説明

キー判別装置、及び、紛失キー無効化システム

【課題】手元にないキーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、登録済のキーを判別することが可能なキー判別装置、及び、そうした面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることが可能な紛失キー無効化システムを提供すること。
【解決手段】ディーラでの紛失キー無効化処理に際し、登録済の電子キーの一覧がモニタ表示され、ピンク色のキー及び緑色のキー及びハート型のキーといった登録済の3本のキーのうち、どのキーを紛失したのか、といった問い掛けがユーザに対して行われる。そして、紛失キーがピンク色のキーである旨伝えられると、ピンク色のキーであるキーナンバー「1」の電子キーが選択され、このキーナンバー「1」の電子キーの登録が抹消される。その結果、キーナンバー「1」の電子キーは、キー機能が無効化されて使用不可となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーを判別するキー判別装置、及び、紛失したキーを無効化する紛失キー無効化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両キーとして登録済の電子キーのうち、手元にある電子キーを除く全ての電子キーを無効化する技術が開示されている。この技術によれば、紛失キーを除く全ての電子キーを一同に手元に揃えることで、例えばディーラにおいて紛失キーが特定され、その紛失キーのみを使用不可にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−50885号公報([請求項5])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1による技術では、紛失キーを除く全ての電子キーを一同に準備する必要があり煩わしい。例えば登録済の3個の電子キーのうち1個の電子キーを紛失し、残りの2個の電子キーのうち1個の電子キーを所持するかたちで車両を運転してディーラに出向いた場合には、ディーラでの無効化処理に際し、手元にないもう一つの電子キーと紛失キーとを区別することができない。従って、この場合、紛失キーを特定することができないので、ユーザは手元にないもう一つの電子キーを取りに戻らなければならない。尚、そうした電子キーを取りに戻らなかった場合には、その電子キーまでが紛失キーとして扱われ、上記無効化処理により車両キーとしての機能が無効化されるとともに、この電子キーは使用不可になってしまう。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、手元にないキーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、登録済のキーを判別することが可能なキー判別装置、及び、そうした面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることが可能な紛失キー無効化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、キーを判別するキー判別装置において、判別の対象となるキーに対し個別に設定されたキー識別コードに関連付けされるかたちで当該キーの外観に応じて設定された外観識別コードが登録される登録手段と、判別の対象となるキーの外観を示唆する情報に基づき、その外観に応じて設定された外観識別コードに関連付けされているキー識別コードを選択する選択手段とを備えることをその要旨としている。
【0007】
同構成によると、判別の対象となるキーの外観を示唆する情報が得られれば、その外観に応じて設定された外観識別コードを特定できるようになり、また、その外観識別コードに関連付けされているキー識別コードを特定できるようになる。例えば、車両キーとしてピンク色の携帯機を紛失した場合を想定すると、それ以外の携帯機を一同に手元に揃えなくても、ピンク色の携帯機といった情報が得られれば、キー判別装置によりピンク色の携帯機を判別することができる。従って、手元にないキーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、登録済のキーを判別することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキー判別装置において、前記登録手段には、複数のキー識別コードが登録されるとともに、各キー識別コードには、互いに異なる外観識別コードが関連付けされていることをその要旨としている。
【0009】
同構成によると、同じ外観識別コードのキーを登録できないようにすることで、キーの外観を示唆する情報に基づいて、キーを一義的に特定することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のキー判別装置において、キーの色及びデザインに応じて設定された色識別コードと、キーの形状に応じて設定された形状識別コードとの組み合わせにより前記外観識別コードが規定されていることをその要旨としている。
【0010】
