説明

キーシート

【課題】薄型のキーシートでありながら、操作者の指が触れる頻度の高い操作部の広い領域において、抗菌作用を持たせることができるキーシートを提供する。
【解決手段】機器101の筐体104に仕切桟のない操作開口104cから露出されるキーシート11について、ベースシート12と、該ベースシート12の表面の略全面に形成されたキートップ膜14と、該キートップ膜14が部分的に厚肉となって突出したキートップ本体13と、を備える構成とし、前記キートップ膜14及びキートップ本体13を液状硬化型樹脂組成物に無機系抗菌剤を配合した樹脂組成物の硬化体で形成する。これにより、同時にキートップ本体13のみならず、キートップ本体13の周囲の部位にも抗菌効果をもたらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末機器、パーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)、AV機器、デジタルカメラなどの撮像機器、カーナビゲーションに代表される車載電装機器、ゲーム機器、リモコン、キーボードなど、各種電子機器の操作部に用いられるキーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、例えば携帯電子機器等に見られるように入力装置を備えた各種電子機器において、その入力装置として、電子機器の筐体に形成した開口から全体を露出させ、筐体に両面テープ等で貼り付けて取り付けるタイプのキーシートが用いられている。こうしたキーシートは、薄型化に適した構成である点、キーシートと筐体との一体的なデザインを付与できる点、キーシートの付け替えが可能である点、という点をメリットとして採用されているものと考えられる。このようなキーシートは、平坦な樹脂フィルムでなるベースシートと、そのベースシート上に部分的に突出して形成したキートップとを備えたシンプルな構成であり、そのキートップはベースシート上に薄く液状樹脂を塗布し、硬化させる手法により製造されている。こうした構成のキーシートでは上記の通り薄型を重視される傾向にあり、機能的な観点での検討はほとんどなされていない。
【0003】
そこで、本発明者は、薄型キーシートの付加機能として、抗菌作用を持つキーシートを検討した。抗菌作用を有する入力部品としては、例えば、特開平9−46055号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−46055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された入力部品は、キーシートにおける複数のボタン部(キートップ)が機器の筐体に形成したボタン部(キートップ)に対応する孔部から露出するタイプのものであるため、キーシートにおけるキートップのみならず、キートップ周囲の筐体にも抗菌剤を配合する必要があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、薄型のキーシートでありながら、操作者の指が触れる頻度の高い操作部の広い領域において、各部材に抗菌剤を配合することなく、抗菌作用を持たせることができるキーシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、機器の筐体に仕切桟のない操作開口から露出されるキーシートについて、ベースシートと、該ベースシートの表面の略全面に形成されたキートップ膜と、該キートップ膜が部分的に厚肉となって突出したキートップ本体と、を備え、前記キートップ膜及び前記キートップ本体は、常温で液状である液状硬化型樹脂組成物に無機系抗菌剤を配合した樹脂組成物の硬化体からなることを特徴とするキーシートを提供する。
【0008】
機器の筐体に仕切桟のない操作開口から露出されるキーシートについて、ベースシートと、該ベースシートの表面の略全面に形成されたキートップ膜と、該キートップ膜が部分的に厚肉となって突出したキートップ本体と、を備えるため、隣接するキートップ本体間及びキートップ本体と前記筐体との間にあるベースシート上のキートップ膜がフレームに相当する部位となる。そして、前記キートップ膜及び前記キートップ本体は、前記液状硬化型樹脂組成物に無機系抗菌剤を配合した樹脂組成物の硬化体からなるため、キートップ本体のみならず、キートップ本体周囲の上記フレームに相当する部位もキートップ本体と同一材料で抗菌効果を奏することができる。よって、操作者の手指が触れる機会の多いキートップ本体(ボタン)周囲の比較的広い領域に亘って抗菌効果をもたらすことができる。
【0009】
前記樹脂組成物は、前記液状硬化型樹脂組成物100重量部に対して、無機系抗菌剤0.5重量部〜5重量部を含有し、前記キートップ本体はその透過率が70%以上であることを特徴とする。
