説明

キーキャップ構造を製造する方法

【課題】複雑なパターンを平坦でない表面に対しても正確に形成可能な、キーキャップ構造を製造する方法を提供する。
【解決手段】有色プラスチック本体形成工程11、最終コーティング噴霧工程12、焼成工程13、レーザエングレービング工程14、透明層被覆工程15、および仕上げ工程16を備えるキーキャップ構造を製造する方法である。有色プラスチック本体の処理対象面に最終コーティングを噴霧コーティングする。有色プラスチック本体および最終コーティングを焼成して、最終コーティングを硬化させる。最終コーティングをレーザビームで処理して、中空部分を少なくとも1つ形成する。最終コーティングの中空部分および対応して露出している処理対象面で、パターン部分を少なくとも1つ構成する。パターン部分および最終コーティングを透明層で被覆して、パターン部分および最終コーティングを保護し、有色プラスチック本体からキーキャップ構造を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造方法に関する。特に、キーキャップ構造を製造する方法に関し、複雑なパターンを正確に形成できると共に平坦でない面にも正確に形成することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キーキャップの従来の製造方法には2種類がある。1つは、図11に示すように、有色キーキャップ81を直接形成して、有色キーキャップ81に少なくとも1つのパターン811を直接印刷する方法である。もう1つの方法は、図12(斜視図および断面図を含む)に示すように、無色キーキャップ81Aを形成して、無色キーキャップ81Aに彩色層81Bを噴霧して、彩色層81B上に少なくとも1つのパターン811を印刷する方法である。
【0003】
従来の方法では、複雑なパターンを良好に形成できない、または、平坦でない表面で欠陥が発生しがちであるといった問題が容易に発生している。図11に示すように、非常に複雑な、または、高密度で線が描かれているパターン811を有色キーキャップ81に直接印刷すると、2つの線が容易に1つになって欠陥812となり、不鮮明または認識不可能なパターンになってしまう。図12に示すように、キーキャップの面が平坦でなく、例えば、凹面である場合、印刷されたパターン811はゆがんで欠陥となってしまうことが多い。
【0004】
このため、上記課題を解決する新しい技術の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複雑なパターンを平坦でない表面に対しても正確に形成可能な、キーキャップ構造を製造する方法を提供することを目的の1つとする。具体的には、本発明は、複雑なパターンを良好に形成できない、平坦でない面では欠陥が発生することが多い、といった問題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段は、キーキャップ構造を製造する方法であって、有色プラスチック本体形成工程、最終コーティング噴霧工程、焼成工程、レーザエングレービング工程、透明層被覆工程、および仕上げ工程を備える方法によって提供される。
【0007】
以下ではさまざまな図面に図示されている好ましい実施形態を詳細に説明しているが、上記およびその他の本発明の目的は、以下の説明を参照することによって、当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る第1の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係るプロセスの工程を説明するための概略断面図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係るプロセスの工程を説明するための概略断面図である。
【図2C】本発明の第1の実施形態に係るプロセスの工程を説明するための概略断面図である。
【図2D】本発明の第1の実施形態に係るプロセスの工程を説明するための概略断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る完成品を示す概略図である。
【図4】本発明に係る第2の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態を説明するための概略断面図である。
【図6】本発明に係る第3の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態を説明するための概略断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る完成品を示す概略図である。
【図9】本発明の処理対象面の他の実施形態を説明するための概略図である。
【図10】本発明をキーに応用した場合を説明するための概略展開図である。
【図11】第1の従来構造を示す概略図である。
【図12】第2の従来構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照しつつ説明すると、本発明に係るキーキャップ構造を製造する方法の第1の実施形態は、以下の工程を備える。
【0010】
<有色プラスチック本体形成工程11>
図2Aを参照しつつ説明すると、少なくとも1つの有色プラスチック本体21を事前に形成する。有色プラスチック本体21には、処理対象面210がある。
【0011】
<最終コーティング噴霧工程12>
図2Bを参照しつつ説明すると、処理対象面210には、最終コーティング22が噴霧コーティングされる。
【0012】
<焼成工程13>
