説明

キャンロール上でのシワ伸ばし方法及びシワ伸ばし装置、並びにこれを備えた成膜装置

【課題】 ロールツーロール方式で搬送される長尺基板をキャンロールの外周面に巻き付けて冷却しながら熱負荷の掛かる処理を行う際に生じる長尺基板のシワをキャンロールの外周面上で伸ばす方法及び装置を提供する。
【解決手段】 キャンロール56の外周面56aのうち少なくとも片端側において長尺基板Fの端部付近が接触する箇所にキャンロール56の端部側に向かってキャンロール56の外径が徐々に細くなるような傾斜部21を設けるとともに、該傾斜部21のうちスパッタリングカソードなどの処理手段57〜60に対向していない箇所に設けたホイール31により長尺基板Fの端部を傾斜部21に押しつけることにより長尺基板Fを幅方向に広げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺耐熱性樹脂フィルムのキャンロール上でのシワ伸ばし方法及び装置に関し、特に、長尺耐熱性樹脂フィルムをキャンロールの外周面に沿って搬送しながら連続してスパッタリング等の成膜処理を行う際に熱負荷によって発生するフィルムシワを低減させるシワ伸ばし方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、耐熱性樹脂フィルム上に金属膜を被覆して得られる多種類のフレキシブル配線基板が用いられている。このフレキシブル配線基板の材料には、耐熱性樹脂フィルムの片面若しくは両面に金属膜を成膜した金属膜付耐熱性樹脂フィルムが用いられており、この金属膜付耐熱性樹脂フィルムにフォトリソグラフィーやエッチング等の薄膜技術を適用することにより所定の配線パターンを有するフレキシブル配線基板が得られる。フレキシブル配線基板の配線パターンは近年ますます微細化、高密度化しており、従って金属膜付耐熱性樹脂フィルムは平坦でシワのないことがより一層重要になってきている。
【0003】
この種の金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造方法として、従来から金属箔を接着剤により耐熱性樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に耐熱性樹脂溶液をコーティングした後、乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、あるいは耐熱性樹脂フィルムに真空成膜法により、若しくは真空成膜法と湿式めっき法との組み合わせにより金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法における真空成膜法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
【0004】
メタライジング法については、特許文献1に、ポリイミド絶縁層上にクロム層をスパッタリングした後、銅をスパッタリングしてポリイミド絶縁層上に導体層を形成する方法が開示されている。また、特許文献2に、銅ニッケル合金をターゲットとするスパッタリングにより形成された第一の金属薄膜と、銅をターゲットとするスパッタリングにより形成された第二の金属薄膜とを、この順でポリイミドフィルム上に積層することによって得られるフレキシブル回路基板用材料が開示されている。なお、基板にポリイミドフィルムの様な耐熱性樹脂フィルムを用い、これに真空成膜を行う場合はスパッタリングウェブコータを用いることが一般的である。
【0005】
ところで、上述した真空成膜法において、一般にスパッタリング法は密着力に優れる反面、真空蒸着法に比べて耐熱性樹脂フィルムに与える熱負荷が大きいといわれている。そして、成膜の際に耐熱性樹脂フィルムに大きな熱負荷が印加されるとフィルムにシワが発生し易くなることも知られている。このシワの発生を防ぐため、金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置であるスパッタリングウェブコータでは、冷却機能を備えたキャンロールを用いてスパッタリング中の耐熱性樹脂フィルムを裏面から冷却する構造が採用されている。
【0006】
例えば、特許文献3には、スパッタリングウェブコータの一例である巻出巻取式(ロールツーロール方式)真空スパッタリング装置が開示されている。この巻出巻取式真空スパッタリング装置には上記キャンロールの役割を担うクーリングロールが具備されており、さらにクーリングロールの少なくともフィルム送入れ側若しくは送出し側に設けたサブロールによってフィルムをクーリングロールに密着する制御が行われている。
【0007】
しかしながら、成膜速度を向上させるために大電力をスパッタリングカソードに印加すると、例えば水冷の冷却機能を備えたキャンロールだけでは金属膜付耐熱性樹脂フィルムの冷却が不十分となり、フィルムシワが発生することがあった。そこで、このシワを減らすため、エキスパンドロール等を用いて予めフィルムを幅方向に広げた状態でキャンロールに接触(密着)させる方法や、1対のホイールをフィルムの両縁部に接触させてフィルムを幅方向に広げる方法、さらにはキャンロール上にホイールを設置してフィルムを幅方向に広げる方法が提案されている。
【0008】
エキスパンドロールを用いて予めフィルムを幅方向に広げる方法については、例えば特許文献4に、フィルムのシワを空中(フローティング状態)で広げる手法が記載されている。具体的には図1に示すように、バナナ状にしならせたゴム製のエキスパンドロール1を回転させながら矢印Aの方向に搬送中の長尺耐熱性樹脂フィルムFに密着させることによって、長尺耐熱性樹脂フィルムFをその幅方向に広げてシワを低減する方法が示されている。
【0009】
