説明

キャリア位置決め方法及びキャリア搬送装置

【課題】簡易な構成によって、加熱炉内で複数のキャリアの位置決めを同時に行い、すべてのキャリアの位置決めが正確になされたことを確認できるキャリア位置決め方法及びキャリア搬送装置を提供すること。
【解決手段】キャリア搬送装置10は、コンベア20により複数のキャリア40を加熱炉13内へ搬送し、複数の凸部35aを有するクシ状のキャリアストッパ35をキャリア40側へ前進させ、コンベア20によりキャリア40を搬送方向D1へ移動させて、キャリア40にそれぞれ設けられた切欠溝42とキャリアストッパ40の凸部35aとを係合させることにより、各キャリア40を一度に位置決めし、キャリアストッパ35の凸部35a先端を挿入穴42aに挿入させるように、キャリアストッパ35をキャリア40側へ前進させ、キャリアストッパ35の移動量Xに基づいて、各キャリア40が適正位置に位置決めされたか否かを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送コンベアで搬送するキャリアを加熱炉内で位置決めするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送コンベアで搬送されるワークやキャリアを位置決めする技術に関しては、様々なものが提案されている。例えば、特許文献1には、搬送路上にある複数の基板(ワーク)を、複数の凸部を備えたクシ状のガイド部材によって搬送し、搬送方向の先頭にある基板が所定位置に到達したときに、位置決め機構によって先頭の基板を位置決めする技術が開示されている。この位置決め機構は、シリンダの先端に基板を案内する押し子やローラを備えたブロックなどを用いて、基板の位置決めを行うものである。
【0003】
また、位置決めが正確になされたか否かを確認する技術に関しても、様々なものが提案されている。例えば、特許文献2には、旋回テーブル上のパレットの有無を確認する技術であって、パレットに形成された凹部に可動ピンを嵌入してパレットを位置決めする位置決め手段と、可動ピンがパレットの凹部に嵌入されたか否かを検出する検出手段とを備えたものが開示されている。この技術では、1つのパレットを位置決め手段により位置決めした後、検出手段によりその位置決めが完了したことを確認できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】実公平1−15199号公報
【特許文献2】特公平2−49856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された技術には、次のような課題があった。
すなわち、特許文献1に開示された技術によると、基板の位置決めを行った後に、基板の位置決めが正確になされたか否かの確認を行っていないため、ワークの引っ掛かり等により位置決めが正確になされていない場合には、適切なワークの加工、処理等を行うことができないおそれがあった。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、検出手段により位置決めの完了確認がなされているものの、複数のパレットを同時に位置決めしてその確認を行うものではないため、作業効率が悪いという課題が残されていた。
【0007】
そこで、発明者は、図16に示すように、ワーク150を載置するキャリア140と、複数のキャリア140を搬送する搬送用コンベア120と、各キャリア140を所定間隔で位置決めするために複数の凸部135aを有するクシ歯状のキャリアストッパ135と、先頭のキャリア140aの位置を検出する位置センサ145とを備え、各キャリア140に形成された切欠溝142に、キャリアストッパ135の各凸部135aを係合させることにより、複数のキャリア140を所定間隔をおいて同時に位置決めすることを考えた(特願2008−048113号)。
【0008】
この技術では、図17に示すように、キャリア140をコンベア120で搬送することにより、キャリアストッパ135の各凸部135aを各キャリア140の切欠溝142の搬送方向後端面142bと係合させることができる。これにより、キャリア140を所定間隔をおいて位置決めすることができる。そして、先頭のキャリア140aの位置を、位置センサ145で確認して、各キャリア140の位置決めが行われたことを確認できるようになっている。
【0009】
ところが、この技術によると、図18に示すように、先頭以外のキャリア140bに引っ掛かり等が生じた場合には、そのキャリア140bの切欠溝142の後端面142bとストッパ135の凸部135aとが正確に係合しないことがあった。つまり、キャリア140bが、正確に位置決めされないおそれがあった。そのため、この技術では、すべてのキャリア140の位置決めが正確に行われたか否かを正確に検出することができないおそれがあった。
【0010】
一方、キャリア140に対応した複数の位置センサ145を設けて、各キャリア140の位置決め確認を行うことも考えられる。しかしながら、この場合には、装置の構成が複雑になるだけでなく、複数の位置センサ145を設けるためのスペースを確保する必要が生じる。特に、加熱炉内で複数のキャリアを位置決めするような場合には、加熱炉のチャンバ側面に広いスペースを確保し難いという問題があった。また、たとえ加熱炉のチャンバ側面に十分なスペースが確保できたとしても、チャンバ側面に複数の石英窓を形成する必要があるため、装置の構成が複雑となり製造コストも上昇するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、簡易な構成によって、加熱炉内で複数のキャリアの位置決めを同時に行い、すべてのキャリアの位置決めが正確になされたことを確認できるキャリア位置決め方法及びキャリア搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係るキャリア位置決め方法は、ワークを載置した複数のキャリアをコンベアによって加熱炉内へ搬送して位置決めするキャリア位置決め方法において、前記コンベアにより前記複数のキャリアを前記加熱炉内へ搬送する搬送工程と、前記キャリアの位置決めに用いられる複数の凸部を有するクシ状のキャリアストッパを前記キャリア側へ前進させる第一前進工程と、前記コンベアにより前記キャリアを搬送方向へ移動させて、前記キャリアにそれぞれ設けられた係合部と前記キャリアストッパの凸部とを係合させることにより、前記各キャリアを搬送方向に沿って所定間隔をおいて一度に位置決めする位置決め工程と、前記キャリアストッパの凸部先端を、前記キャリアが適正位置に位置決めされたときに挿入可能となるように設けられた挿入穴に挿入させるように、前記キャリアストッパを前記キャリア側へ前進させる第二前進工程と、前記キャリアストッパの移動量に基づいて、前記各キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別する判別工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