【0010】
前記樹脂組成物は、前記液状硬化型樹脂組成物100重量部に対して、無機系抗菌剤0.5重量部〜5重量部を含有するため、キーシートの表面の略全面に抗菌効果を有しつつ、キートップ本体の透過率を70%以上とすることができる。キートップ本体はその透過率が70%以上であるため、透明性が高く、キートップ本体の裏面側に数字や文字等の表示部を有する場合にもそれが視認され易い。また、キーシートの裏面側の光源によりキートップ本体を照光する所謂照光式のキーシートとする際にも、光源からの光がキートップ本体を透過し易い。さらに本発明は、前記無機系抗菌剤が、Ag−Zn系抗菌剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機器の筐体に仕切桟のない操作開口から露出される薄型化に適したキーシートについて、ベースシートの表面の略全面に形成されるキートップ膜にて、部分的に厚肉となって突出したキートップ本体を形成し、そのキートップ膜に無機系抗菌剤を含有するため、キートップのみならずその周囲にも抗菌効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態のキーシートを搭載した携帯通信端末機を示す平面図。
【図2】図1のSA−SA線断面図。
【図3】実施形態のキーシートを示す平面図。
【図4】図3のSB−SB線断面図。
【図5】実施形態のキーシートにおける製造方法であって、成形型のキャビティに液状硬化型樹脂組成物を充填する際の説明図。
【図6】実施形態のキーシートにおける製造方法であって、成形型にベースシートを配置し、液状硬化型樹脂組成物にベースシート側から光を照射する際の説明図。
【図7】実施形態のキーシートの一変形例を示す図4相当の断面図。
【図8】実施形態のキーシートの一変形例を示す図4相当の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について図面を参照してさらに詳しく説明する。なお、本実施形態では携帯電話機の入力部品に用いられるキーシートを例に挙げて示す。
【0014】
本実施形態のキーシート11は、図1及び図2に示すように、ディスプレイ部102と操作部103とを備える機器(携帯通信端末機)101において、その操作部103側の筐体104(ケース104a,104b)に、仕切桟のない操作開口104cから全体的に露出されるようにして用いられる。図1及び図2は簡易的に示したものであるが、携帯通信端末機101は、上側ケース104a及び下側ケース104bによる筐体104内のキーシート11の操作面とは反対側に接点部品106等が設置された基板105があり、さらに基板105の下方にバッテリー109がカバー110で蓋をされて搭載されている。
【0015】
キーシート11は外縁で両面テープ108により上側ケース104aに固着されており、その固定されている外縁の部分を除いて、操作面側の略全面が操作開口104cから露出している。キーシート11は可撓性を有しており、筐体104内でキーシート11の下方にある基板105上の皿バネ等でなる接点部品106を押圧することができるようになっている。図2では接点部品106の上に押し子107aを有する絶縁性シート107が設けられている例を示している。
【0016】
図3は本実施形態のキーシート11の平面図であり、図4は図3のSB−SB線断面図を表す。図3及び図4に示すように、キーシート11は、ベースシート12とキートップ本体13とキートップ膜14とを備えている。
【0017】
ベースシート12はキーシート11の基材であり、平面視で矩形状に形成されている。このベースシート12は、キーシート11を押圧操作した際に撓み変形して、キーシート11の裏面側に備えられる接点部品106を押圧できる程度に可撓性を有している。このようなベースシート12の厚さとしては、50μm〜300μmが好ましい。
【0018】
ベースシート12の材質は、廉価で汎用性のある合成樹脂製のフィルムが好適である。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、ポリアミド(PA)フィルム、ポリウレタン(PU)フィルム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどや、それらをアロイ化又はブレンド化したフィルムを用いることができる。また、合成樹脂製のフィルム以外には、織布、不織布などが挙げられる。
【0019】
