説明

クッカー

【課題】大容量のクッカーの場合に、クッカー内の脱水処理用油の温度上昇に時間を要し、クッカー内を減圧にすると突沸等が発生して蒸気吸引開口から異物が引き込まれて吸引効率の低下、或いは排水に不純物が混入するなどの課題があった。
【解決手段】クッカー1本体の外周側壁のうちの天井壁は、内部に軸架した撹拌翼の回転軌跡より上方に突出状に形成することにより、撹拌翼の回転軌跡との間に蒸気貯留空間17を形成すべく構成し、突出状に形成した天井壁には蒸気貯留空間17に溜まった蒸気を吸引すべく蒸気吸引開口19を形成し、しかも、クッカー1本体のジャケット部40は、蒸気貯留空間17に面する突出状に形成した天井壁を除いたクッカー本体の外周側壁中に形成し、更には、前記蒸気貯留空間17に、油の飛沫を捕捉する油沫捕捉隔壁31を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中に浸漬した被処理物を油温脱水すべく構成したクッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品加工の段階で発生する生ゴミ、アルコール製品製造過程で発生する醸造粕、畜産動物の糞尿及び同畜産物の解体にともなって生じる解体屑、水産物の解体にともなって生じる解体屑、さらには、下水汚泥をはじめとする都市汚泥などは、含水率が高いことによって廃棄処理が困難であり、また、有機質であることによって廃棄処理の課程において腐敗したり雑菌が繁殖したりして強烈な悪臭を発し、処分作業をより困難なものとしていた。
【0003】
本発明者は、これらの含水率が高く、有機質からなる各種の廃棄処理物を簡単に脱水処理することができるとともに、同廃棄処理物が優良な有機質であることを利用して良質の肥料原料または飼料原料とすることができる減圧脱水処理方法及びその装置を数多く開発し、提供してきた。
【0004】
同脱水処理方法は、クッカーの中に廃食用油、動物油あるいは植物油などからなる脱水処理用油を入れて加熱して加熱油とし、同加熱油に脱水処理を施す処理物を投入し、クッカー内を減圧することによって脱水処理を行うものである。
【0005】
この減圧脱水処理を施すことによって、処理物の含水率を数%台にまで低下させることができる。また、加熱油の熱によって殺菌処理を施すことができ、さらに、脱臭効果をあわせもっていることによって脱臭も行うことができる(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−009423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のクッカーによれば、クッカー本体を下部外壁と上部外壁とに分離可能とするために、これらの外壁に高温の蒸気を流通して脱水処理用油を加熱するためのジャケット部を設けておらず、専ら脱水処理用油を攪拌するための攪拌ディスクに高温蒸気を導入して加熱していた。そのために脱水処理用油の加熱に時間を要し、加熱効率は十分とは言い難いものであった。また、クッカー内を減圧するために突沸が発生すると蒸気吸引開口から異物が引き込まれて、吸引効率が低下したり、排水に不純物が混入する等の不具合が発生した。本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、クッカー内部に収納した脱水処理用油を効率よく加熱することができ、しかも、加熱効率の向上に伴って大量に発生する蒸気を速やかに回収することができるとともに、蒸気吸引開口から異物が引き込まれて吸引力が低下し、あるいは排水に不純物が混入することを防止することができるクッカーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の請求項1では、横置した略円筒形状のクッカー本体中に、撹拌翼を円筒長手方向に軸架して、クッカー本体内に油を収納してクッカー本体の側壁に形成したジャケット部と撹拌翼中に形成したジャケット部とに加熱蒸気を圧入して、クッカー本体内の油を加熱することにより、油中に浸漬した処理物を油温脱水すべく構成したクッカーにおいて、クッカー本体の外周側壁のうちの天井壁は、内部に軸架した撹拌翼の回転軌跡より上方に突出状に形成することにより、撹拌翼の回転軌跡との間に蒸気貯留空間を形成すべく構成し、前記突出状に形成した天井壁には前記蒸気貯留空間に溜まった蒸気を吸引すべく蒸気吸引開口を形成し、しかも、クッカー本体のジャケット部は、前記蒸気貯留空間に面する前記突出状に形成した天井壁を除いたクッカー本体の外周側壁中に形成し、更には、前記蒸気貯留空間に、油の飛沫を捕捉する油沫捕捉隔壁を設置することとした。
