説明

キラルイリジウム錯体を使用するアルケンの不斉水素化

本発明は、触媒としてのキラルIr錯体の存在下での、少なくとも1つのこのような結合を有する化合物、例えば、イソプレノイド、非環式セスキテルペン、トコモノエノール、トコジエノール、トコトリエノールまたはそれらの誘導体における炭素−炭素二重結合の(立体選択的)水素化、ならびにこのようなトコトリエノールまたはそれらの誘導体を含有する植物油の部分/抽出物の(立体選択的)水素化に関し、これによって、好ましくは1つの立体異性体が過剰に製造される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、触媒としてのキラルIr錯体の存在下での、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する式IIの化合物の(立体選択的)水素化、特に、イソプレノイド、非環式セスキテルペン、トコモノエノール、トコジエノール、トコトリエノールまたはそれらの任意の誘導体の(立体選択的)水素化、ならびに、このようなトコトリエノールまたはその誘導体を含有する植物油の部分/抽出物の(立体選択的)水素化に関し、これによって、好ましくは1つの立体異性体が過剰に製造される。
【0002】
先行技術において、近位に官能基を有さない三置換オレフィンの不斉水素化の一般法は存在せず、これは、オレフィン二重結合の炭素原子が、官能基から、2以上のCH基離れているオレフィンは、今までのところ、立体選択的に水素化され得なかったことを意味する。「官能基」は、芳香族基またはヘテロ原子(O、N、S、P等)を含む基からなる基と理解される。光学活性トコフェロール(ビタミンE)の合成に有用である対応の化合物の例は、トコトリエノール、不飽和イソプレノイド、例えば、ゲラニルアセトン、またはファルネセン酸アルキルエステルである。したがって、このような立体選択的水素化のための触媒を提供する必要性がある。
【0003】
驚くべきことに、キラルIr錯体、特に、P−N配位系を含むものが、その目的に好適であることが判った。このような触媒は、今まで、芳香族化合物の立体選択的水素化についてのみ公知であった(A.Pfaltz et al.,Adv.Synth.Catal.2003,345(1+2),33−43;F.Menges,A.Pfaltz,Adv.Synth.Catal.2002,344(1),40−44;J.Blankenstein,A.Pfaltz,Angew.Chem.Int.Ed.2001,40(23),4445−4447;A.Pfaltz,Chimia 2004,58(1+2),49−50を参照のこと)。
【0004】
したがって、本発明の1局面は、
式I
【化1】


[式中、アスタリスクで標識された部分は、不斉中心であり、そして
は、直鎖C1−3−アルキル、C5−7−シクロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル(アルキル=C1−4−アルキル)、オキソアルキル(アルキル=C1−4−アルキル)、アルキルカルボニル(アルキル=C1−4−アルキル)、アルコキシカルボニル(アルコキシ=直鎖C1−4−アルコキシ)、ならびに式
【化2】


(式中、Rは、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基であり、そしてRおよびRは、互いに独立して、水素またはメチルであり、そしてnは、1〜10、好ましくは1〜3の整数である)
の基からなる群から選択される]
の少なくとも1つの化合物の製造方法であって、
触媒としてのキラルIr錯体の存在下で、
式II
【化3】


[式中、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合が存在し、そして点線は、このような(条件的)炭素−炭素二重結合の可能な位置を示し;そしてRおよびnは上記の通りである]
の化合物を水素化する工程を含む、方法に関する。
【0005】
好ましくは、このような方法において、化合物Iの1つの立体異性体が過剰に製造される。プロキラル中心を1つだけ有する式IIの化合物が使用される場合、好ましくは、1つの鏡像体が過剰に製造される。前記水素化の立体選択性は、前記触媒の適切な選択によって、制御され得る。
【0006】
出発材料
式IIの化合物の例は、図4に示されるものである:
IIa1=(E)−ジヒドロゲラニルアセトン、IIa2=(Z)−ジヒドロネリルアセトン、IIa3=(E)−ゲラニルアセトン、IIa4=(Z)−ネリルアセトン、IIb=(オール−E)−フェルネソール;IIc=(オール−E)−ファルネセン酸エチルエステル、(S)−XII=(2S,3’E,7’E)−トコトリエノールおよびその誘導体、(R)−XII=(2R,3’E,7’E)−トコトリエノールおよびその誘導体、(S)−XIII=(2S,3’E,7’E)−トコモノ−およびジエノール(ここで、点線は、1または2の二重結合の可能な位置を示す)、(R)−XIII=(2R,3’E,7’E)−トコモノ−および−ジエノール(ここで、点線は、1または2の二重結合の可能な位置を示す)。
【0007】
【表1】

【0008】
好ましくは、式IIの化合物は、イソプレノイド、非環式セスキテルペン、トコモノエノール、トコジエノールまたはトコトリエノールである。
【0009】
イソプレノイドは、オリゴ(イソプレン)またはポリ(イソプレン)、ならびに少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含むそれらの誘導体である。好ましくは、該炭素−炭素二重結合は、E立体配置を有する。
【0010】
トコモノエノール、トコジエノールおよび/またはトコトリエノールは、式XIII
【化4】


[式中、点線の結合は任意であり、そして少なくとも1つの点線の結合が存在し、そしてRは、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基であり、そしてRおよびRは、互いに独立して、水素またはメチルである]
のものである。
【0011】
したがって、化合物XIIIは、(3’E)−トコモノエノール、(7’Ε)−トコモノエノール、(11’)−トコモノエノール、(3’E,7’E)−トコジエノール、(3’Ε,11’)−トコジエノール、(7’E,11’)トコジエノール、ならびに(3’Ε,7’E)−トコトリエノールを包含する。
【0012】
式I、IIおよびXIIIにおける置換基Rに関して:
は、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基である。該ヒドロキシル基は、エーテル、エステル、またはアセタールとして保護され得る。
【0013】
エーテルおよびアセタールの例は、メチルエーテル、メトキシメチルエーテル、メトキシエチルエーテル、およびテトラヒドロピラニルエーテル、ならびにRがエトキシエチルまたはメトキシエトキシエチルである化合物である。
【0014】
エステルの例は、酢酸エステルならびに他の炭酸とのエステル、例えば、ギ酸エステル、コハク酸モノエステル(または誘導体)、プロピオン酸エステル、安息香酸エステルおよびパルミチン酸エステルである。
【0015】
好ましくは、Rは保護されたヒドロキシル基であり、これによって、該ヒドロキシル基は、エーテルまたはエステルとして、より好ましくはエステルとして保護され、特に好ましくは、Rはアセチルオキシである。
【0016】
別の局面において、本発明はまた、植物油の、好ましくはパーム油の、水素化部分または抽出物の製造法であって、触媒としてのキラルIr錯体の存在下で、少なくともトコトリエノールまたはその誘導体を含有する該植物油の部分または抽出物を水素化する工程を含む方法に関する。それは、本発明において、このような「少なくともトコトリエノールまたはその誘導体を含有する植物油の部分または抽出物」はまた、用語「少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する式IIの化合物」によって包含されることを意味する。
【0017】
表現「植物油の部分」は、植物油のあらゆる未処理または処理部分、あらゆる濃縮部分、ならびに全植物油そのものを含む。「処理」は、蒸留または抽出あるいは熱処理等の化学的処理を意味する。
【0018】
好ましくは、前記食用植物油は、該食用植物油中に元々含有されるトコトリエノールが富化されている部分(「濃縮物」)が得られるような様式で処理される。この食用植物油の部分は、それ自体、食べられないかもしれない。
【0019】
植物油の例は、当業者に公知の任意の食用植物油である。特に好ましいのは、少量のα−およびγ−トコフェロールに加えて、多量のトコトリエノールを含有するパーム油である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、トコトリエノールまたはその誘導体は、トコフェロール(誘導体)、好ましくは、高度に立体異性的に富化された(オール−R)−トコフェロール(誘導体)へ水素化される。
【0021】
触媒
本発明の方法のために好適な触媒は、キラル有機配位子とのIr錯体、特に、A.PfaltzらによってAdv.Synth.Catal.2003,345(1+2),33−43において;F.MengesおよびA.PfaltzによってAdv.Synth.Catal.2002,344(1),40−44において;J.BlankensteinおよびA.PfaltzによってAngew.Chem.Int.Ed.2001,40(23),4445−4447において、A.PfaltzによってChimia 2004,58(1+2),49−50において、ならびに米国特許第6,632,954号明細書において開示されるものである。
【0022】
好適な触媒は、特に、式III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIまたはXV、あるいはそれらの鏡像異性体
【化5】


