説明

キュベットホルダー、キュベット列およびこれらを具備してなる分析装置

【課題】 複数の反応用キュベットを保持するためのキュベットホルダーを提供する。
【解決手段】このキュベットホルダーは、プラスチック材料の射出成形により作られ、円弧状に延び、この円弧に沿って配列されたチャンバー(43)の列を画成する本体(42)を具備してなり;該チャンバー(43)のそれぞれが反応用キュベット(31)の上端部(34)を受理し、かつ、ゆるく保持するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キュベットホルダー、および、このキュベットホルダーを具備してなるキュベット列、および、このキュベットホルダーおよびキュベット列を具備してなる分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置、特に、電気光学的測定により分析されるべきサンプル−試薬混合物を受理するようにした反応用キュベットを移送するためのコンベアを有するタイプの臨床化学分析装置において、反応用キュベットを1つ1つコンベアの対応するキャビティ内に挿入する代わりに、反応用キュベットのグループをコンベアの対応するキャビティ内に挿入するようにすることは有利なことである。なぜならば、前者の手法では、使用されるキュベットの少なくとも一部が損傷を受け易く、この場合に予想される損傷は特に、測定に適した光学特性を備えた反応用キュベットの一部に対するものである。そのような損傷はキュベットの内容物の電気光学的測定の正確性および信頼性に疑問を生じさせるものとなる。
【0003】
公知のキュベットホルダーは射出成形により作られ、キュベットを密接保持するように設計され、それにより、キュベットがコンベアの各キャビティ内に挿入された後でも、キュベットの位置に影響を与えることになる。このキュベットホルダーによる影響は、キャビティ内に挿入された各キュベットが実際に置かれた位置を修正することを妨げることに繋がり、決して好ましいものではない。なぜならば、キュベットホルダー並びにこのホルダーにより保持されるキュベットの双方の変形および製造公差が、各キュベットの位置に対し不均一、かつ、予想外の形で影響を及ぼし、キャビティ内におけるキュベットの光学的に最適な位置、すなわち、キュベットの内容物の信頼し得る電気光学的測定(例えば、光度測定)を行うのに好ましい位置へのキュベットの位置決めを妨害することになるからである。
【0004】
従来技術で知られているキュベット列は、前述のタイプのキュベットホルダーと、このキュベットホルダーにより保持された複数のキュベットとのアッセンブリーであるか、あるいは射出成形により一個構成部材として作られた複数のキュベットの列である。この双方のタイプのキュベット列は前述同様の欠点を有するものである。
【0005】
このような公知のキュベットホルダーおよびキュベット列を、公知の自動分析装置で使用する場合は、上述の欠点によって分析性能に悪影響を及ぼすことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、公知のキュベットホルダーの上述のような欠点を回避することができる上述のタイプのキュベットホルダーを提供することである。
【0007】
本発明の第2の目的は、従来公知のキュベット列の前述のような欠点を回避することができるキュベット列を提供することである。
【0008】
本発明の第3の目的は、従来公知の分析装置の前述のような欠点を回避することができる分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるキュベットホルダーは、複数の反応用キュベット(31)を保持するためのキュベットホルダーであって;プラスチック材料の射出成形により作られ、円弧状に延び、この円弧に沿って配列されたチャンバー(43)の列を画成する本体(42)を具備してなり;該チャンバー(43)のそれぞれが上方開口部と、下方開口部と、可撓性舌片(40,50)を有し、該可撓性舌片が前記上方開口部からチャンバー(43)の内部に向けて延出し、該可撓性舌片(40,50)の可撓性によって、前記反応用キュベット(31)全体が前記上方開口部を介して挿入可能となっていて、該チャンバー(43)内での可撓性舌片(40,50)の構成により前記キュベット(31)の前記上方開口部を介しての引き抜き防止が図られ、チャンバー(43)の下方開口部の断面が、それを介してキュベット(31)の本体の通過を許容する十分な大きさのものであるが、キュベット(31)の上部の該下方開口部を介しての通過を防止するものであり、それによって、該チャンバー(43)の夫々が反応用キュベット(31)の上端部(34)を受理し、かつ、ゆるく保持するようになっていることを特徴とするものである。本発明のキュベットホルダーによって上述の第1の目的が達成される。
