説明

キーシート及びそれを備えたキーユニット

【課題】 一つのキーに複数種の表示が設けられたキーシート及びそれを用いたキーユニットにおいて、任意の種類の表示のみを選択的に発光させることができるようにする。
【解決手段】 表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層40、60そのもの(若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分)による複数種の表示4、6を有し、各種の表示層40、60は、自身の表示種に対応して設けられその表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源のうちから選択されたものからの光を受けて可視光を発光するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器類、例えば携帯電話機、PHS、携帯情報端末(PDA等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ等の照光式のキーシート及びそれを備えたキーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機、PHS、携帯情報端末(PDA等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ等の電子機器に用いられるキーシートとして、キートップ等が所定の光源により照光されるものが多い。周囲が暗い場所でもキーを容易に視認でき、操作が容易になると言う利点があるためである。
そして、その光源として発光ダイオード(LED)を用いる場合が多い。
【0003】
ところで、照光式のキーシートには、その裏面側の光源からの光の透過光のみによりキートップを照明するタイプのもの(特開2001−167655号公報参照)と、光源からの光の導出経路、例えばキートップに、光源からの光により励起されて可視光を発生する蛍光体を含有させておき、その蛍光体の発光により表示が視認できるようにしたタイプのもの(特開2004−296208号公報参照)とがある。
【特許文献1】特開2001−167655号公報
【特許文献2】特開2004−296208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術のうち、特許文献1の特開2001−167655号公報の技術によれば、周囲が明るいところではキートップ上の文字、数字等の表示の色はデザイナーの設計した意匠通りに印刷された本来の色に見えるが、薄暗いところでは、すべて光源、例えばLEDの発光色に染まるために、デザイナーの設計した意匠とは全く異なる色になって見え、デザイナーの色の演出が完全に失われてしまう等の問題があることが、特許文献2の特開2004−296208号公報において指摘されている。
【0005】
それに対して、特許文献2の特開2004−296208号公報の技術、即ち、光源からの光の導出経路、例えばキートップに、光源からの光により励起されて可視光を発生する蛍光体を含有させておき、その蛍光体の発光により表示が視認できるようにするという技術によれば、例えばキートップ等の操作部材の照明色を、光源自体の色ではなく蛍光体の種類の選択によって決めることができ、照明色選択の自由度が顕著に拡大する。
その点、その特許文献2の技術は優れているといえる。
【0006】
しかしながら、その特許文献2の技術では応えることができない要請がある。
その要請について詳しく説明すると次の通りである。キーとして複数種の表示を有するものがある。図9(A)、(B)はそのようなキーの例を示す。図9(A)に示すものは、各キーa、b、c、・・・は、それぞれ2種類の表示を有し、一方の種類は、数字1、2、3、・・・であり、他方の種類は、アルファベットabc、def、ghi、・・・であり、一部の外国向けである。
図9(B)に示すものは、各キーn、o、m、・・・はそれぞれ3種類の表示を有し、第1の種類は、数字1、2、3、・・・であり、第2の種類は、アルファベットabc、def、ghi、・・・であり、第3の種類は、ひらがな行、あ、か、さ、・・・であり、日本向けである。
【0007】
このように、各キー毎に複数種の表示を有するタイプのキーシートにおいては、各キーの各種表示のうちの操作状況に対応した一つの種類の表示のみが発光するようにするという要請がある。具体的には、例えば、数字の入力をしたい場合には各キーの数字の表示のみが示され、アルファベットの入力をしたい場合にはアルファベットの表示のみが示されるようにするという要請がある。また、日本向けの場合のみだが、上記要請に加え、ひらがなの入力をしたい場合にはひらがな行の表示のみが示されるようにするという要請がある。
しかるに、特許文献2の技術によれば、一つのキーに存在する複数種の表示を選択的に発光させることは不可能である。
【0008】
更には、各キー毎に複数種の表示を有するタイプのキーシートにおいて、キーシートを有する携帯電話機等の小型化の要請に対応してより一層の小型化、より具体的には狭面積化(キーシート配置部分の狭面積化)の強い要請がある。特に、欧米向きの携帯電話機用のものについてその要請が顕著である。