キートップ本体13はキーシート11の「押圧操作部」となる部材であり、平面視で矩形状に形成され、ベースシート12の操作面側に形成されている。図3で表すキーシート11では、ベースシート12の操作面側に複数のキートップ本体13が形成されている。これらのキートップ本体13はベースシート12の表面の略全面に形成されたキートップ膜14から形成され、そのキートップ膜14が部分的に厚肉となって突出したことによって形成されている。ここで、キートップ膜14がキーシート11の表面の略全面に形成されていることは、本発明のキーシート11が機器101の筐体104に仕切桟のない操作開口104cから露出されるものであり、少なくともキーシート11の露出される部分にはキートップ膜14が形成されていることを意味する。したがって、キーシート11の表面の外縁部分で両面テープ108等により筐体104の裏面側に貼り付ける場合においては、キーシート11の外縁部分は上記操作開口104cから露出されないため、外縁部分にまでキートップ膜14があることを要しない。
【0020】
キートップ本体13の厚さは、薄型化の実現と、確実に硬化した液状硬化型樹脂組成物で形成されることから、50μm〜500μmが好ましい。また、キートップ本体13を除く部分のキートップ膜14の厚さは、キートップ本体13との視覚的・触覚的な区別から50μm未満が好ましい。
【0021】
キートップ本体13及びキートップ膜14は、常温(15℃)で液状である液状硬化型樹脂組成物に無機系抗菌剤を含有した樹脂組成物で成形されたものであり、換言すれば、該樹脂組成物の硬化体からなるものである。
【0022】
キートップ本体13及びキートップ膜14の主材質としての液状硬化型樹脂組成物は、ポリマー、オリゴマー、モノマー、重合開始剤、添加剤などが含まれる常温で液状の反応硬化型樹脂組成物であり、透明なものを用いるのが好ましい。
【0023】
そして液状硬化型樹脂組成物の反応形態には、活性エネルギー線硬化型や熱硬化型を使用することができる。なかでも、ベースシート12に熱可塑性樹脂フィルムを用いたとしても、反応硬化の際に高温加熱されて熱変形されることのない活性エネルギー線硬化型が好ましい。活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線などが挙げられるが、安価な装置で硬化工程も簡単な紫外線を用いることが好ましく、液状硬化型樹脂組成物には紫外線硬化型樹脂組成物が好適である。紫外線硬化型樹脂組成物としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのアクリレート系樹脂が挙げられる。
【0024】
液状硬化型樹脂組成物に配合される無機系抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛の1種若しくは2種以上の抗菌性金属を無機化合物に担持させた無機系抗菌粉体を用いることができる。担持体である無機化合物としては、ゼオライト、酸化チタン、シリカゲル、アパタイト、リン酸ジルコニウム、アルミニウム硫酸塩水酸化物、燐酸カルシウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。またリン酸系、硼酸系、珪酸系の各系ガラスの1種若しくは2種以上をガラス形成成分としたガラスに、銀、銅、亜鉛の1種若しくは2種以上の抗菌性金属を含有せしめた抗菌性ガラス粉体も無機系抗菌粉体として用いることができる。
【0025】
液状硬化型樹脂組成物に対する無機系抗菌粉体の含有量が少なすぎると抗菌性が発現し難い。一方、無機系抗菌粉体の含有量が多すぎるとキートップ本体13等の透明性が損なわれ、また、無機系抗菌粉体は高価なものであり無駄なコストを発生させてしまう。このような観点から、無機系抗菌粉体の含有量は、液状硬化型樹脂組成物100重量部に対して、0.02〜10重量部であり、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0026】
無機系抗菌粉体の平均粒子径は生産性や得られるキートップ本体13の透明性や抗菌性の発現のし易さ等から0.1〜10μmのものを用い得る。
【0027】
なお、液状硬化型樹脂組成物には他の添加剤、例えば、着色するための顔料や染料、フッ素系添加剤等の防汚性付与剤、可塑剤、老化防止剤、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤などを含有していても良い。
【0028】
キートップ本体13には、通常、文字、数字、記号、図柄などのキー種を表す表示部15が施される(断面図では図示せず)。キートップ本体13はベースシート12の表面上に成形した液状硬化型樹脂組成物の硬化体でなるため、キートップ本体13の裏面側に表示部15を設ける場合には、キートップ本体13やキートップ膜14を成形する前に、ベースシート12の表面又は裏面にインクを印刷して形成しておくことが好ましい。ベースシート12の裏面に表示部15を印刷する場合には、当然、ベースシート12を透光性としておく必要がある。また、表示部15に限らず、ベースシート12の表面や裏面には印刷、塗装、転写等の手法によりインク、塗料、箔等の加飾層を施しても良いし、キートップ本体13の成形後にキートップ本体13の表面にそのような加飾層を形成しても良い。また、表示部15を象るように形成された樹脂片や金属片等をキートップ本体13に埋設して設けることもできる。
