説明

クリック弾接体付きカバー及びその製造方法

【課題】クリック弾接体の小型化が図れ、且つクリック弾接体の回転式電子部品内での設置スペースも小さくできるクリック弾接体付きカバー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】クリック弾接体付きカバー150は、クリック弾接体100とカバー130とによって構成される。クリック弾接体100は、弾性板からなるアーム部101の中間に、回転体50のクリック弾接部59に弾接してクリック感触を生じさせる弾接部103を設け、且つアーム部101の両端部に取付部105を設けて構成される。両取付部105と弾接部103とは略同一直線上に位置し、且つアーム部101を弾接部103が上下動する方向に向かって撓むように上下に湾曲する形状に形成する。クリック弾接体100の両取付部105を上面板131に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリック機能付き回転式電子部品の部品として用いられるクリック弾接体付きカバー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリック機能付きの回転式電子部品は、例えば特許文献1に示すように、ケース(60)の収納部(61)内に摺動子(50)を取り付けた回転体(30)を収納し、その上にクリック弾接体(20)とカバー(10)を取り付けて構成されていた。ここでクリック弾接体(20)は、シャフト(37)の周囲を囲むように、略リング形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−78844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1に示す回転式電子部品においては、クリック弾接体(20)のアーム部(22)がシャフト(37)の周囲を囲むようにリング状に形成されているので、その設置面積が大きくなり、回転式電子部品の小型化が阻害されていた。またクリック弾接体(20)はこれをケース(60)に取り付けるためにアーム部(22)の周囲を囲む枠状の固定部(21)を設けており、その取付面積が大きくなり、この点からも回転式電子部品の小型化が阻害されていた。また上述のようにクリック弾接体(20)は大きいので、使用材料も多くなり、材料費の削減も図れなかった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、クリック弾接体の小型化が図れ、且つクリック弾接体の回転式電子部品内での設置スペースも小さくでき、これらのことから回転式電子部品の小型化を図ることができるクリック弾接体付きカバー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるクリック弾接体付きカバーは、回転体に設けたクリック弾接部に弾接してクリック感触を生じさせるクリック弾接体と、前記回転体のクリック弾接部上を覆う上面板と、前記上面板の対向する両辺部分で同一方向に折り曲げてなる側面板とを有するカバーとを具備し、前記クリック弾接体は、弾性板からなるアーム部の中間に前記回転体のクリック弾接部に弾接する弾接部を設け、且つアーム部の両端部を取付部とし、これら両取付部と弾接部とを略同一直線上に位置させると共に、前記アーム部を前記弾接部が上下動する方向に向かって撓むように上下に湾曲する形状に形成し、さらに前記クリック弾接体の両取付部を、前記カバーの上面板に固定して構成されている。
クリック弾接体を略直線形状に形成したので、その小型化が図れ、同時に使用材料の削減が図れる。そして小型化したクリック弾接体はカバーの上面板に容易に固定することができ、これによってクリック弾接体の回転式電子部品内での設置スペースを小さくすることができる。一方カバーに略直線形状のクリック弾接体の両端を固定した場合、アーム部が取付部と弾接部から押し縮められようとする力に対して突っ張って弾接部の上下動が阻害される恐れがあるが、本発明によれば、アーム部を上下に湾曲する形状に形成したので、弾接部の上下動の際にアーム部は容易に上下に撓み、弾接部の上下動をスムーズに行わせることができ、且つ上下動する長さ(可動領域)を大きく取りことができ、さらにそのヘタリを防止できて耐久性が向上する。これらのことから本発明に係るクリック弾接体付きカバーを用いれば、回転式電子部品の小型化を図ることができ、且つ好適なクリック感触を得ることができる。
【0007】
