説明

クラッチ装置及びこれを搭載した画像形成装置

【課題】クラッチ要素と軸との間の不具合の発生を防止しながら、原動軸の回転開始後、できるだけ早い段階で原動軸のみを回転させることが可能なクラッチ装置を提供する。
【解決手段】クラッチ装置50は、原動軸に相当する原動ギア61が特定方向に回転する時に連結作用が生じるクラッチ要素である締め付けばね63と、前記特定方向に原動ギア61とともに回転する締め付けばね63を停止させ、原動ギア61から従動軸62への動力伝達を遮断する断続機構70とが設けられたクラッチ機構60を備える。制御部90は、原動ギア61の回転開始後、締め付けばね63が少なくとも1回転した後に、断続機構70を作用させ、原動ギア61から従動軸62への動力伝達を遮断する。これにより、断続機構70を作用させる前に締め付けばね63に回転力を与えて、締め付けばね63を拡張させるに十分な摩擦力を原動ギア61のボス部61aから得ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動軸と従動軸との間で、動力の伝達を断続するクラッチ装置に関する。また、このクラッチ装置を搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチ装置は、原動軸と従動軸との間で、動力の伝達を断続するために用いられる。クラッチ装置は、複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、給紙ローラやレジストローラ、現像ローラ等への動力伝達用として用いられる。画像形成装置では、できるだけ少ないモータにより、給紙ローラ等の多数の回転体を駆動する必要がある。したがって、1個のモータにつき多数のローラが連結されているので、この各々のローラに選択的に動力伝達を行う必要がある。このため、モータと各ローラとの間に、クラッチ装置が用いられる。
【0003】
クラッチ装置には、摩擦クラッチのように2個の部材が相互に接触し合うものや、流体を利用した流体クラッチ等の機構が存在する。2個の部材が相互に接触し合うものには、拡張/収縮が可能な締め付けばねまたはリングで構成されるクラッチ要素を用いた機構がある。これは、締め付けばねを収縮させることによりばね内側に配置された軸を締め付け、ロックして動力を伝達し、リングを拡張させることにより軸を解放して動力の伝達を遮断するものである。
【0004】
上記のような締め付けばねを用いたクラッチ機構において、締め付けばねの拡張/収縮は、締め付けばねの回転制御によってなされる。例えば、締め付けばねが常時収縮して軸を締め付けた状態にある場合には、締め付けばねの回転を停止させることにより、軸からの摩擦力が締め付けばねを拡張方向に作用するようにして軸を解放する。
【0005】
締め付けばねの回転制御は、締め付けばねに連結されたスリーブと、このスリーブに係合する爪とを備えた断続機構によってなされる。スリーブは歯を有し、この歯に前記爪を掛けることによりスリーブの回転を停止させ、それとともに締め付けばねの回転を停止させることができる。
【0006】
上記のような締め付けばねで構成されるクラッチ要素を用いたクラッチ機構の一例を、特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された画像形成装置のシート給送装置では、シート(用紙)を1枚ずつ分離して送り出すために、断続的にシートに給紙圧を加える際に利用するバネクラッチとして、クラッチ機構が適用されている。
【特許文献1】特開平8−295424号公報(第4頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載された画像形成装置のシート供給装置に適用されたようなバネクラッチ(クラッチ機構)において、従動軸に連結され、回転が不要なタイミングにあるローラをできるだけ長時間回転停止させ、そのローラの長寿命化を図ることを考える。そこで、原動軸の回転を停止させた状態から、原動軸の回転開始と同時に、原動軸から従動軸への動力伝達を遮断する、すなわち原動軸のみを回転させることとする。この場合、原動軸の回転を停止させた状態において断続機構を作用させ、締め付けばね(クラッチ要素)の回転を停止させることにより、原動軸の回転開始と同時に原動軸のみを回転させることが可能であるかと考えられる。
【0008】