【0010】
また、本発明によるキュベットホルダーの好ましい実施の形態は、前記キュベットホルダーにおいて、前記本体(42)が、それをコンベアに接続させるための接続部(44)を有するものである。
【0011】
また、本発明によるキュベット列は、前記キュベットホルダー(41)と;上端部が該キュベットホルダー(41)によりゆるく保持されるようにした複数の反応用キュベット(31)と;を具備してなることを特徴とするものである。本発明のキュベット列によって上述の第2の目的が達成される。
【0012】
また、本発明によるキュベット列の好ましい実施の形態は、前記キュベット列において、前記反応用キュベット(31)の夫々が、両端部を構成する下端部(33)および上端部(34)の間に延びた直線状管体(32)を有し、該下端部(33)が底面(35)により閉塞され、該上端部(34)が開口部(36)で終わっていて、該上端部(34)は、その開口部(36)に隣接した2つの硬質の舌片(37,38)を有しており、これら舌片(37,38)が前記管体(32)の上端部(34)から外側に向けて互いに反対方向に延びていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明による分析装置は、(a)反応用キュベット(31)を円形路に沿って移送するための回転自在なコンベア(11)であって、このコンベアが円形列のキャビティ(13)を有し、各キャビティが単一の反応用キュベット(31)を受理するようにした第1のリング状本体(12)を有するものと;(b)前記キュベット列の少なくとも1つと;を具備してなることを特徴とするものである。本発明の分析装置によって上述の第3の目的が達成される。
【0014】
また、本発明による分析装置の好ましい実施の形態は、前記分析装置において、前記キャビティ(13)の夫々の底面(56)が2つのエッジを有し、これらが、該キャビティに挿入された反応用キュベット(31)の底面と接触して支持するようになっており、前記エッジが互いに平行であって、略半径方向に配向されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による分析装置の好ましい実施の形態は、前記分析装置において、前記第1のリング状本体(12)の内側から上方に延出する壁面(15)を有し、該壁面(15)が複数の開口部(16)を有し、開口部(16)の夫々が前記の少なくとも1つのキュベット列の一部であるキュベットホルダー(41)の対応する接続部(44)を受理するようにした、第2のリング状本体(14)を更に具備してなり;前記の少なくとも1つのキュベット列のキュベットホルダー(41)が接続部(44)を有し、この接続部により前記キュベットホルダー(41)をコンベア(11)の第2のリング状本体(14)の前記壁面(15)の開口部(16)の1つと接続させ、それにより前記キュベットホルダー(41)により保持された反応用キュベット(31)をコンベア(11)の第1のリング状本体(12)の対応するキャビティ(13)内に挿入させるようにしたこと;を特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明による分析装置の好ましい実施の形態は、前記分析装置において、(a)反応用キュベット(31)内に収容された液体サンプル−試薬混合物の光度測定を行うため前記コンベア(11)近傍に配置された光度計(21)と;(b)該コンベアを段階的に回動させるためのコンベア駆動装置(22)と;を更に具備してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のキュベットホルダー、キュベット列および分析装置により得られる主な利点は、反応用キュベットの夫々が、光学的に最適な位置、すなわち、キュベットの内容物の信頼し得る電気光学的測定(例えば、光度測定)を行うのに好ましい位置で、コンベアのキャビティ内に配置されることである。これは、本発明のキュベットホルダーが、キュベットをコンベア内に配置させるまでは、キュベットをゆるく保持し、キュベットがコンベア内に配置されたとき、各キャビティ内でのキュベットの位置に全く影響を与えないようにしているという事実に主に起因するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を、図面を参照して好ましい実施例に基づいて説明するが、これら実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、制限を意図するものと解釈されるべきではない。
【0019】
(本発明に係る分析装置の例)
