説明

クラッチユニット

【課題】 連結部材としての内輪に基づいて製品のコスト低減、軽量化および設計自由度の向上を容易に図る。
【解決手段】 レバー操作により出力側への回転トルクの伝達・遮断を制御するレバー側クラッチ部と、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とからなり、レバー側クラッチ部からブレーキ側外輪へ回転トルクを伝達する内輪15は、出力軸の軸部に挿入された筒状部15bと、筒状部15bの軸方向端部を径方向外側に延在させた拡径部15cと、拡径部15cの外周端部を軸方向に屈曲させ、円筒ころおよび板ばねを収容するポケットが円周方向複数箇所に形成された屈曲部15dとで構成され、筒状部15bを金属製とし、かつ、拡径部15cおよび屈曲部15dを樹脂製として筒状部15bと拡径部15cとを接合一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達するレバー側クラッチ部と、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とを有するクラッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、円筒ころやボール等の係合子を用いるクラッチユニットにおいては、入力側部材と出力側部材との間にクラッチ部が配設される。このクラッチ部は、前述の入力側部材と出力側部材間に形成される楔すきまに円筒ころやボール等の係合子を係合・離脱させることによって、回転トルクの伝達・遮断を制御する構成になっている。
【0003】
本出願人は、例えば、レバー操作により座席シートを上下調整する自動車用シートリフタ部に組み込まれ、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達するレバー側クラッチ部と、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とを具備したクラッチユニットを先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図33は前述の特許文献1に開示された従来のクラッチユニットの全体構成を示す縦断面図、図34は図33のD−D線に沿う断面図、図35は図33のE−E線に沿う断面図である。
【0005】
図33および図34に示すように、レバー側クラッチ部111は、レバー操作により回転トルクが入力される入力側部材としてのレバー側外輪114と、そのレバー側外輪114からの回転トルクをブレーキ側クラッチ部112に伝達する連結部材としての内輪115と、レバー側外輪114と内輪115間での係合・離脱によりレバー側外輪114からの回転トルクの伝達・遮断を制御する複数の係合子としての円筒ころ116と、各円筒ころ116を円周方向に所定間隔で保持する保持器117と、回転が拘束された静止側部材としてのブレーキ側外輪123と、保持器117とブレーキ側外輪123の間に設けられ、レバー側外輪114からの回転トルクで弾性力を蓄積し、その回転トルクの開放により、蓄積された弾性力で保持器117を中立状態に復帰させる第一の弾性部材としての内側センタリングばね118と、レバー側外輪114とブレーキ側外輪123の間に設けられ、レバー側外輪114からの回転トルクで弾性力を蓄積し、その回転トルクの開放により、蓄積された弾性力でレバー側外輪114を中立状態に復帰させる第二の弾性部材としての外側センタリングばね119とで主要部が構成されている。
【0006】
なお、図中、113はレバー側外輪114に加締め固定されてレバー側外輪114と共に入力側部材を構成するレバー側側板、131はウェーブワッシャ130を介して出力軸122に取り付けられたワッシャである。このレバー側側板113に操作用のレバー(図示せず)が取り付けられている。
【0007】
一方、図33および図35に示すように、ブレーキ側クラッチ部112は、レバー側クラッチ部111からの回転トルクが入力される連結部材としての内輪115と、回転が拘束された静止側部材としてのブレーキ側外輪123と、回転トルクが出力される出力側部材としての出力軸122と、ブレーキ側外輪123と出力軸122間の楔すきま126に配設され、ブレーキ側外輪123と出力軸122間での係合・離脱により内輪115からの回転トルクの伝達と出力軸122からの回転トルクの遮断を制御する複数対の係合子としての円筒ころ127と、各対の円筒ころ127間に介挿され、それら円筒ころ127同士に離反力を付勢する断面N字形の板ばね128とで主要部が構成されている。
【0008】
なお、図中、124,125はブレーキ側外輪123と共に静止側部材を構成するカバーおよびブレーキ側側板で、ブレーキ側外輪123とカバー124はブレーキ側側板125により一体的に加締め固定される。129はブレーキ側側板125に取り付けられた制動部材としての摩擦リングである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−30634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に開示された従来のクラッチユニットにおいて、レバー側クラッチ部111からブレーキ側クラッチ部112へ回転トルクを伝達する連結部材としての内輪115は、図33および図36(a)(b)に示すように、出力軸122に挿入された筒状部115bと、その筒状部115bの軸方向端部を径方向外側に延在させた拡径部115cと、その拡径部115cの外周端部を軸方向に屈曲させた屈曲部115dとで構成されている。この内輪115の屈曲部115dは、ブレーキ側クラッチ部112の円筒ころ127および板ばね128を収容するポケット115eが円周方向複数箇所に形成され、円筒ころ127を円周方向に所定間隔で保持する保持器として機能する。
