説明

クイックコネクタ

【課題】 使用中に、パイプ体との接続が不完全になってしまうことのない構成のクイックコネクタを提供する。
【解決手段】 ワイヤリテーナー5に引っ張り力が作用すると、ワイヤリテーナー5が引き抜き方向に移動し、係合アーム59、59が徐々に開いていくように構成する。係合アーム59の軸方向部75が他方側出入り口39内に入り込んで、ワイヤリテーナー5が抜け止め位置に移動しても、係合アーム59、59がパイプ体47の環状係合突部49の通過を許容するまで開かないようにしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車配管の連結に用いられるクイックコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ体とホースとを連結することにより構成される流体配管構造には、パイプ体及びホースの連結用のコネクタが用いられる。このようなコネクタは、軸方向一方側に、ホースが接続される接続部が形成された筒状のコネクタハウジングを有していて、パイプ体とコネクタとの接続は、例えば、パイプ体の挿入側外周面に環状係合突部を形成して挿入端部を構成し、かつ、コネクタハウジングの軸方向他方側にスナップ係合用のリテーナー手段を設けてコネクタをクイック接続形式のものとしておき、パイプ体の挿入端部を軸方向他方側端開口からコネクタハウジング内に挿入して、リテーナー手段と環状係合突部とをスナップ係合させ、パイプ体とコネクタとを抜け止め状態とすることにより行われる。クイック接続形式のクイックコネクタに使用されるリテーナー手段としては、コネクタハウジングの軸方向他方側に、径方向に対向して一対の係合スリットを設けるとともに、一対の係合アームを有するコ字状又はほぼコ字状のワイヤリテーナー(例えば線材製のリテーナー)を用い、この一対の係合アームが、係合スリットに入り込んでコネクタハウジングを挟み込むように、係合アームの先端側から、ワイヤリテーナーを、コネクタハウジングの軸方向他方側又は軸方向他方側外周に取り付けるといったものが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなリテーナー手段を採用することにより、コネクタが比較的大径であっても、リテーナーのコネクタハウジングへの十分な取り付け安定性を確保することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−21287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コネクタハウジングに取り付けられたワイヤリテーナーは、パイプ体の環状係合突部とスナップ係合するための取り付け位置に保持される必要がある。したがって、係合アームの先端部を、径方向内側に向かって屈曲又は傾斜させることにより係合部を形成しておき、ワイヤリテーナーをコネクタハウジングに取り付けたときに、この係合部がコネクタハウジングの外周面と引き抜き方向に係合するように構成している。
【0005】
こういったクイックコネクタの構造では、ワイヤリテーナーは、引き抜き方向に引っ張られると、引き抜き方向に移動できるのであるが、ワイヤリテーナーがコネクタハウジングから外れてしまえば、パイプ体への抜け止め作用がなくなってしまうので、コネクタハウジングに抜け止め個所を形成しておき、係合部の先端部がこの抜け止め個所と引き抜き方向に係合すると、ワイヤリテーナーをそれ以上引き抜き方向に移動させることができなくなるように構成している。
【0006】
このように構成することにより、ワイヤリテーナーがコネクタハウジングから外れてしまうといったことは防止されるのであるが、ワイヤリテーナーを引き抜き方向に移動させるときには、係合部の先端部(少なくとも先端部)がコネクタハウジングの外周面上をスライドするので、一対の係合アームが徐々に開いていく。したがって、使用中にワイヤリテーナーに外力が作用してワイヤリテーナーが引き抜き方向に移動し、一対の係合アームがパイプ体に対する抜け止め機能を喪失して、パイプ体がクイックコネクタから抜け出てしまうといった事態も生じ得る。
【0007】
