説明

キートップ構造、電子機器およびキートップ構造の製造方法

【課題】キートップ構造を押し込んだ際にクリック感に優れる、あるいは紫外線硬化型樹脂を硬化させてキートップ部材を作製する場合に当該キートップ部材の変形を抑えることができるキートップ構造、電子機器およびキートップ構造の製造方法を提供する。
【解決手段】キートップ構造60は、紫外線硬化型樹脂を硬化することによりシート状部61bと複数のキートップ61aとが形成されると共に、キートップ61aはシート状部61bよりも厚み寸法Tが大きく設けられ、かつ複数のキートップ61aが所定の間隔を有する状態で列状に配置されている部分を有するキートップ部材61と、基材に対して紫外線硬化型樹脂を硬化させてキートップ部材61を形成する際に、キートップ部材61の硬化後の収縮による変形を抑制するための変形抑制手段と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キートップ構造、電子機器およびキートップ構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の電子機器に使用されるキートップ構造は、一般的に樹脂成型品にインクを塗装し、および/または文字印刷等の加飾を施し、その後に一連から成るキートップ構造を形成するために、可撓性基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムまたはシリコーンゴム上に、接着および配列する技術が多く使用されている。また、最近では、携帯電話等の携帯端末を中心とした、薄型化の要望に対応する目的で、フィルム状の基材上に紫外線硬化型樹脂を成型すると共に、フィルム状の基材の裏面に印刷および/または加飾を施したキートップ構造が使用されている。
【0003】
このようなキートップ構造を製造するための技術としては、特許文献1に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−135083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1に開示されている手法にて基材の表面側(天面側)にキートップ部を形成し、さらに基材の裏面側に着色層を形成して、押釦スイッチ用部材のキートップ構造として用いる場合、以下のような問題点がある。
【0006】
まず、基材は、二軸延伸により形成されるポリエチレンテレフタレート(PET)等を材質としているため、伸縮性には優れない。そのため、ユーザがキートップ構造を押し込んだ際に、クリック感に優れないものとなっている(第1の課題)。
【0007】
また、基材の表面に、特許文献1に開示されている手法にてキートップ構造を形成する場合、紫外線硬化型樹脂を硬化させてキートップ部材を作製する際の収縮により、表面側(天面側)が凹となるようにキートップ構造が変形する(キートップ構造が反ってしまう;第2の課題)。ここで、かかる変形を抑制するために、基材の厚み寸法を増加させる手法を採ることが考えられる。しかしながら、基材の厚み寸法を増加させた場合でも、固定用テープ(両面テープ)のオフセット等の原因により、基材の端部には固定用テープで固定しきれない部分が一般には存在する。そのため、かかる基材の端部には局所的な変形(局所変形)が発生し、たとえばキー操作時に手触りする等によっても、局所変形による引っ掛かり感を感じることができる。ここで、引っ掛かり感が生じる端部に想定外の剥離力が加わる場合には、紫外線硬化型樹脂が基材から剥離してしまう可能性が存在する。
【0008】
また、基材を厚くする場合、キートップ部を押し込んだ場合でも、基材が変形し難くなり、キートップ構造としては適切ではなくなる。
【0009】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、第1の課題と第2の課題のうちの少なくとも1つを解決することにあり、キートップ構造を押し込んだ際にクリック感に優れる、あるいは紫外線硬化型樹脂を硬化させてキートップ部材を作製する場合に当該キートップ部材の変形を抑えることができるキートップ構造、電子機器およびキートップ構造の製造方法を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のキートップ構造の第1の側面は、液体状の紫外線硬化型樹脂を成型金型の凹部に注入し、凹部に注入された紫外線硬化型樹脂を覆い、かつ紫外線硬化型樹脂に密着する状態で基材を位置させ、液体状の紫外線硬化型樹脂に対して紫外線の照射を行って、紫外線硬化型樹脂を硬化させ、成型金型から基材とキートップ部材の一体物を取り外し、その後、基材とキートップ部材の一体物から基材を剥がすことにより、シート状部と、所定の間隔で列状に配置されると共にシート状部よりも厚み寸法が大きいキートップ部材を構成し、このキートップ部材を有するものである。
【0011】
このように構成する場合、紫外線硬化型樹脂は、その硬化に際して収縮するが、一体物から基材を剥がすことにより、当該キートップ部材の硬化後の収縮による変形を抑制することが可能となる。そのため、キートップ部材の表面側(天面側)が凹となるように変形することを抑えることが可能となる。また、基材を剥がすことにより、キートップ基材の端部に生じる局所変形を解消可能となり、たとえばキー操作時に手触りする等によっても、局所変形による引っ掛かり感を感じない状態とすることが可能となる。ここで、局所変形による引っ掛かり感を感じていると、引っ掛かり感が生じる端部に想定外の剥離力が加わる場合には、キートップ部材が基材から剥離してしまう虞があるが、本発明では、基材を剥がすことによりそのような不具合を無くすることが可能となっている。
【0012】
また、本発明のキートップ構造の他の側面は、上述の発明において、液体状の紫外線硬化型樹脂のうちキートップに対応する部分の少なくとも一辺について、その辺の端部よりも中央寄りの部位が、キートップの内部から離間する側に突出していて、硬化後のキートップ部材においては、キートップを構成する一辺は、キートップの内部から離間する側への突出が硬化収縮により解消されて直線状を為していることが好ましい。
【0013】
このように構成する場合には、未硬化の紫外線硬化型樹脂の硬化収縮において、キートップの少なくとも一辺が直線状を維持できる。そのため、硬化収縮の影響の少ないキートップを実現できる。
【0014】
また、本発明のキートップ構造の他の側面は、紫外線硬化型樹脂を硬化することによりシート状部と複数のキートップとが形成されると共に、キートップはシート状部よりも厚み寸法が大きく設けられ、かつ複数のキートップが所定の間隔を有する状態で列状に配置されている部分を有するキートップ部材と、基材に対して紫外線硬化型樹脂を硬化させてキートップ部材を形成する際に、キートップ部材の硬化後の収縮による変形を抑制するための変形抑制手段と、を具備するものである。
【0015】
このように構成する場合、紫外線硬化型樹脂は、その硬化に際して収縮するが、変形抑制手段の存在により、キートップ部材の硬化後の収縮による変形を抑制することが可能となる。そのため、キートップ構造の表面側(天面側)が凹となるように変形することを抑えることが可能となる。
【0016】
また、本発明のキートップ構造の他の側面は、上述の発明において、変形抑制手段は、キートップ部材の硬化後の収縮が所定範囲内に収まった後に、基材をキートップ部材から剥がすことにより構成されていることが好ましい。
【0017】
このように構成する場合、変形抑制手段は、硬化後の収縮が所定範囲内に収まった後に、基材をキートップ部材から剥がすことにより構成されているため、キートップ部材には伸縮性に優れない基材が接着していない状態となる。そのため、ユーザがキートップ構造を押し込んだ際に、クリック感に優れない状態を解消可能となる。
【0018】
さらに、本発明のキートップ構造の他の側面は、上述の発明において、シート状部の厚み寸法は、0.03mm〜0.15mmの範囲内であると共に、複数のキートップの間の所定の間隔は、0.2mm〜1.0mmであることが好ましい。
