クランクシャフト及びエンジン
【課題】潤滑油に混入する金属粉などの異物を早期に除去することが可能なクランクシャフト及びエンジンを提供する。
【解決手段】シャフト内部に形成されたシャフト油路20内の潤滑油が、クランクピン5の内部に形成されたピン油路21を経て、流出油路22からクランクピン5の外部に流出する場合に、ピン油路21に繋がる異物捕集部24をクランクピン5内の室として少なくとも当該ピン油路21よりもシャフト径方向外側に設けることにより、シャフトの回転で生じる遠心力により潤滑油に混入した金属粉などの異物が異物捕集部24に捕集される。また、ピン油路21よりもシャフト径方向内側にも異物捕集部24を形成することで、エンジン停止時に重力で落下する捕集済みの異物を捕集することが可能となる。異物捕集部24は、ピン油路21と流出路22の連結点の潤滑油流れ方向上流側でも下流側でも異物を捕集することができる。
【解決手段】シャフト内部に形成されたシャフト油路20内の潤滑油が、クランクピン5の内部に形成されたピン油路21を経て、流出油路22からクランクピン5の外部に流出する場合に、ピン油路21に繋がる異物捕集部24をクランクピン5内の室として少なくとも当該ピン油路21よりもシャフト径方向外側に設けることにより、シャフトの回転で生じる遠心力により潤滑油に混入した金属粉などの異物が異物捕集部24に捕集される。また、ピン油路21よりもシャフト径方向内側にも異物捕集部24を形成することで、エンジン停止時に重力で落下する捕集済みの異物を捕集することが可能となる。異物捕集部24は、ピン油路21と流出路22の連結点の潤滑油流れ方向上流側でも下流側でも異物を捕集することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフト及びエンジンに関し、特にシャフト内部やクランクピン内部に潤滑油の油路が形成されたクランクシャフト及びエンジンに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
このようなクランクシャフトとしては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。このクランクシャフトは、例えば自動二輪車のエンジンに用いられるクランクシャフトのクランクピンに潤滑油が流入するピン油路を形成し、このピン油路に繋げてコネクティングロッドの大端穴内に潤滑油が流出する流出路を形成し、ピン油路から流出路を経て流出する潤滑油でコネクティングロッドの大端穴内を潤滑するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−345854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、潤滑油に混入する異物は、オイルフィルタで除去するのが一般的であるが、新しいエンジンの運転開始初期に発生する金属粉などの異物は、できるだけ早期に除去するのが望ましい。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、潤滑油に混入する金属粉などの異物を早期に除去することが可能なクランクシャフト及びエンジンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、発明の実施態様は、シャフト内部に形成されて潤滑油が流入するシャフト油路と、クランクピン内部に形成されて前記シャフト油路から潤滑油が流入するピン油路と、前記ピン油路から潤滑油をクランクピン外部に流出する流出油路とを備えたクランクピンにおいて、前記ピン油路に繋がり且つ少なくとも当該ピン油路よりもシャフト径方向外側に設けられた前記クランクピン内の室からなる異物捕集部を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
前記シャフト径方向とは、例えばクランクジャーナルの軸線に対する径方向と同等の意味である。
また、別の実施態様は、前記ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部と流出油路との間に、シャフト径方向内側向きの壁部を有することを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、前記異物捕集部は前記ピン油路よりもシャフト径方向内側にも設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
また、別の実施態様は、前記異物捕集部は前記ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側に設けられていることを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、前記異物捕集部は前記ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側に設けられていることを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、前記異物捕集部はクランクピンの軸線方向と軸線方向が平行な円孔形状としたことを特徴とするものである。
【0008】
また、別の実施態様は、前記シャフト油路とピン油路との連結位置を前記流出油路に対してクランクピン軸線方向にずらしたことを特徴とするものである。
シャフト油路とピン油路との連結位置については、例えばクランクシャフトとクランクピンとが一体である場合であっても、クランクピン以外のシャフト内部に形成されているシャフト油路と、クランクピン内部に形成されているピン油路とが連結(接続)している位置と定義する。つまり、クランクシャフトとクランクピントが一体であり、例えばシャフト油路とピン油路とが、クランクジャーナルからクランクピンにかけての一連の斜め穴である場合であっても、クランクピンに相当する部分以外のシャフト内部に形成されている部分がシャフト油路であり、クランクピンに相当する部分の内部に形成されている部分がピン油路であり、両者の接合位置がシャフト油路とピン油路との連結位置となる。
また、別の実施態様は、前記クランクシャフトを備えたことを特徴とするエンジンである。
【発明の効果】
【0009】
而して、発明の実施態様によれば、シャフト内部に形成されたシャフト油路内の潤滑油が、クランクピン内部に形成されたピン油路を経て、流出油路からクランクピン外部に流出する場合に、ピン油路に繋がる異物捕集部をクランクピン内の室として少なくとも当該ピン油路よりもシャフト径方向外側に設けたことにより、シャフトの回転で生じる遠心力により潤滑油に混入した金属粉などの異物が異物捕集部に捕集され、それらの異物を早期に除去することが可能となる。
【0010】
ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部と流出油路との間に、シャフト径方向内側向きの壁部を有することとしたため、異物捕集部に捕集された異物が流出油路に流出しにくい。
また、ピン油路よりもシャフト径方向内側にも異物捕集部を設けたことにより、ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部がエンジン停止時にピン油路より上方に位置した場合でも、ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部に捕集された異物は重力によりピン油路よりもシャフト径方向内側に異物捕集部に落下し、捕集される。
【0011】
また、ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側に異物捕集部を設けたことにより、流出油路から潤滑油が流出する前に、当該潤滑油に混入している異物を異物捕集部で捕集することができる。
また、ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側に異物捕集部を設けたことにより、潤滑油に混入している異物を慣性により潤滑油の流れ方向下流側の異物捕集部で捕集することができる。
【0012】
また、軸線方向がクランクピンの軸線方向と平行な円孔形状の異物捕集部としたことにより、ピン油路が異物捕集部の同一軸線であるような場合に、ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部と、ピン油路よりもシャフト径方向内側の異物捕集部とを同時に形成することができる。
また、シャフト油路とピン油路との連結位置を流出油路に対してクランクピン軸線方向にずらしたことにより、シャフト回転時の遠心力による異物捕集部での異物捕集を効果的に行うことができる。