【0011】
また、内輪115の拡径部115cに、その円周方向複数箇所に出力軸122の突起122fがクリアランスをもって挿入された孔115fを形成している。このような構造により、レバー側クラッチ部111からブレーキ側クラッチ部112へ回転トルクを伝達するようにしている。つまり、出力軸122のロック解除時、内輪115が回転すると、内輪115の孔115fと出力軸122の突起122fとのクリアランスが詰まって内輪115が出力軸122の突起122fと回転方向で当接することにより、内輪115からの回転トルクが突起122fを介して出力軸122に伝達され、出力軸122が回転する。
【0012】
以上のような構造を具備した内輪115は、従来、筒状部115b、拡径部115cおよび屈曲部115dからなる金属製のプレス一体成形品を使用していた。このような従来の内輪115では、複雑な形状を有することからプレス成形の難易度が高く、製品のコストアップを招く。また、金属製であることから重量が大きくなり、製品の軽量化を困難にしていた。さらに、内輪115を複雑な形状に設計変更することが困難であり、設計自由度が低いという種々の改善点があった。
【0013】
そこで、本発明は前述の改善点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、連結部材としての内輪に基づいて製品のコスト低減、軽量化および設計自由度の向上を容易に図り得るクラッチユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るクラッチユニットは、入力側に設けられ、レバー操作により出力側への回転トルクの伝達・遮断を制御するレバー側クラッチ部と、出力側に設けられ、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とからなる構成を具備する。
【0015】
本発明のクラッチユニットにおけるブレーキ側クラッチ部は、レバー側クラッチ部からの回転トルクが入力される連結部材と、回転が拘束された静止側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、静止側部材と出力側部材間の楔すきまに配設され、両部材間での係合・離脱により入力側からの回転トルクの伝達と出力側からの回転トルクの遮断を制御する複数対の係合子と、各対の係合子間に介挿され、それら係合子同士に離反力を付勢する弾性部材とを備えている。
【0016】
本発明のクラッチユニットにおけるブレーキ側クラッチ部の連結部材は、出力側部材の軸部に挿入された筒状部と、その筒状部の軸方向端部を径方向外側に延在させた拡径部と、その拡径部の外周端部を軸方向に屈曲させ、係合子および弾性部材を収容するポケットが円周方向複数箇所に形成された屈曲部とで構成され、少なくとも筒状部を金属製とし、その金属製部分以外の部分を樹脂製として金属製部分と樹脂製部分とを接合一体化したことを特徴とする。
【0017】
本発明では、少なくとも筒状部を金属製とし、その金属製部分以外の部分を樹脂製として金属製部分と樹脂製部分とを接合一体化したことにより、少なくとも筒状部を除く部分を樹脂製とすることで、連結部材のコスト低減、軽量化および設計自由度の向上を容易に達成することができる。また、金属製部分と樹脂製部分との接合一体化は、圧入などの手段が有効である。
【0018】
本発明における連結部材は、金属製部分と樹脂製部分とがインサート成形により一体的に形成されていることが望ましい。このようにすれば、金属製部分と樹脂製部分との接合一体化を容易に行うことができ、連結部材の製作の簡略化が図れて有効な手段である。
【0019】
本発明において、拡径部の円周方向複数箇所に出力側部材の突起が挿入される孔を形成し、拡径部は、筒状部の軸方向端部から孔の周縁部まで金属製とした構造が望ましい。このようにすれば、レバー側クラッチ部からブレーキ側クラッチ部へのトルク伝達時、連結部材の回転により、その連結部材の孔と出力側部材の突起が回転方向で当接する状態となっても、連結部材の強度を十分に確保することができる。
【0020】
本発明において、拡径部に設けられた複数個の孔のうち、2個以上で半数以下の孔を、拡径部の外周端部から径方向内側に延在する樹脂製部分で埋設した構造が望ましい。このようにすれば、レバー側クラッチ部からブレーキ側クラッチ部へのトルク伝達時、樹脂製部分で埋設された部分が回り止め機構として機能する。
【0021】
本発明において、拡径部との相対回転を阻止する回り止め機構、および拡径部からの軸方向抜脱を阻止する抜け止め機構の少なくとも一方を筒状部に設けた構造が望ましい。このようにすれば、筒状部と拡径部とを確実に接合一体化することができる。
【0022】
この回り止め機構としては、筒状部の軸方向端部の外周面に軸方向で段差状に形成された平坦面が可能である。また、回り止め機構および抜け止め機構としては、筒状部の軸方向端部の外周面に軸方向で凹状に形成された平坦面が可能である。また、回り止め機構および抜け止め機構は、筒状部の軸方向端部の外周面に形成された螺旋溝が可能である。さらに、抜け止め機構としては、筒状部の軸方向端部の外周面に形成されたフランジ部が可能であり、その場合、回り止め機構としては、フランジ部の外周縁に形成された切り欠き状の平坦面が可能である。
【0023】