【0019】
このように構成する場合、キートップ部材の硬化後の収縮による変形を一層良好に抑制することが可能であると共に、ユーザがキートップ構造を押し込んだ際に、クリック感に優れたものとすることができる。
【0020】
また、本発明のキートップ構造の他の側面は、紫外線硬化型樹脂を硬化することによりシート状部と複数のキートップとが形成されると共に、キートップはシート状部よりも厚み寸法が大きく設けられ、かつ複数のキートップが所定の間隔を有する状態で列状に配置されている部分を有するキートップ部材を具備し、シート状部の厚み寸法は、0.03mm〜0.15mmの範囲内であると共に、複数のキートップの間の所定の間隔は、0.2mm〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0021】
このように構成する場合、キートップ部材の硬化後の収縮による変形を一層良好に抑制することが可能であると共に、ユーザがキートップ構造を押し込んだ際に、クリック感に優れたものとすることができる。
【0022】
また、本発明のキートップ構造の他の側面は、上述の発明において、キートップ部材は、ショアーD硬度が、40度〜80度の範囲内に設けられていることが好ましい。
【0023】
このように構成する場合、キートップ部材の硬化後の収縮による変形を一層良好に抑制することが可能であると共に、ユーザがキートップ構造を押し込んだ際に、クリック感に優れたものとすることができる。
【0024】
さらに、本発明のキートップ構造の他の側面は、上述の発明において、キートップ部材は、いずれかのキートップをその天面側から押し込んだ場合に、押し込まれたキートップの押し込み対象物のみを押し込み、かつ押し込まれたキートップ以外の他のキートップが押し込み対象物を押し込むことがない程度に独立して押し込ませるための変形許容手段を備えることが好ましい。
【0025】
このように構成する場合、変形許容手段を備えているため、押し込んだキートップに対応する押し込み対象物のみを確実に押し込ませることが可能となる。そのため、キートップ構造が電子機器に用いられた場合に、押し込み時の誤動作を防止することが可能となる。
【0026】
また、本発明の電子機器は、上述のキートップ構造の各発明を備えると共に、キートップ部材を設置するための設置部位を有し、この設置部位は、キートップ部材に直接的に接触または間接的に接触することにより、変形抑制手段の構成要素の一部となることが好ましい。
【0027】
このように構成する場合、設置部位は、キートップ部材に直接的に接触または間接的に接触することで、キートップ部材の硬化後の収縮による変形を一層良好に抑制することが可能となる。そのため、キートップ構造の表面側(天面側)が凹となるように変形することを一層良好に抑えることが可能となる。
【0028】
さらに、本発明の他の側面であるキートップ構造の製造方法は、液体状の紫外線硬化型樹脂を成型金型の凹部に注入する注入工程と、凹部に注入された紫外線硬化型樹脂を覆い、かつ紫外線硬化型樹脂に密着する状態で基材を位置させる設置工程と、液体状の紫外線硬化型樹脂に対して紫外線の照射を行って、紫外線硬化型樹脂を硬化させてキートップ部材を作製する硬化工程と、成型金型から基材とキートップ部材の一体物を取り外す取り外し工程と、基材とキートップ部材の一体物から基材を剥がす剥がし工程と、を有することが好ましい。
【0029】
このように構成する場合、紫外線硬化型樹脂は、その硬化に際して収縮するが、剥がし工程の存在により、キートップ部材の硬化後の収縮による変形を抑制することが可能となる。そのため、キートップ構造の表面側(天面側)が凹となるように変形することを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、キートップ構造を押し込んだ際にクリック感に優れるものとすることができる。あるいは、紫外線硬化型樹脂を硬化させてキートップ部材を作製する場合に当該キートップ部材の変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る携帯端末の構成を示す斜視図である。
【図2】キー配列部およびキートップ構造の構成を示すと共に、図1のA−A線に沿った一部を示す断面図である。
【図3】キートップ構造の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】成形金型を用いてキートップ構造の製造方法を説明するための模式図である。
【図5】未硬化のキートップ部材において、長手方向の中心に沿う短手方向の寸法よりも、長手方向の端部に沿う短手方向の寸法を大きくした状態を示す平面図である。
【図6】未硬化のキートップ部材において、図5の状態に加えて、短手方向の中心に沿う長手方向の寸法よりも、短手方向の端部に沿う長手方向の寸法を大きくした状態を示す平面図である。
【図7】キートップの硬化収縮を示す図であり、(A)は硬化前の状態を規定の寸法に合わせたものを示し、(B)は硬化後の状態を規定の寸法に合わせたものを示している。
【図8】隣り合うキートップの間隔と、キートップを押し込む際に必要な荷重との関係を示す図である。
【図9】キートップ構造に局所変形が生じている状態を示す側面図であり、(A)は全体的な構成を示し、(B)はA部を拡大して示す図である。
【図10】基材がキートップ部材から剥がされていない状態を示す断面図である。
【図11】本実施の形態の変形例に係り、キートップ構造の天面側が凸となる状態に反るように基材を湾曲させた状態を示す断面図である。
【図12】本発明の変形例に係る携帯電話装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施の形態に係る、キートップ構造60、およびこのキートップ構造60を用いた電子機器について、各図に基づいて説明する。なお、本実施の形態においては、電子機器の一例として、携帯電話装置、メール端末等として用いることが可能な携帯端末10を例示して説明するが、電子機器は携帯端末10に限られるものではなく、キートップ構造60を有するものであれば、どのようなものであっても良い。
【0033】
<携帯電話装置の全体構成について>
本実施の形態における携帯端末10は、図1に示すように、筐体部20と、表示部30と、カーソルキー部40と、キー配列部50とを備えている。なお、図1を始めとして、以下の説明においては、携帯端末10の長手方向をX方向、携帯端末10の短手方向をY方向、携帯端末10の厚み方向をZ方向として説明する。
【0034】
筐体部20は、携帯端末10の内部構成を覆い、その内部構成を外部の衝撃、塵埃等から保護する部分である。この筐体部20には、適宜、開口部または凹部が設けられていて、これら開口部または凹部のうちの1つには、表示部30が設けられている。表示部30は、たとえば有機EL(エレクトロ ルミネッセンス)ディスプレイ、液晶ディスプレイ等を備えていて、不図示の制御部の表示ドライバに基づいて、画像がRGBの所定の階調の画素の集まりとして表現される。
【0035】
また、図1に示すように、カーソルキー部40は、環状ボタン部41と、センターボタン部42とを有していて、これらカーソルキー部40と環状ボタン部41とは、筐体部20の開口から、キートップ61a(図2参照)の天面側が突出している。これらのうち、環状ボタン部41は、たとえば90度間隔で押圧する部位が存在している。また、センターボタン部42は、押圧する部位(キートップ61aの天面側)が、環状ボタン部41によって囲まれている部分である。
【0036】
なお、図1において、カーソルキー部40に対してX方向に沿って並んで設けられている、合計4つのキー部分は、カーソルキー部40に含まれるものとしても良く、またキー配列部50に含まれるものとしても良い。
【0037】
また、キー配列部50は、カーソルキー部40と同様に、筐体部20の開口から、キートップ61aの天面側が突出している。このキー配列部50は、図1に示すように、同一形状のキートップ61aが、たとえばY方向に3個並んで配置されていて、当該キートップ61aの合計が32個となっている。なお、このキートップ61aの個数は、32個に限られるものではなく、幾つ設けられていても良い。キートップ61aの個数の代表的なものとしては、たとえば15個から19個の間とするもの、30個〜50個の間とするものがある。
