説明

クリック付き回転操作型電子部品

【課題】クリック付き回転操作型電子部品に関し、繰り返しの回転操作によっても、軽快なクリック感と軽快なクリック音を維持できるものを提供することを目的とする。
【解決手段】回転体22は、そのフランジ部22C上面に回転中心に点対称な位置となる2ヶ所に収容穴22E、22Fが設けられ、開口側から順に、鋼球25A、25B、鋼球受け穴26A、27Aを有した保持駒26、27、コイルバネ28A、28Bが収容され、一方の保持駒26の鋼球受け穴26Aは、鋼球25Aが水平方向に僅かに移動可能な遊び代が設けられている。軸受23に固定されたクリック板24の下面の波形の凹凸面24Aの形状は、上記鋼球25A、25Bが同一円周上を上下移動した際に、鋼球25A、25Bの表面が描く曲面に沿う形状に形成し、そこに上記鋼球25A、25Bを弾接させた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の回転操作部に用いられるクリック付き回転操作型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の条件設定や出力調節等に用いられる回転操作型電子部品には、回転操作量が感覚的にもわかり易いクリック機能を備えたクリック付き回転操作型電子部品が多く採用されている。
【0003】
このような従来のクリック付き回転操作型電子部品としてのクリック付き回転操作型複合スイッチについて、図12〜図19を用いて説明する。
【0004】
図12は従来のクリック付き回転操作型複合スイッチの断面図、図13は同ケースの上面図、図14は同回転体の上面図、図15は同摺動体の上面図、図16は同操作軸と駆動体との関係を説明する図、図17は同クリック板の上面図、図18は同クリック板の側面断面図、図19は同操作軸を押下操作した状態の断面図である。
【0005】
同図において、1は上面が開口した箱型の絶縁樹脂製のケースで、開口部の内部は、図13に示すように、環状突起1Aにより内側開口部1Bと外側開口部1Cとに分かれており、内側開口部1Bの内底面には、中央に中央接点2とその中央接点2を挟んで2つの外側接点3がその外側に配設され、外側開口部1Cの内底面には、固定導体としてのコモン接点4、第1信号用接点5、第2信号用接点6が同一円周上にそれぞれ電気的に独立して配設されている。そして、上記中央接点2、外側接点3、コモン接点4、第1信号用接点5、第2信号用接点6のそれぞれに独立してスイッチ端子2A、3A、4A、5A、6Aが繋がっており、スイッチ端子2A、3Aが上記ケース1の一つの側壁から外方へ導出され、スイッチ端子4A、5A、6Aが上記スイッチ端子2A、3Aが導出された側壁に対向する側壁から外方へ導出されている。
【0006】
7は上方凸形に形成された円形ドーム状の弾性金属薄板からなる可動接点で、外周下端が上記外側接点3上に載置され、ドーム状頂点部の下面が上記中央接点2と隙間を空けて対面しており、その可動接点7のドーム状頂点部上面には、下面中央に突出する押圧部8Aを有した絶縁樹脂製の円盤状のプッシュ板8が載置され、中央接点2、外側接点3および可動接点7でプッシュオンスイッチが構成されている。
【0007】
そして、9は、図12と図14に示したように、中央に溝付き貫通孔9Aを有した円柱部9Bとその円柱部9B下方にフランジ部9Cを備えた絶縁樹脂製の回転体であり、フランジ部9Cの上面には、径方向に沿う直線状凹凸部9Dが放射状に設けられ、下面には、図15に示す可動導体としての摺動体10が取り付けられている。この摺動体10は、導電性金属板からなり、その形状は、回転体9に固定されている環状平板部10Aとそこから等角の90°毎の4ヶ所に設けられた摺動子10Bからなる形状で形成され、回転体9の回転に伴って、その各摺動子10Bが、下方のケース1の外側開口部1C内底面に配されたコモン接点4、第1信号用接点5、第2信号用接点6上を順次接離しながら摺動する。
【0008】
11は軸受で、鍔部11Aがケース1の開口部上面を覆うように載置され、その鍔部11A中央から上方に突出し、中央孔11Cを有した中空の円筒部11Bを備えており、上記回転体9の円柱部9Bは、上記円筒部11B内に回転可能に嵌め込まれている。
【0009】