しかしながら、バネクラッチにおいて、締め付けばねは、前述のように、収縮して軸を締め付けた状態にある時に締め付けばねの回転を停止させることにより、軸からの摩擦力が締め付けばねの拡張方向に作用して軸を解放する。したがって、原動軸の回転開始と同時に断続機構により締め付けばねの回転を停止させても、回転している状態にある締め付けばねの回転を停止させる場合と違って、締め付けばねの拡張が不十分であり、軸を開放することができない。これにより、締め付けばねと、このばねが締め付ける軸との間で中途半端な摩擦力が発生し、この間で締め付けばねと軸とが磨耗したり、摩擦熱が発生したりして、クラッチ機構が破損してしまう恐れがある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、原動軸が特定方向に回転する時に連結作用が生じるクラッチ要素と、前記特定方向に原動軸とともに回転するクラッチ要素を停止させ、原動軸から従動軸への動力伝達を遮断する断続機構とが設けられたクラッチ機構を備えたクラッチ装置において、クラッチ要素と軸とが磨耗したり、両者間で摩擦熱が発生したりする不具合が起こるのを防止しながら、原動軸の回転開始後、できるだけ早い段階で原動軸のみを回転させることができ、回転が不要なタイミングにあるローラをできるだけ長時間回転停止させることが可能なクラッチ装置を提供することを目的とする。また、このクラッチ装置を搭載することにより長寿命化が図られた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、共通軸線上に整列配置された原動軸、及び従動軸と、これらの両軸間に介在し、原動軸が特定方向に回転する時に連結作用が生じるクラッチ要素と、前記特定方向に原動軸とともに回転するクラッチ要素を停止させ、原動軸から従動軸への動力伝達を遮断する断続機構とが設けられたクラッチ機構と、前記断続機構の動作を制御する制御部とを備えたクラッチ装置において、前記制御部は、前記原動軸の回転開始後、前記クラッチ要素が少なくとも1回転した後に、前記断続機構を作用させ、原動軸から前記従動軸への動力伝達を遮断することとした。
【0011】
また本発明では、上記クラッチ装置を画像形成装置に搭載することとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、原動軸が特定方向に回転する時に連結作用が生じるクラッチ要素と、前記特定方向に原動軸とともに回転するクラッチ要素を停止させ、原動軸から従動軸への動力伝達を遮断する断続機構とが設けられたクラッチ機構を備えたクラッチ装置において、制御部は、原動軸の回転開始後、クラッチ要素が少なくとも1回転した後に、断続機構を作用させ、原動軸から従動軸への動力伝達を遮断することとしたので、断続機構を作用させる前にクラッチ要素に回転力を与えて、クラッチ要素を拡張させるに十分な摩擦力を軸から得ることが可能である。これにより、クラッチ要素と軸とが磨耗したり、両者間で摩擦熱が発生したりする不具合が起こるのを防止しながら、原動軸の回転開始後、できるだけ早い段階で原動軸のみを回転させることができる。したがって、回転が不要なタイミングにあるローラをできるだけ長時間回転停止させることができ、そのようなローラの長寿命化を図ることが可能な高性能なクラッチ装置を得ることができる。
【0013】
また本発明では、上記クラッチ装置を画像形成装置に搭載することとしたので、クラッチ要素と軸とが磨耗したり、両者間で摩擦熱が発生したりする不具合が起こるのを防止しながら、原動軸の回転開始後、できるだけ早い段階で原動軸のみを回転させることができ、回転が不要なタイミングにあるローラをできるだけ長時間回転停止させることが可能な長寿命化が図られた画像形成装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図1〜図5に基づき説明する。なお、この実施形態に係るクラッチ装置は、画像形成装置において、用紙を搬送するために回転せしめられる給紙ローラや搬送ローラ、レジストローラ、或いは画像形成に使用される現像ローラ等のローラに対して利用されるべく搭載されているものとする。
【0015】
最初に、本発明のクラッチ装置を搭載した画像形成装置について、図1を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るクラッチ装置を搭載した画像形成装置を示す模型的垂直断面左側面図である。図1において右方が画像形成装置の前面側、左方が背面側である。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の下部には、用紙供給装置20が配置されている。用紙供給装置20には、用紙収容部である用紙カセット21が備えられ、この用紙カセット21の内部に、印刷前のカットペーパー等の用紙Pが積まれて収容されている。用紙カセット21の用紙搬送方向下流部、すなわち図1において右方の上方には、給紙ローラ22が配置されている。この給紙ローラ22により、用紙Pは図1において用紙カセット21の右上方に向けて、1枚ずつ分離して送り出される。
【0017】
用紙カセット21の用紙搬送方向下流には、用紙搬送路3、レジストローラ4、画像形成部30、及び転写部40が配置されている。用紙カセット21から送り出された用紙Pは、用紙搬送路3を通ってレジストローラ4に到達する。レジストローラ4は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、画像形成部30で形成されるトナー画像とのタイミングを計り、用紙Pを転写部40へと送り出す。