本発明におけるレバー側クラッチ部は、レバー操作により回転トルクが入力される入力側部材と、入力側部材からの回転トルクをブレーキ側クラッチ部に伝達する連結部材と、入力側部材と連結部材間での係合・離脱により入力側部材からの回転トルクの伝達・遮断を制御する複数の係合子と、各係合子を円周方向に所定間隔で保持する保持器と、回転が拘束された静止側部材と、保持器と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの回転トルクで弾性力を蓄積し、その回転トルクの開放により、蓄積された弾性力で保持器を中立状態に復帰させる第一の弾性部材と、入力側部材と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの回転トルクで弾性力を蓄積し、その回転トルクの開放により、蓄積された弾性力で入力側部材を中立状態に復帰させる第二の弾性部材とを備えた構成が可能である。
【0024】
本発明に係るクラッチユニットは、レバー側クラッチ部およびブレーキ側クラッチ部を自動車用シートリフタ部に組み込むことで自動車用途として適している。その場合、入力側部材が操作レバーに結合され、出力側部材が自動車用シートリフタ部のリンク機構に連結された構造となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ブレーキ側クラッチ部の連結部材は、出力側部材の軸部に挿入された筒状部と、その筒状部の軸方向端部を径方向外側に延在させた拡径部と、その拡径部の外周端部を軸方向に屈曲させ、係合子および弾性部材を収容するポケットが円周方向複数箇所に形成された屈曲部とで構成され、少なくとも筒状部を金属製とし、その金属製部分以外の部分を樹脂製として金属製部分と樹脂製部分とを接合一体化したことにより、少なくとも筒状部を除く部分を樹脂製とすることで、連結部材のコスト低減、軽量化および設計自由度の向上を容易に実現することができ、軽量で安価なクラッチユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態におけるクラッチユニットの全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図1のC−C線に沿う断面図である。
【図7】(a)はレバー側側板を示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図8】(a)はレバー側外輪を示す断面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の右側面図である。
【図9】本発明の実施形態で、(a)は内輪を示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図10】図9の内輪を筒状部と拡径部および屈曲部とに分離した状態を示す組立分解斜視図である。
【図11】内輪の筒状部に設けた回り止め機構の一例を示す斜視図である。
【図12】内輪の筒状部に設けた回り止め機構および抜け止め機構の一例を示す斜視図である。
【図13】内輪の筒状部に設けた回り止め機構および抜け止め機構の他例を示す斜視図である。
【図14】内輪の筒状部に設けた回り止め機構および抜け止め機構の他例を示す斜視図である。
【図15】本発明の他の実施形態で、(a)は内輪を示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図16】図15の内輪を筒状部と拡径部および屈曲部とに分離した状態を示す組立分解斜視図である。
【図17】保持器を示す斜視図である。
【図18】(a)は保持器を示す断面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の断面図である。
【図19】内側センタリングばねを示す斜視図である。
【図20】外側センタリングばねを示す斜視図である。
【図21】(a)は出力軸を一方の側から見た斜視図、(b)は出力軸を他方の側から見た斜視図である。
【図22】(a)は出力軸を示す断面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の右側面図である。
【図23】(a)はブレーキ側外輪を示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図24】(a)はカバーを示す断面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図25】(a)はブレーキ側側板を示す断面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図26】(a)は摩擦リングを示す正面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の右側面図である。
【図27】(a)はブレーキ側側板にブレーキ側外輪を組み付ける前の状態を示す斜視図、(b)はブレーキ側側板にブレーキ側外輪を組み付けた後の状態を示す斜視図である。
【図28】ブレーキ側側板にブレーキ側外輪およびカバーを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図29】ブレーキ側側板とブレーキ側外輪とカバーを加締めにより一体化した状態を示す斜視図である。
【図30】(a)はブレーキ側側板、ブレーキ側外輪、カバーおよび内側センタリングばねに対して保持器を組み付ける前の状態を示す斜視図、(b)はブレーキ側側板、ブレーキ側外輪、カバーおよび内側センタリングばねに対して保持器を組み付けた後の状態を示す斜視図である。
【図31】自動車の座席シートを示す概念図である。
【図32】(a)はシートリフタ部の一構造例を示す概念図、(b)はその要部拡大図である。