このような狭面積化の要請に応えるには、キー配置を狭ピッチ化した所謂狭ピッチキーを採用すること、すなわち、キートップを小型化しないでキーシート全体の専有面積を小さくすることによってある程度は対応することができる。しかし、狭ピッチ化には限界があるため、最終的には各キーの面積を小さくすることが要求されるが、その要求に応えることは難しい。というのは、表示を小さくすると視認性が悪くなるから視認性の確保のためにキー面積の狭面積化が制約されるからである。
従って、携帯電話機等の機器の少なくとも一部の機種、例えばヨーロッパ向け機種においては、一つのキーの複数種の表示が別々の領域を占有することが許されなくなりつつある。しかし、複数の表示の形成領域をオーバーラップさせると、特許文献2の技術によれば、各キーにある複数種の表示がすべて発光し、表示を正しく認識することが不可能となる。
【0009】
本発明は、このような問題を解決すべく為されたものであり、一つのキーに複数種の表示が設けられたキーシート及びそれを用いたキーユニットにおいて、任意の種類の表示のみを選択的に発光させることができるようにすることを一つの目的とし、更に、各キーに複数種の表示をオーバーラップして形成しても任意の種類の表示のみを選択的に発光させることができるようにすることによって表示を正しく認識することを可能とし、延いては各キーの占有面積を狭くしても必要な大きさの表示を設けることができるようにし、以て電子機器の小型化に寄与することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のキーシートは、表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示を有し、上記各種の表示層は、上記表示層の各表示種に対応して設けられその表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源のうちから選択されたものからの光を受けて可視光を発光するようにされたことを特徴とする。
【0011】
請求項2のキーユニットは、表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示を有し、上記各種の表示層が上記表示層の各表示種に対応する、その表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を受けて可視光を発光するようにされたキーシートと、上記表示層の各表示種に対応して設けられ、その表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源を有する基板と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3のキーシートは、キートップと、キーベースとの間に、該キーベース側からの光に対しての透過性が強く、キートップ天面側からの光に対しては反射性の強い透明性膜と、その裏面に位置し、表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示とを有し、上記各種の表示層は、上記表示層の各表示種に対応して設けられその表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源のうちから選択されたものからの光を受けて発光するようにされたことを特徴とする。
【0013】
請求項4のキーシートは、表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示を有し、上記各種の表示層は、その表示層の各表示種に対応して設けられその表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源のうちから選択されたものからの光を受けて可視光を発光するようにされ、上記複数種の表示のすべての種類又は一部の種類の表示形成領域同士がオーバーラップしてなることを特徴とする。
【0014】
請求項5のキーユニットは、表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示を有し、上記各種の表示層が上記表示層の各表示種に対応する、その表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を受けて可視光を発光するようにされたキーシートと、上記表示層の各表示種に対応して設けられ、その表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源を有する基板と、を備え、上記複数種の表示のすべての種類又は一部の種類の表示形成領域同士がオーバーラップしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2のキーシー、キーユニットトによれば、各種の表示層がその種類と対応する波長帯域の光によって励起される発光体を含有するので、複数種の光源のうちのその波長帯域の光を発生する光源がその光を発生したときのみそれによって励起されて発光する。
