のチルト時に、ラバーブッシュ機構16Bは、チルトシリンダ8の前方向への水平分力F(図8参照)を受ける。
その水平分力Fによって、ラバーブッシュ39の弾性体19Cが変形(たわみ)する。
弾性体19Cのたわみは、外筒19Aと内筒19bとの相対変位であり、弾性体19Cのバネ定数によって決まる。
【0050】
しかし、チルト時のみにかかるチルトシリンダ8の過大な水平分力Fに対しては、ストッパ36が内筒19bの外周面19oと当接(干渉)することにより、それ以上の変形或いはたわみが制限される。すなわち、図4〜図6の第2実施形態では、図5における半径方向のたわみ或いは変形は、ストッパ36の頂部30aと内筒外周面19oとの間の距離β(=4mm)に抑制される。
弾性体19Cのたわみが4mmであれば、実用上では、チルトロック装置2cがロックピン12p(図11参照)に係合する。したがって、チルトロック作業には問題がない。
【0051】
チルト時のみにかかるチルトシリンダ8の過大な水平分力Fに対しては、ストッパ36の頂部30aが内筒外周面19oと当接(干渉)することにより、それ以上の変形が制限されるので、弾性体19Cのバネ定数を低くして、通常運転における振動遮断性を向上することが可能となる。
そして、通常運転における振動では、弾性体19Cの変形量は、上述した距離β(=4mm)以内に収まるので、通常運転における振動によってストッパ36の頂部30aと内筒外周面19oとが干渉して、乗り心地に悪影響を与えてしまうことは無い。
【0052】
この第2実施形態においても、チルト時の過大な力による弾性体19Cのたわみ(変形量)が制限され、チルト不具合が解決される。また、弾性体19Cを任意の(低い)バネ定数に選択できるので、通常運転における振動遮断性が向上する。
【0053】
図4〜図6の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図3の第1実施形態と同様である。
【0054】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述でないことを付記する。
例えば、前記ラバーブッシュ機構16、16Bでは、ストッパ30、36が円周方向へ等間隔に配置されている。しかし、ラバーブッシュ機構16、16Bにかかる力を勘案して、ストッパ30、36の配置を、円周方向について不等間隔に設定することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に装着されるラバーブッシュ機構の外観図。
【図2】図1のラバーブッシュ機構の正面図。
【図3】図1のラバーブッシュ機構の側断面図。
【図4】第2実施形態に装着されるラバーブッシュ機構の外観図。
【図5】図4のラバーブッシュ機構の正面図。
【図6】第4のラバーブッシュ機構の側断面図。
【図7】本発明が装着される貨物自動車と装着部位を示す図。
【図8】本発明が装着される部位の詳細側面図。
【図9】本発明が装着される部材の詳細斜視図。
【図10】本発明が装着される部位の詳細斜視図。
【図11】従来の課題を説明するための図。
【図12】従来のラバーブッシュ機構の外観図。
【図13】図12の側断面図。
【符号の説明】
【0056】
2・・・・・・キャブ
4・・・・・・シャシフレーム
5・・・・・・チルトヒンジ
6・・・・・・キャブメインメンバ
8・・・・・・チルトシリンダ
10・・・・・フロントキャブマウント
12・・・・・リヤキャブマウント
13・・・・・キャブサスリンク
14・・・・・アーム
15・・・・・取り付けブラケット
16・・・・・ラバーブッシュ機構
17・・・・・ヒンジブラケット
18・・・・・ラバーブッシュ圧入部
18i・・・・内径
19、39・・・・・ラバーブッシュ
19a、19A・・・外筒
19b・・・・・・・内筒
20・・・・・クッション
23・・・・・ピン
27・・・・・エアスプリング