12は略棒状の操作軸で、上方に位置した操作部12Aと円柱状の中間部12Bと下方の断面略小判形の取付部12Cがそれぞれ段部を有して形成された形状となっている。そして、その操作部12Aが上記軸受11の上方に位置し、上記円柱状の中間部12Bの上部が軸受11の中央孔11Cに回転および上下動作可能に嵌合し、中間部12Bの下部から下方は上記回転体9の貫通孔9A内に位置し、下方の取付部12Cには、操作軸12の回転および上下動作に一体となって動作するように駆動体13が嵌め込まれて固定されている。
【0010】
上記駆動体13は、図16にも示すように、上記操作軸12の取付部12Cが嵌まる略小判形の中孔13Aを有すると共に、円柱状の外周面から等角4方向に突起部13Bが設けられており、この4つの突起部13Bが、上記回転体9の貫通孔9A内に設けられた4つの溝部9E(図14参照。)に係合している。また、操作軸12の取付部12C下端面は、上記可動接点7上に載置されたプッシュ板8の上面に当接状態になっている。
【0011】
そして、14は軸受11の鍔部11A下面に取り付けられた弾性金属板からなる環状の板バネで、図17、図18に示したように、側面視両側が下方に傾斜状態に曲げられ、その曲げられた一方の先端に曲げ突部14Aが設けられて形成されている。この板バネ14の曲げ突部14Aは、上記回転体9のフランジ部9C上面に設けられた凹凸部9Dに弾接係合している。そして、15は、軸受11の円筒部11Bを突出させて、軸受11の鍔部11A上面に配され、ケース1を両側から抱え込むように両側部の下端が曲げ加工されて上記各部材を結合させている取付金具である。
【0012】
ここに、上記操作軸12が操作されていない図12の標準状態において、操作軸12にはプッシュ板8を介して可動接点7から上方への付勢力が加わっており、操作軸12の取付部12Cに固定された駆動体13の4つの突起部13Bは、回転体9の貫通孔9A内の対応する4つの溝部9Eに係止した状態となっている。また、回転体9は、フランジ部9C上面の凹凸部9Dに弾接している板バネ14のバネ圧力により、下面の摺動子10Bの弾性力や上記可動接点7の付勢力が加わっていても、常に下方に付勢され、フランジ部9C下面外縁部が、ケース1開口部の外周壁に設けられた外周段部1Dに当接しており、回転可能であるが、上下には移動しない構成となっている。
【0013】
以上のように構成されたクリック付き回転操作型複合スイッチにおいて、まず操作軸12の操作部12Aを回転操作すると、取付部12Cに取り付けられた駆動体13が回転し、その駆動体13の突起部13Bが係止している回転体9も回転する。この回転体9の回転動作により、フランジ部9C下面の摺動体10の4つの摺動子10Bがケース1の外側開口部1Cに配設されたコモン接点4、第1信号用接点5、第2信号用接点6上を順次摺動して、摺動子10Bを介したコモン接点4と第1信号用接点5間の接離による第1パルス信号が対応するスイッチ端子4A、5Aから発生し、同様に、摺動子10Bを介したコモン接点4と第2信号用接点6間の接離による第2パルス信号が対応するスイッチ端子4A、6Aから発生される。また、それと同時に、板バネ14の曲げ突部14Aが回転体9のフランジ部9C上面の凹凸部9D上を弾接摺動することによってクリック感も発生する。
【0014】
次に、操作軸12の操作部12Aを押下すると、図19に示すように、下方の取付部12C下端でプッシュ板8が押下されて、プッシュ板8下面の押圧部8Aで可動接点7のドーム状頂点部が押圧され、ドーム状頂点部が弾性変形してその下面が対向した中央接点2に接触する。これにより、可動接点7を介して中央接点2と外側接点3との間、つまりスイッチ端子2Aと3Aとの間が導通したスイッチオン状態となる。
【0015】
この時、操作軸12に固定された駆動体13は、その突起部13Bの回転体9との係り部分が外れて下方に移動するようになっており、回転体9には下方への動きは伝わらないようになっている。
【0016】
そして、操作軸12への押下力を解除すると、可動接点7は自らの弾性復元力により元の上方に膨らんだドーム状に復元すると共に、プッシュ板8を介して操作軸12の取付部12C下端を上方に押し戻して、中央接点2と外側接点3との間が絶縁されたプッシュオンスイッチがオフの図12の状態に戻る。
【0017】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開2006−79966号公報