【図33】従来のクラッチユニットの全体構成を示す縦断面図である。
【図34】図33のD−D線に沿う横断面図である。
【図35】図33のE−E線に沿う横断面図である。
【図36】従来のクラッチユニットで、(a)は内輪を示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るクラッチユニットの実施形態を図1〜図32(a)(b)を参照しながら以下に詳述する。
【0028】
クラッチユニットXは、例えばレバー操作により座席シートの高さ調整を行う自動車用シートリフタ部〔図31および図32(a)(b)参照〕に組み込まれる。このクラッチユニットXは、図1〜図5に示すように、入力側に設けられたレバー側クラッチ部11と、出力側に設けられた逆入力遮断機能のブレーキ側クラッチ部12とをユニット化した構成となっている。
【0029】
レバー側クラッチ部11は、図1、図2および図4に示すように、例えば操作用のレバー41a(図31参照)が連結された入力側部材としてのレバー側側板13およびレバー側外輪14と、そのレバー側外輪14からの回転トルクをブレーキ側クラッチ部12に伝達する連結部材としての内輪15と、その内輪15の外周面15aとレバー側外輪14の内周面14aとの間に形成された楔すきま20に配設された係合子としての例えば複数の円筒ころ16と、円筒ころ16を円周方向等間隔に保持する保持器17と、その保持器17を中立状態に復帰させるための第一の弾性部材である内側センタリングばね18と、レバー側外輪14を中立状態に復帰させるための第二の弾性部材である外側センタリングばね19とを有する。なお、後述の出力軸22の端部にウェーブワッシャ30を介してワッシャ31を圧入することにより、構成部品の抜け止めとしている(図1参照)。
【0030】
ロック型と称されるタイプで逆入力遮断機能を有するブレーキ側クラッチ部12は、図1、図3および図5に示すようにレバー側クラッチ部11からの回転トルクが入力される連結部材としての内輪15と、出力側部材としての出力軸22と、回転が拘束された静止側部材としてのブレーキ側外輪23、カバー24およびブレーキ側側板25と、そのブレーキ側外輪23と出力軸22間の楔すきま26に配設され、両部材間での係合・離脱により内輪15からの回転トルクの伝達と出力軸22からの回転トルクの遮断を制御する複数対の係合子としての円筒ころ27と、各対の円筒ころ27間に介挿され、それら円筒ころ27同士に離反力を付勢する断面N字形の板ばね28とで主要部が構成されている。なお、出力軸22には突起22fが設けられ、この突起22fがクリアランスをもって挿入された孔15fが内輪15に設けられている(図1参照)。
【0031】
次に、このクラッチユニットXにおけるレバー側クラッチ部11およびブレーキ側クラッチ部12の主要な構成部品について詳述する。
【0032】
図7(a)(b)はレバー側クラッチ部11のレバー側側板13を示す。このレバー側側板13は、その中央部位に出力軸22および内輪15が挿通される孔13aが形成され、外周縁部に複数(例えば5つ)の爪部13bが突設されている。これらの爪部13bは、軸方向に屈曲成形されてその先端部を二股状とし、後述するレバー側外輪14の切欠き凹部14e〔図8(c)参照〕に挿入して二股状先端部を外側へ拡開させることにより、レバー側側板13をレバー側外輪14に加締め固定している。なお、図中の符号13cは、座席シートの高さ調整を操作するための操作用のレバー41a(図31参照)をレバー側側板13に取り付けるための複数(例えば4つ)の孔である。
【0033】
図8(a)〜(c)はレバー側外輪14を示す。このレバー側外輪14は、一枚の板状素材をプレス加工によりカップ状に成形したもので、中央部14cに出力軸22および内輪15が挿通される孔14bが形成され、その中央部14cから軸方向に延びる筒状部14dの内周には、複数のカム面14aが円周方向等間隔に形成されている(図4参照)。
【0034】
このレバー側外輪14の外周縁部には複数(例えば3つ)の爪部14f,14gが突設されて軸方向に屈曲成形されている。これら爪部14f,14gのうち、一つの爪部14fは、後述する外側センタリングばね19の二つの係止部19a(図6および図20参照)間に挿入配置されて係止され、残り二つの爪部14gは、後述するブレーキ側外輪23の端面に接触した状態でレバー側外輪14の回転によりそのブレーキ側外輪23の端面上を摺動し、カバー24の外周に設けられた回転ストッパとしての一対の係止部24e,24f〔図24(b)参照〕間で移動してその回転方向の移動端で係止部24e,24fのそれぞれに当接可能とすることで、レバー41a(図31参照)の操作角度を規制するようにしている。
【0035】
レバー側外輪14の外周には、レバー側側板13の爪部13b〔図7(a)(b)参照〕が挿入される複数(図では5つ)の切欠き凹部14eが形成されている。この切欠き凹部14eに挿入されたレバー側側板13の爪部13bを加締めることによりレバー側側板13とレバー側外輪14が連結されている。レバー側外輪14とそのレバー側外輪14に加締め固定されたレバー側側板13とでレバー側クラッチ部11の入力側部材を構成している。
【0036】
図9(a)(b)および図10は内輪15を示す。この内輪15は、出力軸22が挿通される筒状部15bと、その筒状部15bの軸方向端部を径方向外側に延在させた拡径部15cと、その拡径部15cの外周端部を軸方向に屈曲させた屈曲部15dとで構成されている。筒状部15bの外径にレバー側外輪14のカム面14aとの間に楔すきま20(図4参照)を形成し、その楔すきま20に配された円筒ころ16が当接する外周面15aを備えている。拡径部15cの円周方向複数箇所には、出力軸22の突起22f(図1参照)がクリアランスをもって挿入された孔15fを形成し、レバー側クラッチ部11からブレーキ側クラッチ部12へのトルク伝達に寄与する。屈曲部15dは、ブレーキ側クラッチ部12の円筒ころ27および板ばね28を収容するポケット15eが円周方向複数箇所に形成され、円筒ころ27を円周方向に所定間隔で保持する保持器として機能する。