そこで本発明は、こういった事情に鑑み、使用中に、パイプ体との接続が不完全となってしまうことのない構成のクイックコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための本発明のクイックコネクタは、軸方向一方側に、ホースと接続される接続部が形成され、軸方向他方側に、径方向に対向して一対の係合スリットが形成された筒状のコネクタハウジングと、一対の係合アームを有し、この一対の係合アームが、前記係合スリットに入り込んで前記コネクタハウジングを挟み込むように、前記係合アームの先端側から、前記コネクタハウジングの軸方向他方側に取り付けられたコ字状又はほぼコ字状のワイヤリテーナーと、を備え、前記ワイヤリテーナーの前記係合アームが、前記係合スリットから前記コネクタハウジング内に突出し、パイプ体の挿入端部が挿入されたときに、この挿入端部に形成されている環状係合突部と、取り付け位置でスナップ係合するように構成されているクイックコネクタであって、前記係合アームはそれぞれ、先端部に、径方向内側に向かって屈曲又は傾斜する係合部を有し、前記ワイヤリテーナーは、前記係合アームが徐々に開くように、前記係合部の先端部を前記コネクタハウジングの外周面上でスライドさせながら、この係合部の先端部が前記コネクタハウジングの抜け止め個所と引き抜き方向に係合する引き抜き位置まで、移動できるように形成されていて、前記係合部は、前記ワイヤリテーナーが引き抜き位置に達したときに、前記係合アームが前記パイプ体の前記環状係合突部から外れて開くといったことがないように、あるいは、前記係合アームが前記パイプ体の前記環状係合突部との係合状態を維持するように、形成されているものである。すなわち、ワイヤリテーナーは、取り付け位置から抜け止め位置まで移動する間、係合アームとパイプ体の環状係合突部との係合状態が維持されるように構成されているものである。ワイヤリテーナーは、係合部が、コネクタハウジングの外周面、より具体的には、取り付け方向中央よりも取り付け方向側のコネクタハウジング外周面と引き抜き方向に係合することにより、取り付け位置に保持される。本発明では、ワイヤリテーナーは常に、係合アームがパイプ体の環状係合突部から外れるまで開いてしまうといったことがないように保たれるので、パイプ体がクイックコネクタから外れるのを効果的に防止できる。
【0009】
安全上の観点などから、係合部の先端部に軸方向に屈曲した軸方向部を設ける場合には、軸方向部がコネクタハウジングの抜け止め個所と引き抜き方向に係合するように構成することができる。このように構成すれば、効果的な抜け止め効果を確保できる。
【0010】
係合スリットの構成にかかわらず、軸方向部を有するワイヤリテーナーをコネクタハウジングに取り付けることができるようにするためには、係合スリットの軸方向端部に、軸方向部を通過させる軸方向に延びた入口及び出口を形成しておき、軸方向部を入口に差し込み、出口から突出させてワイヤリテーナーを取り付けるようにするのが好ましい。ここでは、少なくとも出口は、軸方向部を入口に差し込み、出口から突出させてワイヤリテーナーを取り付けた後に、コネクタハウジングの内側から、例えばブッシュなどにより塞がれる。こういった構成では、コネクタハウジングの抜け止め個所を、出口の周方向端部としておくことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、パイプ体とワイヤリテーナーの係合が使用中に解除されてしまうといったおそれのないクイックコネクタの提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明に係るクイックコネクタの斜視図、図2はクイックコネクタの断面図、図3はクイックコネクタの別の断面図、図4はクイックコネクタの分解斜視図、図5はクイックコネクタの組み立て図である。
【0014】
クイックコネクタ1は、例えば自動車の給排気配管の連結に使用されるものであり、特に図1乃至図3からよく理解できるように、筒状薄肉のコネクタハウジング3と、このコネクタハウジング3に取り付けられたコ字状又はほぼコ字状のワイヤリテーナー5と、を備えて構成されている。コネクタハウジング3は例えば金属製であり、軸方向一方側の円筒状のホース接続部7(接続部)と、軸方向他方側のほぼ円筒状のパイプ挿入部9とから一体的に構成されていて、大径のホースと大径のパイプ体とを連結するために、大径に、かつ、比較的短く形成されている。
【0015】