[式中、R、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21およびX22は、互いに独立して、水素、C1−4−アルキル、C5−7−シクロアルキル、フェニル(必要に応じて、1〜3のC1−4−アルキル、C1−4−アルコキシおよび/またはC1−4−ペルフルオロアルキル基で置換されている)、ベンジル、1−ナフチル、またはフェロセニルであり、
アニオンYは低配位アニオンであり、nは1または2であり、そして
式中、「o−Tol」はオルト−トリルを意味し、「Ph」はフェニルを意味し、「TBDMS」はtert−ブチル−ジメチルシリルを意味し、「p−Tol」はパラ−トリルを意味し、そして「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートを意味する]
のものである。
【0023】
好適な触媒はまた、前記シクロオクタジエン配位子がオレフィン(例えば、エテン、ノルボルナジエン)で置換されている、対応のIr錯体およびそれらの鏡像体である。
【0024】
本発明の方法に好適な好ましいキラルIr錯体は、式III〜XIのIr錯体であり、式中、
R、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21およびX22は、互いに独立して、水素、C1−4−アルキル、C5−7−シクロアルキル、フェニル(必要に応じて、1〜3のC1−4−アルキル、C1−4−アルコキシおよび/またはC1−4−ペルフルオロアルキル基で置換されている)、ベンジル、1−ナフチル、またはフェロセニルであり、そして
アニオンYは弱い配位アニオン、例えば、PF、SbF、BAr、BF、FC−SO、ClO、テトラ(ペルフルオロアリール)ボレートまたはテトラ(ペルフルオロアルキルオキシ)アルミネートであり、ここで、該ペルフルオロアリールは、1〜5のペルフルオロ−C1−4−アルキル基で置換されたフェニルであり、そして該フルオロアルキルオキシは、1〜4の炭素原子を有する。
【0025】
特に好ましいのは、式III〜XIおよびXVのIr錯体であり、式中、
R、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21およびX22は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、o−トリル、m−トリル、4−メトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、1−ナフチル、またはフェロセニルであり、そして
アニオンYは、テトラ(ペルフルオロアリール)ボレートまたはテトラ(ペルフルオロアルキルオキシ)アルミネートであり、ここで、該ペルフルオロアリールは、1〜3のペルフルオロ−C1−4−アルキル基で置換されたフェニルであり、そして該ペルフルオロアルキルオキシは、1〜4の炭素原子を有する。
【0026】
本発明の方法に好適なより好ましいキラルIr錯体は、式III〜XI、およびXVのIr錯体であり、式中、
R、X、X14およびX20、X21、およびX22は、互いに独立して、水素、イソ−プロピル、tert−ブチル、フェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニルまたはフェロセニルであり、
およびX、ならびにXおよびX、ならびにXおよびX10、ならびにX15およびX16は、互いに独立して、フェニル、o−トリル、シクロヘキシルまたはイソ−プロピルであり、好ましくは、XおよびX、ならびにXおよびX、またはXおよびX10、またはX15およびX16は、同一であり、
およびX、ならびにX11およびX12、ならびにX17およびX18は、互いに独立して、メチル、エチル、n−ブチル、イソ−ブチルまたはベンジルであり、好ましくは、XおよびX、X11およびX12、X17およびX18は、同一であり、
は水素またはメチルであり、
13およびX19は、互いに独立して、フェニル、シクロヘキシル、4−メトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、ベンジル、m−トリルまたは1−ナフチルであり、
Yは、テトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート[B(3,5−C(CF、またはテトラ(ペルフルオロtert−ブチルオキシ)アルミネート[Al(OC(CFであり、そしてnは、前記に定義される通りである。
【0027】
本発明の方法について好適ななおより好ましいキラルIr錯体は、式III〜XI、およびXVのIr錯体であり、式中、
Rは、水素、イソ−プロピルまたはtert−ブチルであり、
およびXは、互いに独立して、フェニル、o−トリル、シクロヘキシル、またはイソ−プロピルであり、好ましくは、XおよびXは同一であり、
およびXは、互いに独立して、ベンジルまたはイソ−ブチルであり、好ましくは、XおよびXは同一であり、
は、フェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニルまたはフェロセニルであり、
は、水素またはメチルであり、
およびXは、互いに独立して、フェニルまたはシクロヘキシルであり、好ましくは、XおよびXは同一であり、
およびX10は、互いに独立して、フェニルまたはo−トリルであり、好ましくは、XおよびX10は同一であり、
11およびX12は、互いに独立して、メチル、エチルまたはn−ブチルであり、好ましくは、X11およびX12は同一であり、
13は、フェニル、シクロヘキシル、4−メトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、ベンジル、m−トリル、または1−ナフチルであり、
14は、イソ−プロピルまたはtert−ブチルであり、
15およびX16は、互いに独立して、フェニルまたはo−トリルであり、好ましくは、X15およびX16は同一であり、
17およびX18は、互いに独立して、メチルまたはn−ブチルであり、好ましくは、X17およびX18は同一であり、
19は、フェニルまたは1−ナフチルであり、
20は、イソ−プロピルまたはtert−ブチルであり、
21およびX22は であり、
Yは、テトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート[B(3,5−C(CF、またはテトラ(ペルフルオロtert−ブチルオキシ)アルミネート[Al(OC(CFであり、そしてnは、前記に定義される通りである。
【0028】
本発明の方法について好適な最も好ましいキラルIr錯体は、図1〜3に示される式III〜XIのIr錯体である。これによって、以下の省略が、式において使用される:
「Cy」=シクロヘキシル、「Bn」=ベンジル、「i−Bu」=イソ−ブチル、「n−Bu」=n−ブチル、「t−Bu」=tert−ブチル、「Fc」=フェロセニル、「o−Tol」=o−トリル、「p−Tol」=p−トリル、「i−Pr」=イソ−プロピル、「Me」=メチル、「Ph」=フェニル、「TBDMS」=tert−ブチル−ジメチルシリル、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート[B(3,5−C(CF
【0029】
図1は、式III(A1、A2、A4、A5、G1)およびIV(C1、C2、C5、C6)の好ましいIr錯体を示す。
【0030】
図2は、式VII(E1およびE3〜E14)の好ましいIr錯体を示す。
【0031】
図3は、式V(B1)、VI(D1)、VIII(E2、E15)、IX(F1)、X(C4)、XI(B2)およびXV(H1)のIr錯体を示す。
【0032】
反応条件