また、前記クランクシャフトを用いたエンジンでは、エンジン内部で発生する異物を早期に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のクランクシャフト及びエンジンの作用の説明図である。
【図3】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第2実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第3実施形態を示す縦断面図である。
【図5】図4のクランクシャフト及びエンジンによる作用の説明図である。
【図6】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第4実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第5実施形態を示す縦断面図である。
【図8】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第6実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第7実施形態を示す縦断面図である。
【図10】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第8実施形態を示す縦断面図である。
【図11】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第9実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のクランクシャフト及びエンジンの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第1実施形態を示す縦断面図を示す。この縦断面図は、車両後面から見た状態での縦断面図であり、図の左方が車両の左方に、図の右方が車両の右方に相当する。このエンジンは、例えば自動二輪車に用いられるエンジンで、本実施形態ではシリンダが1つだけの単気筒エンジンである。なお、シリンダブロックなどは図示を省略している。
【0015】
図中の符号1はピストン、符号2はピストン1の内部に挿入されたピストンピン、符号4はクランクシャフト、符号5はクランクシャフト4に取付けられたクランクピン、符号3はピストンピン2とクランクピン5を連結するコネクティングロッド(コンロッド)、符号6はクランクピン5とコネクティングロッド3の大端穴との間に設けられたニードルベアリング、符号7はクランクシャフト4を車両の右方で支持する右クランクケース、符号8はクランクシャフト4を車両の左方で支持する左クランクケース、符号9はクランクシャフト4を回転自在に支持するベアリング、符号10はクランクケース7、8内の潤滑油を封止するオイルシール、符号11はクラッチ駆動用のプライマリドライブギヤ、符号12はクランクシャフト4の両端に取付けられたナット、符号13は潤滑油の流量を調整するオイルジェット、符号14は図示しないカムシャフト及びカムチェーンを駆動するためのカムチェーンドライブスプロケット、符号15はジェネレータカバー、符号16はクランクカバー、符号17はジェネレータ(発電機)である。
【0016】
本実施形態のクランクシャフト4は、クランクピン5が別体であり、これをクランクシャフト4に形成されているピン穴に緊密に嵌め込んで、所謂圧入して一体化している。また、本実施形態では、コネクティングロッド3の大端穴内にニードルベアリング6を介装し、滑らかな回転を実現している。本実施形態では、このニードルベアリング6などを潤滑するために、クランクピン5の内部から潤滑油を流出するように構成している。
【0017】
そのため、クランクシャフト4のシャフト径方向中央部には、図の右方端部、つまり車両の右方端部から、バランスウエイト部を貫通しないように中央穴18を形成すると共に、この中央穴18とクランクピン5のピン穴の図示右端部を繋ぐ斜め穴19を形成し、両者でシャフト内部のシャフト油路20を形成する。このシャフト油路20には、クランクカバー16に形成されたカバー油路23内の潤滑油がオイルジェット13を介して流入する。カバー油路23内には、図示しないオイルポンプで加圧された潤滑油が流入する。
【0018】
一方、クランクピン5には、前記シャフト油路20の斜め穴19に開口し且つそこからクランクピン5の軸線方向中央部に向けてシャフト径方向外側に向かう斜め穴、図の右下方から左上方への斜め穴(貫通せず)でピン油路21を形成し、そのシャフト径方向外側端部からコネクティングロッド3の大端穴側に向けて、径の小さい流出油路22を形成する。従って、シャフト油路20内の潤滑油は、クランクピン5のピン油路21を通って流出油路22からコネクティングロッド3の大端穴内に流出し、当該大端穴内に配設されているニードルベアリング6が潤滑される。
【0019】
また、本実施形態では、クランクピン5内部に、ピン油路21に対してシャフト径方向外側への室からなり且つ前記ピン油路21に繋がる異物捕集部24を形成している。本実施形態の異物捕集部24は、流出油路22に対して潤滑油流れ方向上流側に設けられている。また、ピン油路21に対してシャフト径方向外側への室からなる異物捕集部24は、流出油路22との間に壁部25を有する。前述したように、ピン油路21内の潤滑油は流出油路22に向けて流れる。このとき、潤滑油に金属粉などの異物が混入している場合、金属粉などの異物は潤滑油よりも比重が大きいので、クランクシャフト4の回転、即ちクランクピン5の偏芯回転に伴う遠心力の慣性も大きい。そのため、図2に示すように、潤滑油内の金属粉などの異物26はより強く飛ばされ、ピン油路21に対してシャフト径方向外側への室からなる異物捕集部24で捕集される。また、異物捕集部24と流出油路22の間には壁部25が存在するので、異物捕集部24に捕集された異物は流出油路22側に移動しにくく、異物が流出油路22から流出してしまうのを抑制防止することができる。
【0020】
この異物の捕集は、遠心力が異物に作用している時間、或いは区間が長いほど、効果が高い。そこで、本実施形態では、シャフト油路20とピン油路21との連結位置を流出油路22に対してクランクピン5の軸線方向にずらしている。これにより、例えばピン油路21の長手方向をシャフト径方向に対して交差する方向にレイアウトすることができ、遠心力が異物に作用している時間、或いは区間を長くすることができ、シャフト回転時の遠心力による異物捕集を効果的に行うことができる。
【0021】
新しいエンジンの運転開始時には、金属粉などの異物が生じやすく、早期に除去することが望まれる。後段に詳述するように、本実施形態のクランクシャフト及びエンジンでは、異物捕集部24に捕集された異物は時間の経過に伴って固化し、容易には流出しなくなることから、エンジン運転開始時の金属粉などの異物を効果的に捕集し、潤滑油から除去することが可能となる。
【0022】
このように本実施形態のクランクシャフト及びエンジンでは、シャフト内部に形成されたシャフト油路20内の潤滑油が、クランクピン5の内部に形成されたピン油路21を経て、流出油路22からクランクピン5の外部に流出する場合に、ピン油路21に繋がる異物捕集部24をクランクピン5内の室として少なくとも当該ピン油路21よりもシャフト径方向外側に設けたことにより、シャフトの回転で生じる遠心力により潤滑油に混入した金属粉などの異物が異物捕集部24に捕集され、それらの異物を早期に除去することが可能となる。
【0023】
また、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側に異物捕集部24を設けたことにより、流出油路22から潤滑油が流出する前に、当該潤滑油に混入している異物を異物捕集部24で捕集することができる。
また、シャフト油路20とピン油路21との連結位置を流出油路22に対してクランクピン5の軸線方向にずらしたことにより、シャフト回転時の遠心力による異物捕集部24での異物捕集を効果的に行うことができる。
【0024】
図3は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第2実施形態を示すものであり、図3aはクランクシャフトのクランクピン近傍の縦断面図、図3bは図3aの詳細図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、図3に示すように、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成し、ピン油路21も、同図に二点鎖線で示すように、ピン径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成している。そして、ピン油路21はシャフト油路20に繋がり、シャフト油路20内の潤滑油がピン油路21に流入する。