ホース接続部7は、円筒状の接続部本体11と、この接続部本体11の軸方向一方側端部に一体的に形成された抜け止め部13と、から構成され、抜け止め部13は、軸方向一方側端から軸方向他方側に向かってテーパ状に拡径して、接続部本体11よりも径方向外側に突出するように屈曲形成されている。抜け止め部13の軸方向一方側端は、例えば接続部本体11よりも小径に形成される。
【0016】
パイプ挿入部9は、軸方向他方側のリテーナー取り付け部15と、ホース接続部7が接続形成された軸方向一方側のパイプ支持部17と、リテーナー取り付け部15及びパイプ支持部17の間に形成された軸方向中間のシール保持部19と、から構成されていて、パイプ支持部17は、シール保持部19よりも小径で、ホース接続部7の接続部本体11よりも大径に形成されている。
【0017】
パイプ挿入部9の環状のリテーナー取り付け部15は、シール保持部19と同一径に、より具体的にはシール保持部19の軸方向他方側と同一径に形成され、径方向対称位置に、薄肉円筒壁状の径方向外側壁部を有する取り付け用突出部21、21が設けられた構造を備えていて、一対の取り付け用突出部21、21のそれぞれは、ほぼ4分の1の円弧長さにわたって形成されている。ただし、取り付け用突出部21は全周にわたって形成される場合もある。それぞれの取り付け用突出部21の径方向外側壁部には、係合スリット23が形成されているが、この係合スリット23は、周方向一方側に形成された一方側スリット部25と、周方向他方側に形成された、一方側スリット部25に等しいあるいは対称である形状の他方側スリット部27と、から構成されていて、一方側スリット部25及び他方側スリット部27は、一方側スリット部25と他方側スリット部27との間に、係合スリット23の幅とほぼ等しい、又は係合スリット23の幅よりも多少長い(例えばほぼ2倍長い)周方向幅を有する部分29(分断部)が残るように形成されている。すなわち、係合スリット23は、例えば周方向中央に位置する分断部29によって、一方側スリット部25と他方側スリット部27とに区分されている。また、取り付け用突出部21の幅(軸方向幅)は、係合スリット23の幅(軸方向幅)のほぼ3倍あるいは3倍乃至4倍に設定されている。
【0018】
取り付け用突出部21の周方向一端壁部31及び周方向他端壁部33は、分断部29同士を結んで軸心を通過する直線及び軸線と平行に広がるように、すなわちワイヤリテーナー5の取り付け方向と直交する方向に広がるように形成されている。また、取り付け用突出部21の周方向一端壁部31と一方側スリット部25の周方向一端との間、および、取り付け用突出部21の周方向他端壁部33と他方側スリット部27の周方向他端との間にはそれぞれ、係合スリット23の幅のほぼ2倍の周方向間隔が設けられていて、取り付け用突出部21の周方向一端部及び周方向他端部には、係合スリット23の幅のほぼ2倍の周方向長さを有する抜け止め壁部個所35、37が形成されている。
【0019】
取り付け用突出部21では、一方側スリット部25の周方向一端部に軸方向一方側に短く延びるスリット状の一方側出入り口38(ここでは入口)が形成され、また、他方側スリット部27の周方向他端部にも軸方向一方側に短く延びるスリット状の他方側出入り口39(ここでは出口)が形成されている。
【0020】
なお、コネクタハウジング3のリテーナー取り付け部15は、径方向反対側からでも、ワイヤリテーナー5を同様に取り付けることができるような対称形状に形成されている。
【0021】
リテーナー取り付け部15の軸方向他端(パイプ挿入部9又はコネクタハウジング3の軸方向他端)には、径方向外側に突出する外向きフランジ40が一体的に設けられているが、この外向きフランジ40は、取り付け用突出部21の軸方向他端と一体的に形成されている。外向きフランジ40は、円形の外縁を有しているが、一対の取り付け用突出部21、21の間に対応する部分では、外側が切り取られたように形成されていて、この部分の外縁は直線状に設定されている。
【0022】
シール保持部19の内周面には、軸方向一方側で、ゴム製のOリング41が嵌め込まれ、かつ、軸方向他方側で、環状体に形成されている例えば金属製のブッシュ43が圧入により嵌め付けられていて、Oリング41は、シール保持部19の軸方向一端に形成された段差部分44とブッシュ43とに挟まれて軸方向に位置決めされている。シール保持部19では、軸方向他方側は軸方向一方側よりも若干大径に形成されている。
【0023】