図1には、本発明に係わる分析装置、例えば、反応用キュベットに収容されているサンプル−試薬混合物の分析のための臨床化学分析装置が示されている。この図1に示す分析装置は、対応するキャビティにそれぞれ挿入された反応用キュベット31を円形路に沿って搬送するための回転可能なコンベア11と、反応用キュベット31の少なくとも1列と、前記コンベアの中心部に配置された中空体51(図25に示されている)と、中空体51のキャビティ54内に設置された試薬容器アッセンブリー61と、コンベア11に隣接して設けられた試料管領域18と、自動ピペット装置71と、コンベア11に隣接して設けられた光度計21と、コンベア11を回転させるためのコンベア駆動手段22と、を具備してなる。
【0020】
図3はコンベア11の回転軸25を示している。反応用キュベット31はコンベア11の前記キャビティ内に挿入され、特に図4ないし20を参照して以下に説明するキュベットホルダー41によりゆるく保持されている。すなわち、このキュベットホルダー41は複数の反応用キュベット31をゆるく保持している。このキュベットホルダー41およびこのキュベットホルダー41により保持された反応用キュベット31により、キュベット列が形成されている。この分析装置は、少なくとも1つのこのような列を含むものである。通常、複数のこのようなキュベット列の反応用キュベットはコンベア11の対応するキャビティ内に設置される。図1に示す例においては、コンベア11は、6個のキュベット列に配設された60個の反応用キュベットを受理するためのキャビティを有し、各キュベット列は10個の反応用キュベットを有する。
【0021】
キュベットホルダー41は反応用キュベット31の列を保持するのに使用される。このキュベットホルダー41は接続部44を有し、これはコンベアの壁部15の開口部16内に挿入されるようになっていて、それによりキュベットホルダー41をコンベア11に接続するようになっている。図2に示すように、この接続部44と、壁部15の開口部16との相対的位置は、接続部44がこの開口部16内に挿入されたとき、キュベットホルダー41により保持された複数の反応用キュベット31がコンベア11の第1のリング状本体12の対応するキャビティ13内にそれぞれ挿入されるようになっている。
【0022】
図2および3に示すように、コンベア11は第1のリング状本体12と、第2のリング状本体14とを有する。第1のリング状本体12はキャビティ13の円形配列を有し、そのキャビティ13の夫々が図8ないし10を参照して以下に記載するタイプの単一の反応用キュベット31を受理するようになっている。隣接するキャビティ13は、図17に示す壁面60および60aのような中間壁面により相互に分離されている。第1のリング状本体12は、好ましくは適当な金属から作られる。
【0023】
各キャビティ13のサイズは反応用キュベットのサイズと極めて近いものであるが、図19および20に示すように、キャビティ13のサイズは反応用キュベット31の外側表面と、コンベア11のリング状本体12中のキャビティ13の内側面との間に空隙55が存在するものとなっている。図19は図16のF−F面に沿う断面図であって、コンベア11のキャビティ13内に挿入されたキュベット31を示している。図20は図19の一部28の拡大図であって、キュベット31と、キャビティ13の内面との間の空隙55を示している。図20に示したものと同様の空隙55がキュベット31の本体32の全ての側面(4つの側面)に存在することが好ましい。図20に示した空隙55と同様の空隙は、キュベット31の本体32のコンベア11のキャビティ13への挿入を容易にするものとなる。
【0024】
図15は図2に示すコンベア11並びにコンベア11の各キャビティ13に挿入された反応用キュベット31の列の平面図を示している。図16は図15の一部26の拡大図であって、コンベア11のキャビティの1つに挿入された反応用キュベット31の1つの平面図を示している。
【0025】
図17は図16のE−E面に沿う横断面図であって、コンベア11のキャビティの夫々に挿入されたキュベット31を示している。図18は図17の一部27の拡大図であって、キュベット31の底面と、コンベア11のキャビティの底面のエッジとの間の接触を示している。
【0026】
図18に示すように、コンベア11のリング状本体12中の各キャビティ13は底面56を有し、この底面56は中央窪み57を有し、それがキュベット31の底面35の外表面の形状とほぼ合致する形状をなしている。しかし、この窪み57の中心部には、この窪み57の内側面と、キュベットの底面35の外側表面との間に空隙が存在するようにしている。底面56の内側表面には2つのエッジ58,59が設けられていて、これらがキャビティ13内に挿入、配置された反応用キュベット31の底面と接触し、反応用キュベット31を支持するようにしている。エッジ58,59は互いに平行となっていて、コンベア11の回転軸25との関係で、ほぼ半径方向に配向している。