同構成によると、外観識別コードを色識別コードと形状識別コードとに細分化することで、外観を示唆する情報に基づいて一義的に特定できるキーの種類を増やすことができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキー判別装置が備える登録手段にキー識別コードが登録されている登録済のキーのうち特定のキーを紛失キーとして無効化する紛失キー無効化システムにおいて、前記キー判別装置が備える選択手段により選択されたキー識別コードについて、前記登録手段に対する登録を抹消し、このキー識別コードの設定されたキーを紛失キーとして無効化する無効化手段を備えることをその要旨としている。
【0012】
同構成によると、紛失キーの外観を示唆する情報が得られれば、キー判別装置により紛失キーを判別することができ、このキーを無効化して使用不可にすることができる。従って、手元にないキーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、手元にないキーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、登録済のキーを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電子キーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】照合制御装置のメモリに登録された内容を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を車両用の電子キーシステムに具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、電子キーシステム1は、車両のオーナであるユーザが車両キーとして所持する電子キー2と、車両側のセキュリティ装置3とを備えるとともに、両者間で無線による双方向通信が可能となっている。
【0016】
電子キー2は、送受信機能を有するとともに、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25を備えている。
受信アンテナ21は、セキュリティ装置3から送信されてくる呼び掛け信号を受信するための媒体である。受信回路22は、受信アンテナ21で受信された呼び掛け信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号をマイコン23に出力する。
【0017】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えるとともに、そのメモリ23aには、電子キー2に対し個別に設定されたキー識別コードと、当該電子キー2の外観に応じて設定された外観識別コードとが関連付けされるかたちで記憶されている。そして、マイコン23は、受信回路22から呼び掛け信号に関する受信信号が入力されたとき、呼び掛け信号に応答するために、キー識別コードを含む応答信号の原信号を生成するとともに、その原信号を送信回路24に出力する。
【0018】
送信回路24は、マイコン23から入力された原信号を所定周波数(本実施形態では312MHz)の電波に変調して、応答信号を生成する。送信アンテナ25は、送信回路24で生成された応答信号を送信するための媒体である。
【0019】
車両側のセキュリティ装置3は、送受信機能を有するとともに、送信回路31、送信アンテナ32、受信アンテナ33、受信回路34、照合制御装置35を備えている。尚、本実施形態の車両では、車内通信ネットワークを介して各種制御装置が電気的に接続されている。以下、説明の便宜上、これら各制御装置の総称を照合制御装置と規定し、これを符号35で示す。この照合制御装置35は、各種車両制御を許容するのに必要な電気的なキー照合に関するセキュリティ制御を主として行う。
【0020】
送信回路31は、照合制御装置35から入力される呼び掛け信号の原信号を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調して、呼び掛け信号を生成する。送信アンテナ32は、送信回路31で生成された呼び掛け信号を車両周辺に送信するための媒体である。
【0021】
受信アンテナ33は、上記呼び掛け信号に応答するかたちで電子キー2から送信されてくる応答信号を受信するための媒体である。受信回路34は、受信アンテナ33で受信された応答信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号を照合制御装置35に出力する。
【0022】
照合制御装置35は、不揮発性のメモリ35aを備えるとともに、そのメモリ35aには、自車両に適合する正規の電子キー2のキー識別コードと、当該電子キー2の外観識別コードとが関連付けされるかたちで登録される。そして、照合制御装置35は、送信回路31及び送信アンテナ32といった送信系を通じて車両周辺に呼び掛け信号を送信したことに伴い、受信回路34から応答信号に関する受信信号が入力されたとき、それに含まれるキー識別コードについて、メモリ35aに登録済のキー識別コードに対する照合を行う。そして、照合制御装置35は、照合一致したことを条件に、ドアロックの施解錠或いはエンジンの始動といった車両制御を許容する。
【0023】
