説明

キラル分析のための差分光学技術

差分法が開発されており、光の透過の規定された点からの変位(たとえば、ヌルから±45°またはヌル、すなわち90°および平行、すなわち0°)を決定し、同相モード雑音除去および信号増強のための2つの信号の結合性を利用する。キラル混合物に適用される光のビームが変調され、次にプリズムからなる偏光子によって第1のビームおよび関連直交ビームに分割される。信号の差分比較が行われる前に、第1のビームおよび直交ビームは電気信号に変換され、キラル混合物内の所望のキラル種を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の記述
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
米国政府は、フィリップ・R.ギブス(Phillip R. Gibbs)に対する全米科学財団補助金による補助金番号0320299によって、本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、これによって既に出願された米国仮特許出願第60/510,209号明細書(2003年10月9日に出願)及び米国仮特許出願第60/563,364号明細書(2004年4月19日に出願)の利益を請求し、その全体を参照して本願明細書に援用するものとする。
【0003】
発明の分野
本発明は、キラル検出器に関し、さらに詳細にはキラル試料の非接触で高速かつ正確な選別のための差分光学回転分散検出器に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
光学異性体、さらに一般的に呼ばれる鏡像異性体は、医薬、化学、芳香油、香料及び食品業界をはじめとする複数の分野で重要である。有用な薬物のきわめて大多数は、1つ又は複数のキラル中心を含む。誤った鏡像異性体は有害な副作用を引き起こす可能性があることが公知であることから、治療薬に特有の高い鏡像異性体の純度を得ることが重要である。したがって、鏡像異性体的に純粋な組成を生成すること及び鏡像異性体の純度を検査することの両方が重要である。残念なことに、現在の最新技術の分析機器を用いても、これらの行為のいずれにも重大な課題が残っている。現在までのところ、研究者が利用することができる鏡像異性体の純度の選別を行う高い処理能力の一般に適用可能な方法は存在しない。
【0005】
キラル分析技術に対して、さらに具体的に言えば、キラル試料によって誘発されるさらなる光学回転の測定に関する雑音を低減する分野において、改良が周知である。雑音を取り除くために電子手段又は光学手段を用いる単独ビーム法は相当一般的である(たとえば、国際出願公開第01/06918号明細書参照)。他の周知の方法は、参照セルとの比較(米国特許第4,912,059号明細書)、位相のずれた正弦信号の混合(米国特許第5,477,327号明細書)、信号と参照光との切り替え(米国特許第5,621,528号明細書)又は2つの直交直線偏光波による2つの周波数のレーザ源の利用(米国特許第5,896,198号明細書および米国特許第6,327,037号明細書)のいずれかによって2つのビームを用いる。これらの方法は、光の透過のヌルポイントからの変位を決定しようとする。
【0006】
フローセルにおける差分キラル分析のためのポッケルスセル変調を用いることも周知である(米国特許第5,168,326号明細書)。この技術は、直線偏光及び円偏光からなる交互のビームを生成するために、ポッケルスセルに揺動電圧を印加することを伴う。両方のビームに関して計算された回転角を減算することによって、共通の雑音源が効果的に相殺され、測定の感度がさらによくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
したがって、測定に関連する雑音を低減することによって、キラル試料によって導入されるさらなる光学回転をさらに正確に決定することに対する需要が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
差分法が開発されており、光の透過の規定された点からの変位(たとえば、ヌルから±45°又はヌル、すなわち90°及び平行、すなわち0°)を決定し、同相モード雑音除去及び信号増強のための2つの信号の結合性を利用する。この方法及びデバイスは、雑音を低減し、感度を向上するために、矩形波変調によるロックイン検出を用いてもよく、周波数変調を実現するために、新たな変調技術を用いてもよく、多波長走査モードに技術を拡張してもよく、光学回転に対する感度を著しく向上させるために、差分信号抽出モードを用いてもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、以下の詳細に部分的に記載され、部分的にその詳細から明白となるか、又は本発明の実行によって分かるであろう。本発明の態様は、添付請求項に特に指摘される要素及び組み合わせによって実現され達成される。したがって、前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも例示および説明のために過ぎず、請求項のように本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【0010】
本願明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の複数の実施形態を示し、詳細と共に本発明の原理を説明するために作用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施形態の記述
本発明の原理による基本的な差分光学回転分散(DORD)装置の実施形態のブロック図が、図1に示されている。基本的な装置は、光源100、偏光子116、信号変調器130、試料セル140、検光子142、平衡型光受信器(検出器B150及びC152)及びロックイン検出器170を備える。光源100は、レーザなどの単色光源からなってもよいが、より広い帯域の波長の方がさらに有用な情報を提供する。好ましい実施形態において、安定化紫外ランプ及びタングステンランプを用いて、浜松ホトニクス株式会社(Hamamatsu)の型名(Model)L7893シリーズのランプを備えた光源100を実現するときに、適切な帯域200〜1100nmに及ぶ明るい広帯域の波長源を提供してもよい。パルス光源を用いて、中間の偏光子の位置に関連する曖昧性を避けてもよい。しかし、実際には連続光源を用いることができ、信号変調器の切り替え時間はこれらの中間状態の考慮事項を効果的に排除するのに十分なほど高速であってもよい。
【0012】