さらに図2に示すように、表面に螺旋状の溝2aが形成されたウォームロール2を使用し、これを回転させながら矢印Aの方向に搬送中の長尺耐熱性樹脂フィルムFを密着させることによって、長尺耐熱性樹脂フィルムFをその幅方向に広げてシワを低減する方法が示されている。
【0010】
また、1対のホイールでフィルムを幅方向に広げる方法については、例えば図3に示すように、回転軸3aが長尺耐熱性樹脂フィルムFの搬送矢印Aに直交する方向に平行ではなく斜めとなるように1対の傾斜ホイール3をフィルムの搬送経路上に配置し、これら1対の傾斜ホイール3に対して搬送中の長尺耐熱性樹脂長尺耐熱性樹脂フィルムFの両縁部を接触させることによって、長尺耐熱性樹脂フィルムFをその幅方向に広げてシワを低減する方法が知られている。
【0011】
すなわち、この方法では、1対の傾斜ホイール3の回転軸3aが長尺耐熱性樹脂フィルムFの搬送方向(矢印A)に直交する方向に対して斜めに回転するので、長尺耐熱性樹脂フィルムFはその幅方向に広げられてシワの発生が低減する。なお、この方法は、長尺耐熱性樹脂フィルムFの両面からそれぞれ1対の傾斜ホイール3が接触できるように、2対の傾斜ホイール3を用いてシワ伸ばしを行うことがより効果的で有る。
【0012】
また、1対のホイールでフィルムを幅方向に広げる他の方法については、例えば図4に示すように、上記した回転軸3aを傾斜させた1対の傾斜ホイール3に代えて、それぞれ螺旋状の溝4aが形成された1対の溝付ホイール4を用いる方法が知られている。この装置も、1対の溝付ホイール4が回転することにより長尺耐熱性樹脂フィルムFはその幅方向に広げられてシワの発生が低減する。なお、この方法も、上記と同様に長尺耐熱性樹脂フィルムFの両面からそれぞれ1対の溝付ホイール4が接触できるように、2対の溝付ホイール4を用いてシワ伸ばしを行うことがより効果的で有る。
【0013】
さらに上記した図3及び図4に示す装置は、キャンロールの外周面上に配置してもよい。この場合は、1対のホイールとキャンロールの外周面との間でフィルムの両縁部を挟み込みながらシワ伸ばしを行うことになる。例えば、特許文献5に、キャンロール上でシワを伸ばす装置が示されている。この装置は、図3と同様に、フィルムの両縁部に接触する1対のホイールの回転軸が、フィルムの搬送方向に直交する方向に平行ではなく斜めに配置されている。また、フィルムの両縁部に接触する1対のホイールには斜めに駆動ベルトがかけられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平2−98994号公報
【特許文献2】特許第3447070号公報
【特許文献3】特開昭62−247073号公報
【特許文献4】特開2005−247475号公報
【特許文献5】国際公開第2005/001157号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記したような従来のシワ伸ばし方法は、いずれもスパッタリングによる成膜前や成膜中の耐熱性樹脂フィルムの表面にシワ伸ばし用のロールやホイールが接触した時、フィルム搬送方向における短い距離でフィルムをその幅方向に一気に広げるものであるため、フィルムに無理な張力がかかってしまったり、フィルムの裏面に擦り傷が付いてしまったりすることがあった。さらに、効果的なシワ伸ばしを行うため、耐熱性樹脂フィルムの両端部からかなり幅広い領域にまでロールやホイールを接触させる必要があった。このため、ロールやホイールとの接触のない成膜有効幅、すなわち、配線基板として使用できる幅を広く取ることができず、材料コストが余分にかかることがあった。
【0016】
また、バナナ状にロールをしならせたり、ホイール表面に螺旋状の溝を付けたり、ホイールを斜めに配置したりなどのロールやホイールのみでシワ伸ばし効果を期待する従来の方法は調整が難しく、ロールやホイールの位置やフィルムとの接触圧が僅かにずれただけでフィルムが偏ったり蛇行することがあった。このように、金属膜のスパッタリング成膜に際して、耐熱性樹脂フィルムに大きな熱負荷が印加されてもシワの発生を低減させること、特に、フィルムの幅方向の伸びに起因するシワの発生を低減できるキャンロール上でのシワ伸ばし方法及びその装置が望まれていた。
【0017】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、その課題とするところは、キャンロールの外周面に耐熱性樹脂フィルムなどの長尺基板を接触させながらスパッタリング成膜などの処理を施す際に、長尺基板に大きな熱負荷が掛かっても長尺基板のシワの発生が低減され、特に長尺基板の幅方向の伸びに起因するシワの発生が低減されるキャンロール上でのシワ伸ばし方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、キャンロールの外周面に沿ってポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂からなる長尺基板を搬送しながら金属膜をスパッタリング成膜する際、キャンロールの外周面上に巻き付けられているポリイミドフィルム等の長尺耐熱性樹脂フィルムの端部に接触するようにホイールを配置し、これにより長尺耐熱性樹脂フィルムが搬送されるに連れて次第にその幅方向に広げるようにすることで、フィルム幅方向の伸びに起因するシワの発生が低減することを見出し本発明に至った。
【0019】