クイックコネクタ1に用いられているブッシュ43は、単純な環状のブッシュ本体45の軸方向他方側に、パイプ体47の環状係合突部49(図6参照)を受け取るための受け取り部51を一体的に有して形成されていて、受け取り部51の内周面は、環状係合突部49の軸方向一方側のテーパ状環状面と対応するように、軸方向他方側に向かって拡径するテーパ状に形成されている。受け取り部51の径方向対称位置には、軸方向他方側に多少突出する閉塞部分53が一体的に形成されていて、それぞれの閉塞部分53は、取り付け用突出部21に対応する周方向長さを有している。閉塞部分53は、受け取り部51の内周面を延長するようにして形成された内面を有し、取り付け用突出部21、21内に入り込んで、取り付け用突出部21、21の内周面又は内面と接触するように、ブッシュ本体45及び受け取り部51よりも径方向外側に突出して形成されていて、取り付け用突出部21、21の内周面又は内面に対応した外面を有しているが、取り付け用突出部21内に入り込む部分の周方向中央個所(中間の個所)はそれぞれ、切り取られて通過部55を形成している。したがって、ブッシュ43をコネクタハウジング3に嵌め付けると、一方側スリット部25の一方側出入り口38及び他方側スリット部27の他方側出入り口39が、取り付け用突出部21、21の内周面又は内面と接触状態となっている閉塞部分53の外周面又は外周で、全体的に又は部分的に、コネクタハウジング3の内側から塞がれるように構成されている。なお、通過部55は、ワイヤリテーナー5の取り付け方向で、一方側に多少偏って形成されているが(図8を参照すると、通過部55は上側に偏って形成されている)、取り付け方向に対称に形成してもよい。
【0024】
ワイヤリテーナー5は、連結部57と、この連結部57の両側(幅方向両側又は幅方向両端)からそれぞれ、互いに平行状態で延びる一対の係合アーム59、59と、を具備するように屈曲形成された例えば金属製の線材で構成され、連結部57は、肩部61、61を両側に有し、この肩部61、61の間で、外側に膨出するコ字状の指掛け部63を備えている。肩部61はそれぞれ、係合アーム59を開きやすくするための、係合アーム59側の肩部本体65と、指掛け部63側のストッパ部67と、から構成され、それぞれのストッパ部67は、指掛け部63の幅方向の端あるいは端部から真横外側、すなわち係合アーム59の延びる方向又はワイヤリテーナー5の取り付け方向と直交して外側に向う方向を向くまで、円弧状に湾曲し、内側に凸となって延びるように形成されていて、肩部本体65は、周方向一方側の抜け止め壁部個所35と対応するように傾斜し、かつ、抜け止め壁部個所35の周方向長さと同一又はほぼ同一の長さを有している。
【0025】
一対の係合アーム59、59は、肩部61又は肩部本体65の先端(指掛け部63と反対側端)から直線状に延びる長いアーム本体部69と、このアーム本体部69の先端(自由側端)に、内側に屈曲して一体的に形成された抜け止め係合部71と、から構成されている。係合アーム59の抜け止め係合部71は、例えば、取り付け用突出部21の周方向他方側の抜け止め壁部個所37と対応するように傾斜し、かつ、抜け止め壁部個所37の周方向長さよりも短く形成(例えば、抜け止め壁部個所37の周方向長さの半分の長さに形成)されて内側に屈曲している係合本体部73と、この係合本体部73の先端又は先端部に、軸方向一方側に屈曲して一体的に形成れた軸方向一方側(ほぼ軸方向一方側)に延びる軸方向部75と、を備えていて、それぞれの抜け止め係合部71、71の係合本体部73、73が周方向他方側の抜け止め壁部個所37、37と接触し、係合するように形成されている。
【0026】
アーム本体部69の長さは、係合スリット23とほぼ等しく、すなわち一方側スリット部25の周方向一端及び他方側スリット部27の周方向他端の間隔とほぼ等しく設定されている。また、アーム本体部69、69の間隔は、パイプ支持部17の内径あるいはブッシュ43のブッシュ本体45の内径又はパイプ体47の外径とほぼ等しくなるように設定されている。
【0027】