【0018】
一方、外部コンピュータ(図示せず)からの文字や図形、模様等の画像データ信号が画像形成装置1に送信され、この画像データに基づき、画像形成部30上方に備えられた光学部5にて制御されるレーザ光L(図中一点鎖線)が照射される。これにより、画像形成部30においては、像担持体である感光体ドラム31上に原稿画像の静電潜像が形成される。この静電潜像から、感光体ドラム31に対向して配置された現像ローラ32によってトナー像が現像される。トナー像は、前記レジストローラ4によって同期をとって送られてきた用紙Pに、感光体ドラム31と転写部40の転写ローラ41とが圧接して形成される転写ニップ部にて転写される。
【0019】
画像形成部30、及び転写部40の用紙搬送方向下流には、定着装置6、用紙搬送路7、及び用紙排出部8が配置されている。転写部40にて未定着トナー像を担持した用紙Pは、定着装置6へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が定着される。定着装置6から排出された用紙Pは、用紙搬送路7を通って上方へ送られ、用紙排出口9から、本体2の最上部に備えられた用紙載置部である用紙排出部8に排出される。
【0020】
上記構成の画像形成装置1において本発明のクラッチ装置は、前述のように、用紙Pを搬送するために回転せしめられる給紙ローラ22や搬送ローラ、レジストローラ4、或いは画像形成に使用される現像ローラ32等のローラに対して利用されているものであり、ここでは、画像形成部30の現像ローラ32に備えられたものについて、以下で説明する。
【0021】
本発明の実施形態に係るクラッチ装置の詳細な構成について、図1に加えて、図2、及び図3を用いて説明する。図2はクラッチ装置周辺の斜視図、図3は図2に示すクラッチ装置のクラッチ機構の垂直断面側面図である。
【0022】
図1に示す現像ローラ32の軸端には、図2に示すクラッチ装置50が備えられている。画像形成装置1に備えられたモータ10には、現像ローラ32の他に、複数の図示しないローラがギアを介して連結されている。しかしながら、現像ローラ32は、常時回転して現像を実行しているわけではなく、所定のタイミングで選択的に動力伝達して回転させる必要がある。このため、クラッチ装置50によりモータ10からの動力の伝達が断続される。
【0023】
図2、及び図3に示すように、クラッチ装置50には、原動軸に相当する原動ギア61、従動軸62、クラッチ要素である締め付けばね63、及び断続機構70が設けられたクラッチ機構60と、断続機構70の動作を制御する制御部90とが備えられている。
【0024】
原動ギア61は、図2に示すモータ10により回転せしめられる。図3に示すように、原動ギア61は、その軸線、すなわち原動軸の軸線と、従動軸62の軸線とが一致するように、従動軸62の軸部62a及び現像ローラ32の支軸32aを受け入れている。これにより、原動軸に相当する原動ギア61と従動軸62とは、共通軸線上に整列配置されている。現像ローラ32の支軸32aは、従動軸62の軸線に沿って設けられた中心孔に挿入され、固定されている。原動ギア61と従動軸62とは、独立して回転が可能である。なお、モータ10と原動ギア61との間に、中間ギアが配置される場合もある。
【0025】
締め付けばね63は、コイルばねで構成され、断続機構70のスリーブ71の内側に配置されている。締め付けばね63は、その軸線が原動ギア61、及び従動軸62の軸線と一致し、原動ギア61のボス部61aと従動軸62の軸部62aとをコイルの内側に通すようにして備えられている。
【0026】
締め付けばね63の一端は従動軸62の軸部62aに、他端はスリーブ71に、各々回転不能に取り付けられている。これらの取り付け部分は、コイル線材の端部を90°に折り曲げた形で軸部62a、及びスリーブ71に固定されている。原動ギア61は、締め付けばね63の、スリーブ71への取り付け部側の端部に配置され、原動ギア61のボス部61aが、締め付けばね63の端部からそのコイルの内側に挿入されている。原動ギア61のボス部61aの外径は、締め付けばね63のコイルの内径に近い値であり、断続機構70が動作していない状態においては、原動ギア61のボス部61aが、締め付けばね63に軽く接触している。このようにして、締め付けばね63は、原動軸に相当する原動ギア61と、従動軸62との間に介在している。
【0027】
断続機構70は、スリーブ71、歯72、爪73、及びソレノイド80により構成されている。
【0028】