【0025】
本実施形態も、ピン油路21に対して、シャフト径方向外側に異物捕集部24が設けられているが、この異物捕集部24は、ピン油路21に対して、シャフト径方向内側にもクランクピン5内の室として設けられている。本実施形態でも、潤滑油に混入している金属粉などの異物は、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24に遠心力で捕集される。この捕集された異物は、エンジンの長い運転期間後、固化してしまうのであるが、捕集されたばかりの異物は固化していない。
【0026】
一方、エンジン、即ちクランクシャフトの停止位置は決まっていない。異物捕集部24がピン油路21よりもシャフト径方向外側だけである場合、エンジン停止時、異物捕集部24はピン油路21よりも鉛直方向下方になることもあれば、鉛直方向上方になることもある。エンジン停止時に、ピン油路21よりもシャフト径方向外側だけの異物捕集部24がピン油路21よりも鉛直方向下方であれば、当該シャフト径方向外側だけの異物捕集部24に捕集された異物は、エンジン停止後も、当該異物捕集部24に捕集されたままとなる。
【0027】
しかしながら、エンジン停止時に、ピン油路21よりもシャフト径方向外側だけの異物捕集部24がピン油路21よりも鉛直方向上方になると、当該シャフト径方向外側だけの異物捕集部24に捕集された異物はピン油路21に重力で落下してしまう。そこで、本実施形態では、ピン油路21よりもシャフト径方向内側にも異物捕集部24を形成し、仮にエンジン停止時に、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24がピン油路21よりも鉛直方向上方になっても、当該シャフト径方向外側だけの異物捕集部24に捕集された異物はシャフト径方向内側の異物捕集部24に重力で落下し、結果的に捕集された異物がピン油路21に流れ出ないようにしている。
【0028】
また、本実施形態では、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側だけでなく、潤滑油の流れ方向下流側にも異物捕集部24が設けられている。ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側の異物捕集部24では、図3bに矢印aで示すように、ピン油路21を流れる潤滑油内の異物を直接的に遠心力で捕集する。一方、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側の異物捕集部24では、図3bに矢印bで示すように、ピン油路21内の潤滑油の流れの慣性で異物が当該潤滑油の流れ方向下流側の異物捕集部24に流れ込み、流れ込んだ後、遠心力でピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24に捕集される。
【0029】
また、ピン油路21と流出油路22との連結位置より潤滑油の流れ方向下流側でも、ピン油路21よりもシャフト径方向内側に異物捕集部24が形成されており、重力によってピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24から落下する異物を捕集することができるように構成されている。
このように、本実施形態のクランクシャフト及びエンジンでは、前記第1実施形態のクランクシャフト及びエンジンに加え、ピン油路21よりもシャフト径方向内側にも異物捕集部24を設けたことにより、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24がエンジン停止時にピン油路21より上方に位置した場合でも、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24に捕集された異物は重力によりピン油路21よりもシャフト径方向内側に異物捕集部24に落下し、捕集される。
【0030】
また、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側に異物捕集部24を設けたことにより、潤滑油に混入している異物を慣性により潤滑油の流れ方向下流側の異物捕集部24で捕集することができる。
図4は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第3実施形態を示す縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態のシャフト油路20は、前記第1実施形態の図1と同様であるが、ピン油路21は、前記第2実施形態の図3と同様に、ピン径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成している。
【0031】
本実施形態でも、前記第2実施形態と同様に、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側及び下流側の夫々で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側にもシャフト径方向内側にも異物捕集部24を設けている。その際、本実施形態では、クランクシャフト4と別体のクランクピン5の軸線方向両端から、ピン油路21の中央穴より大径の穴部を同軸に形成し、クランクピン5の軸線方向両端面の開口をプラグ(盲栓)26で閉塞した。ピン油路21の中央穴より大径の穴部は、例えばドリルを用いた機械加工によって形成することができる。このようにすることにより、特にクランクピン5がクランクシャフト4と別体である場合に、異物捕集部24を形成しやすい。
【0032】
図5は、図4のクランクピン5からプラグ26を抜き取り、異物捕集部24の内部を観察したものである。図中で波のように見えているのが、捕集された異物であり、長期間のエンジンの運転によって固化している。潤滑油に混入する金属粉などの異物は、新しいエンジンの運転開始当初に主に発生するため、図のように捕集し、潤滑油中から除去することができれば、その後に、多量に発生することはないことから、本実施形態の異物捕集が効果的であることが分かる。
【0033】
このように、本実施形態のクランクシャフト及びエンジンでは、前記第1実施形態、第2実施形態の効果に加え、軸線方向がクランクピン5の軸線方向と平行な円孔形状の異物捕集部24とすることにより、ピン油路21が異物捕集部24の同一軸線である場合に、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24と、ピン油路21よりもシャフト径方向内側の異物捕集部24とを同時に形成することができる。
【0034】
図6は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第4実施形態を示すものであり、クランクピンのみの縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、前記第2実施形態と同様に、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成し、ピン油路21も、前記第2実施形態と同様に、ピン径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成している。
【0035】
本実施形態では、クランクシャフト4と別体のクランクピン5の軸線方向図示左方端部から、ピン油路21の中央穴より大径の穴部を形成し、クランクピン5の軸線方向図示左方端部の開口をプラグ26で閉塞することにより、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側とシャフト径方向内側に異物捕集部24を形成した。
【0036】
図7は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第5実施形態を示すものであり、クランクピンのみの縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、前記第1実施形態と同様に、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに交差する斜め穴で形成し、ピン油路21も、同様に、ピン径方向中央部の中央穴と、それに交差する斜め穴で形成している。
【0037】