従って、任意の種類の表示のみを選択的に発光させることができる。
【0016】
請求項3のキーシートによれば、キートップと、キーベースとの間に、該キーベース側からの光に対しての透過性が強く、キートップ天面側からの光に対しては反射性の強い透明性膜を設けたので、非照明時には外光がその透明性膜により反射されるので表示が視認できず或いは視認し難く、照明時には表示の蛍光による光がその透明性膜を透過するので、表示が明確に視認できるようにできる。
【0017】
請求項4、5のキーシート、キーユニットによれば、複数種の表示のすべての種類又は一部の種類の表示形成領域同士がオーバーラップしてなるので、キーの面積を狭くすることができ、キーを有する電子機器等の機器を小さくすることができ、延いては各キーの占有面積をより狭くしても必要な大きさの表示を設けることを可能とし、以て、電子機器等の機器の小型化に寄与することができる。
尚、照明時においては常に1種類の光源のみが発光するようにすれば一つのキーの複数種の表示が同時に発光する畏れはなく、複数種の表示の同時発光による視認上の不都合が生じるおそれは無い。

【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態は、基本的には、各キーの各種の表示層が、その各表示種に対応して設けられその表示層の発光体(蛍光体)を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源のうちから選択されたものからの光を受けて可視光を発光するようにしたものであり、表示をキートップの裏面に設けたタイプのものにおいて、そのキートップとキーベースの間の表示よりもキートップ側に、キーベース側からの光に対しての透過性が強く、キートップ天面側からの光に対しては反射性の強い透明性膜、即ちハーフミラー膜を設けるようにしてもよい。
【0019】
また、各キーの表示のすべての種類又は一部の種類の表示形成領域同士がオーバーラップするようにしても良い。これには、各キーのすべての種類の表示がオーバーラップする態様と、一部の種類の表示がオーバーラップする態様、例えば、ひらがなとアルファベットがオーバーラップし、数字のみ独自の領域を占有するという態様とがある。
尚、表示を成す表示層に含有させる発光体は、樹脂等からなるバインダー、色素となる顔料、溶剤を混合したインクを用いてそれを塗布することにより形成することができる。
【0020】
本発明は、原則として、表示をキートップの天面に設けた天面加飾タイプのものと、キートップの裏面に設けた裏面加飾タイプのものの両方に適用することができる。
また、表示には、特定波長領域の光により励起されて可視光を発生する発光体を含有する表示層を特定のパターンにより形成したものそのものによってその表示を示すようにしたものと、全面的に表示層を形成し、その表示層を所定のパターンに形成された遮光膜で覆い、その遮光膜の抜きパターンによりその表示を示すようにしたものとがありうる。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明を図示実施例に基いて詳細に説明する。
図1(A)〜(C)、図2及び図3(A)〜(C)は本発明の第1の実施例を示すものであり、図1はキーユニットの要部(一つ当たり複数種の表示のあるキーが配置された部分)について示すもので、(A)はキーの表示を示す平面図、(B)はキーの断面図、(C)は照明用光源を成すLED(発光ダイオード)の配置を示す平面図、図2は実施例の全体の分解斜視図、図3(A)〜(C)は異なる状態での表示を示す平面図であり、(A)は数値による表示が示された状態を、(B)はアルファベットによる表示が示された状態を、(C)は非照明時の状態を示す。
【0022】
先ず、図1を参照して本実施例の要部(一つ当たり複数種の表示のあるキーが配置された部分)の構成について説明する。尚、図1(A)、図3(A)、(B)においては、便宜上、1から6までの数値の表示を有する6個のキーのみを示し、他を省略する。第1の実施例以降の各実施例についても同様である。
本実施例は英米向けのもので、キーシートの各キー2、2、2、・・・は、1桁の数値の表示4、4、4、・・・とアルファベットの表示6、6、6、・・・の2種類の表示を有する。また、本実施例は、本発明をキーベースが補強板により補強された狭ピッチキーシートタイプに適用したものである。
【0023】
8はキー2のキートップで、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透光性樹脂からなる。10はキー2のキーベースで、シリコーンゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材と、PCやPET等との複合材であり、その表面に上記キートップ8が接着されている。このキートップ8とキーベース10によりキーシートが構成される。10a、10a、・・・は、そのキーベース10の上記各キートップ8、8、・・・(及び102、102、・・・)が接着される台座部分である。