尚、本実施形態では、正規の電子キー2として3本の電子キーが所定の登録手順を経て車両側に予め登録されており、いずれの電子キーを所持する場合にも、当該電子キーのキー機能が有効化されていることを条件に、車両制御が許容されるようになっている。また、登録済の3本の電子キーのうち特定の電子キーが上記照合制御装置35によって必要に応じて紛失キーとして扱われ、この場合、車両キーとしての機能が無効化され、当該キーによる車両制御が禁止されるようになっている。
【0024】
図2には、キーナンバー「1」〜「3」の各電子キーについて、キー識別コードと外観識別コードとが関連付けされるかたちでメモリ35aに登録されている様子が示されている。キー識別コードは、例えば32ビット分の二値データの組み合わせによって規定されるものであるが、説明の便宜上、キーナンバー「1」のキーのそれを「A」で、また、キーナンバー「2」のキーのそれを「B」で、さらに、キーナンバー「3」のキーのそれを「C」で示してある。また、外観識別コードは、キー識別コードの情報量よりも少ない例えば2〜3ビット程度のデータであり、キーナンバー「1」のキーのそれは、このキーの色が「ピンク色」であることを特定できるものとして規定されている。同様に、キーナンバー「2」のキーの外観識別コードは、このキーの色が「緑色」であることを特定できるものとして規定され、また、キーナンバー「3」のキーのそれは、このキーの外形が「ハート型」であることを特定できるものとして規定されている。
【0025】
尚、本例による電子キーは、従来一般的なメカニカルキーによるようなキー溝等による凹凸関係でのキー照合に代えて、上記した電気的なキー照合に用いられるものである。従って、従来のメカニカルキーに見られる略T字の形状を必ずしも有する必要はなく、通信アンテナ等を収容するに適した箱型、或いは、持ち運びに適したカード型や腕時計型、さらには、所持品として好適意匠を醸し出せる形状の一例であるハート型といったようにその形状は多岐に亘り、その色や描画のデザイン等も含め自由度が高い。ちなみに、こうした電子キーは、その所持態様から携帯機とも呼ばれる。
【0026】
次に、電子キーシステム1の作用について説明する。尚、ここではキーナンバー「1」の電子キーを紛失した場合を想定するが、ユーザはこの紛失キーの特徴として、そのキーの色がピンク色であることを認識しているものとする。
【0027】
この場合、ユーザが紛失キーを除く残りの2本のキーのいずれかを所持するかたちで車両を運転してディーラに出向くと、そこで紛失キー無効化処理が行われる。この処理に際し、車両の照合制御装置35に対し専用ツールが電気的に接続された後、所定の入力操作が行われると、それによる指示を受けるかたちで照合制御装置35は、紛失キー無効化モードへ遷移する。そして、このモードにおいて、登録済の電子キーの一覧がモニタ表示され、ピンク色のキー及び緑色のキー及びハート型のキーといった登録済の3本のキーのうち、どのキーを紛失したのか、といった問い掛けがユーザに対して行われる。そして、紛失キーがピンク色のキーである旨伝えられた後、所定の入力操作が行われると、ピンク色のキーであるキーナンバー「1」の電子キーが照合制御装置35により選択され、このキーナンバー「1」の電子キーの登録が抹消される。その結果、キーナンバー「1」の電子キーは、キー機能が無効化されて使用不可となる。すなわち、このキーによる車両制御が禁止される。
【0028】
尚、本実施形態では、車両側の照合制御装置35及びそれに接続されるディーラ側の専用ツールを含むかたちで紛失キー無効化システムが構築され、照合制御装置35が主となってキー判別装置を構成している。また、上記照合制御装置35は、紛失キー無効化システムの構成要素である無効化手段に相当するとともに、キー判別装置の構成要素である選択手段にも相当する。そして、照合制御装置35が備えるメモリ35aは、キー判別装置の構成要素である登録手段に相当する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)判別の対象となるキーの外観を示唆する情報が得られれば、図2に示すメモリ35aの登録内容に基づき、その外観に応じて設定された外観識別コードを特定できるようになり、また、その外観識別コードに関連付けされているキー識別コードを特定できるようになる。例えば、車両キーとしてピンク色の携帯機を紛失した場合を想定すると、それ以外の携帯機を一同に手元に揃えなくても、ピンク色の携帯機といった情報が得られれば、キー判別装置によりピンク色の携帯機であるキーナンバー「1」の電子キーを判別することができる。従って、手元にないキーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、登録済のキーを判別することができる。
【0030】
(2)上記(1)に関し、紛失キーの外観を示唆する情報が得られれば、照合制御装置35により紛失キーを判別することができ、このキーを無効化して使用不可にすることができる。従って、手元にないキーを取りに戻る等の面倒が生じることなく、紛失キーのみを使用不可にすることができる。
【0031】
(3)図2の例によるように、メモリ35aには、複数のキー識別コードが登録されるとともに、各キー識別コードには、互いに異なる外観識別コードが関連付けされている。この例のように、同じ外観識別コードのキーを登録できないようにすることで、キーの外観を示唆する情報に基づいて、キーを一義的に特定することができる。
