説明

クラゲコラーゲンを含む免疫活性増強剤

【課題】入手が比較的容易な原料を用いて免疫活性を増強させつつ、アレルギー応答に影響を及ぼさない免疫活性増強剤を提供すること。
【解決手段】
[1]クラゲコラーゲンを含むことを特徴とする、免疫活性増強剤。
[2]前記免疫活性増強剤が免疫細胞数増加促進剤であって、前記免疫細胞が、パイエル板リンパ球、腸間膜リンパ節リンパ球および脾臓リンパ球からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]に記載の免疫活性増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫活性増強剤に関し、さらに詳しくはコラーゲンを含む免疫活性増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体においては、抗原が体内へ侵入したときにこれらを特異的に排除する反応が免疫系において起こる。これは免疫応答と呼ばれ、生態防御機構の1つとして知られている。
【0003】
免疫応答には体液性免疫と細胞性免疫とがあるが、この免疫応答は、上記の抗原に特異的であること、反応し得る抗原の種類が10という膨大な数に上ること、一度侵入した抗原に対しての記憶が残ること(免疫記憶)、応答が自律的に終息すること、そして自らが有している抗原物質に対しては反応しないこと(免疫寛容)といった特徴を備えている。
【0004】
例えば、個体が、ある細菌という抗原に初めて接すると、免疫系の細胞がこの抗原を認識し、この結果、この細菌に対する免疫反応が惹起されることになる。場合によっては、寛容(トレランス)になったりもする。
【0005】
上記の細菌は一次抗原であり、一次抗原刺激に対しては、5つあるヒトの免疫グロブリン(以下、「Ig」ということがある)のクラスのうち、まず、IgMクラスの抗体が産生され(一次応答)、これが大勢を占める。一方、この細菌に次に接した場合には、これは二次抗原刺激となり、IgGクラスの抗体が優位に産生される(二次応答)ことが知られている。
【0006】
一次応答と二次応答とを比較してみると、二次応答における抗原と抗体との親和力は、一次応答における親和力よりも遙かに高く、アフィニティ・マチュレーションが起こっている(非特許文献1)。
【0007】
免疫応答においてこうした一次応答と二次応答とが起こることを利用した病気の予防として、各種ワクチンの接種が行われているが、 一回の接種では十分な免疫記憶が形成されないため、複数回の接種が必要とされることがある。そして、二回目の接種の際にアナフィラキシーが起こることもある。アナフィラキシーはアレルギー反応の一種であり、免疫応答の一つの表れであるが、急速で激しい症状を呈する問題がある。
【0008】
この一方、免疫に関連するコラーゲンの活用例として、慢性関節リウマチ等の免疫系媒介疾患の治療のための粘膜結合性分子成分に結合されたコラーゲン分子成分を含んでなる自己免疫疾患治療用化合物が知られている。
【0009】
しかしながらかかるコラーゲンは細菌のトキシン等に結合されている特殊なものである上に、慢性関節リウマチ等の特定の免疫系媒介疾患に効用が示唆されるに過ぎず、その応用範囲が限定的であるとの問題があった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表平10−512554号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】免疫学イラストレイテッド 87頁 南江堂 1986年4月25日 第6刷発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の背景に加えて疾病予防の観点から、アナフィラキシー等の望ましくない免疫応答を回避しつつ、免疫応答能、すなわち免疫活性を高めることは医療医薬分野の関係者から強く要望されている。
【0013】
しかしながら望ましくない免疫応答を回避しつつ、免疫活性を高めることを可能とする有効成分を見つけることは容易ではなく、さらにはその有効成分が見つかったとしても、その有効成分を入手することが困難な場合や大量生産することが困難な場合にはその活用の範囲が制限されることになる。
【0014】
本発明の目的は、入手が比較的容易な原料を用いて免疫活性を増強させつつ、アレルギー応答に影響を及ぼさない免疫活性増強剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、動物由来コラーゲンや植物由来コラーゲン等の中でも、クラゲコラーゲンを含む免疫活性増強剤が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、
[1]クラゲコラーゲンを含むことを特徴とする、免疫活性増強剤を提供するものである。
【0017】
また本発明は、
[2]前記免疫活性増強剤が、免疫細胞数増加促進剤であって、
前記免疫細胞が、パイエル板リンパ球、腸間膜リンパ節リンパ球および脾臓リンパ球からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]に記載の免疫活性増強剤を提供するものである。
【0018】
また本発明は、
[3]前記免疫活性増強剤が、免疫グロブリン産生促進剤であって、
前記免疫グロブリンが、免疫グロブリンA、免疫グロブリンGおよび免疫グロブリンMからなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]に記載の免疫活性増強剤を提供するものである。
【0019】
また本発明は、