この位置決め方法においては、「第一前進工程」の終了後に「位置決め工程」を行うことができるが、「第一前進工程」と「位置決め工程」とを並行して行うこともできる。また、この位置決め方法においては、「第一前進工程」の終了後にいったんキャリアの前進を停止させ、「第二前進工程」で再びキャリアを前進させることができるが、「第一前進工程」と「第二前進工程」とを連続して行うこともできる。
また、「前記キャリアストッパの移動量」としては、「第一前進工程」における移動量と「第二前進工程」における移動量とを合わせた合計移動量を用いることができるが、「第二前進工程」における移動量のみを用いることもできる。
【0014】
本発明に係る位置決め方法では、搬送工程において、複数のキャリアがコンベヤによって加熱炉内に搬送される。そして、第一前進工程では、キャリアストッパをキャリア側へ前進させる。これにより、キャリアストッパに備わる複数の凸部を各キャリアに設けられた係合部と係合可能な位置に移動させることができる。また、位置決め工程では、コンベヤを搬送方向へ移動させることにより、キャリアストッパに備わる複数の凸部を各キャリアに設けられた係合部と係合させる。これにより、各キャリアをキャリアストッパの凸部の間隔に対応した間隔をおいて位置決めすることができる。つまり、この方法では、キャリアストッパの凸部の間隔を変更することにより、各キャリアを所望の位置に位置決めすることができる。例えば、加熱炉内に設けられた複数の加熱装置と対向する位置へ各キャリアを位置決めすれば、キャリアに載置されたワークを加熱装置により無駄なく的確に加熱することができる。
【0015】
第二前進工程では、キャリアストッパをキャリア側へ前進させて、キャリアストッパの凸部先端を各キャリアの係合部に設けられた挿入穴へ挿入させる。この挿入穴は、キャリアが適正位置にある場合に挿入可能に設けられたものである。そして、判別工程では、キャリアストッパの移動量に基づいて、キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別する。ここで、「キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別する」態様としては、キャリアストッパの移動量があらかじめ設定された規定値を超えた場合にキャリアが適正位置に位置決めされたと判断し、キャリアストッパの移動量があらかじめ設定された規定値以下である場合にキャリアが適正位置に位置決めされていないと判断するものを例示できる。この規定値としては、例えば、凸部先端の挿入穴への挿入が開始するときのキャリアストッパの移動量を用いることができる。
【0016】
以上のようにして、各キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別することにより、キャリアが引っ掛かり等で正確に位置決めされていない場合にも、それを検出して再度キャリアの位置決めを行うことができる。これにより、キャリアに載置されているワークの適切な加工、処理等を行うことができる。また、複数のキャリアを一度に位置決めしてその確認を行うことができるため、作業効率も良い。
【0017】
さらに、この位置決め方法によると、適正位置にないキャリアの挿入穴にはキャリアストッパの凸部先端を挿入することができないため、すべてのキャリアの位置決めが正確になされていなければ、キャリアストッパをキャリア側に前進させることができなくなる。したがって、上記した技術(特願2008−048113号)とは異なり、一のキャリアの位置決めのみが不正確である場合にも、キャリアの位置決めが正確になされていないことを検出することができる。つまり、すべてのキャリアが適正位置に正確に位置決めされたか否かを確認することができる。
【0018】
また、この位置決め方法によると、キャリアストッパの移動量を検出することで位置決めが正確になされたか否かを確認しているため、各キャリアに対応した複数の位置検出手段(位置センサ等)を要しない。つまり、加熱炉内で複数のキャリアを位置決めするような場合にも、加熱炉のチャンバ側面に大きなスペースを確保して複数の石英窓を設置する必要がない。その結果、簡易な構成によって、加熱炉内で複数のキャリアの位置決めを同時に行い、すべてのキャリアの位置決めが正確になされたことを確認することができる。
【0019】
本発明に係るキャリア位置決め方法を実現するにあたり、前記キャリアの係合部は、前記キャリアの搬送方向に沿って前記凸部より幅広に形成された切欠溝であり、前記第一前進工程では、前記キャリアストッパを前記キャリア側へ前進させて、前記キャリアストッパの凸部を前記切欠溝の搬送方向中間部に挿入し、前記位置決め工程では、前記キャリアを前記コンベアにより搬送方向へ移動させて、前記切欠溝の搬送方向後端面と前記キャリアストッパの凸部とを係合させることにより、前記各キャリアを位置決めすることが望ましい。
【0020】
このように、係合部をキャリアの搬送方向に沿って凸部より幅広に形成された切欠溝とすることにより、キャリアストッパの凸部を切欠溝の搬送方向中間部に挿入できるとともに、キャリアを搬送して切欠溝の搬送方向後端面とキャリアストッパの凸部とを係合させることができる。これにより、本発明に係るキャリア位置決め方法を容易に実現することができる。つまり、簡易な構成によって、加熱炉内で複数のキャリアの位置決めを同時に行うことができる。
【0021】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係るキャリア搬送装置は、ワークを載置する複数のキャリアと、前記複数のキャリアを搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアの一部を覆い前記ワークの加熱を行う加熱炉と、前記加熱炉内で前記複数のキャリアの位置決めを行う位置決め手段とを備えたキャリア搬送装置において、前記加熱炉は、その内部に前記ワークを加熱するための加熱装置を前記キャリアの搬送方向へ所定間隔をおいて複数備え、前記キャリアは、それぞれ少なくとも一カ所に係合部を有し、前記位置決め手段は、前記各キャリアの係合部と係合可能な複数の凸部を有するクシ状のキャリアストッパと、前記凸部と前記係合部とを係合させるために、前記キャリアストッパを前記キャリア側に向かって移動させる移動手段と、前記移動手段により移動させた前記キャリアストッパの移動量を検出する移動量検出手段と、前記移動量検出手段により検出された前記移動量に基づいて、前記キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別する判別手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
ここで、「前記キャリアストッパの移動量」としては、上記と同様に、「第一前進工程」における移動量と「第二前進工程」における移動量とを合わせた合計移動量を用いることができるが、「第二前進工程」における移動量のみを用いることもできる。
【0023】