30、36・・・・・ストッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブマウント構造に関する。より詳細には、貨物自動車のチルト可能なキャブをシャシフレームに対して脱着自在とするため、一端をシャシフレーム側に固定し且つ他端をキャブメインメンバ側に固定したチルトシリンダと、フロントキャブマウント及びリヤキャブマウントとを設け、フロントキャブマウントに取付ブラケットを介して振動遮断用のラバーブッシュ機構を備えたキャブマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブオーバ型貨物自動車においては、エンジン及びエンジン周辺の点検あるいは補修のために、キャブ全体をチルト(前傾斜)させる構造のものが多い。図7は、そのような車両の簡略図である。図7において、左方を前方、右方を後方として説明する。
【0003】
図7において、シャシフレーム4の前端部にチルトヒンジ5が設けられている。キャブ2は、チルトヒンジ5を枢軸として回動可能に、シャシフレーム4に固定されている。
図7において、符号8は、キャブ2をチルトさせるためのチルトシリンダである。符号2cは、キャブ2の後端部に設けられたチルトロック装置である。
【0004】
チルトロック装置2cは、リヤキャブマウント12に係合するようになっている。チルトロック装置2cでは、キャブ2をチルトさせる場合以外は、係合が解除されない。
【0005】
図8は、キャブ2をシャシフレーム4に搭載する機構を示している。
図8において、仮想線(1点鎖線)で示すキャブ2が、キャブメインメンバ6に固定されている。
キャブメインメンバ6の前部は、ブラケット15の上部に固定されている。キャブメインメンバ6の後部は、前記チルトロック装置2cにより、リヤキャブマウント12の上部に係合されている。
フロントキャブマウント10を示す図9を参照して、さらに説明する。
【0006】
図8及び図9において、ブラケット15の下部は、ラバーブッシュ機構16Aを介して、キャブサスリンク13のアーム14に、回動可能に支持されている。図10に、キャブサスリンク13を示している。
再び図9において、キャブサスリンク13のアーム14の前部及び後部に、ラバーブッシュ機構16Aが取り付けられている。
ラバーブッシュ機構16Aについては、図12及び図13で後記する。
【0007】
図9において、アーム14の前部は、ラバーブッシュ機構16Aを介して、ヒンジブラケット17の上部に、回動可能に固定されている。
ヒンジブラケット17の下部は、シャシフレーム4に固定されている。
【0008】
図9において、アーム14の前部上部と、ブラケット15の前部下部との間に、エアスプリング27が配置されている。また、アーム14の前部とブラケット15の前部との間に、ショックアブソーバ28が配置されている。
【0009】
図8において、チルトシリンダ8の上部は、キャブメインメンバ6の下端部に回動自在に取り付けられている。また、チルトシリンダ8の下部は、シャシフレーム4に回動自在に取り付けられている。
【0010】
図11は、図8で示された、リヤキャブマウント12のX矢視図である。
図12において、キャブ2の下部にチルトロック装置2cが設けられている。チルトロック装置2cは、ロックピン12pに係合するように構成されている。ただし、図11においては、チルトロック装置2cとロックピン12pとは、係合していない状態が示されている。
ロックピン12pは、メンバ40に固定されている。メンバ40は、シャシフレーム6に上下動自在に設けられている。メンバ40とシャシフレーム4との間に、エアスプリング39が配置されている。
【0011】
上記構成によって、4個のラバーブッシュ機構16Aを介して、シャシフレーム4とキャブメインメンバ6とが結合されている。
また、前部のエアスプリング27及びシャックアブソーバ28と、後部のエアスプリング39によって、キャブ2がシャシフレーム4に弾性的に懸架されている。
【0012】
図12及び図13に、従来のラバーブッシュ機構16Aを示している。
図9のX1矢視である図12において、ブラケット15或いは17に、ラバーブッシュ機構16Aが取り付けられている。
ラバーブッシュ機構16Aは、ラバーブッシュ圧入部18と、ラバーブッシュ19と、クッション20とで構成されている。
図12において、符号23はピンを示しており、当該ピン23は、ラバーブッシュ機構16Aをブラケット15或いは17に取り付けるための部材である。
【0013】
図13で示す様に、ラバーブッシュ19は、外筒19aと、内筒19bと、円筒状の弾性体19cとで構成されており、弾性体19cは、外筒19aと内筒19bとの間に接着されている。