【0027】
第2のリング状本体14は第1のリング状本体12の内壁から上方に延びた壁部15を有する。この壁部15は開口部16を有し、その夫々がキュベットホルダー41の対応する接続部44を受理するようになっている。この第2のリング状本体14は、その内部にチャンバー17を画成している。
【0028】
図24は、試薬容器アッセンブリー61を取り出したときの図1に示す分析装置のコンベア部分の平面図を示している。図25は、図24のH−H面に沿う断面図である。
【0029】
図25に示すように、中空体51が、第2のリング状本体14内のチャンバー17内に配置されている。この中空体51は、例えばバケット(バケツ)の形状をなし、底面52と、側壁53とを有し、それによりチャンバー54が画成されている。
【0030】
図23は、図1に示す分析装置から取り出した状態の試薬容器アッセンブリー61の斜視図を示している。この試薬容器アッセンブリー61は、中空体51のチャンバー54内にその下部が位置するようになっている。
【0031】
図26は、分析装置に装着されたときの試薬容器アッセンブリー61の斜視図であって、カバーが取り除かれ、試薬容器も収容されていない状態を示す。図27は図26の拡大図を示している。図26,27から分かるように、試薬容器アッセンブリー61は試薬容器を受理するようにしたチャンバーの2つの同心的な列を有するハウジングを備えている。
【0032】
図28は、図1に示す分析装置のコンベア部分、更に、特に試薬容器を装填する前の試薬容器アッセンブリー61の平面図を示している。
【0033】
図29は試薬容器62の斜視図を示している。図30は図28のI−I面に沿う断面図を示している。
【0034】
図30に示すように、試薬容器アッセンブリー61は、図29に示す試薬容器62と同様の試薬容器63,64を受理するための複数のチャンバー65,66を有している。これら試薬容器は夫々、特定の液状試薬を収容するものである。各試薬容器は自動読み取り可能なラベル(例えばバーコードラベル)(図示しない)を貼付してなり、それにより試薬容器内に収容されている特定の試薬を識別できるようにしている。
【0035】
試料管領域18は、分析装置内に恒久的に設置された架台を備えている。この架台には数個のキャビティ19が形成されていて、その夫々が分析すべき液体サンプルを収容した試料管を受理するようになっている。
【0036】
自動ピペット装置71は、この分析装置における、あらゆるピペット操作を行うのに適したものであり、例えば、試料管領域18中の試料管から分取したサンプルをピペットを用いてコンベア11内の反応用キュベット31へ移すこと、試薬容器アッセンブリー61中の試薬容器62から分取した試薬をピペットを用いてコンベア11内の反応用キュベット31へ移すことなどである。これらのピペット操作の後において、反応用キュベットには、サンプル−試薬混合物が収容されたものとなる。
【0037】
自動ピペット装置71は、着脱自在に装着されたピペット針72と、図1に示すX方向に延びたレール73上に装着された移送装置とを具備してなる。この移送装置はピペット針72を2つの様式で移動させる。すなわち、例えば、ピペット針72をピペット操作位置に持っていくためX方向の直線路に沿う移動、および、例えば、反応用キュベット内に収容された液体にピペット針72の先端を浸漬させる場合の円形路に沿う移動である。ピペット針72の後者の円形移動は、ピペット針72の前記移送装置の一部である偏心機構により達成される。この偏心機構はピペット針の先端を円形路に沿って移動させるようになっているが、ピペット針72の長手方向軸は図1に示すZ方向に維持される。このピペット針72の円形移動は、例えば、液体サンプルと、反応用キュベットへピペットにより移された試薬とを反応用キュベット31内で混合するために行われる。この混合の目的のため、このピペット針72の円形移動は、ピペット針72の先端を、反応用キュベット31内に収容されたサンプル−試薬混合物中に部分的に浸漬させた状態で行われる。
【0038】
図31は、コンベア11のキャビティ13に挿入された反応用キュベット31およびそこに配置されたピペット針72の横断面図を示している。
【0039】
図1,21,22,24,26,28に示すように、光度計21がコンベア11近傍に配置されていて、反応用キュベット31内に収容された液体サンプル−試薬混合物の光度測定を行うようになっている。この目的のため、コンベア11の駆動手段22によりコンベア11を段階的に回転させ、光度計21の光線の光路24に各反応用キュベット31が正確に位置決めされ、この光線が、光度計で測定されるべきサンプル−試薬混合物を収容したキュベットの下部の中心を通過するようにしている。この反応用キュベット31の、光度計21の光線との関係での位置決めが図21,22に示されている。