すなわち、本発明が提供する長尺基板のシワ伸ばし方法は、ロールツーロール方式で搬送される長尺基板をキャンロールの外周面に巻き付けて冷却しながら外周面上に画定される長尺基板の搬送経路に対向して設けられた処理手段により熱負荷の掛かる処理を行う際に生じる長尺基板のシワをキャンロールの外周面上で伸ばす方法であって、前記キャンロールの外周面のうち少なくとも片端側において長尺基板の端部付近が接触する箇所にキャンロールの端部側に向かってキャンロールの外径が徐々に細くなるような傾斜部を設けるとともに、該傾斜部のうち前記処理手段に対向していない箇所に設けたホイールにより長尺基板の端部を傾斜部に押しつけることにより長尺基板をその幅方向に広げることを特徴としている。
【0020】
また、本発明が提供する長尺基板のシワ伸ばし装置は、ロールツーロール方式で搬送される長尺基板をキャンロールの外周面に巻き付けて冷却しながら外周面上に画定される長尺基板の搬送経路に対向して設けられた処理手段により熱負荷の掛かる処理を行う際に生じる長尺基板のシワをキャンロールの外周面上で伸ばす装置であって、前記キャンロールの外周面のうち少なくとも片端側において長尺基板の端部付近が接触する箇所に設けられたキャンロールの端部側に向かってキャンロールの外径が徐々に細くなるような傾斜部と、該傾斜部のうち前記処理手段に対向していない箇所において長尺基板の端部を該傾斜部に押しつけるホイールとからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、長尺基板をその幅方向に徐々に広げていくことができるので長尺基板に無理な力がかかることがなくなり、長尺基板を傷めることなくその幅方向のシワの発生を低減させることができる。よって、大きな熱負荷が掛かる例えばスパッタリング成膜においても長尺基板のシワの発生を効果的に抑えることができるので、高品質の金属膜付耐熱性樹脂フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のシワ伸ばし装置の一例を示す模式図である。
【図2】従来のシワ伸ばし装置の他の例を示す模式図である。
【図3】従来のシワ伸ばし装置のさらに他の例を示す模式図である。
【図4】従来のシワ伸ばし装置のさらに他の例を示す模式図である。
【図5】本発明に係るシワ伸ばし装置が好適に用いられるスパッタリングウェブコータの一具体例を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のシワ伸ばし方法に使用される傾斜部を備えたキャンロールの斜視図及び部分断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のシワ伸ばし装置の平面図及び側面図、並びにシワが伸びる原理を示す模式図である。
【図8】本発明の第2の実施形態のシワ伸ばし方法に使用される傾斜部を備えたキャンロールの斜視図及び部分断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のシワ伸ばし装置の平面図及び側面図、並びにシワが伸びる原理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の長尺基板のシワ伸ばし方法及びシワ伸ばし装置は、ロールツーロール方式で搬送される長尺基板をキャンロールの外周面に巻き付けて冷却しながら外周面上に画定される長尺基板の搬送経路に対向して設けられた処理手段により熱負荷の掛かる処理を行う際に生じる長尺基板のシワをキャンロールの外周面上で伸ばすものであって、キャンロールの外周面のうち少なくとも片端側において長尺基板の端部付近が接触する箇所にキャンロールの端部側に向かってキャンロールの外径が徐々に細くなるような傾斜部を設けるとともに、該傾斜部のうち前記処理手段に対向していない箇所に設けたホイールにより長尺基板の端部を外周面に押しつけることにより長尺基板を幅方向に広げることを特徴としている。
【0024】
バナナ状にしならせたロールや、外周面に斜め溝を付けたり斜めに配置したホイールなどによる従来のロールやホイールのみでシワを伸ばす方法は、ロールやホイールの位置や接触圧の調整に長尺基板の搬送が敏感に影響を受け、長尺基板が偏ったり蛇行することがあったが、本発明はキャンロールとホイールの組み合わせでシワを伸ばすものであり、調整が極めて容易であるにもかかわらず効果的にシワを伸ばせることができる。本発明のシワ伸ばし方法は、キャンロールの外周面に設けた斜面に接する長尺基板の端部に真上からホイールを押し当てることにより、長尺基板が斜面に沿って押し広げられることを応用したものである。
【0025】
以下、かかる本発明の長尺基板のシワ伸ばし方法及びその装置の第1の実施形態を、長尺基板の一例である長尺耐熱性樹脂フィルムを採り上げて図面を参照しながら詳細に説明する。先ず、本発明のシワ伸ばし方法及び装置が好適に使用される成膜装置について図5を参照しながら説明する。この図5に示す装置は、長尺耐熱性樹脂フィルムにスパッタリング成膜を行う成膜装置(スパッタリングウェブコータ)50であり、長尺状耐熱樹脂フィルムFの片面に連続して効率的に金属膜を成膜することができる。
【0026】
具体的に説明すると、スパッタリングウェブコータ50は、真空チャンバー51内に設けられており、矢印Aの向きに回転する巻き出しロール52から巻き出された長尺耐熱性樹脂フィルムFに所定の成膜処理を行った後、巻き取りロール64で巻き取るようになっている。これら巻き出しロール52と巻き取りロール64間のフィルム搬送経路には、温調された冷媒が内部を循環するモータ駆動のキャンロール56が配置されている。
【0027】
巻き出しロール52からキャンロール56までのフィルム搬送経路には、長尺耐熱性樹脂フィルムFを案内するフリーロール53と、長尺耐熱性樹脂フィルムFの張力の測定を行う張力センサロール54と、キャンロール56の周速度に基づいて調整を行ってキャンロール56の外周面に長尺耐熱性樹脂フィルムFを密着させるためのモータ駆動のフィードロール55とがこの順に配置されている。