[4]前記免疫グロブリン産生促進剤が、パイエル板リンパ球の免疫グロブリン産生促進剤、腸間膜リンパ節リンパ球の免疫グロブリン産生促進剤および脾臓リンパ球の免疫グロブリン産生促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[3]に記載の免疫活性増強剤を提供するものである。
【0020】
また本発明は、
[5]前記免疫グロブリン産生促進剤が、血液中の免疫グロブリン産生促進剤である、上記[3]に記載の免疫活性増強剤を提供するものである。
【0021】
また本発明は、
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の免疫活性増強剤を含む食品を提供するものである。
【0022】
また本発明は、
[7]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の免疫活性増強剤からなる、食品添加剤を提供するものである。
【0023】
また本発明は、
[8]免疫活性増強用クラゲコラーゲンを提供するものである。
【0024】
また本発明は、
[9]クラゲコラーゲンを経口摂取させることによる、動物の免疫活性増強方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の免疫活性増強剤を経口摂取することにより、免疫細胞数として、例えば、パイエル板リンパ球、腸間膜リンパ節リンパ球、脾臓リンパ球等のリンパ球の増加を促進し、前記リンパ球や血液中のIgG、IgAおよびIgM等の免疫グロブリンの産生を促進することができる。
【0026】
また本発明に使用するクラゲコラーゲンは、海中から大量に安価で入手することができるクラゲから簡便に得ることができるから、本発明の免疫活性増強剤を経済効率よく大量供給することが可能である。
【0027】
さらには、クラゲコラーゲンはアレルギー応答の促進性が低いため、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】クラゲコラーゲンの添加量とパイエル板リンパ球のIgA産生量との関係を示すグラフである(実施例3)。
【図2】クラゲコラーゲンの添加量と腸間膜リンパ節リンパ球のIgA産生量との関係を示すグラフである(実施例4)。
【図3】クラゲコラーゲンの添加量と脾臓リンパ球のIgG産生量との関係を示すグラフである(実施例5)。
【図4】クラゲコラーゲンの添加量と脾臓リンパ球のIgA産生量との関係を示すグラフである(実施例6)。
【図5】クラゲコラーゲンの添加量と脾臓リンパ球のIgM産生量との関係を示すグラフである(実施例7)。
【図6】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン経口摂取による脾臓リンパ球のIgG産生量との関係を示すグラフである(実施例8)。
【図7】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン経口摂取による脾臓リンパ球のIgA産生量を示すグラフである(実施例9)。
【図8】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン経口摂取による脾臓リンパ球のIgM産生量を示すグラフである(実施例10)。
【図9】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン1ヶ月連続経口摂取後の脾臓リンパ球の卵白アルブミン特異的IgG量を示すグラフである(実施例11)。
【図10】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン1ヶ月連続経口摂取後の脾臓リンパ球の卵白アルブミン特異的IgA量を示すグラフである(実施例12)。
【図11】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン1ヶ月連続経口摂取後の脾臓リンパ球の卵白アルブミン特異的IgM量を示すグラフである(実施例13)。
【図12】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン1ヶ月連続経口摂取後の血液中のIgG量を示すグラフである(実施例14)。
【図13】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン1ヶ月連続経口摂取後の血液中のIgA量を示すグラフである(実施例15)。
【図14】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン1ヶ月連続経口摂取後の血液中のIgM量を示すグラフである(実施例16)。
【図15】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン1ヶ月連続経口摂取後の血液中のIgE量を示すグラフである(比較例17、18)。
【図16】卵白アルブミンによる免疫感作後のマウスについてクラゲコラーゲン1ヶ月連続経口摂取後の血液中の卵白アルブミン特異的IgE量を示すグラフである(比較例19、20)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初に本発明に使用するクラゲについて説明する。
前記根口クラゲ目や前記旗口クラゲ目に属する食用のクラゲとしては、具体的には、タコクラゲ、エビクラゲ、ビゼンクラゲ、エチゼンクラゲ、サカサクラゲ、ミズクラゲ、ユウレイクラゲ、アカクラゲ等を挙げることができる。
【0030】
本発明に使用する前記クラゲは、エチゼンクラゲ、ミズクラゲ、ホワイトタイプクラゲ、チャイナタイプクラゲ、セミチャイナタイプクラゲ、キャノンボールタイプクラゲ、ボールタイプクラゲ等が好ましい。