【0029】
次にキーシート11における製造方法の一例について説明する。
【0030】
先ず図5で示すように、キートップ本体13と同形状のキャビティ17aを有するキートップ本体13の成形型17を用意し、キャビティ17aの容積以上に、無機系抗菌剤を配合した未硬化の液状硬化型樹脂組成物18としての紫外線硬化型樹脂組成物18を充填し、成形型17上にベースシート12を配置する。この時、ベースシート12を加圧して、図6で示すように、キャビティ17aの周囲に未硬化の紫外線硬化型樹脂組成物18を押し出し、押し出された紫外線硬化型樹脂組成物18がベースシート12の縁まで延ばされる。
【0031】
次に、紫外線ランプ19から照射される紫外線を透光性のベースシート12側から紫外線硬化型樹脂組成物18に照射して、紫外線硬化型樹脂組成物18を硬化と同時にベースシート12に固着する。この時に、キャビティ17a内の紫外線硬化型樹脂組成物18が硬化してキートップ本体13が形成され、キャビティ17aからベースシート12の縁と略同等の大きさにまで押し出された紫外線硬化型樹脂組成物18が硬化して、キートップ膜14が形成される。最後にベースシート12の表面上に形成したキートップ本体13及びキートップ膜14を成形型17から取り外し、キーシート11(図3,4)を得る。なお、ベースシート12をキーシート11の形状よりも大きい形状の樹脂フィルムとし、キートップ本体13やキートップ膜14の成形後に、所望のキーシート11の形状となるように樹脂フィルムの外周をキートップ膜14ごと切断することによってキーシート11を得ても良い。
【0032】
キーシート11の製造方法については、上記の実施形態のように、未硬化の紫外線硬化型樹脂組成物18をキャビティ17aから溢れ出させてベースシート12の縁まで延ばし、ベースシート12の表面の略全面にキートップ膜14を成形することで、成形後のキートップ本体13が一部欠けているといった所謂ショート不良の発生を回避することができる。
【0033】
上記の実施形態の製造方法のように、ベースシート12が透光性材料でなるとともに液状硬化型樹脂組成物18が紫外線硬化型樹脂でなり、キートップ本体13をベースシート12に成形する工程で、ベースシート12側から紫外線を照射することができる。このようにすれば、キートップ本体13の成形型17を金属金型とすることができ、金属金型の耐久性から量産に適しており、また、イニシャルコストを小さくすることができる。
【0034】
なお、上記の実施形態では、紫外線ランプ19から照射される紫外線をベースシート12側から照射する例を示したが、他の製造方法としては、キートップ本体13の成形型17を透光性材料で形成して、紫外線ランプ19から照射される紫外線をキートップ本体13の成形型17側から照射することもできる。このようにすれば、ベースシート12が透光性である必要はなく、遮光性のベースシート12も用いることができ、ベースシート12を機能や特性に合わせて適宜材料選択することができる。
【0035】
最後にキーシート11の作用、効果について説明する。
【0036】
本実施形態のキーシート11は、携帯通信端末機101の筐体104に仕切桟のない操作開口104cから露出され、露出されている部分の略全面がキートップ本体13及びキートップ膜14で構成されている。そして、このキートップ本体13及びキートップ膜14を同一の樹脂組成物で成形された硬化体とし、その樹脂組成物として液状硬化型樹脂組成物に無機系抗菌剤を配合したものを用いたため、キートップ本体13の形成と同時にキーシート11の操作面側全体に抗菌効果を奏することができる。
【0037】
また、前記樹脂組成物は、前記液状硬化型樹脂組成物100重量部に対して、無機系抗菌剤0.5重量部〜5重量部を含有するため、キーシート11の操作面(表面)の略全面に抗菌効果を有しつつ、キートップ本体13の透過率を70%以上とすることができる。キートップ本体13はその透過率が70%以上であるため、透明性が高く、キートップ本体13の裏面側に数字や文字等の表示部15を有する場合にもそれが視認され易い。また、キーシート11の裏面側の光源によりキートップ本体13を照光する所謂照光式のキーシートとする際にも、光源からの光がキートップ本体13を透過し易い。
【0038】
(実施形態の変形例)
・上記実施形態において、ベースシート12上に複数のキートップ本体13を備えるキーシート11の例を示したが、キートップ本体13が1つであっても良い。また、キーシート11やキートップ本体13の形状を矩形状として例示したが、当然他の形状であっても良い。