本発明の水素化方法において、触媒の量は、好都合には、式IIの化合物の量に基づいて、約0.05〜約5モル%、好ましくは約0.09〜約2.5モル%、より好ましくは約0.1〜約2.0モル%である。
【0033】
ハロゲン化脂肪族炭化水素の好ましい例は、モノ−またはポリハロゲン化された、直鎖、分枝鎖または環式C〜C15−アルカンである。特に好ましい例は、モノ−またはポリ塩化あるいは臭化された、直鎖、分枝鎖または環式C〜C15−アルカンである。より好ましいのは、モノ−またはポリ塩化された、直鎖、分枝鎖または環式C〜C15−アルカンである。最も好ましいのは、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム、および臭化メチレンである。さらに、トルエン、ベンゼン、およびクロロベンゼンが、考えられる。
【0034】
反応は、溶媒フリー条件下で行われても、あるいは1またはそれ以上の上述の溶媒の存在下で行われてもよい。溶液中の反応物質の濃度は重要ではない。
【0035】
反応は、好都合には、約1〜約100barの水素の絶対圧力で、好ましくは約20〜約75barの水素の絶対圧力で行われる。反応温度は、好都合には、約0〜約100℃、好ましくは約10〜約40℃である。
【0036】
反応物質および溶媒の添加の順番は重要でなない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の第1の好ましい実施形態において、(Z)−ネリルアセトンまたは(E)−ゲラニルアセトンあるいはそれらの任意の混合物が、触媒A2(図1を参照)、D1(図3参照)、B1(図3参照)およびE1(図2参照)からなる群から選択されるキラルIr錯体の存在下で、好ましくは、触媒D1、B1およびE1から選択されるキラルIr錯体の存在下で、より好ましくは、触媒B1およびE1からなる群から選択されるキラルIr錯体の存在下で、水素化され、鏡像体(6S)−6,10−ジメチルウンデカン−2−オンおよび(6R)−6,10−ジメチルウンデカン−2−オンの混合物が形成される。好ましくは、該水素化は、1つの鏡像体が、好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも90%の、鏡像体過剰率で、前記混合物中に存在する様式で、立体選択的である。
【0038】
本発明の第2の好ましい実施形態において、(E)−ファネソールが、キラルIr錯体E1(図2参照)またはB1(図3参照)の存在下で水素化され、2つの鏡像体対(3R,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールおよび(3S,7R)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールならびに(3R,7R)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールおよび(3S,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールの混合物が形成される。これによって、好ましくは、前記立体異性体(3S,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールが、他方の立体異性体と比較して、過剰に、好ましくは少なくとも70%の量で、より好ましくは少なくとも75%の量で、前記水素化後に得られる混合物中に存在する。
【0039】
本発明の第3の好ましい実施形態において、(E)−ファルネセン酸エチルエステルが、キラルIr錯体B1(図3参照)またはE1(図2参照)の存在下で水素化され、2つの鏡像体対(3R,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルおよび(3S,7R)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルならびに(3R,7R)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルおよび(3S,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルの混合物が形成される。これによって、該水素化は、前記立体異性体(3S,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルが、他方の立体異性体と比較して、過剰に、好ましくは少なくとも55%の量で、より好ましくは少なくとも70%の量で製造される様式で、好ましくは立体選択的である。
【0040】
本発明の第4の好ましい実施形態において、(2R,3’E,7’E)−α−トコトリエニルアセテートが、キラルIr錯体E1(図2参照)、E2(図3参照)、E7(図2参照)、E15(図3参照)の存在下で水素化され、4つのジアステレオマー(2R,4’S,8’R)−α−トコフェリルアセテート、(2R,4’R,8’S)−α−トコフェリルアセテート、(2R,4’R,8’R)−α−トコフェリルアセテートおよび(2R,4’S,8’S)−α−トコフェリルアセテートの混合物が形成され、ここで、1つのジアステレオマーが過剰に製造される。
【0041】
キラルIr錯体E2またはE15(図3参照)が触媒として使用される場合、前記立体異性体(2R,4’R,8’R)−α−トコフェリルアセテートが、他のジアステレオマーと比較して、過剰に、好ましくは少なくとも55%の量で、より好ましくは少なくとも90%の量で製造される。
【0042】
本発明の第5の好ましい実施形態において、(2S,3’E,7’E)−α−トコトリエニルアセテートが、触媒としての、E3、E4、E6、E8、E9、E10、E11、E12、E13、E14(全て図2)からなる群から選択されるキラルIr錯体の存在下で、好ましくは、触媒としてのキラルIr錯体E13またはE14の存在下で、水素化され、4つのジアステレオマー(2S,4’S,8’R)−α−トコフェリルアセテート、(2S,4’R,8’S)−α−トコフェリルアセテート、(2S,4’R,8’R)−α−トコフェリルアセテートおよび(2S,4’S,8’S)−α−トコフェリルアセテートの混合物が形成され、ここで、1つのジアステレオマーが過剰に製造される。好ましくは、前記ジアステレオマー(2S,4’S,8’S)−α−トコフェリルアセテートが、他のジアステレオマーと比較して、過剰に、好ましくは少なくとも65%の量で、より好ましくは少なくとも85%の量で製造される。
【0043】
本発明の第6の好ましい実施形態において、(2R,3’E,7’E)−γ−トコトリエニルアセテートが、触媒としてのキラルIr錯体C1(図1参照)、D1(図3参照)、E1(図2参照)またはF1(図3参照)の存在下で水素化され、4つのジアステレオマー(2R,4’S,8’R)−γ−トコフェリルアセテート、(2R,4’R,8’S)−γ−トコフェリルアセテート、(2R,4’R,8’R)−γ−トコフェリルアセテートおよび(2R,4’S,8’S)−γ−トコフェリルアセテートの混合物が形成され、ここで、1つのジアステレオマーが過剰に製造される。前記キラルIr錯体F1が触媒として使用される場合、前記ジアステレオマー(2R,4’R,8’R)−α−トコフェリルアセテートが、他のジアステレオマーと比較して、過剰に、好ましくは少なくとも45%の量で製造される。
【0044】
本発明における使用のための格別な触媒は、式E1〜E15によって示されるキラル錯体である。
【0045】
最後に、本発明はまた、イソプレノイド、非環式セスキテルペン、トコモノエノール、トコジエノール、トコトリエノールからなる群から選択される化合物の(立体選択的)水素化のための触媒としての、キラルIr錯体、特に、上述の式III〜XIの1つの使用に関する。
【0046】
【表2】