【0031】
前記クラゲは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0032】
上述したクラゲは、海中から水揚げしたものをそのまま本発明の原料として使用することもできるし、水揚げ後、前記クラゲを食塩、ミョウバン、重炭酸ナトリウムを用いて処理し、最終的に塩分濃度16〜17%の塩蔵品としたクラゲ等を本発明の原料として使用するこもできる。
【0033】
塩蔵品を使用する場合には、前記塩蔵品を水に漬けて塩抜きし、水切りを行い、この水切り後のクラゲを使用することが好ましい。
【0034】
まず前記クラゲから温水によりコラーゲンを抽出する方法について説明する。
前記温水によりコラーゲンを抽出する操作の前に、前記クラゲは細かく刻んでおくことが好ましい。
前記クラゲを細かく刻む方法としては、例えば、前記クラゲを裁断機、ミンチ機、サイレン、カッター等の一種もしくは二種以上の装置を用いて行う方法を挙げることができる。
【0035】
次に前記クラゲに対し、水切りした後の前記クラゲの重量を基準として、1/10〜30倍、好ましくは1/3〜1倍の範囲の重量の温水により抽出する。
前記温水の温度範囲は、60〜150℃が好ましく、70〜130℃の範囲がより好ましく、90〜125℃の範囲であればさらに好ましい。
100℃以上の温水は、加圧釜等を用いて容器内部の圧力を1気圧以上に設定する等の方法により得ることができる。
【0036】
前記クラゲから温水によりコラーゲンを抽出する時間は、5分〜6時間の範囲であることが好ましく、30分〜2時間の範囲であればさらに好ましい。
【0037】
上記温水による抽出操作の後、不溶分を濾過により除く。
得られた抽出液からスプレードライによる方法、凍結乾燥による方法等により水分を除去することにより、本発明に使用するクラゲコラーゲンを得ることができる。
【0038】
前記抽出液から水分を除去する際には、予め浸透膜等を利用した逆浸透操作、蒸留操作等の方法により前記抽出液を濃縮する操作を実施することができる。
【0039】
また上記温水による抽出操作の後、硫酸アンモニウム等の無機塩を使用して塩析によりクラゲコラーゲンを沈殿させる方法によってもクラゲコラーゲンを得ることができる。
沈殿したクラゲコラーゲンを、遠心分離、濾過等の方法により分離することができる。
【0040】
なお、塩析に使用する硫酸アンモニウム等は飽和量を100%として20〜50%の範囲の水溶液を使用することが好ましく、45〜50%の範囲の水溶液であればさらに好ましい。
【0041】
この様にして得られたクラゲコラーゲンにより本発明の免疫活性増強剤を得ることができる。
【0042】
本発明に使用するクラゲコラーゲンは、粉末状、顆粒状、ペレット状、タブレット状等に成形したり、カプセル錠等に加工したり、水溶液等の液体等として提供することができる。
【0043】
本発明の免疫活性増強剤は、クラゲコラーゲンからなるものであってもよいし、クラゲコラーゲンと水とを含むものであってもよいし、さらにビタミン類、無機塩類等の滋養強壮成分等を含むものであってもよい。
【0044】
前記クラゲコラーゲンは免疫活性増強用食品として使用することができる。また、加工食品や調理品等の食品に対する免疫活性増強用添加剤として前記クラゲコラーゲンを使用することもできる。
【0045】
さらに前記クラゲコラーゲンは、人間のみならず、人間以外の動物、例えば、牛、豚、鳥、馬等の家畜動物、犬、猫等の愛玩動物、鰹、鮪、鯖、鰯等の養殖動物等に対して経口摂取させることにより、家畜動物、愛玩動物、養殖動物等の免疫細胞数を増加させ、免疫グロブリンの産生を促進することにより免疫活性を高めることもできる。
【0046】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
水洗したミズクラゲを包丁により裁断し、さらにミキサーにより細かく裁断した後、加圧調理器に細かく裁断したミズクラゲと水を入れて、121℃の温度で20分間加熱した。
【0048】
不溶物を濾過により除去し、得られた水溶液のうち、飽和量に対して50%の硫酸アンモニウムを加えて、クラゲコラーゲンを塩析した。沈殿物を遠心分離により分離してクラゲコラーゲンを得た。
【0049】
次にマウス(BALB/c)に対して前記クラゲコラーゲン水溶液を一週間経口摂取させた。この量はヒトに換算すると、10mg/mLの前記クラゲコラーゲン水溶液を一日30mL服用する量に相当する。
【0050】
次に前記マウスから摘出したパイエル板の免疫組織から免疫細胞であるパイエル板リンパ球を分離し、前記パイエル板リンパ球数を血球計算盤にて数えた。その結果、前記パイエル板リンパ球数は3.8×10 cells/mLであった。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【実施例2】
【0052】
実施例1の場合で前記パイエル板の免疫組織に代えて、腸間膜リンパ節の免疫組織を用いて同様に実験を行った。その結果、前記腸間膜リンパ節リンパ球数は5.3×10 cells/mLであった。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を表1に示す。
【0053】
[比較例1]
実施例1の場合で、前記マウスに前記クラゲコラーゲンを与えなかった他は全く同様に実験を行った。その結果、前記パイエル板リンパ球数は2.4×10 cells/mLであった。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を表1に示す。
【0054】
