説明

クッション

【課題】作動状態を容易且つ確実に把握可能なクッションを提供する。
【解決手段】ベース部材40の前端且つ着座面幅方向の一端側に各ランプ81,82,83を設けていることから、着座者が着座した際に両大腿部のうち一方の下側近傍に各ランプ81,82,83が配置され、着座者は少し屈むことにより各ランプ81,82,83を容易に視認することができる。また、制御装置70の制御モードまたは異常モードを表示するための表示部が数個(本実施形態では3個)のランプ81,82,83から構成され、制御装置70によって各ランプ81,82,83の作動が制御される。このため、各ランプ81,82,83の作動パターンを複数種類設定するとともに、各作動パターンにクッションの制御モードや異常モードを対応させることにより、着座者や介護者がクッションの作動状態を容易且つ確実に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車椅子の着座面に載置され、着座者に発生する褥瘡を防止するために着座者の臀部を軟らかく支持するクッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のクッションとしては、車椅子の着座面に並設された複数のエアーセルと、各エアーセル内の空気量を調整するための空気量調整ユニットとを備え、空気量調整ユニットを車椅子や各エアーセルと別体で設けるとともに、各エアーセルと空気量調整ユニットとを可撓性の空気配管によって連結し、空気量調整ユニットを車椅子の着座面の下面に取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表平8−501961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記クッションでは、空気量調整ユニットの作動状態や各エアーセル内の空気量を表示する表示部が設けられていないので、空気量調整ユニットや各エアーセルが正常に機能しているか否かを容易に判定することができず、例えば各エアーセルのうち1つが破損して空気が漏れており、空気量調整ユニットが無用に作動している場合でも、着座者や介護者がその無用な作動に気付くことができないという問題点があった。
【0004】
一方、空気量調整ユニットと可撓性のケーブルによって接続されたリモートコントローラを設け、リモートコントローラによって空気量調整ユニットを操作して各エアーセル内の空気量の調整を行うとともに、リモートコントローラに前記表示部を設けることも考えられる。この場合、リモートコントローラの操作を着座者が行う場合があるとともに介護者等が行う場合があるので、前記ケーブルにはある程度の長さが必要であり、また、使用していないリモートコントローラは車椅子の背面支持部の背面等に着脱自在に取付けられるようになる。
【0005】
しかしながら、車椅子に着座する着座者は足が不自由な場合が多く、その着座者が背面支持部の背面にリモートコントローラを着脱するのに手間がかかるという問題点があった。
【0006】
また、前記ケーブルがリモートコントローラの取扱いを行う上で邪魔になるとともに、前記ケーブルやリモートコントローラが車椅子の取扱いを行う上で邪魔になるという問題点もあった。さらに、リモートコントローラやケーブルを別途設ける分だけ部品点数が多くなり、製造コストが高くつくという問題点もあった。
【0007】
一方、リモートコントローラと空気量調整ユニットとを無線通信可能に構成することも考えられるが、ケーブルが無くなることによりリモートコントローラを紛失する可能性が高くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作動状態を容易且つ確実に把握可能なクッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、複数のエアーセルと、各エアーセルを支持するベース部材と、各エアーセル内の空気量を調整するためにベース部材に設けられたエアーポンプ及びバルブと、エアーポンプ、バルブ及び各エアーセルを連通させる連通手段と、エアーポンプ及びバルブを制御する制御装置とを備え、所定の着座面に載置されて使用されるクッションにおいて、前記ベース部材の前端且つ着座面幅方向の一端側または他端側に表示部を設け、表示部を数個のランプから構成するとともに、制御装置によって各ランプの作動が制御されるように構成している。
