説明

クッション装置および車両用座席

【課題】快適なクッション装置およびそれを用いた車両用座席を提供する。
【解決手段】クッション装置100は、弾力を有するクッション体110と、繊維状の繊維状部材130と、繊維状部材に接続した駆動部120と、を有する。繊維状部材はクッション体内を通ってクッション体に繋がっており、駆動部は、繊維状部材を動かすことによってクッション体を内側に引っ張って変形させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション装置および車両用座席に関する。
【背景技術】
【0002】
弾力を有するクッション体を変形させる装置として、クッション体を押圧するロッドおよびロッドを伸縮させるためのシリンダによってクッション体を変形させる装置がある。例えば特許文献1に記載の発明は、介護または治療行為に用いるベッドであり、クッション体としての敷布団を押圧する複数のロッドと、ロッドを伸縮させるための複数のシリンダと、を有する。このベッドは、複数のロッドを伸縮させることによって、使用者の体に合わせて敷布団の形状を変え、例えばお尻や肩等、体の突出した部位に集中し易い圧力を分散させて負担軽減を図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−289905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしロッドのような硬い部材によってクッション体を押圧して変形させると、部材が押圧する部分に圧力が集中し易く、クッション体を使用する使用者が違和感を感ずる虞がある。特に長時間の使用では違和感が生じ易い。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、快適なクッション装置およびそれを用いた車両用座席を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のクッション装置は、弾力を有するクッション体と、繊維状の繊維状部材と、繊維状部材に接続した駆動部と、を有する。繊維状部材はクッション体内を通ってクッション体に繋がっており、駆動部は、繊維状部材を動かすことによってクッション体を内側に引っ張って変形させる。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の他のクッション装置は、弾力を有するクッション体と、繊維状の繊維状部材と、繊維状部材に接続した駆動部と、を有する。繊維状部材は少なくとも一部がクッション体の表面に接するように設けられている。そして駆動部は、繊維状部材を動かしてクッション体の表面に繊維状部材を食い込ませ、クッション体を変形させる。
【0008】
上記目的を達成するための他の本発明の車両用座席は、前述のクッション装置を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は繊維状部材によってクッション体を変形させるため、例えば使用者がクッション体に座り、またはクッション体に体をあずけたとき、ロッドのように圧力が集中し難く違和感が生じ難い。よって本発明は快適なクッション装置およびそれを用いた車両用座席を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態のクッション装置の概略図である。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図である。
【図3】繊維状部材を説明するための図である。
【図4】第2実施形態のクッション装置の概略図である。
【図5】第3実施形態のクッション装置の概略図である。
【図6】第4実施形態のクッション装置の概略図である。
【図7】アセチレン系導電性高分子の例を示す図である。
【図8】ピロール系導電性高分子の例を示す図である。
【図9】チオフェン系導電性高分子の例を示す図である。
【図10】フェニレン系導電性高分子の例を示す図である。
【図11】アニリン系導電性高分子の例を示す図である。
【図12】繊維の製造装置の概略図である。
【図13】繊維の製造装置の概略図である。
【図14】繊維の斜視図である。
【図15】繊維の斜視図である。
【図16】繊維の斜視図である。
【図17】繊維の斜視図である。
【図18】繊維の斜視図である。
【図19】繊維の斜視図である。
【図20】繊維の斜視図である。
【図21】繊維の断面図である。
【図22】繊維の製造装置の概略図である。
【図23】繊維の断面図である。
【図24】繊維の断面図である。
【図25】繊維の断面図である。
【図26】繊維の製造装置の概略図である。
【図27】第5実施形態のクッション装置の概略図である。
【図28】第6実施形態のクッション装置の概略図である。
【図29】クッション体を部分的に拡大して示す斜視図である。
【図30】クッション体の部分拡大断面図である。
【図31】クッション体の部分拡大断面図である。
【図32】クッション体の部分拡大断面図である。
【図33】立体編物の部分拡大断面図である。
【図34】立体編物の部分拡大断面図である。
【図35】立体編物の部分拡大断面図である。
【図36】車両用座席の斜視図である。
【図37】実施例1を示す図である。
【図38】実施例2の概略図である。
【図39】実施例3の概略図である。
【図40】変形例の概略図である。
【図41】変形例の概略図である。
【図42】変形例の概略図である。
【図43】変形例の概略図である。
【図44】変形例の概略図である。
【図45】変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態において、各実施形態で共通する機能を有する部材については、類似の符号を付し、また、重複する説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態のクッション装置の概略図、図2は図1の2−2線に沿う断面図、図3は繊維状部材を説明するための図である。
【0013】