本実施形態では、クランクシャフト4と別体のクランクピン5の軸線方向図示右方端部から、ピン油路21の中央穴より大径の穴部を形成し、クランクピン5の軸線方向図示右方端部の開口をプラグ26で閉塞することにより、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側とシャフト径方向内側に異物捕集部24を形成した。
【0038】
図8は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第6実施形態を示すものであり、クランクピンのみの縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、前記第1実施形態と同様に、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに交差する斜め穴で形成し、ピン油路21も、同様に、ピン径方向中央部の中央穴と、それに交差する斜め穴で形成している。
【0039】
本実施形態では、クランクシャフト4と別体のクランクピン5の軸線方向図示右方端部及び左方端部から、ピン油路21の中央穴より大径の穴部を形成し、クランクピン5の軸線方向図示右方端部及び左方端部の開口をプラグ26で閉塞することにより、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側及び下流側で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側とシャフト径方向内側に異物捕集部24を形成した。
【0040】
図9は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第7実施形態を示すクランクシャフトのクランクピン近傍の縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、前記第2実施形態と同様に、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成し、ピン油路21は、前記第1実施形態と同様に、シャフト油路20の直交穴に開口し且つそこからクランクピン5の軸線方向中央部に向けてシャフト径方向外側に向かう斜め穴、つまり図の右下方から左上方に向かう斜め穴で形成した。
【0041】
本実施形態では、このクランクピン5の軸線方向中央部に向けてシャフト径方向外側に向かう斜め穴からなるピン油路21と同軸に、当該ピン油路21のシャフト油路20繋がり側とは反対側から、当該ピン油路21より大径の斜め穴部を形成し、その斜め穴部を異物捕集部24としている。従って、この異物捕集部24は、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側に形成されている。この異物捕集部24のクランクピン5の外周の開口はクランクシャフト4のピン穴の内周で閉塞されるため、プラグなどの閉塞部材を用いなくても自動的に閉塞されている。
【0042】
図10は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第8実施形態を示すクランクシャフトのクランクピン近傍の縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態のシャフト油路20及びピン油路21は、前記図9の第7実施形態と同様であり、また当該ピン油路21と同軸に形成された異物捕集部24も、前記図9の第7実施形態と同様であるから、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施形態では、更に、クランクシャフト4とは別体のクランクピン5の図示右方端部から、ピン径方向中央部にピン油路21より大径の穴部を形成し、その穴部の図示右方端部開口をプラグ26で閉塞して異物捕集部24を形成している。この異物捕集部24は、ピン油路21と流出油路22の連結位置より潤滑油の流れ方向上流側に位置し、ピン油路21よりもシャフト径方向外側及び内側に位置している。
【0044】
図11は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第9実施形態を示すクランクシャフトのクランクピン近傍の縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態のシャフト油路20及びピン油路21は、前記図9の第7実施形態と同様であり、また当該ピン油路21と同軸に形成された異物捕集部24も、前記図9の第7実施形態と同様であるから、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、更に、クランクシャフト4とは別体のクランクピン5の前記ピン油路21とシャフト油路20の連結位置から当該クランクピン5の径方向に貫通穴を形成し、この貫通穴を異物捕集部24としている。この異物捕集部24の前記ピン油路21とシャフト油路20の連結位置と反対側のクランクピン5の外周の開口はクランクシャフト4のピン穴の内周で閉塞される。従って、この異物捕集部24は、ピン油路21と流出油路22の連結位置より潤滑油の流れ方向上流側に位置し、ピン油路21よりもシャフト径方向外側に位置している。
【0046】
前記図6〜図11に示す第4〜第9実施形態も、前記第1〜第3実施形態の異物捕集部24と同様に、潤滑油に混入している金属粉などの異物を捕集する効果を有する。
なお、前記各実施形態では、クランクカバー16に設けられたカバー油路23からクランクシャフト4のシャフト油路20に潤滑油が供給される構成としたが、クランクシャフト4のシャフト油路20への潤滑油の供給形態はこれに限定されるものではなく、例えばクランクジャーナルなどから潤滑油が供給されるようなものについても、本発明のクランクシャフト及びエンジンは同様に適用可能である。
【0047】
また、前記各実施形態では、クランクピン5をクランクシャフト4と別体としたが、クランクピン5をクランクシャフト4と一体化しても差し支えない。
また、前記各実施形態では、単気筒エンジン及びそれに用いられるクランクシャフトについてのみ詳述したが、本発明のクランクシャフト及びエンジンは、多気筒エンジン及びそれに用いられるクランクシャフトにも同様に適用可能である。また、多気筒エンジンの場合のエンジンの形式も、直列エンジン、V型エンジンなど種々のエンジン形式に同様に適用可能である。
また、エンジンの搭載車両も、自動二輪車に限らず、四輪乗用車や貨物車両など、種々の車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1はピストン
2はピストンピン
3はコネクティングロッド
4はクランクシャフト
5はクランクピン
6はニードルベアリング
7は右クランクケース
8は左クランクケース
9はベアリング
10はオイルシール
11はプライマリドライブギヤ
12はナット
13はオイルジェット
14はカムチェーンドライブスプロケット
15はジェネレータカバー
16はクランクカバー
17はジェネレータ
18は中央穴
19は斜め穴
20はシャフト油路
21はピン油路
22は流出油路
23はカバー油路
24は異物捕集部
25は壁部
26はプラグ(盲栓)
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフト及びエンジンに関し、特にシャフト内部やクランクピン内部に潤滑油の油路が形成されたクランクシャフト及びエンジンに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
このようなクランクシャフトとしては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。このクランクシャフトは、例えば自動二輪車のエンジンに用いられるクランクシャフトのクランクピンに潤滑油が流入するピン油路を形成し、このピン油路に繋げてコネクティングロッドの大端穴内に潤滑油が流出する流出路を形成し、ピン油路から流出路を経て流出する潤滑油でコネクティングロッドの大端穴内を潤滑するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−345854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、潤滑油に混入する異物は、オイルフィルタで除去するのが一般的であるが、新しいエンジンの運転開始初期に発生する金属粉などの異物は、できるだけ早期に除去するのが望ましい。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、潤滑油に混入する金属粉などの異物を早期に除去することが可能なクランクシャフト及びエンジンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、発明の実施態様は、シャフト内部に形成されて潤滑油が流入するシャフト油路と、クランクピン内部に形成されて前記シャフト油路から潤滑油が流入するピン油路と、前記ピン油路から潤滑油をクランクピン外部に流出する流出油路とを備えたクランクピンにおいて、前記ピン油路に繋がり且つ少なくとも当該ピン油路よりもシャフト径方向外側に設けられた前記クランクピン内の室からなる異物捕集部を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