【特許文献2】特開2005−302354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
近年、特に車載用のAV機器に用いられるクリック付き回転操作型電子部品には、強いクリック感が望まれると共に、回転操作が繰り返されても、軽快なクリック感の劣化が少ない耐久性のあるものへの要望が強く、また指に伝わるクリック感だけでなく、軽快なクリック音も得られるものへの要望が生じている。
【0019】
しかしながら、上記従来のクリック付き回転操作型電子部品としてのクリック付き回転操作型複合スイッチにおいては、金属製の板バネ14の先端に設けた曲げ突部14Aを絶縁樹脂製の回転体9の凹凸部9Dに弾接摺動させてクリック感を発生させる構造であり、回転操作が長期に亘って繰り返されると、回転体9の凹凸部9Dが磨耗して凹凸部9Dの段差が少なくなり、クリック感が弱くなってしまうという課題があった。また、上記従来の金属製の板バネ14と絶縁樹脂製の回転体9によるクリック機構では、クリック音も軽快な音を発生し難いという課題があった。
【0020】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、繰り返しの回転操作によっても、軽快なクリック感と軽快なクリック音を長期に亘って維持できるクリック付き回転操作型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0022】
本発明の請求項1に記載の発明は、上面開口の開口部内底面に固定導体が配設され、その固定導体と繋がって外方へ導出された端子を備えた絶縁樹脂製のケースと、このケースの開口部内に配されて上記固定導体に係合する可動導体を下面に備えた回転体と、上記ケースの開口部上面に取り付けられた軸受と、この軸受で回転可能に保持され、上記回転体を回転操作する操作軸とを備え、上記軸受と上記回転体との間にクリック機構を有したクリック付き回転操作型電子部品であって、上記クリック機構が、上記軸受の下方に配され、下面に上記回転体の回転中心と同心の円周方向に設けられた波形の凹凸面を備え、この波形の凹凸面はこれに係合する鋼球が上下移動しながら上記円周方向に移動した際の上記鋼球の表面が描く曲面に沿う形状に形成されたものである金属製のクリック板と、上記回転体の上面に設けられた上方開口の収容穴内に、その開口側から順に上記鋼球、鋼球受け穴にその鋼球が配された保持駒、そしてこの保持駒を介して上記鋼球を上記クリック板の波形の凹凸面に付勢するコイルバネが収容されて構成されたものであることを特徴とするクリック付き回転操作型電子部品としたものであり、クリック板の波形の凹凸面が鋼球の表面に沿う曲面形状であるので、回転体が回転操作された際に、鋼球とクリック板との接触部分が線接触となって磨耗が抑制されて耐久性が向上すると共に、金属製のクリック板と鋼球により明快で軽快なクリック音が得られるクリック付き回転操作型電子部品を実現できるという作用を有する。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、回転体上面の収容穴が回転中心から等距離の位置に複数箇所設けられ、それらの収容穴それぞれに鋼球、保持駒、そしてコイルバネが収容され、クリック板の波形の凹凸面に弾接する複数の上記鋼球が、それぞれ同時に上記波形の凹凸面の凹面最深部または凸面頂点部に位置するようになされていることを特徴とするものであり、全体としてのクリック強さを変えることなく1ヶ所当たりのコイルバネの圧力を小さくできるため、さらに磨耗を抑制することができるという作用を有する。