図1(A)に示すように、第1実施形態のクッション装置100は、弾力を有するクッション体110と、クッション体110内を通ってクッション体110に繋がれた繊維状の繊維状部材130と、クッション体110を支持する支持部材140と、を有する。クッション装置100は、繊維状部材130を固定した固定部132をクッション体110の表面に有する。固定部132では、例えば接着剤または縫合によって、繊維状部材130の端がクッション体110に固定されている。
【0014】
クッション装置100はまた、繊維状部材130を動かしクッション体110を内側に引っ張って変形させる、繊維状部材130に接続した駆動部120を有する。クッション装置100は、クッション体110の外部に駆動部120を有する。
【0015】
駆動部120は、アクチュエータ122を含む駆動ユニット121と、アクチュエータ122を制御するための制御部123と、を有する。アクチュエータ122は繊維状部材130に接続している。
【0016】
図1(B)において説明すると、駆動部120はアクチュエータ122によって繊維状部材130を引っ張って動かす。アクチュエータ122は、例えば空気圧式シリンダまたは油圧式シリンダ等である。これらと異なり、駆動部120は例えばモーターによって繊維状部材130を引っ張ってもよい。
【0017】
制御部123は、ROM、RAM、およびCPUを主体とした構成を有する。駆動ユニット121と制御部123とは電気的に接続している。駆動ユニット121は、制御部123からの信号を受けてアクチュエータ122を動作させ、繊維状部材130の変位を調節する。
【0018】
クッション体110は、多孔質のウレタンであり、図2に示すように気泡112と高分子材料114とを含む。気泡112の例として、図2(A)に示すように各々が独立したもの、および図2(B)に示すように互いに繋がったものがある。またその他の例として、図2(C)および(D)に示すように周期的に並んだものがある。さらにその他の例として、図2(E)に示すように大きさが不均一なもの、および図(F)に示すように、球状でなく、断面形状が歪んだ円形形状を有するものがある。
【0019】
高分子材料114は、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルホルマール、エポキシ、フェノール、ユリア、シリコン等である。
【0020】
繊維状部材130は、例えば、溶融紡糸、湿式紡糸、またはエレクトロスピニング等の方法によって紡糸した繊維を含む。これらの他、繊維状部材130は例えば、櫛状の歯によってフィルムから切り出して作製した繊維を含む。
【0021】
図3(A)に示すように繊維状部材130は一本の繊維から構成したものであってもよいし、図3(B)に示すように、複数の繊維を束ねたものであってもよい。束ねる繊維の本数は、例えば数十本から数千本である。束ねることによって、扱いが容易となる。
【0022】
一本の繊維の径は、例えば数μmから数百μm程度である。径がこれより小さいとき、または数mm程度の太いときでも、繊維状部材130として使用可能であるが、例えば使用者がクッション体110に座ったときの感触、または扱いやすさ等の面から上記のものが好ましい。繊維は縒りを有してもよい。
【0023】
クッション装置100の作用を述べる。
【0024】
クッション装置100では、例えば使用者がクッション体110に座ったとき、または使用者がクッション体110に体をあずけたとき、クッション体110が変形して圧力を分散させる。また、クッション装置100は、繊維状部材130によって能動的にクッション体110を変形させ、クッション体110を所望の形状にできる。
【0025】
クッション装置100の効果を述べる。
【0026】
クッション装置100は、クッション体110を能動的に変形できるため、使用者の体に合わせてクッション体110の形状を変えられ、例えばお尻または肩等、体の突出した部位に集中し易い圧力を分散させて負担軽減を図れる。
【0027】
また、クッション装置100は繊維状部材130によってクッション体110を変形させるため、例えばロッド等の硬い部材がクッション体110を押圧して変形させる場合に比べ、圧力が集中し難い。よってクッション装置100は、使用者に違和感を生じさせ難く、快適である。
【0028】
また圧力が集中し難いため、血流の低下、ひいては血流の停滞を抑制でき、床ずれ防止を期待できる。さらに、繊維状部材130を用いるためロッドのような部材を用いる場合に比べ、軽量化を図れる。
【0029】
クッション装置100はまた、クッション体110の外部に駆動部120を有するため、例えば使用者が座ったときに違和感を生じさせ難く、快適である。
【0030】
本発明と異なり、クッション体110を変形させる装置として、空気等の気体を入れる収容部を有し、収容部の膨張および収縮を利用してクッション体110の形状を変える装置がある。
【0031】
このような装置は、例えばクッション体110内に収容部を埋設させているため、クッション体110の通気性が悪い。これに対しクッション装置100は、繊維状部材130によってクッション体110の形状を変えるため、収容部のような通気を阻害するものがなく通気性が良い。クッション装置100はまた、一定の体積を占める収容部を必要とせず、スペース利用の面で有利である。
【0032】
<第2実施形態>
図4は第2実施形態のクッション装置の概略図である。
【0033】
図4に示すように第2実施形態のクッション装置200は第1実施形態のクッション装置100と略同様である。一方、第2実施形態のクッション装置200は、クッション体210にかかる圧力を測定し、この圧力に基づいてクッション体210を変形できる点で、クッション装置100と異なる。
【0034】
クッション装置200は、クッション体210にかかる圧力を測定するためのセンサ224を有する。センサ224の一部はクッション体210の内部に埋設されている。クッション装置200は、例えば使用者がクッション体210に座ったとき、使用者に違和感を生じさせない、または生じさせ難い位置に、センサ224を備える。
【0035】
センサ224としては様々なものがあるが、例えば光ファイバーセンサは、クッション体210に設置したときに違和感を生じさせ難く、好ましい。光ファイバーセンサは、2本の光ファイバーを有し、一方の光ファイバーが光を運び、他方の光ファイバーがフォトダイオードに光をわたす。センサ224は、クッション体210の形状変化にともなった光の変化を検知する。センサ224は、例えば、ニッタ株式会社 KINOTEX(登録商標)である。