【0028】
同様に、キャンロール56から巻き取りロール64までのフィルム搬送経路にも、キャンロール56の周速度に基づいて調整を行ってキャンロール56の外周面に長尺耐熱性樹脂フィルムFを密着させるためのモータ駆動のフィードロール61と、長尺耐熱性樹脂フィルムFの張力の測定を行う張力センサロール62と、長尺耐熱性樹脂フィルムFを案内するフリーロール63とがこの順に配置されている。
【0029】
また、上記巻き出しロール52と巻き取りロール64とはパウダークラッチ等により長尺耐熱性樹脂フィルムFの張力バランスを保っており、キャンロール56の回転とこれに連動して回転するモータ駆動のフィードロール55、61により、巻き出しロール52から長尺耐熱性樹脂フィルムFが巻き出されて巻き取りロール64に巻き取られるようになっている。
【0030】
キャンロール56の近傍には、キャンロール56の外周面に対向するように、スパッタリングなどの乾式薄膜処理法により長尺耐熱性樹脂フィルムFの表面に金属膜の成膜を行うための成膜手段であるマグネトロンスパッタリングカソード57、58、59及び60が配置されている。なお、図5に示すスパッタリングウェブコータ50では、金属膜のスパッタリング成膜に板状のターゲットを使用する場合が示されているが、板状のターゲットを用いた場合はターゲット上にノジュール(異物の成長)が発生することがある。
【0031】
これが問題になる場合は、ノジュール(異物の成長)の発生がなく、ターゲットの使用効率も高い円筒形のロータリーターゲットを使用してもよい。また、このスパッタリングウェブコータ50では、乾式薄膜形成手段にマグネトロンスパッタリングカソードを用いているが、これに限定されるものではなく、蒸着など他の成膜手段を用いても良い。
【0032】
次に、本発明の第1の実施形態のシワ伸ばし装置について説明する。この第1の実施形態のシワ伸ばし装置は、図6に示すように、キャンロール56の外周面56aのうち、キャンロール56の外周面56aに画定される搬送経路Pの両端部分に、キャンロール56の中心軸56oを含む平面で切断したときの断面形状が三角形の突起20が形成されている。
【0033】
これにより、キャンロール56の外周面56aのうち、長尺耐熱性樹脂フィルムFの端部付近が接触する箇所に、キャンロール56の端部側に向かって徐々にキャンロール56の外径が徐々に細くなるような傾斜部21を設けることが可能となる。この突起20は、上記傾斜部21がキャンロール56の外周面56aに画定される搬送経路Pの端部から搬送経路内側に50mmまでの領域内に位置するように形成することが好ましく、搬送経路Pの端部から搬送経路内側に30mmまでの領域内に位置するように形成することがさらに好ましい。
【0034】
突起20は、キャンロール56の全周に亘って略一定の高さと略一定の傾斜角で連続する帯状であることが好ましく、これにより、長尺耐熱性樹脂フィルムFをその幅方向に均一に広げることが可能となる。具体的には、突起20の上記キャンロール56端部側における傾斜部21の傾斜角(図6(b)の角度α)が、キャンロール56の回転軸56oに対して5〜30°であることが望ましい。この傾斜角が5°未満ではシワ伸ばしの効果がほとんど無く、一方、30°を超えると長尺耐熱性樹脂フィルムFに無理な応力が加わり、かえってシワが発生するおそれがある。
【0035】
突起20の高さHは0.1〜3mmであることが望ましい。この高さHが0.1mm未満ではシワ伸ばしの効果がほとんど無く、一方、3mmを超えると長尺耐熱性樹脂フィルムFをキャンロール56の外周面56aに沿って密着させることが困難になるからである。突起20は、長尺耐熱性樹脂フィルムFに傷をつけることなく伸ばせるように、滑らかな形状をしているのが好ましい。例えば、図6では断面が三角形状で示されているが、断面がキャンロールの外周面側に拡がった略台形状(富士山状)やドーム状であることが好ましく、特に断面の頂上部は曲線で形成されていることがより好ましい。
【0036】
また、突起20の表面は、摩擦係数ができるだけ低いことが好ましいく、これにより長尺耐熱性樹脂フィルムFをその幅方向に容易に伸ばすことができる。摩擦係数を低くする方法としては、例えば突起20の少なくとも傾斜部21に、フッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標)等のポリテトラフルオロエチレン樹脂)を塗布する方法を挙げることができる。あるいは、突起20の少なくとも傾斜部21に、キャンロール56の中心軸56o方向に延在する溝を形成してもよい。キャンロール56の外周面56aに突起20を設ける方法としては、キャンロールの加工時に突起を形成してもよいし、既存のキャンロールに帯状の部材を溶接などで取り付けてもよい。なお、突起20はキャンロール56の片端部のみに設けてもよい。
【0037】
上記説明した突起20のキャンロール56端部側における傾斜部21に対向する位置に、図7(a)に示すように、回転自在なホイール31を有するホイールユニット30が設けられている。このホイール31は、その回転中心軸31oがキャンロール56の中心軸56oに平行であり、さらにスプリング、ゴム、空気圧等を用いた付勢手段32によって傾斜部21に向けて付勢されている。
【0038】
これにより、キャンロール56の外周面56aに画定される搬送経路P上を搬送される長尺耐熱性樹脂フィルムFは、ホイールユニット30が設けられている位置を通過する時、その端部がキャンロール56の外周面56aの傾斜部21とホイール31との間に挟み込まれる。その際、当該長尺耐熱性樹脂フィルムFの端部はホイール31によって上から押しつけられる状態となる。
