説明

ギンバイカを含む口腔衛生組成物

本発明は、好ましくは、動物の口腔の歯垢の低減または調節、および/または歯垢の細菌量の変化を通じて、動物における口腔衛生の改善または維持における、口腔衛生用途に使用するためのギンバイカ、ギンバイカを含む経口組成物、およびギンバイカまたは組成物の使用に関する。本発明はまた、動物における歯肉炎の予防または治療に使用するためのギンバイカを含む。本発明は、動物の口腔衛生を改善または維持する方法についても提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは、動物の口腔の歯垢の低減または調節、および/または歯垢の細菌量の変化を通じて、動物における口腔衛生の改善または維持における、口腔衛生用途に使用するためのギンバイカ(myrtle)、ギンバイカを含む経口組成物、およびギンバイカまたは組成物の使用に関する。本発明はまた、動物における歯肉炎の予防または治療の用途のためのギンバイカを含む。
【背景技術】
【0002】
動物における口腔衛生の維持または改善の必要性は、非常に重大である。口腔衛生の不良は、歯周疾患(歯肉炎)、および最終的には、動物の健康にとって深刻な影響を有しうる、歯の喪失につながる可能性がある。
【0003】
多くの疾患および病状が、口腔衛生の不良の原因となりうる。ネコおよびイヌに最もよく見られるものの1つは、歯周疾患である。歯周疾患は、すべてのネコおよびイヌの一生のある時期において、影響を及ぼす。歯周疾患のすべての事例における病原体は、歯垢である。
【0004】
愛玩動物における歯垢の形成(および歯肉炎などの関連する症状)を低減または調節するための現在の食餌方法は、通常、動物が咀嚼または摂食する際に、歯から歯垢をこすり落とす作用をする、硬い噛み物(chews)またはトリーツ(treats)などの機械的手段である。機械的手段は、その効果をテクスチャに依存しており、その手段が破損に耐え、したがって咀嚼の際の歯磨き時間を増加させるためには、もろいよりは噛み応えのあるテクスチャが好ましい。ネコは、長時間咀嚼することへの熱中度がイヌよりも低い。したがって、種々の動物用の製品は、これらのさまざまな選好を考慮して、テクスチャが異なっている。
【0005】
テクスチャ加工された玩具を用いて、テクスチャ加工された表面を提供する任意の製品を摂取することなく、歯の表面から機械的に歯垢を除去してもよい。
【0006】
しかしながら、テクスチャ加工された食材または玩具などの機械的手段による歯垢の除去は、歯の表面から歯垢をこすり落とすために、動物がその機械的手段の咀嚼に十分な時間をかけることを当てにしている。その所要時間を見積もり、監視することは難しい。加えて、口腔内のすべての歯の表面の歯垢の調節は、機械摩耗だけでは達成することが困難であり、特定の歯は、他の歯よりも効率よく歯垢の除去を受けることとなる。
【0007】
歯垢は、ブラッシングによる歯磨きによっても除去または低減されうる。しかしながら、飼い主による歯磨きの順守は低く、その結果、毎日歯磨きによる口腔ケアを受けているイヌおよびネコはほとんどいない。
【0008】
歯垢の除去のための機械的手段の代替として、クロルヘキシジンおよびトリクロサンなどの特定の合成化合物を抗菌剤として使用して、歯垢を低減させることができる。しかしながら、これらの化合物は、広範囲に及ぶ抗菌剤であり、したがって、定期的に摂取すると、健全な腸内細菌叢群のバランスを崩す可能性がある。さらには、特定の歯垢細菌は歯周の健康と関係しており、幅広い抗菌効果を伴う処理は、これらの個体群を破壊し、実質的に、健全な口腔の細菌叢を低減させる結果となり、口腔衛生の低下につながるであろう。
【0009】
歯の表面の細菌性バイオフィルムの蓄積は、十分に対処しない場合には、歯肉炎を生じうる。歯肉炎は、歯肉線上に蓄積した歯垢によって生じる歯肉の炎症である。それは、歯肉の痛み、発赤、および出血を生じさせうる。
【0010】
口腔衛生の不良のさらなる有力な要因は、歯石である。歯石は、正常の場合、歯磨きによっては除去することができず、歯の表面に蓄積し、歯肉組織を刺激し、歯肉炎を生じさせる。これは、口腔衛生が不良である、または低下していることのさらなる徴候である。
【0011】
トリポリリン酸ナトリウムなどの歯石形成抑制剤をペットの食材または人間の口腔衛生製品に加えることは、歯石の蓄積予防の助けとなる。しかしながら、これは、動物の口腔衛生上、歯周疾患の有害な影響の一因となっている歯垢内の細菌群組成に対処するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、動物における歯垢の影響を、特に、自然な方法で、単に機械的手段、あるいは合成化学物質または化合物に頼らずに、動物にストレスを与えることなく、低減させることが必要とされている。さらには、動物における歯肉炎の予防および治療も依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、動物における口腔衛生の改善または維持に使用するギンバイカを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】未処理対照の割合で表した、処置されたバイオフィルムから培養した通性嫌気性菌におけるギンバイカの効果。未処理CFU(コロニー形成単位)(100%)=4.05×10/ml
【図2】未処理対照の割合で表した、処置されたバイオフィルムから培養した気難しい(Fastidious)嫌気性菌におけるギンバイカの効果。未処理CFU(100%)=2.96×10/ml
【図3】未処理対照の割合で表した、処置された単一種のバイオフィルムから培養したPeptostreptococcus stomatisのコロニーにおけるギンバイカの効果。未処理CFU(100%)=1.34×10/ml
【発明を実施するための形態】
【0015】
ギンバイカ(マータス・コミュニス(Myrtus communis))は、南欧および北アフリカ原産のフトモモ科(Myrtaceae)の顕花植物である。