【0037】
この内輪15は、筒状部15bを金属製とし、その金属製部分である筒状部15b以外の部分である拡径部15cおよび屈曲部15dを樹脂製とし、金属製部分である筒状部15bと樹脂製部分である拡径部15cとを接合一体化する。このように、筒状部15bを金属製とし、かつ、拡径部15cおよび屈曲部15dを樹脂製として筒状部15bと拡径部15cとを接合一体化したことにより、筒状部15bを除く部分である拡径部15cおよび屈曲部15dを樹脂製とすることで、内輪15のコスト低減、軽量化および設計自由度の向上を容易に達成することができる。なお、前述したように筒状部15bの外周面15aは円筒ころ16が当接して面圧が高いことから(図4参照)、少なくとも筒状部15bを金属製とする必要がある。
【0038】
また、筒状部15bと拡径部15cとの接合一体化は、筒状部15bの軸方向端部15b1を拡径部15cの孔15gに圧入することで実現可能である(図10参照)。この内輪15の製作は、前述した圧入以外にも、筒状部15bと拡径部15cおよび屈曲部15dとをインサート成形により一体的に形成することも可能である。このようなインサート成形により、筒状部15bと拡径部15cとの接合一体化を容易に行うことができ、内輪15の製作の簡略化が図れて有効な手段である。ここで、インサート成形とは、金型内にセッティングした金属製部分である筒状部15bの周りに樹脂を注入して金属製部分と樹脂製部分である拡径部15cおよび屈曲部15dを一体化する成形方法である。
【0039】
内輪15は、拡径部15cとの相対回転を阻止する回り止め機構、および拡径部15cからの軸方向抜脱を阻止する抜け止め機構の少なくとも一方を筒状部15bに設けた構造を具備する。このような回り止め機構や抜け止め機構を具備することにより、筒状部15bと拡径部15cとを確実に接合一体化することができる。
【0040】
この回り止め機構としては、図11に示すように、筒状部15bの軸方向端部15b1の外周面(図示上下二箇所)に軸方向で段差状に形成された平坦面15hとする。また、回り止め機構および抜け止め機構としては、図12に示すように、筒状部15bの軸方向端部15b1の外周面(図示上下二箇所)に軸方向で凹状に形成された平坦面15iとする。また、他の回り止め機構および抜け止め機構は、図13に示すように、筒状部15bの軸方向端部15b1の外周面(図示全周)に形成された螺旋溝15jとしてもよい。さらに、抜け止め機構としては、図14に示すように、筒状部15bの軸方向端部15b1の外周面(図示全周)に形成されたフランジ部15kが可能であり、その場合、回り止め機構としては、フランジ部15kの外周縁(図示上下二箇所)に形成された切り欠き状の平坦面15mが可能である。
【0041】
なお、前述した実施形態では、筒状部15bのみを金属製とし、かつ、拡径部15cの全体および屈曲部15dを樹脂製とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、筒状部15bの軸方向端部から径方向外側に延在した拡径部15cの一部を金属製とし、その外側に位置する残りの部分および屈曲部15dを樹脂製とすることも可能である。つまり、図15(a)(b)および図16に示すように、拡径部は、筒状部15bの軸方向端部から切り欠き状の孔15f1の周縁部までの内側部分15c1を金属製とし、その外側に位置する残りの外側部分15c2を樹脂製としている。これにより、レバー側クラッチ部11からブレーキ側クラッチ部12へのトルク伝達時、内輪15の回転により、その内輪15の孔15f1と出力軸22の突起22f(図1参照)が回転方向で当接する状態となっても、孔15f1の周縁部が金属製であることから、内輪15の強度を十分に確保することができる。
【0042】
この場合、拡径部の内側部分15c1に設けられた複数個の孔15f1のうち、2個以上で半数以下の孔15f1を、拡径部の外周端部から径方向内側に延在する樹脂製の外側部分15c2に形成された凸部15f2で埋設した構造とすればよい。この実施形態では、6個の孔15f1のうち、半数の3個の孔15f1について、凸部15f2で埋設した構造としている。これにより、レバー側クラッチ部11からブレーキ側クラッチ部12へのトルク伝達時、内側部分15c1の孔15f1に嵌まり込んだ外側部分15c2の凸部15f2が回り止め機構として機能する。
【0043】
図17および図18(a)〜(c)は樹脂製の保持器17を示す。この保持器17は、円筒ころ16を収容する複数のポケット17aが円周方向等間隔に形成された円筒状部材である。この保持器17の一方の端部には、二つの切欠き凹部17bが形成され、それぞれの切欠き凹部17bの隣接する二つの端面17cに前述の内側センタリングばね18の係止部18aが係止される(図6および図19参照)。
【0044】
図19は内側センタリングばね18を示す。この内側センタリングばね18は、径方向内側に屈曲させた一対の係止部18aを有する断面円形のC字状ばね部材からなり、外側センタリングばね19の内径側に位置する(図6参照)。この内側センタリングばね18は、保持器17とブレーキ側クラッチ部12の静止側部材であるカバー24との間に配設され、両係止部18aが保持器17の二つの端面17c〔図17および図18(b)参照〕に係止されると共にカバー24に設けられた爪部24b〔図24(a)(b)参照〕に係止されている〔図30(a)(b)参照〕。