入射光ビーム104は、偏光子116を通過して偏光ビーム118を生成する。天然水晶又は合成水晶のいずれかから構成される任意の市販の偏光子を偏光子構成要素として用いてもよいことを理解されよう。好ましい実施形態において、偏光子は、従来の方解石に比べて、より高い消光比(>10−6)及びより高い損傷閾値(1064nmで>500MW/cm)などの優れた光学特性を呈する合成プリズムを備える。方解石とは対照的に、合成水晶は、光学品質および有用性のために計測器における変動性を排除する。最も好ましい実施形態において、DORD偏光子116は、α−BBOに基づくロションプリズムによって実現される。α−BBOは、最近ようやく市販されるようになっている。α−BBOロションプリズムを用いることにより、より広い波長帯域(190nm〜3500nm)が可能となり、2つの偏光ビームを生じ、一方のビーム成分用の直線経路を提供し、簡単な直線光学構成を可能にする。偏光子の他の例としては、偏光ビームスプリッタ、グラン・レーザ偏光プリズム、グラン・テイラー偏光プリズム、グラン・トンプソン偏光プリズムまたはウォラストンプリズムが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。従来の施光計は、通常、グラン・テイラー偏光子を用い、この偏光子は方解石の場合には350nm〜3500nmの有効波長帯域を有し、α−BBOの場合にはより狭い波長帯域(200〜270、400〜700および700〜3000)を有する。
【0013】
90°の総回転角度、好ましくはヌルポイントから±45°にわたる信号の変調は、信号変調器130を用いて達成される。しかし、当業者は、本発明の原理はヌルポイントから90°の総回転角度±45°で変調する場合に限定されるわけではないことを認識されよう。実際には、差分によって観察されるように、直線偏光状態の結合性を利用する所定の加算点を中心とする変調には利点がある。ヌルポイント(90°)及び平行な点(0°)を中心とする変調の一例が、図6に示されている。変調は、透過のこれらの直交結合点を中心とする差分観察から恩恵を受けるために、大きい必要はない(たとえば、±1°)。たとえば、この手段を用いた差分観察は、同相モード雑音を依然として除去すると同時に、ヴェルデ測定における基本駆動周波数から周波数への寄与を実質的に排除する。
【0014】
変調器は、+45°の角度における一方の偏光成分の位相シフトを行うことによって、直線偏光から円偏光に変換すると同時に、他方に直交する角度(たとえば、−45°)で別の成分の位相シフトを行う。同相モード雑音を効率的に除去することができる場合には、光の透過の中点(たとえば、ヌルポイントから±45°)またはその付近における観察は、最大信号に関しては好都合である。これは、
2つの偏光子間の透過光の強度が
I=Icosθ
によって表される場合、マリュスの法則から派生から得られる。式中、Iは透過強度であり、Iは交差していない偏光子に関する透過光であり、θは0°が最大透過光強度の点として規定される場合の2つの偏光子の相対角度である。
【0015】
キラル化合物に対する最大感度に関して、キラル試料が2つの偏光子の間に存在するときに生じるθ、dθの小さな変化に対して光強度の変化dlが最大である領域で観察されるものとする(たとえば、キラル種が加算または減算され、観察される全体的なθとなる)。マリュスの式の導関数
dl/dθ=0.5cos2θ
をとり、dl/dθ=0について解くと、キラル種による強度の変化を観察するのに最適な点は、光の透過のヌルポイントから±45°であることが分かる。
【0016】
偏光子の消光係数からのオフセットを含むマリュスの法則の形は、
I=Icosθ+a
であり、θがヌルポイントに対して規定されるとき、I=Isinθ+aとして始めると、この分析は変わらない。従来の方法は、キラル試料に関連しない大きな光束(1/2I)の同相モード雑音のために、この領域におけるキラル信号を観察することはない。
【0017】
従来のファラデー変調器又はポッケルスセルなどの種々の変調付与デバイスを用いて、信号変調を達成することができる。好ましい実施形態において、信号変調器は、BBOを利用するポッケルスセルである。α−BBO偏光光学素子と同一の光学透明度及び紫外透過率特性に加えて、ポッケルスセルの利用により、従来の施光計に用いられるファラデー変調器(約1kHz)又はCD検出器に用いられる光弾性変調器(約50kHz)に比べて、きわめて高い周波数(>10GHz)における矩形波変調を可能にする。さらに高い変調周波数は、ロックイン検出、同期検出又は平衡型光検出器技術を用いる高速信号用途の場合に好都合であり、矩形波変調の利用は、偏光分析法及びCD検出器に通常用いられる正弦波変調に比べて、信号対雑音を向上し、さらに高速の信号取得というさらなる利点を有する。さらなる恩恵は、光変調のためにポッケルスセルを用いることにより、ファラデー変調器に比べて、磁場からの影響に対して耐性があることである。従来の施光計の感度は理論的には、10−6程度を得ることができるが、この感度で、機器はコンパスのように作用し、地球の磁場における配向に影響されやすい。したがって、市販の機器では、この影響を避けるために、設定は効率的に「離調」される。ファラデー変調器の場合には変調が磁場に対向して変調される電場に基づいているため、ポッケルスセルを用いることにより、この雑音源を回避する。
【0018】
ビームが試料セル140を通過した後、ビームは検光子142へと続き、検光子142は互いに対して直交であり、検光子を出るときに分岐する2つの偏光ビーム146及び148を生じる。検光子142は、2つの直交する分岐偏光ビームを生成することができる任意のデバイスであることを理解されよう。そのようなデバイスの例としては、偏光ビームスプリッタ、ウォラストンプリズム又はロションプリズムが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
一の実施形態において、α−BBOに基づくロションプリズムを備えた検光子を実現することが考えられる。他の実施形態において、検光子は、ウォラストン偏光子又はプリズムによって実現され、互いに直交する2つの逆向きの結合される信号ビームを生じる。ウォラストン偏光子は、偏光プリズムを形成するために共に接着される2つの直交する方解石プリズム又は代替材料(たとえば、YVO)からなる。プリズムを出るときに光を集束又は集光するのではなく、プリズムの構造は入射光ビームを2つの出射ビームに分岐し、異なる方向に進ませる。2つの出射ビームの分岐及び方向は、プリズムの配置を調整することによって制御されることができる。したがって、検光子142は、光を集光することによって、光ビーム146又は148のいずれかを任意の対象物に向けることはない。さらに正確に言えば、検光子は、焦点距離がなく、任意の点に光を集束または集光することができないため、光を異なる方向に逸らせるだけである。
【0020】
位置B及び位置Cの光検出器150及び152は、成分146及び148の光信号を現在の電子機器で分析することができる電圧信号又は電流信号160及び162に変換するために用いられる。好ましい実施形態において、光検出器は、フォトダイオードである。平衡型光検出器手段ではフォトダイオードの配置構成が好ましい。そのような平衡型光検出器手段におけるこのような2つのビームの観察により、高い同相モード除去比(CMRR)の2乗検波器を生じる。平衡型光検出器手段の使用に関する詳細は、図13〜図15に関してさらに説明される。
【0021】
光検出器150及び152は、また、内部で検出信号を増幅して特に良好な感度を提供するアバランシェフォトダイオードによって実現されてもよい。他の実施形態において、光検出器は、最高感度、大きな直線範囲、広い波長応答及び低雑音を有する光電子増倍管によって実現される。他の実施形態において、光検出器は、最高感度、大きな直線範囲、広い波長応答及び低雑音を有する1対の非平行な光起電力フォトダイオードによって実現される。