弾性体19cは、キャブ2とシャシフレーム4との結合のためには、ある程度硬く(バネ定数を高く)する必要がある。しかし、結合の際の柔軟性や、振動遮断性のためには柔らかい(バネ定数が低い)ほうが好ましい。
ラバーブッシュ19は、外筒19aがラバーブッシュ圧入部18に圧入されている。
【0014】
クッション20は、円板状の金属製座板に、図示しない弾性材が貼り付けられて構成されている。クッション20は、内筒19bに固定されている。
ラバーブッシュ19の内筒19bに、ピン23が挿入され、ブラケット15或いは17に、取り付けられている。
【0015】
上記構成によるラバーブッシュ機構16Aは、シャシフレーム6からキャブ2にかかる前後、左右力及び上下力を、弾性体19cの弾性によって柔らかく支持している。また、クッション20の弾性材が、運転時におけるラバーブッシュ圧入部8とクッション20との干渉音を抑制する作用を果たしている。
【0016】
このような従来のラバーブッシュ機構16Aにおける問題点を、主として図11を参照しつつ説明する。
図11において、チルトロック装置2cの山型状の案内切り込み2dが、ピン12pの芯とδだけ左右にずれている。
このずれδは、チルトシリンダ8がチルト作業を始めたときに、発生する。
【0017】
チルトシリンダ8の推力において、特に水平分力F(図8参照)が、ラバーブッシュ機構16Aの弾性体19cを変形させる。
なお、チルトシリンダ8の推力における垂直方向分力は、シャシフレーム4とキャブ2との水平方向の位置を変化させる様には作用しないので、無視してよい。
【0018】
このチルトシリンダ8の推力は、直接には、左側のキャブメインメンバ6にのみ作用する。その結果、キャブサスリンク13の剛性も影響して、左側のラバーブッシュ機構16Aの弾性体19cの変形が、右側の弾性体19cの変形よりも大きくなる。そして、キャブ2とシャシフレーム6との位置がずれて、キャブ2がねじれる。
キャブ2とシャシフレーム6との位置のずれは、後部において最大となる。その結果、図11において示す様に、チルトロック装置2cの左右ずれδが生じる。
ずれδの存在によって、チルトされたキャブ2を正規の水平位置に戻すときに、チルトロックが困難になってしまう。
【0019】
チルトキャブを1本のシリンダ8でチルトさせる構造を採用する貨物車両に関する従来技術では、上述したような問題を解決する技術は、未だに提案されていない。
その他の従来技術として、サスペンションのラバーブブッシュの変形を抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。しかし、係る従来技術(特許文献1)はエアサス用のラバーブッシュに係る技術であって、上述した様な問題を解決するものではない。
また、ラバーブッシュの構造に関する従来技術も存在する(特許文献2参照)が、係る技術(特許文献2)はラバーブッシュを連結する技術であって、上述した問題を解消するものではない。
【特許文献1】特開平7−1342号公報
【特許文献2】実開昭63−101341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、貨物自動車のチルト可能なキャブをシャシフレームに対して脱着自在とするキャブマウント構造であって、振動遮断性を損ねることなく、チルトロックが容易にできるキャブマウント構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のキャブマウント構造は、(貨物自動車のチルト可能なキャブ(2)をシャシフレーム(4)に対して脱着自在とするため、)一端をシャシフレーム(4)側に固定し且つ他端をキャブメインメンバ(6)側に固定したチルトシリンダ(8)と、フロントキャブマウント(10)及びリヤキャブマウント(12)とを設け、フロントキャブマウント(10)に取付ブラケット(15)を介して振動遮断用のラバーブッシュ機構(16)を備えたキャブマウント構造において、前記振動遮断用のラバーブッシュ機構(16)は、ラバーブッシュ圧入部(18)と、ラバーブッシュ圧入部(18)内に収納されたラバーブッシュ(19)とを有し、該ラバーブッシュ(19)は、外筒(19a)と、内筒(19b)と、外筒(19a)と内筒(19b)の間に挟まれた弾性体(19c)とで構成されており、外筒(19a)と内筒(19b)との相対変位を抑制する複数のストッパ(30)が設けられている(請求項1)。