スリーブ71は、原動ギア61と隣接する形で、原動ギア61のボス部61a、及び従動軸62の軸部62aの外側に回転自在に配置されている。前述のように、スリーブ71の内側であって、ボス部61a及び軸部62aとの間には締め付けばね63が備えられ、この締め付けばね63の一端がスリーブ71内面に固定されている。
【0029】
歯72は、図2及び図3に示すように、スリーブ71の外周面に設けられている。歯72は、スリーブ71の周方向に4個設けられている。歯72は、スリーブ71の軸線方向と直角をなす方向の断面形状が鋸歯状であり、スリーブ71の周方向の一方の端面がスリーブ71の直径線と平行になっている。なお、歯72は、4個に限定されるものではなく、他の個数であっても構わない。
【0030】
図2に示すように、ソレノイド80はフラッパ式のものであり、ソレノイドフラッパ81、電磁石82、及びばね83が備えられている。
【0031】
ソレノイドフラッパ81は、スリーブ軸線方向と直角をなす方向に延びる平板状の部材であり、一方の端部が略90°に折り曲げられ、その先端が爪73として構成されている。爪73は、図2に示すように、スリーブ71の近傍であって、スリーブ71の半径方向外側に位置する。ソレノイドフラッパ81は、磁性金属で構成され、電磁石82とばね83の作用により、支持部81aを中心としてシーソーのような動作をする。ソレノイドフラッパ81が図2において反時計方向に回転すると、爪73は、スリーブ71の歯72の、スリーブ71の直径線と平行な端面に係合し、スリーブ71の回転を停止させる。爪73は、爪73のスリーブ軸線方向の中心と、歯72のスリーブ軸線方向の中心とが一致するように配置されている。
【0032】
電磁石82は、ソレノイドフラッパ81の支持部81a近傍のスリーブ71側、すなわち図2においてソレノイドフラッパ81の下方に設けられている。ばね83は、ソレノイドフラッパ81の、回転中心81aを隔てた爪73とは反対側の端部81bに、その一端が連結されている。ばね83の他端は、ソレノイド80のベース部84に連結され、ばね83はソレノイドフラッパ81を図2において時計方向、すなわち電磁石82から離れる方向に付勢している。ソレノイド80の電源のON/OFFにより、ソレノイドフラッパ81がスリーブ71の軸線と直角をなす平面で回転する。電源ONの状態では、ソレノイドフラッパ81が電磁石82に吸い寄せられて変位し、爪73がスリーブ71の歯72に係合する。電源OFFの状態では、ばね83の作用により、ソレノイドフラッパ81が電磁石82から離れ、ソレノイドフラッパ81の爪73側が上方に変位して、爪73と歯72との係合が解除される。
【0033】
上記構成の断続機構70は、図2に示す制御部90により、ソレノイド80の動作が制御される。なお、制御部90は、画像形成装置1全体を制御する制御装置(図示せず)の一部として構成されている形であっても構わない。
【0034】
続いて、クラッチ装置50による動力伝達動作について、図2、及び図3に加えて、図4、及び図5を用いて説明する。図4は図3と同様のクラッチ機構の垂直断面側面図にして、原動ギアと従動軸との連結が解除された状態を示すもの、図5はクラッチ装置の動作を示す制御チャート図である。
【0035】
クラッチ装置50において、制御部90が断続機構70のソレノイド80を電源OFFの状態にした場合、図2に示すように、ソレノイドフラッパ81の爪73側が上方に変位して、爪73と歯72との係合が解除される。スリーブ71は爪73に拘束されることなく、原動ギア61に追随して回転できる状態となり、図3に示すように、締め付けばね63が原動ギア61のボス部61aに巻き付く。これにより、原動ギア61と従動軸62との間で、締め付けばね63によって連結作用が生じる。したがって、原動ギア61がモータ10により回転せしめられると、この動力が従動軸62に伝達され、現像ローラ32(図1参照)が回転せしめられる。
【0036】
次に、制御部90がソレノイド80を電源ONの状態にした場合、ソレノイドフラッパ81が電磁石82に吸い寄せられて変位し、爪73がスリーブ71の歯72に係合する。歯72に爪73が係合すると、スリーブ71は、ブレーキが掛かり、回転が停止する。同時に、一端がスリーブ71に取り付けられた締め付けばね63と、締め付けばね63の他端が取り付けられた従動軸62の回転も停止する。この時、原動ギア61は回転したままであるので、原動ギア61のボス部61aと締め付けばね63との摩擦により、締め付けばね63にその拡張方向へのねじりが生じる。これにより、原動ギア61のボス部61aにおける締め付けばね63の締め付けが緩くなり、締め付けばね63のコイルの内側で原動ギア61のボス部61aが滑り、原動ギア61と締め付けばね63との連結が解除される。したがって、原動ギア61がモータ10により回転せしめられても、この動力が現像ローラ32に伝達されることはない。
【0037】
上記のような動力伝達動作を行うクラッチ装置50において、モータ10、すなわち原動ギア61の回転開始時に現像ローラ32を回転させる必要がない場合、図5に示すチャート図のように制御される。