【0022】
ロックイン検出器170は、通常存在する種々の雑音信号の中から信号を抽出する。ロックイン検出は、ロックイン増幅及び位相敏感検出の別名でも知られており、雑音を低減し、感度を向上するための技術である。この技術は、雑音がすべての周波数に存在し、大部分の検出器はすべての周波数を検出することから、すべての雑音を認識するという事実からなる利点を得る。しかし、周波数の狭い範囲のみを検出すれば、雑音を劇的に低減することができる。ロックイン検出は、装置のある様相の周期的な変調(たとえば、矩形波、正弦波、周期パルスなどの使用)を伴い、信号に正弦波変調をもたらす。その後、ロックイン検出器は、信号に同一の周波数の正弦波(その「参照波」)を乗じ、次いで、(正弦波の多数の区間にわたるが)短時間で積分する。正確な周波数で特定の信号が生じるのであれば、またそれがロックイン正弦波と同位相であれば、それは大きな結果をもたらす。他方、間違った周波数(または間違った位相)の任意の信号(または雑音)は、それが負のとき、この信号及びロックイン正弦波の積が正であることが多いため、積分するとゼロになる。したがって、正確な周波数(および位相)の雑音のみが寄与する。換言すれば、検出信号に寄与する雑音はより一層少ない。ロックイン検出を用いると、より一層弱い信号レベルを検出することができる。通常、ロックイン検出は10の雑音低減をもたらすことから、同程度の感度向上をもたらす。さらに、当業者は、縮小した変調幅を用いることにより、さらに多くの波長識別を可能にすることを認識されよう。
【0023】
矩形波信号に基づくロックイン検出は、より高い高調波が存在せず、より高速の応答を生じることから、信号応答を増大し、除去要件を緩和するという利点を有する特殊な事例である。差分分析と共にロックイン検出を用いることは、この「同相モード」雑音が両方の入力信号160及び16に存在し、ロックイン検出器の2つのチャネル入力を減算することによって効果的に除去されることから、入力ビームに存在する雑音に対する耐性を生じる。さらに、本発明の実施形態は、天然の光学活性体から直線二色性を棄却する能力(擬似回転とも言う)を有する。装置の差分モードは、同相モード雑音と同様に、そのような擬似回転を有利に棄却する。
【0024】
図1の実施形態には示されていないが、当業者は、実施形態のいずれにおいても光検出器(たとえばB150およびC152)とロックイン検出器 (たとえば検出器170)との間に任意のフィルタ手段(図示せず)を用い、検出された電気信号(たとえば入力信号160及び162)のさらなる処理を提供してもよいことを認識されよう。基本的には、ディジタル処理の前に、電気信号における雑音をさらに低減するために、フィルタを用いてもよい。この実施形態において用いられるフィルタのタイプおよび仕様はシステムの実現に応じて変化してもよいが、好ましいフィルタは、望ましくないより低い周波数信号を除去し、(増幅器(図示せず)からの利得によって)著しい利得又は予め選択された周波数を超える周波数に対して少なくとも最小の減衰を提供するために用いられる単独の能動高域通過アナログフィルタである。
【0025】
フィルタは、また、個別のフィルタチェーンとして実現され、各チェーンから異なる周波数特性信号出力を提供してもよい。高域通過フィルタは個別のフィルタチェーンに供給されることができ、フィルタチェーンのそれぞれはそのチェーンに関する所望の周波数に対して利得を提供し、望ましくない周波数の利得を最小限に抑えるように最適化される。また、選択的な利得レベルを提供するために、各チェーンにはプログラム可能な利得増幅器を用いてもよい。したがって、システムは、キラル濃度およびキラル比が変化するときに変化する信号を選択的に増幅することができると同時に、他の信号を減衰することもできる。このような態様で、フィルタ(各チェーンにおける個別のフィルタおよび増幅器を含む)は、入力信号がロックイン検出器中のアナログ・ディジタル変換器(ADC)によてディジタル化される前に、雑音問題に対処する。当業者は、そのようなアナログフィルタ機能の代わりに、またはそのようなアナログフィルタ機能に加えて、ディジタルフィルタ機能を用い、雑音除去および装置の感度をさらに向上させてもよいことを認識されよう。
【0026】
図2は、光源200と偏光子216との間にフィルタ212を任意に加えた実施形態を示すブロック図である。フィルタは、ダイクロイックフィルタ、干渉フィルタ、ショートパスフィルタまたはロングパスフィルタをはじめとする任意の市販のフィルタであってもよいが、これらに限定されるわけではない。一の実施形態において、フィルタは、音響光学波長可変フィルタ(AOTF)である。安定化紫外光源及びタングステン光源と共に音響光学波長可変フィルタを用いることは、機器の設定に可動部品を導入することなく、高速波長走査、ビームの安定化及び光強度の整形を可能にすることが既に分かっている。フィルタ構成要素が1nm未満の解像度で200nm〜1100nmの走査範囲を提供すれば最適である。
【0027】
図3は、変調器330と試料セル340との間に四分の一波長板334を任意に加えた実施形態を示す。四分の一波長板は、直線光の±45°の変調によって円偏光を直線偏光338に変換するために挿入される。当業者は、四分の一波長板が石英、雲母又は有機ポリマープラスチックから構成されてもよいことを認識されよう。フレネル菱面体もまた、色消し波長板として用いてもよい。
【0028】
図4は、波長変調器406、別のロックイン検出器410及び位置Aの光検出器422を含み、光強度を電圧信号又は電流信号424に変換する源安定化フィードバックループを任意に加えた実施形態を示すブロック図である。偏光子416は2つの偏光ビーム418及び420を生成する。偏光ビーム418は試料を通過し、偏光ビーム420は光検出器422へ進む。光検出器422によって分かる位置は入力ビームに直接に比例し、非偏光光源が用いられる場合には、光検出器422のビーム強度は透過ビームに等しい。これは、ビーム中の雑音をロックイン検出及び波長変調器へのフィードバックループによって抑制することができるために有用である。参照信号は、光源402の直接変調(たとえば、LED又はレーザ振幅、パルス変調)または波長変調器408によって透過光に載せられた信号から作り出すことができる。
【0029】
図5は、位置A(図4のみ)、BおよびC(図1〜図4)の光検出器によって観察される光強度を表す物理的過程を示す。一般に、光強度は、相対的な偏光子の角度が0°で最大であり、90°(一般に「ヌルポイント」と呼ばれる)で最小である。非偏光光源に関して90°の最小透過光強度および0°の最大透過光強度の比は、消光比と呼ばれる。α−BBOロション偏光子の場合には、10−6を超える比のものが市販されている。より高い消光比は、雑音源として既に記載した偏光子の漏れを最小限に抑えることによって、より良好な感度を効果的にもたらす。
【0030】