本発明に係る位置決め装置では、コンベヤによって複数のキャリアが加熱炉内に搬送される。この加熱炉の内部には、ワークを加熱するための加熱装置が、キャリアの搬送方向へ所定間隔をおいて複数配置されている。そして、キャリアが加熱炉内に搬送された後、移動手段によりキャリアストッパをキャリア側へ前進させ、コンベヤによりキャリアを搬送方向へ移動させる。これにより、キャリアストッパに備わる複数の凸部と各キャリアに設けられた係合部とを係合させることができる。その結果、各キャリアを、キャリアストッパの凸部の間隔に対応した間隔をおいて位置決めすることができる。ここで、この装置では、キャリアストッパの凸部の間隔を変更することにより、各キャリアを所望の位置に位置決めすることができる。したがって、加熱炉内に設けられた複数の加熱装置と対向する位置へ各キャリアを位置決めすることにより、キャリアに載置されたワークを加熱装置により無駄なく的確に加熱することができる。なお、この装置においては、キャリアストッパをいったん前進させた後にキャリアの位置決めを行うことができるが、キャリアストッパの前進と並行してキャリアの位置決めを行うこともできる。
【0024】
そして、この装置では、判別手段により、キャリアストッパの移動量に基づいて、キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別することができる。なお、「キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別する」態様としては、上記と同様に、キャリアストッパの移動量があらかじめ設定された規定値を超えた場合にキャリアが適正位置に位置決めされたと判断し、キャリアストッパの移動量があらかじめ設定された規定値以下である場合にキャリアが適正位置に位置決めされていないと判断するものを例示できる。
こうして、各キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別することにより、キャリアが引っ掛かり等で正確に位置決めされていない場合にも、それを検出して再度キャリアの位置決めを行うことができる。これにより、キャリアに載置されているワークの適切な加工、処理等を行うことができる。また、複数のキャリアを一度に位置決めしてその確認を行うことができるため、作業効率も良い。
【0025】
また、この位置決め装置によると、キャリアストッパの移動量を検出することで位置決めが正確になされたか否かを確認しているため、各キャリアに対応した複数の位置検出手段(位置センサ等)を要しない。つまり、加熱炉内で複数のキャリアを位置決めするような場合にも、加熱炉のチャンバ側面に大きなスペースを確保して複数の石英窓を設置する必要がない。その結果、簡易な構成によって、加熱炉内で複数のキャリアの位置決めを同時に行い、すべてのキャリアの位置決めが正確になされたことを確認することができる。
【0026】
本発明に係るキャリア搬送装置において、前記キャリアの係合部は、前記キャリアの搬送方向に沿って前記凸部より幅広に形成された切欠溝であり、前記切欠溝の搬送方向後端部には、前記凸部先端を挿入可能な挿入穴が設けられ、前記移動手段は、前記コンベアの搬送動作と連係して前記凸部を前記切欠溝と係合させるとともに前記凸部先端を前記挿入穴に挿入するために、前記キャリアストッパを前進させることが望ましい。
【0027】
このように、キャリアの切欠溝を、キャリアの搬送方向に沿って、キャリアストッパの凸部より幅広に形成することにより、キャリアストッパをキャリア側に前進させるときに、凸部を切欠溝に容易に挿入することができる。また、凸部先端を挿入可能な挿入穴を、切欠溝の搬送方向後端部に設けることにより、凸部と切欠溝の搬送方向後端面とを係合させてキャリアを位置決めした状態で、キャリアストッパをさらにキャリア側に前進させて凸部先端を挿入穴に挿入することができる。こうした構成により、キャリアの移動量から、キャリアの位置決めが完了したか否かの判別を容易に行うなうことができる。具体的には、この装置によると、適正位置にないキャリアの挿入穴には、キャリアストッパの凸部先端を挿入することができない。そのため、すべてのキャリアの位置決めが正確になされていなければ、キャリアストッパをキャリア側に前進させることができなくなる。したがって、上記した技術(特願2008−048113号)とは異なり、一のキャリアの位置決めのみが不正確である場合にも、キャリアの位置決めが正確になされていないことを検出することができる。つまり、簡易な構成によって、加熱炉内で複数のキャリアの位置決めを同時に行い、すべてのキャリアの位置決めが正確になされたことを確認することができる。
【0028】
本発明に係るキャリア搬送装置において、前記キャリアの近接を検知する近接検知センサと、前記近接検知センサによる検知情報に基づいて前記移動手段によるキャリアストッパの駆動を制御する制御手段とを備えたことが望ましい。
【0029】
この装置によれば、コンベアにより搬送されるキャリアの近接を近接検知センサにより検知し、その検知情報に基づいてキャリアが所定位置に搬送されたことを正確に知ることができる。これにより、キャリアストッパをキャリア側へ的確なタイミングで前進させることができる。その結果、キャリアストッパとキャリアとが干渉することを防止して、キャリアをより正確に位置決めすることができる。
【0030】
本発明に係るキャリア搬送装置において、前記キャリアの係合部は、前記搬送方向と交差する方向の両端に設けられ、前記キャリアストッパは、前記搬送方向と交差する方向の両側に設けられたことが望ましい。
【0031】
このように、キャリアの係合部を搬送方向と交差する方向の両端に設け、キャリアストッパを搬送方向と交差する方向の両側に設けることにより、搬送方向の両側からキャリアの位置決めを行うことができる。これにより、キャリアの位置決めをより正確に行うことができる。
【0032】
本発明に係るキャリア搬送装置において、前記移動手段は、前記両側のキャリアストッパの少なくとも一方を前記キャリア側へ前進させて、前記キャリアを前記両側のキャリアストッパで挟持することが望ましい。
【0033】
このように、移動手段によって両側のキャリアストッパの少なくとも一方をキャリア側へ前進させて、キャリアを両側のキャリアストッパで挟持することにより、搬送方向と交差する方向におけるキャリアの位置決めを行うことができる。これにより、キャリアに載置されたワークを、加熱炉内の加熱装置と対向する位置により正確に配置することができる。その結果、ワークをより無駄なく的確に加熱することができる。
【0034】
本発明に係るキャリア搬送装置において、前記両側のキャリアストッパの少なくとも一方は、前記キャリアの一部と当接して前記キャリアの回動を防止する回動防止部を備えたことが望ましい。
【0035】