【0036】
制御部223は、センサ224からの信号とクッション体210にかかる圧力との関係をデータとして記憶しており、センサ224からの信号を受けてクッション体210にかかっている圧力を求める。制御部223は、この圧力から繊維状部材230の変位量を決定し、信号を駆動ユニットに出力する。すなわち、駆動部220は、クッション体210にかかる圧力に基づいて繊維状部材230を動かし、クッション体210の形状を変える。
【0037】
第2実施形態の効果を述べる。
【0038】
クッション装置200は、クッション体210にかかる圧力を測定し、この圧力に基づいてクッション体210を変形できる。このためクッション装置200は、体に合わせてより正確にクッション体210を変形でき、第1実施形態の効果に加え、体にかかる負担をより適切に軽減できるという効果を奏する。
【0039】
<第3実施形態>
図5は第3実施形態のクッション装置の概略図である。
【0040】
図5に示すように第3実施形態のクッション装置300は、第1実施形態のクッション装置100と略同様であるが、繊維状部材330をクッション体310の表面に食い込ませてクッション体310を変形させる点で第1実施形態と異なる。
【0041】
クッション装置300は、クッション体310と、少なくとも一部がクッション体310の表面に接するように設けられた繊維状の繊維状部材330と、駆動部320と、を有する。
【0042】
繊維状部材330はクッション体310内を通っており、繊維状部材330の一部がクッション体310から引き出されている。繊維状部材330は、クッション体310から引き出されて折り返された折り返し部334で、クッション体310の表面に接している。繊維状部材330は、折り返し部334からクッション体310内を通り、端でアクチュエータ322に接続している。
【0043】
駆動部320は、アクチュエータ322によって繊維状部材330を引っ張って動かし、クッション体310の表面に繊維状部材330を食い込ませてクッション体310を変形させる。
【0044】
クッション装置300は、繊維状部材330の一部を固定した固定部332を、クッション体310の外部に有する。固定部332では、例えば接着剤が繊維状部材330の端を支持部材340に固定している。接着剤以外のものが繊維状部材330を固定してもよい。
【0045】
固定部では、例えば接着材が固まっているため、固定部がクッション体の内部または表面に存在すると、使用者に違和感を生じさせる虞がある。しかし第3実施形態のクッション装置300は、クッション体310の外部に固定部332を有するため、第1実施形態の効果に加え、固定部による違和感の発生を抑制できるという効果を奏する。
【0046】
<第4実施形態>
図6は第4実施形態のクッション装置の概略図である。図7はアセチレン系導電性高分子の例を示す図、図8はピロール系導電性高分子の例を示す図、図9はチオフェン系導電性高分子の例を示す図、図10はフェニレン系導電性高分子の例を示す図、図11はアニリン系導電性高分子の例を示す図である。図12は繊維の製造装置の概略図、図13は繊維の製造装置の概略図である。図14〜図20は繊維の斜視図、図21は繊維の断面図である。図22は繊維の製造装置の概略図、図23〜25は繊維の断面図、図26は繊維の製造装置の概略図である。
【0047】
図6に示すように第4実施形態のクッション装置400は、第1実施形態のクッション装置100と略同様であるが、繊維状部材430および駆動部420が第1実施形態と異なる。
【0048】
具体的には、繊維状部材430が導電性高分子を含み、駆動ユニット421がアクチュエータでなく、繊維状部材430に電気的に接続した電源を含む点で、第4実施形態は第1実施形態と異なる。つまり、駆動部420は、繊維状部材430に電圧を印加することによって繊維状部材430を変形させて動かす。電圧を印加することによって変形する高分子として、ピロール系高分子があり、印加する電圧に応じて水分子を吸脱着して変形する繊維がある。
【0049】
繊維が含む導電性高分子は、導電性を示す高分子であれば特に制限されることはない。図7〜図11に示すように、導電性高分子は例えば、アセチレン系、複素5員環系(モンマーとして、ピロールの他、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−ドデシルピロール等の3−アルキルピロール;3,4−ジメチルピロール、3−メチル−4−ドデシルピロール等の3,4−ジアルキルピロール;N−メチルピロール、N−ドデシルピロール等のN−アルキルピロール;N−メチル−3−メチルピロール、N−エチル−3−ドデシルピロール等のN−アルキルー3−アルキルピロール;3−カルボキシピロール等を重合して得られたピロール系高分子、チオフェン系高分子、イソチアナフテン系高分子等)、フェニレン系、アニリン系の各導電性高分子やこれらの共重合体等である。
【0050】
繊維は、導電性高分子のうち、ポリピロール、PEDTOT/PSS、ポリアニリン、またはPPV、を含むことが好ましい。また、繊維がこれらの導電性高分子のうちの2つ、または3つを含むことも好適である。
【0051】
繊維にし易い材料として、チオフェン系導電性高分子のポリ3、4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリ4−スチレンサルフォネート(PSS)をドープしたPEDOT/PSS(Bayer社 Baytron P(登録商標))や、フェニレン系のポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ピロール系のポリピロール等が挙げられる。これらの材料は、湿式紡糸やエレクトロスピニングといった方法によって、容易に繊維にでき、また、導電率を満たす材料として好ましい。
【0052】
例えば、チオフェン系、ピロール系、アニリン系では、湿式紡糸による製造が可能である。図12に示すように、例えば、PEDOT/PSSの水分散液(Bayer社、Baytron P(登録商標))をアセトン中にシリンダ10から押し出すことによって、導電性高分子を含む繊維を容易に得られる。