【0008】
また、本発明の請求項2では、前記油沫捕捉隔壁は、前記蒸気貯留空間のクッカー本体長手方向を遮断して所定の空間が構成されるように垂設することとした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1では、クッカー本体の外周側壁のうちの天井壁は、内部に軸架した撹拌翼の回転軌跡より上方に突出状に形成することにより、撹拌翼の回転軌跡との間に蒸気貯留空間を形成すべく構成し、突出状に形成した天井壁には蒸気貯留空間に溜まった蒸気を吸引するための蒸気吸引開口を形成し、しかも、クッカー本体のジャケット部は、蒸気貯留空間に面している突出状に形成した天井壁を除いたクッカー本体の外周側壁中に形成し、更には、前記蒸気貯留空間に、油の飛沫を捕捉する油捕捉隔壁を設置することとしたため、脱水処理用油を効率よく加熱することができ、加熱効率の向上により大量に発生する蒸気を速やかに回収することができ、しかも、突沸等により油や異物が蒸気吸引開口に引き込まれ難く吸引力の低下を防止することができる。
【0010】
請求項2では、油沫捕捉隔壁は、貯留空間のクッカー本体長手方向を遮断して所望の空間が構成されるように垂設することとしたために、処理物の攪拌中に突沸等により油沫や処理物が油面から飛散しても、蒸気吸引開口に到達する頻度を低減させることができる。これにより、ミストキャッチャーやコンデンサーへの異物混入を防止することができ、蒸気吸引力が低下して処理効率が低下することや、排水に不純物が混入することのない処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るクッカーでは、横置した略円筒形状のクッカー本体中に、撹拌翼を円筒長手方向に軸架して、クッカー本体内に油を収納してクッカー本体の側壁に形成したジャケット部と撹拌翼中に形成したジャケット部とに加熱蒸気を圧入して、クッカー本体内の油を加熱することにより、油中に浸漬した被処理物を油温脱水すべく構成したクッカーにおいて、クッカー本体の外周側壁のうちの天井壁は、内部に軸架した撹拌翼の回転軌跡より上方に突出状に形成することにより、撹拌翼の回転軌跡との間に蒸気貯留空間を形成すべく構成し、突出状に形成した天井壁には上記貯留空間に溜まった蒸気を吸引するための蒸気吸引開口を形成し、しかも、クッカー本体のジャケット部は、蒸気貯留空間に面している突出状に形成した天井壁を除いたクッカー本体の外周側壁中に形成し、更には、蒸気貯留空間に、油の飛沫を捕捉する油沫捕捉隔壁を設置することとしている。
【0012】
すなわち、本発明に係るクッカーにおいては、クッカー本体の側壁に設けたジャケット部は、突出状に形成した天井壁を除いたクッカー本体の外周側壁中に形成している。脱水処理用油が充填されるクッカー本体の外周側壁に脱水処理用油を加熱するためのジャケット部を形成し、蒸気貯留空間を形成する天井壁にはジャケット部を形成しない。これにより、脱水処理用油を効率よく加熱することができると共に、熱エネルギーのロスをできるだけ少なくすることができる。
【0013】
しかも、クッカー本体の側壁に設けたジャケット部は、蒸気貯留空間に面していないため、脱水処理用油の油面上に当たる部分は加熱することがなく、蒸気貯留空間に付着した有機物を焦げ付かせる恐れを防止することができる。
【0014】
更に、本発明に係るクッカーにおいては、蒸気貯留空間には油の飛沫を捕捉する油沫捕捉隔壁を垂直に設置している。このため、脱水処理用油からの油沫や処理物が蒸気吸引開口に引き込まれることを防止する。これにより、蒸気吸引開口に連結する吸引配管や、吸引蒸気と脱水処理用油や処理物とを分離するためのミストキャッチャーに脱水処理用油や処理物が混入することを防止することができ、吸引力が低下して処理効率が低下することや、排水に不純物が混入して汚染され、或いは排水のBOD、CODの値が上昇することを防止することができる。
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の減圧脱水処理を行う脱水処理装置の全体構成を示した説明図である。符号1はクッカーであり、符号2は同クッカー1の熱源となる蒸気を発生させるボイラー、符号2a,2bはそれぞれクッカー1とボイラー2とを連通する蒸気送気管である。
【0017】