【0016】
本発明者らは、ギンバイカが、動物の口腔衛生を改善および/または維持可能であることを、偶然にも見出した。
【0017】
ギンバイカは、動物の歯垢を調節または低下させることによって、動物の口腔衛生を改善または維持することが好ましく、それによって、歯垢および/またはプラークによって生じる疾患を引き起こす因子が、動物の口腔において低減または抑制されることを意味する。
【0018】
歯垢は、好気性および嫌気性の細菌からなる、混合細菌群である。歯垢は個体間で変化しうるが、その形成過程は、(i)第1のコロニー形成(付着)、(ii)第2のコロニー形成(共凝集)、および(iii)成熟(病原性)の3つの重要事象に分けることができる。
【0019】
歯垢の発達は、歯の表面が、歯の唾液ペリクルといわれる、タンパク質および糖タンパク質のフィルムで覆われることから始まる。細菌の先駆種が唾液ペリクル内の分子に付着し、最初に単層を、次いで歯の表面と垂直に細菌の垣を形成する(pallisades)。
【0020】
細菌は、弱い引力によって短時間保持され、その間に、多くの特異的付着メカニズムが、かなりの時間、表面の近くに細胞を保持する。これらの特異的相互作用は、場合によっては細胞表面から突き出る微細線維または線毛と呼ばれる繊細な構造を含みうる、レクチン様の、静電気的相互作用および疎水的相互作用の組合せでありうる。その後、初期の付着は細胞外ポリマーの産生によって、実質上不可逆になる。
【0021】
ヒトでは、連鎖球菌は、唾液ペリクルに付着するすべての細菌の47〜52%を構成する、最も一般的な主要な定着菌群である。
【0022】
この初期段階の間およびその後、種々の細菌による第2のコロニー形成が生じ、細菌多様性の大幅な増加に至る。第2のコロニー形成の事象の中で最も重要なのは、共凝集の過程であり、それによって主要な定着菌群がコロニー形成の基質として作用する。
【0023】
共凝集は、「混合性の細胞凝集が形成されるような、2種類の異なる細菌性細胞型の表面分子間の認識」であるとされている。共凝集はまた、「懸濁液におけるパートナー細胞間の付着」ともいわれている。
【0024】
共凝集は、特定の細菌「パートナー」間に生じる、きわめて特異的な過程である。各株は、独自のパートナー、および、細胞−細胞間の認識メカニズムを有している。他のいくつかの株と共凝集することのできる株群もまた存在する。人体研究に基づいて、これらのその後に定着菌群の中心となる、このような生命体の1つは、成熟した歯垢における主要な生命体である、フソバクテリウム・ヌクレアタムである。
【0025】
共凝集は、人の歯垢形成において重要な役割を果たすことが知られている。イヌの口腔細菌の異なる株間の共凝集は、他の動物における歯垢の形成および発達におけるこの作用と同様の役割を示すことが、インビトロで測定されている。
【0026】
歯垢のバイオフィルムの発達のある時点において、すべての組成における変化率が遅くなる。バイオフィルムがこの段階に達するには数日かかると考えられているが、それが起こる時点については現在のところ判明していない。
【0027】
ヒトの歯垢では、一連の細菌種は、グラム陽性の球菌および桿菌として生じ、次第に、グラム陰性の、フィラメント状および鞭毛を有する生命体に置き換わる。成熟したバイオフィルムもまた、深さが増加するにつれて、次第に嫌気性になる傾向にある。
【0028】
この時点では、バイオフィルムは極相群落に達しているといわれ、そこでは、多くの細菌はその生存をバイオフィルム内の他の細菌に依存している。この段階では、歯周疾患に関連する多くの生命体が存在する。これらの細菌は、プロテアーゼおよび溶血素など、歯周疾患の病原因子である、多くの化合物を産生する。プロテアーゼ、特にトリプシンは、免疫グロブリンを分解し、サイトカインおよびそれらの受容体を不活性化し、宿主組織を分解し、口腔内の出血を促進する能力を含む、多くの能力を有することが報告されている。歯垢の細菌は、歯垢のバイオマスとして知られている。
【0029】
ポルフィロモナス属、バクテロイデス属、およびプレボテラ属などの黒色色素産生性嫌気性菌に加えて、ペプトストレプトコッカスなどの病原菌も、しばしば歯垢中に存在し、そのすべてが病状の一因となると考えられている。
【0030】
本発明のギンバイカは、これらのバイオフィルムの形成の抑制、および/またはバイオフィルムの有害な活性の抑制に有用であり、したがって、動物における歯垢を調節または低減することによって口腔衛生を改善または維持するのに役立つ。本発明のギンバイカはまた、動物の歯肉炎の予防または治療を提供する。
【0031】
バイオフィルムにおける病原菌のレベルの低下によって、歯垢の衛生が改善される。したがって、本発明のギンバイカは、歯垢の細菌量を変化させるのに有用であり、動物の口腔における歯垢の病原菌量を低減させることが好ましい。ギンバイカはまた、歯垢の健全な細菌の増殖を促進しうる。本発明のギンバイカは、動物の口腔に存在する歯垢の衛生の改善に有用である。
【0032】
本発明のギンバイカは、動物の歯垢における炎症性プロテアーゼおよび/または黒色色素産生性嫌気性菌のレベルを低減させることが好ましい。これらは、歯垢に認められる重要な病原体である。
【0033】
ギンバイカは、好ましくはペプトストレプトコッカスを含む、歯垢中の病原菌を抑制または低減させることが最も好ましい。
【0034】
本発明のギンバイカは、ヒトを含む任意の動物に適している。しかしながら、好ましい実施の形態では、動物は愛玩動物またはヒトである。愛玩動物については、ペットとして飼育されている任意の動物を意味し、ネコ、イヌ、ウマ、ウサギ、またはモルモットが挙げられる。組成物は、ネコ、またはイヌ、もしくはヒト用であることが好ましい。
【0035】