この装置によれば、キャリアが回動しようとしたときに、両側のキャリアストッパの少なくとも一方に備わる回動防止部に当接して、キャリアの回動が抑制される。これにより、キャリアに載置されたワークを、加熱炉内の加熱装置と対向する位置により正確に配置することができる。その結果、ワークをより無駄なく的確に加熱することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係るキャリア位置決め方法又はキャリア搬送装置によれば、上記した通り、簡易な構成によって、加熱炉内で複数のキャリアの位置決めを同時に行い、すべてのキャリアの位置決めが正確になされたことを確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明のキャリア位置決め方法及びキャリア搬送装置を具体化した一実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。このキャリア位置決め方法及びキャリア搬送装置は、搬送コンベアで搬送するキャリアを加熱炉内で位置決めして、キャリアに載置されたワークを加熱するためのものである。
【0038】
[第一実施形態]
第一実施形態に係るキャリア搬送装置について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るキャリア搬送装置の概略構成を示す断面図である。
キャリア搬送装置10は、図1に示すように、ワーク50を載置するキャリア40と、キャリア40を搬送する搬送コンベア20と、搬送コンベア20の一部を覆いワーク50の加熱処理を行う加熱炉13と、加熱炉13内で複数のキャリア40の位置決めを行う位置決め機構(本発明に係る「位置決め手段」の一例)とを備えている。
【0039】
加熱炉13は、炉本体を形成するチャンバ17と、各ワーク50を加熱するハロゲンヒータ30(本発明に係る「加熱装置」の一例)とを備えている。このチャンバ17内は、石英ガラス11により上下に分割されている。そして、石英ガラス11の上方が加熱室16となっており、石英ガラス11の下方が減圧室15となっている。加熱室16には、窒素などの不活性ガスが充填されている。減圧室15には、ワーク50を加熱するためのハロゲンヒータ30が、所定間隔をおいて複数設けられている。例えば本実施形態において、加熱炉13内には、ハロゲンヒータ30が、キャリアの搬送方向に沿って6つ等間隔に設けられている(図示略)。そして、各キャリア40は、後述する位置決め機構により、各ハロゲンヒータ30に対向する位置に位置決めされることとなる。すなわち、本実施形態に係る搬送装置10は、加熱炉13内部で一度に6つのワークを処理できるように構成されている。なお、加熱炉13の処理数は、加熱炉13の大きさとワーク50の大きさの兼ね合い等で決定されるため、適宜、設計変更して増減される。ただし、加熱処理自体に数分の時間を要するため、可能な限り処理数を多くして、作業効率の向上を図ることが好ましい。
【0040】
ハロゲンヒータ30は、石英ガラス管の中にハロゲンガスを充満し内部にタングステンフィラメントを用いた一般的なものである。このハロゲンヒータ30によりワーク50に赤外線を照射して、ワーク50を加熱することができる。このハロゲンヒータ30は、減圧室15に固定されている。一方、搬送用コンベア20は、加熱室16に設けられている。したがって、ハロゲンヒータ30と搬送用コンベア20とは、石英ガラス板11によって隔離されている。これにより、搬送用コンベア20の駆動によって生じるゴミなどが、ハロゲンヒータ30内に入り込むのを防止できるようになっている。なお、この装置においては、減圧室15に窒素などの不活性ガスを充填して、ハロゲンヒータ30の劣化を抑制することが好ましい。
【0041】
搬送コンベア20について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係るキャリア搬送装置の内部を示す平面図である。図3は、同搬送装置に備わる搬送用コンベアを示す拡大図である。
搬送コンベア20は、図2に示すように、加熱室16内における搬送方向D1と直交する方向D2の両側に設けられている。より詳細には、各搬送コンベア20は、搬送方向D1と平行に、チャンバ17のキャリア搬入口からキャリア搬出口にわたって設けられている。この搬送コンベア20は、キャリア40を搬送するための搬送用ローラ21と、搬送用ローラ21を駆動するためのモータ12(図1参照)とを備えている。
【0042】
駆動モータ12は、図3に示すように、ベルト26及び駆動用プーリ22を介して駆動力を回転軸23に伝えている。この回転軸23は、隔壁24及び支持壁27に設けられたベアリングによって回転可能に支持されている。そして、回転軸23の一端には、搬送用ローラ21が固定されている。こうした構成から、駆動モータ12を駆動することにより、搬送用ローラ21を回転させることができる。
【0043】
搬送用ローラ21は、水素脆性などを考慮して、素材中に炭素の含有量が少ないステンレス鋼(例えばSUS304)により形成されている。この搬送用ローラ21は、図2に示すように、キャリア40の搬送方向D1に沿って加熱室16内における両端に1列ずつ設けられている。より詳細には、この搬送用ローラ21は、図3に示されるように、石英ガラス板11から離れた位置に配置されている。また、駆動用プーリ22は、搬送用ローラ21よりも外側(石英ガラス板11及びハロゲンヒータ30から遠ざかる側)に配置されている。これは、駆動用プーリ22にかけられるベルト26が樹脂製であり、耐熱性に劣るためである。こうした理由から、駆動用プーリ22及びベルト26を可能な限り外側に配置することが望ましい。また、加熱効率の点では加熱炉13の内部を可能な限りコンパクトに構成することが望ましい。
【0044】
位置決め機構について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係るキャリア搬送装置に備わる位置決め機構を示す斜視図である。
位置決め機構は、図4に示すように、キャリア40を停止させるためのキャリアストッパ35と、キャリアストッパ35をキャリア40側に向かって移動させるシリンダ37(本発明に係る「移動手段」の一例)と、キャリアストッパ35の駆動やキャリア40の位置決め確認を行う制御機器75(本発明に係る「判別手段」の一例)とを備えている。
【0045】
キャリアストッパ35は、複数の凸部35aを有するクシ状をなしている。このキャリアストッパ35は、図2に示すように、加熱炉13の方向D2における両端に、搬送方向D1に沿って配置されている。なお、図面では省略されているが、キャリアストッパ35は、加熱炉13の両端に各2つずつ、つまり合計4カ所に設けられている。
凸部35aは、キャリアストッパ35の長さ方向に沿って等間隔に形成されている。各凸部35aの間隔は、キャリア40の搬送方向D1における幅よりも十分に広くすることが好ましい。例えば本実施形態では、キャリア40の進行方向の幅が120mm程度であるのに対して、凸部35aの間隔が125mm程度に設計されている。その結果、キャリア40とキャリアストッパ35とが係合した際に、搬送用コンベア20上にキャリア40を一定の間隔(本実施形態では5mm程度の間隔)をおいて停止させるように構成されている。