【0038】
なお、図1に示すキー配列部50においては、ユーザが入力するときの左側かつ奥側のキートップ61の並びが、QWERTYの順となっていることから、クォーティー(QWERTY)キーボード配列と呼ばれている。このようなキー配列は、図1に示すような携帯端末10においても、30以上のキートップ61を配列している場合に採用されている。なお、キー配列部50は、図1に示すような直交格子状(碁盤目状)の配列のみならず、千鳥状にキートップ61が並ぶ配列としても良い。
【0039】
上述のキー配列部50には、図2に示すような、本実施の形態のキートップ構造60が具現化されている。しかしながら、キートップ構造60は、カーソルキー部40に具現化させる構成としても良く、またキー配列部50とカーソルキー部40の両方にキートップ構造60を具現化させる構成を採用しても良い。また、携帯端末10のうち、キートップ構造60を設置する設置部位が、筐体部20の内部に存在する。この設置部位は、後述するキートップ部材61に直接的に接触または間接的に接触することにより、後述する変形抑制手段の構成要素の一部となることも可能である。
【0040】
また、これらカーソルキー部40と、キー配列部50とは、ユーザがキートップ61aの天面を指等で押圧することにより、後述する固定接点72と、皿バネ状部材73とを電気的に接触させることが可能となっている。そして、不図示の制御部は、その押圧に対応する所定の機能を実行させることが可能となっている。
【0041】
<キートップ構造の詳細について>
続いて、キートップ構造60の詳細について説明する。なお、以下の説明においては、キートップ構造60の一例として、キー配列部50に具現化されている、キートップ構造に関して、当該キー配列部50の構成の詳細も含めて説明する。また、カーソルキー部40の構成の詳細に関しては、キー配列部50の構成と同様であるため、その説明は省略する。
【0042】
キー配列部50は、キートップ部材61、着色層62、押圧子70、および基板71を有している。
【0043】
これらのうち、キートップ部材61は、着色層62と共に、キートップ構造60を構成するものである。キートップ部材61は、後述するように、紫外線硬化型樹脂を、紫外線照射によって硬化させることにより、形成される。ここで、液状の紫外線硬化型樹脂としては、光重合型プレポリマーとモノマーを含む主剤に光重合開始剤等を添加したものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂としては、上記の他に、必要に応じて、充填剤、老化防止剤、反応促進剤、反応抑制剤、安定剤、着色剤等を配合しても良い。紫外線硬化型樹脂の主剤としては、アクリル系、メタクリル系、スチレン系、不飽和ポリエステル系、ポリエステルポリオール系、ポリエステルエーテル系、ウレタン系、シリコン系、エポキシ系またはフェノール系等のモノマーおよび/またはオリゴマー、これらの誘導体のモノマーおよび/またはオリゴマー、もしくはこれらの複数種を混合したものを用いることができる。
【0044】
また、紫外線硬化型樹脂としては、硬化収縮が小さく、透明で、耐熱性、耐環境性、着色性、成形性に優れたものが望ましく、具体的には、アクリル系、メタクリル系、アリル系、ウレタン系、不飽和ポリエステル系、シリコン系の材料、またはそれらの誘導体、混合物を用いることが望ましい。
【0045】
ここで、紫外線硬化型樹脂を硬化させて、樹脂硬化物を形成する場合、当該樹脂硬化物の厚み寸法は、0.3mm以下または0.3mmよりも小さい場合に、より適したものとなっている。一方、ポリカーボネートといった樹脂の樹脂硬化物を射出成型によって形成する場合、当該樹脂硬化物の厚み寸法は、0.5mm以上または0.5mmよりも大きい場合に、より適したものとなっている。なお、樹脂硬化物の厚み寸法が、0.3mm以上または0.3mmよりも大きく、0.5mm以下または0.3mmよりも小さい場合には、紫外線硬化型樹脂の硬化によって樹脂硬化物を形成しても良く、射出成型によって樹脂硬化物を形成しても良い。
【0046】
また、紫外線硬化型樹脂が硬化することによって形成されるキートップ部材61は、ショアーD硬度が40度〜80度の範囲内にあるものが好ましい。
【0047】
このキートップ部材61は、キートップ61aと、シート状部61bとを有している。キートップ61aは、キートップ部材61のうち他の部分(図2ではシート状部61b)よりも厚肉に設けられている部分である。
【0048】
また、シート状部61bの厚み寸法Sは、0.03mm〜0.15mmの範囲内にあることが好ましい。0.03mmよりも厚み寸法が小さい場合には、シート状部61bが破損することが多くなると共に、0.15mmよりも厚み寸法Sが大きい場合には、シート状部61bの変形の柔軟性が損なわれるからである。また、上述の範囲内の中でも、0.03mm〜0.10mmの範囲内とすると一層好ましく、0.03mm〜0.05mmの範囲内とすると、より一層好ましい。
【0049】
さらに、キートップ61a同士の間隔Lは、0.2mm〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。特に、間隔Lをこのような範囲内の値に設定することにより、キートップ61の面積を大きくして指での良好な押圧性を確保しつつ、多数のキートップ61を配置可能となっている。
【0050】
また、キートップ部材61の裏面側(図2におけるZ2側)には、着色層62が形成されている。なお、この着色層62が存在しないものを、キートップ構造60としても良い。
【0051】
また、押圧子70(図2では破線で示している)は、着色層62の裏面側から、基板71に向かって突出するように設けられている。この押圧子70は、たとえば、弾性シートと一体的に形成されていて、その弾性シートを着色層62の裏面側に貼り合わせることによって形成しても良く、また、押圧子70となる突起体を、着色層62の裏面側に貼り合わせることによって形成しても良い。また、キートップ構造60に、この押圧子70を含めないものとしても良く、また含めるものとしても良い。
【0052】
また、キートップ構造60に対向する状態で、基板71が設けられている。この基板71のうち、キートップ構造60に対向する面側には、固定接点72a、72bおよび皿バネ状部材73が設けられている。固定接点72a、72bは、基板71に形成された導電部位の一部である。また、皿バネ状部材73は、請求項でいう押し込み対象物の一例に対応する。この皿バネ状部材73は、その外観がカップ形状を逆にした形態を為しており、その皿バネ状部材73の縁部は、基板上において、固定接点72aの少なくとも一部と接している。この皿バネ状部材73は、座屈(平面座屈)可能に設けられている。そのため、ユーザがキートップ61aを押圧して、皿バネ状部材73に所定以上の押圧力が付与されると、当該皿バネ状部材73の一部は、Z1方向に凸を為す状態から凹を為す状態へと変形する。このとき、皿バネ状部材73の一部が固定接点72bと接触し、電気的に導通可能な状態が生じる。
【0053】
なお、キートップ61aの押下が解放されると、皿バネ状部材73が有する弾性によって、座屈状態がなくなり、元の状態へと復帰する。それにより、皿バネ状部材73と固定接点72とは、非接触となり、電気的に非導通状態となる。
【0054】
<キートップ構造の製造方法について>
続いて、本実施の形態に係る、キートップ構造60の製造方法について説明する。図3は、キートップ構造60の製造方法の概略を説明するためのフローチャートである。また、図4は、キートップ構造60の製造方法について、成形金型101を中心として説明するための模式図である。
【0055】
キートップ構造60を製造する場合、まず、液体状の紫外線硬化型樹脂Mを、不図示の加圧タンクから成形金型101に充填させる(S01;図4(a)参照)。