ギンバイカの種類は、マータス・コミュニス(Myrtus communis)であることが好ましく、それは、Myrtus baetica、Myrtus italica、Myrtus romanifolia、Myrtus macrofilia、Myrtus littoralis、Myrtus minimaを含むいくつかの他の名称でも知られている。当業者には、Myrtus baetica var. vidalii、Myrtus communis var. christinae、Myrtus communis var. eusebii、Myrtus communis var. gervasii、Myrtus italica var. briquetii、Myrtus italica var. petriludovici、Myrtus communis var. acutifolia、Myrtus communis var. angustifolia, Myrtus communis var. baetica、Myrtus communis var. belgica、Myrtus communis var. mucronata、Myrtus communis var. romana、Myrtus major Garsault、Myrtus minor Garsault、Myrtus acuta Mill、Myrtus baetica Mill、Myrtus belgica Mill、Myrtus italica Mill.Myrtus minima Mill、Myrtus littoralis Salisb、Myrtus macrophylla、Myrtus microphylla Myrtus romanifolia、Myrtus communis subsp. Mucronata、Myrtus media, Myrtus romana Hoffmanns、Myrtus angustifolia、Myrtus buxifolia Raf Myrtus lanceolata Raf、Myrtus latifolia Raf、Myrtus oerstedeana、Myrtus sparsifolia、Myrtus veneris Bubani、Myrtus communis v
ar. acuminata、Myrtus communis var. italica (Mill.) 、Myrtus communis var. lusitanica、Myrtus borbonis Sennen、Myrtus acutifolia (L.) 、Myrtus augustinii、Myrtus baui、Myrtus briquetii、Myrtus christinae、Myrtus communis var. balearica、Myrtus communis var. foucaudii、Myrtus communis var. grandifolia、Myrtus communis var. joussetii、Myrtus communis var. neapolitana、Myrtus eusebii、Myrtus gervasii、Myrtus josephi、Myrtus mirifolia、Myrtus petri-ludovici、Myrtus rodesi、Myrtus theodori、およびMyrtus vidaliiを含む他の名称もまた、この種のギンバイカを称するのに用いられることが理解されよう。
【0036】
本発明のギンバイカは、植物全体またはその一部でありうる。それは、根、樹皮、茎、葉、樹液、花、またはそれらの任意の組合せであって構わない。ギンバイカは、乾燥、粉砕、粉末化、または細断されてもよい。用いられるギンバイカは、ギンバイカの葉であることが好ましい。
【0037】
追加で、または代替として、ギンバイカ抽出物を使用してもよい。適切な抽出物として、メタノール抽出物、エタノール抽出物、クロロフォルム抽出物または水抽出物が挙げられる。当業者に理解されるように、他の適切な抽出物も使用して差し支えない。
【0038】
本発明の第2の態様は、ギンバイカを含む経口組成物を提供する。
【0039】
ギンバイカは、組成物の0.1〜20重量%の量で含まれて差し支えなく、1〜15重量%がさらに好ましく、3〜10重量%がさらになお好ましく、あるいは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10重量%の量で含まれうる。ギンバイカは、組成物の約3重量%の量で含まれることが最も好ましい。
【0040】
組成物は、ギンバイカを、口腔衛生の改善または維持に関する唯一の活性成分として含みうる。あるいは、組成物は、1種類以上のさらに口腔衛生を改善または維持する、または歯垢を低減または調節する成分を含む、混合物の一部として、ギンバイカを含みうる。
【0041】
本明細書では以後、「経口組成物」という用語は、食材、食餌およびサプリメントを含む、動物の口腔、好ましくは動物の歯の表面と接触した状態になるすべての組成物に及ぶ。任意のこれらの形態は、固体、半固体、または液体でありうる。組成物は、ペーストまたはゲルであってもよい。
【0042】
組成物は、歯垢における疾患を引き起こす因子および/またはバイオマスの低減または抑制によって、動物における歯肉炎の予防または治療を含む口腔衛生の改善または維持、もしくは、動物において歯垢を抑制または低減させることを目的として、ギンバイカを十分な量で含まない任意の食材に加えるべきサプリメントの形態であって差し支えない。
【0043】
サプリメント中のギンバイカの濃度は、動物の主要な食餌または食材に加えて使用して差し支えない。これは、動物の食餌にサプリメントを含めることによって、または動物にサプリメントを追加的に与えることによって成しうる。サプリメントは、動物に与える前に希釈を要する、本発明のギンバイカ組成物を極めて高濃度で含む食材として形成されうる。サプリメントは、固体(例えば、粉末)、半固体(例えば、食品に似た硬さ/ゲル)、液体、ペーストを含む任意の形態であって差し支えなく、あるいは、錠剤またはカプセルの形態であってもよい。液体は、便利には、食品に混練することができ、あるいは、例えばスプーンまたはピペットのような器具で、動物に直接与えてもよい。サプリメントは、本発明の1種類以上の成分の割合が高くて差し支えなく、あるいは、各部分が1種類以上の成分を所要の濃度で含む、少なくとも2つの部分を合わせたパックの形態であってもよい。