本実施例は天面加飾タイプなので、表示2、4を構成する表示層40、60はキートップ8の表面(天面側の面)に形成されている。12は耐摩耗性を有すると共にその表示層40、60を覆い非照明時において表示4、6を隠す役割を果たすコーティング層であり、例えば、所謂スモーク塗料が用いられる。尚、コーティング層12に代えて、例えば、蒸着、スパッタリング等により形成された金属薄膜を含むハーフミラー構造の層としても良い。(以下の実施例においても同様)。
【0024】
数値を示す表示4を構成する表示層40と、アルファベットを示す表示6を構成する表示層60とは、共に、蛍光材料による顔料とバインダーと溶剤からなるインクを塗布することにより形成されている点では共通するが、顔料が異なり、本例では、表示層40が含有する顔料は波長400nmの光により励起されて可視光を発光する蛍光物質からなり、表示層60が含有する顔料は波長300nmの光により励起されて可視光を発光する蛍光物質からなる。発光色は互いに同じであっても良いが、異なる方(例えば、表示層40の発光色が赤、表示層60の発光色が緑というように)がカラーフルなのでより好ましいと言える。顔料としては例えば金属酸化物の如き無機材料或いは有機材料を用いることができる。尚、表示層40、60は非照明時には白色である。
【0025】
14はキーベース10の固定部、16は押し子、18はその押し子16と固定部14との間の薄肉にされることによって弾性を帯びるようにされた可撓部である。
42は補強板で、PCやPET等の透明樹脂からなり、その孔、切欠の内側面にて固定部14の外側面に熱融着されてこのキーベース10を補強して剛性、形状安定性を付与する。44は補強板42の表面を覆うマスクシートである。
20はキーシートが配置される配線基板であり、この配線基板20とキーシート(上記キートップ8とキーベース10により構成される)とによりキーユニットが構成される。24、24、・・・はこの配線基板20の表面に形成された各対の電極を覆うSUS(ステンレス鋼)から成るメタルドームで、各キー2、2、・・・に対応して設けられている。これ等のメタルドーム24、24、・・・はこの各対の電極へ上記押し子16により押されることにより潰れた形状になってその対を成す電極間を電気的に接続して当該キー2をオン状態にする。
【0026】
26は照明用の光源を成すLED(発光ダイオード)で、一つの配線基板20に複数のLEDが配設されており、本実施例では、図1(C)に示すように、表示層40を励起して発光させる400nmの波長の光を発生するLED26と、表示層60を励起して発光させる300nmの波長の光を発生するLED26とを有し、そのLED26及び26は、例えば、それぞれ市松状であって互いに補完し合う位置関係になるように、縦方向及び横方向に交互に配設されている。
尚、上記マスクシート44はその各LED26・・・及び26、・・・の形成された部分上に抜き部分を有し、そのLED26からの光を上方に通すようにされている。
【0027】
次に、図2を参照して本実施例の要部以外の部分を簡単に説明する。
102、102、・・・は複数種の表示を有しない(一つの表示又は無表示の)キー、10a、10a、・・・はキーベース10の各キートップ21、22、・・・及び102、102、・・・が接着された台座部分、26a、26a、・・・は上記キー102、102、・・・の表示を照明するための光源を成すLEDで、点灯状態にされて上記キー102、102、・・・の表示を励起又は通常の照明により照らす。このLED26a、26a、・・・による照明は、複数種の表示を有するキー2、2、2、・・・用の照明用光源であるLED26、26、26、・・・、26、26、26、・・・による照明と同じ原理であっても、異なる原理であっても良い。尚、キーシートの構造又はデザインによっては、通常の可視光を発するLED26a、26a、・・・の発光が複数種の表示を有するキー2、2、2、・・・に影響を与えないように、適宜な遮光手段を設けることが必要となる場合もある。
【0028】
次に、図3を参照して本実施例の要部に関する動作について説明する。
このような実施例においては、数値による表示4を示すべき時は、LED26、26、26、・・・をオン(点灯)させる。すると、LED26、26、26、・・・から波長400nmの光が発生し、その光が上方の表示層40、40、40、・・・、60、60、60、・・・にあたるが、数値による表示4を構成する表示層40はその光に励起される蛍光物質を含有するので、発光する。それに対して、アルファベットによる表示6を構成する表示層60、60、60、・・・はその波長400nmの光により励起される物質を含有しないので、発光しない。
従って、図3(A)に示すように、数値による表示4のみが示される状態になる。
【0029】
また、アルファベットによる表示6を示すべき時は、LED26、26、26、・・・をオン(点灯)させる。すると、LED26、26、26、・・・から波長300nmの光が発生し、その光が上方の表示層40、40、40、・・・、60、60、60、・・・にあたるが、アルファベットによる表示6を構成する表示層60はその光に励起される蛍光物質を含有するので、発光する。それに対して、数値による表示4を構成する表示層40、40、40、・・・はその波長300nmの光により励起される物質を含有しないので、発光しない。