【0056】
続いて、基材110が掛け渡された送りローラ102を成型金型101の一端側(図4(b)において左側)に位置させる(S02)。その状態の後に、送りローラ102を一端側から他端側(図4(c)において右側)に移動させる(S03)。すると、図4(c)に示すように、上面が平らとなっていない状態の紫外線硬化型樹脂Mが押し出されつつ、当該紫外線硬化型樹脂Mの上面が基材110に倣うように平らな状態となる。そして、紫外線硬化型樹脂Mの上面側に、基材110が凹部103を覆う状態で位置する。
【0057】
ここで、本実施の形態では、図5に示すように、未硬化のキートップ部材61(紫外線硬化型樹脂M)を平面視した場合に、当該キートップ部材61(紫外線硬化型樹脂M)の短手方向の寸法は、長手方向の中心に沿う短手方向の寸法X1よりも、長手方向の端部に沿う短手方向の寸法X2の方が小さく設けられている。これは、長手方向の端部においては、硬化時の収縮がより大きく発生するからである。そのため、硬化後のキートップ部材61においては、上述の寸法X1=上述の寸法X2となっている。なお、かかる等式には、多少の誤差が含まれるとしても良い。
【0058】
上述の図5に示すような考えを更に展開すると、図6に示す状態となる。図6に示すように、未硬化のキートップ部材61(紫外線硬化型樹脂M)を平面視した場合に、当該キートップ部材61(紫外線硬化型樹脂M)の長手方向の寸法は、短手方向の中心に沿う長手方向の寸法Y1よりも、短手方向の端部に沿う長手方向の寸法Y2の方が小さく設けられている。このようにすると、硬化後のキートップ部材61においては、上述の寸法Y1=上述の寸法Y2となっている。なお、かかる等式には、多少の誤差が含まれるとしても良い。
【0059】
また、未硬化のキートップ部材61(紫外線硬化型樹脂M)が硬化する際の収縮は、キートップ61においても生じる。すなわち、硬化収縮を考慮せずに、硬化前の状態を規定の寸法に合わせると、図7(A)に示すように、紫外線硬化型樹脂Mの硬化により、キートップ61の各辺の端部よりも中央寄りの部位が、内側に凹むように収縮する。そのため、図7(B)に示すものでは、かかる硬化収縮を見込んで、紫外線硬化型樹脂Mが未硬化の状態では、キートップ61の各辺の端部よりも中央寄りの部位が、外側(キートップ61の内部から離間する側)に突出するようにしておく。すなわち、成型金型101の凹部103を、図7(B)の左側のキートップ61が作製される状態としておく。すると、図7(B)の右側に示すように、硬化収縮により規定の寸法のキートップ61が形成される。
【0060】
続いて、紫外線照射装置105を成形金型101に近接させて、紫外線の照射を行う(S04;図4(d)参照)。そして、所定時間の紫外線の照射が為されると、紫外線硬化型樹脂Mが硬化する。かかる紫外線の照射が終了した後に、紫外線照射装置105を上方に退避させる。すると、キートップ部材61として固化した部分が、基材110に貼り付いた状態で、成形金型から剥がされる(S05)。
【0061】
この後に、基材110にキートップ部材61が貼り付いている部分を取り出して、キートップ部材61から基材を剥がす(S06)。ここで、基材110をキートップ部材61から剥がし易くするために、基材に所定の薬液を塗布するようにしても良い。また、基材110をキートップ部材61から剥がすタイミングとしては、たとえば紫外線照射装置105での紫外線の照射が為された直後が望ましい。
【0062】
以上のようにして、キートップ部材61が製造される。この後に、キートップ部材61の裏面に、たとえば加飾印刷によって、着色層62を形成するようにしても良い。また、上述のようにして製造されたキートップ部材61を硬化させるための熱処理(加熱処理)を行うようにしても良い。
【0063】
<<本実施の形態におけるキートップ構造を実現するに至るまでに関して>>
[1.紫外線硬化型樹脂の必要性について]
射出成型によりキートップ構造を形成する場合、樹脂を金型に流し込んだ後に硬化させるが、当該成型上の制約から、たとえば0.3mm以下の厚み寸法でキートップを成型することは困難である、という成型上の制約がある。また、キートップ部材においては、金型における注入口およびそれ以降の流路等の樹脂を流し込むための部位の設計制約から、多数のキートップが連続している形状を成型することが難しく、千鳥状のキートップを形成し、その後、当該キートップを分離し、さらに組み立てることが必要となっている。
【0064】
かかる射出成型と比較して、紫外線硬化型樹脂を用いた成型品においては、多数のキートップが連続しているものを形成することは可能である。しかしながら、多数のキートップが連続しているものにおいては、キートップとしての一定の厚み寸法を持たせることは、気泡の入り込み、ヒケ等の問題が生じるため、困難となっている。即ち、紫外線硬化型樹脂を用いて成型品を作製する場合、厚み寸法の大きなものは作製困難であるが、逆に、近年ニーズの多い、薄型化(厚み寸法の小さな成型品を作製する場合)には非常に適したものである、と言える。
【0065】
また、操作しやすいキートップ構造とするべく、キートップの天面の大きさを大きくする場合、その相反としてキートップの間の間隔が小さくなってしまう。キートップの間の間隔が小さくなると、隣接するキートップとの間で干渉を起すことがあり、操作感を損ねてしまう場合がある。ここで、隣り合うキートップの間隔と、キートップを押し込む際に必要な荷重との関係を図8に示す。この図8から分かるように、隣り合うキートップの間の間隔が大きくなると、押し込む際の荷重が小さくて済み、操作感が良好である、といえる。
【0066】
また、隣り合うキートップの間の間隔を小さくして、かつキートップを押し込んだ際の操作感を向上させるためには、キートップを全て切り離し、弾性率が高いシート状の部材上に、所定のピッチで接着等を行って取り付ける、という手法を採ることも考えられる。
【0067】
すなわち、操作時の押圧感を良好にするためには、キートップの下方にある、皿バネ状部材の押圧時の荷重変化をロス無く、キートップに伝えさせる必要がある。しかしながら、キートップが連続しているキートップ構造においては、押圧されるキートップが変形することに伴い、隣接するキートップも当該押圧されるキートップに対して連続的に変形してしまう。そのため、かかる変形に要する荷重は、それら変形に要する荷重の合成荷重に、皿バネ部材を押圧するときに要する荷重を加えたものとなり、操作時の押圧感が悪化してしまう。かかる押圧感の悪化を避ける為には、上述のように、紫外線硬化型樹脂にて成型したキートップを全て独立させるように切り離し、弾性率が低いシート状の部材に接着等で取り付ける必要がある。
【0068】
しかしながら、この場合には、製造の際の工数が複雑となり、また工数がかさむ、という問題がある。また、キートップの間隔を一定に形成することが難しい、という問題も生じ、場合によってはキートップの間隔を間違う等の組み込みミスが発生することもある。そのため、成型したキートップを全て独立させるように切り離し、弾性率が高いシート状の部材に接着等で取り付ける、という手法を採用することは困難である。
【0069】
[3.紫外線硬化型樹脂と基材について]
ところで、現状、紫外線硬化型樹脂を用いて、キートップ部材としての成型品を作製する場合、基材とキートップ部材とが接着していることが必要となっている。これは、上述した製造方法にて述べたように、キートップ部材の窪みが存在している金型の上部に、フィルム状の基材を位置させ、必要とするキートップ部材の樹脂量よりも多めの液体状の紫外線硬化型樹脂を充填させ、その後、フィルム状の基材にスキージを接触させつつ移動させ、キートップ部材の裏面側となる部位において余分な液体状の紫外線硬化型樹脂を押し出すようにして形状を整え、その後硬化させ、キートップ部材として固化した成型品を成形金型から取り出している。
【0070】