【0053】
一方、フェニレン系、例えばポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリフルオレン等、ベンゼン環上のπ結合とそれに繋がる直鎖上のπ結合を利用して電気伝導性を示すものがある。これらは図13に示すような、エレクトロスピニング法によって容易に繊維にできる。エレクトロスピニング法では、電圧を印加した紡糸口15が、溶液を噴射して、繊維が形成される。
【0054】
繊維は、導電性に効果をもたらすドーパントを含んでもよい。ドーパントは、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、六フッ化ヒ酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、六フッ化ケイ酸イオン、燐酸イオン、フェニル燐酸イオン、六フッ化燐酸イオン等の燐酸系イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等のアルキルベンゼンスルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオン等のアルキルスルホン酸イオン、ポリアクリル酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)イオン等の高分子イオンのうち、少なくとも一種のイオンである。
【0055】
ドーパントの添加量は、導電性に効果を与える量であれば特に制限はされないが、通常、導電性高分子100質量部に対し、3〜50質量部、好ましくは10〜30質量部の範囲である。
【0056】
繊維の導電率の好ましい範囲は、0.5〜1000S/cm程度である。抵抗値が大きすぎると、電流が流れにくくなり、また、小さくなりすぎると消費電力が大きくなってしまうため、例えば発熱または省エネの観点から好ましくない。これらの点を考慮すると、導電率の範囲は10〜500S/cm程度が、より好ましい。ここで導電率とは、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠して求めた抵抗率の逆数を言う。
【0057】
繊維の形状または構造は様々である。繊維の長手方向に交わる面における断面(以下、単に断面と称し、この断面の面積を断面積と称す)の形状は、例えば円形形状である。また図14に示すように、断面の形状は例えば三角形形状である。また図15に示すように、繊維は、例えば溝20を有する。また例えば図16に示すように、繊維は中空構造を有する。
【0058】
また図17に示すように、例えば繊維は均質な構造を有する。繊維はまた、例えばコーティングを施した構造を有する。コーティングによって、強度および耐久性の向上を図れる。
【0059】
強度および耐久性を向上させる観点から、繊維の断面積に対してコーティング材料が占める割合は、10〜80%程度が好ましく、より好ましくは30〜50%程度である。コーティングは、全体を覆ってもよいし、一部を覆ってもよい。
【0060】
繊維構造の例として、図18に示すように、繊維の長手方向に沿って伸びる芯を繊維の内部に含んだ芯構造、図19に示すように複数の芯を含んだ海島構造がある。また、図20に示すように長手方向に沿って伸びる材料同士を積層した、積層構造がある。これらの構造によっても、強度および耐久性の向上を図れる。
【0061】
繊維の形状または構造を適宜設計することによって、例えば、繊維自体を自然に捩れさせて風合いを変える、繊維の表面積を変えて軽量化もしくは断熱性向上を図る、または強度および耐久性の向上を図る等、繊維の静的特性を制御できる。
【0062】
また、繊維の形状または構造を適宜設計することによって、繊維の静的特性だけでなく、繊維の動きを制御できる。例えば、コーティングまたは積層構造を有する繊維において、異なる材料を用いることによって、繊維の動きを制御できる。
【0063】
積層構造では、図21のハッチングによって示すように各材料の断面積、形状が異なっていても、異なる材料を用いれば繊維の動きを制御できる。積層構造の繊維の断面形状は、円形形状の他、例えば、扁平形状、中空形状、三角形形状、およびY字型形状である。繊維は、微細な凹凸、または筋を表面に有してもよい。
【0064】
積層構造は、材料同士の断面積が異なる構造だけでなく、材料同士の断面積が略等しいサイドバイサイド構造を含む。強度と耐久性、および繊維の駆動を考慮すると、サイドバイサイド構造はこれらのバランスに優れ好ましい。
【0065】
図22に示すように、例えば、湿式紡糸と樹脂層形成とを連続的に行う製造装置が、積層構造の繊維を製造する。製造装置は、まず、湿式紡糸によって導電性を有する導電層を形成する。その後、製造装置は、導電層と異なる材質の樹脂層を形成する。
【0066】
図23〜25に示すように、芯構造における、芯の断面形状は様々である。芯構造では、芯または芯の周囲の材料が、導電性高分子を含む。芯を導電性高分子によって形成し、芯の周囲を一般的な樹脂材料等によって形成することによって、繊維表面の耐久性を向上できる。一方、芯の周囲の材料を導電性高分子によって形成することによって、繊維との電気的接続が容易となる。
【0067】
芯構造は、芯の断面積と芯の周囲の断面積とが異なる構造だけでなく、芯の断面積と芯の周囲の断面積とが略等しい芯鞘構造を含む。強度と耐久性、および繊維の駆動を考慮すると、芯鞘構造はこれらのバランスに優れ好ましい。
【0068】
芯構造を有する繊維は、例えば、湿式紡糸やエレクトロスピニング法によって作製した導電性高分子を含む芯に、導電性高分子と異なる樹脂成分を主成分とするコート材を塗布することによって、製造される。
【0069】
図26に示すように、芯構造を有する繊維を製造する製造装置は、芯に塗布するコート材を乾燥させるための乾燥炉30を有する。製造装置は、コート材を乾燥させる時間および温度を調節することによって、芯の表面に残る樹脂量を調節できる。このような方法と異なり、湿式紡糸において芯構造を備えた吐出口を用い、一回の液相からの引き上げによって芯構造の繊維を作製することもできる。
【0070】
繊維は、導電性高分子の他、樹脂材料を含むことが好ましい。また、樹脂材料は熱可塑性樹脂であることがさらに好ましい。