【0039】
その結果、図7(b)に示すように、当該長尺耐熱性樹脂フィルムFの端部には傾斜部21の斜面に沿って下る向き(矢印Sの向き)に力が働き、長尺耐熱性樹脂フィルムFはその幅方向(矢印Wの向き)に引っ張られる。これにより、長尺耐熱性樹脂フィルムFに発生するシワが伸ばされる。なお、ホイール31は、前述したようにホイールユニット30に回転自在に設けてキャンロール56の回転に伴って従動するようにしてもよいし、モータ等の回転駆動手段を用いてキャンロール56の周速度と同等な速度で回転させてもよい。
【0040】
ホイール31において、長尺耐熱性樹脂フィルムFに直接接する外周部31aは、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコンゴム、又はフッ素ゴム(例えばバイトン(登録商標))等の摩擦係数の高い可撓性部材で被われているか、その部材で外周部31a自体を形成することが好ましい。また、ホイール31の外径は、1〜10cmであるのが好ましい。これにより、ホイール31を長尺耐熱性樹脂フィルムFの端部から50mmまでの範囲内で接触させることができ、製造コストを下げることが可能となる。さらに好ましくは、ホイール31を長尺耐熱性樹脂フィルムFの端部から30mmまでの範囲内に接触させることで、長尺耐熱性樹脂フィルムFを処理できる面積(幅)が拡がり、製品の収率向上にもつながる。
【0041】
すなわち、ホイール31の外周部31aが接触した面は、傷が付いたり汚染されたりする恐れがあるので製品にすることが好ましくないため、ホイール31との接触のない成膜有効幅を少しでも広くすることが望まれる。このため、ホイール31はできるだけ長尺耐熱性樹脂フィルムFの端部付近に接触することが望まれる。
【0042】
設置するホイールユニット30の個数は1個でも複数個でもよいし、キャンロール56の片端だけに設置してもよいし、両端に対となるように設置してもよい。但し、設置する場所は図5に示す領域65、66、67、68及び69内にすることが望ましい。すなわち、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59及び60が対向する領域ではなく、各マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59及び60のフィルム搬送方向における前方部分か後方部分に設置するのが望ましい。
【0043】
その理由は、ホイールユニット30をマグネトロンスパッタリングカソード57、58、59及び60が対向している領域に設けると、成膜の際に当該ホイールユニット30が遮蔽マスクになってスパッタリングを阻害する恐れがあるからである。また、ホイール31の特に外周部31aは、スパッタリングのプラズマに曝されることによって生じる熱に対する耐熱性が問題になり得るからである。さらに、スパッタリングによってホイール31が汚染されたとき、これが回転することで異物が発生するおそれがあるからである。
【0044】
次に、本発明の第2の実施形態のシワ伸ばし装置について説明する。この第2の実施形態のシワ伸ばし装置は、図8に示すように、キャンロール156の外周面156aのうち、キャンロール156の外周面156aに画定される搬送経路Pの両端部分にキャンロール156の端部側に向かって徐々にキャンロール156の外径が徐々に細くなるような傾斜部26が形成されており、そのさらに端部側はキャンロール156の外径が縮径している。そして、図9(a)に示すように、この傾斜部26に対向する位置に前述した第1の実施形態と同様のホイールユニット30が設けられている。
【0045】
すなわち、本発明の第2の実施形態は、キャンロール156の両端部に、前述した突起20に代えて窪み25が形成されている以外は上記した第1の実施形態と基本的に同様である。従って、この第2の実施形態においても、キャンロール156の外周面156aに画定される搬送経路P上を搬送される長尺耐熱性樹脂フィルムFは、ホイールユニット30が設けられている位置を通過する時、その端部がキャンロール156の外周面156aの傾斜部26とホイール31との間に挟み込まれ、ホイール31によって上から押しつけられる。
【0046】
その結果、図9(b)に示すように、当該長尺耐熱性樹脂フィルムFの端部には傾斜部26の斜面に沿って下る向き(矢印Sの向き)に力が働き、長尺耐熱性樹脂フィルムFはその幅方向(矢印Wの向き)に引っ張られる。これにより、長尺耐熱性樹脂フィルムFに発生するシワが伸ばされる。
【0047】
窪み25を形成することによって得られる傾斜部26は、第1の実施形態と同様に、キャンロール156の外周面156aに画定される搬送経路Pの端部から搬送経路内側に50mmまでの領域内に位置しているのが好ましい。また、傾斜部26の傾斜角(図8の角度β)はキャンロール156の回転軸156oに対して5〜30°であることが望ましい。さらに、窪み25の深さDは0.1〜3mmであることが望ましく、また、傾斜部26の表面にフッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標)等のポリテトラフルオロエチレン樹脂)を塗布したり、キャンロール156の回転軸156o方向に延在する溝を形成して摩擦係数をできるだけ低くするのが好ましい。
【0048】
本発明では上記したようにキャンロールの外周面に突起や窪みが設けられているが、この場合においても長尺耐熱性樹脂フィルムFの表面がキャンロールの外周面から浮き上がってその間に隙間が入ることなく外周面に沿わせることができる。その理由は、スパッタリングロールコータでは、搬送している長尺耐熱性樹脂フィルムFに張力を負荷しているからである。
【0049】