このようにしてキートップ部材が形成されるため、紫外線硬化型樹脂の成型品と基材とは、接着されているか、または強度の粘着状態となっている。そのため、上述のような操作時の押圧感を良好にするためには、基材の厚み寸法を最小にするか、または基材の材質として柔軟なものを用いる必要がある。しかしながら、基材の厚み寸法を最小にする場合、および基材の材質として柔軟なものを用いる場合には、反りが大きくなる、という問題がある。
【0071】
[4.基材が存在するキートップ構造の実験結果]
なお、基材の厚み寸法を0.05mm〜0.15mmの間で変化させて、それぞれの厚み寸法のときに押圧に要する荷重、およびクリック感について測定した実験結果を、表1に示す。ここで、クリック感を示す指標値であるクリック率(%)とは、同一の皿バネ状部材を使用したときに、以下の式で定義される値(%)である。なお、Cはクリック率(%)、Pはピーク荷重(単位:グラム)、Bはボトム荷重(単位:グラム)を示す。また、ピーク荷重は、皿バネ状部材が座屈する前の最大荷重を示し、ボトム荷重は、皿バネ状部材が座屈した後にその座屈状態を保てる最小の荷重を示す。また、このときの基材の材質はポリエチレンテレフタレート(PET)である。
C=100×(P−B)/P
【0072】
【表1】

【0073】
また、基材の厚み寸法が、上述の表1におけるように変化する場合において、それぞれの厚み寸法のときにキートップ構造の反りの大きさ、その反りを両面テープによって矯正可能か否か、および端部の引っ掛かり感について測定した実験結果を、表2に示す。なお、ここでいうキートップ構造の反りとは、キートップ構造の裏面における中心部分が基準面に接触しているとする場合において、その基準面に対して、キートップ構造の裏面側の端部が持ち上がっている高さ寸法を指す。また、キートップ構造の端部の引っ掛かり感とは、キートップ構造の端部に上述の反りよりも大きな曲率で、反りと同じ向きに局所変形が生じているがために、ユーザがキートップ構造の端部を手で触ったときに手に引っ掛かる感触をいう。また、表2においては、一端から他端までの長さ寸法が50mmのキートップ構造を用いて実験を行っている。
【0074】
【表2】

【0075】
また、基材の厚み寸法が、上述の表1におけるように変化する場合において、基材の材質(素材)をそれぞれ変化させたときの押圧に要する荷重、およびクリック感について測定した実験結果を、表3に示す。なお、表3においては、それぞれの基材の厚み寸法は、0.1mmとなっている。
【0076】
【表3】

【0077】
ここで、材質および厚み寸法の両方が異なるものの、上述の表3よりも好ましい荷重とクリック率にの一例について述べる。厚み寸法が0.2mmであり、材質がシリコーンゴムである基材上に、予めカットされているキートップを組み付けたものの荷重は、234gであり、クリック率は27%であった。
【0078】
[5.基材が存在するキートップ構造の実験結果からの考察]
以上の表1〜表3の実験結果によると、基材の厚み寸法が0.05mmの場合、比較的良好なクリック感(操作感)を得ることができた。一方、基材の厚み寸法が0.1mmから0.125mmと、厚み寸法が大きくなるにつれて、クリック感(操作感)は悪化している。特に、0.125mm以上の厚み寸法を有する基材においては、皿バネ状部材での荷重の変化をさほど感じさせないまでに、クリック時に要する合計荷重が増大している。
【0079】
また、上述の実験結果によると、基材の厚み寸法が0.05mmの場合、キートップ構造に大きな反りが発生している一方、基材の厚み寸法が0.125mmの場合には、キートップ構造における反りが1.5mm程度までに抑えることが可能となっている。
【0080】
この結果からすると、基材の厚み寸法が0.05mmの場合には、キートップ構造の反りは大きいものの、基材自体が薄く、いわゆる腰がない状態であるため、たとえば平面状の盤面等に挟み込むことによって、容易に矯正が可能となっている。一方、基材の厚み寸法が0.125mmの場合には、キートップ構造における反りが少なく、また両面テープによる固定も可能である。そのため、一見すると良好であるように思われる。しかしながら、図9に示すように、キートップ構造の端部には、両面テープが基材等に対してオフセットすることにより、両面テープによっては固定しきれない部分が生じる。ここで、キートップ構造から両面テープがはみ出るように取り付けることは、キートップ構造の取付部位であるベースの寸法的な制約、外観上の問題等により、できない。そのため、キートップ構造の端部には、両面テープが基材等に対してオフセットする部分が生じてしまう。
【0081】
そして、この部分において局所変形が発生するため、たとえばキー操作時に手触りする等によっても、引っ掛かり感を感じてしまう。また、携帯端末10の内部においては、回路等からの発熱が生じるため、上述の局所変形に拍車をかける状態となる。加えて、引っ掛かり感が生じる端部に想定外の剥離力が加わる場合には、キートップ構造が筐体から剥離してしまう可能性が存在する。
【0082】
なお、両面テープは、囲形状を為す状態で基材の端部かつ裏側に取り付けられ、この両面テープを介して所定の固定部分に固定されている。
【0083】
以上のように、基材の厚み寸法を大きくする、という手法を採用することで、キートップ構造の全体的な反りを低減させることができたとしても、キートップ構造の端部における局所変形および引っ掛かり感を解消することができない、ということが実験結果より判明した。加えて、実機においては、キートップ構造の薄型化の要請も存在することも考慮する必要がある。以上のように、従来までの手法・発想の枠組みの中では、キートップ構造の端部における引っ掛かり感を解消することは、非常に難しい状態となっている。
【0084】
ここで、反りの原因について触れると、キートップ構造においては、未硬化の紫外線硬化型樹脂が硬化する過程において、硬化収縮が生じる。たとえば、汎用されている紫外線硬化型樹脂としては、主成分をアクリレート、不飽和ポリエステルとする、ラジカル重合型の紫外線硬化型樹脂の場合、5〜10%程度の硬化収縮が生じる。一方、基材は、伸縮性には優れない。そのため、仮に基材の表面側に紫外線硬化型樹脂が位置しているとすると、紫外線硬化型樹脂の硬化収縮に伴って、当該紫外線硬化型樹脂が位置している表面側が凹となるような変形が生じる。
【0085】
[6.新たな手法の試み]
そこで、これまでの手法とは発想を変えて、全く別のアプローチを採る手法を模索した。この模索の中で、理論的に基材の厚み寸法が最も薄くなる、基材を無くする、という手法を採ることが検討された。なお、現状、キートップ構造において、このアプローチを他人が採用している事実は確認されなかった。これは、現状の紫外線硬化型樹脂を用いた成型品の作製においては、紫外線硬化型樹脂の硬化に際して、基準となる部位が定まらない等の原因により基材の存在が必須であることに加えて、上述の表2等から分かるように、基材の厚み寸法を大きくするというアプローチを採ると反りがある程度低減可能であるため、基材の厚み寸法を大きくする、という発想に縛られる可能性があるためとも思われる。
【0086】
なお、上述のように、現状の紫外線硬化型樹脂を用いた成型品の作製においては、基材の存在が必須であることから、紫外線硬化型樹脂を用いる場合において基材を無くしてしまうと、キートップ部材としての成型が困難となる。そこで、更なる工夫が求められるが、種々模索したところ、紫外線硬化型樹脂が硬化するまでの間においては、紫外線硬化型樹脂が基材に接着している状態とし、紫外線硬化型樹脂が硬化した後に基材を剥がす、という手法を導くに至り、その手法の詳細について検討するに至った。
【0087】
[7.新たな手法の厚み寸法面からの検討]
この検討において、紫外線硬化型樹脂の成型品であるキートップ部材のシート状部の厚み寸法を0.03mm〜0.15mmの間で変化させて、それぞれの厚み寸法のときに押圧に要する荷重、およびクリック感について測定した実験結果を、表4に示す。なお、この実験においては、紫外線硬化型樹脂の材料として、ノガワケミカル製のショアーD硬度が50度であるH17(商品名)を用いている。
【0088】
【表4】

【0089】