【0044】
ギンバイカまたはギンバイカを含む組成物は、市販用ペットフード製品組成物、あるいは、市販用の栄養補助食品組成物中に取り込まれることが好ましい。ペットフード製品は、乾燥、半乾燥、湿り気のある、または液体(飲料)製品であって差し支えない。湿り気のある製品には、スズまたはホイル容器中の固体であって、70〜90%の水分含量を有する食品が含まれる。乾燥製品には、同様の組成を有するが、5〜15%の水分含量を有し、ビスケット様のキブル(kibbles)として存在する食品が挙げられる。組成物が、食餌、食材、またはサプリメントを含む場合には、パッケージ化されることが好ましい。このようにして、消費者はパッケージから、食品中の成分を認識し、対象とする動物に適していることを認識することが可能になる。パッケージは、金属(通常、スズまたはフレキシホイル(flexifoil))、プラスチック、紙、またはカードであって差し支えない。製品中の水分量は、使用可能な、または所望されるパッケージの種類に影響を及ぼしうる。
【0045】
本発明に従った組成物には、動物が、その食餌で消費しうる任意の製品が含まれる。よって、本発明は、ペットフードスナック(例えば、スナックバー、ビスケット、および甘味製品)はもとより、ヒトまたは他の動物用の標準的食品にも及ぶ。組成物は加熱調理製品でもよい。それに、肉または動物由来の材料(ウシ、鶏、七面鳥、子羊、血漿、髄骨など、またはそれらの2つ以上の組合せ)を取り込んでもよい。あるいは、組成物は、タンパク質源を提供するために肉を含まなくてもよい(大豆、トウモロコシグルテン、または大豆製品などの肉代替物を含むことが好ましい)。組成物は、大豆タンパク質濃縮物、ミルクタンパク質、グルテンなどの追加のタンパク質源を含みうる。組成物は、1種類以上の穀物(小麦、トウモロコシ、米、カラスムギ、オオムギなど)などのデンプン源を含んでもよく、あるいは、デンプンを含まなくてもよい。典型的な市販のイヌおよびネコ用の乾燥ペットフードは、約30%の粗タンパク質、約10〜20%の脂肪を含み、残りは食物繊維およびアッシュを含む炭水化物である。典型的なウェット、または湿り気のある製品は、(乾燥重量当たり)約40%の脂肪、50%のタンパク質を含み、残りは繊維およびアッシュである。本発明の組成物は、ネコ、イヌまたは任意の他の愛玩動物、またはヒト用の食餌、食材またはサプリメントとしての販売される、本明細書に記載するような食材に特に好適である。
【0046】
本明細書では、「飼い」イヌおよび「飼い」ネコという用語は、イヌおよびネコ、特に、フェリス・ドメスティクス(Felis domesticus)およびカニス・ドメスティクス(Canis domesticus)を意味する。
【0047】
組成物は、主要な食事の食材に加えて動物に消費させうる、噛み物(チュー)またはトリーツに施用、または取り込んで差し支えない。組成物は、主要な食事の食材にコーティングとして、または取り込んで提供されてもよい。
【0048】
あるいは、組成物は、動物用玩具などの非摂食性の製品にコーティングとして施用されうる、液体、ゲル、ペーストなどであってもよい。組成物は、製品内に取り込まれてもよい。動物が玩具を咀嚼する際に組成物が動物の口腔の一部またはすべてと接触した状態になり、動物の口腔衛生を改善または維持する。
【0049】
組成物が噛み応えのある、または硬い製品内に取り込まれるか、または表面にコーティングされる場合、組成物中のギンバイカの作用はもちろんのこと、動物の歯に対する製品の機械的作用を通じて歯垢を除去することによって動物の口腔衛生が改善または維持されるという追加的利益が達成される。
【0050】
ギンバイカによる、ある歯垢バイオフィルム形成細菌の抑制は、歯垢の細菌量の低下による動物の歯垢の調節または低減をもたらす結果につながる。
【0051】
組成物を任意のレベルの口腔衛生を有する動物に使用して、動物の口腔衛生を改善または維持して構わない。
【0052】
組成物を、良好な、または許容できる口腔衛生を有する動物に使用して、口腔衛生を維持してもよい。この場合における組成物は、歯垢形成を調節し、動物の歯周の健康における、ある歯垢細菌の破壊的影響を最小限に抑えうる。
【0053】
あるいは、組成物を口腔衛生の不良な動物に使用して、動物の口腔衛生を改善してもよい。口腔衛生の改善は、さらなる歯垢の蓄積を調節することによってなされ、最も高い重症度に進行するのを遅らせうる。それは、動物の歯の表面にすでに存在する歯垢をも低減させうる。重症な歯周疾患を穏やかにする事例では、動物は、口腔衛生の利益を達成し、将来の獣医および/または歯科治療の頻度を低減させるために、組成物の使用前に、獣医または歯科治療を必要とする場合がある。
【0054】
組成物は、経口組成物である。経口組成物については、使用の間に、動物の口腔が組成物に晒されることを意味し、組成物が動物の歯の表面と直接接触することが好ましい。歯の表面が組成物のギンバイカと直接接触することが最も好ましい。
【0055】
これらの経口組成物としては、練り歯磨き、うがい薬、もしくは、ゲル、液体またはペーストなどの任意の他のものが挙げられる。経口組成物は、先に定義された食材であって差し支えない。
【0056】
本発明の第3の態様では、本発明は、動物の口腔衛生を改善または維持するための組成物の製造におけるギンバイカの使用を提供する。口腔衛生は、疾患を引き起こす因子、バイオマス、または病原菌の低減および/または抑制を含む、動物における歯垢を調節または低減させることにより、改善または維持されることが好ましい。本発明の組成物の製造および歯肉炎の治療におけるギンバイカの使用についても提供する。
【0057】