【0010】
これにより、ベース部材の前端且つ着座面幅方向の一端側または他端側に表示部を設けていることから、着座者が着座した際に両大腿部のうち何れか一方の下側近傍に表示部が配置され、着座者は少し屈むことにより表示部を容易に視認することができ、介護者も着座面の前方から表示部を容易に視認することができる。ここで、ベース部材における後端や着座面幅方向の両端に表示部を設けると、車椅子の背面支持部やアームレスト等によって表示部が見えなくなる場合があり、また、ベース部材における前端の幅方向中央側に表示部を設けると、スカート等によって表示部が見え難くなる場合があるが、ベース部材の前端且つ着座面幅方向の一端側または他端側に表示部を設けることにより、これらの問題を解決することができる。
【0011】
また、各エアーセル内の空気量を調整するためにベース部材にエアーポンプ及びバルブが設けられるとともに、エアーポンプ及びバルブを制御する制御装置が設けられ、さらに、表示部が数個のランプから構成され、制御装置によって各ランプの作動が制御されることから、例えば各エアーセル等から空気漏れが生ずることにより、エアーポンプの作動が所定時間以上に亘って連続して行われている場合には、制御装置によって全てのランプを点灯させ、各エアーセル内の空気圧が所定の圧力以上になっている場合には、制御装置によって全てのランプを消灯させることが可能である。即ち、各ランプの作動パターンを複数種類設定するとともに、各作動パターンにクッションの制御モードや異常モードを対応させ、各ランプを制御モードや異常モードに応じた作動パターンで作動させることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば車椅子の着座面に載置して利用する場合、着座者は少し屈むことにより表示部を容易に視認することができるとともに、介護者も着座面の前方から表示部を容易に視認することができ、また、各ランプの作動パターンを複数種類設定するとともに、各作動パターンにクッションの制御モードや異常モードを対応させ、各ランプを制御モードや異常モードに応じた作動パターンで作動させることが可能であることから、着座者や介護者がクッションの作動状態を容易且つ確実に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図12は本発明の一実施形態を示すもので、図1はベース部材の要部斜視図、図2はクッション本体の正面図、図3はクッション本体の平面図、図4は図3におけるA−A線断面図、図5は底面カバーを取外した状態のクッション本体の底面図、図6はクッション本体の要部断面図、図7はクッションの斜視図、図8はクッションの配管を示す概略図、図9はクッションのブロック図、図10は制御モードと第1乃至第3ランプ及び警報装置の作動との関係を示す表、図11は異常モードと第1乃至第3ランプ及び警報装置の作動との関係を示す表、図12は各バッテリーの蓄電量と第4ランプ及び警報装置の作動との関係を示す表である。明細書中における方向の説明は図1乃至図5に示した方向に準ずる。また、左右方向は着座面の幅方向と一致している。
【0014】
このクッションは、クッション本体1と、クッション本体1を収納するクッションカバー100とを備えている。また、クッション本体1は、着座者の座骨及び尾骨の近傍を支持するための複数の第1エアーセル10と、各第1エアーセル10に対して着座面の幅方向の両側にそれぞれ設けられ、着座者の臀部の幅方向両側を支持するための複数の第2エアーセル20と、各第1エアーセル10及び各第2エアーセル20に対して着座面の前端側に設けられた前端側支持部材30と、各第1エアーセル10、各第2エアーセル20及び前端側支持部材30の下端側をそれぞれ支持する平板状のベース部材40とを有する。前記着座面は例えば車椅子の着座面であり、このクッションは着座者の臀部を軟らかく支持するために着座面に載置されて使用される。
【0015】
各第1エアーセル10及び各第2エアーセル20はゴムやプラスチックの空気袋から成る。
【0016】
各第1エアーセル10及び各第2エアーセル20は第1エアーセル群G1、第2エアーセル群G2、第3エアーセル群G3、第4エアーセル群G4、第5エアーセル群G5及び第6エアーセル群G6の6つの群にグループ分けされている(図1参照)。
【0017】