従って、図3(B)に示すように、アルファベットによる表示6のみが示される状態になる。
【0030】
依って、本実施例によれば、数値による表示4のみ示して欲しいときはその数値による表示4を構成する表示層40、40、40、・・・のみ励起させて発光するようにでき、また、アルファベットによる表示6のみ示して欲しいときはそのアルファベットによる表示6を構成する表示層60、60、・・・のみ励起させて発光するようにできる。
尚、非使用時はLED26、26、26、・・・、26、26、26、・・・が点灯しないので、各表示4、4、4、・・・、6、6、6,・・・は照明を受けず、図3(C)に示すように、視認が不能乃至難しい状態になる。従って、非使用時に不必要な表示4、4、4、・・・、6、6、6,・・・が生じて目障りになることを回避することができる。
【実施例2】
【0031】
図4(A)〜(C)は本発明の第2の実施例を示すもので、(A)はキーシートのキーの表示を示す平面図、(B)はキーユニットの一つのキーの断面図であり、(C)は照明用光源の配置例を示す平面図である。
本実施例は、第1の実施例とは、数値による表示とアルファベットによる表示の他にあ、か、た、・・・のひらがな行の表示を有する日本向け仕様である点では相違するが、それ以外の点では共通するので、共通点が多く、共通する点については既に説明済みであるので詳細な説明を省略し、相違する点のみ詳細に説明することとし、図4において図1、2と共通する部分については同じ符号を付すこととする。
【0032】
本実施例においては、各キー2、2、2、・・・は、1桁の数値の表示4、4、4、・・・とアルファベットの表示6、6、6、・・・の他に、ひらがな行の表示3、3、3、・・・を有する。そして、それに伴って、キートップ8の表面には、表示2、4を構成する表示層40、60の他に、ひらがな行の表示3を構成する表示層30が形成されている。
そして、ひらがな行の表示3を構成する表示層30は、数値を示す表示4を構成する表示層40及びアルファベットを示す表示6を構成する表示層60と同様に、蛍光材料による顔料とバインダーと溶剤からなるインクを塗布することにより形成されているが、顔料が異なり、本例では、上述のように、表示層40が含有する顔料は波長400nmの光により励起されて可視光を発光する蛍光物質からなり、表示層60が含有する顔料は波長300nmの光により励起されて可視光を発光する蛍光物質からなるのに対して、表示層30が含有する顔料は例えば波長365nmの光により励起されて可視光を発光する蛍光物質からなる。
【0033】
上述したように、表示層40、30、60の励起光の波長は異なる必要があるが、発光色は互いに同じであっても良い。しかし、その発光色が異なる方(例えば、表示層40の発光色が赤、表示層60の発光色が緑、表示層30の発光色が青というように)がカラーフルなのでより好ましいと言えること、顔料として例えば金属酸化物の如き無機材料あるいは有機材料を用いることができること、第1の実施例の場合と同様である。また、表示層30は表示層40、60と同様には非照明時には白色である。
本実施例では、図4(C)に示すように、表示層40を励起して発光させる400nmの波長の光を発生するLED26、26、26、・・・及び表示層60を励起して発光させる300nmの波長の光を発生するLED26、26、26、・・・の他、表示層30を励起して発光させる365nmの波長の光を発生するLED26、26、26、・・・を有し、例えば図4(C)に示すように配設されている。
【0034】
このような実施例においては、数値による表示4を示すべき時は、LED26、26、26、・・・をオン(点灯)させると、図3(A)に示したと同様に、数値による表示4のみが示される状態になり、アルファベットによる表示6を示すべき時は、LED26、26、26、・・・をオン(点灯)させると、図3(B)に示したと同様に、数値による表示6のみが示される状態になること前述の通りであるが、同様に、ひらがな行の表示3、3、3、・・・を示すべき時は、LED26、26、26、・・・を点灯させると、そのLED26、26、26、・・・が発生する365nmの波長の光によって各表示層30が励起され、可視光、例えば青色光を発生する。
従って、その青色光によるひらがな行の表示3が示される。
以上の第1及び第2の実施例は、本発明を天面加飾タイプに適用したものであったが、裏面加飾タイプのものにも適用できる。
【実施例3】
【0035】
図5は本発明の第3の実施例の一つのキーを示す断面図である。本実施例は、第2の実施例とは、キーベースが補強されていない一般的なタイプのキーシート(キーベース全体がシリコーンラバーや熱可塑性エラストマー等の弾性材によって形成されたもの)に本発明を適用したものであるという点と、裏面加飾タイプ、即ちキートップ8の裏面に表示が形成されているタイプであるという点と、その裏面の表示4、3、6を成す表示層40、30、60がキートップ8の裏面にハーフミラー膜32を介して形成されている点とで相違するが、それ以外の点では共通し、共通する点については説明済みなのでその説明を省略する。また、図5の図1、図2と共通する部分については同一の符号を付すこととする。