また本発明に係るクリック弾接体付きカバーの製造方法は、前記カバーを形成するカバー用帯状金属板と、前記クリック弾接体を形成するクリック弾接体用帯状金属板とを用意し、前記カバー用帯状金属板中に前記カバーの上面板と両側面板が同一平面上となるように形成したカバー素体を連結部でこのカバー用帯状金属板に保持した状態で連続してプレス加工し且つこのプレス加工の際にカバーの上面板に前記クリック弾接体の両取付部を取り付ける被取付部を形成する工程と、前記クリック弾接体用帯状金属板中に前記クリック弾接体を連結部でこのクリック弾接体用帯状金属板に保持した状態で連続してプレス加工する工程と、前記カバー用帯状金属板とクリック弾接体用帯状金属板を交差させてカバー素体とクリック弾接体とを重ね合わせてカバー素体の各被取付部とクリック弾接体の各取付部間を固定する工程と、前記カバー素体に取り付けたクリック弾接体をクリック弾接体用帯状金属板から切り離す工程と、前記クリック弾接体を取り付けたカバー素体の両側面板を折り曲げてカバーを形成した後にこのカバーをカバー用帯状金属板から切り離す工程とを具備して構成されている。
この製造方法によれば、カバー用帯状金属板に連結しているカバー素体に予めクリック弾接体を取り付けた後、このカバー素体をカバーに加工してカバー用帯状金属板から切り離すことでクリック弾接体付きカバーを製造していくので、本発明に係るクリック弾接体付きカバーを効率よく製造していくことができる。これによってカバーに予めクリック弾接体が取り付けられるので、回転式電子部品の組み立て時はクリック弾接体の取付工程を省略でき、その組立作業が簡素化される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クリック弾接体の小型化が図れ、且つクリック弾接体の回転式電子部品内での設置スペースも小さくでき、これらのことから本発明に係るクリック弾接体付きカバーを用いて組み立てられる回転式電子部品の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】クリック弾接体付きカバー150を用いて構成した回転式電子部品1の斜視図である。
【図2】回転式電子部品1を下側から見た斜視図である。
【図3】回転式電子部品1の分解斜視図である。
【図4】回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図である。
【図5】回転式電子部品1の縦断面図(図1のA−A断面図)である。
【図6】回転式電子部品1の縦断面図(図1のB−B断面図)である。
【図7】クリック弾接体100を示す図である。
【図8】クリック弾接体100の動作説明図(図5と同一部分の断面図)である。
【図9】クリック弾接体付きカバー150の製造方法説明図である。
【図10】クリック弾接体付きカバー150の製造方法説明図である。
【図11】クリック弾接体100−2を下側から見た斜視図である。
【図12】クリック弾接体100−3を示す平面図である。
【図13】クリック弾接体100−4を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1〜図6は本発明に係るクリック弾接体付きカバー150を用いて構成された回転式電子部品1を示す図であり、図1は斜視図、図2は下側から見た斜視図、図3は分解斜視図、図4は下側から見た分解斜視図、図5は縦断面図(図1のA−A断面図)、図6は縦断面図(図1のB−B断面図)である。これらの図に示すように回転式電子部品1は、ケース10の回転体収納凹部13内に、摺動子80を取り付けた回転体50の回転体本体部51を収納し、その上にクリック弾接体100を取り付けたカバー130(クリック弾接体付きカバー150)を被せて構成されている。なお以下の説明において、「上」とはクリック弾接体100からカバー130の上面板131を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0011】
ケース10は、合成樹脂製のケース本体11の内部に回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)30と複数本(3本)の端子板45とをインサート成形して構成されている。ケース本体11は略矩形箱型に形成され、その上面中央に略円形の回転体収納凹部13を設けている。ケース10の回転体収納凹部13を囲む4辺からなる側壁部15の上面の4つの角部の内の2つの角部の近傍には上方向に突出する突起状の係止部17が設けられ、他方の2つの角部の近傍には略矩形状に凹むクリック弾接体挿入部19が設けられている。ケース10の回転体収納凹部13を囲む4辺の側壁部15の内の対向する一対の側壁部15の中央部分にはその上面から凹状に凹む凹部23が形成されている。凹部23の底面は回転体載置部25となっている。回転体載置部25は凹部23が形成されていない側の側壁部15の内周面にも形成されている。