【0071】
これは、導電性高分子をこれに似た材質の材料と組み合わせることによって、電圧を印加したとき、導電性高分子の動きを出来るだけ阻害することなく繊維形状を維持できるからである。また、熱可塑性樹脂を含むことが好ましいのは、熱成型によって所望の形状にし易いからである。
【0072】
導電性高分子と組み合わせる樹脂材料として、例えば、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、共重合成分を含むポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、または混合して用いてもよい。これらの材料は、一般に広く用いられているため、コストおよび実用性の点から好ましい。
【0073】
導電性高分子と組み合わせる材料として、エラストマーも好適である。エラストマーは、上で例示した樹脂材料に比べ、導電性高分子の動きをより阻害し難い。
【0074】
エラストマーのうち、例えば、ポリシロキサン類は変形し易く好ましい。他の例として、室温においてガラス状態で存在する、ポリメタクリレート、ポリクロロアクリレートもしくはポリスチレン誘導体、または、室温において液晶状態で存在する、ポリアクリレート、ポリシロキサンもしくはポリホスファゼンを含むもの、およびこれらからなるコポリマーを挙げられる。
【0075】
好ましいメソゲン基として、メソゲンユニットの長軸に、例えば、15個までの鎖構成員を有するアルキル、アルコキシおよびオキサアルキル基を含むものが挙げられる。エラストマーは、通常の高分子の合成と同様、例えば単純なランダム共重合、あるいは多官能性架橋剤分子とのランダムポリマー類似付加反応によって合成される。
【0076】
導電性高分子と組み合わせる材料は、多孔質体であってもよい。繊維が、印加する電圧に応じて水分子を吸脱着することによって変形する場合、繊維が多孔質体を含むことによって水分子の吸脱着が円滑になり、電圧を印加したときの繊維の応答速度が向上する。多孔質体の空隙率は大きいほど好ましいが、応答速度を向上させるだけでなく、強度および耐久性を向上させる見地より、30〜70%程度が好ましい。
【0077】
繊維状部材430が、複数本の繊維を撚った構成を有するとき、導電性高分子を含む繊維の密度(本数)によって、電圧を印加したときの動きが変化する。繊維状部材430を構成する繊維の全てが、導電性高分子を含む繊維であってもよいし、一部が導電性高分子を含む繊維であってもよい。密度を適宜設計できる。
【0078】
繊維状部材430に所望の動きをさせようとすると、導電性高分子を含む繊維の密度は、繊維状部材430の断面積に占める割合で、2〜80%程度の範囲が好ましい。これより小さい範囲では、繊維状部材430が十分に駆動し難くなる。また、これより大きい範囲では導電性高分子を含む繊維の挙動が支配的となり、導電性高分子を含む繊維と他の繊維との組み合わせによって繊維状部材430に所望の動きをさせることが困難となる。
【0079】
第4実施形態の効果を述べる。
【0080】
第4実施形態のクッション装置400は、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、クッション装置400は、電圧を印加することによって繊維状部材430を動かすため、アクチュエータが必要なく、コンパクト化を図れる。
【0081】
コーティング、芯構造、または積層構造によって、繊維の強度向上を図れ、切れ等の発生を抑制できる。よって、繊維状部材430が安定して動作できる。
【0082】
コーティング、または積層構造によって、繊維、ひいては繊維状部材430に所望の動きをさせられる。また、導電性高分子を含む繊維と他の繊維とを組み合わせることによって、繊維状部材430に所望の動きをさせられる。
【0083】
<第5実施形態>
図27は第5実施形態のクッション装置の概略図である。
【0084】
図27に示すように、第5実施形態のクッション装置500は第3実施形態のクッション装置300と略同様であるが、繊維状部材530および駆動部520が第3実施形態と異なる。
【0085】
具体的には、繊維状部材530が導電性高分子を含み、駆動部520は繊維状部材530に電圧を印加することによって、繊維状部材530を変形させて動かす点で、第5実施形態は第3実施形態と異なる。
【0086】
繊維状部材530を構成する繊維は、第4実施形態と同様である。繊維状部材530は、駆動部520に電気的に接続している。クッション装置500は2つの固定部532、533を有し、繊維状部材530の両端は支持部材540に固定されている。
【0087】
第5実施形態のクッション装置500は、第3実施形態と同様の効果を奏する。また、繊維状部材530を構成する繊維が第4実施形態と同様であるため、クッション装置500は第4実施形態の効果を奏する。
【0088】
<第6実施形態>
図28は第6実施形態のクッション装置の概略図、図29はクッション体を部分的に拡大して示す斜視図、図30〜図32はクッション体の部分拡大断面図、図33〜35は立体編物の部分拡大断面図である。
【0089】
図28に示すように第6実施形態のクッション装置600は、第5実施形態のクッション装置500と略同様であるが、固定部632、633の位置、およびクッション体610が第5実施形態と異なる。
【0090】
クッション体610は、ウレタン612の他、ウレタン612に重なった立体編物611を有する。立体編物611は、対向する2つの編地613、615の間の連結糸614が2つの編地613、615を連結した構成を有する。
【0091】
連結糸614は適度な剛性を有する。このため、例えば使用者がクッション体610に座ったとき、立体編物611は自身の厚さtを維持しつつ使用者の体に合わせて変形する。立体編物611は、例えば旭化成せんい株式会社 フュージョン(登録商標)である。
【0092】
編地613、615は、シート状で通気性を有するものであればよく、例えば、布、不織布、または編物等である。これらは、繊維状部材630を固定し、また繊維状部材630の駆動に追従する上で好ましい。固定部632、633は、編地613、615のうち、使用者に臨む編地615の反対側の編地613に位置する。