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、回転体上面の収容穴が回転中心から等距離の位置に、第1収容穴、第2収容穴の2つが設けられ、それら第1、第2収容穴それぞれに第1、第2鋼球、第1、第2保持駒、そして第1、第2コイルバネが収容されており、上記回転体がクリック板に対して相対的に回転した際に、上記第2収容穴内の第2鋼球が、クリック板の波形の凹凸面の凸面頂点部を乗り越えてから凹面最深部に至るまでに、上記第1鋼球が、上記クリック板の波形の凹凸面の凸面頂点部を遅れて乗り越えるように、上記第1鋼球と上記第1保持駒の鋼球受け穴との間に遊び代が設けられていることを特徴とするものであり、第2鋼球がクリック板の凹面最深部に嵌り込んだ直後に、第1鋼球が遊び代の分遅れて凹面最深部に落ち込んで、クリック板の次の傾斜面に衝突するが、第1鋼球と第1保持駒の鋼球受け穴との間に水平方向に遊び代を設けたことにより、上記衝突時において第1鋼球は弾かれつつ鋼球受け穴内の壁面などにも衝突し短時間内での繰り返し衝突が生じて衝突音が増大され、明快で軽快なクリック音が得られるという作用を有する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、繰り返しの回転操作によっても、軽快なクリック感と軽快なクリック音を長期に亘って維持できるクリック付き回転操作型電子部品を提供することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図11を用いて説明する。
【0027】
なお、従来の実施の形態の構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0028】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるクリック付き回転操作型電子部品としてのクリック付き回転操作型複合スイッチの断面図、図2は同クリック用部材を組み込んだ回転体の上面図、図3は同クリック板の上面図、図4は図3内のA−A断面図、図5は図3内のB−B断面図、図6は図3内のC−C断面図、図7および図8は同クリック機構部分の部分拡大図、図9〜図11は同クリック機構部分の動作説明図である。
【0029】
同図において、21は上面開口の箱型に形成された絶縁樹脂製のケースで、その開口部は、中央に設けられた環状突起21Aを境に内側開口部21Bと外側位置の環状の外側開口部21Cに区分けされ、外側開口部21Cの外側となる外周壁には、後述する回転体22の下面外縁部が当接する外周段部21Dが設けられている。そして、内側開口部21Bの内底面には、中央接点2とそれを挟む両側位置に外側接点3が設けられており、外側開口部21Cの内底面には、固定導体としてのコモン接点4、第1信号用接点5、第2信号用接点6(第1信号用接点5、第2信号用接点6は図中に表れず。)が同一円周上に電気的独立状態で配設され、それら各接点2〜6と繋がってケース21の対向する側壁から外方へ、スイッチ端子2A、3A、4A、5A、6A(スイッチ端子4A、5A、6Aは図中に表れず。)が導出されている。
【0030】
そして、内側開口部21B内には、円形ドーム状の可動接点7が外側接点3上に載置され、さらに可動接点7上面中央には、押圧部8Aを当接させて絶縁樹脂製のプッシュ板8が載せられている。これらの構成は従来例と同じであるが、ケース21の外周壁の高さは、後述する回転体22の厚みのあるフランジ部22Cを開口部内に収容可能なように、従来例で説明したものよりも高く形成されている。
【0031】
そして、22は絶縁樹脂製の回転体で、フランジ部22C中央に上方に突出する円柱部22Bを有し、その円柱部22B、フランジ部22Cの中心に上下に貫通する貫通孔22Aを有している。そして、フランジ部22C下面には、従来例と同様に、回転体22が回転されるとケース21の外側開口部21Cに配されたコモン接点4、第1信号用接点5、第2信号用接点6それぞれと接離しながら摺接する4つの摺動子10Bを環状平板部10Aに備えた可動導体としてなる摺動体10が固定され、フランジ部22Cの下面外縁部は、上記ケース21の外周段部21Dに当接している。
【0032】
そして、ケース21の開口部上面は、軸受23の鍔部23Aで覆われ、鍔部23A中央から上方に突出形成された中央孔23Cを有した中空の円筒部23B内には、上記回転体22の円柱部22Bの外周が回転可能に嵌め込まれている。
【0033】
そして、12は操作軸で、上記軸受23の中央孔23Cの上方に操作部12Aが位置するようにして、その円柱状の中間部12B上部が上端の上記中央孔23Cで回転および上下動作可能に嵌合され、中間部12Bの下方と断面略小判形の取付部12Cが上記回転体22の貫通孔22A内に位置し、その下端をプッシュ板8上に当接させて配されている。その取付部12Cには、この取付部12Cを中孔13Aに挿通させて配された駆動体13が一体に固定されている。なお、この操作軸12には、プッシュ板8を介して可動接点7からの上方への付勢力が加わっていることは従来と同じである。
