説明

ギアポンプ

【課題】キャビテーションを低下させるスロットを備えたギアポンプを提供する。
【解決手段】
ギアポンプ20は、駆動源19により回転する駆動ギア24と、被駆動ギア26と、をハウジング22内に備える。駆動ギア歯25は、被駆動ギア歯27と係合して被駆動ギア26を回転させる。ギア歯27は、くさび形状をなすスロット50を接触面に有する。スロット50の幅は、半径方向外側位置から半径方向最内側端部に向かうにつれて減少し、スロット50の深さは、半径方向外側位置から半径方向最内側端部に向かうにつれて増加する。スロット50の長さは、半径方向外側位置と半径方向最内側端部との間の距離であり、半径方向外側位置における幅より大きい。スロット50は、キャビテーションを減少させるように、歯間捕捉容積部34に送られる出口32からの流体を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギアポンプに関し、特に、キャビテーションを減少させるようにギア歯に形成されたスロットを有するギアポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のギアポンプは、通常、ハウジング内に設けられた平行の軸に沿って回転する一対のギアを有する。一方のギアは、駆動源により駆動されて回転する。駆動ギアのギア歯は、被駆動ギアのギア歯と係合する。駆動ギアが回転すると、被駆動ギアと接触して被駆動ギアが回転する。流体は、駆動ギアおよび被駆動ギアの外周に位置するポケット内に受容され、入口から出口へと移動する。2つのギアのギア歯は、中央位置で係合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
中央位置における歯間捕捉容積部(inter−tooth trapped volumes)により、ギアポンプの設計に関する課題が生じる。特に、この位置にはキャビテーションの問題が生じる。
【0004】
このキャビテーションの問題に対処する種々の方法が行われてきた。このような対処法には、特に、ギアの一方を通して加圧した流体の流れを歯間捕捉容積部へとタッピングすることが含まれる。しかし、今までの対処法は複雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ギアポンプは、半径方向外側位置に複数のギア歯を有し、かつ第1の軸を中心に回転するように取付けられた駆動ギアを有する。被駆動ギアは、半径方向外側位置に複数のギア歯を有し、かつ第2の軸を中心に回転するように取付けられる。駆動ギアのギア歯は、接触面において被駆動ギアのギア歯と係合して、被駆動ギアを回転させる。駆動ギアのギア歯および被駆動ギアのギア歯の一方の接触面にスロットが形成される。
【0006】
本発明の上記および他の特徴は、以下の記載および添付の図面から理解することができる。図面について以下に簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ギアポンプの概略図。
【図2】本発明を組み込んだギアポンプの上面図。
【図3】本発明を組み込んだギアポンプの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すギアポンプ20は、ハウジング22を有する。ギア歯25を備える駆動ギア24は、ハウジング22内に設けられる。周知のように、概略的に示す駆動源19により、駆動ギア24は軸を中心に回転する。
【0009】
駆動ギア24のギア歯25は、被駆動ギア26のギア歯27と係合して、被駆動ギア26が回転させられる。これにより、流体が、外周部において隣接するギア歯25,27の間に画定されたポケット容積部(pocket volumes)に流入して入口30から出口32へと移動する。同時に、流体は、駆動ギア24と被駆動ギア26の間に位置する実質的に中央に位置する一連の歯間捕捉容積部34に受容される。これらの歯間捕捉容積部34にはキャビテーションの問題がある。
【0010】
被駆動ギア26におけるギア歯27の半径方向位置における接触面に複数のスロット50が設けられている。スロット50は、ギア歯の幅の中心部分、あるいはこの中心部分の近傍に位置する。スロット50は、被駆動ギアのギア歯27に形成されているが、本発明では、駆動ギア24のギア歯25にスロット50を形成してもよい。スロット50は、キャビテーションを減少させるように、歯間捕捉容積部に送られる出口からの流体を受ける。
【0011】
図2に示すように、スロット50は、ギア歯27の先端部51により広い幅d1を有する。この幅d1は、半径方向の最も内側に位置する端部(半径方向最内側端部)52における幅よりも広い。半径方向外側部分における幅d1は、半径方向内側部分における幅d2の2倍以上である。一実施例では、幅d1は、幅d2の4倍である。理解されるように、スロット50の側面54は、被駆動ギア26の回転軸に対し、互いに向かって延び、この平面上においてスロット50は実質的にくさび形をなしている。
【0012】
図3は、被駆動ギア26の断面図であり、他の平面に沿ったスロット50を図示している。図から分かるように、スロット50は、この平面においても実質的にくさび状をなしている。スロット50の半径方向の最も外側の位置(半径方向最外側位置)51における深さ56は、半径方向最内側端部52における深さ58よりも浅い。スロット50の半径方向最内側端部52の位置は、ギアのピッチ円直径の円周上、つまりピッチ円上に位置する。スロット50は、長さd3に沿って延びている。この長さd3は、幅d1より大きく、幅d1の1.5倍以上としてもよい。一実施例では、長さd3は、幅d1の約2倍である。長さd3は、歯先円の半径とピッチ円の半径の差である。以下に式を示す。