【0045】
この内側センタリングばね18では、レバー側外輪14からの入力トルクの作用時、一方の係止部18aが保持器17の一方の端面17cに、他方の係止部18aがカバー24の爪部24bにそれぞれ係合するので、レバー側外輪14の回転に伴って内側センタリングばね18が押し拡げられて弾性力が蓄積され、レバー側外輪14からの入力トルクの開放時、その弾性復元力により保持器17を中立状態に復帰させる。
【0046】
図20は外側センタリングばね19を示す。この外側センタリングばね19はC字状をなし、その両端を径方向外側に屈曲させた一対の係止部19aを有する帯板状ばね部材であり、内側センタリングばね18の外径側に位置する(図6参照)。外側センタリングばね19は、レバー側クラッチ部11のレバー側外輪14とブレーキ側クラッチ部12のカバー24との間に配設され、両係止部19aがレバー側外輪14に設けられた爪部14f〔図8(a)〜(c)参照〕に係止されると共にカバー24に設けられた爪部24d〔図24(a)(b)参照〕に係止されている〔図30(a)(b)参照〕。この係止部19aは、内側センタリングばね18の係止部18aに対して円周方向の位相(180°)をずらせて配置されている(図6参照)。
【0047】
この外側センタリングばね19では、レバー41a(図31参照)の操作によりレバー側側板13から入力トルクが作用してレバー側外輪14が回転した場合、一方の係止部19aがレバー側外輪14の爪部14fに、他方の係止部19aがカバー24の爪部24dにそれぞれ係合するので、レバー側外輪14の回転に伴って外側センタリングばね19が押し拡げられて弾性力が蓄積され、レバー側外輪14からの入力トルクを開放すると、その弾性復元力によりレバー側外輪14を中立状態に復帰させる。
【0048】
図21(a)(b)および図22(a)〜(c)は出力軸22を示す。この出力軸22は、軸部22cから径方向外側に延びて拡径した大径部22dが軸方向ほぼ中央部位に一体的に形成されている。この軸部22cの先端には、シートリフタ部41と連結するためのピニオンギヤ41gが同軸的に形成されている。
【0049】
大径部22dの外周面には複数(例えば6つ)の平坦なカム面22aが円周方向等間隔に形成され、ブレーキ側外輪23の内周面23bとの間で設けられた楔すきま26(図5参照)に二つの円筒ころ27および板ばね28がそれぞれ配されている。この大径部22dの一方の端面には、摩擦リング29が収容配置される環状凹部22bが形成されている。また、図中の符号22fは、大径部22dの他方の端面に形成された突起で、内輪15の孔15fにクリアランスをもって挿入される〔図1および図9(a)(b)参照〕。
【0050】
図23(a)(b)はブレーキ側外輪23、図24(a)(b)はカバー24、図25(a)(b)はブレーキ側側板25をそれぞれ示す。前述のブレーキ側外輪23とカバー24は、このブレーキ側側板25により一体的に加締め固定される。ブレーキ側外輪23は、一枚の素材をプレスで打ち抜き加工した厚肉の板状部材であり、カバー24は、一枚の別素材をプレス加工により成形したものである。なお、図中の符号24c,25bは出力軸22が挿通された孔、符号25cは後述の摩擦リング29の突起29aが嵌合する孔である。
【0051】
ブレーキ側外輪23の外周には複数(3個)の切欠き凹部23aが形成されると共に、これら切欠き凹部23aに対応させて、カバー24の外周にも複数(3個)の切欠き凹部24aが形成されている。図27(a)(b)に示すようにブレーキ側外輪23の切欠き凹部23aにブレーキ側側板25の爪部25aが挿入されると共に、図28に示すようにカバー24の切欠き凹部24aにブレーキ側側板25の爪部25aが挿入される。
【0052】
これら切欠き凹部23a,24aに挿入されたブレーキ側側板25の爪部25aを加締めることによりブレーキ側外輪23とカバー24を連結してブレーキ側側板25と共に一体化して静止側部材を構成する。このブレーキ側側板25の爪部25aの加締めは、加締め治具(図示せず)を利用することにより、その爪部25aの二股状先端部25a1を外側へ拡開させることにより行われる〔図29および図30(a)(b)参照〕。
【0053】
ブレーキ側外輪23の内周面23bと出力軸22のカム面22aとの間に楔すきま26が形成されている(図5参照)。カバー24には軸方向に突出する爪部24bが形成され、その爪部24bをレバー側クラッチ部11の内側センタリングばね18の二つの係止部18a間に配置している〔図6、図19および図30(a)(b)参照〕。このカバー24の爪部24bは、その爪部形成位置の外径側を面起こしすることにより形成されている。カバー24の外周には軸方向に突出する爪部24dが形成されている。この爪部24dは、レバー側クラッチ部11の外側センタリングばね19の二つの係止部19a間に配置される〔図6、図20および図30(a)(b)参照〕。
【0054】
カバー24の外周には二組の係止部24e,24fが段付き加工により形成されている〔図30(a)(b)参照〕。これら係止部24e,24fは、カバー24がブレーキ側外輪23の端面に接触した状態でレバー側外輪14の回転によりそのブレーキ側外輪23の端面上を摺動する爪部14gと回転方向で当接可能とすることで、レバー41a(図31参照)の操作角度を規制する回転ストッパとして機能する。つまり、レバーの操作によりレバー側外輪14が回転すれば、その爪部14gがカバー24の係止部24eと24fとの間でカバー24の外周に沿って移動することになる。
【0055】