上述した本発明のシワ伸ばし装置を搭載したスパッタリングウェブコータを用いることにより、長尺耐熱性樹脂フィルムにシワの不具合が無い金属膜付耐熱性樹脂フィルムをメタライジング法で得ることができる。乾式薄膜形成手段で作製される金属膜付耐熱性樹脂フィルムの具体例としては、耐熱性樹脂フィルムの表面にNi系合金等からなる膜とCu膜が積層された積層構造体を挙げることができる。このような積層構造を有する金属膜付耐熱性樹脂フィルムは、サブトラクティブ法によりフレキシブル配線基板に加工される。ここで、サブトラクティブ法とは、レジストで覆われていない金属膜(例えば、上記Cu膜)をエッチングにより除去してフレキシブル配線基板を製造する方法である。
【0050】
上記Ni合金等からなる膜はシード層と呼ばれ、金属膜付耐熱性樹脂フィルムに必要とされる電気絶縁性や耐マイグレーション性等の特性によりその組成が定められる。このシード層には、例えばNi−Cr合金やインコネルやコンスタンタンやモネル等の各種公知の合金を用いることができる。金属膜付耐熱性樹脂フィルムの金属膜(Cu膜)をさらに厚くしたい場合は、湿式めっき法を用いて金属膜を形成することがある。
【0051】
湿式めっき法には、電気めっき処理のみで金属膜を形成する場合や、一次めっきとしての無電解めっき処理及び二次めっきとしての電解めっき処理等のように湿式めっき法を組み合わせて行う場合がある。具体的な湿式めっき処理の条件は、従来から用いられている湿式めっき法の諸条件を採用すればよい。
【0052】
金属膜付耐熱性樹脂フィルムに用いる耐熱性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム又は液晶ポリマー系フィルムを挙げることができる。この中から金属膜付フレキシブル基板としての柔軟性、実用上必要な強度、配線材料として好適な電気絶縁性等を考慮して最適な材料が選択される。
【0053】
なお、上記説明では、金属膜付耐熱性樹脂フィルムとして、長尺耐熱性樹脂フィルムにNi-Cr合金やCu等の金属膜を積層した積層構造体を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、上記金属膜に代えて、あるいはこれに加えて酸化物膜、窒化物膜、炭化物膜等が成膜されてもよい。また、上記説明では長尺基板に熱が負荷される処理の例としてスパッタリングウェブコータ内のスパッタリングを採り上げたが、本発明のシワ伸ばし方法及びシワ伸ばし装置は、スパッタリング処理の他、プラズマ処理やイオンビーム処理などの表面の改質にも用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明に係るシワ伸ばし方法について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
【0055】
[実施例1]
図5に示すようなスパッタリングウェブコータ(金属膜付耐熱性樹脂フィルムの製造装置)50を用いて長尺耐熱性樹脂フィルムFに金属膜を成膜した。キャンロール56には、アルミ製で作製された直径900mm、幅750mmのものを使用した。このキャンロール56の表面には、ハードクロムめっきが施されていた。長尺耐熱性樹脂フィルムF(以降、実施例に限りフィルムFと称する)には、幅500mm、長さ500m、厚さ25μmの宇部興産株式会社製の耐熱性ポリイミドフィルム「ユーピレックス(登録商標)」を使用した。
【0056】
キャンロール56の外周面56aには図6に示すような断面二等辺三角形の突起20をキャンロール56の両端部に設け、その頂角は滑らかに削った。突起20の傾斜部21の傾斜角αは、キャンロール56の回転軸56oに対して5°とし、その高さHは0.3mmとした。なお、突起20は、その頂角がキャンロール56の外周面56aに画定される搬送経路Pの端部から搬送経路内側に10mmの位置となるようにした。
【0057】
このスパッタリングウェブコータ50のマグネトロンスパッタターゲット57、58、59、60の前後の領域65、66、67、68、及び69に、外径20mm、幅3mmのホイール31を備えたホイールユニット30を5対設けた。具体的には、これら領域65、66、67、68、及び69の各々において、キャンロール56の外周面56aの両端部に設けた突起20の傾斜部21の斜面中央にそれぞれホイール31が当接するようにした。各ホイール31は、外周部31aをバイトン(登録商標)で形成し、スプリングにより傾斜部21に押しつけるようにした。スプリングの圧力は約5Nとした。
【0058】
また、フィルムFに成膜される金属膜はシード層であるNi−Cr膜の上にCu膜を成膜するようにした。このため、マグネトロンスパッタターゲット57にはNi−Crターゲットを用い、マグネトロンスパッタターゲット58、59、60にはCuターゲットを用いた。さらに、アルゴンガスを300sccm導入し、各カソードへの印加電力は10kWの電力制御で成膜を行った。
【0059】
また、上記巻き出しロール52と巻き取りロール64の張力は80Nとした。さらに、上流側モータ駆動フィードロール55の周速度はキャンロール56の周速度の99.9%とし、かつ、下流側モータ駆動フィードロール61の周速度はキャンロール56の周速度の100.1%とした。この設定により、フィルムFは徐々に引っ張られることになり、キャンロール56表面に強く密着させることができた。また、キャンロール56は水冷により20℃に制御したが、フィルムFがキャンロール56の外周面56a上に強く密着しないと熱伝導による冷却効果は期待できなかった。
【0060】