【0034】
また、その付勢された上記操作軸12の配置状態で、駆動体13は、外周面から側方に突出形成されている4つの突起部13Bが回転体22の貫通孔22Aの対応する位置に設けられた4つの溝部22D(図2参照。)に係止した状態となっており、操作軸12が回転操作された場合には、この駆動体13を介して回転体22が共回りされるが、操作軸12を押下した場合には、その突起部13Bが溝部22Dから外れて駆動体13の移動に伴う回転体22の従動はしないように組み合わせられている。
【0035】
そして、金属板からなる取付金具29が、軸受23の円筒部23Bを突出させて鍔部23A上面に配され、両側部でケース21を両側から抱え込み、その下端が内側に曲げられてケース21を抱きカシメすることにより上記の各部材が結合された固定状態になっている。
【0036】
以上の構成は従来のものと同様であるが、本発明によるものは、軸受23の鍔部23Aと回転体22のフランジ部22Cとの間に構成されたクリック機構が異なっており、そのクリック機構について続いて説明する。
【0037】
本発明によるもののクリック機構は、軸受23の鍔部23A下面に固定されたクリック板24に対し、回転体22のフランジ部22C上面に設けられた弾接手段で弾接する構成となっている。
【0038】
まず、上記弾接手段から説明すると、図1、図2に示したように、回転体22は、そのフランジ部22C上面に回転中心に点対称な位置となる2ヶ所に上面開口で有底の第1収容穴22Eと第2収容穴22Fが設けられている。その第1収容穴22Eには、開口側から順に、第1鋼球25A、鋼球受け穴26Aを有した金属製の第1保持駒26、第1コイルバネ28Aが収容され、第2収容穴22Fには、同じく開口側から順に、第2鋼球25B、鋼球受け穴27Aを有した金属製の第2保持駒27、第2コイルバネ28Bが収容されており、第1保持駒26の鋼球受け穴26Aは、第1鋼球25Aが水平方向で僅かに移動可能な遊び代を有するものとして設けられ、その形状は、内底部が平面で構成された円柱状の窪み形状で形成されている。そして、第2保持駒27の鋼球受け穴27Aは、第2鋼球25Bが圧入状態にならずに第2鋼球25Bの外周面に沿う略半球状の窪み形状で形成されている。
【0039】
なお、上記遊び代については、後述の動作説明部分で詳細を説明する。
【0040】
また、説明の便宜上、回転体22の第1収容穴22Eと第2収容穴22F、第1鋼球25Aと第2鋼球25B、第1コイルバネ28Aと第2コイルバネ28Bは、別の名称、別の符号を用いたが、同じ形状寸法・材質のものであり、第1保持駒26と第2保持駒27については、鋼球受け穴26A、27Aの形状が異なるが、他の形状は同じである。
【0041】
そして、軸受23の鍔部23A下面に固定されたクリック板24は、図3に示すように、略環状をした平板金属から形成されており、外周縁に等角で設けられた4ヶ所の固定用突部24Bが、対応して設けられた鍔部23A下面の凹部に嵌め込まれ、ケース21の上端面との間で挟持されて固定されている。
【0042】
このクリック板24の下面側には、円周方向に形成された波形の凹凸面24Aを有しており、この波形の凹凸面24Aの形状は、上記第1鋼球25Aまたは第2鋼球25Bが回転体22の回転中心を中心とする円周上を一定間隔で連続して上下しつつ移動した際に、第1鋼球25Aまたは第2鋼球25Bの表面が描く曲面に沿う形状(図3内のA−A断面図である図4参照。)で、しかも、回転中心に対し点対称に凹面最深部または凸面頂点部が位置するように形成されている。その波形の凹凸面24Aの凹面最深部を図3内のB−B断面図である図5に、また波形の凹凸面24Aの凸面頂点部を図3内のC−C断面図である図6に示す。
【0043】
そして、これら第1鋼球25A、第2鋼球25Bが、それぞれ第1保持駒26、第2保持駒27を介して第1コイルバネ28A、第2コイルバネ28Bで上方に付勢されてクリック板24の波形の凹凸面24Aに弾接しており、これらでクリック機構が構成されている。なお、クリック板24を用いることなく軸受23の鍔部23A下面に上記形状の凹凸面24Aが形成されているものとしてあってもよい。