ブレーキ側側板25の外周には、シートリフタ部へのクラッチ取付部として、一つのフランジ部25eと二つのフランジ部25fが設けられている(図2〜図4参照)。これら三つのフランジ部25e,25fの先端部には、シートリフタ部への取付用孔25g,25hが穿設されてその取付孔25g,25hを囲撓するように円筒部25i,25jが軸方向に突設されている。
【0056】
図26(a)〜(c)は樹脂製の摩擦リング29を示す。摩擦リング29の端面には、その円周方向に沿って等間隔に円形の突起29aが複数個設けられ、この突起29aをブレーキ側側板25の孔25cに圧入して嵌合させることによりブレーキ側側板25に固着される(図1および図3参照)。この摩擦リング29は出力軸22の大径部22dに形成された環状凹部22bの内周面22eに締め代をもって圧入される〔図21(a)および図22(a)(b)参照〕。摩擦リング29の外周面29cと出力軸22の環状凹部22bの内周面22eとの間に生じる摩擦力によって、出力軸22に回転抵抗が付与される。
【0057】
以上の構成からなるクラッチユニットXにおけるレバー側クラッチ部11およびブレーキ側クラッチ12の動作を説明する。
【0058】
レバー側クラッチ部11では、レバー側外輪14に入力トルクが作用すると、円筒ころ16がそのレバー側外輪14と内輪15間の楔すきま20に係合し、その円筒ころ16を介して内輪15にトルクが伝達されて内輪15が回転する。この時、レバー側外輪14および保持器17の回転に伴って両センタリングばね18,19に弾性力が蓄積される。その入力トルクがなくなると、両センタリングばね18,19の弾性力によりレバー側外輪14および保持器17が中立状態に復帰する一方で、内輪15は、与えられた回転位置をそのまま維持する。従って、このレバー側外輪14の回転繰り返し、つまり、操作レバーのポンピング操作により、内輪15は寸動回転する。
【0059】
ブレーキ側クラッチ部12では、出力軸22に逆入力トルクが入力されると、円筒ころ27がその出力軸22とブレーキ側外輪23間の楔すきま26と係合して出力軸22がブレーキ側外輪23に対してロックされる。従って、出力軸22からの逆入力トルクは、ブレーキ側クラッチ部12によってロックされてレバー側クラッチ部11への逆入力トルクの還流が遮断される。
【0060】
一方、レバー側外輪14からの入力トルクがレバー側クラッチ部11を介して内輪15に入力され、内輪15が円筒ころ27と当接して板ばね28の弾性力に抗して押圧することにより、その円筒ころ27が楔すきま26から離脱して出力軸22のロック状態が解除され、出力軸22は回転可能となる。内輪15がさらに回転すると、内輪15の孔15fと出力軸22の突起22fとのクリアランスが詰まって内輪15が出力軸22の突起22fと回転方向で当接することにより、内輪15からの入力トルクが突起22fを介して出力軸22に伝達され、出力軸22が回転する。
【0061】
以上で詳述した構造を具備するクラッチユニットXは、例えば自動車用シートリフタ部に組み込まれて使用される。図31は自動車の乗員室に装備される座席シート40を示す。座席シート40は着座シート40aと背もたれシート40bとで構成され、着座シート40aの高さHを調整するシートリフタ部41などを備えている。着座シート40aの高さHの調整はシートリフタ部41の操作レバー41aによって行う。
【0062】
図32(a)はシートリフタ部41の一構造例を概念的に示す。シートスライドアジャスタ41bのスライド可動部材41b1にリンク部材41c,41dの一端がそれぞれ回動自在に枢着される。リンク部材41c,41dの他端はそれぞれ着座シート40aに回動自在に枢着される。リンク部材41cの他端はリンク部材41eを介してセクターギヤ41fに回動自在に枢着される。セクターギヤ41fは着座シート40aに回動自在に枢着され、支点41f1回りに揺動可能である。リンク部材41dの他端は着座シート40aに回動自在に枢着される。
【0063】
前述した実施形態のクラッチユニットXは、着座シート40aの適宜の部位に固定される。このクラッチユニットXの着座シート40aへの固定は、ブレーキ側側板25の三つのフランジ部25e,25fを、その円筒部25i,25jの先端部分を外側へ拡径させるように塑性変形させることで着座シート40aのシートフレーム(図示せず)に加締め固定する。
【0064】
一方、レバー側クラッチ部11のレバー側側板13に例えば樹脂製の操作レバー41aが結合され、ブレーキ側クラッチ部12の出力軸22に回転部材であるセクターギヤ41fと噛合するピニオンギヤ41gが設けられている。このピニオンギヤ41gは、図1、図21(a)(b)および図22(a)(b)に示すように出力軸22の軸部22cの先端に一体的に形成されている。
【0065】
図32(b)において、操作レバー41aを反時計方向(上側)に揺動操作すると、その方向の入力トルクがクラッチユニットXを介してピニオンギヤ41gに伝達され、ピニオンギヤ41gが反時計方向に回動する。そして、ピニオンギヤ41gと噛合するセクターギヤ41fが時計方向に揺動して、リンク部材41cの他端をリンク部材41eを介して引っ張る。その結果、リンク部材41cとリンク部材41dが共に起立して、着座シート40aの座面が高くなる。
【0066】
このようにして、着座シート40aの高さHを調整した後、操作レバー41aを開放すると、操作レバー41aが二つのセンタリングばね18,19の弾性力によって時計方向に回動して元の位置(中立状態)に戻る。なお、操作レバー41aを時計方向(下側)に揺動操作した場合は、上記とは逆の動作によって、着座シート40aの座面が低くなる。また、高さ調整後に操作レバー41aを開放すると、操作レバー41aが反時計方向に回動して元の位置(中立状態)に戻る。