前記シャフト径方向とは、例えばクランクジャーナルの軸線に対する径方向と同等の意味である。
また、別の実施態様は、前記ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部と流出油路との間に、シャフト径方向内側向きの壁部を有することを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、前記異物捕集部は前記ピン油路よりもシャフト径方向内側にも設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
また、別の実施態様は、前記異物捕集部は前記ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側に設けられていることを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、前記異物捕集部は前記ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側に設けられていることを特徴とするものである。
また、別の実施態様は、前記異物捕集部はクランクピンの軸線方向と軸線方向が平行な円孔形状としたことを特徴とするものである。
【0008】
また、別の実施態様は、前記シャフト油路とピン油路との連結位置を前記流出油路に対してクランクピン軸線方向にずらしたことを特徴とするものである。
シャフト油路とピン油路との連結位置については、例えばクランクシャフトとクランクピンとが一体である場合であっても、クランクピン以外のシャフト内部に形成されているシャフト油路と、クランクピン内部に形成されているピン油路とが連結(接続)している位置と定義する。つまり、クランクシャフトとクランクピントが一体であり、例えばシャフト油路とピン油路とが、クランクジャーナルからクランクピンにかけての一連の斜め穴である場合であっても、クランクピンに相当する部分以外のシャフト内部に形成されている部分がシャフト油路であり、クランクピンに相当する部分の内部に形成されている部分がピン油路であり、両者の接合位置がシャフト油路とピン油路との連結位置となる。
また、別の実施態様は、前記クランクシャフトを備えたことを特徴とするエンジンである。
【発明の効果】
【0009】
而して、発明の実施態様によれば、シャフト内部に形成されたシャフト油路内の潤滑油が、クランクピン内部に形成されたピン油路を経て、流出油路からクランクピン外部に流出する場合に、ピン油路に繋がる異物捕集部をクランクピン内の室として少なくとも当該ピン油路よりもシャフト径方向外側に設けたことにより、シャフトの回転で生じる遠心力により潤滑油に混入した金属粉などの異物が異物捕集部に捕集され、それらの異物を早期に除去することが可能となる。
【0010】
ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部と流出油路との間に、シャフト径方向内側向きの壁部を有することとしたため、異物捕集部に捕集された異物が流出油路に流出しにくい。
また、ピン油路よりもシャフト径方向内側にも異物捕集部を設けたことにより、ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部がエンジン停止時にピン油路より上方に位置した場合でも、ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部に捕集された異物は重力によりピン油路よりもシャフト径方向内側に異物捕集部に落下し、捕集される。
【0011】
また、ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側に異物捕集部を設けたことにより、流出油路から潤滑油が流出する前に、当該潤滑油に混入している異物を異物捕集部で捕集することができる。
また、ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側に異物捕集部を設けたことにより、潤滑油に混入している異物を慣性により潤滑油の流れ方向下流側の異物捕集部で捕集することができる。
【0012】
また、軸線方向がクランクピンの軸線方向と平行な円孔形状の異物捕集部としたことにより、ピン油路が異物捕集部の同一軸線であるような場合に、ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部と、ピン油路よりもシャフト径方向内側の異物捕集部とを同時に形成することができる。
また、シャフト油路とピン油路との連結位置を流出油路に対してクランクピン軸線方向にずらしたことにより、シャフト回転時の遠心力による異物捕集部での異物捕集を効果的に行うことができる。
また、前記クランクシャフトを用いたエンジンでは、エンジン内部で発生する異物を早期に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のクランクシャフト及びエンジンの作用の説明図である。
【図3】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第2実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第3実施形態を示す縦断面図である。
【図5】図4のクランクシャフト及びエンジンによる作用の説明図である。
【図6】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第4実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第5実施形態を示す縦断面図である。
【図8】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第6実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第7実施形態を示す縦断面図である。
【図10】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第8実施形態を示す縦断面図である。
【図11】本発明のクランクシャフト及びエンジンの第9実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のクランクシャフト及びエンジンの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第1実施形態を示す縦断面図を示す。この縦断面図は、車両後面から見た状態での縦断面図であり、図の左方が車両の左方に、図の右方が車両の右方に相当する。このエンジンは、例えば自動二輪車に用いられるエンジンで、本実施形態ではシリンダが1つだけの単気筒エンジンである。なお、シリンダブロックなどは図示を省略している。
【0015】
図中の符号1はピストン、符号2はピストン1の内部に挿入されたピストンピン、符号4はクランクシャフト、符号5はクランクシャフト4に取付けられたクランクピン、符号3はピストンピン2とクランクピン5を連結するコネクティングロッド(コンロッド)、符号6はクランクピン5とコネクティングロッド3の大端穴との間に設けられたニードルベアリング、符号7はクランクシャフト4を車両の右方で支持する右クランクケース、符号8はクランクシャフト4を車両の左方で支持する左クランクケース、符号9はクランクシャフト4を回転自在に支持するベアリング、符号10はクランクケース7、8内の潤滑油を封止するオイルシール、符号11はクラッチ駆動用のプライマリドライブギヤ、符号12はクランクシャフト4の両端に取付けられたナット、符号13は潤滑油の流量を調整するオイルジェット、符号14は図示しないカムシャフト及びカムチェーンを駆動するためのカムチェーンドライブスプロケット、符号15はジェネレータカバー、符号16はクランクカバー、符号17はジェネレータ(発電機)である。
【0016】