このような構成のクイックコネクタ1を組み立てるには、まず、ワイヤリテーナー5を一方側スリット部25側からコネクタハウジング3に取り付ける。ワイヤリテーナー5の取り付けは、抜け止め係合部71の軸方向部75を、一方側スリット部25の一方側出入り口38からコネクタハウジング3内に差し込み、他方側スリット部27の他方側出入り口39から外側に突出させる。そうすると、ワイヤリテーナー5は、それぞれの肩部本体65、65が取り付け用突出部21、21の周方向一方側の抜け止め壁部個所35、35と、この抜け止め壁部個所35、35外面に沿って、あるいは沿うようにして接触し、かつ、それぞれのストッパ部67、67が取り付け用突出部21、21の周方向一方側端壁部31、31と当接し、しかも、それぞれの抜け止め係合部71、71又は係合本体部73、73(先端部)が取り付け用突出部21、21の周方向他方側の抜け止め壁部個所37、37と接触し、係合して、コネクタハウジング3のリテーナー取り付け部15に取り付けられることとなる。なお、肩部本体65を取り付け用突出部21の周方向一方側の抜け止め壁部個所35から浮き上がるように形成してもよい。軸方向部75を、他方側スリット部27の他方側出入り口39から外側に突出させ、抜け止め係合部71又は係合本体部73を抜け止め壁部個所37に係合させるには、軸方向部75が他方側スリット部27の周方向他方側端に近づいた時点で係合アーム59の差し込みを中断し、係合アーム59を、例えば軸方向部75が他方側出入り口39に位置することとなるように、外側に弾性変形させてから係合アーム59の差し込みを再開すればよい。そうすると、軸方向部75は他方側スリット部27から抜け、係合本体部73も他方側スリット部27から抜け出て、抜け止め壁部個所37と引き抜き方向に係合する(引き抜き抵抗を作用させるように係合する)こととなる。このようにして、ワイヤリテーナー5は、ストッパ部67、67が取り付け用突出部21、21の周方向一方側端壁部31、31と差し込み方向に係合し(差し込み抵抗を作用させるように係合し)、抜け止め係合部71、71が取り付け用突出部21、21と引き抜き方向に係合した状態で、一対の係合アーム59、59によりリテーナー取り付け部15を挟み込んでクイックコネクタ1に取り付けられることとなる。一対の係合アーム59、59は、係合スリット23、23からコネクタハウジング3内にアーム本体部69を突出させて入り込んでいる。ここでは、ストッパ部67、67と取り付け用突出部21、21の周方向一方側端壁部31、31との当接により、ワイヤリテーナー5を、この取り付け位置で、さらに押し込んでも、一対の係合アーム59、59はパイプ体47の環状係合突部49を通過させるように開くことはない。
【0028】
一方側スリット部25の周方向一端同士の間隔及び他方側スリット部27の周方向他端同士の間隔は等しく、パイプ体47の外径とほぼ等しくなるように設定されているので、ワイヤリテーナー5は、一対の係合アーム59、59が、より具体的には一対のアーム本体部69、69が広がることなく互いに平行に延びている状態で、リテーナー取り付け部15に取り付けられる。
【0029】
そして、図4に示されている状態で、係合アーム59、59を図7の仮想線で示すように開き変形させ、ブッシュ43をコネクタハウジング3内に押し込む。開き変形させられたワイヤリテーナー5のアーム本体部69、69の間隔は、ブッシュ43の通過部55、55の間隔とほぼ等しいように、あるいは通過部55、55の間隔よりも多少大きくなるように広がっているので(ブッシュ本体45の外縁にかぶさらないようにあるいはオーバーラップしないように広がっているので)、すなわち、係合アーム59,59又はアーム本体部69、69が、ブッシュ43の通過を許容するように開いているので、あるいは、係合アーム59,59又はアーム本体部69、69が、ブッシュ43の通過部55、55及びブッシュ本体45の通過を許容するように開いているので、ブッシュ43を、ワイヤリテーナー5を通過させて、シール保持部19内に圧入することができる。ブッシュ43の閉塞部53は、例えば部分的に、一方側出入り口38及び他方側出入り口39を塞いでいるので、クイックコネクタ1では、ブッシュ43をコネクタハウジング3から取り外さない限り、ワイヤリテーナー5がコネクタハウジング3から外れるといったことはない。
【0030】
図6はクイックコネクタ1にゴム製のホース及びパイプ体47を接続した状態を示す軸方向に沿った断面図、図7はクイックコネクタ1にパイプ体47を接続した状態を示す径方向に沿った断面図である。
【0031】
ゴム製のホース77は、先端又は軸方向他端が、パイプ支持部17の軸方向一端に形成された段差部分79に接近するように、ホース接続部7の外周に嵌め付けられ、かつ、締め付けバンド81により接続部本体11に締め付けられていて、十分な抜け止め状態でクイックコネクタ1に接続されている。なお、締め付けバンド81はネジ式であるが、バネ式のものを用いることもできる。さらに、バンドにかえて、リングをかしめてホース77の抜け止めを行ってもよい。