【0039】
・ベースシート12のキートップ膜14が形成された表面とは反対側の裏面には、機器101の筐体104内でキーシート11の下方にある基板105上に設置される接点部品106を押圧するために、図7で示すような押し子16を設けることができる。この押し子は図7で示すようにベースシート12の裏面に直接に複数個設けても良いし、図8で示すように、キートップ本体13とキートップ膜14との関係と同様に押し子本体16aと押し子膜16bの構成として設けても良い。また、図示しないが、ベースシート12とは別のフィルムシートを用意し、そのフィルムシートの裏面に押し子を形成しても良い。押し子の形成方法としては、常温で液状である液状硬化型樹脂組成物等を用いて、キートップ本体13と同様にして形成することができる。このようにキーシート11に押し子16を設けておけば、図2で示したような機器101の基板105上の接点部品106を被覆する押し子107a付きの絶縁性シート107などを設ける必要はなくなる。
【0040】
・上記実施形態のキーシート11については、キートップ本体13の表面とキートップ膜14の表面とを、相互に異なる表面粗さとすることができる。このようにすれば、キートップ本体13とキートップ膜14とを外観及び触感で識別することができ、キートップ本体13とキートップ膜14とを明確に区別することができる。例えば、キートップ本体13の表面を鏡面状に形成し、キートップ膜14の表面をシボ面状に形成すれば、キートップ本体13がキートップ膜14よりも光沢感が出ることにより強調され、あたかもキートップ本体13のみがベースシート12の操作面側に存在し、キートップ膜14が存在しないように見せることができる。
【0041】
・上記実施形態のキーシート11については、キートップ膜14をベースシート12の表面のみならず、ベースシート12の厚さ方向に沿う側面に対しても設けることができる。ベースシートの表面全体及び厚さ方向に沿う側面がキートップ膜14で被覆されるため、より抗菌作用を高めることができる。
【実施例】
【0042】
本発明を更に具体的に説明するために以下に実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0043】
(実施例1)
まず、紫外線硬化型樹脂組成物としてのアクリル系UV樹脂組成物(株式会社スリーボンド製、商品名:TB3042B)100重量部に対して、Ag−Zn系抗菌剤(富士ケミカル株式会社製、商品名:バクテキラー BM102N(平均粒子径2μm))を0.5重量部配合した樹脂組成物を調整した。
【0044】
次に図5で示すように、調整した樹脂組成物を成形型17のキャビティ17aに充填し、成形型17上にベースシート(PETフィルム)12を配置した。そして、ベースシート12を加圧して、図6で示すように、キャビティ4aから樹脂組成物17ベースシート12の縁まで押し流した。そして、紫外線ランプ19から照射される紫外線を透光性のベースシート12側から樹脂組成物18に照射して、樹脂組成物18を硬化と同時にベースシート12に固着させた。この時、キャビティ17a内の樹脂組成物18が硬化してキートップ本体13を形成した。また、キャビティ17aからベースシート12の縁と略同等の大きさにまで押し出された樹脂組成物18が硬化して、キートップ本体13を除くベースシート12の表面上に樹脂組成物18の硬化体でなるキートップ膜14を形成した。
【0045】
最後にベースシート12の表面上に形成したキートップ本体13及びキートップ膜14を成形型17から取り外し、キーシート11を得た。
【0046】
(実施例2)
実施例2のキーシート11は、Ag−Zn系抗菌剤の配合量を1重量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0047】
(実施例3)
実施例3のキーシート11は、Ag−Zn系抗菌剤の配合量を5重量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0048】
(実施例4)
実施例4のキーシート11は、Ag−Zn系抗菌剤の配合量を10重量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0049】
(比較例1)
比較例1のキーシート11は、Ag−Zn系抗菌剤を配合せずに製造した以外は、実施例1と同様である。
【0050】
以上の実施例及び比較例のキーシートについて、次の試験・評価を行った。
【0051】
<抗菌性試験>