本実施形態のクランクシャフト4は、クランクピン5が別体であり、これをクランクシャフト4に形成されているピン穴に緊密に嵌め込んで、所謂圧入して一体化している。また、本実施形態では、コネクティングロッド3の大端穴内にニードルベアリング6を介装し、滑らかな回転を実現している。本実施形態では、このニードルベアリング6などを潤滑するために、クランクピン5の内部から潤滑油を流出するように構成している。
【0017】
そのため、クランクシャフト4のシャフト径方向中央部には、図の右方端部、つまり車両の右方端部から、バランスウエイト部を貫通しないように中央穴18を形成すると共に、この中央穴18とクランクピン5のピン穴の図示右端部を繋ぐ斜め穴19を形成し、両者でシャフト内部のシャフト油路20を形成する。このシャフト油路20には、クランクカバー16に形成されたカバー油路23内の潤滑油がオイルジェット13を介して流入する。カバー油路23内には、図示しないオイルポンプで加圧された潤滑油が流入する。
【0018】
一方、クランクピン5には、前記シャフト油路20の斜め穴19に開口し且つそこからクランクピン5の軸線方向中央部に向けてシャフト径方向外側に向かう斜め穴、図の右下方から左上方への斜め穴(貫通せず)でピン油路21を形成し、そのシャフト径方向外側端部からコネクティングロッド3の大端穴側に向けて、径の小さい流出油路22を形成する。従って、シャフト油路20内の潤滑油は、クランクピン5のピン油路21を通って流出油路22からコネクティングロッド3の大端穴内に流出し、当該大端穴内に配設されているニードルベアリング6が潤滑される。
【0019】
また、本実施形態では、クランクピン5内部に、ピン油路21に対してシャフト径方向外側への室からなり且つ前記ピン油路21に繋がる異物捕集部24を形成している。本実施形態の異物捕集部24は、流出油路22に対して潤滑油流れ方向上流側に設けられている。また、ピン油路21に対してシャフト径方向外側への室からなる異物捕集部24は、流出油路22との間に壁部25を有する。前述したように、ピン油路21内の潤滑油は流出油路22に向けて流れる。このとき、潤滑油に金属粉などの異物が混入している場合、金属粉などの異物は潤滑油よりも比重が大きいので、クランクシャフト4の回転、即ちクランクピン5の偏芯回転に伴う遠心力の慣性も大きい。そのため、図2に示すように、潤滑油内の金属粉などの異物26はより強く飛ばされ、ピン油路21に対してシャフト径方向外側への室からなる異物捕集部24で捕集される。また、異物捕集部24と流出油路22の間には壁部25が存在するので、異物捕集部24に捕集された異物は流出油路22側に移動しにくく、異物が流出油路22から流出してしまうのを抑制防止することができる。
【0020】
この異物の捕集は、遠心力が異物に作用している時間、或いは区間が長いほど、効果が高い。そこで、本実施形態では、シャフト油路20とピン油路21との連結位置を流出油路22に対してクランクピン5の軸線方向にずらしている。これにより、例えばピン油路21の長手方向をシャフト径方向に対して交差する方向にレイアウトすることができ、遠心力が異物に作用している時間、或いは区間を長くすることができ、シャフト回転時の遠心力による異物捕集を効果的に行うことができる。
【0021】
新しいエンジンの運転開始時には、金属粉などの異物が生じやすく、早期に除去することが望まれる。後段に詳述するように、本実施形態のクランクシャフト及びエンジンでは、異物捕集部24に捕集された異物は時間の経過に伴って固化し、容易には流出しなくなることから、エンジン運転開始時の金属粉などの異物を効果的に捕集し、潤滑油から除去することが可能となる。
【0022】
このように本実施形態のクランクシャフト及びエンジンでは、シャフト内部に形成されたシャフト油路20内の潤滑油が、クランクピン5の内部に形成されたピン油路21を経て、流出油路22からクランクピン5の外部に流出する場合に、ピン油路21に繋がる異物捕集部24をクランクピン5内の室として少なくとも当該ピン油路21よりもシャフト径方向外側に設けたことにより、シャフトの回転で生じる遠心力により潤滑油に混入した金属粉などの異物が異物捕集部24に捕集され、それらの異物を早期に除去することが可能となる。
【0023】
また、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側に異物捕集部24を設けたことにより、流出油路22から潤滑油が流出する前に、当該潤滑油に混入している異物を異物捕集部24で捕集することができる。
また、シャフト油路20とピン油路21との連結位置を流出油路22に対してクランクピン5の軸線方向にずらしたことにより、シャフト回転時の遠心力による異物捕集部24での異物捕集を効果的に行うことができる。
【0024】
図3は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第2実施形態を示すものであり、図3aはクランクシャフトのクランクピン近傍の縦断面図、図3bは図3aの詳細図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、図3に示すように、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成し、ピン油路21も、同図に二点鎖線で示すように、ピン径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成している。そして、ピン油路21はシャフト油路20に繋がり、シャフト油路20内の潤滑油がピン油路21に流入する。
【0025】
本実施形態も、ピン油路21に対して、シャフト径方向外側に異物捕集部24が設けられているが、この異物捕集部24は、ピン油路21に対して、シャフト径方向内側にもクランクピン5内の室として設けられている。本実施形態でも、潤滑油に混入している金属粉などの異物は、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24に遠心力で捕集される。この捕集された異物は、エンジンの長い運転期間後、固化してしまうのであるが、捕集されたばかりの異物は固化していない。
【0026】
一方、エンジン、即ちクランクシャフトの停止位置は決まっていない。異物捕集部24がピン油路21よりもシャフト径方向外側だけである場合、エンジン停止時、異物捕集部24はピン油路21よりも鉛直方向下方になることもあれば、鉛直方向上方になることもある。エンジン停止時に、ピン油路21よりもシャフト径方向外側だけの異物捕集部24がピン油路21よりも鉛直方向下方であれば、当該シャフト径方向外側だけの異物捕集部24に捕集された異物は、エンジン停止後も、当該異物捕集部24に捕集されたままとなる。
【0027】
しかしながら、エンジン停止時に、ピン油路21よりもシャフト径方向外側だけの異物捕集部24がピン油路21よりも鉛直方向上方になると、当該シャフト径方向外側だけの異物捕集部24に捕集された異物はピン油路21に重力で落下してしまう。そこで、本実施形態では、ピン油路21よりもシャフト径方向内側にも異物捕集部24を形成し、仮にエンジン停止時に、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24がピン油路21よりも鉛直方向上方になっても、当該シャフト径方向外側だけの異物捕集部24に捕集された異物はシャフト径方向内側の異物捕集部24に重力で落下し、結果的に捕集された異物がピン油路21に流れ出ないようにしている。
【0028】
また、本実施形態では、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側だけでなく、潤滑油の流れ方向下流側にも異物捕集部24が設けられている。ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側の異物捕集部24では、図3bに矢印aで示すように、ピン油路21を流れる潤滑油内の異物を直接的に遠心力で捕集する。一方、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側の異物捕集部24では、図3bに矢印bで示すように、ピン油路21内の潤滑油の流れの慣性で異物が当該潤滑油の流れ方向下流側の異物捕集部24に流れ込み、流れ込んだ後、遠心力でピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24に捕集される。
【0029】
また、ピン油路21と流出油路22との連結位置より潤滑油の流れ方向下流側でも、ピン油路21よりもシャフト径方向内側に異物捕集部24が形成されており、重力によってピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24から落下する異物を捕集することができるように構成されている。