符号3は脱水処理用油タンクであり、同脱水処理用油タンク3内に廃食用油や、動物油、魚油、植物油などの油を入れ、必要であれば、加熱ヒーター3aによって適温に加熱しておき、送油ポンプP3によってクッカー1に供給すべく構成している。符号3bは送油管である。本実施の形態においては、後述するように、蒸気貯留空間17(図2を参照)に面する天井壁を除いたクッカー1本体の側壁にジャケット部40を設けて脱水処理用油を加熱するとともに、クッカー1内の攪拌ディスク15(図2を参照)でクッカー1内の脱水処理用油を加熱するため、クッカー1に送給する脱水処理用油をあらかじめ加熱しておくことによって攪拌ディスク15による脱水処理用油の昇温作業を省略し、作業効率を向上させるべく構成している。また、クッカー1内に送給する処理物の温度が低く、クッカー1内の温度が下がりすぎた場合には、脱水処理用油タンク3内の加熱した脱水処理用油を注入することによって、速やかにクッカー1内の温度を上昇させるべく構成してもよい。
【0018】
符号4はミストキャッチャーであり、吸引配管4aを介してクッカー1と連結し、クッカー1内より吸引した蒸気から、蒸気とともに飛散してきた油及び固形物を分離して、返戻配管4bを介して分離した油及び固形物をクッカー1に戻すべく構成している。
【0019】
さらに、ミストキャッチャー4は蒸気吸引配管5aを介してコンデンサー5と連結しており、同コンデンサー5にバキュームポンプVPを連結し、同バキュームポンプVPによってクッカー1内の蒸気を吸引すべく構成している。
【0020】
コンデンサー5では、クッカー1から吸引した蒸気を凝縮してドレン化しており、符号6はコンデンサー5による凝縮水を冷却するためのクーリングタワーである。符号6a,6bはクーリングタワー6とコンデンサー5を接続する冷却水配管であり、冷却水送給ポンプP4によって、冷却水を循環させるべく構成している。
【0021】
符号5bはコンデンサー5による凝縮水をホットウエルタンク7に送水する凝縮水用配管である。ホットウエルタンク7にはバキュームポンプドレン配管7aを介してバキュームポンプVPのドレンも送水すべく構成している。
【0022】
ホットウエルタンク7に溜まった凝縮水はホットウエルポンプP5によって水処理設備8に送水すべく構成している。符号7bはホットウエル用配管である。
【0023】
クッカー1で処理される処理物は処理物受入タンク9に入れられており第1処理物送給ポンプP1によって予備処理タンク10に送給される。符号9aは第1処理物送給配管である。
【0024】
予備処理タンク10では、処理物に適量の油を混ぜることによってクッカー1への送給が容易となるように粘度調整を行った後、第2処理物送給ポンプP2によってクッカーに送給すべく構成している。符号10aは第2処理物送給配管である。
【0025】
脱水処理する処理物の水分量が多く、予備処理タンク10での粘度調整が不要であれば予備処理タンク10及び第2処理物送給ポンプP2を設ける必要はない。また、あらかじめ処理物受入タンク9において油などを添加して粘度調整をしてもよく、その場合にも予備処理タンク10及び第2処理物送給ポンプP2を設ける必要はない。ただし、予備処理タンク10を設けておくことによって、偶発的な事故により、クッカー1内の油や処理物が第2処理物送給配管を逆流しても、逆流物を予備処理タンク10によって受け止めることができるので、事故被害の拡大を防止することができる。
【0026】
符号11は、クッカー受タンクであり、脱水処理の終了した処理物と加熱油とを同クッカー受タンク11に流し込むべく構成している。符号11aはクッカー1とクッカー受タンク11とを連結する排出配管である。図示していないが、クッカー受タンク11に排出された脱水処理された処理物は、その後、脱油のために遠心分離器などの脱油装置に送給すべく構成している。
【0027】
図2は本発明の実施の形態に係るクッカー1の長手方向の模式的断面図であり、図3はクッカー1の短手方向の模式的断面図である。以下、図2及び図3を参照して説明する。
【0028】
符号16は下部外壁12に配設した台座である。また、符号17は上部外壁13に形成した蒸気貯留空間であり、攪拌ディスク15の半径をRとした際に、蒸気貯留空間17の高さ(図3中のW)がR/4〜3R/4程度となるように形成している。最も望ましいのはR/2程度である。R/4より小さい場合には、水蒸気とともに飛散する加熱油の量が増加し、ミストキャッチャー4への加熱油の混入量が増加して、ミストキャッチャー4での加熱油の完全な分離が困難となる可能性がある。逆に、3R/4以上であれば、ミストキャッチャー4への加熱油の混入量のおそれは少ないが、減圧処理のための吸引作業に時間がかかるため、作業効率が低下する。図3中の符号Sは加熱油の油面を示している。