【0093】
繊維状部材630の一部は、立体編物611から引き出されており、繊維状部材630は、折り返した折り返し部634で立体編物611の表面に接している。繊維状部材630は折り返し部634で折り返し、立体編物611内を通る。クッション装置600は、繊維状部材630によって立体編物611の形状を能動的に変える。
【0094】
編地613、615間の好ましい間隔は、5mm程度から50mm程度である。これより小さいと、繊維状部材630を駆動したときの立体編物611の変化量、ここでは厚さtの変化が小さくなり、クッション装置600が、形状変化による機能を発揮し難い。一方、編地613、615間の距離が大きくなると、連結糸614の長さが長くなり、連結糸614が曲がり易くなり、繊維状部材630がたるむ虞がある。
【0095】
図29に示すように、クッション装置600は、複数の繊維状部材630を有してもよい。また、同図において示すように、一本の繊維状部材630が複数の折り返し部634を有し、これら複数の折り返し部634で、立体編物611の表面に接してもよい。
【0096】
このような形態によって図30に示すように、繊維状部材630は、面方向に広がりをもつ所望の領域で、立体編物611、ひいてはクッション体610を変形できる。
【0097】
図31、および図32に示すように、繊維状部材630は、折り返し部634を切断した構成を有してもよい。このとき、編地613と編地615と間に伸びる、繊維状部材630の断片の各々は、接着剤による接着または結ぶ等の方法によって、編地613、615に固定される。
【0098】
繊維状部材630の立体編物611への掛かり方は様々である。例えば図33に示すように、編地613と編地615との間で交互に折り返す掛け方がある。また例えば図34に示すように、繊維状部材630同士を交差させる掛け方がある。また例えば図35に示すように、螺旋状にして編地613および編地615に掛ける掛け方がある。
【0099】
第6実施形態の効果を述べる。
【0100】
第6実施形態は、第3実施形態と同様の効果を奏する。また、立体編物611の連結糸614が適度な剛性を有し、立体編物611の厚さtが変化し難いため、繊維状部材630がたるみ難い。このためクッション装置600は、立体編物611、ひいてはクッション体610をより正確に変形できる。
【0101】
<車両用座席>
図36は車両用座席の斜視図である。
【0102】
図36において説明すると、車両用座席40は、第1実施形態〜第6実施形態のいずれか1つのクッション装置を有する。車両用座席40は、背もたれ44もしくは座るための座部42、またはこれら両方にクッション装置を有する。また、車両用座席40が肘掛またはヘッドレストを有する場合、これらにクッション装置を備えてもよい。
【0103】
車両用座席40は、例えば圧力分散または通気量変化を可能とし、第1実施形態〜第6実施形態のいずれか1つと同様の効果を有する。
【0104】
また例えば車両の傾き、または使用者の姿勢を検出するセンサ(不図示)を車両が備えるとき、車両用座席40は、このセンサからのフィードバックに応じて、クッション体を変形させ、必要な部分を動かし使用者の姿勢を変えられる。
【0105】
使用者の姿勢を変えることによって、車両用座席40は、例えば乗り心地の改善、またはエアバックを作動させるときの姿勢の設定を行える。また、クッション体の変形を、使用者への情報伝達に応用してもよい。
【0106】
<実施例1>
本発明者らは、第1実施形態の構成(図1参照)を有するクッション装置100を作製した。実施例1のクッション体110は、厚さ15cm、40cm角、30倍発泡ウレタンと、発泡ウレタンを覆うスエード調のカバーと、を有する。繊維状部材130は、直径0.285mmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維である。
【0107】
図37に示すように、繊維状部材130は、クッション体110の角から10cm×10cmの位置でクッション体110を貫通している。本発明者らは、繊維状部材130の一端を、クッション体110のカバーに接着剤によって固定した。
【0108】
本発明者らは、支持部材140として40cm角、厚さ0.6mmの鋼板を用いた。鋼板は、貫通孔を有し、繊維状部材130はこの貫通孔を通っている。駆動ユニット121は、鋼板に固定したモーター122(マブチモーター株式会社 FA−280SA)を有する。モーター122は、回転軸に設けたプーリーによって、繊維状部材130を巻き取る。制御部123は、モーター122の作動時間と回転回数、および巻き取り量の関係を関数として記憶している。
【0109】
駆動ユニット121が、3Vの電圧を通電してモーター122によって繊維状部材130を引っ張ると、繊維状部材130が固定された固定部132が窪んだ。
【0110】
本発明者らは、10cm×10cm、厚さ1.7mmのプラスチック板によって、クッション体110を2cm程押し込み、その後、繊維状部材130を動かした。光ファイバーセンサ(ニッタ株式会社 KINOTEX(登録商標))によって圧力を計測すると、繊維状部材130を動かしたとき、繊維状部材130によって変形する部分で圧力低下を確認できた。
【0111】
<実施例2>
本発明者らは、第3実施形態の構成(図5参照)を有するクッション装置300を作製した。実施例2のクッション装置300の各部材は、実施例1と同様である。繊維状部材330において、クッション体310内を通っている部分の間隔(図5の符号335と336との間隔)は、1cm程度である。
【0112】
<実施例3>
図38に示すように、実施例3のクッション装置100Aは、実施例1と略同様であるが、クッション体110Aの構成、および繊維状部材130Aの固定位置が、実施例1と異なる。実施例3のクッション体110Aは、2つの30倍発泡ウレタン116A、118Aを重ね合わせた構成を有する。ウレタン116A、118Aの各々の寸法は、厚さ7.5cm、40cm角である。
【0113】
繊維状部材130Aは、直径0.285mmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維である。繊維状部材130Aは、鋼板側のウレタン118Aの角から10cm×10cmの位置でウレタン118Aを貫通している。本発明者らは、繊維状部材130Aの一端を、ウレタン118Aの表面に接着剤によって固定した。