本発明は、第4の態様として、動物にオルソシフォン・スピカタスまたは第2の態様の組成物を投与する工程を含む、動物の口腔衛生を改善または維持する方法を提供する。本方法は、先に定義したように、動物における歯垢を低減または調節することによって動物の口腔衛生を改善または維持することが好ましい。
【0058】
第4の態様の方法では、食材に含めることによる組成物の消費によって、または、動物が咀嚼する玩具上の組成物を含むコーティングによって、動物の口腔が組成物に晒される。
【0059】
本方法は、不良な口腔衛生、または歯垢、歯肉炎、または歯周疾患の影響を受けやすい動物に使用されることが好ましい。
【0060】
組成物を不良な口腔衛生を有する動物に投与して、そこに含まれる歯垢および因子の量を低減させ、次いで、摂食を継続させることにより、さらなる歯垢の形成、およびそこに含まれる1つ以上の因子を調節、低減または抑制してもよい。動物は、オルソシフォン・スピカタスまたは組成物の有益な効果が見られるように、組成物の使用前または使用の間に、歯石の沈着を除去するため、獣医および/または歯の治療を必要とする場合がある。
【0061】
口腔衛生の不良については、当業者に認識されるように、歯石および歯垢の蓄積、歯肉炎、口臭、歯肉退縮、および/または歯周ポケットを含む、この状態の多くの徴候の存在を意味している。
【0062】
本発明の各態様のすべての特性は、当業者に認識されるように、必要な変更を加えた、すべての他の態様に関係している。
【実施例】
【0063】
ギンバイカを、次のインビトロ実験によって、動物における歯垢の調節または低減させる能力について試験した。歯肉縁上の歯垢をイヌから採取し、下記のようなさまざまなアッセイを行い、ギンバイカが動物の口腔衛生を改善または維持する能力を有するか否かについて判断した。
【0064】
実施例1
最初のアッセイは、ギンバイカが、口腔衛生を改善または維持するため、動物における使用に適しているか否かの判断を補助するために、設定された。
【0065】
これらのアッセイには、歯垢形成細菌の付着を抑制し、口腔細菌の増殖を抑制し、口腔細菌におけるプロテアーゼの産生を抑制し、口腔細菌株によって生じる溶血を抑制する能力が含まれる。
【0066】
ギンバイカは、付着を最大100%、増殖を最大93%、プロテアーゼ産生を最大57%抑制し、試験した8種類の口腔細菌株のうち5種において、溶血を抑制する能力を示した。
【0067】
これらの結果は、ギンバイカが、望ましくない口腔細菌を抑制する能力を有することを示しており、したがって、動物の口腔衛生を改善または維持する能力について、さらなるアッセイを行った。
【0068】
実施例2
アッセイ接種材料:イヌからの歯垢および唾液の摂取
アッセイには、接種用に、イヌの新鮮な歯肉縁上の歯垢および唾液を必要とする。接種材料は、さまざまな年齢、犬種、および口腔衛生状態にある、14匹のイヌの群からサンプリングした、プールされた歯垢およびフィルタ処理されていない唾液からなる。
【0069】
歯垢および唾液を人工唾液に再懸濁して約15%の歯垢および30%の唾液の接種材料を形成した。
【0070】
アッセイの設定
プレートバイオフィルムアッセイ(PBA)は、24ウェルプレートフォーマットを使用し、代表的なイヌの歯垢であるバイオフィルムをヒドロキシアパタイト(HA)ディスク上で増殖させる。24ウェルアッセイプレートに取り込む前に、各HAディスクを、2時間、イヌの人工唾液中50%のフィルタ殺菌したイヌの唾液の溶液で前処理する。前処理工程は、HAディスク表面の唾液ペリクルの形成に刺激を与える。前処理の後、各HAディスクをそれぞれ、24ウェルプレート上のウェルに置く。接種材料を2等分し、その一方に好適な濃度で活性を加える。他方は対照(非活性)を意味する。1mlの接種材料を各ウェルに加え、アッセイプレートを38℃で48時間、好気的に振とう培養する。24時間および30時間後、ディスクを、上述のように好適な濃度で活性を含む、新鮮な人工唾液中に移動させる。48時間後、アッセイのため、バイオフィルムで覆われたHAディスクをアッセイプレートから取り出す。各HAディスクを、バイオマスの定量化に使用されるものを除いて、500μlのPBSに入れ、ボルテックスで30秒間混合し、ディスクから増殖したバイオフィルムを溶液中に移す。次に、バイオフィルム懸濁液を分析に使用する。バイオマスの定量化に用いられる、バイオフィルムで覆われたHAディスクを24ウェルアッセイプレートから取り出し、直接、クリスタル・バイオレットアッセイに使用する。
【0071】
実施例3
PBAにおいて試験されたギンバイカ抽出物
ギンバイカのメタノール抽出物を、イヌのPBAにおける試験に使用した。抽出は前述の通りに行なった。
【0072】
生の植物、すなわちギンバイカの葉を、500μg/mlおよび5000μg/mlのイヌのPBA中で、クローブ(乾燥させた花の蕾)、パセリ(葉)およびユーカリ(葉)を対照として試験した。ギンバイカは、500μg/mlおよび5000μg/mlの両方において、パセリおよびユーカリよりも、プロテアーゼおよびバイオマスにおける高い能力を示した。
【0073】
加えて、クロルヘキシジン(Lloyds Pharmacy社製)を、標準的判断基準(gold standard reference)、または陽性対照として含めた。しかしながら、クロルヘキシンは、合成化学物質であり、純粋な形態で使用する場合には毒性効果を有する可能性があろうことから、動物用組成物の用途には望ましくない
実施例4
バイオフィルムの測定
イヌのPBAで産生されたバイオフィルム、ならびに、バイオフィルムの発達におけるギンバイカおよび非植物性化合物の効果の評価には、以下の分析を用いた:
バイオマスの定量化(クリスタル・バイオレットアッセイ)
プロテアーゼ活性
細菌の生菌数
各アッセイの簡単な説明を以下に示す。
【0074】
バイオマス
HAディスク上で増殖させたバイオフィルムの総量を、クリスタル・バイオレット染色法を用いて定量化した。バイオマスは、対照と比較したサンプルの595nmにおけるOD(OD595)に直接比例することが示された。結果は、ディスク上で増殖させたバイオフィルムの量における活性処理の効果を反映して、非活性対照と比べて、活性処理されたサンプルでは、OD595における低下が見られることを示した。