【0029】
蒸気貯留空間17は、クッカー1の外周側壁のうち天井壁を突出状に形成している。そのために油面Sの表面積を大きく形成することができ、水の蒸発面積が広くなる。これにより、多量の水を蒸発させることができるので、処理効率の向上を図ることが可能となる。また、蒸気貯留空間17の体積が大きいので、メンテナンスも容易になる。
【0030】
符号40は、クッカー1本体側壁外部に設けたジャケット部である。ジャケット部40は、クッカー1内に貯留する脱水処理用油の油面S程度の高さまで形成し、蒸気貯留空間17に面する側壁には形成しない。ボイラー2により熱せられた蒸気は、蒸気送気管2a、2bを介してクッカー1本体の側壁に設けたジャケット部40に送給され、脱水処理用油を加熱する。符号23は、中心部が中空の回転シャフトであり、クッカー1本体内に連通し、本体内においては中空の攪拌ディスク15を連結している。ボイラー2により熱せられた蒸気は、蒸気送気管2a、2bを介して回転シャフト23に送給され、回転シャフト23から攪拌ディスク15に送給されて、クッカー1に貯留される脱水処理用油を加熱する。即ち、攪拌ディスク15による脱水処理用油側からと、ジャケット部40の外側の両側から加熱する。そのために、高効率で加熱することが可能となる。
【0031】
符号18は、上部外壁13の上部に設けた蒸気吸引開口19とミストキャッチャー4とを連結する連結配管である。蒸気吸引開口19は蒸気貯留空間17全体から均等に蒸気の吸引が可能なように、適宜の間隔を設けて複数配設している。本実施の形態においては3箇所の蒸気吸引開口19を設けている。これにより、蒸気吸引開口19から吸引される蒸気の流速を低下させ、油沫や処理物が吸引され難いようにしている。蒸気吸引開口19の配設数が少なく、蒸気貯留空間17に蒸気が滞ることがあると、滞った蒸気が上部外壁13壁面で冷却されて再度水となり、加熱油内に戻ることによって、同水を再度蒸散させねばならず、エネルギー効率が低下することとなる。
【0032】
符号31は、蒸気貯留空間17に垂直に設置した油沫捕捉隔壁である。油沫捕捉隔壁31は蒸気貯留空間17のクッカー1本体長手方向を遮断して所定の空間が構成されるように複数枚設置している。油沫捕捉隔壁31は、その下部が油面Sの上に隙間が生ずる程度、また、その側部が蒸気貯留空間17を構成する上部外壁13との間に隙間が生ずる程度の形状を有する。この隙間により、油沫捕捉隔壁31により仕切られる隣接する空間との間の水の蒸気の出入りを容易にする。油沫捕捉隔壁31を設けることにより、油面S上に飛散する加熱油や処理物が蒸気吸引開口19へ侵入することを防止し、吸引配管4aを介して水蒸気の吸引力が低下せず、返戻配管4bが脱水処理用油や処理物の飛沫により閉塞することを防止する。同時に、コンデンサー5、クーリングタワー6を介して排出される排水に不純物が混入することを防止する。
【0033】
油沫捕捉隔壁31は、例えば図6(a)に示すように蒸気を流通させるための孔32や、図6(b)に示すようにスリット33を設けることができる。この流通口を設けることにより、蒸気吸引開口19からの水蒸気に対する吸引力を減衰させないで、飛散する脱水処理用油や処理物をこの油沫捕捉隔壁31により捕捉することができる。油沫捕捉隔壁31に水の蒸気を通過させるための流通口を設けた場合には、油沫捕捉隔壁31と油面S、あるいは蒸気貯留空間17を構成する上部隔壁との間に隙間を設けなくともよい。
【0034】
なお、図2において油沫捕捉隔壁31をクッカー1本体の天井壁に密着して設置しているが、これを油沫捕捉隔壁31と天井壁との間に間隙を形成するようにクッカー1の本体側壁に設置してもよい。このように設置すれば、飛散した脱水処理用油や処理物が天井壁や油沫捕捉隔壁31に衝突して落下し、蒸気吸引開口19へ吸引され難くなるとともに、蒸発した水はこの間隙を通して蒸気吸引開口19へ吸引され易くなる。また、油沫捕捉隔壁31は必ずしも垂直に設置する必要はない。例えば斜めに設置してもよいし、蒸気吸引開口19の開口部を覆うように設置してもよい。更に、蒸気吸引開口19の周囲を囲うように設置してもよい。また、図2においては各油沫捕捉隔壁31を攪拌ディスク15の間に位置するように対応して配置しているが、この配置に限定されない。2個の攪拌ディスク15に1個の油沫捕捉隔壁31を設けるようにしてもよいし、攪拌ディスク15のディスク面と油沫捕捉隔壁31の板面とが直交するように複数枚設置してもよい。要は、蒸気吸引開口19から蒸発した水を効率よく吸引することができ、かつ、飛散した脱水処理用油や処理物が当該開口部から吸引されないようにすればよい。