前端側支持部材30は発泡ウレタン等のスポンジ状部材から成り、着座者の大腿部の近傍を支持するようになっている。
【0018】
ベース部材40はゴムやプラスチックから成り、平板状に形成されている。ベース部材40は、平板状に形成された上側ベース部材40aと平板状に形成された下側ベース部材40bとを貼り合わせることにより形成されている。また、ベース部材40の上面と各エアーセル10によって複数の空気室ARが形成されている。また、ベース部材40内には空気通路40cが形成されている。前端側支持部材30の下端面がベース部材40の前側部分40dの上面に面ファスナーや接着剤等によって取付けられ、前端側支持部材30の下端側がベース部材40に支持されている。ベース部材40の前側部分40dは他の部分よりも大きな厚さ寸法を有し、前側部分40dには下方に向かって開口している中空部41が設けられている。即ち、中空部41は前端側支持部材30の下方に配置されている。
【0019】
ベース部材40の前側部分40dの上面と前端側支持部材30の下面との間には着座面幅方向一対のバッテリーBAが設けられている。各バッテリーBAは周知のニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、亜鉛電池、アルカリ電池等から成り、充電を行うことにより蓄電可能である。各バッテリーBAは後述する電動エアーポンプ50、各電磁バルブV1〜V7、制御装置70及び各ランプ81,82,83,84に電力を供給可能に構成されている。
【0020】
ベース部材40によって形成されている各空気室ARの底面には薄膜部40eが成形一体に設けられている。また、薄膜部40eが設けられた空気室AR内には円筒状に形成された弾性部材42が設けられている。弾性部材42はゴムやウレタン等のゴム状弾性を有する周知の材料から成り、上下方向に弾性変形可能に形成されている。また、弾性部材42の下端は薄膜部40eの上面に取付けられている。
【0021】
ベース部材40における各薄膜部40eの下側には周知のスイッチ式のセンサ43が設けられている。センサ43は、上下方向に移動可能に設けられたボタン43aに所定の大きさ以上の下方に向かう力が加わると、ボタン43aの下方への移動によって内部に設けられた回路が通電する。
【0022】
このため、第1エアーセル10の上下方向の潰れ量が所定量以上になると、弾性部材42に下方に向かう力が加わるとともに、弾性部材42が上下方向に弾性変形し、弾性部材42の反力によって薄膜部40eが下方に向かって弾性変形するとともに、その変形がセンサ43によって検知される。また、前記所定量は例えば各第1エアーセル10によって臀部を軟らかく支持できる限界の潰れ量に設定されている。このように、第1エアーセル10の潰れ量が所定量以上になったことが潰れ量検知手段としての弾性部材42、薄膜部40e及びセンサ43によって検知されるようになっている。また、本明細書では、各第1エアーセル10のうち何れか1つの第1エアーセル10によって臀部を軟らかく支持できなくなることを底付きと称する。
【0023】
中空部41内には、各エアーセル10,20に空気を供給するための周知の電動エアーポンプ50と、周知の構造を有する第1〜第7電磁バルブV1〜V7と、制御装置70と、操作ユニット80と、警報装置88とが設けられている。電動エアーポンプ50、各電磁バルブV1〜V7、制御装置70、操作ユニット80及び警報装置88は下方に向かって開口しているハウジング51,60,71内に固定され、ハウジング51,60,71が中空部41内に嵌め込まれている。中空部41の開口部はプラスチックから成る板状の底面カバー41aによって閉鎖されるようになっている。
【0024】
電動エアーポンプ50、各電磁バルブV1〜V7及び各エアーセル群G1−1〜G6は図8に示すように配管されている。即ち、電動エアーポンプ50は図示しない連通パイプ、周知の逆止弁52、周知の空気圧センサ53及び前記ベース部材40内の空気通路40cを介して第5エアーセル群G5に接続されている。その他の配管状態は図8に示す通りである。このように、電動エアーポンプ50、各電磁バルブV1〜V7及び各エアーセル10,20は連通手段としての連通パイプ及び空気通路40cを介して連通している。
【0025】