ポッケルスセルに電圧を印加しなくても、透過される直線ビーム強度が最小限に抑えられるように、偏光子が適切に整列される場合には、位置Bの光検出器は入力偏光子に対して90°で観察され、位置Cの光検出器は「ヌルポイント」から+90°または入力偏光子に対して180°で観察される。適切な電圧がポッケルスセルに印加される場合には、位置Bの光検出器および位置Cの光検出器によって観察される相対的な角度はそれぞれ、位置1または2および2または3にシフトする。BとCとの間の相対的な角度は、ロション偏光子の特性によって+90°で固定されるため、変調される観察相対角度位置1、2および3が結合される。したがって、ビームの+45°の回転がポッケルスセルによって導入されると、位置Bの検出器は位置2で観察され、位置Cの検出器は位置3で観察される。逆に言えば、逆の−45°の回転が導入されると、位置Bの検出器は位置1で観察され、位置Cの検出器は位置2で観察される。重要な観察結果は、キラル試料が、図5に示されているように、1と2との間および2と3との間で差分態様のビーム回転に寄与することである。さらに、1と2または2と3における観察から生じる強度の減算によって、各チャネルに存在する大きな背景信号を効果的に除去することができる。これはまた、(すなわち、マリュスの法則、以前に導出されたdl/dθ=0.5cos2θ=0から)回転の度数に対する透過光強度の変化が最大であり、小さな回転の場合には本質的に直線である場合には、領域におけるビーム角度に対するキラル分子の影響を観察することができる。
【0031】
図6は、0°および90°の偏光角を中心とした変調を伴う差分検出の別のモードを示す。差分検出のこのモードは、図16に示された設定などにおいてファラデー変調を伴う測定が行われるときに好都合である。これらの測定では、0°および90°を中心とする変調はファラデー変調器における基本周波数の寄与およびこの駆動電流に存在する任意の高調波歪みを相殺する。これは、基本波信号が単調であり、より高い高調波のアナログ・ディジタル変換精度または所定の混変調信号周波数が制限される場合には、図16に示されるようなヴェルデ効果の測定には好都合である。入力ファラデー変調器が図16に示される変調試料室の入力探査ビームに用いられる場合には、0°および90°における観察はまた、試料中の基本周波数に加えて、この入力偏光変調における基本周波数および高調波歪みを相殺する。また、0°を中心として変調される強いビームおよび90°を中心として変調される弱いビームの存在は、自動平衡型光受信器に関する理想的な場合を示している。この場合には、低雑音の非平行な光起電力フォトダイオード検出器の配置構成を用いてもよいが、光強度もまた変調されない限り、大きな直流オフセットも存在する。自動平衡型光受信器は強い参照光を必要とし、参照光及び信号(90°で弱いビーム)の両方に存在する同相モード雑音を効果的に相殺する。変調が0°および90°の初期角から±45°を超えない限り、信号ビームより大きいか、または等しいための参照光の要件は常に維持される。参照光はまた(ウォラストン偏光子への入力ビームの直線偏光状態における変化のために)信号ビームに存在する逆相関信号も含むため、自動平衡型光受信器の雑音除去は向上し、散射雑音フロアに近づく。
【0032】
図5及び図6における変調の説明はポッケルスセル及びファラデー変調器に関して行われたが、当業者は、異なる形式の信号(たとえば、正弦波または矩形波以外の信号)によって励起または変調される別の変調デバイスを用いた装置に対するそのような原理の応用を速やかに認識されよう。
【0033】
図7は、同期され、これも図7に示されている信号変調の周波数の2倍である周波数fのロックイン検出を用い、位置Aで検出されたパルス入力ビームを示している。実際には、位置Aの検出器の場合に用いられる変調周波数は、信号変調に関係なくてもよいが、簡単にするため、この実施例は光源及び信号変調に関してそれぞれfおよびf/2を用いる。
【0034】
一旦、透過ビームが試料セルを通過すると、位置Bおよび位置Cの結果として生じる強度が図8に示されている。±45°の変調で、これらの強度は入力ビーム強度の半分となり、位置Bと位置Cとの間のビーム強度に等しくなるため、互いに減算するとゼロ信号を生じる。対照的に、キラル試料が存在する場合には、2つの検出器は図9に示されているように、光学回転を加算した試料から異なる寄与を観察する。位置Bおよび位置Cからの信号が差分分析のために減算されると、信号変調と同一の周波数、この場合にはf/2で残る信号が図10に示されるように観察される。対向する鏡像異性体からの信号は、図10に示されているように、類似であるが、前の信号によって180°逆位相の異なる波形を生成することを留意すべきである。
【0035】
本発明の一実施形態において、ロックイン検出に関連する参照矩形波及び信号波形が、結果として生じる直流出力と共に、図11に示されている。ロックインは、半波の下の信号の逆転を考慮し、各半波の下の寄与を効果的に合計する。図11に示される波形の場合には、これは増幅器から正の定数の直流電圧を生じる。図10で既に説明した対向する鏡像異性体からの信号波形は、図11に示されているように、等しい大きさの負の直流電圧を生じる。
【0036】
図4に記載される設定を用いて、信号を加算することによって、二重ビームからさらなる情報を収集することができる。これが、図12に示されている。試料における散乱または吸収の影響は、検出された入力信号によって最終的な差分信号を正規化することによって抑制されることができる。この測定は上述の理由(たとえばビーム雑音)のために差分信号より大きい雑音を含む可能性が高く、位置Aにおけるビームの平衡性および入力参照に対する比較は、強度の変動、試料における散乱および単純な(円二色性ではない)試料吸収のために、最終的な測定における雑音をさらに抑制する正規化比を提供する必要がある。これらのキラル以外の寄与を正規化するためのこの比手法は、従来の偏光分析測定を向上することが既に実証されている。
【0037】
同相モード雑音は、また、図13〜図15に示されているように平衡型光検出器手段を用いて除去されることができる。レーザ雑音相殺器設計は、ロックイン検出と比較すると、基本的に異なる雑音相殺手段である。ロックイン検出は狭帯域通過フィルタとして働くが、雑音相殺器又は平衡型光検出器設計は光電流を直接減算することによって働き、完全な平衡のための減算を連続的に調整するために、フィードバックが信号経路以外に適用される。したがって、過度の雑音及びスプリアス変調は理想的にはすべての周波数で相殺され、散射雑音のみが残る。
【0038】
測定における雑音の寄与は、以下の式によって表されることができる。
=(al+(bln/2+c
式中、定数a、b及びcは、それぞれ、強度変動の程度、強度における散射雑音限界及び強度に無関係な雑音の寄与を表す。
【0039】
したがって、(平衡型光検出器手段に通常のことであるが、)散射雑音であるレーザ強度雑音が制限される場合には、a=0であり、信号はレーザ強度に線形に依存することから、n=1であり、小さな回転角度に対して最も高い信号または最も高い解像度を提供する構成は光の透過±45°の中点である。
【0040】
2つの直交偏光ビームの二重ビーム検出に関して正規化された不均衡は、以下のように示される。
D=(A−B)/(A+B)