このように、本実施形態のクランクシャフト及びエンジンでは、前記第1実施形態のクランクシャフト及びエンジンに加え、ピン油路21よりもシャフト径方向内側にも異物捕集部24を設けたことにより、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24がエンジン停止時にピン油路21より上方に位置した場合でも、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24に捕集された異物は重力によりピン油路21よりもシャフト径方向内側に異物捕集部24に落下し、捕集される。
【0030】
また、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側に異物捕集部24を設けたことにより、潤滑油に混入している異物を慣性により潤滑油の流れ方向下流側の異物捕集部24で捕集することができる。
図4は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第3実施形態を示す縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態のシャフト油路20は、前記第1実施形態の図1と同様であるが、ピン油路21は、前記第2実施形態の図3と同様に、ピン径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成している。
【0031】
本実施形態でも、前記第2実施形態と同様に、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側及び下流側の夫々で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側にもシャフト径方向内側にも異物捕集部24を設けている。その際、本実施形態では、クランクシャフト4と別体のクランクピン5の軸線方向両端から、ピン油路21の中央穴より大径の穴部を同軸に形成し、クランクピン5の軸線方向両端面の開口をプラグ(盲栓)26で閉塞した。ピン油路21の中央穴より大径の穴部は、例えばドリルを用いた機械加工によって形成することができる。このようにすることにより、特にクランクピン5がクランクシャフト4と別体である場合に、異物捕集部24を形成しやすい。
【0032】
図5は、図4のクランクピン5からプラグ26を抜き取り、異物捕集部24の内部を観察したものである。図中で波のように見えているのが、捕集された異物であり、長期間のエンジンの運転によって固化している。潤滑油に混入する金属粉などの異物は、新しいエンジンの運転開始当初に主に発生するため、図のように捕集し、潤滑油中から除去することができれば、その後に、多量に発生することはないことから、本実施形態の異物捕集が効果的であることが分かる。
【0033】
このように、本実施形態のクランクシャフト及びエンジンでは、前記第1実施形態、第2実施形態の効果に加え、軸線方向がクランクピン5の軸線方向と平行な円孔形状の異物捕集部24とすることにより、ピン油路21が異物捕集部24の同一軸線である場合に、ピン油路21よりもシャフト径方向外側の異物捕集部24と、ピン油路21よりもシャフト径方向内側の異物捕集部24とを同時に形成することができる。
【0034】
図6は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第4実施形態を示すものであり、クランクピンのみの縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、前記第2実施形態と同様に、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成し、ピン油路21も、前記第2実施形態と同様に、ピン径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成している。
【0035】
本実施形態では、クランクシャフト4と別体のクランクピン5の軸線方向図示左方端部から、ピン油路21の中央穴より大径の穴部を形成し、クランクピン5の軸線方向図示左方端部の開口をプラグ26で閉塞することにより、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側とシャフト径方向内側に異物捕集部24を形成した。
【0036】
図7は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第5実施形態を示すものであり、クランクピンのみの縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、前記第1実施形態と同様に、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに交差する斜め穴で形成し、ピン油路21も、同様に、ピン径方向中央部の中央穴と、それに交差する斜め穴で形成している。
【0037】
本実施形態では、クランクシャフト4と別体のクランクピン5の軸線方向図示右方端部から、ピン油路21の中央穴より大径の穴部を形成し、クランクピン5の軸線方向図示右方端部の開口をプラグ26で閉塞することにより、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側とシャフト径方向内側に異物捕集部24を形成した。
【0038】
図8は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第6実施形態を示すものであり、クランクピンのみの縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、前記第1実施形態と同様に、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに交差する斜め穴で形成し、ピン油路21も、同様に、ピン径方向中央部の中央穴と、それに交差する斜め穴で形成している。
【0039】
本実施形態では、クランクシャフト4と別体のクランクピン5の軸線方向図示右方端部及び左方端部から、ピン油路21の中央穴より大径の穴部を形成し、クランクピン5の軸線方向図示右方端部及び左方端部の開口をプラグ26で閉塞することにより、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側及び下流側で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側とシャフト径方向内側に異物捕集部24を形成した。
【0040】
図9は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第7実施形態を示すクランクシャフトのクランクピン近傍の縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シャフト油路20を、前記第2実施形態と同様に、シャフト径方向中央部の中央穴と、それに直交する直交穴でL字状に形成し、ピン油路21は、前記第1実施形態と同様に、シャフト油路20の直交穴に開口し且つそこからクランクピン5の軸線方向中央部に向けてシャフト径方向外側に向かう斜め穴、つまり図の右下方から左上方に向かう斜め穴で形成した。
【0041】
本実施形態では、このクランクピン5の軸線方向中央部に向けてシャフト径方向外側に向かう斜め穴からなるピン油路21と同軸に、当該ピン油路21のシャフト油路20繋がり側とは反対側から、当該ピン油路21より大径の斜め穴部を形成し、その斜め穴部を異物捕集部24としている。従って、この異物捕集部24は、ピン油路21と流出油路22との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側で、ピン油路21よりもシャフト径方向外側に形成されている。この異物捕集部24のクランクピン5の外周の開口はクランクシャフト4のピン穴の内周で閉塞されるため、プラグなどの閉塞部材を用いなくても自動的に閉塞されている。
【0042】