[比較例2]
実施例1の場合で、前記マウスに前記クラゲコラーゲンを与えなかった他は全く同様に実験を行った。その結果、前記腸間膜リンパ節リンパ球数は3.9×10 cells/mLであった。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を表1に示す。
【実施例3】
【0055】
免疫グロブリン産生促進について免疫細胞を後述する条件にて培養し、免疫グロブリンの産生量を指標として評価した。免疫グロブリンの産生量は、抗ヒト免疫グロブリン抗体(バイオソース社製)等を用いた酵素抗体法により測定した。
また、この細胞の培養には、EDRF培地を極東製薬工業社より購入して使用した。
【0056】
上述した実施例1で調製したクラゲコラーゲン水溶液を、図1に示される濃度になるよう、リン酸緩衝液を用いて希釈した。段階希釈した各試料100μLを、あらかじめ用意した96穴培養プレートの各穴にそれぞれ分注した。
【0057】
ついで、以下のようにして培地を調製した。すなわち、EDRF粉末17.7gを500mLの蒸留水に溶解し、2μg/mLのコンカナバリンAおよび5%ウシ胎児血清を添加した培地10mL以上を用いて、免疫細胞としてのパイエル板リンパ球を2.0×10 cells/mLに調製した。このパイエル板リンパ球を含む培地を、上記のプレートの各穴に100μLずつ分注した。
【0058】
これらのプレートを5%COインキュベータ中、37℃にて24時間培養し、培養上清中のIgAの産生量を、上述した抗ヒト抗体を用いた酵素抗体法により測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図1に示す(図1の参照符号1)。
クラゲコラーゲンの濃度が2〜1000μg/mLの範囲でIgAの産生量が増加した。
【実施例4】
【0059】
実施例3の場合で、腸間膜リンパ節リンパ球を用いて培養上清中のIgAの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図2に示す(図2の参照符号3)。
クラゲコラーゲンの濃度が2〜1000μg/mLの範囲でIgAの産生量が増加した。
【0060】
[比較例3]
前記クラゲコラーゲン水溶液を添加しなかった他は実施例3の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のIgAの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図1に示す(図1の参照符号2)。
【0061】
[比較例4]
前記クラゲコラーゲン水溶液を添加しなかった他は実施例4の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のIgAの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図2に示す(図2の参照符号4)。
【実施例5】
【0062】
実施例3の場合で、免疫細胞としてのパイエル板リンパ球に代えて、脾臓リンパ球を2.0×10 cells/mLに調製したものを使用した他は実施例3の場合と同様に実験を行い、培養上清中のIgGの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図3に示す(図3の参照符号5)。
【0063】
クラゲコラーゲンの濃度が1〜1000μg/mLの範囲でIgGの産生量が増加した。
【実施例6】
【0064】
実施例3の場合で、免疫細胞としてのパイエル板リンパ球に代えて、脾臓リンパ球を2.0×10 cells/mLに調製したものを使用した他は実施例3の場合と同様に実験を行い、培養上清中のIgAの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図4に示す(図4の参照符号7)。
【0065】
クラゲコラーゲンの濃度が100〜800μg/mLの範囲でIgAの産生量が増加した。
【実施例7】
【0066】
実施例3の場合で、免疫細胞としてのパイエル板リンパ球に代えて、脾臓リンパ球を2.0×10 cells/mLに調製したものを使用した他は実施例3の場合と同様に実験を行い、培養上清中のIgMの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図5に示す(図5の参照符号9)。
【0067】
クラゲコラーゲンの濃度が1〜1000μg/mLの範囲でIgAの産生量が増加した。
【0068】
[比較例5]
前記クラゲコラーゲン水溶液を添加しなかった他は実施例5の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のIgGの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図3に示す(図3の参照符号6)。
【0069】
[比較例6]
前記クラゲコラーゲン水溶液を添加しなかった他は実施例6の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のIgAの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図4に示す(図4の参照符号8)。
【0070】
[比較例7]
前記クラゲコラーゲン水溶液を添加しなかった他は実施例7の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のIgMの産生量を測定した。実験には3匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図5に示す(図5の参照符号10)。