式中、AおよびBは2つの直交偏光出力ビームであり、Dは正規化された不均衡信号であり、試料の固有の光学回転の2倍(2α)を生じる。キラル試料の場合にはD=−Dであるため、±45°の位置の間の変調は、測定不均衡を効果的に2倍にする。したがって、測定された不均衡は、Dmeas=D−D=2D=4αまたは平衡モード偏光分析法において通常観察された信号の2倍となる。
【0041】
差分検出手段によるキラル測定を行う別の恩恵は、直線複屈折に対して鈍感であり、偏光分析法における共通の雑音源である。測定信号のこの独立性は、直線二色性とは無関係であると記載された。寄与は正に相関され、同相モード信号として効果的に棄却されるため、差分手段は、直線複屈折信号に起因する信号(潜在的に屈折率による雑音源も含む)を効果的に棄却する。光学回転に起因する信号は逆に相関されることから、信号は差分観察によって増大される(変調手段に応じて2αまたは4α)。
【0042】
図13は、平衡型光検出手段を用いる差分検出を示すブロック図である。この設定では、検光子ビーム562の一方が比較ビームとして平衡型光検出器に用いられる。入力偏光子に対して45°で2つの信号は同一の強度であることから、比較ビーム電流が最適の動作では信号ビームの約2倍である必要があるため、最適の平衡型光検出の場合には、信号ビーム560は約50%減衰される必要がある。出力590を直接検出することができるが、出力590をロックイン検出器手段に送信することができることが好ましい。
【0043】
図14は、差分および高いダイナミックレンジの雑音相殺器を用いる差分検出を示す実施形態のブロック図である。この設定では、偏光子616からの第2の偏光ビーム620は、比較のために用いられる。入力偏光子に対して45°で2つの信号は同一の強度であることから、信号ビーム650は減衰される必要があるか、または所定の分析範囲(たとえば±1°)にわたって、検出器Bが常に、検出器Cより多い電流を生成するように、相対的な角度が入力偏光子に対して45°からシフトする必要がある。出力を直接検出することができるが、出力をロックイン検出器手段に送信することができることが好ましい。
【0044】
図15は、二重雑音相殺器手段を用いる差分検出を示す実施形態のブロック図である。この設定では、偏光子716からの第2の偏光ビーム720は2つの比較ビーム724および725に分割される。入力偏光子に対して45°で2つの信号(760および762)は同一の強度であるが、最適の雑音相殺のために比較ビーム724および725の強度の約50%に形成されることができる。出力792および794を直接検出することができるが、出力をロックイン検出器手段に送信することができることが好ましい。(B’−C’)/(B’+C’)を用いた比較分析は、最も堅牢な信号出力を提供する。
【0045】
図16は、図1に示される検出器構造の変形の実施形態を示す。試料835は磁場または電場を用いて変調される。通常の実施形態において、均一な磁場変調は、試料セルの周囲に巻き付けられたコイルまたはコイルから空隙に含まれる試料セルへの変調された場を通す空隙電磁設計によって達成される。図16に示される構造は、差分分析および同相モード雑音除去を可能にし、他の周知の技術より感度の高い技術をもたらす。
【0046】
キラル回転を正確に測定するためのDORD検出の能力に加えて、波長を高速に走査するための能力は、複数の種が光学回転に寄与するキラル混合物を分析するための新たな可能性を開く。1つの可能性は、純粋な種のORD曲線が既知である場合に、各種に関する寄与の逆畳み込みを行うために、全波長走査を用いることである。これは、偏光分析測定において実証されており、DNA濃度測定対蛋白質濃度測定に関する吸収の研究に通常用いられている。
【0047】
図17は、本発明の実施形態において、差分分析がどのように円二色性に適用されうるかを示す概略図を示す。第1の周波数で位置Aの光検出器によって得られた信号を第1の周波数で位置Bおよび位置Cの検出器の信号を加算することによって得られた信号と比較することによって、正常な吸収信号を得てもよい。さらに、位置Bおよび位置Cの検出器によって得られた信号を減算することによって得られた第2の周波数で検出された信号は、円二色性に起因しており、第1の周波数で検出された非キラルの吸収に正規化されてもよい。
【0048】
さらに、ゼロ交差(キラル回転が変化する波長によって逆転する点)は各キラル種に関して唯一である可能性が高いため、走査を紫外線まで拡張するための能力により、混合物中の個別のキラル成分を具体的に測定するために、周波数変調分光法手段におけるコットン・ムートン効果(円二色性の吸収最大値に関連する)を利用する可能性を考慮に入れる。これは、波長可変ダイオードレーザ分光法(TDLAS)として一般に周知である波長変調分光法または周波数変調分光法における吸収線にわたる走査に類似している。公開された報告によれば、直接分光法に比べると、TDLASにおける変調分光法を用いると、2つの恩恵が得られる。第一に、種の濃度に直接比例する異なる信号を生成することであり(ゼロ基準線技術)、第二に、レーザ雑音が著しく低減される周波数で信号を検出することが可能となることである。線にわたる走査は、測定される種の特性的な特徴が明確に分かり、妨害する種またはエタロン縞に起因する望ましくないスペクトル特徴を容易に識別することができるため、測定の信頼性を増大する。
【0049】
TDLASに対する類推によって、図18に示されているように、混合物のキラル種の弁別を達成することができる。図18は、本発明の実施形態において、探査波長の変調がどのように異なるキラル種からの光学回転への寄与の逆畳み込みを行うことができるかを示す。光学回転がより高い周波数変調で決定される場合には、光学回転のゼロ交差を中心とする探査波長の二次変調により、異なる光学回転分散曲線の他のキラル種から識別可能な変調信号が生成される。第1のステップは、混合物中の成分の光学回転分散(ORD)を決定することである。これらは既知であるか、またはあるいは個別のキラル種を独立に測定し、ORDを記録することが可能であることが理想的である。図18に示される実施例の場合には、混合物は2つのキラル種からなる。明確にするために、種ごとに個別のORDが示されているが、混合物の場合には実際に測定されたORDは、両方の種の寄与の合成物である。
【0050】
種Aに特有の信号を生成し、種Bからの信号寄与を最小限に抑えるために、種Aに関するORDにおけるゼロ交差にわたって波長を走査することが好ましい。探査波長がAのゼロ交差を中心にして正弦波によって変調される場合には、種Aは種Bよりはるかに強い変調信号を生成する。これは、周波数変調分光法または波長変調分光法に類似している。
【0051】
波長は、この交差にわたって正弦波によって(またはあるいはロックイン技術または他の復調技術によって検出することができる他の波形を用いて)走査するものとする。これは、波長変調を検出されたキラル信号に重ねられる振幅変調に変換する。最適な変調幅および周波数は、波長を効果的に変化させることができる速度および他の種からの信号寄与によって相関される。音響光学波長可変フィルタの場合には、この速度は約0.5nm/μsであることから、10nmの領域にわたる走査は、図18に示されているように10kHzの信号を生じる。より大きな間隔の走査は振幅変調を増大させるが、変調周波数を減少させ、他の種からの寄与を潜在的に増大する。
【0052】