日本工業規格JIS Z 2801の試験評価方法に準じて、大腸菌(NBRC3972)及び黄色ブドウ球菌(NBRC12732)による抗菌試験を行った。抗菌性はJIS Z 2801に定める生菌数と抗菌活性値にて判定した。具体的には、各試験片の表面に菌液を滴下し、フィルムにて菌液を密着させ、35℃にて24時間保存後、試験片上の菌液中の生菌数を測定し、抗菌活性値(抗菌活性値=log(無加工試験片の24時間後生菌数/抗菌加工試験片の24時間後生菌数)を求めた。抗菌活性値が2.0以上の場合、抗菌効果があると判定される。なお、大腸菌による試験では初期菌数2.6×106であり、黄色ブドウ球菌による試験では初期菌数2.5×105であった。また、抗菌活性値は上記式より算出されるため、「抗菌加工試験片」に相当する実施例1〜4では抗菌活性値を算出できるが、「無加工試験片」に相当する比較例1では抗菌活性値を算出できない。そのため、表1には各実施例及び比較例の生菌数と抗菌活性値を示した。
【0052】
<透過率>
各実施例及び比較例で用いたそれぞれの樹脂組成物について、厚さ0.3mm(キートップ本体の厚さと同等)の樹脂組成物の硬化体を成形し、透過率測定用の各試験片を作製した。各試験片について、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV−1600」)を使用し、透過率を測定した。透過率は波長380nm〜800nmにおいて測定し、その平均値を表1に示す。
【表1】

【0053】
実施例1〜4のキーシートでは、何れも抗菌活性値が2以上となり、抗菌効果があることが確認された。実施例1及び実施例2のキーシートでは、Ag−Zn系抗菌剤の配合量が0.5重量部と1重量部であるため、比較例1と比べて、透過率にほとんど差が無く、高い透明性を有していた。実施例3及び実施例4のキーシートでは、Ag−Zn系抗菌剤の配合量が5重量部と10重量部と多いため、比較例1と比べて透過率が低下した。比較例1のキーシートは、大腸菌及び黄色ブドウ球菌の両試験ともに生菌数が多く、抗菌効果は発揮されないことが確認された。
【0054】
以上をまとめると、実施例1〜4のキーシート11は、操作者の手指が触れる機会の多いキートップ本体13及びその周囲の部位の比較的広い領域に亘って抗菌効果をもたらすことができた。加えて、実施例1〜3のキーシートは、キートップ本体の透過率を70%以上、特に実施例1及び2のキーシートはキートップ本体の透過率を80%以上とすることができ、高い透明性を有していた。
【符号の説明】
【0055】
11・・・キーシート、12・・・ベースシート、13・・・キートップ本体、14・・・キートップ膜、15・・・表示部、16・・・押し子、16a・・・押し子本体、16b・・・押し子膜、17・・・成形型、17a・・・キャビティ、18・・・液状硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)、19・・・紫外線ランプ、101・・・機器(携帯通信端末機)、102・・・ディスプレイ部、103・・・操作部、104・・・筐体、104a・・・上側ケース、104b・・・下側ケース、104c・・・操作開口、105・・・基板、106・・・接点部品、107・・・絶縁性シート、107a・・・押し子、108・・・両面テープ、109・・・バッテリー、110・・・カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の筐体に仕切桟のない操作開口から露出されるキーシートにおいて、
ベースシートと、該ベースシートの表面の略全面に形成されたキートップ膜と、該キートップ膜が部分的に厚肉となって突出したキートップ本体と、を備え、
前記キートップ膜及び前記キートップ本体は、常温で液状である液状硬化型樹脂組成物に無機系抗菌剤を配合した樹脂組成物の硬化体からなることを特徴とするキーシート。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、前記液状硬化型樹脂組成物100重量部に対して、無機系抗菌剤0.5重量部〜5重量部を含有し、前記キートップ本体はその透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1記載のキーシート。
【請求項3】
前記無機系抗菌剤が、Ag−Zn系抗菌剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のキーシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−164450(P2012−164450A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22279(P2011−22279)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】