図10は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第8実施形態を示すクランクシャフトのクランクピン近傍の縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態のシャフト油路20及びピン油路21は、前記図9の第7実施形態と同様であり、また当該ピン油路21と同軸に形成された異物捕集部24も、前記図9の第7実施形態と同様であるから、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施形態では、更に、クランクシャフト4とは別体のクランクピン5の図示右方端部から、ピン径方向中央部にピン油路21より大径の穴部を形成し、その穴部の図示右方端部開口をプラグ26で閉塞して異物捕集部24を形成している。この異物捕集部24は、ピン油路21と流出油路22の連結位置より潤滑油の流れ方向上流側に位置し、ピン油路21よりもシャフト径方向外側及び内側に位置している。
【0044】
図11は、本発明のクランクシャフト及びエンジンの第9実施形態を示すクランクシャフトのクランクピン近傍の縦断面図である。本実施形態のクランクシャフト及びエンジンの主要な構成は、前記図1の第1実施形態と同様であり、同様の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態のシャフト油路20及びピン油路21は、前記図9の第7実施形態と同様であり、また当該ピン油路21と同軸に形成された異物捕集部24も、前記図9の第7実施形態と同様であるから、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、更に、クランクシャフト4とは別体のクランクピン5の前記ピン油路21とシャフト油路20の連結位置から当該クランクピン5の径方向に貫通穴を形成し、この貫通穴を異物捕集部24としている。この異物捕集部24の前記ピン油路21とシャフト油路20の連結位置と反対側のクランクピン5の外周の開口はクランクシャフト4のピン穴の内周で閉塞される。従って、この異物捕集部24は、ピン油路21と流出油路22の連結位置より潤滑油の流れ方向上流側に位置し、ピン油路21よりもシャフト径方向外側に位置している。
【0046】
前記図6〜図11に示す第4〜第9実施形態も、前記第1〜第3実施形態の異物捕集部24と同様に、潤滑油に混入している金属粉などの異物を捕集する効果を有する。
なお、前記各実施形態では、クランクカバー16に設けられたカバー油路23からクランクシャフト4のシャフト油路20に潤滑油が供給される構成としたが、クランクシャフト4のシャフト油路20への潤滑油の供給形態はこれに限定されるものではなく、例えばクランクジャーナルなどから潤滑油が供給されるようなものについても、本発明のクランクシャフト及びエンジンは同様に適用可能である。
【0047】
また、前記各実施形態では、クランクピン5をクランクシャフト4と別体としたが、クランクピン5をクランクシャフト4と一体化しても差し支えない。
また、前記各実施形態では、単気筒エンジン及びそれに用いられるクランクシャフトについてのみ詳述したが、本発明のクランクシャフト及びエンジンは、多気筒エンジン及びそれに用いられるクランクシャフトにも同様に適用可能である。また、多気筒エンジンの場合のエンジンの形式も、直列エンジン、V型エンジンなど種々のエンジン形式に同様に適用可能である。
また、エンジンの搭載車両も、自動二輪車に限らず、四輪乗用車や貨物車両など、種々の車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1はピストン
2はピストンピン
3はコネクティングロッド
4はクランクシャフト
5はクランクピン
6はニードルベアリング
7は右クランクケース
8は左クランクケース
9はベアリング
10はオイルシール
11はプライマリドライブギヤ
12はナット
13はオイルジェット
14はカムチェーンドライブスプロケット
15はジェネレータカバー
16はクランクカバー
17はジェネレータ
18は中央穴
19は斜め穴
20はシャフト油路
21はピン油路
22は流出油路
23はカバー油路
24は異物捕集部
25は壁部
26はプラグ(盲栓)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト内部に形成されて潤滑油が流入するシャフト油路と、クランクピン内部に形成されて前記シャフト油路から潤滑油が流入するピン油路と、前記ピン油路から潤滑油をクランクピン外部に流出する流出油路とを備えたクランクシャフトにおいて、前記ピン油路に繋がり且つ少なくとも当該ピン油路よりもシャフト径方向外側に設けられたクランクピン内の室からなる異物捕集部を備えたことを特徴とするクランクシャフト。
【請求項2】
前記ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部と流出油路との間に、シャフト径方向内側向きの壁部を有することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフト。
【請求項3】
前記異物捕集部は前記ピン油路よりもシャフト径方向内側にも設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクランクシャフト。
【請求項4】
前記異物捕集部は前記ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のクランクシャフト。
【請求項5】
前記異物捕集部は前記ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のクランクシャフト。
【請求項6】
前記異物捕集部はクランクピンの軸線方向と長手方向が平行な円孔形状としたことを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載のクランクシャフト。
【請求項7】
前記シャフト油路とピン油路との連結位置を前記流出油路に対してクランクピン軸線方向にずらしたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のクランクシャフト。
【請求項8】
前記請求項1乃至7の何れか一項に記載のクランクシャフトを備えたことを特徴とするエンジン。
【請求項1】
シャフト内部に形成されて潤滑油が流入するシャフト油路と、クランクピン内部に形成されて前記シャフト油路から潤滑油が流入するピン油路と、前記ピン油路から潤滑油をクランクピン外部に流出する流出油路とを備えたクランクシャフトにおいて、前記ピン油路に繋がり且つ少なくとも当該ピン油路よりもシャフト径方向外側に設けられたクランクピン内の室からなる異物捕集部を備えたことを特徴とするクランクシャフト。
【請求項2】
前記ピン油路よりもシャフト径方向外側の異物捕集部と流出油路との間に、シャフト径方向内側向きの壁部を有することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフト。
【請求項3】
前記異物捕集部は前記ピン油路よりもシャフト径方向内側にも設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクランクシャフト。
【請求項4】
前記異物捕集部は前記ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向上流側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のクランクシャフト。
【請求項5】
前記異物捕集部は前記ピン油路と流出油路との連結位置よりも潤滑油の流れ方向下流側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のクランクシャフト。
【請求項6】
前記異物捕集部はクランクピンの軸線方向と長手方向が平行な円孔形状としたことを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載のクランクシャフト。
【請求項7】
前記シャフト油路とピン油路との連結位置を前記流出油路に対してクランクピン軸線方向にずらしたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のクランクシャフト。
【請求項8】
前記請求項1乃至7の何れか一項に記載のクランクシャフトを備えたことを特徴とするエンジン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−184795(P2012−184795A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47430(P2011−47430)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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