上記ハーフミラー膜32は、裏面側から天面側への光の透過を許容し、天面側から裏面側への光をほとんど反射する、例えば、蒸着、スパッタリング等により形成された金属薄膜である。
【0036】
このような実施例によれば、非照明時(照明用光源であるLED26の非点灯時)には、外光が上記ハーフミラー膜32により反射されるので、表示層40、30、60による表示4、3、6が視認しがたい。
それに対して、照明時(照明用光源であるLED26の点灯時)には、LED26からの光により励起された表示層40、30、60で発光した光が上記ハーフミラー膜32を透過して天面側に行くので、その表示層40、30、60による表示4、3、6が表側からきれいに視認できる。
前述のハーフミラー膜32の無い第1及び第2の実施例においても非照明時と照明時の表示4、3、6の視認性のコントラストが強いが、本実施例のようにハーフミラー膜32を設けると、それによりコントラストをより強めることができ、非照明時には表示4、3、6をほとんど視認できず、照明時には表示4、3、6をはっきりと視認できるようにできる。
【実施例4】
【0037】
図6(A)、(B)、(B’)は本発明の第4の実施例を示すもので、(A)はキーシートのキーの表示を示す平面図、(B)は(A)のB−B線視断面図、(B’)は同じくB’−B’線視断面図である。
本実施例は、各キー2の2種の表示、具体的には、1桁の数値による表示4とアルファベットによる表示6との占有領域をオーバーラップさせたものである。
具体的には、表示4を構成する表示層40を第一層の表示層として形成した後、表示層60を第2層の表示層として形成し、部分的には表示層40と表示層60とが重なり合うようにしたものである。尚、図6(B)に示した表示層40と表示層60を単純に積層した構造のものの他、表示層40の形成後、その上に表示層40によって生じる段差を無くして平坦にするために透明インクによる別の層を重ね、その後に表示層60を形成するようにしても良い。
【0038】
このような実施例によれば、1桁の数値による表示4とアルファベットによる表示6との占有領域をオーバーラップさせたので、表示4、6が形成されたキー2を小型化しても視認に必要な大きさの表示を形成することができ、キー2を支障なく小型化することができ、延いてはキーのある携帯電話機等の機器の小型化を図ることができる。
尚、照明時においては常に1種類の光源のみが発光するようにすれば一つのキーの複数種の表示が同時に発光する畏れはなく、複数種の表示の同時発光による視認上の不都合が生じるおそれは無い。
【実施例5】
【0039】
図7は本発明の第5の実施例を示すキーシートのキーの表示を示す平面図である。
本実施例は、図6に示した実施例を、一つのキー2に、1桁の数値による表示4とアルファベットによる表示6とひらがな行による表示3を形成したタイプのものに適用したものである。
このように、2種類より多い種類の表示を有するタイプのキーシートにも、複数種の表示の占有領域をオーバーラップさせると言う技術的思想を適用することができる。
【実施例6】
【0040】
図8(A)、(B)は本発明の第6の実施例とそのバリエーションを示すキーシートのキーヘッドの断面図であり、(A)に示すものは天面加飾タイプ、(B)はそのバリエーションである裏面加飾タイプを示し、共に、狭ピッチタイプではなく、一般的なタイプである。
第1〜第5の実施例は、表示を、LED26が発生した光により励起される発光体を含有する表示層40、60そのものによって形成したものであるが、それに対して、本実施例は、表示層40、60を覆う遮光膜34の抜き部分36により形成したものである。
このように、本発明は表示層40、60を覆う遮光膜34の抜き部分36により表示を形成するという態様でも実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、電子機器類、例えば携帯電話機、PHS、携帯情報端末(PDA等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ等の照光式のキーシート及びそれを備えたキーユニットに関するものであり、天面加飾タイプに対しても裏面加飾タイプに対しても利用可能性があり、また、キーベースが補強板により補強された狭ピッチタイプに対しても、そうではない一般的なタイプに対しても利用可能性があり、更には、表示を表示層そのものによって為すタイプのものに対しても表示層を覆うマスク層の抜き部分により為すタイプのものに対しても利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1(A)〜(C)は本発明の第1の実施例のキーユニットの要部(一つ当たり複数種の表示のあるキーが配置された部分)について示すもので、(A)はキーの表示を示す平面図、(B)はキーの断面図、(C)は照明用光源を成すLED(発光ダイオード)の配置を示す平面図である。
【図2】上記第1の実施例の実施例の全体的分解斜視図である。
【図3】(A)〜(C)は上記第1の実施例のキーユニットの要部の異なる状態での表示を示す平面図であり、(A)は数値による表示が示された状態を、(B)はアルファベットによる表示が示された状態を、(C)は非照明時の状態を示す。