有色プラスチック本体21および最終コーティング22を焼成して、処理対象面210上で最終コーティング22を硬化させる。
【0013】
<レーザエングレービング工程14>
図3を参照しつつ説明すると、レーザビーム91を用いて最終コーティング22を処理して、少なくとも1つの中空部分221を形成する。中空部分221および対応して露出している処理対象面210が、少なくとも1つのパターン部分21A(図2Cを参照のこと)を構成している。
【0014】
<透明層被覆工程15>
図2Dを参照しつつ説明すると、パターン部分21Aおよび最終コーティング22は、透明層23で被覆されて、保護されている。
【0015】
<仕上げ工程16>
少なくとも1つの有色プラスチック本体21に仕上げ処理を行うことで、キーキャップ構造40が構成する。
【0016】
一実施形態によると、工程11において、有色プラスチック本体21は、有色プラスチック材料(または、顔料を加えた無色プラスチック材料)を用いて射出成形を行うことによって、事前に形成されるとしてよい。
【0017】
工程14において、パターン部分21Aは、表示として、文字、装飾デザイン、図形、記号、または数字を表すとしてよい。最終コーティング22に対するエングレービングを行う方法としてはさまざまなものが自明で、多岐にわたるエングレービング方法が本発明の範囲内に含まれる。
【0018】
生産ラインでは複数のキーキャップ構造40が形成され、切断またはパンチングされて、1つのキーキャップ構造が得られる。このため、自動生産において有用である。図3は、一例として、3つのキーキャップ構造を図示している。しかし、数の変更は自明であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
図4および図5は、本発明の第2の実施形態を示す図である。第2の実施形態は、第1の実施形態と略同一である。唯一の相違点は、工程11がさらに、透明プラスチック材料を用いて射出成形を行って透明プラスチック本体211を事前に形成する透明プラスチック本体射出成形工程111と、透明プラスチック本体211にプライマー塗料212を噴霧コーティングするプライマー塗料噴霧工程112とを有する点である。尚、プライマー塗料212の面が、処理対象面210である。このように、透明プラスチック本体211およびプライマー塗料212で、有色プラスチック本体21を構成する。中空部分221および対応して露出しているプライマー塗料212は、少なくとも1つのパターン部分21Aを構成する。
【0020】
図6および図7は、本発明の第3の実施形態を示す図である。第3の実施形態は、第2の実施形態と略同一である。唯一の相違点は、工程11がさらに、透明プラスチック本体射出成形工程111およびプライマー塗料噴霧工程112の後に、プライマー塗料212の第1の領域P1に第1の彩色体31を印刷する第1の領域印刷工程113と、透明プラスチック本体211に対して第1の焼成処理を実行して、第1の彩色体31を硬化させる第1の焼成工程114と、プライマー塗料212の第2の領域P2に第2の彩色体32を印刷する第2の領域印刷工程115と、透明プラスチック本体211に対して第2の焼成処理を実行して、第2の彩色体32を硬化させる第2の焼成工程116とを有する。
【0021】
このため、図8に示すように、中空部分221および対応して露出しているプライマー塗料212が構成する少なくとも1つのパターン部分21A、中空部分221および対応して露出している第1の彩色体31が構成する少なくとも1つの第1の補助パターン部分21B、ならびに、中空部分221および対応して露出している第2の彩色体32が構成する少なくとも1つの第2の補助パターン部分21Cが、透明プラスチック本体211に形成される。
【0022】
より具体的には、本実施形態に係るキーキャップ構造40上のパターン(つまり、パターン部分21A、ならびに、第1および第2の補助パターン部分21Bおよび21C)は、処理対象物に処理対象面210が何面あっても、処理対象面210を全面に渡って噴霧コーティングして、最終コーティング22を、高速且つ便利にも、広範囲に噴霧する工程を1回実行することで形成して、レーザビーム91で最終コーティング22に対してエングレービングを行って、パターンの外形を表してもいる中空部分221を形成することによって、形成される。パターンは、中空部分221から視認される、最終コーティング22の下に形成されている色によって表される。したがって、上述したいずれの実施形態でも、処理対象面210は、(図3に示すように)平坦であってもよいし、または、(図9に凹面として示すように)平坦でないとしてもよく、広範囲にわたって噴霧コーティングが可能であって、その後でレーザビーム91を用いて最終コーティング22に対して垂直方向にエングレービングが行われて中空部分221を形成する。このような方法は、利便性が非常に高い。
【0023】
また、上述した実施形態のいずれにおいて製造されるキーキャップ構造40も、コンピュータ用キーボードに利用可能である。コンピュータ用キーボードで利用される場合、図10を参照しつつ説明すると、上昇支持デバイス51、弾性部材52、薄膜回路53、基板54、および導光板55が、有色プラスチック本体21内に配設されて、キーボードモジュールが形成され、押圧機能および切替機能を担う。これらの部材は公知の方法で配設されるとしてよく、本明細書を簡潔にするべく詳細な内容は省略する。
【0024】
本実施形態の利点および効果は以下の通りである。
【0025】