【0067】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0068】
11 レバー側クラッチ部
12 ブレーキ側クラッチ部
13 入力側部材(レバー側側板)
14 入力側部材(レバー側外輪)
15 連結部材(内輪)
15b 筒状部
15c 拡径部
15d 屈曲部
15e ポケット
15f 孔
16 係合子(円筒ころ)
17 保持器
18 第一の弾性部材(内側センタリングばね)
19 第二の弾性部材(外側センタリングばね)
22 出力側部材(出力軸)
23 静止側部材(ブレーキ側外輪)
24 静止側部材(カバー)
25 静止側部材(ブレーキ側側板)
26 楔すきま
27 係合子(円筒ころ)
28 弾性部材(板ばね)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側に設けられ、レバー操作により出力側への回転トルクの伝達・遮断を制御するレバー側クラッチ部と、出力側に設けられ、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とからなり、
前記ブレーキ側クラッチ部は、レバー側クラッチ部からの回転トルクが入力される連結部材と、回転が拘束された静止側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、前記静止側部材と出力側部材間の楔すきまに配設され、両部材間での係合・離脱により入力側からの回転トルクの伝達と出力側からの回転トルクの遮断を制御する複数対の係合子と、各対の係合子間に介挿され、それら係合子同士に離反力を付勢する弾性部材とを備え、
前記連結部材は、出力側部材の軸部に挿入された筒状部と、前記筒状部の軸方向端部を径方向外側に延在させた拡径部と、前記拡径部の外周端部を軸方向に屈曲させ、前記係合子および弾性部材を収容するポケットが円周方向複数箇所に形成された屈曲部とで構成され、少なくとも前記筒状部を金属製とし、その金属製部分以外の部分を樹脂製として金属製部分と樹脂製部分とを接合一体化したことを特徴とするクラッチユニット。
【請求項2】
前記連結部材は、前記金属製部分と前記樹脂製部分とがインサート成形により一体的に接合されている請求項1に記載のクラッチユニット。
【請求項3】
前記拡径部の円周方向複数箇所に前記出力側部材の突起が挿入される孔を形成し、拡径部は、前記筒状部の軸方向端部から前記孔の周縁部まで金属製とした請求項1又は2に記載のクラッチユニット。
【請求項4】
前記拡径部に設けられた複数個の孔のうち、2個以上で半数以下の孔を、前記拡径部の外周端部から径方向内側に延在する樹脂製部分で埋設した請求項3に記載のクラッチユニット。
【請求項5】
前記拡径部との相対回転を阻止する回り止め機構、および拡径部からの軸方向抜脱を阻止する抜け止め機構の少なくとも一方を前記筒状部に設けた請求項1〜4のいずれか一項に記載のクラッチユニット。
【請求項6】
前記回り止め機構は、筒状部の軸方向端部の外周面に軸方向で段差状に形成された平坦面である請求項5に記載のクラッチユニット。
【請求項7】
前記回り止め機構および前記抜け止め機構は、筒状部の軸方向端部の外周面に軸方向で凹状に形成された平坦面である請求項5に記載のクラッチユニット。
【請求項8】
前記回り止め機構および前記抜け止め機構は、筒状部の軸方向端部の外周面に形成された螺旋溝である請求項5に記載のクラッチユニット。
【請求項9】
前記抜け止め機構は、筒状部の軸方向端部の外周面に形成されたフランジ部であり、前記回り止め機構は、前記フランジ部の外周縁に形成された切り欠き状の平坦面である請求項5に記載のクラッチユニット。
【請求項10】
前記レバー側クラッチ部は、レバー操作により回転トルクが入力される入力側部材と、入力側部材からの回転トルクをブレーキ側クラッチ部に伝達する連結部材と、前記入力側部材と連結部材間での係合・離脱により入力側部材からの回転トルクの伝達・遮断を制御する複数の係合子と、各係合子を円周方向に所定間隔で保持する保持器と、回転が拘束された静止側部材と、前記保持器と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの回転トルクで弾性力を蓄積し、その回転トルクの開放により、蓄積された弾性力で保持器を中立状態に復帰させる第一の弾性部材と、前記入力側部材と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの回転トルクで弾性力を蓄積し、その回転トルクの開放により、蓄積された弾性力で入力側部材を中立状態に復帰させる第二の弾性部材とを備えている請求項1〜9のいずれか一項に記載のクラッチユニット。
【請求項11】
前記レバー側クラッチ部とブレーキ側クラッチ部が自動車用シートリフタ部に組み込まれている請求項1〜10のいずれか一項に記載のクラッチユニット。
【請求項12】
前記レバー側クラッチ部の入力側部材が操作レバーに結合され、前記ブレーキ側クラッチ部の出力側部材が自動車用シートリフタ部のリンク機構に連結されている請求項11に記載のクラッチユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2012−247025(P2012−247025A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120534(P2011−120534)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】