制御装置70は周知のマイクロコンピュータから成り、図9に示すように、各センサ43、空気圧センサ53、電動エアーポンプ50及び各電磁バルブV1〜V7に接続され、電動エアーポンプ50及び各電磁バルブV1〜V7を制御して各エアーセル10,20内の空気量を調整するようになっている。
【0026】
操作ユニット80における着座面の前方を臨む操作面80aには、第1ランプ81と、第2ランプ82と、第3ランプ83と、第4ランプ84と、スタートスイッチ85と、コネクタ86と、電源コード差込口87とを備えている。また、操作面80aはベース部材40の前端且つ着座面幅方向の一端側に設けられた前端開口部40fから露出している(図1、図2及び図4参照)。
【0027】
各ランプ81,82,83,84は周知のLED(発光ダイオード)から成り、第1ランプ81は青色、第2ランプ82は黄色、第3ランプ83は白色、第4ランプ84は橙色及び赤色に発光可能に構成されている。
【0028】
コネクタ86は例えばコンピュータ同士を接続するケーブルを差込可能に構成されている。また、コネクタ86に外部のコンピュータのケーブルが差込まれ、その外部のコンピュータによって制御装置70内の情報の書換えや読取りを行うことができるようになっている。
【0029】
電源コード差込口87は周知の電源コードの一端を差込可能に構成されている。また、電源コード差込口87に電源コードが差込まれ、電源コードが外部の電源に接続されると、外部の電源からの電力が各バッテリーBAに蓄電されるようになっている。
【0030】
警報装置88は周知のブザーから成り、「ピーピー」、「ピピッ」、「ピー」、「ピッピッピ」、「ピピピ」等の複数種類の音を出力可能に構成されている。
【0031】
図9に示すように、各ランプ81,82,83,84、スタートスイッチ85、コネクタ86及び警報装置88は制御装置70に接続されている。
【0032】
クッションカバー100は、クッション本体1の底面を覆うように形成されたカバー底面101と、クッション本体1の側面及び上面を覆うように形成されたカバー上面102とを有する。
【0033】
カバー底面101はポリエステル繊維、ナイロン繊維、ウレタン繊維等から成る可撓性を有する布材であり、車椅子の着座面との摩擦係数が大きくなるように、カバー底面101に滑り止め加工を施すことも可能である。また、カバー底面101をゴム、プラスチック、熱可塑性エラストマー等から成る板状部材によって形成することも可能である。
【0034】
カバー上面102はポリエステル繊維、ナイロン繊維、ウレタン繊維等から成る可撓性を有する布材である。また、カバー上面102の前端且つ着座面幅方向の一端側には透光部102aが設けられている。透光部102aはカバー上面102に開口部を設けるとともに、透明なプラスチック等の透光性を有する部材によって開口部を閉鎖することにより形成されている。
【0035】
カバー底面101とカバー上面102との間にはファスナー103が設けられ、ファスナー103はクッションカバー100の前端を開閉可能である。ファスナー103によってクッションカバー100の前端を開口するとともに、クッション本体1をクッションカバー100内に挿入し、ファスナー103によってクッションカバー100の前端を閉鎖することにより、クッション本体1がクッションカバー100内に収納される。また、クッション本体1がクッションカバー100内に収納された際に、ベース部材40から露出する操作ユニット80の操作面80aの前方に透光部102aが配置されるようになっている。これにより、操作ユニット80の操作面80aは透光部102aを介して外部から視認可能になっている。
【0036】
以上のように構成されたクッションは、例えば車椅子の着座面に載置され、着座者の臀部を軟らかく支持するために使用される。また、各第1エアーセル10のうち一部の潰れ量が所定量以上になったことがセンサ43によって検知されると、制御装置70によって電動エアーポンプ50及び各電磁弁V1〜V7が制御され、各第1エアーセル10の底付きが回避されるようになっている。
【0037】
ここで、制御装置70は、図10及び図11に示すように、各制御モードまたは異常モードに対応するように各ランプ81,82,83の作動パターン及び警報装置88の作動パターンを記憶しており、これらの作動パターンに従って各ランプ81,82,83及び警報装置88を作動させるようになっている。即ち、各ランプ81,82,83は何れの制御モードまたは異常モードであるかを表示する表示部として機能する。