【実施例8】
【0071】
実施例5の場合で、前記マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を120μg/献体の量を毎日連続して経口摂取により26日間与えた。経口摂取開始後一週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて一回目の免疫感作を行った。次に経口摂取開始後三週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて二回目の免疫感作を行った。二回目の免疫感作後、5日後に脾臓を回収した。
この脾臓リンパ球の抗体産生能について、培養液中にクラゲコラーゲン水溶液を添加せずに実験を行い、培養上清中のIgGの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図6に示す(図6の参照符号11)。
【実施例9】
【0072】
実施例6の場合で、前記マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を120μg/献体の量を毎日連続して経口摂取により26日間与えた。経口摂取開始後一週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて一回目の免疫感作を行った。次に経口摂取開始後三週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて二回目の免疫感作を行った。二回目の免疫感作後、5日後に脾臓を回収した。
この脾臓リンパ球の抗体産生能について、培養液中にクラゲコラーゲン水溶液を添加せずに実験を行い、培養上清中のIgAの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図7に示す(図7の参照符号13)。
【実施例10】
【0073】
実施例7の場合で、前記マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を120μg/献体の量を毎日連続して経口摂取により26日間与えた。経口摂取開始後一週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて一回目の免疫感作を行った。次に経口摂取開始後三週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて二回目の免疫感作を行った。二回目の免疫感作後、5日後に脾臓を回収した。
この脾臓リンパ球の抗体産生能について、培養液中にクラゲコラーゲン水溶液を添加せずに実験を行い、培養上清中のIgMの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図8に示す(図8の参照符号15)。
【0074】
[比較例8]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例8の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のIgGの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図6に示す(図6の参照符号12)。
【0075】
[比較例9]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例9の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のIgAの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図7に示す(図7の参照符号14)。
【0076】
[比較例10]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例10の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のIgMの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図8に示す(図8の参照符号16)。
【実施例11】
【0077】
実施例8の場合で、脾臓リンパ球の卵白アルブミン(OVA)抗原に関する抗体産生能について、培養液中にクラゲコラーゲン水溶液を添加せずに実験を行い、培養上清中のOVA特異的IgGの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図9に示す(図9の参照符号17)。図9の縦軸は吸光計の415nmにおける吸光度を示す。
【実施例12】
【0078】
実施例9の場合で、脾臓リンパ球の卵白アルブミン(OVA)抗原に関する抗体産生能について、培養液中にクラゲコラーゲン水溶液を添加せずに実験を行い、培養上清中のOVA特異的IgAの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図10に示す(図10の参照符号19)。図10の縦軸は吸光計の415nmにおける吸光度を示す。
【実施例13】
【0079】
実施例10の場合で、脾臓リンパ球の卵白アルブミン(OVA)抗原に関する抗体産生能について、培養液中にクラゲコラーゲン水溶液を添加せずに実験を行い、培養上清中のOVA特異的IgMの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図11に示す(図11の参照符号21)。図11の縦軸は吸光計の415nmにおける吸光度を示す。
【0080】