【0038】
図5によると、モータ10を電源ONし、原動ギア61の回転を開始した後、制御部90は、締め付けばね63が少なくとも1回転するまで、ソレノイド80を電源OFFの状態にする。これにより、締め付けばね63が原動ギア61のボス部61aに巻き付き、原動ギア61と従動軸62との間で、締め付けばね63による連結作用が生じる。締め付けばね63が1回転すると、制御部90は、ソレノイド80を電源ONの状態にして、締め付けばね63にその拡張方向への十分なねじりを生じさせる。これにより、締め付けばね63のコイルの内側で原動ギア61のボス部61aが滑り、原動ギア61と締め付けばね63との連結が解除される。なお、制御部90が制御する、締め付けばね63が1回転するタイミングは、予め計測しておいた時間によって設定される。
【0039】
このようにして、原動軸に相当する原動ギア61が特定方向に回転する時に連結作用が生じるクラッチ要素である締め付けばね63と、前記特定方向に原動ギア61とともに回転する締め付けばね63を停止させ、原動ギア61から従動軸62への動力伝達を遮断する断続機構70とが設けられたクラッチ機構60を備えたクラッチ装置50において、制御部90は、原動ギア61の回転開始後、締め付けばね63が少なくとも1回転した後に、断続機構70を作用させ、原動ギア61から従動軸62への動力伝達を遮断するので、断続機構70を作用させる前に締め付けばね63に回転力を与えて、締め付けばね63を拡張させるに十分な摩擦力を原動ギア61のボス部61aから得ることが可能である。これにより、締め付けばね63とボス部61aとが磨耗したり、両者間で摩擦熱が発生したりする不具合が起こるのを防止しながら、原動ギア61の回転開始後、できるだけ早い段階で原動ギア61のみを回転させることができる。したがって、回転が不要なタイミングにある現像ローラ32をできるだけ長時間回転停止させることができ、現像ローラ32の長寿命化を図ることが可能な高性能なクラッチ装置50を得ることができる。
【0040】
また本発明では、上記クラッチ装置50を画像形成装置1に搭載したので、締め付けばね63とボス部61aとが磨耗したり、両者間で摩擦熱が発生したりする不具合が起こるのを防止しながら、原動ギア61の回転開始後、できるだけ早い段階で原動ギア61のみを回転させることができ、回転が不要なタイミングにある現像ローラ32をできるだけ長時間回転停止させることが可能な長寿命化が図られた画像形成装置1を得ることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、原動軸が特定方向に回転する時に連結作用が生じるクラッチ要素と、前記特定方向に原動軸とともに回転するクラッチ要素を停止させ、原動軸から従動軸への動力伝達を遮断する断続機構とを備えたクラッチ装置において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係るクラッチ装置を搭載した画像形成装置の模型的垂直断面左側面図である。
【図2】クラッチ装置周辺の斜視図である。
【図3】図2に示すクラッチ装置のクラッチ機構の垂直断面側面図である。
【図4】図3と同様のクラッチ機構の垂直断面側面図にして、原動ギアと従動軸との連結が解除された状態を示すものである。
【図5】クラッチ装置の動作を示す制御チャート図である。
【符号の説明】
【0044】
1 画像形成装置
10 モータ
30 画像形成部
32 現像ローラ
50 クラッチ装置
60 クラッチ機構
61 原動ギア(原動軸)
61a ボス部
62 従動軸
62a 軸部
63 締め付けばね(クラッチ要素)
70 断続機構
71 スリーブ
72 歯
73 爪
80 ソレノイド
81 ソレノイドフラッパ
90 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通軸線上に整列配置された原動軸、及び従動軸と、これらの両軸間に介在し、原動軸が特定方向に回転する時に連結作用が生じるクラッチ要素と、前記特定方向に原動軸とともに回転するクラッチ要素を停止させ、原動軸から従動軸への動力伝達を遮断する断続機構とが設けられたクラッチ機構と、前記断続機構の動作を制御する制御部とを備えたクラッチ装置において、
前記制御部は、前記原動軸の回転開始後、前記クラッチ要素が少なくとも1回転した後に、前記断続機構を作用させ、原動軸から前記従動軸への動力伝達を遮断することを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチ装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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