【0012】
ケース10の回転体収納凹部13の底面には、フレキシブル回路基板30がその上面を露出して設置されている。フレキシブル回路基板30の上面には同心円状に2本の摺接パターン31が形成されており、それらからフレキシブル回路基板30の外周近傍まで引き出された図示しない端子接続パターン上に各端子板45の一端部が当接・接続され、この当接接続部の上下にケース10を成形することで各端子板45をケース10に取り付けている。各端子板45はケース10の外部に突出した部分で下方向に略直角に折り曲げられている。
【0013】
回転体50は合成樹脂の一体成形品であり、略円板状の回転体本体部51の上面中央から、回転体本体部51の外径寸法よりもその外径寸法の小さい略円柱状の軸部53を突出して構成されている。回転体本体部51はリング状に張り出すケース載置部55と、ケース載置部55の上部に階段状に設けられるカバー当接部57とを有して構成されている。ケース載置部55の上面の所定位置には凹状のクリック弾接部59が形成されている。ケース載置部55の下面には円形に突出する摺動子取付部61が形成されており、その下面には摺動子取付用の小突起63が形成されている。軸部53の上部にはこの軸部53を図示しないつまみに嵌合するための切り欠き65が形成されている。
【0014】
摺動子80は弾性金属板を略リング形状に形成して構成されており、その所定位置に第1摺接部81と第2摺接部83が形成されており、またその所定位置に小孔からなる取付部85が形成されている。
【0015】
図7はクリック弾接体100を示す図であり、図7(a)は拡大斜視図、図7(b)は拡大正面図である。同図に示すようにクリック弾接体100は金属製の弾性板を略帯状で直線状に形成して構成されており、略直線帯状のアーム部101の中間に前記回転体50のクリック弾接部59に弾接する弾接部103を設け、さらにアーム部101を弾接部103が上下動する方向に向かって撓むように上下に湾曲する形状に形成している。さらにクリック弾接体100は、アーム部101の両端部に円形の貫通孔からなる取付部105を設け、これら両取付部105と弾接部103とが真上から見て略同一直線上に位置する形状としている。アーム部101の湾曲形状は図7(b)に示すように、平面状(水平面状)の取付部105を形成した面からまず下方に折り曲げられ、その後その下降する傾斜を緩めた後に逆に上方向に向かい、その後再び下方向に折り曲げられて弾接部103に至っている。つまりアーム部101は取付部105から弾接部103の間で、上下に波打つ形状に形成されている。
【0016】
カバー130は金属板製であり、略矩形状の上面板131の対向する一対の外周辺に接続されている側面板133,133を略垂直下方に屈曲して構成されている。上面板131の中央には上方向に突出する円筒形状の軸支部135が形成されている。また上面板131の4つの角部の内の前記ケース10の一対の係止部17に対向する位置にはそれぞれこれら係止部17を嵌合する小孔からなる挿入係止部137が形成されている。また上面板131の4つの角部の内の前記クリック弾接体100の一対の取付部105に対向する位置にはそれぞれこれら取付部105に挿入される下方向に突出する被取付部139が形成されている。被取付部139は下方向に凸状に突出するために上面板131の上面側では凹部となっている。
【0017】
側面板133は略矩形状であって、その下辺の中央には下方向に向かって舌片状に突出する他部材取付部141が設けられ、またその下辺の左右両側には下方向に向かって舌片状に突出するケース取付部143が設けられている。
【0018】
次に回転式電子部品1の組立方法を説明する。まず予めカバー130の一対の被取付部139をクリック弾接体100の一対の取付部105に挿入し、各被取付部139の先端をかしめることによってカバー130の上面板131の下面にクリック弾接体100を取り付け、これによって本発明に係るクリック弾接体付きカバー150を製造しておく(クリック弾接体付きカバー150の製造方法は別途下記する)。また予め回転体50下面の摺動子取付部61に摺動子80を配置し、その際回転体50下面の小突起63を摺動子80の取付部85に挿入し、その先端を熱かしめして、回転体50に摺動子80を取り付けておく。
【0019】
そして摺動子80を取り付けた回転体50の回転体本体部51をケース10の回転体収納凹部13内に収納し、その際ケース載置部55の下面をケース10の回転体載置部25の上面に当接・載置する。
【0020】