1.複雑なパターンを形成することができる。本実施形態では、有色プラスチック本体が事前に形成され、有色プラスチック本体の処理対象面(または、外面全体)に、最終コーティングを噴霧コーティングする。最終コーティングを焼成して処理対象面上で硬化させた後、最終コーティングに対してレーザエングレービングを行って、パターンの外形を表してもいる中空部分を形成する。パターンは、中空部分を通して見える処理対象面によって表される。レーザビームは作業直径が非常に微小になるように(現時点では、少なくとも40マイクロメートルを得ることができる)調整することが可能で、且つ、最終コーティングは処理対象面上で硬化して硬質材料となるので、文字、数字、または装飾デザイン等の非常に複雑なパターンであっても、明瞭にキーキャップに描画することができる。
【0026】
2.複雑なパターンを、平坦でない面にも正確に形成することができる。本実施形態では、有色プラスチック本体の処理対象面全体に最終コーティングを噴霧するので、表面が平坦であろうと、凹面であろうと、または不規則な形状であろうとも、最終コーティングを均一且つ全面に噴霧コーティングすることができる。このような噴霧コーティングは、例えば、公知の技術によって実施されるべきである。そして、レーザツールを移動させて、平坦でない面上の最終コーティングを垂直方向にエングレービングすることで、中空部分を形成することができる。このため、複雑なパターンを平坦でない面に対しても正確に形成することができる。
【0027】
本発明の教示内容から逸脱することなく、上述したデバイスおよび方法を数多くの点で変形および変更し得ることは、当業者であれば容易に想到する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーキャップ構造を製造する方法であって、
処理対象面を含む有色プラスチック本体を少なくとも1つ形成する工程と、
前記処理対象面を最終コーティングでコーティングする工程と、
前記有色プラスチック本体および前記最終コーティングを焼成して、前記処理対象面上で前記最終コーティングを硬化させる工程と、
前記最終コーティングに対してレーザエングレービング処理を実行して、中空部分を少なくとも1つ形成し、前記中空部分および対応して露出している前記処理対象面で、パターン部分を少なくとも1つ構成する工程と、
前記パターン部分および前記最終コーティングを保護用の透明層で被覆する工程と、
少なくとも1つの前記有色プラスチック本体に対して仕上げ処理を実行して、キーキャップ構造を得る工程と
を備える方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記有色プラスチック本体は、有色プラスチック材料を用いて射出成形を実行することによって形成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パターン部分は、表示されるべき文字、装飾デザイン、図形、記号、または数字を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記仕上げ処理によって、複数のキーキャップ構造が得られる請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記有色プラスチック本体を少なくとも1つ形成する工程は、
透明プラスチック材料を用いて射出成形を実行することによって、透明プラスチック本体を形成する工程と、
前記透明プラスチック本体にプライマー塗料を噴霧コーティングする工程と
を有し、
前記プライマー塗料の表面が前記処理対象面となり、
前記透明プラスチック本体および前記プライマー塗料で、前記有色プラスチック本体を構成し、前記中空部分および対応して露出している前記プライマー塗料で、少なくとも1つの前記パターン部分を構成している請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記有色プラスチック本体を少なくとも1つ形成する工程はさらに、
前記プライマー塗料の第1の領域に第1の彩色体を印刷する工程
を有し、
前記中空部分および対応して露出している前記第1の彩色体で、第1の補助パターン部分を少なくとも1つ構成する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有色プラスチック本体を少なくとも1つ形成する工程はさらに、
前記透明プラスチック本体に対して第1の焼成処理を実行して、前記第1の彩色体を硬化させる工程
を有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有色プラスチック本体を少なくとも1つ形成する工程はさらに、
前記プライマー塗料の第2の領域に第2の彩色体を印刷する工程
を有し、
前記中空部分および対応して露出している前記第2の彩色体で、第2の補助パターン部分を少なくとも1つ構成する請求項5から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記有色プラスチック本体を少なくとも1つ形成する工程はさらに、
前記透明プラスチック本体に対して第2の焼成処理を実行して、前記第2の彩色体を硬化させる工程
を有する請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−192625(P2011−192625A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181826(P2010−181826)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(510222442)毅嘉科技股▲ふん▼有限公司 (16)
【Fターム(参考)】