【0040】
このコンベア駆動手段は、コンベア11を段階的に回転させるための手段を含んでいる。このコンベア駆動手段は、例えば、コンベア11の歯車22を駆動させるベルト駆動(図示しない)および反応用キュベット31の夫々に収容されたサンプル−試薬混合物の正確な光度測定を行うのに適した正確な角位置にコンベア11を位置決めするための他の適当な手段を含むものである。
【0041】
図1に示す分析装置は更に、分析装置の操作を制御するため、並びに操作の制御および調整を要する分析装置の全ての部材の制御するための電気および電子部材、並びにハードウエアおよびソフトウエアを有する。例えば、自動ピペット装置71、光度計21、分析装置内に存在するサンプルおよび試薬の管理、分析結果および関連する情報の評価および表示の制御のための電気および電子部材、並びにハードウエアおよびソフトウエアである。
【0042】
(反応用キュベットの例)
図8は、本発明のキュベットホルダー41で好ましく使用されるタイプの反応用キュベット31の斜視図を示している。図9は、図8の反応用キュベット31の第1の側面図を示している。図10は、図8の反応用キュベット31の第2の側面図を示している。この反応用キュベット31は、プラスチック材料の射出成形により成形された一個構成の使い捨て部材であり、このプラスチック材料は反応用キュベット31に収容されたサンプル−試薬混合物の光度測定を行うのに適したものが使用される。反応用キュベット31がコンベア11のキャビティ内に挿入されたとき、反応用キュベット31は垂直状態に維持される。
【0043】
図8ないし10に示すように、反応用キュベット31は、その両端に存在する下端部33および上端部34の間に延びた直線状管体32を有する。この下端部33は底面35により閉塞されている。上端部34は開口部36で終わっている。好ましい実施例として、この上端部34は、その開口部36に隣接した2つの硬質の舌片37,38を有する。これら舌片37,38は管体32の第2の端部34から外側に向けて互いに反対方向に延びている。反応用キュベット31は長手方向の対称軸39を有する。
【0044】
(本発明のキュベットホルダーの例)
本発明のキュベットホルダーの例を図4ないし7を参照して以下説明する。
【0045】
図4はキュベットホルダー41(図2に示す)の斜視図を示している。図5は図4に示すキュベットホルダー41の平面図を示している。図6は図5のA−A面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーを示している。図7は図5のB−B面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーを示している。
【0046】
このキュベットホルダー41は図8〜10を参照して記載したタイプの複数のキュベット31をゆるく保持するべく構成され、かつ、大きさのものとなっている。
【0047】
このキュベットホルダー41はプラスチック材料の射出成形による作製された本体42を有する。この本体42は円弧状に延び、この円弧に沿って配列されたチャンバー43の列を画成している。これらチャンバー43は夫々、反応用キュベット31の上端部34を受理し、かつ、ゆるく保持するようになっている。
【0048】
好ましい実施例として、このキュベットホルダー41の本体42は、適当なプラスチック材料の射出成形により一体的に形成された一個構成の使い捨て部材である。この本体42は以下の部分からなる。すなわち、上方フレーム45;下方フレーム46;側壁47,48であって、その夫々が上方フレーム45の端部を下方フレーム46の一端と接続している;複数の中間壁部49であって、これは隣接するチャンバー43相互を分離するものである;可撓性舌片40,50であって、これらは上方フレーム45から各チャンバー43の内部に向って延び、チャンバー43の中心を貫通する垂直軸との関係で傾斜している。
【0049】
この中間壁部49の夫々は半径方向に配向している。すなわち、コンベア11の回転軸25を貫通する面に存在し、上方フレーム45を下方フレーム46と接続させる。
【0050】
上方フレーム45および下方フレーム46の形状および寸法は、キュベットホルダー41のチャンバー43の列がコンベア11のキャビティ13の列に密接して対応するようなものとなっている。
【0051】