そして、巻き出しロール52に上記フィルムFをセットし、その先端部をフリーロール53、張力センサロール54、フィードロール55、キャンロール56、フィードロール61、張力センサロール62、及びフリーロール63を経由して巻き取りロール64に取り付けた。次に、真空チャンバー51を複数台のドライポンプを用いて5Paまで排気した後、複数台のターボ分子ポンプとクライオコイルを用いて3×10−3Paまで排気した。
【0061】
そして、フィルムFの搬送速度を3m/分にした後、各マグネトロンスパッタカソード57、58、59、60にアルゴンガスを導入して電力を印加し、Ni−Cr膜のシード層とその上に成膜するCu膜の成膜を開始した。
【0062】
成膜処理が行われている際、キャンロール56の外周面56a上のフィルムFの表面の観察が可能な観察窓から、フィルムFを観察しところ、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60の成膜ゾーンを通過した成膜直後のフィルムFは、フィルム搬送方向と平行な方向にシワの原因となるキャンロール56からのフィルムFの浮きが見られた。しかしながら、ホイールユニット30を取り付けた領域65、66、67、68、69の位置を通過する毎に、浮きは無くなっていった。
【0063】
フィルムFの長さ290m分が通過した時点で、各プラズマ反応室のプラズマと各マグネトロンスパッタカソード57、58、59、60への電力を停止し、それぞれのガス導入も停止した。次に、フィルムFの搬送を停止すると共に各ポンプを停止した。その後、ベントを介して大気開放し、巻き出しロール52からフィルムFの終端部を外した。最後にフィルムFを全て巻き取りロール64に巻き取ってから取り外した。巻き取りロール64に巻き取られたフィルムFを大気中において展開してシワの有無を確認したところ、シワは発見できなかった。
【0064】
[実施例2]
実施例1の突起20を有するキャンロール56に代えて図8に示すような窪み25を有するキャンロール156を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムFに金属膜を成膜した。この窪み25は、深さDを0.3mmとし、傾斜部26の傾斜角βはキャンロール156の回転軸156oに対して5°とした。また、傾斜部26の角部は滑らかに削った上、この角部がキャンロール156の外周面156aに画定される搬送経路Pの端部から搬送経路内側に10mmの位置となるように窪み25を形成した。
【0065】
その結果、成膜中におけるキャンロール156上のフィルムF表面の観察が可能な観察窓から、キャンロール156上のフィルムFを観察しところ、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60の成膜ゾーンを通過した成膜直後のフィルムFは、進行方向と平行な方向にシワの原因となるキャンロール156からのフィルムFの浮きが見られたが、ホイールユニット30を取り付けた領域65、66、67、68、69の位置を通過するごとに、浮きは無くなっていった。また、成膜が完了した後、巻き取りロール64に巻き取られたフィルムFを大気中にて展開してシワの有無を確認したところ、シワは発見できなかった。
【0066】
[比較例]
比較のため、キャンロール56の外周面56aに突起や窪みを設けず、ホイールユニット30も取り付けなかった以外は上記実施例1と同様にしてフィルムFに金属膜を成膜した。
【0067】
その結果、成膜処理が行われている際、キャンロール56の外周面56a上のフィルムFの表面の観察が可能な観察窓から、フィルムFを観察しところ、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60の成膜ゾーンを通過した成膜直後のフィルムFは、フィルム搬送方向と平行な方向にシワの原因となるキャンロール56からのフィルムFの浮きが見られ、マグネトロンスパッタリングカソード57、58、59、60を通過する毎に、このフィルムFの浮きは増加していく傾向にあった。
【0068】
また、成膜が完了した後、巻き取りロール64に巻き取られたフィルムFを大気中において展開してシワの有無を確認したところ、スパッタの熱負荷に起因していると考えられるシワが発生していた。
【符号の説明】
【0069】
20 突起
21、26 傾斜部
25 窪み
30 ホイールユニット
31 ホイール
32 付勢手段
50 スパッタリングウェブコータ
51 真空チャンバー
52 巻き出しロール
53、63 フリーロール
54、62 張力センサロール
55、61 フィードロール
56、156 キャンロール
57、58、59、60 マグネトロンスパッタリングカソード
64 巻き取りロール
F 長尺耐熱性樹脂フィルム(長尺基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールツーロール方式で搬送される長尺基板をキャンロールの外周面に巻き付けて冷却しながら外周面上に画定される長尺基板の搬送経路に対向して設けられた処理手段により熱負荷の掛かる処理を行う際に生じる長尺基板のシワをキャンロールの外周面上で伸ばす方法であって、前記キャンロールの外周面のうち少なくとも片端側において長尺基板の端部付近が接触する箇所にキャンロールの端部側に向かってキャンロールの外径が徐々に細くなるような傾斜部を設けるとともに、該傾斜部のうち前記処理手段に対向していない箇所に設けたホイールにより長尺基板の端部を傾斜部に押しつけることにより長尺基板をその幅方向に広げることを特徴とする長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項2】
前記傾斜部がキャンロールの全周に亘って略一定の高さと略一定の傾斜角で連続する帯状の突起によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項3】