表4の実験結果と上述の表1の実験結果を比較すると、次のことが言える。すなわち、紫外線硬化型樹脂が硬化した後に基材を剥がす、という手法を採用する場合、合計荷重が大きく低減されると共に、クリック感(操作感)も大幅に改善されることとなった。さらに、キートップ部材においては、反りおよび局所変形が殆ど見られない状態となった。ここで、紫外線硬化型樹脂は、基材よりも柔軟性が十分高い材質から形成されているため、反りおよび局所変形が問題とならない状態を実現することが可能となった。
【0090】
[8.新たな手法の耐久性の面からの検討]
続いて、キートップ構造を実機に搭載する場合、その耐久性も考慮する必要がある。特に、最も薄いシート状部の厚み寸法が薄くなればなる程、耐久性には不安が残る状態となる。そこで、上述の表4におけるそれぞれの厚み寸法のものに対して、打鍵試験を実施して、最も薄いシート状部の破れが生じる打鍵回数を確認する実験を行った。なお、かかる打鍵試験において用いた皿バネ状部材の座屈荷重も、併せて記している。また、本実験においては、3.3回/秒の打鍵タイミングで行っており、打鍵時の荷重を750gとし、またキートップの上面にキーシートを配置し、このキーシートを介して打鍵試験を行っている。また、座屈荷重が170gの皿バネ状部材を用いて、打鍵試験を行った。
【0091】
【表5】

【0092】
かかる表5の実験結果より、使用条件によっては、0.03mm〜0.15mmの厚み寸法の範囲であれば、使用することが十分に可能であることが確認された。
【0093】
[9.新たな手法の成分構成の面からの検討]
続いて、上述の表5に基づいて、0.03mm〜0.15mmの厚み寸法の範囲内で、紫外線硬化型樹脂の成分構成を変化させて、実際の製品として使用可能か否か(製品へ適用可能か否か)を検討した結果、以下の表6のようになった。なお、表6中の「750g荷重下の打鍵試験で製品へ適用可能か否か」については、25万回の打鍵試験を行ってもなお破れが生じない場合に、製品へ適用可能であるとして「○」で示し、25万回以内の打鍵試験にて破れが生じた場合には、製品へ適用可能でないとして「×」で示している。また、表6中の「10kg荷重下の打鍵試験で製品へ適用可能か否か」については、5千回の打鍵試験を行ってもなお破れが生じない場合に、製品へ適用可能であるとして「○」で示し、5千回以内の打鍵試験にて破れが生じた場合には、製品へ適用可能でないとして「×」で示している。
【0094】
【表6】

【0095】
上記の表6において、タイプ1〜6は、紫外線硬化型樹脂の種類(材質)を示している。これらタイプ1〜6の紫外線硬化型樹脂は、アクリレート系の紫外線硬化型樹脂であり、重合度あるいは架橋密度を変更することによって、それぞれの測定された硬度となるように調整したものである。
【0096】
以上の表6の実験結果より、上述の紫外線硬化型樹脂のうち、タイプ3からタイプ6までのものについて、実際の製品として好適であることが確認された。
【0097】
[10.実際の製造に関して]
以上の実験結果、考察結果に基づいて、成形金型101を作製し、製品となるキートップ構造の製造を実施している。この製造においては、上述の表4、表5の結果に基づき、クリック感(操作感)を良好にするために、シート状部の厚み寸法を0.03mmとしている。また、キートップの厚み寸法は、要求されるキートップの高さと図7等に鑑みて、0.4mmとしている。また、かかるキートップ構造を製造する場合、フィルム状の基材として、厚み寸法が0.05mmのものを用いている。また、図3のS04においては、液状の紫外線硬化型樹脂に対して、20秒ほど紫外線を照射して硬化させている。また、図3のS06においては、セパレーター機を用いて、フィルム状の基材を、剥がす前の状態に対して35度の角度をなすように引っ張って剥離させている。
【0098】
この後に、摂氏80度にて2時間程、成型品の寸法を安定させるために加熱硬化を行っている。その後、製品化のために、キートップ部材の裏面側に加飾印刷を施して着色層を形成し、さらに着色層を乾燥させるために摂氏80度にて2時間程、加熱乾燥させている。それによって、加飾が為された、図2に示すようなキートップ構造が得られる。かかる各工程を経て得られるキートップ構造においては、反りおよび局所変形が発生しない状態となり、特にキートップ構造の端部において、局所変形の発生による引っ掛かり感がなくなっている。また、キートップを切り離す等することなく製造されるため、組み立て性にも優れたキートップ構造となっている。
【0099】
<実施例について>
続いて、上述のような構成を有するキートップ構造60の、押し込む際の動作に関する評価(実施例)について説明する。
【0100】
(試料作製方法)
まず、キートップ部材61を製造するために、紫外線硬化型樹脂として、上述したノガワケミカル製のショアーD硬度が50度であるH17(商品名)を準備した。かかる紫外線硬化型樹脂を、上述の図3、図4に示す製造方法によって硬化させて、キートップ部材61を作製した。このとき、基材110として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を材質とするもの(厚み寸法0.05mm)を用いて、キートップ61aを作製している。作製されたキートップ部材61は、ショアーD硬度が50度のものである。また、このキートップ部材61の裏面側に、ポリエステル系のインクを材質として、厚み寸法が10μmの着色層62を形成した。
【0101】
また、キートップ部材61の裏面側には、突出寸法が0.2mmの押圧子70を形成した。また、押圧子70に対して、接触している状態で、皿バネ状部材73を設けるようにした。この皿バネ状部材73は、基板71の表面から、0.26mmの突出寸法(高さ寸法)を有する状態となっている。また、この皿バネ状部材73の座屈荷重は、170gとなっている。
【0102】
(実施例1)
このような状態において、シート状部61bの厚み寸法Sを変化させつつ、キートップ61aの厚み寸法Tは変化させずに固定値0.4mmとし、かつキートップ61a同士の間隔Lは変化させずに固定値0.2mmとして、キートップ構造60の操作感および誤動作の状況を以下の基準で評価した。
◎・・・押し込み易く、誤動作がない。
○・・・押し込む際に違和感があるが誤動作はない。
△・・・押し込む際に誤動作がある。
【0103】
【表7】

【0104】
以上の表7の結果から、シート状部61bの厚み寸法Sは、0.03mm〜0.15mmの範囲内であれば、押し込み易く、かつ誤動作がないことが分かる。
【0105】
(実施例2)
次に、キートップ61a同士の間隔Lを変化させつつ、キートップ61aの厚み寸法Tは変化させずに固定値0.4mmとし、かつシート状部61bの厚み寸法Sは変化させずに固定値0.05mmとして、キートップ構造60の操作感および誤動作の状況を以下の基準で評価した。
◎・・・押し込み易く、誤動作がない。
○・・・押し込む際に違和感があるが誤動作はない。
△・・・押し込む際に誤動作がある。
【0106】
【表8】

【0107】
以上の表8の結果から、キートップ61a同士の間隔Lは、0.2mm以上の範囲内であれば、押し込み易く、かつ誤動作がないことが分かる。
【0108】
また、上述の実施例1および実施例2の結果を纏めると、表9に示すようになる。
【表9】

【0109】
上述の表9から、シート状部61bの厚み寸法Sは、0.03mm〜0.15mmの範囲内であると共に、複数のキートップ61aの間の所定の間隔Lは、0.2mm〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。その場合には、キートップ構造60は、押し込み易く、誤動作がないものとなる。
【0110】
(実施例3)
次に、キートップ部材61のショアーD硬度を変化させた場合の実施例を、以下に示す。この実施例では、キートップ61aの厚み寸法Tは変化させずに固定値0.4mmとし、シート状部61bの厚み寸法Sは変化させずに固定値0.05mmとすると共に、キートップ61a同士の間隔Lも変化させずに固定値0.2mmとしている。そして、キートップ構造60の操作感および誤動作の状況を以下の基準で評価した。