次に前記ケース10の上にカバー130(クリック弾接体付きカバー150)を被せ、その際回転体50の軸部53をカバー130の軸支部135に挿入する。カバー130の上面板131をケース10の上面に当接し、その際クリック弾接体100の両端部分はケース10のクリック板挿入部19内に収納され、またケース10の係止部17はカバー130の挿入係止部137に挿入され位置決めされる。またこのときカバー130の両側面板133,133はケース10の対向する両外周側面に当接する。そしてカバー130の各ケース取付部143の先端部分をケース10の下面に折り曲げてカバー130とケース10とを一体化すれば、回転式電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0021】
上記回転式電子部品1において回転体50を回転すれば、摺動子80がフレキシブル回路基板30の摺接パターン31上を摺動し、各端子板45間の電気的出力が変化する。
【0022】
このとき同時にクリック弾接体100の弾接部103は、図8に示すように、回転体50のケース載置部55の上面を弾接しながら相対的に摺動し、図5に示すように弾接部103がクリック弾接部59に係合した際にクリック感触を生じる。つまり弾接部103はクリック弾接部59に係合したときと係合していないときとで上下動する。一方クリック弾接体100はその両端がカバー130に固定されているので、もしもアーム部101が上下方向に湾曲していなくて直線状に形成されていたとすると、弾接部103が上昇する際にその両側のアーム部101が取付部105と弾接部103から押し縮められようとする力に対して突っ張り、弾接部103が上昇しにくくなる。つまり弾接部103の上下動がスムーズに行えなくなるばかりか、クリック弾接部59を離脱した金属製の弾接部103が合成樹脂製のケース載置部55の上面を直接強く弾接して擦ることになるので静電気が発生して静電ノイズの原因となる。また弾接部103が強くケース載置部55の上面に弾接すると、クリック弾接体100にいわゆるヘタリが生じその耐久性がなくなるばかりかクリック弾接部59を形成する凹部の角部が削れて鋭角でなくなり、これらのことからクリック感触が劣化する恐れもある。これに対してこの回転式電子部品1ではクリック弾接体100のアーム部101を上下に湾曲する形状に形成しているので、アーム部101に取付部105と弾接部103から押し縮めようとする力が作用した際にアーム部101が上下方向に撓み易く(撓むことでアーム部101の長さを伸縮して前記力を吸収し易く)、弾接部103の上下動をスムーズに行わせることができ、且つ弾接部103が上下動する長さ(可動領域)を大きく取ることができ、またクリック弾接体100にいわゆるヘタリが生じにくくて耐久性が向上し、またクリック弾接部59を形成する凹部の角部が削れることもなく、これらのことから良好なクリック感触を得ることができ、その感触が経時的に劣化することも防止できる。
【0023】
以上説明したように、クリック弾接体付きカバー150は、クリック弾接体100が略直線形状に形成されるので、その小型化が図れる。そして小型化したクリック弾接体100はカバー130の上面板131に固定することができ、これによってクリック弾接体100の回転式電子部品1内での設置スペースを小さくすることができる。一方カバー130に略直線形状のクリック弾接体100の両端を固定した上でアーム部101を上下に湾曲する形状に形成したので、上述のように弾接部103の上下動をスムーズに行わせることができる。これらのことから上記クリック弾接体付きカバー150を用いれば、回転式電子部品1の小型化を図ることができると同時に、好適なクリック感触を得ることができる。
【0024】
次にクリック弾接体付きカバー150の製造方法を説明する。図9,図10はクリック弾接体付きカバー150の製造方法説明図である。クリック弾接体付きカバー150を製造するには、まず図9に示すカバー用帯状金属板200とクリック弾接体用帯状金属板300とを用意する。
【0025】
カバー用帯状金属板200は、帯状で長尺な金属板中に、前記カバー130の上面板131と両側面板133,133が同一平面上となるように形成したカバー素体130Aを、連結部201でカバー用帯状金属板200に保持した状態で連続してプレス加工することで形成される。このプレス加工の際にはカバー130の上面板131にクリック弾接体100の両取付部105を取り付ける被取付部139を同時に形成する。つまりカバー用帯状金属板200には長手方向に向かって複数のカバー素体130Aが連続して形成されている。
【0026】
一方クリック弾接体用帯状金属板300は、帯状で長尺な金属板中に、クリック弾接体100を、連結部301でクリック弾接体用帯状金属板300に保持した状態で連続してプレス加工することで形成される。つまりクリック弾接体用帯状金属板300には長手方向に向かって複数のクリック弾接体100が連続して形成されている。