【0032】
クイックコネクタ1にリテーナー取り付け部15の軸方向他端開口83から挿入されて嵌め付けられたパイプ体47は、例えば金属製であり、軸方向一方側が、環状係合突部49を外周面に有する挿入端部85として構成された形式のものである。ここでは、環状係合突部49の軸方向一方側環状面は軸方向他方側に向って拡径するテーパ状に形成されている。パイプ体47は、環状係合突部49の軸方向一方側環状面がワイヤリテーナー5のアーム本体部69、69の間隔を押し広げながら相対的に進行し(図7の係合アーム59の仮想線表示参照)、ブッシュ43の受け取り部51内周面に当接して収容され、挿入端部85が全長にわたってコネクタハウジング3のパイプ挿入部9内に挿入されるまで、クイックコネクタ1あるいはコネクタハウジング3に押し込まれている。環状係合突部49の軸方向他方側環状面86は、径方向又は軸直角方向に広がるように形成されているが、環状係合突部49の軸方向一方側環状面がブッシュ43の受け取り部51内周面に当接したときには、係合スリット23の軸方向一端87と軸方向位置において一致又はほぼ一致しているので、ワイヤリテーナー5のアーム本体部69、69は、パイプ体47がコネクタハウジング3のパイプ挿入部9内に正常に挿入された状態となると、弾性復帰力によりスナップ的に平行状態に復帰し、パイプ体47を抜け止めするように環状係合突部49あるいは環状係合突部49の軸方向他方側環状面86とスナップ係合する。
【0033】
パイプ体47の挿入端部85の軸方向一端は、Oリング41を通過してパイプ支持部17内に達していて、パイプ体47あるいはパイプ体47の挿入端部85とクイックコネクタ1又はコネクタハウジング3との間はOリング41により密封され、また、パイプ体41の挿入端部85の環状係合突部49よりも軸方向一方側は、パイプ支持部17及びブッシュ43により、径方向にガタが生じないように支持されている。なお、パイプ体47の環状係合突部49を係合アーム59、59あるいはアーム本体部69、69と確実にスナップ係合させるために、また、係合アーム59又はアーム本体部69のスナップ動作が環状係合突部49との摺動により鈍くならないように、環状係合突部49の軸方向一方側環状面がブッシュ43に収容されたとき、環状係合突部49の軸方向他方側環状面が、係合スリット23の軸方向一端87よりも若干軸方向一方側に位置することとなるように構成しておいてもよい。
【0034】
図8はクイックコネクタ1のワイヤリテーナー5の動きを説明するための図である。
【0035】
取り付け位置(図7に示す位置)に保持されているワイヤリテーナー5に、例えば引っ張り力(引き抜き力)が作用すると(図7の矢印A参照)、ワイヤリテーナー5は、それぞれの係合アーム59の係合本体部73を、取り付け用突出部21の周方向他方側の抜け止め壁部個所37外面上で他方側スリット部27に向けてスライドさせながら、引き抜き方向に移動し、係合アーム59、59は徐々に開いていく。そして、先端側(軸方向一方側)に向かって外側に傾斜するように形成されている軸方向部75(軸方向部75の屈曲開始端部又は屈曲開始端側)が他方側出入り口39内に入り込み、他方側出入り口39の周方向一端部89(抜け止め個所:図5も参照)と引き抜き方向に係合すると(抜け止め位置)、ワイヤリテーナー5はそれ以上引き抜き方向側に移動できなくなる(他方側出入り口39はブッシュ43の閉塞部53によって、例えば部分的に塞がれているので、軸方向部75がコネクタハウジング3内に入り込んでしまうといったことはない)。ここでは、係合本体部73の長さが短く設定されているので、抜け止め位置でも、ワイヤリテーナー5の係合アーム59、59又はアーム本体部69、69の開き度は小さく、アーム本体部69、69はパイプ体47の環状係合突部49との係合が解除されるほど開いてはいない。したがって、ワイヤリテーナー5が抜け止め位置に移動しても、パイプ体47とクイックコネクタ1との抜け止め接続は確実に維持される。
【0036】