【図4】(A)〜(C)は本発明の第2の実施例を示すもので、(A)はキーシートのキーの表示を示す平面図、(B)はキーユニットの一つのキーの断面図であり、(C)は照明用光源の配置例を示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施例の一つのキーを示す断面図である。
【図6】(A)、(B)、(B’)は本発明の第4の実施例を示すもので、(A)はキーシートのキーの表示を示す平面図、(B)は(A)のB−B線視断面図、(B’)は同じくB’−B’線視断面図である。
【図7】本発明の第5の実施例を示すキーシートのキーの表示を示す平面図である。
【図8】(A)、(B)は本発明の第6の実施例を示すキーヘッドのキーの各々別の例の断面図である。
【図9】背景技術を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
2(2、2、2、・・・)・・・キー、
3(3、3、3、・・・)・・・ひらがな行の表示、
4(4、4、4、・・・)・・・1桁の数値の表示、
6(6、6、6、・・・)・・・アルファベットの表示、
8・・・キートップ、10・・・キーベース、8、10・・・キーシート、
14・・・固定部、16・・・押し子、20・・・基板(配線基板)、
8、10、20・・・キーユニット、電極、24・・・メタルドーム、
26(26、26、26)・・・光源(照明用光源を成す発光ダイオードLED)、
30、40、60・・・表示を成す表示層、32・・・透明性膜(ハーフミラー膜)、
34・・・遮光膜、36・・・遮光膜の抜き部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示を有し、
上記各種の表示層は、上記表示層の各表示種に対応して設けられその表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源のうちから選択されたものからの光を受けて可視光を発光するようにされた
ことを特徴とするキーシート。
【請求項2】
表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示を有し、上記各種の表示層が上記表示層の各表示種に対応する、その表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を受けて可視光を発光するようにされたキーシートと、
上記表示層の各表示種に対応して設けられ、その表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源を有する基板と、
を備えたことを特徴とするキーユニット
【請求項3】
キートップ・キーベース間に、該キーベース側からの光に対しての透過性が強く、キートップ天面側からの光に対しては反射性の強い透明性膜と、
上記透明性膜の裏面に位置し、表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示と、
を有し、
上記各種の表示層は、上記表示層の各表示種に対応して設けられその表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源のうちから選択されたものからの光を受けて発光するようにされた
ことを特徴とするキーシート。
【請求項4】
表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示を有し、
上記各種の表示層は、その表示層の各表示種に対応して設けられその表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源のうちから選択されたものからの光を受けて可視光を発光するようにされ、
上記複数種の表示のすべての種類又は一部の種類の表示形成領域同士がオーバーラップしてなる
ことを特徴とするキーシート。
【請求項5】
表示種毎に異なる波長帯域の光のみにより励起されて可視光を発する発光体を含有する表示層そのもの若しくはそれを選択的に遮光する遮光性層の抜き部分による複数種の表示を有し、上記各種の表示層が上記表示層の各表示種に対応する、その表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を受けて可視光を発光するようにされたキーシートと、
上記表示層の各表示種に対応して設けられ、その表示層の発光体を励起させる互いに異なる波長帯域の光を発する複数種の光源を有する基板と、
を備え、
上記複数種の表示のすべての種類又は一部の種類の表示形成領域同士がオーバーラップしてなる
ことを特徴とするキーユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−242302(P2007−242302A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60095(P2006−60095)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】