各キャリアストッパ35は、方向D2に沿って設けられた二本のストッパシャフト36の先端に固定されている。各ストッパシャフト36は、シャフトガイド38により、方向D2へ往復可能に支持されている。
【0046】
シリンダ37は、二本のシャフトガイド38の間に設けられている。このシリンダ37は、方向D2に往復可能に設けられたピストンロッド37aを備えている。そして、ピストンロッド37aの先端は、連結部材39によって両側のストッパシャフト36の先端と連結されている。こうした構成により、シリンダ37がピストンロッド37aを方向D2に駆動すると、連結部材39を介してピストンロッド37aと連結されたストッパシャフト36が、キャリアストッパ35を方向D2へ移動させるようになっている。
本実施形態のシリンダ37は、二段階の前進動作を可能とするものである。この動作は、例えばエアシリンダに二つのエア室を設けたり、二つのシリンダを直列に組み合わせたりして実現される。また、電動シリンダを用いてストロークを調整することにより、この動作を実現することもできる。
なお、本実施形態のシリンダ37は、キャリアストッパ35の側方に設けられているが、キャリアストッパ35の上方に設けてもよい。また、例えばハロゲンヒータ30が加熱炉13の上部に設けられている場合は、熱の影響や設置スペースの点からキャリアストッパ35の下方にシリンダ37を設けるとよい。
【0047】
キャリア40について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係るキャリア搬送装置に備わるキャリアを示す平面図である。
キャリア40は、図5に示すように、アルミニウム製の長方形板部材である。このキャリア40は、ワーク50の位置決めに用いられる2本の位置決めピン44と、搬送用ローラ21により支持される被支持部40aとを備えている。
位置決めピン44は、キャリア40上面の所定位置から上方へ突出するように設けられている。
被支持部40aは、キャリア40の方向D2における両端部に設けられている。この被支持部40aは、図1及び図3に示すように、上方及び側方に屈曲した階段形状をなしており、搬送用ローラ21上に載置されている。したがって、駆動モータ12が搬送用ローラ21を回転させると、被支持部40a(キャリア40)は搬送方向D1へ搬送されるようになっている。また、各被支持部40aには、切欠溝42(本発明に係る「係合部」の一例)が設けられている。
【0048】
切欠溝42は、被支持部40aの方向D1における両端に側方へ突出するように形成された突起41の間に設けられている。この切欠溝42は、キャリアストッパ35の凸部35aより幅広に形成されている。また、一方の切欠溝42の搬送方向D1の後端部には、キャリアストッパ35の凸部35a先端を挿入可能な挿入穴42aが、方向D2へ向けて凹設されている。そして、切欠溝42の搬送方向D1における後端面42bは、キャリアストッパ35の凸部35aと当接させるための面となっている。
【0049】
本実施形態のキャリア搬送装置10には、図2に示すように、過熱炉13内に搬送されたキャリア40をいったん仮止めするための仮止め機構70が設けられている。仮止め機構70は、位置決め機構よりキャリア搬送方向D1における下流側に設けられている。この仮止め機構70は、先頭キャリア40の搬送方向先端部に当接させる仮止めストッパ60と、仮止めストッパ60を方向D2へ駆動するための仮止め用シリンダ61とを備えている。
仮止め用シリンダ61の駆動シャフト65は、ガイドケース63に方向D2に沿って形成されたシャフト孔64内を貫通している。また、駆動シャフト65の先端は、仮ストッパ60に固定されている。こうした構成により、仮止め用シリンダ61が駆動シャフト65を方向D2へ駆動すると、仮ストッパ60は方向D2へ駆動されるようになっている。
【0050】
続いて、本実施形態のキャリア搬送装置10により搬送されるワーク50について、図5〜図7を参照しながら説明する。図6は、同搬送装置に備わるマウント部上に置かれる治具を示し、(a)はその側面断面図であり、(b)はその上面図である。図7は、同搬送装置に備わるマウント部上に配置されるハンダ箔及び素子を示し、(a)はその側面断面図であり、(b)はその上面図である。本実施形態では、ワーク50としてインバータ部品を用いた場合について説明する。
インバータ部品50は、図5に示すように、断熱材43を介してキャリア40に載置されている。このインバータ部品50は、位置決めに用いられるピン孔50bと、素子51の配置に用いられるマウント部50aとを備えている。ピン孔50bは、キャリア40に備わる位置決めピン44に対応する位置に設けられている。また、マウント部50aには、素子51を保持するための治具56が取り付けられている。
【0051】
治具56は、カーボン製である。この治具56は、図6(b)に示すように、内部に素子51等を配置するための配置孔56aと、治具56を位置決めするための外枠56bとを備えている。
マウント部50aの上面には、図6(a)に示すように、ロウ55により絶縁基板54がロウ付けされ、絶縁基板54の上面には、アルミパターン53が形成されている。また、配置孔56aの内部には、図7(a)及び(b)に示すように、ハンダ箔52を介して素子51が配置されている。なお、絶縁基板54の接合方法については、ロウ付けに限定されず、ハンダ付け等の他の接合方法を用いてもよい。
【0052】
続いて、本実施形態のキャリア装置に備わる制御機器75について、図8を参照しながら説明する。図8は、本実施形態におけるキャリア位置決めの第一ステップを示す説明図である。
制御機器75は、図8に示されるように、シリンダ37により移動させるキャリアストッパ35の移動量を検出する移動量検出センサ46(本発明に係る「移動量検出手段」の一例)と、搬送方向D1におけるキャリア40の近接を検出する近接検知センサ45とを備えている。そして、制御機器75は、これらのセンサ45,46から得られる情報に基づき、キャリアストッパ35及び仮ストッパ60を駆動するとともに、キャリア40の位置決め完了確認を行っている。なお、各センサには、例えば光電管を用いたレーザ照射装置等を用いることができる。
【0053】
次に、上記構成を有するキャリア搬送装置10を用いて、インバータ部品50を加熱炉内で処理する様子について、図8〜図13を参照しながら詳細に説明する。図9は、本実施形態におけるキャリア位置決めの第二ステップを示す説明図である。図10は、同実施形態におけるキャリア位置決めの第三ステップを示す説明図である。図11は、同実施形態におけるキャリア位置決めの第四ステップを示す説明図である。図12は、同実施形態におけるキャリア位置決めの第五ステップを示す説明図である。図13は、キャリアがキャリアストッパによって位置決めされた状態を示す側面図である。
【0054】