【0047】
本発明を下記の実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0048】
下記の略語を使用する:
「TLC」=薄層クロマトグラフィー;「GC」=ガスクロマトグラフィー;「GC−MS」=ガスクロマトグラフィー−質量分析;「HPLC」=高圧/高速液体クロマトグラフィー。
【0049】
13C/1H−NMRパートにおけるアスタリスクは、サインが炭素/プロトンへ明確に帰属され得なかったことを意味し、そしてアスタリスクで標識されたものは、交換可能である。
【0050】
S鏡像体に関する鏡像体過剰率は、以下のように算出される
[(S鏡像体の量−R鏡像体の量)/(S鏡像体の量+R鏡像体の量)]×100。
【0051】
R鏡像体に関する鏡像体過剰率は、以下のように算出される
[(R鏡像体の量−S鏡像体の量)/(R鏡像体の量+S鏡像体の量)]×100。
【0052】
一般的な記述
全ての出発材料は、DSM Nutritional Products,Lalden/Sisseln,Switzerlandによって製造された:(E)−ゲラニルアセトン、99.2%(GC);(Z)−ネリルアセトン、97.6%(GC);(E)−ジヒドロゲラニルアセトン、99.2%(GC);(Z)−ジヒドロネリルアセトン、98.9%(GC);(オール−E)−ファルネソール、97.7%(GC);(2E,6E)−ファルネセン酸エチルエステル、99.0%(GC);(2E,6Z)−ファルネセン酸エチルエステル、78.2%(GC)、14%の(6E)異性体および17.6%の別の未知の異性体を含む(GC−MS);(R,E,E)−アルファ−トコトリエノールアセテート、約99%;(S,E,E)−アルファ−トコトリエニルアセテート、約99%;(R,E,E)−ガンマ−トコトリエニルアセテート(全合成により製造)、99.7%(HPLC);(S,E,E)−ガンマ−トコトリエニルアセテート(全合成により製造)、99.8%(HPLC)。リファレンス化合物:(オール−rac)−アルファ−トコフェロール、99.6%(GC);(オール−rac)−アルファ−トコフェリルアセテート、97.7%(GC);(オール−rac)−アルファ−トコフェリルメチルエーテル、97.8%(GC);(オール−rac)−ガンマ−トコフェロール、96.8%(GC);(R,R,R)−ガンマ−トコフェリルアセテート、約99%(GC);(オール−rac)−ガンマ−トコフェリルメチルエーテル、97.9%(GC)。
【0053】
特に述べられない場合、GC分析は、CP−Sil−88(Chrompack、オランダ)50m×0.25mmカラムにおいてAgilent 6890 GC FIDを用いて行った。キャリアガスは、90kPaを有する水素であった。サンプルを、1/30の分割比(split ratio)でジクロロメタン中の0.3%溶液として注入した。インジェクターを250℃に保ち、一方、オーブン温度を110〜200℃から0.5℃/分でプログラムし、ディテクターは250℃であった。
【0054】
完全に変換されると、立体異性体の分布を測定するために、該水素化生成物の誘導体を作製した。
【0055】
例えば、水素化ケトンまたはアルデヒドを、トリメチルシリルトリフレート[Si(CH(OSOCF)]の存在下でL−またはD−トリメチルシリルジイソプロピルタートレート(diisopropyltartrat)(簡単には「L−3」、または「D−3」)と反応させ、それぞれ、ジアステレオマーケタールおよびアセタールを形成した。アキラルガスクロマトグラフィーの助けを借りて、前記ジアステレオマーの比率を測定することができ、そしてしたがって立体選択的水素化の選択性を間接的に測定することができた(また、A.Knierzinger,W.Walther,B.Weber,T.Netscher,Chimia 1989,43,163−164;A.Knierzinger,W.Walther,B.Weber,R.K.Mueller,T.Netscher,Helvetica Chimica Acta 1990,73,1087−1107を参照のこと)。
【0056】
作製したトコフェリルアセテートのジアステレオマーの比率の測定のために、これらを、先ず、LiAlHで対応のトコフェロールへ還元し、次いで、硫酸ジメチルと反応させ、トコフェリルメチルエーテルを形成させた。4つのジアステレオマーが得られた。それらの比率を、アキラルガスクロマトグラフィーによって測定した(Walther,T.Netscher,Chirality 1996,8,397−401を参照のこと)。
【0057】
トコフェロール(メチルエーテル誘導体)の立体異性体組成をまた、2−(R)−異性体の場合、キラルHPLC(Chiracel OD、250×4.6mm、溶媒n−ヘキサン、220nmで検出)によって確認した。
【0058】
実施例を「室温」で行った場合、これは、約20℃〜約30℃の温度で反応を行ったことを示す。
【0059】
手順1
オートクレーブに、0.25mmolの前記基質(substrate)、1mol−%のIr錯体、および1.25mlの無水ジクロロメタンを配置した。オートクレーブを閉じ、そして水素の50barの圧力を加えた。撹拌下で、反応溶液を室温で2時間維持した。その後、圧力を除き、そして溶媒を除去した。変換を測定するために、粗生成物を、さらに精製することなしに、GCにより分析した。反応が完了すると、より詳細に下記においてさらにされるように、例えばケトンをそれぞれ(+)−L−ジイソプロピルタートレートアセタールおよび(−)−D−ジイソプロピルタートレートアセタールへ変換することによって、立体異性体組成の測定を可能にする誘導体へ該生成物を変換した。
【0060】
実施例1〜25:6,10−ジメチルウンデカン−2−オンの製造
水素化を手順1に従って行い、これによって、0.25mmolの基質(substrate)および1モル%のIr触媒を使用した。以下の基質を使用した:(E)−ジヒドロゲラニルアセトン[=(E)−6,10−ジメチルウンデク−5−エン−2−オン](49.1mg)、(Z)−ジヒドロネリルアセトン[=(Z)−6,10−ジメチルウンデク−5−エン−2−オン](49.1mg)、(E)−ゲラニルアセトン[=(E)−6,10−ジメチルウンデカ−5,9−ジエン−2−オン](48.6mg)または(Z)−ネリルアセトン[=(Z)−6,10−ジメチルウンデカ−5,9−ジエン−2−オン](48.6mg)。
【0061】
前記生成物のH−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.85(d,J=6.6Hz,3H,−CH(CH)−),0.86(d,J=6.6Hz,6H,−CH(CH),1.10(m,4H,2CH),1.26(m,4H,2CH),1.39(m,1H,CH),1.54(m,3H,CH,CH),2.13(s,3H,−C(O)−CH),2.40(t,3J=7.6Hz,2 H,−C(O)−CH−).−GC:Optima 5−Amin,100kPa He,温度プログラム:100℃(3分),2℃/分,155℃(0),20°C/分,250℃(5分);溶媒:n−ヘプタン;t[Ia]=27.3分,t[IIa1]=28.1分,t[IIa2]=27.0分,t[IIa3]=30.3分,t[IIa4]=29.2分。
【0062】
下記の表1〜6に結果を示す:
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
【表7】