キュベットホルダー41の各チャンバー43内の反応用キュベット31の上端部34のための空間は、各チャンバー43の両側壁である中間壁部49により、更に、このチャンバーの上方開口部に反応用キュベットを挿入させるがキュベットの上端がいったんチャンバー43内に導入されたときはこのキュベットの離脱を防止する可撓性舌片40,50により画定されている。
【0052】
キュベットホルダー41の各チャンバー43内において、反応用キュベット31の上端部34のための空間の大きさは、チャンバー43内、並びにチャンバー43のサイズにより規定される限界内で、反応用キュベットの上端部34がX方向、Y方向およびZ方向に変位できる十分な大きさに選択される。反応用キュベット31の上端部34、従って反応用キュベット31全体が、チャンバー43のサイズにより規定される角度の制限内でその長手方向軸39を中心として回転自在となっている。
【0053】
キュベットホルダー41の各チャンバー43には、上方開口部と、下方開口部とが備えられている。可撓性舌片40,50がこの上方開口部からチャンバー43の内部に向けて延出し、反応用キュベット31全体がチャンバー43の上方開口部を介して挿入されるようになっており、チャンバー43内の上記可撓性舌片40,50の可撓性によって、反応用キュベット31の上方開口部を介しての引き抜き防止を図っている。チャンバー43の下方開口部の断面は、それを介してキュベット31の本体が通過するのに十分な大きさになっているが、キュベット31の上部がこのチャンバー43の下方開口部を通って通過するのを防止している。硬質舌片37,38を含めてキュベット31の上部は従ってチャンバー43内に保持される。
【0054】
好ましい実施例として、キュベットホルダー41の本体42は更に、接続部44を有し、これによりキュベットホルダー41の本体42が図1に示す分析装置のコンベア11に接続されるようになっている。
【0055】
(本発明のキュベット列の例)
本発明のキュベット列の例を図11ないし14を参照して以下説明する。
【0056】
図11は、本発明に係わるキュベット列の斜視図を示すものであって、これはキュベットホルダー41(図4に示す)と、図8〜10に示すタイプの複数のキュベット31とを具備してなる。図12は図11に示すキュベット列の平面図を示している。図13は図12のC−C面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーおよびこのチャンバーにより保持されたキュベット31を示している。図14は図12のD−D面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーおよびこのチャンバーにより保持されたキュベット31を示している。
【0057】
特に図11から明らかなように、本発明によるキュベット列は、上述のタイプのキュベットホルダー41と、上述のタイプの複数の反応用キュベット31とを具備してなる。
【0058】
特に、図13から明らかなように、キュベットホルダー41のチャンバー43における反応用キュベット31の上端部34のための空間は、各チャンバー43の両側壁である中間壁部49により画定されると共に、更に、このチャンバー43の上方開口部に反応用キュベットを挿入させるがキュベットの上端がいったんチャンバー43内に導入されたときはこのキュベットの離脱を防止する可撓性舌片40,50により画定されている。
【0059】
コンベア11の各キャビティ13への反応用キュベット31の挿入の間において、キュベット31はキュベットホルダー41によりゆるく保持されているが、このキュベットホルダー41は、キャビティ13内における各キュベット31の位置に対し応力又は影響を何ら与えていない。各キュベット31の自重のみが、キュベットがキャビティ13内に挿入されたときに作用する唯一の応力である。キャビティ13内における反応用キュベット31の正確、かつ、規定された位置決めは、基本的にキャビティ13の底面56の内面のエッジ部58,59および反応用キュベット31とキャビティ13との形状および寸法の精密な合致により決定される。
【0060】
以上、本発明の好ましい具体例を特定の用語を用いて説明したが、これらの記述は説明を目的としたものに過ぎず、特許請求の範囲の趣旨又は範囲を逸脱することなく、種々、変更並びに変形も可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る分析装置を示す斜視図。
【図2】図1のコンベア11の斜視図。
【図3】図1のコンベア11の側面図。
【図4】本発明に係るキュベットホルダー41(図2に示す)の斜視図である。
【図5】図4に示すキュベットホルダー41の平面図。
【図6】図5のA−A面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーを示している。