キャリア搬送装置10では、インバータ部品50が、キャリア40を加熱炉13内に搬送する前に、キャリア40に載置される。このとき、インバータ部品50に設けられたピン孔50に、キャリア40の位置決めピン44を挿入することにより、キャリア40に対してインバータ部品50を精度良く位置決めすることができる。そして、インバータ部品50をキャリア40に載置した後、コンベア20によりキャリア40を加熱炉13内へ搬送する。
そして、加熱炉13内へ搬送されたキャリア40は、キャリア搬送装置10に備わる位置決め機構により、以下に示す第一ステップ〜第五ステップにより、位置決めされる。
【0055】
第一ステップにおいて、キャリア搬送装置10は、図8に示すように、制御機器75により仮止用シリンダ61を駆動して、仮ストッパ60をあらかじめキャリア40側に前進させておく。その後、キャリア搬送装置10は、搬送用コンベア20を駆動して、キャリア40を加熱炉13内に搬送する。そして、先頭のキャリア40がその突起41を仮ストッパ60に当接させて停止し、後続するキャリア40も前のキャリア40に当接して所定位置に停止する。制御機器75は、各キャリア40が所定位置に到達したことを、近接検知センサ45により検出する。そして、キャリア搬送装置10は、制御機器75によりキャリア40の近接を確認した後、搬送用コンベア20の駆動を停止させる。
【0056】
このキャリア搬送装置10によれば、コンベア20により搬送されるキャリア40の近接を近接検知センサ45により検知し、その検知情報に基づいてキャリア40が所定位置に搬送されたことを正確に知ることができる。これにより、次の第二ステップにおいてキャリアストッパ35をキャリア40側へ的確なタイミングで前進させることができる。その結果、キャリアストッパ35とキャリア40とが干渉することを防止して、キャリア40をより正確に位置決めすることができる。なお、近接検知センサ45よりも搬送方向D1の上流側に減速センサを設け、この減速センサがキャリア40の近接を検出したら、搬送用コンベア20による搬送速度を減速するようにしてもよい。こうすることにより、より確実に仮ストッパ60でキャリア40を仮停止させることができる。
【0057】
第二ステップにおいて、キャリア搬送装置10は、図9に示すように、制御機器75によりシリンダ37を駆動して、両側のキャリアストッパ35をキャリア40側へ前進させる。このとき、このキャリア搬送装置10では、キャリア40の切欠溝42が、キャリア40の搬送方向D1に沿って、キャリアストッパ35の凸部35aより幅広に形成されているので、キャリアストッパ35をキャリア40側に前進させて、凸部35aを切欠溝42に容易に挿入することができる。
【0058】
キャリアストッパ35の凸部35aは、キャリア40の切欠溝42の搬送方向中間部(先頭のキャリア40においては、搬送方向前部)に挿入される。このように、キャリア40を切欠溝42の搬送方向中間部に挿入することにより、凸部35aをキャリア40の切欠溝42に確実に入り込ませることができる。また、制御機器75は、シリンダ37の駆動と同期して仮止用シリンダ61を駆動し、仮ストッパ60をキャリア40側とは逆側へ退避させる。
【0059】
第三ステップにおいて、キャリア搬送装置10は、図10に示すように、コンベア20によりキャリア40をさらに搬送方向D1へ移動させる。そして、各キャリア40は、搬送方向D1の上流側のものから順に、切欠溝42の搬送方向後端面42bをキャリアストッパ35の凸部35aに当接させて停止していく。その結果、各キャリア40は、搬送方向D1に沿って所定間隔をおいて一度に位置決めされる。ここで、本実施形態では、各キャリア40は、それぞれのハロゲンヒータ30と対向する位置へ位置決めされる。そのため、キャリア40に載置されたインバータ部品50を、ハロゲンヒータ30により無駄なく的確に加熱することができる。さらに、搬送方向D1の両側からキャリア40の位置決めを行うことにより、より正確な位置決めを行うことができる。
【0060】
第四ステップにおいて、キャリア搬送装置10は、図11に示すように、すべてのキャリア40が位置決めされた後、制御機器75によりシリンダ37を駆動して、一方のキャリアストッパ35をさらにキャリア40側へ前進させる。これにより、キャリアストッパ35の凸部35a先端は、キャリア40の切欠溝42に設けられた挿入穴42aに挿入される。なお、このとき、キャリアストッパ35を、キャリア40を挟持する位置まで前進させてもよい。このように、キャリア40をキャリアストッパ35で挟持することにより、方向D2におけるキャリア40の位置決めも行うことができる。これにより、キャリア40に載置されたインバータ部品50を、加熱炉13内のハロゲンヒータ30と対向する位置に、より正確に配置することができる。その結果、インバータ部品50を、より無駄なく的確に加熱することができる。
【0061】
第五ステップにおいて、キャリア搬送装置10の制御機器75は、図12に示すように、凸部35a先端を挿入穴42aに挿入した後、移動量検出センサ46により検出したキャリアストッパ35の移動量Xに基づいて、各キャリア40が適正位置に位置決めされたか否かを判別する。このとき、キャリアストッパ35の移動量Xとしては、第二ステップにおける移動量と第四ステップにおける移動量とを合わせた合計移動量が用いられるが、第四ステップにおける移動量のみを用いることもできる。そして、制御機器75は、キャリアストッパ35の移動量Xがあらかじめ設定された規定値を超えた場合にキャリア40が適正位置に位置決めされたと判断する。一方、キャリアストッパ35の移動量があらかじめ設定された規定値以下である場合にキャリア40が適正位置に位置決めされていないと判断する。この規定値としては、凸部35a先端の挿入穴42aへの挿入が開始するときのキャリアストッパ35の移動量が用いられる。
【0062】
このキャリア搬送装置10によると、適正位置にないキャリア40の挿入穴42aには、キャリアストッパ35の凸部35先端を挿入することができない。そのため、すべてのキャリア40の位置決めが正確になされていなければ、キャリアストッパ35をキャリア40側に前進させることができなくなる。したがって、一のキャリア40の位置決めのみが不正確である場合にも、キャリアストッパ35の移動量Xが規定値以下となるため、キャリア40の位置決めが正確になされていないことを検出することができる。
なお、キャリア搬送装置10は、キャリア40の位置決めが正確になされていないことを検出した場合には、再度キャリアの位置決めを行う。これにより、このキャリア搬送装置10では、キャリア40の位置決めをより正確に行うことができる。
【0063】
キャリア搬送装置10は、すべてのキャリア40が正確に位置決めされたことを検出した後、搬送用コンベア20の駆動を停止する。そして、キャリア搬送装置10は、図13に示すように、ハロゲンヒータ30によるインバータ部品50の加熱を開始する。インバータ部品50がハロゲンヒータ30に加熱されると、インバータ部品50上に設置されたハンダ箔52が溶解する。その後、キャリア搬送装置10は、キャリア40の位置決めを解除し、コンベア20を駆動してキャリア40を加熱炉13の搬出口から搬出する。加熱炉13の外に搬出されたインバータ部品50では、ハンダ箔52が冷却されて凝固し、素子51がインバータ部品50にハンダ付けされる。