【0035】
符号20は脱水処理用油タンク3の油をクッカー1内に送給するために送油管3bと接続される油送給口、符号21はミストキャッチャー4で分離した油をクッカー1内にもどすべく返戻配管4bと連結される返戻油送給口、符号22は脱水処理の終了した処理物と油とをクッカー受タンク11に排出する排出口である。
【0036】
図2に示すように、クッカー1の内部には複数枚の攪拌ディスク15を同一の回転シャフト23に連結して配設しており、回転モータMによって同回転シャフト23を回転させることによって、クッカー1内の加熱油と処理物とを攪拌すべく構成している。符号24は回転シャフト23と回転モータMとを連動連結する連結ベルトである。
【0037】
図2では省略しているが、図3に示すように、攪拌ディスク15には攪拌翼30を所用位置に配設している。攪拌ディスク15の配設枚数や形状は処理物に合わせて適宜の枚数、形状としてよい。
【0038】
図4に示すように、回転シャフト23は中空の筒状となっており、同回転シャフト23の両端にそれぞれ蒸気送気管2a,2bを連結して、ボイラー2より蒸気を送気すべく構成している。
【0039】
また、攪拌ディスク15も中空の円盤としており、回転シャフト23に形成した蒸気流通口25によって、回転シャフト23から攪拌ディスク15へ蒸気を送気して攪拌ディスク15を加熱し、クッカー1内の脱水処理用油を同攪拌ディスク15と回転シャフト23とによって加熱すべく構成している。クッカー1内の脱水処理用油の加熱効率を高めるべく、攪拌ディスク15表面に凸凹、あるいは、凸凹条を形成して、油との接触面積を増加させるべく構成してもよい。
【0040】
符号26は、攪拌ディスク15内に送気した蒸気によって、同攪拌ディスク15が変形することを防止すべく配設した係止ピンである。また、符号27は、攪拌ディスク15内のドレンを回転シャフト23へ排出する、ドレン排出管である。
【0041】
図5に断面図で示すように、攪拌ディスク15内には、外周縁から中心に向かってドレンガイド壁28を配設し、かつ、若干の湾曲を持たせることによって回転シャフト23の回転にともなって、攪拌ディスク15内に生じたドレンをドレンガイド壁28に沿って移動させ、ドレン排出管27より回転シャフト23内へ排出すべく構成している。符号29はドレンガイド壁28からドレン排出管27へドレンをスムーズに送流させるべく、ドレン排出管27の管形状に合わせて湾曲させたドレンガイド壁28の湾曲部である。
【0042】
なお、以上の説明において、クッカー1本体を略円筒状に一体的に形成した場合について説明してきたが、これに限定されない。図7に示すように、下部外壁12と上部外壁13とに分離可能に構成することができる。下部外壁12及び上部外壁13にはそれぞれ接続フランジ14,14'を配設しており、同接続フランジ14,14'どうしを当接させて下部外壁12上に上部外壁13を配設し、連結することによってクッカー1を形成している。また、下部外壁12及び上部外壁13にはそれぞれ分離して下部ジャケット41及び上部ジャケット42を形成している。上部ジャケット42は、蒸気貯留空間17に面している上部外壁13の領域には形成せず、上部外壁13の油面Sが到達する領域近傍まで形成する。これにより、クッカー1内部の脱水処理用油に熱を効率よく伝達することができ、内部の脱水処理用油を高温に維持することができる。
【0043】
クッカー1を上下に分離可能としたことによって、クッカー1の製造時には、下部外壁12と上部外壁13、及び、攪拌ディスク15をそれぞれ別々に製造することができるので、製造作業を分業して行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0044】
また、個別に製造した下部外壁12と上部外壁13、及び、攪拌ディスク15を、それぞれ個別にクッカー1の設置場所まで搬送することができるので、大容量のクッカー1であっても搬送を容易とすることができる。搬送された下部外壁12と上部外壁13、及び、攪拌ディスク15は、設置場所において組み立てることによってクッカー1となる。
【0045】