【0044】
上記構成のクリック機構を備えた本発明のクリック付き回転操作型複合スイッチにおいて、操作軸12を回転操作すると、摺動体10の摺動子10Bがコモン接点4、第1信号用接点5、第2信号用接点6上を摺動して、コモン接点4と第1信号用接点5間の接離による第1パルス信号がスイッチ端子4A、5Aから発生し、コモン接点4と第2信号用接点6間の接離による第2パルス信号がスイッチ端子4A、6Aから発生することは従来と同様である。また、操作軸12を押下操作して、プッシュ板8下方の可動接点7が反転動作することにより、中央接点2と外側接点3との間が導通してプッシュオンスイッチのスイッチ端子2A、3A間がオン状態になり、押下操作を解除すると、可動接点7は自らの弾性復元力により上方に膨らんだドーム状に復元して、操作軸12が押圧操作されていない元の位置に押し戻されると共に、スイッチ端子2A、3A間が絶縁されたスイッチオフ状態になることも、従来と同様であるので詳細説明は省略する。
【0045】
ここで、操作軸12を回転操作した際のクリック機構部分の動作について説明する。
【0046】
まず、操作軸12を回転操作や押下操作しない状態である図1に示す標準状態では、回転体22のフランジ部22Cの第1、第2収容穴22E、22Fの第1、第2コイルバネ28A、28Bの弾発力により、クリック板24に付勢されている第1、第2鋼球25A、25Bは、クリック板24の波形の凹凸面24Aの凹面最深部に両方共位置して回転体22は安定した停止状態となっている。この標準状態でのクリック機構部分の状態を図7、図8にそれぞれ示す。図7は、第1収容穴22E近傍の回転方向断面図で、図8は、第2収容穴22F近傍の回転方向断面図である。
【0047】
この状態から、操作軸12の操作部12Aを回転操作すると、操作軸12下方の取付部12Cに固定された駆動体13が一体で回転し、その突起部13Bが溝部22Dに係止している回転体22も共に回転する。この回転体22の回転により、フランジ部22C上面の第1収容穴22Eおよび第2収容穴22F内の第1鋼球25Aおよび第2鋼球25Bが、第1コイルバネ28Aおよび第2コイルバネ28Bの弾発力を受けながらクリック板24の波形の凹凸面24A上を弾接しつつ摺動もしくは転動する。
【0048】
つまり、標準状態では、図7および図8に示すように、第1鋼球25Aおよび第2鋼球25Bは、波形の凹凸面24Aの凹面最深部に位置しており、操作軸12の回転動作に伴って回転体22が回転すると、第2鋼球25Bは、第2コイルバネ28Bを下方に圧縮しながらクリック板24の波形の凹凸面24Aの凹面最深部から傾斜面上を移動し、波形の凹凸面24Aの凸面頂点部に達する。
【0049】
そして、さらに回転体22が回転して第2鋼球25Bが凸面頂点部を乗り越えると同時に、第2コイルバネ28Bの弾発力を受けて第2鋼球25Bが波形の凹凸面24Aの凹面最深部に向かって傾斜面を急速に移動し、凹面最深部で安定する。この急速な移動に伴い回転体22および駆動体13を介して操作軸12もすばやく回転する。このように、凹面最深部間を第2鋼球25Bが移動することによりクリック感が発生し、また、傾斜面を急速に移動してきた第2鋼球25Bが凹面最深部を形成している次の傾斜面に衝突した際の衝突音がクリック音として発生する。
【0050】
それに対し第1鋼球25Aの動作は、第1保持駒26の鋼球受け穴26Aとの間に水平方向に遊び代が設けてあり、しかもその鋼球受け穴26Aの内底部を平面で構成したものとしているので、回転体22の回転に伴って、まず第1鋼球25Aは、図9に示すように、第1保持駒26の鋼球受け穴26A内の回転方向とは逆方向の壁に当接状態になるように摺動もしくは転動し、その後に第1コイルバネ28Aを下方に圧縮させながらクリック板24の波形の凹凸面24Aの傾斜面を図中の矢印の方向に移動する。そして、さらに回転体22が回転すると、図10に示したように、波形の凹凸面24Aの凸面頂点部に達する。
【0051】
そして、第1鋼球25Aが第1保持駒26の鋼球受け穴26A内で僅かに移動可能な遊び代は、上記に説明した第2鋼球25Bが、波形の凹凸面24Aの凸面頂点部を乗り越えてから凹面最深部に至るまでに、第1鋼球25Aが、凸面頂点部を乗り越えるようなずれを生じる遊び代に設定しており、この遊び代によって、第2鋼球25Bが凹面最深部に至った直後に、第1鋼球25Aが凹面最深部に向かう傾斜面を急速に移動して図11に示すように凹面最深部に至る。