◎・・・押し込み易く、誤動作がない。
○・・・押し込む際に違和感があるが誤動作はない。
△・・・押し込む際に誤動作がある。
【0111】
【表10】

【0112】
以上の表10の結果から、キートップ部材61においては、ショアーD硬度が、40度〜80度の範囲内であれば、押し込み易く、かつ誤動作がないことが分かる。
【0113】
ここで、キートップ部材61に基材110が貼り付いている状態(図10に示す状態)では、請求項でいう変形抑制手段は構成されない。すなわち、変形抑制手段は、キートップ部材61から基材110を剥がすことによって、初めて具現化されるものである。すなわち、基材はほとんど収縮しないにも拘わらず、キートップ部材61は硬化時に収縮する。かかる、2つの部材の収縮の不均衡により発生する反りおよび局所変形を抑制する変形抑制手段は、基材110を剥がすという工程(手間)を加えることにより、キートップ構造60に具現化されている、と捉えることもできる。
【0114】
また、上述の各実施例の結果から、ショアーD硬度が50度(固定値)の場合には、シート状部61bの厚み寸法Sが、0.03mm〜0.15mmの範囲内であると共に、複数のキートップ61aの間の所定の間隔Lが、0.2mm〜1.0mmの範囲内である場合に、変形抑制手段として良好に機能する、と言える。加えて、ショアーD硬度が40度〜80度の範囲内であれば、変形抑制手段として良好な機能を確保可能となる。
【0115】
また、請求項でいう変形許容手段は、シート状部61bの厚み寸法Sが、0.03mm〜0.15mmの範囲内であれば、良好に機能する、と言える。その中でも、シート状部61bの厚み寸法Sが、0.03mm〜0.10mmの範囲内であれば一層好ましく、さらに0.03mm〜0.05mmの範囲内とすると、より一層好ましいものとなる。なお、変形許容手段は、いずれかのキートップ61aをその天面側から押し込んだ場合に、押し込まれたキートップ61aの皿バネ状部材73(押し込み対象物)のみを押し込み、かつ押し込まれたキートップ61a以外の他のキートップ61aが皿バネ状部材73(押し込み対象物)を押し込むことがない程度に独立して押し込ませるためのものであることが好ましい。
【0116】
<効果>
以上のような構成のキートップ構造60、携帯端末10(電子機器)およびキートップ構造60の製造方法によれば、紫外線硬化型樹脂は、その硬化に際して収縮するが、キートップ部材61から基材110を剥がすことによって、変形抑制手段が具現化されているため、キートップ部材61の硬化後の収縮による変形を抑制することが可能となる。そのため、キートップ構造60の表面側(天面側)が凹となるように変形することを抑えることが可能となる。
【0117】
また、本実施の形態では、硬化後の収縮が所定範囲内に収まった後に、キートップ部材61から基材110を剥がすことによって、変形抑制手段が具現化されているため、キートップ構造60(キートップ部材61)には伸縮性に優れない基材が接着していない状態となる。そのため、ユーザがキートップ構造60を押し込んだ際に、クリック感に優れない状態を解消可能となる。
【0118】
加えて、本実施の形態では、キートップ構造60の端部における局所変形を抑えることができ、当該端部の引っ掛かり感を無くすることができる。ここで、局所変形による引っ掛かり感が生じる状態では、引っ掛かり感が生じる端部に想定外の剥離力が加わる場合には、キートップ部材61が基材110から剥離してしまう虞があるが、本発明では、基材110を剥がしてキートップ構造60を構成しているため、そのような不具合を無くすることが可能となっている。
【0119】
また、特に図1に示すような携帯端末10においては、クォーティキーボード配列と呼ばれるようなキー配列を採用しているため、キートップ61の個数が通常の携帯電話装置等と比較して多い状態となっている。ここで、携帯端末10のサイズは、限られたものとなっている一方で、多数(たとえば30以上)のキートップ61を配置しつつキートップ61の面積を大きくして指での良好な押圧性を確保しようとすると、必然的に隣り合うキートップ61同士の間隔が小さいものとなる。このような携帯端末10に、本実施の形態におけるキートップ構造60を適用することにより、クリック感に優れながらも、上述のようにキートップ構造60の表面側が凹となるような変形を抑えることができ、さらには上述のような引っ掛かり感を解消可能となる。
【0120】
さらに、本実施の形態では、シート状部61bの厚み寸法Sは、0.03mm〜0.15mmの範囲内であると共に、複数のキートップ61aの間の所定の間隔Lは、0.2mm〜1.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0121】
このように構成すると、キートップ部材61の硬化後の収縮による変形を一層良好に抑制することが可能であると共に、ユーザがキートップ構造60を押し込んだ際に、クリック感に優れたものとすることができる。
【0122】
また、本実施の形態では、キートップ部材61は、ショアーD硬度が40度〜80度の範囲内に設けられていることが好ましい。このように構成すると、キートップ部材61の硬化後の収縮による変形を一層良好に抑制することが可能であると共に、ユーザがキートップ構造60を押し込んだ際に、クリック感に優れたものとすることができる。
【0123】
さらに、本実施の形態では、キートップ構造60は、いずれかのキートップ61aをその天面側から押し込んだ場合に、押し込まれたキートップ61aの押し込み対象物のみを押し込み、かつ押し込まれたキートップ61a以外の他のキートップ61aが押し込み対象物を押し込むことがない程度に独立して押し込ませるための変形許容手段を備えることが好ましい。
【0124】
このように構成する場合、押し込んだキートップ61aに対応する皿バネ状部材73のみを確実に押し込ませることが可能となる。そのため、キートップ構造60が携帯端末10等の電子機器に用いられた場合に、押し込み時の誤動作を防止することが可能となる。
【0125】
また、本実施の形態では、筐体部20には、キートップ構造60を設置するための設置部位が設けられていて、この設置部位は、キートップ構造60に直接的に接触または間接的に接触することにより、変形抑制手段の構成要素の一部となることが好ましい。このように構成すると、キートップ部材61の硬化後の収縮による変形を一層良好に抑制することが可能となる。そのため、キートップ構造60の表面側が凹となるように変形することを一層良好に抑えることが可能となる。
【0126】
また、本実施の形態では、図7(B)に示すように、紫外線硬化型樹脂Mが未硬化の状態では、キートップ61の各辺の端部よりも中央寄りの部位が、外側(キートップ61の内部から離間する側)に突出するようにしておく。加えて、図7(B)の右側に示すように、硬化収縮により規定の寸法のキートップ61が形成される状態となっている。それにより、硬化収縮の影響の少ないキートップ61を実現できる。
【0127】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態に係る、キートップ構造60、電子機器の一例としての携帯端末10およびキートップ構造60の製造方法について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0128】
上述の実施の形態においては、キートップ構造60を製造するのに際して、図11に示すようにしても良い。すなわち、キートップ部材61の天面側が凸となるように、基材110を湾曲させて成形金型101に接触させ(そのためには、成形金型101の成形面101aが凹となるように湾曲していることが好ましい。)、その状態で液状の紫外線硬化型樹脂Mを硬化させるようにしても良い。このようにする場合、液状の紫外線硬化型樹脂Mが硬化する際の収縮によって、当該硬化時にはシート状部61bと基材110とが共に略水平または水平または水平と見なせる状態を保つ状態とすることができる。
【0129】