【0022】
前記ストッパ(30)は、ラバーブッシュ(19)の変形量が所定値未満であればラバーブッシュ(19)の変形を抑制しないが、ラバーブッシュ(19)の変形量が所定値以上になるとラバーブッシュ(19)の変形を抑制する様に構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0023】
前記ストッパ(30)は、内筒(19b)の外周面から半径方向外方に向けて放射状に突起しており、ストッパの頂部(30a)と外筒(19a)の内周面(19i)との距離(α)は4mm以下であることが好ましい(請求項3)。
【0024】
前記ストッパ(36)は外筒(19A)の内周面(19J)から半径方向内方に向けて突起しており、ストッパの頂部(36a)と内筒(19b)の外周面(19o)との距離(β)は4mm以下であることが好ましい(請求項4)。
【0025】
前記ストッパ(36)は外筒(19A)が屈曲して形成されていることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0026】
上述する構成を具備する本発明によれば、ラバーブッシュ圧入部(18)内に収納されたラバーブッシュ(19)が、シャシフレーム(4)から入力される上下、前後及び左右振動を軽減すると共に、チルトシリンダ(8)の推力によるラバーブッシュ(19)の過大な上下及び前後方向の変形は、ストッパ(30)によって抑制されるので、従来生じていたキャブ(2)のねじれによるチルトロック困難が解消される。
【0027】
本発明において、外筒(19a)と内筒(19b)との相対変位となるラバーブッシュ(19)の変形量が所定値未満であればラバーブッシュ圧(19)の変形を抑制せず、ラバーブッシュの変形量が所定値以上になるとラバーブッシュ(19)の変形を抑制する様に、前記ストッパ(30)を構成すれば(請求項2)、チルトロック時のラバーブッシュ(19)の過大な変形が抑制できて、チルトロックが困難となってしまう事態が解消される。それと共に、ラバーブッシュ(19)の過大な変形が抑制できるため、ラバーブッシュ(19)の剛性(バネ定数)を下げて、運転時の振動遮断性を向上させることができる。
【0028】
また本発明によれば、ストッパ(30)をラバーブッシュ(19)に内蔵することが出来るので、部品の管理が容易になる。
そして、本発明によれば、製造が容易で且つ軽量化を図ることが可能なラバーブッシュ(39)を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本発明のキャブマウント構造は、ラバーブッシュ機構に特徴を有している。そして、ラバーブッシュ機構以外は、図8〜図11で示した従来の構成と同じである。
そのため、図示の実施形態においては、ラバーブッシュについて、主として説明する。
【0030】
最初に、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1〜図3において、図12及び図13で説明したのと同様な部材は、同様な符号と名称を付している。
【0031】
図9のX1矢視である図1において、ブラケット15或いは17に、ラバーブッシュ機構16が取り付けられている。
【0032】
ラバーブッシュ機構16は、円筒状のラバーブッシュ圧入部18と、ラバーブッシュ19と、クッション20とで構成されている。
図1において、符号23は、ラバーブッシュ機構16をブラケット15或いは17に取り付けるためのピンである。
【0033】
図2及び図3を参照して、ラバーブッシュ19は、外筒19aと、内筒19bと、外筒19aと内筒19bとの間に接着された弾性体19cとで形成されている。
上述した様に、弾性体19cは、キャブ2とシャシフレーム4との結合のためには、ある程度硬くする必要がある。しかし、結合の際の柔軟性や、振動遮断性のためには柔らかい(バネ定数が低い)ほうが好ましい。
ラバーブッシュ19は、外筒19aがラバーブッシュ圧入部18に圧入されている。
【0034】
ラバーブッシュ19の弾性体19cは、外筒19aへ接着される。そして図2で示す様に、弾性体19cには、円周方向へ等間隔にて、4つの空隙19Sが形成されている。
換言すれば、空隙19Sを有する弾性体19cにより、外筒19aと内筒19bとが結合されている。