【0052】
このとき第1鋼球25Aは、上記遊び代により勢いよく凹面最深部に至るため、次の傾斜面に勢いよく衝突する。また、その衝突時に第1鋼球25Aは弾かれつつ鋼球受け穴26A内の壁面などにも衝突し短時間内での繰り返し衝突が生じて衝突音が増大され、明快で軽快なクリック音として聞える。
【0053】
そして、操作軸12の回転操作を継続すると、第1鋼球25Aおよび第2鋼球25Bのそれぞれの上記動作が、クリック板24の波形の凹凸面24A上で繰り返してなされ、これによって軽快なクリック音が連続して発生する。
【0054】
このように本実施の形態によれば、第2鋼球25Bが波形の凹凸面24Aの凸面頂点部を乗り越えてから凹面最深部に至るまでに、第1鋼球25Aが凸面頂点部を乗り越えるようなずれを生じる遊び代が、第1保持駒26の鋼球受け穴26Aと第1鋼球25Aとの間に水平方向で設けられているので、第2鋼球25Bがクリック板24の凹面最深部に至った直後に、第1鋼球25Aがクリック板24の凸面頂点部から凹面最深部に向けて勢いよく移動し、第1保持駒26の鋼球受け穴26Aとの遊び代によって、第1鋼球25Aの繰り返し衝突が生じて衝突音が増大され、明快で軽快なクリック音が得られるものにできる。
【0055】
そして、クリック板24の波形の凹凸面24Aは、回転体22の回転に伴い第1鋼球25A、第2鋼球25Bが上下方向に移動したときに、その表面に沿う曲面形状とされているため、第1鋼球25A、第2鋼球25Bは、常に線接触の状態で波形の凹凸面24Aに接触することになり、応力が一ヶ所に集中することなく分散されて接触部分の磨耗を低減することができ、長期に亘って軽快なクリック感とクリック音を維持するものにできる。
【0056】
また、回転体22の回転中心に点対称となる2ヶ所の位置にクリック板24に弾接する第1鋼球25A、第2鋼球25Bを配してクリック感を発生するようにしたので、所望のクリック強さを得るために必要な各クリック部に加わる圧力を小さくすることができ、クリック部の磨耗を抑制し、さらに長期に亘って軽快なクリック感とクリック音を維持することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、クリック板に弾接する鋼球を回転中心に点対称な2ヶ所に配したもので説明したが、3ヶ所以上に配置した構成でも良く、波形の凹凸面の凹面最深部または凸面頂点部にそれぞれの鋼球が同時に位置するように配置すれば良い。そして、3ヶ所以上に配置した場合でも、鋼球と保持駒の鋼球受け穴との遊び代を設ける数は、所望のクリック音が得られるように任意の数に設定すれば良い。
【0058】
また、第1保持駒26と第2保持駒27との間で、鋼球受け穴26A、27Aの形状違いを除いて、回転体22の第1収容穴22Eと第2収容穴22F、およびそれら第1収容穴22Eと第2収容穴22F内に収容される第1鋼球25Aと第2鋼球25B、第1保持駒26と第2保持駒27、第1コイルバネ28Aと第2コイルバネ28Bは、同じ形状寸法である必要もなく、第2鋼球25Bがクリック板24の波形の凹凸面24Aの凸面頂点部を乗り越えてから凹面最深部に至るまでに、第1鋼球25Aが凸面頂点部を乗り越えるようなずれを生じる遊び代が設けられていれば、明快で軽快なクリック音が得られるものにできる。
【0059】
なお、上記には回転操作型エンコーダを備えたものを事例として説明したが、それに代えて回転操作型可変抵抗器や回転型スイッチを有するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によるクリック付き回転操作型電子部品は、繰り返しの回転操作によっても、軽快なクリック感と軽快なクリック音を長期に亘って維持できるクリック付き回転操作型電子部品を提供することができるという特徴を有し、各種電子機器の回転操作部等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態によるクリック付き回転操作型複合スイッチの断面図
【図2】同クリック用部材を組み込んだ回転体の上面図
【図3】同クリック板の上面図
【図4】図3内のA−A断面図
【図5】図3内のB−B断面図