【0075】
ギンバイカはバイオマスを最大59.5%低減させた。
【0076】
プロテアーゼ活性
トリプシン様プロテアーゼ活性を、液体BAPNAアッセイ、比色分析を用いて測定し、その結果、サンプル中に存在するトリプシンの量は、発色強度に直接的に比例した。サンプルをトリプシン標準曲線に対して定量化し、その結果、対照に比べて活性処理サンプルにおけるプロテアーゼ活性の抑制の割合として表した。
【0077】
ギンバイカは、プロテアーゼの産生を74.34%低減させた。
【0078】
細菌数
細菌の生菌数を、ヘミンおよびメナジオンを補充したコロンビア血液寒天プレートを用いて定量化した。好気性菌は2日間培養後にカウントし、黒色色素産生性細菌コロニー(BPC)を含む嫌気性菌に関しては、適切な条件下で9日間培養後にカウントした。プレートカウント数をコロニー形成単位(cfu)/mlとして表し、対照と活性プレートの差異を対数で表した。
【0079】
ギンバイカは、対照と比較して、対数で3.75、黒色色素産生性細菌コロニーのプレートカウント数を低減させた。この特定の細菌群は、歯周疾患において重要であると考えられる。
【0080】
実施例5
データの統計分析
各サンプルをアッセイ内で5回反復した。別記されない限り、すべての抽出物は、アッセイにおいて、500μg/mlの濃度で試験された。各サンプルについて、得られたすべての値を対数化し、対数値から平均値を算出した。
【0081】
次に、不等分散を伴う両側t−検定(2-tailed t-test)を行った。不等分散分析は、個々の分析が独立しているものとして選択されており、言い換えれば、その測定値は、互いに比較することができない。各データセットについてp値を得、これらにデータの再現性の指示を与えた。
【0082】
結果
ギンバイカについてどのように試験したかをまとめた表を以下に示す。
【表1】

【0083】
示されるように、マータス・コミュニスは、黒色色素産生性細菌コロニーのカウント数を大幅に低減させ、プロテアーゼおよびバイオマスにおける顕著な抑制効果を有していた。
【0084】
実施例6
原料の試験
ギンバイカの生の植物材料についても、上述の抽出物と同様にプレートバイオフィルムアッセイで試験した。250μmの細孔サイズの篩を通して生の植物材料を調製し、アッセイにおいて5000μg/mlで試験した。生の材料は、先に試験した抽出物と同程度、バイオフィルム形成の抑制に有効であった。
【0085】
実施例7
ヒトの歯垢の抑制
ギンバイカの粉末を、ヒトにおけるバイオフィルムの形成の抑制について、プレートバイオフィルムアッセイで試験した。各試験薬の最終的な濃度は250μl/mlであった。試験は、アッセイごとに5回反復した。
【0086】
ヒドロキシアパタイトディスクを室温で2時間、20%のプールされたヒト唾液中でインキュベートした。10ml量のプールされたヒト唾液を回収し、ヒトのボランティアの歯の表面からこすり取った歯垢接種材料と合わせた。接種材料を、20%のプールされた唾液に1:3(v/v)の比で加え、1.33mlの得られた懸濁液を、2.0mlの人工唾液(Prattenら、1998年)および、滅菌水中5mg/mlの濃度の0.175mlの適切な試験薬(ギンバイカ(マータス・コミュニス;Myrtus communis)、キャッツクロー(ウンカリア・トメントサ;Uncaria tormentosa)、オルソシフォン・スピカタス、パセリ、またはユーカリ)、または水(陰性対照として、各試験薬と比較した)に加えた。パセリおよびユーカリは、それらの口腔衛生上の陽性効果により、口腔衛生製品の天然材料としてよく知られていることから、陽性対照として用いた。
【0087】
3等分した各溶液(1ml)を、単一の唾液でコーティングしたヒドロキシアパタイトディスクと共に、滅菌した24ウェルプレートの各ウェルに置いた。ディスクを、37℃で1時間、嫌気性条件(10%H2、10%CO2、80%N2)でインキュベートし、歯周炎に関連する歯肉縁下の窪みに見られる、偏性嫌気性菌を増殖させた。その後、37℃の好気性条件で24時間インキュベートした。
【0088】
バイオフィルムを分散させ、逐次希釈した後、CBA(+ヘミン、メナジオン)上に置いて嫌気的にインキュベート、またはBHY上において好気的にインキュベートした。コロニーを24〜48時間後にカウントした。図1に示す結果では、ギンバイカは、未処理(水)対照と比較して、インビトロにおけるヒト歯垢バイオフィルムにおける通性嫌気性細菌の数を抑制したことが示された。驚くべきことに、ギンバイカは口腔衛生を促進することが知られているパセリおよびユーカリよりも、これらの生命体のレベルの低減に有効であった。
【0089】
気難しい(Fastidious)嫌気性細菌の数についてもカウントし、図2に示すように、未処理対照に比べて低減されていることが示された。意外にも、ギンバイカは、気難しい嫌気性細菌の抑制においても、パセリおよびユーカリよりも良好に作用することを示した。
【0090】
ギンバイカの葉の粉末を、上記の歯垢バイオフィルムアッセイ条件下で、人工唾液におけるPeptostreptococcus stomatisの増殖の抑制についても試験した(試薬の最終濃度は0.25mg/mlであった)。嫌気性のキャビネットで24時間増殖させた後、コロニー数をカウントした。
【0091】
ギンバイカの葉の処置は、未処理対照およびユーカリの葉の粉末で処理されたものの両方と比較して、ペプトストレプトコッカスのバイオフィルムの細菌数を大幅に低減させた(図3)。ペプトストレプトコッカスは、歯肉炎、歯周炎および口腔衛生の問題に関係することが知られている病原菌である。
【0092】
実施例8
さまざまな製品用途において、最高120℃までの温度に曝露した後も、生の材料の活性が残存することが必要とされるであろう。これを試験するため、ギンバイカを120℃で10分間加熱し、その活性について、非加熱処理対照と比較する、プレートバイオフィルムアッセイを行った。