[比較例11]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例11の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のOVA特異的IgGの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図9に示す(図9の参照符号18)。
【0081】
[比較例12]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例12の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のOVA特異的IgAの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図10に示す(図10の参照符号20)。
【0082】
[比較例13]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例13の場合と全く同様の実験を行い、培養上清中のOVA特異的IgMの産生量を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図11に示す(図11の参照符号22)。
【実施例14】
【0083】
前記マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を120μg/献体の量を毎日連続して経口摂取により26日間与えた。経口摂取開始後一週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて一回目の免疫感作を行った。次に経口摂取開始後三週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて二回目の免疫感作を行った。二回目の免疫感作後、5日後に血液を採取した。この血液中のIgGの濃度を上述した抗ヒト抗体を用いた酵素抗体法により測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図12に示す(図12の参照符号23)。
【実施例15】
【0084】
前記マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を120μg/献体の量を毎日連続して経口摂取により26日間与えた。経口摂取開始後一週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて一回目の免疫感作を行った。次に経口摂取開始後三週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて二回目の免疫感作を行った。二回目の免疫感作後、5日後に血液を採取した。この血液中のIgAの濃度を上述した抗ヒト抗体を用いた酵素抗体法により測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図13に示す(図13の参照符号25)。
【実施例16】
【0085】
前記マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を120μg/献体の量を毎日連続して経口摂取により26日間与えた。経口摂取開始後一週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて一回目の免疫感作を行った。次に経口摂取開始後三週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて二回目の免疫感作を行った。二回目の免疫感作後、5日後に血液を採取した。この血液中のIgMの濃度を上述した抗ヒト抗体を用いた酵素抗体法により測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図14に示す(図14の参照符号27)。
【0086】
[比較例14]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例14の場合と全く同様の実験を行い、前記マウスの血液中のIgGの濃度を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図12に示す(図12の参照符号24)。
【0087】
[比較例15]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例15の場合と全く同様の実験を行い、前記マウスの血液中のIgAの濃度を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図13に示す(図13の参照符号26)。
【0088】
[比較例16]
前記クラゲコラーゲン水溶液をマウスに経口摂取させなかった他は、実施例16の場合と全く同様の実験を行い、前記マウスの血液中のIgMの濃度を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図14に示す(図14の参照符号28)。
【0089】
[比較例17]
一般には抗原としての卵白アルブミン(OVA) により、アレルギー抗体であるIgEの産生が誘発される。クラゲコラーゲンがアレルギー応答まで促進するかどうかについて確認を行った。
【0090】