実用的に、最も簡素な手順は、利用可能な雑音スペクトルにおける好ましい信号対雑音比を達成するスペクトル変調幅を選び、この一定の幅で利用可能なスペクトル領域にわたる溶液を走査することであろう。これは、図19に示される情報を生じ、吸収型円二色性走査に類似であるが、実際にはORDの派生物の走査である。個別の種から生じる信号は、吸収ピークとして示される。低減した振幅変調に起因するより小さいが、より明確に分離されるピークの第2の集合によって図示されているように、変調幅を狭くすることによって、向上した分解能を得ることができる。この処理により、キラルの識別特性が波長変調周波数より高い周波数で正確に測定されることが推測される。
【0053】
キラル混合物における種を個別に分析するために、この技術を用いることにより、キラル酵素反応のために実時間動的情報を提供することができる。この情報は、偏光分析法および円二色性などの現在の実時間法を用いて得ることは困難であると思われる。これらの方法は、試料の全体特定(たとえば光学回転又は円二色性)を記録することができるだけであり、検出された信号に対する個別の種の寄与を記録することはできないためである。円二色性は、所定の1つの種の吸収最大値で観察することによって、信号対雑音(S/N)比を向上することができるが、円二色性スペクトルが所定の種から遠い位置に除去されない限り、他のキラル種は依然として寄与しうる。製薬的な関心が集まるいくつかの明白なキラルの酵素反応は、アルコールの脱水素酵素、ラセミ化酵素および異性化酵素を伴う反応である。
【0054】
差分法が開発されており、光の透過の規定された点からの変位(たとえば、ヌルから±45°またはヌル、すなわち90°および平行、すなわち0°)を決定し、同相モード雑音除去および信号増強のための2つの信号の結合性を利用する。キラル混合物に適用される光のビームが変調され、次にプリズムからなる偏光子によって第1のビームおよび関連直交ビームに分割される。信号の差分比較が行われる前に、第1のビームおよび直交ビームは電気信号に変換され、キラル混合物内の所望のキラル種を検出する。
【0055】
本発明の他の実施形態は、本願明細書に開示される本発明の明細書および実行を考慮すれば、当業者には明白であろう。明細書および実施例は例示のためと見なし、本発明の真の範囲および精神は以下の請求項に示されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図面の簡単な説明
【図1】本発明の原理によるキラル検出装置の実施形態のブロック図である。
【図2】本発明の原理によるフィルタを任意に備えるキラル検出装置の実施形態のブロック図である。
【図3】本発明の原理による四分の一波長板を任意に備えるキラル検出装置の実施形態のブロック図である。
【図4】本発明の原理による源安定化フィードバックループを任意に備えるキラル検出装置の実施形態のブロック図である。
【図5】本発明の実施形態による位置B及びCの検出器によって観察される相対的な光強度及び信号変調から生じる角度位置を示す2つの偏光子の間の相対的な角度に対応する特徴的な角度を成す2つの直線偏光素子の間の光の透過を具体的な図解である。
【図6】本発明の実施形態による位置AおよびBの検出器によって観察される相対的な光強度及びヌル(90°)及び平行(0°)を中心とした信号変調から生じる角度位置を示す2つの偏光子の間の相対的な角度に対応する特徴的な角度を成す2つの直線偏光素子の間の光の透過を具体的な図解である。
【図7】本発明の実施形態による位置Aで観察される光パルス及び信号変調器に印加されるときの信号変調を比較する具体的な図解である。
【図8】本発明の実施形態によるキラル試料が存在しない場合に位置B及びCで観察される具体的な結果として生じる光強度を示す。
【図9】本発明の実施形態によるキラル試料が存在する場合に位置B及びCで観察される具体的な結果として生じる光強度を示す。
【図10】本発明の実施形態によるBチャネルおよびCチャネルの差分比較から対向する鏡像異性体に関する結果として生じる信号を示す具体的なチャートである。
【図11】本発明の原理による同一濃度の対向する鏡像異性体に関する矩形参照波に関するロックイン検出および結果として生じる出力信号電圧を実証する実施形態の図である。
【図12】本発明の原理によるBチャネル及びCチャネルの加算によって具体的に生じた信号及び位置Aで検出された入力信号と比較したときの信号の吸収又は散乱の影響を示す。
【図13】本発明の原理による平衡型光検出手段を用いた差分検出を示す実施形態のブロック図である。
【図14】本発明の原理による差分及び高いダイナミックレンジの雑音相殺器を用いた差分検出を示す実施形態のブロック図である。
【図15】本発明の原理による二重雑音相殺器手段を用いた差分検出を示す実施形態のブロック図である。
【図16】試料が磁場又は電場によって任意に変調されるキラル検出器を示す実施形態のブロック図である。
【図17】本発明の原理による差分モード測定に関する円二色性測定を示す実施形態のブロック図である。
【図18】本発明の実施形態におけるキラル混合物における種を弁別するために有用な二次信号を波長変調がどのように引き起こすかを示す。
【図19】本発明の実施形態による2つのキラル種を有するキラル混合物において利用可能な波長にわたって走査され、変調周波数で検出された一定の変調幅から生じる具体的な信号を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラル試料の光学回転の角度を検出する方法であって、
入力光ビームを生成するステップと、
前記入力光ビームを偏光して、直線偏光のビームを得るステップと、
直線偏光の前記ビームを変調して、少なくとも実質的に光の透過の中点付近に変調ビームを生成するステップと、
前記変調ビームを試料溶液の中へ透過させて、信号ビームを発生するステップと、
前記信号ビームを第1の偏光信号ビーム及び第2の偏光信号ビームに分割し、前記第2の偏光信号ビームが前記第1の偏光信号ビームに対して直交するようにするステップと、
前記第1の偏光信号ビーム及び前記第2の偏光信号ビームの光強度を測定するステップと、
前記第1の偏光信号ビーム及び前記第2の偏光信号ビームの前記光強度を第1の信号電圧又は電流及び第2の信号電圧又は電流に変換するステップと、
前記第1の信号電圧又は電流から前記第2の信号電圧又は電流を減算し、前記キラル試料の光学回転の角度の2倍に対応する出力信号電圧又は電流を得るステップと、を含むキラル試料の光学回転の角度を検出する方法。
【請求項2】
前記入力光ビームをフィルタにかけるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の信号電圧又は電流及び前記第2の信号電圧又は電流をフィルタにかけるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタにかけるステップは、ディジタルフィルタ及びアナログフィルタからなる群のうちの少なくとも1つによって達成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタにかけるステップは、前記第1の信号電圧又は電流及び前記第2の信号電圧又は電流を選択的にフィルタにかけ、前記第1の信号電圧又は電流及び前記第2の信号電圧又は電流を選択的に増幅するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記変調ビームを直線偏光するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フィードバックループを用いて、光源を安定化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記安定化ステップは、