【0035】
内筒19bの外周面19oには、円周方向へ等間隔に、4本のストッパ30が設けられている。当該4本のストッパ30は、半径方向外方に向けて放射状に突起している。
ストッパ30は、空隙19S内を、半径方向へ延在している。ストッパ30の頂部(半径方向外方端部)30aと、外筒19aの内周面19iとの間の距離αは、4mm以下となる様に設定されている。
【0036】
距離α(例えば4mm)は、ラバーブッシュ19の変形が、チルトロックに支障のない寸法として設定されている。
また距離α(例えば4mm)は、チルトロック後の通常運転時において、弾性変形の範囲内の距離であり、振動遮断のための距離である。
【0037】
クッション20は、円板状の金属製座板に、図示しない円環状の弾性体部分を接着して構成されている。
クッション20は、内筒19bの両端部に、相対する向きに固定されている。
クッション20は、ブッシュ圧入部18よりやや大径に形成されている。
クッション20と、ラバーブッシュ圧入部18の側端部18eとの間は、適宜の距離を有するように配置されている。
【0038】
ラバーブッシュ19の内筒19bに、ピン23が挿入されている。当該ピン23によって、ブラケット15或いは17に、ラバーブッシュ機構16が取り付けられている。
【0039】
上記したラバーブッシュ機構16の作用を説明する。
キャブ2のチルト時に、ラバーブッシュ機構16はチルトシリンダ8の前方向への水平分力F(図9参照)を受ける。
その水平分力Fによって、ラバーブッシュ19の弾性体19cが変形する(撓む)。
弾性体19cにおける撓みは、外筒19aと内筒19bとの相対変位であり、弾性体19cのバネ定数によって決まる。
【0040】
しかし、チルト時のみにかかるチルトシリンダ8の過大な水平分力Fに対しては、ストッパ30が外筒19aの内周面19iと当接(或いは干渉)することにより、ラバーブッシュ19の弾性体19cの変形量或いは撓みを抑制する。
第1実施形態では、半径方向のたわみは、ストッパ30の頂部30aと外筒内周面19iとの距離(距離α=4mm)が、ラバーブッシュ19の弾性体19cの変形量或いは撓みの上限値である。換言すれば、ラバーブッシュ19の弾性体19cの変形量或いは撓みは、その上限値が距離α(=4mm)となる様に抑制されるのである。
弾性体19cのたわみが4mmであれば、実用上では、チルトロック装置2cがロックピン12p(図11参照)と係合する。したがって、チルトロック作業には問題がない。
【0041】
チルトロック時における過大な荷重による弾性体19cのたわみ(変形量)がストッパ30の頂部30aと外筒内周面19iとの当接(干渉)により抑制されるので、ラバーブッシュ19の弾性体19cのバネ乗数を低く設定して、通常運転における振動遮断性を向上することが可能である。
ここで、通常運転時においては、弾性体19cのたわみ(変形量)が4mmを超えることは、殆ど無い。従って、ストッパ30の頂部30aと外筒内周面19iとの当接(干渉)が、通常運転時における乗り心地に悪影響を及ぼすことはない。
【0042】
上記にように、チルト時の過大な力による弾性体19cのたわみは、ストッパ30によって抑制される。そして、チルトロック不具合が解決される。
また、弾性体19cを任意のバネ定数(低いバネ乗数)に選択できるので、通常運転における振動遮断性が向上する。
【0043】
次に、図4〜図6を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図4〜図6では、図1〜図3の第1実施形態とは異なる部分を主に説明する。
【0044】
図4〜図6において、ラバーブッシュ機構16Bは、ラバーブッシュ圧入部18と、ラバーブッシュ39と、クッション20とで構成されている。
図9のX1矢視である図4において、ブラケット15或いは17に、ラバーブッシュ機構16Bが取り付けられている。
【0045】
ラバーブッシュ機構16Bは、円筒状のラバーブッシュ圧入部18と、ラバーブッシュ39と、クッション20とで構成されている。
図4において、符号23はピンを示し、当該ピン23により、ラバーブッシュ機構16Bをブラケット15或いは17に取り付ける。
【0046】
図5及び図6を参照して、ラバーブッシュ39は、外筒19Aと、内筒19bと、外筒19Aと内筒19bとの間に接着された弾性体19Cとで形成されている。