【0013】
d3=(歯先円直径−ピッチ円直径)/2
半径方向最内側端部52における深さd4は、幅d2よりも小さく、長さd3よりもさらに小さい。例えば、深さd4は、長さd3の約5〜10%である。一実施例では、幅d1は、ギアの幅の5〜10%程度であり、幅d2は、幅d1の半分に等しい。
【0014】
スロット50を備えることにより、被駆動ギア26が回転すると、出口32からの流体が、スロット50を通って歯間捕捉容積部34へと移動する。スロット50のくさび形状は、オリフィスと同様に機能して、流体を歯間捕捉容積部34へと導くとともに、加圧する。このようにして、キャビテーションが減少する。
【0015】
本発明の実施例を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく修正が加えられることを理解されるであろう。したがって、本発明の内容および範囲を決定するように以下の特許請求の範囲を検討されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向外側位置に複数のギア歯を有し、かつ第1の軸を中心に回転するように取付けられた駆動ギアと、
半径方向外側位置に複数のギア歯を有し、かつ第2の軸を中心に回転するように取付けられた被駆動ギアと、
を備え、
駆動ギアのギア歯は、接触面において被駆動ギアのギア歯と係合して、被駆動ギアを回転させ、
駆動ギアのギア歯および被駆動ギアのギア歯の一方の接触面にスロットが形成されることを特徴とするギアポンプ。
【請求項2】
前記ギア歯の一方が被駆動ギアのギア歯であることを特徴とする請求項1に記載のギアポンプ。
【請求項3】
スロットは、前記第2の軸に対して、半径方向外側位置から半径方向最内側端部に延びることを特徴とする請求項2に記載のギアポンプ。
【請求項4】
スロットは、被駆動ギアのギア歯の先端部から半径方向内側に延びることを特徴とする請求項3に記載のギアポンプ。
【請求項5】
スロットの幅は、第2の軸に沿って画定され、該スロットの幅は、半径方向外側位置から半径方向最内側端部に向かうにつれて減少することを特徴とする請求項3に記載のギアポンプ。
【請求項6】
半径方向外側位置における幅は、半径方向最内側端部における幅の2倍以上であることを特徴とする請求項5に記載のギアポンプ。
【請求項7】
スロットの深さは、被駆動ギアのギア歯の接触面へと延びる寸法として画定され、かつ半径方向外側位置から半径方向最内側端部に向かうにつれて増加することを特徴とする請求項6に記載のギアポンプ。
【請求項8】
スロットの長さは、半径方向外側位置と半径方向最内側端部との間の距離として画定され、かつ半径方向外側位置における幅よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載のギアポンプ。
【請求項9】
前記長さと前記半径方向外側位置における幅との比は、1.5より大きいことを特徴とする請求項8に記載のギアポンプ。
【請求項10】
スロットの深さは、被駆動ギアのギア歯の接触面へと延びる寸法として画定され、かつ半径方向外側位置から半径方向最内側端部に向かうにつれて増加することを特徴とする請求項3に記載のギアポンプ。
【請求項11】
スロットの長さは、半径方向外側位置と半径方向最内側端部との間の距離として画定され、かつ半径方向外側位置における幅よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のギアポンプ。
【請求項12】
前記長さと前記半径方向外側位置における幅との比は、1.5より大きいことを特徴とする請求項3に記載のギアポンプ。
【請求項13】
半径方向外側位置に複数のギア歯を有し、かつ第1の軸を中心に回転するように取付けられた駆動ギアと、
半径方向外側位置に複数のギア歯を有し、かつ第2の軸を中心に回転するように取付けられた被駆動ギアと、
被駆動ギアのギア歯の接触面に形成されるスロットと、
を備えるギアポンプであって、
駆動ギアのギア歯は、前記接触面において被駆動ギアのギア歯と係合して被駆動ギアを回転させ、
スロットは、第2の軸に対して、半径方向外側位置から半径方向最内側端部に延び、
スロットの幅は、第2の軸に沿って画定され、該スロットの幅は、半径方向外側位置から半径方向最内側端部に向かうにつれて減少し、
半径方向外側位置における幅は、半径方向最内側端部における幅の2倍以上であり、
スロットの深さは、被駆動ギアのギア歯の接触面へと延びる寸法として画定され、かつ半径方向外側位置から半径方向最内側端部に向かうにつれて増加し、
スロットの長さは、半径方向外側位置と半径方向最内側端部との間の距離として画定され、かつ半径方向外側位置における幅よりも大きく、
前記長さと前記半径方向外側位置における幅との比は、1.5より大きいことを特徴とするギアポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−144714(P2010−144714A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248361(P2009−248361)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】