【0068】
【表8】

【0069】
実施例26〜33:3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールの製造
水素化を手順1に従って行い、ここで、55.6mg(0.25mmol)の(2E,6E)−ファルネソール[=(2E,6E)−3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエン−1−オール]および1mol−%のIr触媒を使用した。
【0070】
前記生成物のH−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.84(d,J=6.8Hz,3H,CH−CH),0.86(d,J=6.8Hz,6H,CH(CH),0.89(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),1.0−1.42(m,14H,6CH,2CH),1.55(m,3H,CH,CH),3.68(m,2H,CH−OH).−GC:Restek Rtx−1701,60kPa He,温度プログラム:50℃(0分),10℃/分,250℃(10分);溶媒:n−ヘプタン;t[3,7,11−トリメチルドデカン−1−オール]=18.5分,t[IIb]=19.8分。
【0071】
下記の表7に結果を示す:
【0072】
【表9】

【0073】
用語「ee(3S)」は、次のように、C−7についての立体化学情報を省略する、C−3での鏡像体純度の程度を定量するために算出される値を意味する:ee(3S)=[(3S7R+3S7S)−(3R7S+3R7R)]÷[4つ全ての立体異性体の合計(3S7R+3S7S+3R7S+3R7R)]。
【0074】
用語「ee(7S)」は、次のように、C−3についての立体化学情報を省略する、C−7での鏡像体純度の程度を定量するために算出される値を意味する:ee(7S)=[(3S7S+3R7S)−(3R7R+3S7R)]÷[4つ全ての立体異性体の合計(3S7S+3R7S+3R7R+3S7R)]。
【0075】
実施例34〜39:3,7,11−トリメチル−ドデカン酸エチルエステルの製造
水素化を手順1に従って行い、ここで、66.1mg(0.25mmol)の(2E,6E)−ファルネセン酸エチルエステル[=(2E,6E)−3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエン酸エチルエステル]および1mol−%のIr錯体を使用した。
【0076】
H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.84(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.86(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),0.93(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),1.0−1.4(m,13H,6CH,CH(CH),1.25(t,J=7.0Hz,3H,O−CH−CH),1.52(m,1H,CΗ),1.94(m,1H,CH),2.07(ddt,J=14.7Hz,J=8.1Hz,J=1.5Hz,1H,CH−COOEt),2.28(ddt,J=14.7Hz,J=6.1Hz,J=1.8Hz,1H,CH−COOEt),4.13(q,J=7.0Hz,2H,O−CH−CH).−GC:Restek Rtx−1701,60kPa He,温度プログラム:50℃(0分),10℃/分,250℃(10分);溶媒:n−ヘプタン;t[Ic]=19.1分,t[IIc]=21.0分。
【0077】
下記の表10に結果を示す:
【0078】
【表10】