【0114】
<実施例4>
図39に示すように、実施例4のクッション装置100Bは、実施例3と略同様であるが、繊維状部材130Bの位置が実施例3と異なる。実施例4では、繊維状部材130Bは、鋼板140B側のウレタン118Bと異なる、もう一方のウレタン116Bを貫通している。繊維状部材130Bは、ウレタン116Bの角から10cm×10cmの位置でウレタン116Bを貫通している。本発明者らは、繊維状部材130Bの一端をウレタン116Bの表面に接着剤によって固定し、駆動ユニット121Bをウレタン116B、118Bによって挟んだ。
【0115】
<実施例5>
本発明者らは、第4実施形態の構成(図6参照)を有する、実施例5のクッション装置400を作製した。駆動ユニット421はアクチュエータを有さず、制御部423は繊維状部材430への印加電圧と収縮量との関係を関数として記憶している。
【0116】
本発明者らは、湿式紡糸によって導電性高分子を含む繊維を作製した。本発明者らは、一度濾過した導電性高分子PEDOT/PSSの水分散液(Bayer社 Baytron P(登録商標))を3倍に濃縮し、2.5μL/min.の速度でマイクロシリンジ(株式会社伊藤製作所、針部内径820μm)から−5℃の溶媒相へ押し出した。溶媒相はアセトン(和光化学株式会社 019−00353)である。作製した繊維の直径は、約100μmであった。
【0117】
得られた繊維の導電率を、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠して測定し、抵抗率(Ω・cm)の逆数(S/cm)として算出したところ、約10S/cmであった。
【0118】
<実施例6>
本発明者らは、第5実施形態の構成(図27参照)を有する、実施例6のクッション装置500を作製した。駆動ユニット521はアクチュエータを有さず、制御部523は繊維状部材530への印加電圧と収縮量との関係を関数として記憶している。繊維は、実施例5と同様である。
【0119】
<実施例7>
本発明者らは、第6実施形態の構成(図28参照)を有する、実施例7のクッション装置600を作製した。本発明者らは、編地613と編地615との間で繊維状部材630を交互に折り返して編み(図33参照)、折り返し部624の1箇所切断した。本発明者らは、折り返し部624を切断して形成した端部で、繊維状部材630と駆動部620とを電気的に接続した。
【0120】
繊維状部材630が含む繊維は実施例5と同様である。繊維状部材630の断面における、単位面積あたりの導電性高分子を含む繊維の本数は、10本/cm2である(断面積の比率で約8%)。
【0121】
編地613、615は、ポリエステル繊維製不織布(東洋紡績株式会社 エクーレ3A01A(登録商標))であり、編地613、615の間隔は、10mmである。本発明者らは、立体編物611を厚さ14cm、40cm角、30倍発泡のウレタンに重ね、また、実施例2に倣ってクッション装置600を作製した。
【0122】
<実施例8>
本発明者らは、実施例7と略同様の実施例8のクッション装置600を作製した。実施例8のクッション装置600は、折り返し部634(図33参照)を10箇所切断し、切断によって形成した端部で繊維状部材630と駆動部620とを電気的に接続した点で、実施例7と異なる。
【0123】
<比較例1>
本発明者らは、比較例1として、空気袋式アクチュエータ(ツカモトエイム株式会社 エアリーシェイプ(登録商標))を有するクッション装置を作成した(不図示)。比較例1のクッション装置は、実施例1と略同様の構成を有するが、繊維状部材およびモーターの代わりに、空気袋式アクチュエータを有する点で異なる。本発明者らは、ウレタンとこれを覆うカバーとの間に空気袋を設けた。制御部は、空気袋のふくらみ量と空気送り込み量との関係を関数として記憶している。
【0124】
<比較例2>
本発明者らは、比較例2として、空気圧シリンダ(タイヨーテクノ株式会社 10S−1)を有するクッション装置を作製した(不図示)。比較例2のクッション装置は、実施例1と略同様の構成を有するが、繊維状部材およびモーターの代わりに、空気圧シリンダを有する点で異なる。
【0125】
本発明者らは、クッション体をくりぬいて空気圧シリンダを設置し、また、1cm角、厚さ1mmの鋼板をシリンダ先端に設けた。シリンダ先端は、クッション体表面に沿う。制御部は、空気圧シリンダの伸び量と空気送り込み量との関係を関数として記憶している。
【0126】
<官能試験>
本発明者らは、実施例1〜8および比較例1〜2のクッション装置に実際に座り、座ったときの違和感の有無を評価した。評価者は5人である。このとき本発明者らは、光ファイバーセンサ(ニッタ株式会社 KINOTEX(登録商標))をクッション体に埋設させておき、圧力を測定するとともに、光ファイバーセンサによる違和感の有無を評価した。
【0127】
本発明者らは、10cm×10cm、厚さ1.7mmのプラスチック板によって、クッション体を2cm程押し込み、その後、繊維状部材を動かして圧力を測定した。
【0128】
<通気量試験>
本発明者らはまた、実施例1〜8および比較例1〜2のクッション装置について、JISL1096「一般織物試験方法」の通気量試験に準じ、通気量を評価した。
【0129】
本発明者らは、サンプルとして、実施例1〜8については繊維状部材を設置した部分を中心に、比較例1〜2についてはアクチュエータを設置した部分を中心に、縦横の長さ5cm、厚さ1cmの寸法で切り出したものを用いた。
【0130】
<評価結果>
実施例1〜実施例8、比較例1、および比較例2につき、官能試験と通気量試験との評価結果を表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
表1に示すように、繊維状部材を用いた実施例1〜8では、着座時に違和感が生じなかった。また実施例1〜8のクッション装置では、通気性が良好である。これに対し、空気袋式アクチュエータを用いた比較例1は、通気性が実施例に比べて劣り、空気圧シリンダを用いた比較例2では、違和感が生じた。