【0027】
そして図9に示すように、カバー用帯状金属板200とクリック弾接体用帯状金属板300を交差(図では直交)させてカバー素体130Aとクリック弾接体100とを重ね合わせる。なおそれぞれの帯状金属板200,300の送り方向は図に矢印で示している。重ね合わせるのは送り方向に向かってクリック弾接体100を取り付けていない先頭のカバー素体130Aとクリック弾接体用帯状金属板300の先頭のクリック弾接体100とである。
【0028】
そしてカバー素体130Aの一対の被取付部139をクリック弾接体100の一対の取付部105に挿入してそれらの先端をかしめ、これによってカバー素体130Aの各被取付部139とクリック弾接体100の各取付部105間を固定する。
【0029】
次にカバー素体130Aに取り付けたクリック弾接体100の両側の接続部301を切断することで、クリック弾接体100をクリック弾接体用帯状金属板300から切り離す。両接続部301は、カバー素体130Aの上面板131と両側面板133,133の間に形成されているスリット状の空隙a1,a1に露出しているので、その切断は容易である。
【0030】
次に図10に示すように、前記クリック弾接体100を取り付けたカバー素体130Aの両側面部133,133を略直角に折り曲げてカバー130を形成する。そして次に連結部201を切断することでカバー130をカバー用帯状金属板200から切り離せば、クリック弾接体付きカバー150の組み立てが完了する。
【0031】
以上説明したクリック弾接体付きカバー150の組み立て方法によれば、カバー用帯状金属板200に連結しているカバー素体130Aに、予めクリック弾接体100を取り付けた後、このカバー素体130Aをカバー130に加工してカバー用帯状金属板200から切り離すことでクリック弾接体付きカバー150を製造していくので、クリック弾接体付きカバー150の製造を効率よく行うことができる。これによってカバー130に予めクリック弾接体100が取り付けられるので、回転式電子部品1の組み立て時はクリック弾接体100の取付工程を省略でき、その組立作業も簡素化される。
【0032】
図11は本発明に用いることができる他の構造のクリック弾接体100−2を下側から見た斜視図である。同図に示すクリック弾接体100―2は、金属製の弾性板を略帯状で直線状に形成してなるクリック弾接体本体111−2と金属製の転がり弾接体113−2とを具備して構成されている。クリック弾接体本体111−2は略直線帯状のアーム部101−2の両端近傍に取付部105−2を設け、中間に前記転がり弾接体113−2を回転自在に保持する弾接体保持部115−2を設けて構成されている。弾接体保持部115−2はその両側部から突出する側壁部117−2を下方向に略直角に折り曲げ、両側壁部117−2の下端辺を略円弧状に凹ませることで軸受部119−2を形成して構成されている。アーム部101−2は、弾接体保持部115−2の両側において、下記する弾接部103−2が上下動する方向に向かって撓むように上下に湾曲する形状に形成されている。具体的にはアーム部101−2の湾曲形状は、平面状(水平面状)の取付部105−2を形成した面からまず下方に折り曲げられ、その後その下降する傾斜を緩めた後に逆に上方向に向かい、その後ほぼ水平面となるように折り曲げられて弾接体保持部115−2に至っている。つまりアーム部101−2は取付部105−2から弾接体保持部115−2の間で、上下に波打つ形状に形成されている。一方転がり弾接体113−2は円板状の弾接部103−2の両側面中央から軸部121−2を突出して構成されている。そして転がり弾接体113−2を両側壁部117−2の間に挿入し、転がり弾接体113−2の両軸部121−2を両軸受部119−2に挿入して回動自在に支持することで、クリック弾接体100−2が構成される。
【0033】
以上のことから明らかなように、クリック弾接体100−2は、アーム部101−2の両端部を取付部105−2とし、これら両取付部105−2と弾接部103−2とを略同一直線上に位置させる形状に形成し、さらにアーム部101−2を上下方向に湾曲させて構成されている。そしてこのクリック弾接体100−2のカバー130への取り付けは、上記クリック弾接体本体111−2を前記図9,図10に示す方法でカバー130に取り付け、その後転がり弾接体113−2を弾接体保持部115−2に装着することによって行う。
【0034】