前記入力光ビームを変調して変調入力ビームを生成するステップと、
前記変調入力ビームを偏光して、第1の直線偏光入力ビーム及び第2の直線偏光入力ビームを生じ、前記第1の直線偏光入力ビームが前記試料溶液を通過するステップと、
前記第2の直線偏光入力ビームの前記光強度を測定するステップと、
前記第2の直線偏光入力ビームの前記光強度を入力信号電圧又は電流に変換するステップと、
前記入力信号電圧又は電流を前記入力光ビーム又は前記変調入力ビームから得られた参照信号と比較するステップと、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
非キラルの寄与の影響を正規化するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
キラル試料の光学回転の角度を検出するための装置であって、
入力光ビームを生成するための光源と、
前記入力光ビームを直線偏光のビームに変換する偏光子と、
直線偏光の前記ビームを変調して、少なくとも実質的に光の透過の中点付近に変調ビームを生成するようにする変調器と、
前記キラル試料を収容し、その中を前記変調ビームが通過して、信号ビームを生成することができる試料セルと、
前記信号ビームを第1の偏光信号ビーム及び第2の偏光信号ビームに分割し、前記第2の偏光信号ビームが前記第1の偏光信号ビームに対して直交するようにするための検光子と、
前記第1の偏光信号ビームの前記光強度を測定し、前記光強度を第1の信号電圧又は電流に変換するための第1の光検出器と、
前記第2の偏光信号ビームの前記光強度を測定し、前記光強度を第2の信号電圧又は電流に変換するための第2の光検出器と、
前記第1の信号電圧から前記第2の信号電圧又は電流を減算し、前記キラル試料の光学回転の角度に対応する出力信号電圧又は電流を得るための比較回路と、を備えるキラル試料の光学回転の角度を検出するための装置。
【請求項11】
前記入力ビームをフィルタにかけるためのフィルタをさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記フィルタは、ダイクロイックフィルタ、干渉フィルタ、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ及び音響光学波長可変フィルタからなる群から選択される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の信号電圧又は電流をフィルタにかけるための第1のフィルタ及び前記第2の信号電圧又は電流をフィルタにかけるための第2のフィルタをさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、ディジタルフィルタ及びアナログフィルタからなる群のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のフィルタは前記第1の信号電圧又は電流を選択的にフィルタにかけて選択的に増幅し、前記第2のフィルタは前記第2の信号電圧又は電流を選択的にフィルタにかけて選択的に増幅する、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記変調ビームを直線偏光するための四分の一波長板をさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記四分の一波長板は、石英、雲母及び有機ポリマープラスチックからなる群から選択される材料から構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記入力光ビームを変調して、変調入力ビームを生成するための波長変調器と、
前記変調入力ビームを第1の直線偏光入力ビーム及び第2の直線偏光入力ビームに変換し、前記第1の直線偏光入力ビームが前記試料溶液を通過するようにするための第2の偏光子と、
前記第2の直線偏光入力ビームの前記光強度を測定し、前記光強度を入力信号電圧または電流に変換するための別の光検出器と、
前記入力信号電圧又は電流を前記光源又は前記波長変調器から得た参照信号と比較するための別の比較回路と、を備える源安定化フィードバックループをさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項19】
前記光源は、パルス又は連続である、請求項10に記載の装置。
【請求項20】
前記光源は、レーザ、安定化紫外ランプ及びタングステンランプを含む群のうちの1つである、請求項10に記載の装置。
【請求項21】
前記安定化紫外ランプ又はタングステンランプは、200〜1100nmの波長帯域に及ぶ、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記偏光子は、合成水晶及び天然水晶の両方から構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項23】
前記偏光子は、グラン・テイラー偏光プリズム、グラン・トンプソン偏光プリズム、ウォラストンプリズム又はロションプリズムである、請求項10に記載の装置。
【請求項24】
前記ロションプリズムは、α−BBOから構成される、請求項20に記載の装置。
【請求項25】
前記変調器は、ポッケルスセル又はファラデー変調器である、請求項10に記載の装置。
【請求項26】
前記検光子は、偏光ビームスプリッタ、ウォラストンプリズム及びロションプリズムを含む群のうちの1つである、請求項10に記載の装置。
【請求項27】
前記ロションプリズムは、α−BBOから構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項28】
前記第1の光検出器および第2の光検出器は、フォトダイオード又は光電子増倍管である、請求項10に記載の装置。
【請求項29】
前記フォトダイオードは、平衡型光検出器手段に配置される、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記ロックイン検出器は、正弦波信号又は矩形波信号に基づく、請求項10に記載の装置。
【請求項31】
キラル試料の光学回転の角度を検出する方法であって、
入力光ビームを生成するステップと、
前記入力光ビームを偏光して、直線偏光のビームを得るステップと、
磁場によって前記キラル試料を変調して、変調ビームを生成するステップと、
前記変調ビームを試料溶液の中へ透過させて、信号ビームを発生するステップと、
前記信号ビームを第1の偏光信号ビーム及び第2の偏光信号ビームに分割し、前記第2の偏光信号ビームが前記第1の偏光信号ビームに対して直交するようにするステップと、
前記第1の偏光信号ビーム及び前記第2の偏光信号ビームの光強度を測定するステップと、