【0093】
上述のように、ギンバイカの加熱処理は、その能力に影響を与えない。加熱処理されたギンバイカは、非加熱対照の97.7%と比べて、バイオマスを94.4%低減させた。プロテアーゼは、加熱処理した材料および非加熱材料の両方で、完全に抑制された(100%)。
【0094】
実施例9
製品受容を評価するため、ギンバイカの葉を25gの噛み物のフォーマットに3%濃度で含め、他の3種類の噛み物タイプを用いた交差研究において、ミニチュア・シュナウザー、コッカースパニエル、およびラブラドールに与えた。噛み物は、4日間、1日1回与えられ、次の供給段階を開始する前に3日間のウォッシュアウト期間を設けた。ギンバイカを含まない基本の噛み物と比較した場合に、ギンバイカ噛み物の受容はすべてのイヌにおいて同様であった。
【0095】
実施例10
愛玩動物における口腔衛生の維持および改善におけるギンバイカの有効性を評価するため、ギンバイカの葉を2.65%の濃度で噛み物のフォーマットに含め、ミニチュア・シュナウザー(17gの噛み物)、コッカースパニエル(25gの噛み物)、およびラブラドール(40gの噛み物)に与えた。基本の噛み物、第2の歯科用噛み物、および乾燥キブルをベースとした食餌から得られた結果と比較した、口腔衛生におけるギンバイカ組成物の効果について評価した。12匹のラブラドル・レトリーバー、12匹のコッカースパニエル、および8匹のミニチュア・シュナウザーを合計した32匹の健康な成犬を、4グループに割り当てた。動物は品種、性別、およびおよその年齢の適合を確保するため、重み付けブロック内で無作為に割り当てた。
【0096】
動物は、24時間外部とアクセス可能で、日中は運動用のパドックに自由にアクセスできる、環境的に恵まれた2部屋続きの住居に、2匹1組で住まわせた。完全な動物の快適な配慮が整えられた。本研究は、英国内務省の動物(科学的処置)法1986に従い、ペット栄養学のためのウォルサム研究所(WALTHAM Centre for Pet Nutrition)の倫理審査委員会によって承認された。イヌは、社会に適応し、毎日散歩し、新鮮な水を常時、利用可能であった。動物は、体重を維持するために必要とされるエネルギーレベル(発熱量)で、1日1回、食餌を与えられた。本研究は、反復測定を用いた、4次のラテン方陣の設計を使用した。この清潔な歯のモデルでは、イヌには歯科用スケールが与えられ、第1日目に研磨され、基本的な市販の乾燥キブル食を与えられ、2週間、毎日歯磨きをし(ベースライン段階)、ベースラインレベルまで歯肉炎を低減させた。次に、歯肉炎スコアおよび蓄積した歯沈着物の除去を、第2の歯科用スケールおよび研磨を通じて行い、その後、動物は、歯垢および歯石の沈着の測定、ならびに反復した歯肉炎スコアの前に、5週間、同一の市販の乾燥キブルを基本とした食餌に試験製品を加えたものを与えられた。第1群(対照動物)は、基本食のみで維持され、第2群は基本食に加えて毎日基本の噛み物が与えられ、第3群は、2.65%のギンバイカの葉を含む、同一の歯科用噛み物を毎日与えられ、第4群は活性成分を含まない代替の噛み物フォーマットが与えられた(代替の噛み物フォーマットについては、データ非掲載)。
【0097】
上述のように第1段階の終了後、各群は次の食餌計画に移され、その後の各段階において、すべてのイヌがすべての食餌を与えられるまで、反復測定を行った。歯肉炎、歯垢および歯石スコアを、開始時および5週間の試験期間の完了時に、修正Logan & Boyce法(Hennetら、2006年)を用いて評価した。
【0098】
口腔衛生の評価には、以下の歯を用いた。
【0099】
上顎:13(103,203)、C(104,204)、P2(106,206)、P3(107,207)、P4(108,208)、およびM1(109,209)。
【0100】
下顎: C(304,404)、P2(306,406)、P3(307,407)、P4(308,408)、およびM1(309, 409)。
【0101】
歯肉炎を、頬面の歯肉溝に沿って測定した。歯肉を3つに分け(近心、頬面および遠心)、それぞれにスコアを付与した。歯のスコアを、3つの区域の平均スコア、および、評価する葉のすべての平均としての総合スコアとして算出した。
【0102】
基準
0−歯肉炎なし、プロービング時に、炎症、出血のない、ピンク色の(または有色素の)健康な歯肉
1−極めて軽い歯肉炎(プロービング時に、赤み、腫れはあるが出血なし)
2−軽い歯肉炎(プロービング時に、赤み、腫れ、遅発性出血あり)
3−中程度の歯肉炎(プロービング時に、赤み、腫れ、即時性出血あり)
4−重症の歯肉炎(プロービング時に、潰瘍形成、突発性溶血、大量出血あり)。
【0103】
歯の頬面に、染色液の原液(エリトロシン)を施用することによって歯垢を染め出し、すぐに水ですすいだ。スコア付けされた歯の各々について、Hennetら(2006年)にしたがって、歯冠(coronal)および歯肉の歯垢レベルを評価した。二等分にした歯冠(tooth crown)(歯冠(coronal)および歯肉)を歯垢の被覆率について連続的に評価し、濃淡評価のための標準染色液のカラーパレットを使用して、被覆されていない部分について濃淡を評価した。歯表面に最も近いシェードを、濃淡スコアとして指定した。歯冠および歯肉部分におけるスコアを合計し、歯の全スコアを得た。すべての歯のスコアの平均は、口腔の合計スコアを与えた。
【0104】
歯石を風乾させ、歯科用プローブを使用して、外観における被覆率および濃淡を徐々に検証した。歯肉の被覆率および濃淡スコアを得て、歯肉および歯冠領域の被覆率および濃淡のスコアを掛け合わせて、歯の合計スコアを得、歯垢の被覆率に関して口腔スコアを計算した。
【0105】
口腔衛生の臨床的評価に加えて、歯肉縁上プラークサンプルを、試験段階の第2週に各イヌの歯からこすり取った。次に、各イヌの歯を完全にブラッシングし、歯に残存する沈着物の除去を確保した。