前記傾斜部がキャンロールの全周に亘って略一定の深さと略一定の傾斜角で連続する帯状の窪みによって形成されることを特徴とする、請求項1に記載のキャンロール上での長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項4】
前記傾斜部の傾斜角がキャンロールの回転軸方向に対して5〜30°であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項5】
前記傾斜部の斜面には、フッ素樹脂膜が塗布されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項6】
前記傾斜部の斜面には、キャンロールの回転軸方向に延在する溝が形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項7】
前記傾斜部がキャンロールの外周面に画定される搬送経路の端部から搬送経路内側に50mmまでの領域内に設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項8】
前記ホイールは、長尺基板と接触する外周部の材質が、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコンゴム、又はフッ素ゴムであること特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項9】
前記ホイールは、付勢手段により前記傾斜部に向けて付勢されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項10】
前記ホイールは、長尺基板の搬送方向に関して前記処理手段の対向する領域の前後に配置されていることを特徴とする請求項1から9に記載のキャンロール上での長尺基板のシワ伸ばし方法。
【請求項11】
ロールツーロール方式で搬送される長尺基板をキャンロールの外周面に巻き付けて冷却しながら外周面上に画定される長尺基板の搬送経路に対向して設けられた処理手段により熱負荷の掛かる処理を行う際に生じる長尺基板のシワをキャンロールの外周面上で伸ばす装置であって、前記キャンロールの外周面のうち少なくとも片端側において長尺基板の端部付近が接触する箇所に設けたキャンロールの端部側に向かってキャンロールの外径が徐々に細くなるような傾斜部と、該傾斜部のうち前記処理手段に対向していない箇所に設けた長尺基板の端部を該傾斜部に押しつけるホイールとからなることを特徴とする長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項12】
前記傾斜部がキャンロールの全周に亘って略一定の高さと略一定の傾斜角で連続する帯状の突起によって形成されることを特徴とする、請求項11に記載の長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項13】
前記傾斜部がキャンロールの全周に亘って略一定の深さと略一定の傾斜角で連続する帯状の窪みによって形成されることを特徴とする、請求項11に記載の長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項14】
前記傾斜部の傾斜角がキャンロールの回転軸方向に対して5〜30°であることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項15】
前記傾斜部の斜面には、フッ素樹脂が塗布されていることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項16】
前記傾斜部がキャンロールの外周面に画定される搬送経路の端部から搬送経路内側に50mmまでの領域内に設けられていることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項17】
前記ホイールは、長尺基板と接触する外周部の材質が、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコンゴム、又はフッ素ゴムであること特徴とする、請求項11〜16のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項18】
前記ホイールは、付勢手段により前記傾斜部に向けて付勢されていることを特徴とする、請求項11〜17のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項19】
前記ホイールは、長尺基板の搬送方向に関して前記処理手段の対向する領域の前後に配置されていることを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載の長尺基板のシワ伸ばし装置。
【請求項20】
内部が減圧雰囲気となる真空チャンバー内に請求項11〜19のいずれかに記載のシワ伸ばし装置が搭載されており、前記熱負荷の掛かる処理が乾式成膜処理であることを特徴とする成膜装置。
【請求項21】
前記処理手段がスパッタリングカソードであることを特徴とする、請求項20に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−132080(P2012−132080A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287101(P2010−287101)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】