【0079】
用語「ee C−3(S)」は、次のように、C−7についての立体化学情報を省略する、C−3での鏡像体純度の程度を定量するために算出される値を意味する:ee C−3(S)=[(3S7R+3S7S)−(3R7S+3R7R)]÷[4つ全ての立体異性体の合計(3S7R+3S7S+3R7S+3R7R)]。
【0080】
用語「ee C−3(R)」は、次のように、C−7についての立体化学情報を省略する、C−3での鏡像体純度の程度を定量するために算出される値を意味する:ee C−3(R)=[(3R7R+3R7S)−(3S7S+3S7R)]÷[4つ全ての立体異性体の合計(3R7R+3R7S+3S7S+3S7R)]。
【0081】
用語「ee C−7(S)」は、次のように、C−3についての立体化学情報を省略する、C−7での鏡像体純度の程度を定量するために算出される値を意味する:ee C−7(S)=[(3S7S+3R7S)−(3R7R+3S7R)]÷[4つ全ての立体異性体の合計(3S7S+3R7S+3R7R+3S7R)]。
【0082】
用語「ee C−7(R)」は、次のように、C−3についての立体化学情報を省略する、C−7での鏡像体純度の程度を定量するために算出される値を意味する:ee C−7(R)=[(3S7R+3R7R)−(3R7S+3S7S)]÷[4つ全ての立体異性体の合計(3S7R+3R7R+3R7S+3S7S)]。
【0083】
手順2:3,7,11−トリメチル−ドデカン酸エチルエステル等のエステルを、立体異性体組成の測定用の誘導体へ変換する
0.25mmolの前記単離したエステルを、2mlの無水テトラヒドロフランに溶解し、そして66mg(1.75mmol、7mol当量)のLiAlHと混合した。灰色懸濁液(grey suspension)を室温で1時間撹拌した。その後、5mlの蒸留水を氷冷(ice cooling)下で添加し、そして撹拌をさらに10分間継続した。得られた相を分離し、そして水相をジエチルエーテルで2回抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥し、そして溶媒を除去した。単離されたアルコール、例えば、3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールを、さらに精製することなく、対応のアルデヒド、例えば、3,7,11−トリメチル−ドデカナールへとさらに反応させた。
【0084】
3,7,11−トリメチル−ドデカノールへの3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールの酸化
前記単離されたアルコールを、Ar雰囲気下で、1mlの無水ジクロロメタンに溶解した。60mgのピリジニウムクロロクロメートを添加した。褐色懸濁液を、室温で、ターンオーバー(turn−over)が完了するまで(約3時間)撹拌した。次いで、該懸濁液を、3mlのジメチルエーテルで希釈し、そして濾過した。溶媒を除去し、そして粗生成物を、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィーによって精製した(溶媒:ジエチルエーテル)。溶媒を除去した。薄層クロマトグラフィー:出発材料:R−値=0.22;生成物:R−値=0.67(SiO、n−ヘキサン/酢酸エチル(9:1);塩基性KMnO溶液で現像)。対応のアセタールの作製のために、前記粗アルデヒドを直ぐにさらに反応させた。
【0085】
H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.84(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.86(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),0.97(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),1.02−1.42(m,13H,6CH,CH),1.52(m,1H,CH),1.96(m,1H,CH),2.14(ddd,J=14.9Hz,J=5.8Hz,J=2.0Hz,1H,−CH−CHO),2.35(ddd,J=14.9Hz,J=8.1Hz,J=2.0Hz,1H,−CH−CHO),9.75(t,J=2.3Hz,1H,CHO)。
【0086】
ジ−(2−メチル−エチル)−(4R,5R)−2−[4,8−ジメチルノニル]−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4,5−ジカルボキシレートへの6,10−ジメチルウンデカン−2−オンのアセタール化
0.25mmolの(6R)−6,10−ジメチルウンデカン−2−オンおよび(6S)−6,10−ジメチルウンデカン−2−オンそれぞれへ、Ar雰囲気下で、1mlの無水ジクロロメタン中、142mg(0.38mmol、1.5mol当量)の(2R,6R)−ビスシリルエーテル(L−3)を添加した。反応混合物を−78℃へ冷却した。この温度で、20μL(0.1mmol、0.4mol当量)のトリメチルシリルトリフレートを添加した。15分後、冷却浴(cooling bath)を除去し、そして反応混合物を、室温で12時間撹拌した。その後、0.14ml(1.0mmol)のトリエチルアミンを添加し、そして撹拌をさらに10分間継続した。次いで、溶媒を高真空において除去した。残渣をジエチルエーテルに溶解し、シリカゲルで濾過し、そして溶媒を除去した。ジアステレオマー過剰率の測定のために、粗生成物を、さらに精製することなく、GCによって分析した。
【0087】
TLC:R値−0.27(SiO、n−ヘキサン/酢酸エチル 9:1);R値(Ia)=0.32.−GC:アキラルカラム:CP−Sil−88(50m、0.25mm、0.25μm)、100%シアノプロピルポリシロキサン;キャリアガス:水素(90kPa);スプリットインジェクター(split injector)(1:30)、注入温度:250℃;FIDディテクター、検出温度:250℃;温度プログラム:147C(等温);溶媒:ジクロロメタン;t(4R,5R,4’S−アセタール)=129.3分、t(4R,5R,4’R−アセタール)=130.7分。
【0088】
H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.84(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.85(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),1.00−1.57(m,12Η,6CH),1.29(d,J=6.3Hz,12H,COCH(CH),1.44(s,3Η,アセタール−CΗ),1.69(m,2H,CH),4.63(d,J=6.3Hz,1H,CH(タートレート)),4.67(d,J=6.3Hz,1H,CH(タートレート)),5.13(sept.,J=6.3Hz,2H,2COCH(CH)。
【0089】
ジ−(2−メチルエチル)−(4R,5R/4S,5S)−[2,6,10−トリメチルウンデシル−1,3−ジオキソラン−4,5−ジカルボキシレートへの3,7,11−トリメチル−ドデカン−1−カルボアルデヒドのアセタール化
71mgのL−3およびD−3それぞれへ、Ar雰囲気下で、0.5mlの溶液(新たに調製した3,7,11−トリメチル−ドデカン−1−カルボアルデヒドの0.25mmolの)および1.0mlの無水ジクロロメタンを添加した。反応混合物を−78℃へ冷却した。この温度で、10μL(0.05mmol、0.4mol当量)のトリメチルシリルトリフレートを滴下した。さらなる手順は、6,10−ジメチルウンデカン−2−オンのアセタールの作製について上述した手順に対応する。
【0090】
TLC:R−値(生成物)=0.25(SiO、n−ヘキサン/酢酸エチル9:1);R−値(出発材料)=0.45.−GC:アキラルカラム:CP−Sil−88(50m、0.25mm、0.25μm)、100%シアノプロピルポリシロキサン;キャリアガス:水素(90kPa)、スプリットインジェクター(1:30)、注入温度:250℃、FIDディテクター、検出温度:250℃;温度プログラム:0.5℃/分の加温速度で110℃→200C;t(L−2’S,6’R−アセタール)=144.3分、t{(L−2’R,6’S−アセタール)+(L−2’S,6’S−アセタール)}=145.0分、t(L−2’R,6’R−アセタール)=145.6分、またはt(D−2’R,6’S−アセタール)=144.3分、t{(D−2’S,6’R−アセタール)+(D−2’R,6’R−アセタール)}=145.0分、t(D−2’S,6’S−アセタール)=145.6分。
【0091】
H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.83(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.86(d,J=6.8Hz,6H,CH(CH),0.94(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),1.00−1.65(m,16H,7xCH,2xCH),1.28(d,J=6.3Hz,12H,2COCH(CH),4.56(d,J=4.3Hz,1H,CH(タートレート),4.65(d,J=4.3Hz,1H,CH(タートレート),5.11(sept.,J=6.3Hz,1H,COCH(CH),5.12(sept.,J=6.3Hz,1H,COCH(CH),5.30(t,J=5.05Hz,1H,アセタール−H)。
【0092】
実施例40〜68:酢酸トコトリエニルの水素化
(2R)−および(2S)−α−トコトリエニルアセテート、ならびに(2R)−および(2S)−γ−トコトリエニルアセテートの立体選択的水素化
実施例40〜61:酢酸(2R)−α−トコフェリルおよび酢酸(2S)−α−トコフェリルの製造
手順1に従う水素化、ここで、23.4mg(0.05mmol)の出発材料および0.5mlの無水ジクロロメタン中1mol−%のIr触媒(出発材料の量に基づく)を使用した。使用した出発材料:(2R,3’E,7’E)−α−トコトリエニルアセテート、(2S,3’E,7’E)−α−トコトリエニルアセテート。
【0093】
H−NMRによるターンオーバーの測定;(2R/2S,3’E,7’E)−α−トコトリエニルアセテート:5.13(m,3H,3アルケン−CH).−H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.87(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.88(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.89(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),1.06−1.63(m,21Η,9CH,3CH),1.26(s,3H,O−C−CH),1.82(m,2H,O−C−CH),1.97(s,3H,Ph−CH),2.01(s,3H,Ph−CH),2.10(s,3H,Ph−CH),2.31(OC(O)CH),2.62(m,2H,CH(cycl.))。
【0094】
下記の表9、10、11および12に結果を示す:
【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
触媒E15(Ir錯体E14の鏡像体)を使用した場合、(2R,3’Ε,7’Ε)−α−トコトリエニルアセテートが、収率90%で、(2R,4’R,8’R)−トコフェリルアセテートへ水素化された(表12を参照のこと)。
【0099】
【表14】