【0133】
これらの結果から、クッション体を変形させるものとして繊維状部材を用いることが、違和感の発生の抑制および通気性の確保に有効であることを確認できた。また、クッション体への光ファイバーセンサの埋設も、違和感を生じさせず、有効であることを確認できた。
【0134】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。
【0135】
例えば図40に示すように、第3実施形態において、クッション装置300Aが、複数の繊維状部材330Aと、複数の駆動部320Aとを有してもよい。また図41に示すように、第3実施形態において、クッション体310Bが立体編物311Bを含んでもよい。
【0136】
また図42に示すように、第3形態において、繊維状部材330Cは複数の折り返し部334Cでクッション体310Cの表面に接していてもよい。同様に、図43に示すように第5実施形態においても、繊維状部材530Aは複数の折り返し部534Aでクッション体510Aの表面に接していてもよい。このように複数の折り返し部を有することによって、図44に示すように、面方向に広がりをもつ所望の領域でクッション体を変形できる。
【0137】
また図45に示すように、ウレタン312Dに駆動ユニット321Dを埋設させ、アクチュエータ322Dによって繊維状部材330Dを引っ張って、立体編物311Dを変形させるようにしてもよい。
【0138】
また、第1実施形態、および第3実施形態〜第6実施形態のクッション装置は、第2実施形態のようにセンサを有し、フィードバック制御を行ってもよい。
【0139】
またクッション体は、ウレタン、およびウレタンと立体編物とを組みあせたものに限定されない。すなわち、クッション体は、圧力が加わったとき変形して圧力を分散させるとともに、その圧力を除くと元の形に戻ろうとする性質を有するものである。クッション体は、ウレタン以外に、例えば布団綿等を袋に詰めたもの、またはゴム等のエラストマーを含む。クッション体はまた、これらをカバーによって覆ったものを含む。
【0140】
また本発明のクッション装置は、車両用座席以外の座席に応用でき、また、例えば病院や介護施設等のベッドに応用できる。
【符号の説明】
【0141】
40 車両用座席、
100、100A、100B、200、300、300A、300B、300C、300D、400、500、500A、600 クッション装置、
110、110A、110B、210、310、310A、310B、310C、310D、410、510、510A、610 クッション体、
120、120A、120B、220、320、320A、320B、320C、320D、420、520、520A、620 駆動部、
121、121A、121B、221、321、321A、321B、321C、321D、421、521、521A、621 駆動ユニット、
122、122A、122B、222、322、322A、322B、322C、322D アクチュエータ、
123、123A、123B、223、323、323A、323B、323C、323D、423、523、523A、623 制御部、
130、130A、130B、230、330、330A、330B、330C、330D、430、530、530A、630 繊維状部材、
132、132A、132B、232、332、332A、332B、332C、332D、432、532、532A、533、533A、632、633 固定部、
140、140A、140B、240、340、340A、340B、340C、340D、440、540、540A、640 支持部材
311B、311D、611 立体編物、
612 ウレタン、
613、615 編地、
614 連結糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力を有するクッション体と、
前記クッション体内を通って前記クッション体に繋がれた繊維状の繊維状部材と、
前記繊維状部材を動かし前記クッション体を内側に引っ張って変形させる、前記繊維状部材に接続した駆動部と、を有するクッション装置。
【請求項2】
弾力を有するクッション体と、
少なくとも一部が前記クッション体の表面に接するように設けられた繊維状の繊維状部材と、
前記繊維状部材を動かし前記表面に前記繊維状部材を食い込ませて前記クッション体を変形させる、前記繊維状部材に接続した駆動部と、を有するクッション装置。
【請求項3】
前記繊維状部材の一部を固定した固定部を、前記クッション体の外部に有する請求項2に記載のクッション装置。
【請求項4】
前記クッション体の外部に前記駆動部を有する請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のクッション装置。
【請求項5】
前記駆動部が前記繊維状部材に接続したアクチュエータを有し、当該アクチュエータによって前記繊維状部材を引っ張って動かす請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のクッション装置。
【請求項6】
前記繊維状部材が導電性高分子を有し、前記駆動部が前記繊維状部材に電圧を印加することによって前記繊維状部材を変形させて動かす請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のクッション装置。
【請求項7】
対向する2つの編地の間の連結糸が前記2つの編地を連結してなる立体編物を、前記クッション体が有する請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のクッション装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のクッション装置を有する車両用座席。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2010−187861(P2010−187861A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34446(P2009−34446)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】