【0064】
ここで、本実施形態では、キャリア40は、アルミニウムにより形成されている。そして、ハロゲンヒータ30によりインバータ部品50を加熱する際、キャリア40も400℃弱程度にまで昇温する。この昇温により、アルミニウム製のキャリア40は、数mm程度膨張してしまう。そのため、加熱炉内13に複数のキャリア40を隣接して配置した場合には、各キャリア40は、相互に膨張の影響を与えて位置ずれしてしまう。その結果、ハロゲンヒータ30から照射される赤外線が、各インバータ部品50に均等に当たらないおそれがある。
これに対して、このキャリア搬送装置10では、各キャリア40は、搬送方向D1に沿って所定間隔をおいて、各ハロゲンヒータ30の対向位置に一度に位置決めされる。これにより、このキャリア搬送装置10では、各キャリア40の膨張による影響が他のキャリア40に及ぶのを防止して、膨張によるキャリア40の位置ずれを抑制することができる。その結果、各インバータ部品50をハロゲンヒータ30により均等に加熱することができる。
【0065】
なお、本実施形態においては、第二ステップの終了後に第三ステップが行われているが、第二ステップと第三ステップとを並行して行うこともできる。また、本実施形態では、第二ステップの終了後にいったんキャリア40の前進を停止させ、第四ステップで再びキャリア40を前進させているが、第二ステップと第四ステップとを連続して行うこともできる。
【0066】
以上、詳細に説明したように本実施形態に係るキャリア搬送装置10によれば、各キャリア40が適正位置に位置決めされたか否かを判別することにより、キャリア40が引っ掛かり等で正確に位置決めされていない場合にも、それを検出して再度キャリア40の位置決めを行うことができる。これにより、キャリア40に載置されているインバータ部品50の適切な加工、処理等を行うことができる。また、複数のキャリア40を一度に位置決めしてその確認を行うことができるため、作業効率も良い。
【0067】
さらに、このキャリア搬送装置10によると、キャリアストッパ35の移動量Xを検出することで位置決めが正確になされたか否かを確認しているため、各キャリア40に対応した複数の位置検出手段(位置センサ等)を設ける必要がない。これにより、加熱炉13のチャンバ17側面に大きなスペースを確保して複数の石英窓を設置する必要がない。その結果、簡易な構成によって、加熱炉13内で複数のキャリア40の位置決めを同時に行い、すべてのキャリア40の位置決めが正確になされたことを確認することができる。
【0068】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係るキャリア搬送装置について、図14を参照しながら説明する。図14は、第二実施形態に係るキャリア搬送装置を示す概略構成図である。なお、第二実施形態に係るキャリア搬送装置において、上記第一実施形態のものと同一の構成物品については、図面に同符号を付してその説明を適宜省略し、以下では相違点を中心に説明する。
第二実施形態に係るキャリア搬送装置は、キャリアストッパの形状において、上記第一実施形態と相違する。すなわち、本実施形態に係るキャリアストッパ85は、図14に示すように、キャリア40の一部と当接してキャリア40の回動を防止する回動防止部86を備えている。この回動防止部86は、キャリアストッパ86の長さ方向両端を延長することにより形成されている。
【0069】
このキャリア搬送装置では、キャリア40が回動しようとしたときに、キャリア40の一部がキャリアストッパ85の回動防止部86に当接する構成となっているため、キャリア40の回動を抑制することができる。こうして、キャリア40の位置決めをより正確に行うことができるので、インバータ部品50をハロゲンヒータ30と対向する位置により正確に配置することができる。その結果、インバータ部品50をより無駄なく的確に加熱することができる。
なお、図14では、一方のキャリアストッパ85のみに回動防止部86を設けているが、両側のキャリアストッパに回動防止部86を設けてもよい。これにより、さらに正確なキャリア40の位置決めが可能となる。
【0070】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係るキャリア搬送装置について、図15を参照しながら説明する。図15は、第三実施形態に係るキャリア搬送装置を示す概略構成図である。なお、第三実施形態に係るキャリア搬送装置において、上記実施形態のものと同一の構成物品については、図面に同符号を付してその説明を適宜省略し、以下では相違点を中心に説明する。
第三実施形態に係るキャリア搬送装置は、キャリアストッパに備わる凸部の形状において、上記実施形態と相違する。すなわち、本実施形態に係る一方のキャリアストッパ95の凸部96は、図15に示すように、挿入穴42aに挿入される挿入部96aと、切欠溝42の底面に当接する当接部96bとを備えている。
【0071】
このキャリア搬送装置では、一方のキャリアストッパ95の凸部96に備わる挿入部96a及び当接部96bと、他方のキャリアストッパ35に備わる凸部35aとを利用して、キャリア40を挟持することができる。このようにキャリア40を挟持することにより、キャリア40のD2方向への位置ずれやキャリア40の回動を効果的に抑制することができる。
【0072】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
例えば、上記実施形態ではキャリアストッパ35,85,95を搬送コンベア20の側方からキャリア40に近接させているが、キャリアストッパ35,85,95を搬送コンベア20の上方からキャリア40に近接させるような構成としてもよい。
また、キャリア40の切欠溝42の形状やキャリアストッパ35,85,95の凸部35a,96の形状を、位置決めの態様等に応じて自由に変更することができる。
さらに、上記実施形態に係るキャリア搬送装置を、加熱炉13の外部にキャリア40を位置決めするために用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第一実施形態に係るキャリア搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】同搬送装置の内部を示す平面図である。
【図3】同搬送装置に備わる搬送用コンベアを示す拡大図である。
【図4】同搬送装置に備わる搬送用コンベアを示す斜視図である。
【図5】同搬送装置に備わるキャリアを示す平面図である。
【図6】同搬送装置に備わるマウント部上に置かれる治具を示し、(a)はその側面断面図であり、(b)はその上面図である。
【図7】同搬送装置に備わるマウント部上に配置されるハンダ箔及び素子を示し、(a)はその側面断面図であり、(b)はその上面図である。
【図8】第一実施形態におけるキャリア位置決めの第一ステップを示す説明図である。