【0038】
例えば、着座者が着座した後に、スタートスイッチ85が操作されると、制御装置70は、各エアーセル10のうち何れか1つのエアーセル10の潰れ量が所定量以上になるまで各エアーセル10,20内の空気を減少させた後、各エアーセル10,20内に所定量または所定時間だけ空気を供給し、その状態を所定時間だけ維持する。この制御モードは図10中のスタティック制御であり、制御装置70は、スタティック制御中は第1ランプ81を点灯させるとともに、第2及び第3ランプ82,83を消灯させ、警報装置88を作動させない。
【0039】
また、スタティック制御が終了すると、制御装置70は、第1エアーセル群G1の空気量を所定時間だけ減少させた後、第1エアーセル群G1に所定量または所定時間だけ空気を供給する。この制御モードは図10中のオルタナティブ制御1であり、制御装置70は、オルタナティブ制御1中は第2ランプ82を点灯させるとともに、第1及び第3ランプ81,83を消灯させ、警報装置88を作動させない。
【0040】
また、オルタナティブ制御1が終了すると、制御装置70は、第2エアーセル群G2の空気量を所定時間だけ減少させた後、第2エアーセル群G2に所定量または所定時間だけ空気を供給する。この制御モードは図10中のオルタナティブ制御2であり、制御装置70は、オルタナティブ制御2中は第3ランプ83を点灯させるとともに、第1及び第2ランプ81,82を消灯させ、警報装置88を作動させない。
【0041】
一方、前記各制御モード中やその他の場合に、空気圧センサ53の検出結果が所定圧力以下となっている状態で、電動エアーポンプ50が連続して所定時間以上作動している場合(図11中の低圧異常の場合)は、制御装置70は、第1〜第3ランプ81,82,83を全て点灯させるとともに、警報装置88に「ピーピー」という音を出力させる。
【0042】
また、前記各制御モード中やその他の場合に、空気圧センサ53の検出結果が所定時間以上に亘って所定圧力以上になっている場合(図11中の高圧異常の場合)は、制御装置70は、第1〜第3ランプ81,82,83を全て消灯させるとともに、警報装置88に「ピピッ」という音を出力させる。
【0043】
また、前記各制御モード中やその他の場合に、各第1エアーセル10のうち少なくとも1つ以上の第1エアーセル10の潰れ量が所定量以上であることが検知され、その検知が継続して所定時間以上連続している場合(図11中の底付き異常の場合)は、制御装置70は、第1〜第3ランプ81,82,83を全て点滅させるとともに、警報装置88に「ピー」という音を出力させる。
【0044】
一方、制御装置70は、各バッテリーBAの蓄電量に対応するように第4ランプ84の作動パターン及び警報装置88の作動パターンを記憶しており、これらの作動パターンに従って第4ランプ84及び警報装置88を作動させるようになっている。
【0045】
例えば、各バッテリーBAの蓄電量が最大蓄電量の20%を超えている場合は、制御装置70は第4ランプ84を消灯させるとともに、警報装置88を作動させず、各バッテリーBAの蓄電量が最大蓄電量の20%以下になると、制御装置70は第4ランプ84を橙色に点灯させるとともに、警報装置88を作動させず、バッテリーBAの蓄電量が最大蓄電量の10%以下になると、制御装置70は第4ランプ84を赤色で点滅させるとともに、警報装置88に「ピッピッピ」という音を出力させる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、ベース部材40の前端且つ着座面幅方向の一端側に各ランプ81,82,83,84を設けていることから、着座者が着座した際に両大腿部のうち一方の下側近傍に各ランプ81,82,83,84が配置され、着座者は少し屈むことにより各ランプ81,82,83,84を容易に視認することができ、介護者も着座面の前方から各ランプ81,82,83,84を容易に視認することができる。
【0047】
ここで、ベース部材40における後端や着座面幅方向の両端に各ランプ81,82,83,84を設けると、車椅子の背面支持部やアームレスト等によって各ランプ81,82,83,84が見えなくなる場合があり、また、ベース部材40における前端の着座面幅方向の中央側に各ランプ81,82,83,84を設けると、スカート等によって各ランプ81,82,83,84が見え難くなる場合があるが、ベース部材40の前端且つ着座面幅方向の外側に各ランプ81,82,83,84を設けることにより、これらの問題を解決することができる。また、着座者が屈めない場合でも、手鏡等を使用して各ランプ81,82,83,84を容易に視認することができる。