【0106】
処置、段階、およびシーケンスの効果について試験するため、分析は、一般線形モデル(GLM)を用いて、反応変数である歯垢、歯肉炎、および歯石について行った。危険率有意水準は、治療効果の評価とともに記載した。データは、Excel workbooksでコード化し、プロプライエタリな統計ソフトウェア・ルーチン5(Minitab Verion 14)を使用して評価した。
【0107】
結果
基本の噛み物は基本食と比較して顕著な低下を示さなかったのに対し、ギンバイカの葉の粉末を含む歯科用噛み物は、基本食と比較して顕著に(P=<0.05)平均歯肉炎レベルを低下させた。ギンバイカを含む歯科用噛み物を与えられたイヌでは、結果的に、2週間歯のブラッシングの後のベースラインで観察されるよりも低い、平均歯肉炎スコアとなった。
【0108】
平均歯垢(P=<0.1)および歯石(P=<0.05)のスコアは、基本食と比較して低下したが、基本の噛み物を与えられたイヌで観察されるよりも若干高かった。
【表2】

【0109】
参考文献
・Hennet P, Servet E, Salesse H, Soulard Y: Evaluation of the Logan and Boyce Plaque Index for the Study of Dental Plaque Accumulation in Dogs. Res Vet Sci, 80, 175- 180, 2006
・Pratten, J., Smith, A.W. and Wilson, M. (1998) Response of single species biofilms and microcosm dental plaques to pulsing with chlorhexidine. / Antimicrob Chem 42, 53-459.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の口腔衛生の維持または改善用ギンバイカ。
【請求項2】
動物の歯肉炎の予防または治療用であることを特徴とする請求項1記載のギンバイカ。
【請求項3】
前記ギンバイカが、動物の口腔の歯垢および/またはプラークによって産生される、疾患を引き起こす因子を低減、抑制、または調節することを特徴とする請求項1または2記載のギンバイカ。
【請求項4】
前記ギンバイカが、前記動物の口腔における歯垢の細菌量を変化させることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のギンバイカ。
【請求項5】
前記ギンバイカが、前記細菌量を低減させることによって、前記細菌量を変化させることを特徴とする請求項4記載のギンバイカ。
【請求項6】
前記ギンバイカが、前記動物の口腔に存在する歯垢の健全性を改善することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のギンバイカ。
【請求項7】
前記ギンバイカが、歯垢の炎症性プロテアーゼおよび/または病原菌を抑制または低減させることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載のギンバイカ。
【請求項8】
前記病原菌が、黒色色素産生性嫌気性菌を含むことを特徴とする請求項7記載のギンバイカ。
【請求項9】
前記病原菌が、ペプトストレプトコッカスを含むことを特徴とする請求項7記載のギンバイカ。
【請求項10】
前記ギンバイカが、マータス・コミュニス(Myrtus communis)であることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載のギンバイカ。
【請求項11】
前記動物が、ネコ、イヌ、またはヒトであることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載のギンバイカ。
【請求項12】
ギンバイカを含む経口組成物。
【請求項13】
請求項1〜11いずれか1項記載の用途のための請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ギンバイカが、前記組成物の0.1重量%〜20重量%の濃度で存在することを特徴とする請求項12または13記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が食料品であることを特徴とする請求項12〜14いずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
動物の口腔衛生の改善または維持のための組成物の製造におけるギンバイカの使用方法。
【請求項17】
動物の歯肉炎の予防または治療のための組成物の製造におけるギンバイカの使用方法。
【請求項18】
前記組成物が前記動物の歯垢を低減または調節することを特徴とする請求項16または17記載の使用方法。
【請求項19】
請求項12〜15いずれか1項記載のギンバイカまたは組成物を有効量で動物に投与する工程を有してなる、前記動物の口腔衛生を維持または改善する方法。
【請求項20】
実質的に実施例に記載される用途のギンバイカ。
【請求項21】
実質的に実施例に記載される用途の経口組成物。
【請求項22】
実質的に実施例に記載される、動物の口腔衛生を維持または改善する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−511025(P2010−511025A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538775(P2009−538775)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004532
【国際公開番号】WO2008/065382
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】