【図6】図3内のC−C断面図
【図7】同クリック機構部分の部分拡大図
【図8】同クリック機構部分の部分拡大図
【図9】同クリック機構部分の動作説明図
【図10】同クリック機構部分の動作説明図
【図11】同クリック機構部分の動作説明図
【図12】従来のクリック付き回転操作型複合スイッチの断面図
【図13】同ケースの上面図
【図14】同回転体の上面図
【図15】同摺動体の上面図
【図16】同操作軸と駆動体との関係を説明する図
【図17】同クリック板の上面図
【図18】同クリック板の側面断面図
【図19】同操作軸を押下操作した状態の断面図
【符号の説明】
【0062】
2 中央接点
2A、3A、4A、5A、6A スイッチ端子
3 外側接点
4 コモン接点
5 第1信号用接点
6 第2信号用接点
7 可動接点
8 プッシュ板
8A 押圧部
10 摺動体
10A 環状平板部
10B 摺動子
12 操作軸
12A 操作部
12B 中間部
12C 取付部
13 駆動体
13A 中孔
13B 突起部
21 ケース
21A 環状突起
21B 内側開口部
21C 外側開口部
21D 外周段部
22 回転体
22A 貫通孔
22B 円柱部
22C フランジ部
22D 溝部
22E 第1収容穴
22F 第2収容穴
23 軸受
23A 鍔部
23B 円筒部
23C 中央孔
24 クリック板
24A 波形の凹凸面
24B 固定用突部
25A 第1鋼球
25B 第2鋼球
26 第1保持駒
26A、27A 鋼球受け穴
27 第2保持駒
28A 第1コイルバネ
28B 第2コイルバネ
29 取付金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口の開口部内底面に固定導体が配設され、その固定導体と繋がって外方へ導出された端子を備えた絶縁樹脂製のケースと、このケースの開口部内に配されて上記固定導体に係合する可動導体を下面に備えた回転体と、上記ケースの開口部上面に取り付けられた軸受と、この軸受で回転可能に保持され、上記回転体を回転操作する操作軸とを備え、上記軸受と上記回転体との間にクリック機構を有したクリック付き回転操作型電子部品であって、上記クリック機構が、上記軸受の下方に配され、下面に上記回転体の回転中心と同心の円周方向に設けられた波形の凹凸面を備え、この波形の凹凸面はこれに係合する鋼球が上下移動しながら上記円周方向に移動した際の上記鋼球の表面が描く曲面に沿う形状に形成されたものである金属製のクリック板と、上記回転体の上面に設けられた上方開口の収容穴内に、その開口側から順に上記鋼球、鋼球受け穴にその鋼球が配された保持駒、そしてこの保持駒を介して上記鋼球を上記クリック板の波形の凹凸面に付勢するコイルバネが収容されて構成されたものであることを特徴とするクリック付き回転操作型電子部品。
【請求項2】
回転体上面の収容穴が回転中心から等距離の位置に複数箇所設けられ、それらの収容穴それぞれに鋼球、保持駒、そしてコイルバネが収容され、クリック板の波形の凹凸面に弾接する複数の上記鋼球が、それぞれ同時に上記波形の凹凸面の凹面最深部または凸面頂点部に位置するようになされていることを特徴とする請求項1記載のクリック付き回転操作型電子部品。
【請求項3】
回転体上面の収容穴が回転中心から等距離の位置に、第1収容穴、第2収容穴の2つが設けられ、それら第1、第2収容穴それぞれに第1、第2鋼球、第1、第2保持駒、そして第1、第2コイルバネが収容されており、上記回転体がクリック板に対して相対的に回転した際に、上記第2収容穴内の第2鋼球が、クリック板の波形の凹凸面の凸面頂点部を乗り越えてから凹面最深部に至るまでに、上記第1鋼球が、上記クリック板の波形の凹凸面の凸面頂点部を遅れて乗り越えるように、上記第1鋼球と上記第1保持駒の鋼球受け穴との間に遊び代が設けられていることを特徴とする請求項1記載のクリック付き回転操作型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−293814(P2008−293814A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138590(P2007−138590)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】