【0048】
また、各エアーセル10,20内の空気量を調整するためにベース部材40に電動エアーポンプ50及び各電磁バルブV1〜V7が設けられるとともに、電動エアーポンプ50及び各電磁バルブV1〜V7を制御する制御装置70が設けられ、さらに、制御装置70の制御モードまたは異常モードを表示する表示部が数個(本実施形態では3個)のランプ81,82,83から構成され、制御装置70によって各ランプ81,82,83の作動が制御される。このため、図10,11に示すように、各ランプ81,82,83の作動パターンを複数種類設定するとともに、各作動パターンにクッションの制御モードや異常モードを対応させ、各ランプ81,82,83を制御モードや異常モードに応じた作動パターンで作動させることが可能である。従って、着座者や介護者がクッションの作動状態を容易且つ確実に把握することができる。
【0049】
さらに、複数種類の音を出力可能な警報装置88を設けるとともに、図10,11に示すように警報装置88の各音にクッションの制御モードや異常モードを対応させ、各ランプ81,82,83及び警報装置88を制御モードや異常モードに応じた作動パターンで作動させることができるので、各ランプ81,82,83の場合と比較して着座者や介護者がクッションの作動状態をより容易且つ確実に把握することが可能となる。
【0050】
また、各ランプ81,82,83が互いに異なる色に発光することから、各ランプ81,82,83を直接視認しなくても各ランプ81,82,83の作動パターンを把握することが可能であり,着座者や介護者がクッションの作動状態を容易且つ確実に把握する上で極めて有利である。
【0051】
また、連通パイプまたは空気通路40c内の空気圧を検出する空気圧センサ53を設け、空気圧センサ53の検出結果及び電動エアーポンプ50の作動状態に基づいて制御装置70が各ランプ81,82,83の作動を制御することから、例えば各エアーセル10,20から空気漏れが生じた場合は、図11における低圧異常となり、各ランプ81,82,83が全て点灯する。従って、着座者や介護者がクッションの異常を容易且つ確実に把握することができる。尚、本実施形態では、空気圧センサ53の検出結果及び電動エアーポンプ50の作動状態に基づいて制御装置70が各ランプ81,82,83の作動を制御するものを示したが、空気圧センサ53の検出結果のみに基づいて制御装置70が各ランプ81,82,83の作動を制御する場合でも、前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0052】
さらに、空気圧センサ53の検出結果及び電動エアーポンプ50の作動状態に基づいて制御装置70が警報装置88の作動を制御することから、例えば各エアーセル10,20から空気漏れが生じた場合は、図11における低圧異常となり、各ランプ81,82,83が全て点灯するとともに、警報装置88が「ピーピー」という警報音を発する。即ち、着座者や介護者はクッションの異常の把握をより容易且つ確実に行うことができる。尚、本実施形態では、空気圧センサ53の検出結果及び電動エアーポンプ50の作動状態に基づいて制御装置70が警報装置88の作動を制御するものを示したが、空気圧センサ53の検出結果のみに基づいて制御装置70が警報装置88の作動を制御する場合でも、前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0053】
また、各バッテリーBAの蓄電量に基づいて制御装置70が第4ランプ84の作動を制御することから、バッテリーBAの蓄電量を容易且つ確実に把握することができる。
【0054】
さらに、各バッテリーBAの蓄電量に基づいて制御装置70が警報装置88の作動を制御することから、バッテリーBAの蓄電量をより容易且つ確実に把握することができる。
【0055】
また、各第1エアーセル10の潰れ量が所定量以上になったことを検知し、その検知結果に基づいて制御装置70が各ランプ81,82,83の作動を制御することから、例えば少なくとも1つ以上の第1エアーセル10の潰れ量が所定量以上であることが検知され、その検知が継続して所定時間以上連続している場合は、底付き異常となり、第1〜第3ランプ81,82,83の全てが点滅する。従って、着座者や介護者は底付き異常の発生を容易且つ確実に把握することができる。