【図7】図5のB−B面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーを示している。
【図8】本発明によるキュベットホルダー41と共に好ましく使用されるタイプの反応用キュベット31の斜視図。
【図9】図8の反応用キュベット31の第1の側面図。
【図10】図8の反応用キュベット31の第2の側面図。
【図11】キュベットホルダー41(図4に示す)と、図8〜10に示すタイプの複数のキュベット31とを具備してなるキュベット列を示す斜視図。
【図12】図11に示すキュベット列の平面図。
【図13】図12のC−C面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーおよびこのチャンバーにより保持された反応用キュベット31を示している。
【図14】図12のD−D面に沿う横断面図であって、キュベットホルダー41のチャンバーおよびこのチャンバーにより保持されたキュベット31を示している。
【図15】図2に示すコンベア11およびコンベア11のキャビティ13内に挿入されたキュベット31の列を示す平面図。
【図16】図15の一部26の拡大図であって、コンベア11のキャビティの1つに挿入されたキュベット31の1つを示す平面図。
【図17】図16のE−E面に沿う横断面図であって、コンベア11のキャビティの夫々に挿入されたキュベット31を示している。
【図18】図17の一部27の拡大図であって、キュベット31の底面と、コンベア11のキャビティの底面のエッジとの間の接触を示す図。
【図19】図16のF−F面に沿う横断面図であって、コンベア11のキャビティに挿入されたキュベット31を示している。
【図20】図19の一部28の拡大図であって、キュベット31の側面と、コンベア11のキャビティの側面との間の空隙を示す図。
【図21】コンベア11および光度計21(図1に示す)の平面図であって、特に、コンベア11との関係での光度計21の配置、並びに光度計の光源により放射された光路に置かれたキュベットを示す図。
【図22】図21のG−G面に沿う横断面図であって、光度計の光源により放射された光路に置かれたキュベットを示す図。
【図23】図1に示す分析装置から取り出した状態の試薬容器アッセンブリー61を示す斜視図。
【図24】分析装置から試薬容器アッセンブリー61を取り除いたときの図1に示す分析装置のコンベア部分を示す平面図。
【図25】図24のH−H面に沿う断面図。
【図26】分析装置に装着されたときの試薬容器アッセンブリー61の斜視図であって、カバーが取り除かれ、試薬容器も収容されていない状態を示す図。
【図27】図26に示す装置の一部の拡大斜視図。
【図28】図1に示す分析装置のコンベア部分、更に、特に試薬容器を装填する前の試薬容器アッセンブリー61を示す平面図。
【図29】単一の試薬容器を示す斜視図。
【図30】図28のI−I面に沿う断面図。
【図31】反応用キュベット31およびそこに配置されたピペット針72の横断面図。
【符号の説明】
【0062】
11 コンベア
12 第1のリング状本体
13 反応用キュベットを受理するためのキャビティ
14 第2のリング状本体
15 第2のリング状本体の壁部
16 開口部
17 第1のチャンバー(第2のリング状本体内)
18 試料管領域
19 試料管を受理するためのキャビティ
20 熱ブロック
21 光度計
22 コンベア駆動手段/歯車
23 洗浄ステーション
24 光度計の光線路
25 コンベア11の回転軸
26 図15の部分
27 図17の部分
28 図19の部分
29 断熱層
31 反応用キュベット
32 キュベット31の本体
33 キュベット31の下端部
34 キュベット31の上端部
35 キュベット31の底面
36 キュベット31の開口部
37 舌片
38 舌片
39 キュベット31の長手方向対称軸
40 舌片
41 キュベットホルダー
42 キュベットホルダーの本体
43 キュベットホルダーのチャンバー
44 接続部/案内リブ
45 上方フレーム
46 下方フレーム
47 側壁
48 側壁
49 中間壁部
50 舌片
51 バケット/中空体
52 バケットの底面
53 バケットの側壁
54 キャビティ/バケット内の第2のチャンバー
55 空隙
56 キャビティ13の底面
57 底面56の内面中の窪み
58 エッジ
59 エッジ
60 中間壁部
60a 中間壁部
61 試薬容器アッセンブリー
62 試薬容器
63 試薬容器
64 試薬容器
65 試薬容器を受理するためのチャンバー
66 試薬容器を受理するためのチャンバー
71 自動ピペット装置
72 ピペット針