【0100】
実施例62〜68:(2R)−γ−トコフェリルアセテートおよび(2S)−γ−トコフェリルアセテート
手順1に従う水素化、ここで、0.05mmol(22.7mg)の出発材料および0.5mlの無水ジクロロメタン中の1mol−%のIr触媒(出発材料に基づく)を使用した。使用した出発材料:(2R,3’E,7’E)−γ−トコトリエニルアセテート、(2S,3’E,7’E)−γ−トコトリエニルアセテート。
【0101】
変換をH−NMRにより測定した;(2R/2S,3’E,7’E)−γ−トコトリエニルアセテート:5.13(m,3H,3アルケン−CH).−H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.86(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.87(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),0.88(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),1.02−1.68(m,21H,9CH,3CH),1.28(s,3H,O−C−CH),1.76(dt,J=13.5Hz,J=6.6Hz,1H,O−C−CH),1.80(dt,J=13.5Hz,J=6.6Hz,1H,O−C−CH),2.01(s,3H,Ph−CH),2.12(s,3H,Ph−CH),2.27(s,3H,OC(O)CH),2.72(m,2H,CH(cycl.),6.56(s,1H,ar.CH)。
【0102】
下記の表13および14に結果を示す:
【0103】
【表15】

【0104】
【表16】

【0105】
立体鏡像体組成の測定のために、前記トコフェリルアセテートを、以下のように、トコフェロールおよびトコフェロールメチルエーテルへ変換した。
【0106】
対応のトコフェロールへの酢酸トコフェリルの還元
(2R)−α−トコフェロールおよび(2S)−α−トコフェロールの製造
手順2に従う合成、ここで、23.7mg(0.05mmol)の出発材料および13mg(0.35mmol)のLiAlHを、1mlの無水テトラヒドロフランにおいて使用した。使用した出発材料:(2R)−α−トコフェリルアセテートおよび(2S)−α−トコフェリルアセテート。
【0107】
H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.86(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.87(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.88(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),1.02−1.63(m,21H,9CH,3H),1.23(s,3H,O−C−CH),1.79(m,2,O−C−CH),2.10(br s,6H,2Ph−CH),2.14(s,3H,Ph−CH),2.60(m,2H,CH(cycl.)),4.28(br s,1H,OH)。
【0108】
(2R)−γ−トコフェロールおよび(2S)−γ−トコフェロールの製造
手順2に従う合成、ここで、22.9mg(0.05mmol)の出発材料および13mg(0.35mmol)のLiAlHを、1mlの無水テトラヒドロフランにおいて使用した。使用した出発材料:(2R)−γ−トコフェリルアセテートおよび(2S)−γ−トコフェリルアセテート。
【0109】
H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.86(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.87(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.88(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),1.04−1.63(m,21Η,9CH,3CH),1.28(s,3H,O−C−CH),1.75(m,2H,O−C−CH),2.09(s,3H,Ph−CH),2.11(s,3H,Ph−CH),2.67(m,2H,CH(cycl.),4.35(br s,1H,OH),6.36(s,1H,ar.CH)。
【0110】
手順3
α−およびγ−トコフェロールのメチルエーテルの製造
0.25mmolの前記単離されたα−またはγ−トコフェロール(粗生成物)を、Ar雰囲気下で、1mlの無水ジメトキシエタン中に溶解した。0.2ml(2.5mmol)の50重量%KOH水溶液を滴下した。10分間の攪拌後、0.12ml(1.25mmol)のジメチルサルフェートを滴下した。その後、反応混合物を、室温で1時間撹拌した。完全なターンオーバー(turn−over)後、溶媒を蒸発させた。残渣を、5分間、5mlの蒸留水および10mlのn−ヘキサン中で撹拌した。有機相および水相を分離した。水相を10mlのn−ヘキサンで抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、そして溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物を、さらに精製することなしに、GCにより分析し、該ジアステレオマーの比率を測定した。
【0111】
(2R)−α−トコフェリルメチルエーテルおよび(2S)−α−トコフェリルメチルエーテルの製造
手順3に従う合成;GC:アキラルカラム:CP−Sil−88(50m、0.25mm、0.25μm)、100%シアノプロピルポリシロキサン;キャリアガス:水素(90kPa);スプリットインジェクター(1:30)、注入温度:280℃;FIDディテクター、検出温度:250℃;温度プログラム:170℃(等温);溶媒:酢酸エチル;生成物のt:t(2R,4’R,8’S)=144.5分、t(2R,4’R,8’R)=146.2分、t(2R,4’S,8’R)=148.4分、t(2R,4’S,8’S)=150.8分bzw。t(2S,4’S,8’R)=144.5分、t(2S,4’S,8’S)=146.2分、t(2S,4’R,8’S)=148.4分、t(2S,4’R,8’R)=150.8分。
【0112】
H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.86(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.87(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.88(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),1.03−1.65(m,21Η,9CH,3CH),1.25(s,3H,O−C−CH),1.75(m,2H,O−C−CH),2.09(br s,9H,3Ph−CH),2.72(m,2H,CH(cycl.),3.74(s,3H,−0−CH)。
【0113】
(2R)−γ−トコフェリルメチルエーテルおよび(2S)−γ−トコフェリルメチルエーテルの製造
手順3に従う製造;GC:アキラルカラム:CP−Sil−88(50m、0.25mm、0.25μm),100%シアノプロピルポリシロキサン;キャリアガス:水素(90kPa);スプリットインジェクター(1:30)、注入温度:280℃;FIDディテクター、検出温度:250℃;温度プログラム:170℃(等温);溶媒:酢酸エチル;生成物のt:t(2R,4’R,8’S)=126.0分、t(2R,4’R,8’R)=127.5分、t(2R,4’S,8’R)=129.5分、t(2R,4’S,8’S)=132.0分;およびt(2S,4’S,8’R)=126.0分、t(2S,4’S,8’S)=127.5分、t(2S,4’R,8’S)=129.5分、t(2S,4’R,8’R)=132.0分。
【0114】
H−NMR(400.1MHz,CDCl):δ=0.87(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.88(d,J=6.6Hz,3H,CH−CH),0.89(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),1.03−1.65(m,21H,9CH,3CH),1.29(s,3H,O−C−CH),1.77(m,2H,O−C−CH),2.09(s,3H,Ph−CH),2.10(s,3H,Ph−CH),2.72(m,2H,CH(cycl.),3.74(s,3H,−O−CH),6.43(s,1H,ar.CH)。
【0115】
実施例68:(2R)−γ―トコフェリルアセテート
(2R,3’E,7’E)−γ−トコトリエニルアセテート(22.7mg、0.05mmol)、触媒(5×10−7mol、1mol%)およびジクロロメタン(0.5ml)を、窒素下で、マグネチックスターバーを含む2mlのガラス容器へ添加し、そしてオートクレーブ内に配置した。オートクレーブをHで50barへ加圧し、そして溶液を700rpmで2時間撹拌した。次いで、圧力を注意深く除き、そして反応混合物を減圧下で濃縮した。ヘキサン(1ml)を添加し、そして混合物を0.2μmシリンジフィルター(syringe filter)で濾過した。次いで、該ヘキサン溶液を濃縮し、オイルとして23mg(100%)の(2R)−γ−トコフェリルアセテート(>98% 2R,4’R,8’R;<0.5% 2R,4’R,8’S;<0.5% 2R,4’S,8’R;<0.5% 2R,4’S,8’S)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】式III(A1、A2、A4、A5、G1)およびIV(C1、C2、C5、C6)の好ましいIr錯体を示す。
【図2】式VII(E1およびE3〜E14)の好ましいIr錯体を示す。
【図3】式V(B1)、VI(D1)、VIII(E2、E15)、IX(F1)、X(C4)およびXI(B2)のIr錯体を示す。
【図4】出発材料の例を示す:IIa1=(E)−ジヒドロゲラニルアセトン、IIa2=(Z)−ジヒドロネリラクトン、IIa3=(E)−ゲラニルアセトン、IIa4=(Z)−ネリルアセトン、IIb=(オール−E)−ファルネソール;IIc=(オール−E)−ファルネセン酸エチルエステル、(S)−XII=(2S,3’E,7’E)−トコトリエノールおよびその誘導体、(R)−XII=(2R,3’E,7’E)−トコトリエノールおよびその誘導体、(S)−XIII=(2S,3’E,7’E)−トコモノ−および−ジエノール(ここで、点線は、1または2の二重結合の可能な位置を示す)、(R)−XIII=(2R,3’E,7’E)−トコモノ−および−ジエノール(ここで、点線は、1または2の二重結合の可能な位置を示す)。
【図5】本発明の方法の生成物の例を示し、ここで、アスタリスクは、キラリティー中心を示す:Ia=6,10−ジメチルウンデカン−2−オン、Ib=3,7,11−トリメチルドデカン−1−オール、Ic=3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステル、(2S)−XIV=(2S)−トコフェロールおよびその誘導体、(R)−XIV=(2R)−トコフェロールおよびその誘導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】


[式中、アスタリスクで標識された部分は、不斉中心であり、そして
は、直鎖C1−3−アルキル、C5−7−シクロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル(アルキル=C1−4−アルキル)、オキソアルキル(アルキル=C1−4−アルキル)、アルキルカルボニル(アルキル=C1−4−アルキル)、アルコキシカルボニル(アルコキシ=直鎖C1−4−アルコキシ)、ならびに式
【化2】


(式中、Rは、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基であり、そしてRおよびRは、互いに独立して、水素またはメチルであり、そしてnは、1〜10、好ましくは1〜3の整数である)
の基からなる群から選択される]
の少なくとも1つの化合物の製造方法であって、
触媒としてのキラルIr錯体の存在下で、
式II
【化3】


[式中、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合が存在し、そして点線は、このような(条件的)炭素−炭素二重結合の可能な位置を示し;そしてRおよびnは上記の通りである]
の化合物を水素化する工程を含む、方法。
【請求項2】
化合物Iの1つの立体異性体が過剰に製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式IIの化合物が、イソプレノイド、非環式セスキテルペン、トコモノエノール、トコジエノール、トコトリエノールまたはそれらの任意の誘導体であり、これが、式Iの対応の化合物へ、好ましくは、式Iの高度に立体異性的に富化された対応の化合物へ水素化される、請求項1および/または2に記載の方法。
【請求項4】
前記トコモノエノール、前記トコジエノール、前記トコトリエノールおよび/またはそれらの任意の誘導体が、式XIII
【化4】


[式中、点線の結合は任意であり、そして少なくとも1つの点線の結合が存在し、そしてR2は、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基であり、そしてR3およびR4は、互いに独立して、水素またはメチルである]
のものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記Ir錯体が、式III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIまたはXV、あるいは対応の鏡像異性体式
【化5】


[式中、R、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21およびX22は、互いに独立して、水素、C1−4−アルキル、C5−7−シクロアルキル、フェニル(必要に応じて、1〜3のC1−4−アルキル、C1−4−アルコキシおよび/またはC1−4−ペルフルオロアルキル基で置換されている)、ベンジル、1−ナフチル、またはフェロセニルであり、
アニオンYは低配位アニオンであり、nは1または2であり、そして
「o−Tol」はオルト−トリルを意味し、「Ph」はフェニルを意味し、「TBDMS」はtert−ブチル−ジメチルシリルを意味し、「p−Tol」はパラ−トリルを意味し、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートを意味する]
のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒の量が、式IIの化合物の量に基づいて、約0.05〜約5モル%、好ましくは約0.09〜約2.5モル%、より好ましくは約0.1〜約2.0モル%である、先行請求項の1つ以上に記載の方法。
【請求項7】
一般式IIの化合物が、(E)−ゲラニルアセトン、(E)−ネリルアセトン、(Z)−ネリルアセトン、(E)−ジヒドロゲラニルアセトン、(E)−ジヒドロネリルアセトン、(Z)−ジヒドロネリルアセトン、(オール−E)−ファルネソール、(2E,6E)−ファルネセン酸エチルエステル、(2R,3’E,7’E)−α−トコトリエノール、(2R,3’E,7’E)−β−トコトリエノール、(2R,3’Ε,7’E)−γ−トコトリエノール、(2R,3’Ε,7’E)−δ−トコトリエノール、それらの誘導体および混合物、ならびに少なくともトコトリエノールまたはその誘導体を含有する植物油の任意の部分または抽出物からなる群から選択される、先行請求項の1つ以上に記載の方法。
【請求項8】
前記式IIの化合物が、(E)−ネリルアセトンまたは(Z)−ネリルアセトンまたは(E)−ゲラニルアセトンであり、これが、触媒A2、D1、B1およびE1
【化6】