図12,図13は本発明に用いることができるさらに他の構造のクリック弾接体100−3,100−4を示す平面図である。図12に示すクリック弾接体100−3と前記図7に示すクリック弾接体100は略同様の構成であり、相違点は、クリック弾接体100−3の弾接部103の幅寸法を、その両側の取付部105を設けた面の幅寸法よりも大きくし、これによって弾接部103の両側の略直線帯状のアーム部101の幅寸法を、弾接部103から離れるに従って小さくなるように構成した点である。一方図13に示すクリック弾接体100−4と前記図7に示すクリック弾接体100も略同様の構成であり、相違点は、クリック弾接体100−4の弾接部103の幅寸法を、その両側の取付部105を設けた面の幅寸法よりも小さくし、これによって弾接部103の両側の略直線帯状のアーム部101の幅寸法を、弾接部103から離れるに従って大きくなるように構成した点である。以上のことから明らかなように、クリック弾接体100−3,4においても、両取付部105と弾接部103とを略同一直線上に位置させる形状に形成し、さらにアーム部101を上下方向に湾曲して構成している。
【0035】
なお上記各実施形態において、クリック弾接体100(100−2〜4)は、「両取付部105と弾接部103とを略同一直線上に位置させる」構成であるとしたが、ここでいう「略同一直線上」とは、必ずしも完全に同一直線上でなくても良く、弾接部103が上昇した際にアーム部101に取付部105と弾接部103から押し縮めて撓ませる力が働く構成であれば同一直線上から少しずれていても良いことを意味する。
【0036】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、クリック弾接体100やカバー130やカバー用帯状金属板200やクリック弾接体用帯状金属板300の形状・構造に種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 回転式電子部品
10 ケース
50 回転体
59 クリック弾接部
80 摺動子
100 クリック弾接体
101 アーム部
103 弾接部
105 取付部
130 カバー
130A カバー素体
131 上面板
133 側面板
139 被取付部
150 クリック弾接体付きカバー
200 カバー用帯状金属板
201 連結部
300 クリック弾接体用帯状金属板
301 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に設けたクリック弾接部に弾接してクリック感触を生じさせるクリック弾接体と、
前記回転体のクリック弾接部上を覆う上面板と、前記上面板の対向する両辺部分で同一方向に折り曲げてなる側面板とを有するカバーとを具備し、
前記クリック弾接体は、弾性板からなるアーム部の中間に前記回転体のクリック弾接部に弾接する弾接部を設け、且つアーム部の両端部を取付部とし、これら両取付部と弾接部とを略同一直線上に位置させると共に、前記アーム部を前記弾接部が上下動する方向に向かって撓むように上下に湾曲する形状に形成し、
さらに前記クリック弾接体の両取付部を、前記カバーの上面板に固定したことを特徴とするクリック弾接体付きカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のクリック弾接体付きカバーの製造方法であって、
前記カバーを形成するカバー用帯状金属板と、前記クリック弾接体を形成するクリック弾接体用帯状金属板とを用意し、
前記カバー用帯状金属板中に、前記カバーの上面板と両側面板が同一平面上となるように形成したカバー素体を、連結部でこのカバー用帯状金属板に保持した状態で連続してプレス加工し、且つこのプレス加工の際にカバーの上面板に前記クリック弾接体の両取付部を取り付ける被取付部を形成する工程と、
前記クリック弾接体用帯状金属板中に、前記クリック弾接体を、連結部でこのクリック弾接体用帯状金属板に保持した状態で連続してプレス加工する工程と、
前記カバー用帯状金属板とクリック弾接体用帯状金属板を交差させてカバー素体とクリック弾接体とを重ね合わせ、カバー素体の各被取付部とクリック弾接体の各取付部間を固定する工程と、
前記カバー素体に取り付けたクリック弾接体をクリック弾接体用帯状金属板から切り離す工程と、
前記クリック弾接体を取り付けたカバー素体の両側面板を折り曲げてカバーを形成した後にこのカバーをカバー用帯状金属板から切り離す工程と、
を具備することを特徴とするクリック弾接体付きカバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−105589(P2013−105589A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247755(P2011−247755)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】