【図9】同実施形態におけるキャリア位置決めの第二ステップを示す説明図である。
【図10】同実施形態におけるキャリア位置決めの第三ステップを示す説明図である。
【図11】同実施形態におけるキャリア位置決めの第四ステップを示す説明図である。
【図12】同実施形態におけるキャリア位置決めの第五ステップを示す説明図である。
【図13】キャリアがキャリアストッパによって位置決めされた状態を示す側面図である。
【図14】第二実施形態に係るキャリア搬送装置を示す概略構成図である。
【図15】第三実施形態に係るキャリア搬送装置を示す概略構成図である。
【図16】従来例に係るキャリアの位置決め方法を示す説明図である。
【図17】従来例に係るキャリアの位置決め方法を示す説明図である。
【図18】従来例に係るキャリアの位置決め方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
10 キャリア搬送装置
13 加熱炉
20 搬送用コンベア
30 ハロゲンヒータ(加熱装置)
35 キャリアストッパ
35a 凸部
37 シリンダ(移動手段)
40 キャリア
42 切欠溝(係合部)
42a 挿入穴
42b 搬送方向後端面
45 近接検知センサ
46 移動量検出センサ(移動量検出手段)
50 インバータ部品
75 制御機器(判別手段)
85 キャリアストッパ(第二実施形態)
86 回動防止部
95 キャリアストッパ(第三実施形態)
96 凸部
96a 挿入部
96b 当接部
D1 キャリアの搬送方向
D2 キャリアの搬送方向と直交する方向
X 移動量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置した複数のキャリアをコンベアによって加熱炉内へ搬送して位置決めするキャリア位置決め方法において、
前記コンベアにより前記複数のキャリアを前記加熱炉内へ搬送する搬送工程と、
前記キャリアの位置決めに用いられる複数の凸部を有するクシ状のキャリアストッパを前記キャリア側へ前進させる第一前進工程と、
前記コンベアにより前記キャリアを搬送方向へ移動させて、前記キャリアにそれぞれ設けられた係合部と前記キャリアストッパの凸部とを係合させることにより、前記各キャリアを搬送方向に沿って所定間隔をおいて一度に位置決めする位置決め工程と、
前記キャリアストッパの凸部先端を、前記キャリアが適正位置に位置決めされたときに挿入可能となるように設けられた挿入穴に挿入させるように、前記キャリアストッパを前記キャリア側へ前進させる第二前進工程と、
前記キャリアストッパの移動量に基づいて、前記各キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別する判別工程とを含む
ことを特徴とするキャリア位置決め方法。
【請求項2】
請求項1に記載するキャリア位置決め方法において、
前記キャリアの係合部は、前記キャリアの搬送方向に沿って前記凸部より幅広に形成された切欠溝であり、
前記第一前進工程では、前記キャリアストッパを前記キャリア側へ前進させて、前記キャリアストッパの凸部を前記切欠溝の搬送方向中間部に挿入し、
前記位置決め工程では、前記キャリアを前記コンベアにより搬送方向へ移動させて、前記切欠溝の搬送方向後端面と前記キャリアストッパの凸部とを係合させることにより、前記各キャリアを位置決めする
ことを特徴とするキャリア位置決め方法。
【請求項3】
ワークを載置する複数のキャリアと、前記複数のキャリアを搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアの一部を覆い前記ワークの加熱を行う加熱炉と、前記加熱炉内で前記複数のキャリアの位置決めを行う位置決め手段とを備えたキャリア搬送装置において、
前記加熱炉は、その内部に前記ワークを加熱するための加熱装置を前記キャリアの搬送方向へ所定間隔をおいて複数備え、
前記キャリアは、それぞれ少なくとも一カ所に係合部を有し、
前記位置決め手段は、
前記各キャリアの係合部と係合可能な複数の凸部を有するクシ状のキャリアストッパと、
前記凸部と前記係合部とを係合させるために、前記キャリアストッパを前記キャリア側に向かって移動させる移動手段と、
前記移動手段により移動させた前記キャリアストッパの移動量を検出する移動量検出手段と、
前記移動量検出手段により検出された前記移動量に基づいて、前記キャリアが適正位置に位置決めされたか否かを判別する判別手段とを備えた
ことを特徴とするキャリア搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載するキャリア搬送装置において、
前記キャリアの係合部は、前記キャリアの搬送方向に沿って前記凸部より幅広に形成された切欠溝であり、
前記切欠溝の搬送方向後端部には、前記凸部先端を挿入可能な挿入穴が設けられ、
前記移動手段は、前記コンベアの搬送動作と連係して前記凸部を前記切欠溝と係合させるとともに前記凸部先端を前記挿入穴に挿入するために、前記キャリアストッパを前進させる
ことを特徴とするキャリア搬送装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載するキャリア搬送装置において、
前記キャリアの近接を検知する近接検知センサと、
前記近接検知センサによる検知情報に基づいて前記移動手段によるキャリアストッパの駆動を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とするキャリア搬送装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載するキャリア搬送装置において、
前記キャリアの係合部は、前記搬送方向と交差する方向の両端に設けられ、
前記キャリアストッパは、前記搬送方向と交差する方向の両側に設けられた
ことを特徴とするキャリア搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載するキャリア搬送装置において、
前記移動手段は、前記両側のキャリアストッパの少なくとも一方を前記キャリア側へ前進させて、前記キャリアを前記両側のキャリアストッパで挟持する
ことを特徴とするキャリア搬送装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載するキャリア搬送装置において、
前記両側のキャリアストッパの少なくとも一方は、前記キャリアの一部と当接して前記キャリアの回動を防止する回動防止部を備えた
ことを特徴とするキャリア搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−67746(P2010−67746A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231932(P2008−231932)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(391032358)平田機工株式会社 (107)
【Fターム(参考)】