【0056】
さらに、各第1エアーセル10の潰れ量が所定量以上になったことを検知し、その検知結果に基づいて制御装置70が警報装置88の作動を制御することから、例えば少なくとも1つ以上の第1エアーセル10の潰れ量が所定量以上であることが検知され、その検知が継続して所定時間以上連続している場合は、底付き異常となり、第1〜第3ランプ81,82,83の全てが点滅するとともに、警報装置88が「ピー」とう警告音を発する。即ち、着座者や介護者は底付き異常の発生をより容易且つ確実に把握することができる。
【0057】
また、クッションカバー100の前端に透光部102aを設け、収納されたクッション本体1のベース部材40の前端に設けられた各ランプ81,82,83,84が透光部102aを介して外部から視認可能であることから、着座者や介護者がクッションの作動状態を容易且つ確実に把握する上で極めて有利である。
【0058】
尚、本実施形態では、各ランプ81,82,83,84をLEDから構成したものを示したが、各ランプ81,82,83,84を周知の他の発光体から構成することも可能である。
【0059】
また、本実施形態では、中空部41内に制御装置70を設けたものを示したが、制御装置70をクッション本体1と別体で設けるとともに、クッションカバー100内に収納することも可能である。
【0060】
尚、本実施形態では、クッションカバー100を設けたものを示したが、クッションカバー100を設けずにクッションをクッション本体1から構成することも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0061】
また、本実施形態では、各第1エアーセル10の潰れ量が所定量以上になったことを弾性部材42、薄膜部40e及びセンサ43によって検知するものを示したが、各第1エアーセル10の潰れ量が所定量以上になったことを周知の他の底付き検知センサによって検知することも可能である。
【0062】
尚、本実施形態では、弾性部材42をゴム状弾性を有する材料から形成したものを示したが、弾性部材42を金属製のコイルスプリングから形成することも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0063】
また、本実施形態では、各バッテリーBAから各ランプ81,82,83,84に電力を供給したものを示したが、各バッテリーBAとは別に各ランプ81,82,83,84に電力を供給する電池を設けることも可能である。
【0064】
尚、本実施形態では、カバー上面102に開口部を設けるとともに、透明なプラスチック等の透光性を有する部材によって開口部を閉鎖することにより、透光部102aを形成したものを示した。これに対し、透明なプラスチック等の透光性を有する部材を設けずに、カバー上面102に開口部を設けるだけでも、透光部102aを形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明における一実施形態を示すベース部材の要部斜視図
【図2】クッション本体の正面図
【図3】クッション本体の平面図
【図4】図3におけるA−A線断面図
【図5】底面カバーを取外した状態のクッション本体の底面図
【図6】クッション本体の要部断面図
【図7】クッションの斜視図
【図8】クッションの配管を示す概略図
【図9】クッションのブロック図
【図10】制御モードと第1乃至第3ランプ及び警報装置の作動との関係を示す表
【図11】異常モードと第1乃至第3ランプ及び警報装置の作動との関係を示す表
【図12】各バッテリーの蓄電量と第4ランプ及び警報装置の作動との関係を示す表
【符号の説明】
【0066】