弾性体19Cは、外筒19Aの内周面19Jへ接着されている。
【0047】
外筒19Aを半径方向内方へ向けて折曲して、ストッパ36が形成されている。ストッパ36は、半径方向内方に向けて三角山状に突起している。
第2実施形態では、円周方向に等間隔に4つのストッパ36が形成されており、ストッパ36の半径方向外方には空隙19sが形成されている。
【0048】
ストッパ36の頂部(半径方向内方端部)36aは、内筒19bの外周面19oとの間の距離βが、4mm以下になる様に配置されている。
ストッパ36の頂部(半径方向内方端部)36aと、内筒外周面19oとの間の距離β(第2実施形態では、β=4mm)は、ラバーブッシュ39の変形がチルトロックに支障のない寸法である。
また当該距離β(=4mm)は、チルトロック後の通常運転時において、振動遮断のための弾性変形量(撓み)を吸収出来る程度の数値に設定されている。
【0049】
係るラバーブッシュ機構16Bの作用を説明する。
キャブ2のチルト時に、ラバーブッシュ機構16Bは、チルトシリンダ8の前方向への水平分力F(図8参照)を受ける。
その水平分力Fによって、ラバーブッシュ39の弾性体19Cが変形(たわみ)する。
弾性体19Cのたわみは、外筒19Aと内筒19bとの相対変位であり、弾性体19Cのバネ定数によって決まる。
【0050】
しかし、チルト時のみにかかるチルトシリンダ8の過大な水平分力Fに対しては、ストッパ36が内筒19bの外周面19oと当接(干渉)することにより、それ以上の変形或いはたわみが制限される。すなわち、図4〜図6の第2実施形態では、図5における半径方向のたわみ或いは変形は、ストッパ36の頂部30aと内筒外周面19oとの間の距離β(=4mm)に抑制される。
弾性体19Cのたわみが4mmであれば、実用上では、チルトロック装置2cがロックピン12p(図11参照)に係合する。したがって、チルトロック作業には問題がない。
【0051】
チルト時のみにかかるチルトシリンダ8の過大な水平分力Fに対しては、ストッパ36の頂部30aが内筒外周面19oと当接(干渉)することにより、それ以上の変形が制限されるので、弾性体19Cのバネ定数を低くして、通常運転における振動遮断性を向上することが可能となる。
そして、通常運転における振動では、弾性体19Cの変形量は、上述した距離β(=4mm)以内に収まるので、通常運転における振動によってストッパ36の頂部30aと内筒外周面19oとが干渉して、乗り心地に悪影響を与えてしまうことは無い。
【0052】
この第2実施形態においても、チルト時の過大な力による弾性体19Cのたわみ(変形量)が制限され、チルト不具合が解決される。また、弾性体19Cを任意の(低い)バネ定数に選択できるので、通常運転における振動遮断性が向上する。
【0053】
図4〜図6の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図3の第1実施形態と同様である。
【0054】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述でないことを付記する。
例えば、前記ラバーブッシュ機構16、16Bでは、ストッパ30、36が円周方向へ等間隔に配置されている。しかし、ラバーブッシュ機構16、16Bにかかる力を勘案して、ストッパ30、36の配置を、円周方向について不等間隔に設定することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に装着されるラバーブッシュ機構の外観図。
【図2】図1のラバーブッシュ機構の正面図。
【図3】図1のラバーブッシュ機構の側断面図。
【図4】第2実施形態に装着されるラバーブッシュ機構の外観図。
【図5】図4のラバーブッシュ機構の正面図。
【図6】第4のラバーブッシュ機構の側断面図。
【図7】本発明が装着される貨物自動車と装着部位を示す図。
【図8】本発明が装着される部位の詳細側面図。
【図9】本発明が装着される部材の詳細斜視図。
【図10】本発明が装着される部位の詳細斜視図。
【図11】従来の課題を説明するための図。
【図12】従来のラバーブッシュ機構の外観図。
【図13】図12の側断面図。
【符号の説明】
【0056】
2・・・・・・キャブ
4・・・・・・シャシフレーム