なお、基材110の湾曲の程度(成形面101aの湾曲の程度)は、液状の紫外線硬化型樹脂Mが硬化する際の収縮によって、当該硬化時にはシート状部61bと基材110とが共に略水平または水平または水平と見なせる状態となる程度に設定することが好ましい。
【0130】
また、上述の実施の形態においては、図1に示すような携帯端末10を用いる場合について説明している。しかしながら、携帯端末は、図1に示すものには限られない。たとえば、図12に示すような、携帯端末の一種である携帯電話装置10Aに本発明を適用するようにしても良い。なお、図12に示す携帯電話装置10Aにおいては、図1に示す携帯端末10と同様に、筐体部20と、表示部30と、カーソルキー部40と、キー配列部50とを備えている。
【0131】
また、カーソルキー部40は、環状ボタン部41と、センターボタン部42とを有し、これらカーソルキー部40と環状ボタン部41とは、筐体部20の開口から、キートップ61a(図2参照)の天面側が突出している。ここで、環状ボタン部41は、たとえば90度間隔で押圧する部位が存在している。また、センターボタン部42は、押圧する部位(キートップ61aの天面側)が、環状ボタン部41によって囲まれている部分である。
【0132】
また、キー配列部50は、カーソルキー部40と同様に、筐体部20の開口から、キートップ61aの天面側が突出している。このキー配列部50は、図1に示すように、同一形状のキートップ61aが、たとえばX方向に3個、Y方向に5個並んで配置されている。
【0133】
このような携帯電話装置10Aにおいても、キートップ部材61の硬化後の収縮による変形を抑制することが可能となる。加えて、ユーザがキートップ構造60を押し込んだ際に、クリック感に優れない状態を解消可能となる。また、キートップ構造60の端部における局所変形を抑えることができ、当該端部の引っ掛かり感を無くすることができ、引っ掛かり感が生じる端部に想定外の剥離力が加わって、キートップ部材61が基材110から剥離してしまうような不具合を無くすることが可能となる。
【0134】
また、上述の実施の形態においては、キートップ61aの天面の形状が平坦となっているものについて説明している。しかしながら、キートップ61aの天面の形状は、平坦なものに限られるものではなく、それ以外の形状(たとえば、曲面形状、凹形状、凸形状、波形形状等)としても良い。
【符号の説明】
【0135】
10…携帯端末(電子機器の一例に対応)
20…筐体部
30…表示部
40…カーソルキー部
50…キー配列部
60…キートップ構造
61…キートップ部材
61a…キートップ
61b…シート状部
62…着色層
70…押圧子
71…基板
72a、72b…固定接点
73…皿バネ状部材(押し込み対象物の一例に対応)
100…製造装置
101…成形金型
101a…成形面
102…送りローラ
103…凹部
105…紫外線照射装置
M…紫外線硬化型樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の紫外線硬化型樹脂を成型金型の凹部に注入し、
上記凹部に注入された上記紫外線硬化型樹脂を覆い、かつ紫外線硬化型樹脂に密着する状態で基材を位置させ、
液体状の上記紫外線硬化型樹脂に対して紫外線の照射を行って、上記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、
上記成型金型から上記基材と上記キートップ部材の一体物を取り外し、
その後、上記基材と上記キートップ部材の一体物から上記基材を剥がすことにより、シート状部と、所定の間隔で列状に配置されると共に上記シート状部よりも厚み寸法が大きいキートップ部材を構成し、
上記キートップ部材を有することを特徴とするキートップ構造。
【請求項2】
請求項1記載のキートップ構造であって、
液体状の前記紫外線硬化型樹脂のうち前記キートップに対応する部分の少なくとも一辺について、その辺の端部よりも中央寄りの部位が、前記キートップの内部から離間する側に突出していて、
硬化後の前記キートップ部材においては、前記キートップを構成する上記一辺は、前記キートップの内部から離間する側への突出が硬化収縮により解消されて直線状を為している、
ことを特徴とするキートップ構造。
【請求項3】
紫外線硬化型樹脂を硬化することによりシート状部と複数のキートップとが形成されると共に、上記キートップは上記シート状部よりも厚み寸法が大きく設けられ、かつ複数の上記キートップが所定の間隔を有する状態で列状に配置されている部分を有するキートップ部材と、
基材に対して上記紫外線硬化型樹脂を硬化させて上記キートップ部材を形成する際に、上記キートップ部材の硬化後の収縮による変形を抑制するための変形抑制手段と、
を具備することを特徴とするキートップ構造。
【請求項4】
請求項3記載のキートップ構造であって、
前記変形抑制手段は、前記キートップ部材の硬化後の収縮が収まる前に、前記基材を前記キートップ部材から剥がすことにより構成されている、
ことを特徴とするキートップ構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のキートップ構造であって、
前記シート状部の厚み寸法は、0.03mm〜0.15mmの範囲内であると共に、複数の前記キートップの間の所定の間隔は、0.2mm〜1.0mmの範囲内であることを特徴とするキートップ構造。
【請求項6】
紫外線硬化型樹脂を硬化することによりシート状部と複数のキートップとが形成されると共に、上記キートップは上記シート状部よりも厚み寸法が大きく設けられ、かつ複数の上記キートップが所定の間隔を有する状態で列状に配置されている部分を有するキートップ部材を具備し、
上記シート状部の厚み寸法は、0.03mm〜0.15mmの範囲内であると共に、複数の上記キートップの間の所定の間隔は、0.2mm〜1.0mmの範囲内である、
ことを特徴とするキートップ構造。
【請求項7】
請求項5または6に記載のキートップ構造であって、
前記キートップ部材は、ショアーD硬度が、40度〜80度の範囲内に設けられていることを特徴とするキートップ構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のキートップ構造であって、
前記キートップ部材は、いずれかの前記キートップをその天面側から押し込んだ場合に、押し込まれた前記キートップの押し込み対象物のみを押し込み、かつ押し込まれた前記キートップ以外の他の前記キートップが上記押し込み対象物を押し込むことがない程度に独立して押し込ませるための変形許容手段を備える、
ことを特徴とするキートップ構造。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のキートップ構造を備えると共に、
前記キートップ部材を設置するための設置部位を有し、
この設置部位は、前記キートップ部材に直接的に接触または間接的に接触することにより、前記変形抑制手段の構成要素の一部となる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
液体状の紫外線硬化型樹脂を上記成型金型の凹部に注入する注入工程と、
上記凹部に注入された上記紫外線硬化型樹脂を覆い、かつ紫外線硬化型樹脂に密着する状態で基材を位置させる設置工程と、
液体状の上記紫外線硬化型樹脂に対して紫外線の照射を行って、上記紫外線硬化型樹脂を所定だけ硬化させてキートップ部材を作製する硬化工程と、
上記成型金型から上記基材と上記キートップ部材の一体物を取り外す取り外し工程と、
上記基材と上記キートップ部材の一体物から上記基材を剥がす剥がし工程と、
を有することを特徴とするキートップ構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−138702(P2011−138702A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298322(P2009−298322)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】