次いで、本発明の脱水処理装置を用いた脱水処理作業について説明する。
【0046】
まず、脱水処理用油タンク3より、ある程度、好ましくは100℃程度に加熱した脱水処理用油をクッカー1内に送給する。または、加熱していない脱水処理用油を送給して、クッカー1内で加熱してもよい。ここで、脱水処理用油は廃食用油、動物油、魚油、植物油などを適宜選択して、あるいは、いくつかを混合して使用している。油の素材、配合量などには特に制限はなく、何を使用してもよい。
【0047】
クッカー1に送給する脱水処理用油の量は、クッカー1内の攪拌ディスク15を完全に浸漬させる量である。攪拌ディスク15を完全に浸漬させることによって、攪拌ディスク15及びジャケット部40より出される熱エネルギーを全てクッカー1内の脱水処理用油に伝達させ、熱エネルギーを浪費することを防止している。
【0048】
クッカー1に送給された脱水処理用油は攪拌ディスク15によって、100〜110℃程度に維持される。脱水処理される処理物によっては150℃程度まで加熱することもある。ただし、脱水処理された処理物をあとで肥料原料や飼料原料として使用する場合には、あまり高温にしすぎると、脱水効果は高いものの、大事な肥料成分や飼料成分を変質、分解させてしまうおそれがあるため、通常は、100〜110℃程度に維持して使用することが多い。処理物は、上述したように、食品加工の段階で発生する生ゴミ、アルコール製品製造過程で発生する醸造粕、畜産動物の糞尿及び同畜産物の解体にともなって生じる解体屑、水産物の解体にともなって生じる解体屑、さらには、下水汚泥や都市汚泥などなどであり、脱水処理後、優良な肥料原料または飼料原料となるものである。
【0049】
クッカー1内の温度を100〜110℃程度に維持した後、図1に示すように、クッカー1の下方より、処理物を第2処理物送給ポンプP2によって送給する。クッカー1の下方より送給することによって、処理物中の水分がすぐに蒸散を始めるが、蒸散により発生した蒸気が加熱油中を進む間に、蒸気に混入していた重金属をはじめとする様々な不純物が加熱油中に溶出し、蒸気貯留空間17には不純物の混入が少ない蒸気のみが蒸散して溜まることになる。
【0050】
従って、蒸気貯留空間17に溜まった蒸気をバキュームポンプVPによって吸引して凝縮させ、ドレン化した際に、同ドレン中に不純物が混ざることなく、また、BOD、CODの値を低くすることができ、水処理設備8での水処理を容易に行うことができる。
【0051】
クッカー1に送給する処理物は、必ずしも、クッカー1の下方からの送給に限定するものではなく、加熱油の油面S(図3参照)の下方位置より送給すべく構成していればよい。
【0052】
蒸気貯留空間17に溜まった蒸気はバキュームポンプVPで随時吸引し、同蒸気貯留空間17内が加圧状態とならないようにしている。どちらかといえば常圧よりもやや減圧気味になるようにし、その減圧、および、サイフォンの作用を利用して処理物を予備処理タンク10から緩やかに送給してクッカー1内に送給すべく構成してもよい。減圧利用による処理物の送給によって、処理物は緩やかにクッカー1内に引き込まれるので、クッカー1内に引き込まれた際の処理物の突沸を防止して、突沸にともなう衝撃の発生や、ミストキャッチャー4及びコンデンサー5への異物の吸引を防止している。
【0053】
また、緩やかに処理物を送給することによって、クッカー1内の温度の極端な低下を防止して、クッカー1内の温度を昇温させるための付加的な作業が生じることを防止している。また、仮に突沸が発生した場合であっても、油沫捕捉隔壁31により油沫や処理物が蒸気吸引開口19内へ吸引されるのを防止することができる。
【0054】
このように、処理物の緩やかな送給を可能とすべく、予備処理タンク10において、処理物の粘度調整を行っておくことが望ましい。特に、処理物中に空気が混入していると送給の障害となるため、できれば簡単な脱泡を行っておくことが望ましい。ただし、処理物のクッカー1への送給は、減圧利用による処理物の緩やかな吸引による送給に限定するものではなく、場合によっては第2処理物送給ポンプP2によって圧送してもよい。
【0055】
クッカー1内への所定量の処理物を送給した後、バキュームポンプVPによってクッカー1内を常圧より10〜50mmHg減圧する。このとき、クッカー1内の温度は、処理物の送給にともなって85〜90℃程度となっており、攪拌ディスク15によって処理物と加熱油とを十分攪拌混合するとともに加温する。
【0056】