前記第1の偏光信号ビーム及び前記第2の偏光信号ビームの前記光強度を第1の信号電圧又は電流及び第2の信号電圧または電流に変換するステップと、
前記第1の信号電圧又は電流から前記第2の信号電圧又は電流を減算し、前記キラル試料の光学回転の角度に対応する出力信号電圧又は電流を得るステップと、を含むキラル試料の光学回転の角度を検出する方法。
【請求項32】
キラル試料の光学回転の角度を検出するための装置であって、
入力光ビームを生成するための光源と、
前記入力光ビームを直線偏光のビームに変換する偏光子と、
前記変調ビームが通過することができ、信号ビームを生成するための試料区画であって、
(a)試料セルと、
(b)前記キラル試料を磁場によって変調するための変調手段を備える試料区画と、
前記信号ビームを第1の偏光信号ビーム及び第2の偏光信号ビームに分割し、前記第2の偏光信号ビームが前記第1の偏光信号ビームに対して直交するようにするための検光子と、
前記第1の偏光信号ビームの前記光強度を測定し、前記光強度を第1の信号電圧又は電流に変換するための第1の光検出器と、
前記第2の偏光信号ビームの前記光強度を測定し、前記光強度を第2の信号電圧又は電流に変換するための第2の光検出器と、
前記第1の信号電圧又は電流から前記第2の信号電圧又は電流を減算し、前記キラル試料の光学回転の角度に対応する出力信号電圧又は電流を得るためのロックイン回路と、を備えるキラル試料の光学回転の角度を検出するための装置。
【請求項33】
前記変調手段は、ソレノイドコイルである、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
キラル混合物を分解する方法であって、
高い周波数変調で前記キラル混合物の前記光学回転分散を決定するステップと、
前記混合物中の各キラル成分の前記光学回転分散を決定するステップと、
(a)第1のキラル成分に関して前記光学回転分散におけるゼロ交差にわたって正弦波によって前記波長を走査し、
(b)前記第1のキラル成分によって生成された前記波長変調を振幅変調に変換することによって、
前記キラル混合物中の各個別のキラル成分に特有の信号を生成するステップと、を含み、
前記第1のキラル成分に特有の前記振幅変調信号が最大化され、残るキラル成分の信号寄与が最小化される方法。
【請求項35】
キラル混合物を分解する方法であって、
試料セルの中で前記キラル混合物に適用される光のビームを変調するステップと、
前記キラル混合物によって透過される光の前記ビームの部分を第1のビームおよび関連直交ビームに分割するステップと、
前記第1のビーム及び前記関連直交ビームを第1の信号及び関連直交信号に変換するステップと、
前記第1の信号及び前記関連直交信号の差分分析を行い、前記キラル混合物中の所望のキラル種を検出するステップと、を含む方法。
【請求項36】
前記差分分析実行ステップは、前記第1の信号及び前記関連直交信号を差分によって比較するステップ及び光の前記ビームが選択された位相交差を中心にして変調され、前記所望のキラル種を検出するときに、前記差分比較の光学回転特性を観察するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の信号及び前記関連直交信号をフィルタにかけて、前記差分分析を向上させるステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記差分分析実行ステップは、
前記第1の信号と前記関連直交信号との間のスペクトルの差を決定するステップと、
前記スペクトルの差に基づいて、前記キラル混合物中の前記所望のキラル種を識別するステップと、をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記変調ステップは、低減した変調幅で光の前記ビームを変調するステップをさらに含み、
前記決定ステップは、前記低減した変調幅に起因する向上した波長弁別によって前記スペクトルの差を観察するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記決定ステップは、選択された位相交差を分析するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記決定ステップは、光の前記ビームが所定のヌルポイントを中心にして変調されるとき、前記第1の信号を分析するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
キラル混合物を維持するための試料セルと、
前記変調光ビームが前記試料セル内の前記キラル混合物に適用される前に、所定の回転角度にわたって光ビームを変調するための変調器と、
前記試料セル内の前記キラル混合物から前記変調光ビームの透過部分を受光し、前記変調光ビームの前記透過部分を複数の関連ビームに分離するプリズムと、
前記関連ビームをそれぞれ受光し、一連の入力信号を生成するための複数の光検出器と、
前記入力信号を比較し、前記入力信号間の差を前記キラル混合物の光学回転に関連付け、前記光学回転に基づき、前記キラル混合物中の所望のキラル種の存在を表示するためのロックイン検出器と、を備えるキラル検出システム。
【請求項43】
前記変調器は所定のヌルポイントを中心にして前記光ビームを変調し、前記ロックイン検出器は前記光検出器によって観察される相対的な光強度を差分によって比較し、前記キラル混合物の前記光学回転を示す、請求項42に記載のキラル検出システム。
【請求項44】
前記入力信号のそれぞれのためのフィルタを備え、前記フィルタのそれぞれはフィルタにかけられる前記入力信号を選択的に増幅するためのプログラム可能な利得増幅器を備え、前記フィルタのそれぞれはディジタルフィルタおよびアナログフィルタのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項42に記載のキラル検出システム。
【請求項45】
キラル混合物中の所望のキラル種を検出するための方法であって、
ビームが前記キラル混合物によって透過された後、変調偏光のビームを第1のビーム及び関連直交ビームに分割するステップと、
前記光が時間に関して変調されるとき、前記第1のビームと前記関連直交ビームとの間の光強度の変化を差分によって観察するステップと、
前記光強度における前記差分による同相モード観察に基づき、別のキラル種から前記所望のキラル種の存在を弁別するステップと、を含む検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−525658(P2007−525658A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534431(P2006−534431)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/033399
【国際公開番号】WO2005/036215
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(504469857)ステノ コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】