前記マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を120μg/献体の量を毎日連続して経口摂取により26日間与えた。経口摂取開始後一週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて一回目の免疫感作を行った。次に経口摂取開始後三週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて二回目の免疫感作を行った。二回目の免疫感作後、5日後に血液を採取した。
このマウスの血液中のIgEの濃度を上述した抗ヒト抗体を用いた酵素抗体法により測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図15に示す(図15の参照符号29)。
【0091】
[比較例18]
比較例17の場合で、マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を与えなかった他は全く同様に実験を行い、マウスの血液中のIgEの濃度を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図15に示す(図15の参照符号30)。
【0092】
[比較例19]
前記マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を120μg/献体の量を毎日連続して経口摂取により26日間与えた。経口摂取開始後一週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて一回目の免疫感作を行った。次に経口摂取開始後三週間目に卵白アルブミン(OVA)0.1mg/検体を与えて二回目の免疫感作を行った。二回目の免疫感作後、5日後に血液を採取した。
このマウスの血液中のOVA特異的IgEの濃度を上述した抗ヒト抗体を用いた酵素抗体法により測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図16に示す(図16の参照符号31)。
【0093】
[比較例20]
比較例19の場合で、マウスに前記クラゲコラーゲン水溶液を与えなかった他は全く同様に実験を行い、マウスの血液中のOVA特異的IgEの濃度を測定した。実験には6匹の前記マウスを使用した。その平均の結果を図16に示す(図16の参照符号32)。
【符号の説明】
【0094】
1 実施例3のIgA産生量
2 比較例3のIgA産生量
3 実施例4のIgA産生量
4 比較例4のIgA産生量
5 実施例5のIgG産生量
6 比較例5のIgG産生量
7 実施例6のIgA産生量
8 比較例6のIgA産生量
9 実施例7のIgM産生量
10 比較例7のIgM産生量
11 実施例8のIgG産生量
12 比較例8のIgG産生量
13 実施例9のIgA産生量
14 比較例9のIgA産生量
15 実施例10のIgM産生量
16 比較例10のIgM産生量
17 実施例11のIgG産生量
18 比較例11のIgG産生量
19 実施例12のIgA産生量
20 比較例12のIgA産生量
21 実施例13のIgM産生量
22 比較例13のIgM産生量
23 実施例14のIgG濃度
24 比較例14のIgG濃度
25 実施例15のIgA濃度
26 比較例15のIgA濃度
27 実施例16のIgM濃度
28 比較例16のIgM濃度
29 比較例17のIgE濃度
30 比較例18のIgE濃度
31 比較例19のIgE濃度
32 比較例20のIgE濃度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラゲコラーゲンを含むことを特徴とする、免疫活性増強剤。
【請求項2】
前記免疫活性増強剤が、免疫細胞数増加促進剤であって、
前記免疫細胞が、パイエル板リンパ球、腸間膜リンパ節リンパ球および脾臓リンパ球からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の免疫活性増強剤。
【請求項3】
前記免疫活性増強剤が、免疫グロブリン産生促進剤であって、
前記免疫グロブリンが、免疫グロブリンA、免疫グロブリンGおよび免疫グロブリンMからなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の免疫活性増強剤。
【請求項4】
前記免疫グロブリン産生促進剤が、パイエル板リンパ球の免疫グロブリン産生促進剤、腸間膜リンパ節リンパ球の免疫グロブリン産生促進剤および脾臓リンパ球の免疫グロブリン産生促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項3に記載の免疫活性増強剤。
【請求項5】
前記免疫グロブリン産生促進剤が、血液中の免疫グロブリン産生促進剤である、請求項3に記載の免疫活性増強剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の免疫活性増強剤を含む食品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の免疫活性増強剤からなる、食品添加剤。
【請求項8】
免疫活性増強用クラゲコラーゲン。
【請求項9】
クラゲコラーゲンを経口摂取させることによる、動物の免疫活性増強方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−173937(P2010−173937A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15059(P2009−15059)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(590006398)マルトモ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】