【0032】
尚、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・キーの色及びデザインに応じて設定された色識別コードと、キーの形状に応じて設定された形状識別コードとの組み合わせにより外観識別コードが規定されてもよい。同構成によると、外観識別コードを色識別コードと形状識別コードとに細分化することで、外観を示唆する情報に基づいて一義的に特定できるキーの種類を増やすことができる。例えば、上記実施形態による図2の例では、キーナンバー「1」或いは「2」の電子キーはハート型でないことが前提となり、また、キーナンバー「3」の電子キーはピンク色及び緑色のいずれでもないことが前提となる。これに対し、本別例によるところ、ピンク色でハート型をなす電子キーといった情報が得られれば、緑色でハート型をなす電子キーが同時に登録されているような場合でも、それらを峻別することができるようになる。尚、外観識別コードの細分化は、色識別コード及び形状識別コードの組み合わせに限定されない。
【0033】
・キーに描かれたデザイン(模様、色彩等)を含むかたちで外観識別コードが規定されてもよい。同構成によると、例えば縦縞模様の描かれたキーを紛失した場合を想定すると、縦縞模様といった情報が得られれば、そうした紛失キーを特定できるようになる。
【0034】
・キーの大きさに応じて設定されたサイズ識別コードを含むかたちで外観識別コードが規定されてもよい。同構成によると、同じ形状や色の電子キーが複数登録されている場合でも、そのサイズが異なっていれば、各キーを判別することができる。
【0035】
・上記実施形態では、キー判別装置を紛失キー無効化システムに応用した場合について例示したが、キー判別装置を例えば次のようなシステムに応用することも可能である。すなわち、自車両を他人に貸し出す或いは預けるに際し、当該他人に渡す例えばピンク色のキーのキー機能に予め制限をかけるようにすること。この場合、上記紛失キー無効化処理に代えて、キー機能の制限を目的とするキー機能変更処理がディーラ或いはユーザ自らによって行われ、この処理を経て制限のかけられたキーが上記他人に手渡される。この場合も、上記実施形態と同様、キー識別コードとの比較において単純な外観識別コードを用いることで、登録済のキーを容易に判別できるようになる。
【0036】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)キーに描かれたデザインを含むかたちで前記外観識別コードが規定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のキー判別装置。同構成によると、例えば縦縞模様の描かれたキーを紛失した場合を想定すると、縦縞模様といった情報が得られれば、そうした紛失キーを特定できるようになる。
【符号の説明】
【0037】
1…電子キーシステム、2…電子キー、3…セキュリティ装置、21…受信アンテナ、22…受信回路、23…マイコン、23a…メモリ、24…送信回路、25…送信アンテナ、31…送信回路、32…送信アンテナ、33…受信アンテナ、34…受信回路、35…照合制御装置(選択手段、無効化手段)、35a…メモリ(登録手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーを判別するキー判別装置において、
判別の対象となるキーに対し個別に設定されたキー識別コードに関連付けされるかたちで当該キーの外観に応じて設定された外観識別コードが登録される登録手段と、
判別の対象となるキーの外観を示唆する情報に基づき、その外観に応じて設定された外観識別コードに関連付けされているキー識別コードを選択する選択手段とを備える
ことを特徴とするキー判別装置。
【請求項2】
前記登録手段には、複数のキー識別コードが登録されるとともに、各キー識別コードには、互いに異なる外観識別コードが関連付けされている
請求項1に記載のキー判別装置。
【請求項3】
キーの色及びデザインに応じて設定された色識別コードと、キーの形状に応じて設定された形状識別コードとの組み合わせにより前記外観識別コードが規定されている
請求項1又は2に記載のキー判別装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のキー判別装置が備える登録手段にキー識別コードが登録されている登録済のキーのうち特定のキーを紛失キーとして無効化する紛失キー無効化システムにおいて、
前記キー判別装置が備える選択手段により選択されたキー識別コードについて、前記登録手段に対する登録を抹消し、このキー識別コードの設定されたキーを紛失キーとして無効化する無効化手段を備える
ことを特徴とする紛失キー無効化システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−60742(P2013−60742A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199744(P2011−199744)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】