また、抜け止め位置では、軸方向部75(軸方向部75の屈曲開始端部又は屈曲開始端側)は、他方側出入り口39の周方向他端部91と、例えば若干の隙間を有して取り付け方向に係合する状態となっている。したがって、ワイヤリテーナー5から引っ張り力を解除すると、ワイヤリテーナー5は、軸方向部75(軸方向部75の屈曲開始端部又は屈曲開始端側)が、他方側出入り口39の周方向他端部91と取り付け方向に係合するまで、取り付け方向側に変位して保持される。この状態を解除するためには、ワイヤリテーナー5を強く取り付け方向側に押せばよいが、この状態でも、アーム本体部69、69はパイプ体47の環状係合突部49と係合状態となっている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のクイックコネクタは、自動車配管等で超耐熱エアホースに適用されるなどして配管の強固な接続を確保することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るクイックコネクタの斜視図である。
【図2】クイックコネクタの断面図である。
【図3】クイックコネクタの別の断面図である。
【図4】クイックコネクタの分解斜視図である。
【図5】クイックコネクタの組み立て図である。
【図6】クイックコネクタにゴム製のホース及びパイプ体を接続した状態を示す軸方向に沿った断面図である。
【図7】クイックコネクタにパイプ体を接続した状態を示す径方向に沿った断面図である。
【図8】クイックコネクタのワイヤリテーナーの動きを説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
1 クイックコネクタ
3 コネクタハウジング
5 ワイヤリテーナー
7 ホース接続部
23 係合スリット
47 パイプ体
49 環状係合突部
59 係合アーム
71 抜け止め係合部
85 挿入端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一方側に、ホースと接続される接続部が形成され、軸方向他方側に、径方向に対向して一対の係合スリットが形成された筒状のコネクタハウジングと、一対の係合アームを有し、この一対の係合アームが、前記係合スリットに入り込んで前記コネクタハウジングを挟み込むように、前記係合アームの先端側から、前記コネクタハウジングの軸方向他方側に取り付けられたコ字状又はほぼコ字状のワイヤリテーナーと、を備え、前記ワイヤリテーナーの前記係合アームが、前記係合スリットから前記コネクタハウジング内に突出し、パイプ体の挿入端部が挿入されたときに、この挿入端部に形成されている環状係合突部と、取り付け位置でスナップ係合するように構成されているクイックコネクタであって、
前記係合アームはそれぞれ、先端部に、径方向内側に向かって屈曲又は傾斜する係合部を有し、
前記ワイヤリテーナーは、前記係合アームが徐々に開くように、前記係合部の先端部を前記コネクタハウジングの外周面上でスライドさせながら、この係合部の先端部が前記コネクタハウジングの抜け止め個所と引き抜き方向に係合する引き抜き位置まで、移動できるように形成されていて、
前記係合部は、前記ワイヤリテーナーが前記引き抜き位置に達したときに、前記係合アームが前記パイプ体の前記環状係合突部から外れて開くといったことがないように、形成されている、ことを特徴とするクイックコネクタ。
【請求項2】
前記係合部の先端部には、軸方向に屈曲した軸方向部が設けられていて、
この軸方向部が前記コネクタハウジングの前記抜け止め個所と引き抜き方向に係合するように形成されている、ことを特徴とする請求項1記載のクイックコネクタ。
【請求項3】
前記係合スリットの軸方向端部には、前記軸方向部を通過させる軸方向に延びた入口及び出口が形成され、少なくとも前記出口は、前記軸方向部を前記入口に差し込み、前記出口から突出させて前記ワイヤリテーナーを前記コネクタハウジングに取り付けた後に、前記コネクタハウジングの内側から塞がれていて、
前記軸方向部が係合する前記コネクタハウジングの前記抜け止め個所は、前記出口の周方向端部である、ことを特徴とする請求項2記載のクイックコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−266474(P2006−266474A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89547(P2005−89547)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】