1…クッション本体、10…第1エアーセル、20…第2エアーセル、30…前端側支持部材、40…ベース部材、40a…上側ベース部材、40b…下側ベース部材、40c…空気通路、40d…前側部分、40e…薄膜部、40f…前端開口部、41…中空部、42…弾性部材、43…センサ、50…電動エアーポンプ、70…制御装置、80…操作ユニット、81…第1ランプ、82…第2ランプ、83…第3ランプ、84…第4ランプ、85…スタートスイッチ、88…警報装置、100…クッションカバー、101…カバー底面、102…カバー上面、102a…透光部、103…ファスナー、V1〜V7…電磁弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエアーセルと、各エアーセルを支持するベース部材と、各エアーセル内の空気量を調整するためにベース部材に設けられたエアーポンプ及びバルブと、エアーポンプ、バルブ及び各エアーセルを連通させる連通手段と、エアーポンプ及びバルブを制御する制御装置とを備え、所定の着座面に載置されて使用されるクッションにおいて、
前記ベース部材の前端且つ着座面幅方向の一端側または他端側に表示部を設け、
表示部を数個のランプから構成するとともに、制御装置によって各ランプの作動が制御されるように構成した
ことを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記表示部の各ランプを互いに異なる色に発光するように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記エアーセル内や連通手段内の空気圧を検出する空気圧センサを設け、
空気圧センサの検出結果に基づいて制御装置が表示部の各ランプの作動を制御するように構成した
ことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のクッション。
【請求項4】
前記ベース部材に複数種類の音を出力可能な警報装置を設け、
空気圧センサの検出結果に基づいて制御装置が警報装置の作動を制御するように構成した
ことを特徴とする請求項3に記載のクッション。
【請求項5】
前記エアーセル内や連通手段内の空気圧を検出する空気圧センサを設け、
空気圧センサの検出結果及びエアーポンプの作動状態に基づいて制御装置が表示部の各ランプの作動を制御するように構成した
ことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のクッション。
【請求項6】
前記ベース部材に複数種類の音を出力可能な警報装置を設け、
空気圧センサの検出結果及びエアーポンプの作動状態に基づいて制御装置が警報装置の作動を制御するように構成した
ことを特徴とする請求項5に記載のクッション。
【請求項7】
前記エアーポンプ、バルブ及び制御装置に作動電流を供給するバッテリーを設け、
バッテリーの蓄電量に基づいて制御装置が表示部の各ランプの作動を制御するように構成した
ことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のクッション。
【請求項8】
前記ベース部材に複数種類の音を出力可能な警報装置を設け、
バッテリーの蓄電量に基づいて制御装置が警報装置の作動を制御するように構成した
ことを特徴とする請求項7に記載のクッション。
【請求項9】
前記各エアーセルのうち少なくとも一部のエアーセルに設けられ、そのエアーセルの潰れ量が所定量以上になったことを検知可能な潰れ量検知手段を備え、
潰れ量検知手段の検知結果に基づいて制御装置が表示部の各ランプの作動を制御するように構成した
ことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のクッション。
【請求項10】
前記ベース部材に複数種類の音を出力可能な警報装置を設け、
潰れ量検知手段の検知結果に基づいて制御装置が警報装置の作動を制御するように構成した
ことを特徴とする請求項9に記載のクッション。
【請求項11】
前記各エアーセル、ベース部材及び制御装置を収納するクッションカバーを備え、
クッションカバーの前端に透光部を設け、
収納されたベース部材の前端の表示部が透光部を介して外部から視認可能となるように構成した
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9または10の何れかに記載のクッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−46141(P2010−46141A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210897(P2008−210897)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】