この状態で30分程度攪拌することによって、処理物に流動性を生じさせている水分は、ほぼ蒸散させることができる。また、このとき、処理物中の肥料成分や飼料成分を熱凝固させることができ、以後の処理中に同肥料成分や飼料成分が加熱油中へ溶出することを防止することができる。
【0057】
次いで、クッカー1内を常圧より250〜350mmHg程度減圧する。このとき、クッカー1内の温度は100℃程度となっており、この状態を10分程度維持して、次の減圧作業におけるクッカー1内の温度低下を防止すべく構成している。
【0058】
次いで、クッカー1内を常圧より600〜700mmHg程度減圧する。このとき、クッカー1内の温度が110〜120℃程度となるように、攪拌ディスク15によって加熱しながら攪拌を行う。この状態を10分程度維持しながら攪拌し続けることによって、処理物を構成している組織中の水分と油とを置換し、処理物の芯部まで脱水すべく構成している。
【0059】
減圧脱水処理の終了した処理物は、クッカー受タンク11に排出され、その後、圧搾機、遠心分離機或いはノーマルヘキサン等によって1〜20%程度になるまで脱油する。脱油された処理物は乾燥された状態であり、その後、細かく粉砕することによって、肥料原料や飼料原料とされる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係るクッカーの全体構成を示した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るクッカーの模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るクッカーの模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るクッカーに用いる攪拌ディスク部の一部の側断面説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係るクッカーに用いる攪拌ディスク部の縦断面説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るクッカーに用いる油沫捕捉隔壁の説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係るクッカーの側断面説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 クッカー
2 ボイラー
3 脱水処理用油タンク
4 ミストキャッチャー
5 コンデンサー
6 クーリングタワー
7 ホットウエルタンク
8 水処理設備
9 処理物受入タンク
10 予備処理タンク
11 クッカー受タンク
12 下部外壁
13 上部外壁
15 攪拌ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横置した略円筒形状のクッカー本体中に、撹拌翼を円筒長手方向に軸架して、クッカー本体内に油を収納してクッカー本体の側壁に形成したジャケット部と撹拌翼中に形成したジャケット部とに加熱蒸気を圧入して、クッカー本体内の油を加熱することにより、油中に浸漬した処理物を油温脱水すべく構成したクッカーにおいて、
クッカー本体の外周側壁のうちの天井壁は、内部に軸架した撹拌翼の回転軌跡より上方に突出状に形成することにより、撹拌翼の回転軌跡との間に蒸気貯留空間を形成すべく構成し、前記突出状に形成した天井壁には前記蒸気貯留空間に溜まった蒸気を吸引すべく蒸気吸引開口を形成し、しかも、クッカー本体のジャケット部は、前記蒸気貯留空間に面する前記突出状に形成した天井壁を除いたクッカー本体の外周側壁中に形成し、更には、前記蒸気貯留空間に、油の飛沫を捕捉する油沫捕捉隔壁を設置していることを特徴とするクッカー。
【請求項2】
前記油沫捕捉隔壁は、前記蒸気貯留空間のクッカー本体長手方向を遮断して所定の空間が構成されるように垂設していることを特徴とする請求項1に記載のクッカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−272679(P2008−272679A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120096(P2007−120096)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(592179311)
【出願人】(507142546)
【Fターム(参考)】