73 ピペット針の移送装置のレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応用キュベット(31)を保持するためのキュベットホルダーであって;
プラスチック材料の射出成形により作られ、円弧状に延び、この円弧に沿って配列されたチャンバー(43)の列を画成する本体(42)を具備してなり;該チャンバー(43)のそれぞれが上方開口部と、下方開口部と、可撓性舌片(40,50)を有し、該可撓性舌片が前記上方開口部からチャンバー(43)の内部に向けて延出し、該可撓性舌片(40,50)の可撓性によって、前記反応用キュベット(31)全体が前記上方開口部を介して挿入可能となっていて、該チャンバー(43)内での可撓性舌片(40,50)の構成により前記キュベット(31)の前記上方開口部を介しての引き抜き防止が図られ、チャンバー(43)の下方開口部の断面が、それを介してキュベット(31)の本体の通過を許容する十分な大きさのものであるが、キュベット(31)の上部の該下方開口部を介しての通過を防止するものであり、それによって、該チャンバー(43)の夫々が反応用キュベット(31)の上端部(34)を受理し、かつ、ゆるく保持するようになっていることを特徴とするキュベットホルダー。
【請求項2】
前記本体(42)が、それをコンベアに接続させるための接続部(44)を有する請求項1記載のキュベットホルダー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキュベットホルダー(41)と;
上端部が該キュベットホルダー(41)によりゆるく保持されるようにした複数の反応用キュベット(31)と;
を具備してなるキュベット列。
【請求項4】
前記反応用キュベット(31)の夫々が、両端部を構成する下端部(33)および上端部(34)の間に延びた直線状管体(32)を有し、該下端部(33)が底面(35)により閉塞され、該上端部(34)が開口部(36)で終わっていて、該上端部(34)は、その開口部(36)に隣接した2つの硬質の舌片(37,38)を有しており、これら舌片(37,38)が前記管体(32)の上端部(34)から外側に向けて互いに反対方向に延びていることを特徴とする請求項3記載のキュベット列。
【請求項5】
(a)反応用キュベット(31)を円形路に沿って移送するための回転自在なコンベア(11)であって、このコンベアが円形列のキャビティ(13)を有し、各キャビティが単一の反応用キュベット(31)を受理するようにした第1のリング状本体(12)を有するものと;
(b)請求項3又は4に記載のキュベット列の少なくとも1つと;
を具備してなることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
前記キャビティ(13)の夫々の底面(56)が2つのエッジを有し、これらが、該キャビティに挿入された反応用キュベット(31)の底面と接触して支持するようになっており、前記エッジが互いに平行であって、略半径方向に配向されていることを特徴とする請求項5記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記第1のリング状本体(12)の内側から上方に延出する壁面(15)を有し、該壁面(15)が複数の開口部(16)を有し、開口部(16)の夫々が前記の少なくとも1つのキュベット列の一部であるキュベットホルダー(41)の対応する接続部(44)を受理するようにした、第2のリング状本体(14)を更に具備してなり;
前記の少なくとも1つのキュベット列のキュベットホルダー(41)が接続部(44)を有し、この接続部により前記キュベットホルダー(41)をコンベア(11)の第2のリング状本体(14)の前記壁面(15)の開口部(16)の1つと接続させ、それにより前記キュベットホルダー(41)により保持された反応用キュベット(31)をコンベア(11)の第1のリング状本体(12)の対応するキャビティ(13)内に挿入させるようにしたこと;
を特徴とする請求項5記載の自動分析装置。
【請求項8】
(a)反応用キュベット(31)内に収容された液体サンプル−試薬混合物の光度測定を行うため前記コンベア(11)近傍に配置された光度計(21)と;
(b)該コンベアを段階的に回動させるためのコンベア駆動装置(22)と;
を更に具備してなることを特徴とする請求項5記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2007−86070(P2007−86070A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−253006(P2006−253006)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】