5・・・・・・チルトヒンジ
6・・・・・・キャブメインメンバ
8・・・・・・チルトシリンダ
10・・・・・フロントキャブマウント
12・・・・・リヤキャブマウント
13・・・・・キャブサスリンク
14・・・・・アーム
15・・・・・取り付けブラケット
16・・・・・ラバーブッシュ機構
17・・・・・ヒンジブラケット
18・・・・・ラバーブッシュ圧入部
18i・・・・内径
19、39・・・・・ラバーブッシュ
19a、19A・・・外筒
19b・・・・・・・内筒
20・・・・・クッション
23・・・・・ピン
27・・・・・エアスプリング
30、36・・・・・ストッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端をシャシフレーム側に固定し且つ他端をキャブメインメンバ側に固定したチルトシリンダと、フロントキャブマウント及びリヤキャブマウントとを設け、フロントキャブマウントに取付ブラケットを介して振動遮断用のラバーブッシュ機構を備えたキャブマウント構造において、振動遮断用のラバーブッシュ機構は、ラバーブッシュ圧入部と、ラバーブッシュ圧入部内に収納されたラバーブッシュとを有し、該ラバーブッシュは、外筒と、内筒と、外筒と内筒の間に挟まれた弾性体により構成されており、外筒と内筒との相対変位を抑制する複数のストッパが設けられていることを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項2】
前記ストッパは、ラバーブッシュの変形量が所定値未満であればラバーブッシュの変形を抑制しないが、ラバーブッシュの変形量が所定値以上になるとラバーブッシュの変形を抑制する様に構成されている請求項1のキャブマウント構造。
【請求項3】
前記ストッパは、内筒の外周面から半径方向外方に向けて放射状に突起しており、ストッパの頂部と外筒の内周面との距離は4mm以下である請求項1、2の何れかのキャブマウント構造。
【請求項4】
前記ストッパは外筒の内周面から半径方向内方に向けて突起しており、ストッパの頂部と内筒の外周面との距離は4mm以下である請求項1、2の何れかのキャブマウント構造。
【請求項5】
前記ストッパは外筒が屈曲して形成されている請求項4のキャブマウント構造。
【請求項1】
一端をシャシフレーム側に固定し且つ他端をキャブメインメンバ側に固定したチルトシリンダと、フロントキャブマウント及びリヤキャブマウントとを設け、フロントキャブマウントに取付ブラケットを介して振動遮断用のラバーブッシュ機構を備えたキャブマウント構造において、振動遮断用のラバーブッシュ機構は、ラバーブッシュ圧入部と、ラバーブッシュ圧入部内に収納されたラバーブッシュとを有し、該ラバーブッシュは、外筒と、内筒と、外筒と内筒の間に挟まれた弾性体により構成されており、外筒と内筒との相対変位を抑制する複数のストッパが設けられていることを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項2】
前記ストッパは、ラバーブッシュの変形量が所定値未満であればラバーブッシュの変形を抑制しないが、ラバーブッシュの変形量が所定値以上になるとラバーブッシュの変形を抑制する様に構成されている請求項1のキャブマウント構造。
【請求項3】
前記ストッパは、内筒の外周面から半径方向外方に向けて放射状に突起しており、ストッパの頂部と外筒の内周面との距離は4mm以下である請求項1、2の何れかのキャブマウント構造。
【請求項4】
前記ストッパは外筒の内周面から半径方向内方に向けて突起しており、ストッパの頂部と内筒の外周面との距離は4mm以下である請求項1、2の何れかのキャブマウント構造。
【請求項5】
前記ストッパは外筒が屈曲して形成されている請求項4のキャブマウント構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−18707(P2009−18707A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183154(P2007−183154)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
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