[式中、「o−Tol」はオルト−トリルを意味し、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)ボレートを意味し、そして「Ph」はフェニルを意味する]
あるいはそれらの鏡像体からなる群から選択されるキラルIr錯体の存在下で、好ましくは、触媒D1、B1およびE1あるいはそれらの鏡像体からなる群から選択されるキラルIr錯体の存在下で、より好ましくは、触媒B1およびE1あるいはそれらの鏡像体からなる群から選択されるキラルIr錯体の存在下で、
鏡像体(6S)−6,10−ジメチルウンデカン−2−オンおよび(6R)−6,10−ジメチルウンデカン−2−オンの混合物へ水素化される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つの鏡像体が、好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも90%の、鏡像体過剰率で、前記混合物中に存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記式IIの化合物が、(E)−ファルネソールであり、これが、キラルIr錯体E1またはB1あるいは対応の鏡像体
【化7】


[式中、「o−Tol」はオルト−トリルを意味し、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートを意味し、そして「Ph」はフェニルを意味する]
の存在下で、2つの鏡像体対(3R,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールおよび(3S,7R)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールならびに(3R,7R)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールおよび(3S,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールの混合物へ水素化される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記立体異性体(3S,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン−1−オールが、他方の立体異性体と比較して、過剰に、好ましくは少なくとも70%の量で、より好ましくは少なくとも75%の量で、前記混合物中に存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記式IIの化合物が、(E)−ファルネセン酸エチルエステルであり、これが、キラルIr錯体B1またはE1あるいは対応の鏡像体
【化8】


[式中、「o−Tol」はオルト−トリルを意味し、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−ボレートを意味し、そして「Ph」はフェニルを意味する]
の存在下で、2つの鏡像体対(3R,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルおよび(3S,7R)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルならびに(3R,7R)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルおよび(3S,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルの混合物へ水素化される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記立体異性体(3S,7S)−3,7,11−トリメチルドデカン酸エチルエステルが、他方の立体異性体と比較して、過剰に、好ましくは少なくとも55%の量で、より好ましくは少なくとも70%の量で、前記混合物中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式IIの化合物が、(2R,3’E,7’E)−α−トコトリエニルアセテートであり、これが、キラルIr錯体E1、E2、E7、E15またはH1あるいは対応の鏡像体
【化9】


[式中、「o−Tol」はo−トリルを意味し、「Ph」はフェニルを意味し、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートを意味し、「n−Bu」はn−ブチルを意味し、そして「Me」はメチルを意味する]
の存在下で、4つのジアステレオマー(2R,4’S,8’R)−α−トコフェリルアセテート、(2R,4’R,8’S)−α−トコフェリルアセテート、(2R,4’R,8’R)−α−トコフェリルアセテートおよび(2R,4’S,8’S)−α−トコフェリルアセテートの混合物へ水素化され、ここで、1つのジアステレオマーが過剰に製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
キラルIr錯体E2、E15またはH1が触媒として使用される場合、前記立体異性体(2R,4’R,8’R)−α−トコフェリルアセテートが、他のジアステレオマーと比較して、過剰に、好ましくは少なくとも55%の量で、より好ましくは少なくとも90%の量で、前記混合物中に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記式IIの化合物が、(2S,3’E,7’E)−α−トコトリエニルアセテートであり、これが、触媒としてのE3、E4、E6、E8、E9、E10、E11、E12、E13、E14あるいはそれらの鏡像体
【化10】


[式中、「Ph」はフェニルを意味し、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート[B(3,5−C(CFであり、「Cy」はシクロヘキシルを意味し、「Me」はメチルを意味し、そして「n−Bu」はn−ブチルを意味する]
からなる群から選択されるキラルIr錯体の存在下で、
好ましくは、触媒としてのキラルIr錯体E13またはE14あるいは対応の鏡像体の存在下で、
4つのジアステレオマー(2S,4’S,8’R)−α−トコフェリルアセテート、(2S,4’R,8’S)−α−トコフェリルアセテート、(2S,4’R,8’R)−α−トコフェリルアセテートおよび(2S,4’S,8’S)−α−トコフェリルアセテートの混合物へ水素化され、ここで、1つのジアステレオマーが過剰に製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ジアステレオマー(2S,4’S,8’S)−α−トコフェリルアセテートが、他のジアステレオマーと比較して、過剰に、好ましくは少なくとも65%の量で、より好ましくは少なくとも85%の量で、前記混合物中に存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記式IIの化合物が、(2R,3’E,7’E)−γ−トコトリエニルアセテートであり、これが、触媒としてのキラルIr錯体C1、D1、E1、F1またはH1
【化11】


[式中、「Ph」はフェニルを意味し、「Bn」はベンジルを意味し、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート[B(3,5−C(CFであり、「o−Tol」はo−トリルを意味し、そして「TBDMS」はtert−ブチル−ジメチルシリルを意味する]
の存在下で、4つのジアステレオマー(2R,4’S,8’R)−γ−トコフェリルアセテート、(2R,4’R,8’S)−γ−トコフェリルアセテート、(2R,4’R,8’R)−γ−トコフェリルアセテートおよび(2R,4’S,8’S)−γ−トコフェリルアセテートの混合物へ水素化され、ここで、1つのジアステレオマーが過剰に製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記キラルIr錯体F1またはその鏡像体が触媒として使用される場合、前記ジアステレオマー(2R,4’R,8’R)−α−トコフェリルアセテートが、他のジアステレオマーと比較して、過剰に、好ましくは少なくとも45%の量で、前記混合物中に存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
植物油の、好ましくはパーム油の、水素化部分または抽出物の製造方法であって、触媒としてのキラルIr錯体の存在下で、少なくともトコトリエノールまたはその誘導体を含有する該植物油の部分または抽出物を水素化する工程を含む、方法。
【請求項21】
前記トコトリエノールまたはその誘導体が、それぞれ、トコフェロールおよびその誘導体へ、好ましくは、高度に立体異性的に富化された(オール−R)−トコフェロール(誘導体)へ水素化される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記キラルIr錯体が、式III〜XIおよびXVあるいは対応の鏡像体
【化12】


[式中、R、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21およびX22は、互いに独立して、水素、C1−4−アルキル、C5−7−シクロアルキル、フェニル(必要に応じて、1〜3のC1−4−アルキル、C1−4−アルコキシおよび/またはC1−4−ペルフルオロアルキル基で置換されている)、ベンジル、1−ナフチル、またはフェロセニルであり、
アニオンYは低配位アニオンであり、nは1または2であり、そして
「o−Tol」はオルト−トリルを意味し、「Ph」はフェニルを意味し、「TBDMS」はtert−ブチル−ジメチルシリルを意味し、「p−Tol」はパラ−トリルを意味し、「BAr」はテトラ(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートを意味し、
Yは、弱い配位アニオン、例えば、PF、SbF、BAr、BF、FC−SO、ClO、B(Cであり、ここで、該シクロオクタジエン配位子は、オレフィン、例えば、エテン、ノルボルナジエンによって置換される]
の1つのものである、請求項20および/または21に記載の方法。
【請求項23】
イソプレン、非環式セスキテルペン、トコモノエノール、トコジエノールおよびトコトリエノールからなる群から選択される化合物の(立体選択的)水素化のための、触媒としてのキラルIr錯体の使用。
【請求項24】
請求項5に記載の式III〜XIおよびXVあるいは対応の鏡像体の1つのキラルIr錯体が使用される、請求項23に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−524288(P2008−524288A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547315(P2007−547315)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013694
【国際公開番号】WO2006/066863
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】