説明

クリップとサイレンサとの取付け構造、及びクリップ

【課題】サイレンサに直接的に取り付けることができるクリップを提供することである。
【解決手段】クリップ4は、ワイヤハーネス3を支持するための当接部5と、クリップ本体部11と、パンタグラフ状に伸縮変形する脚部12とを備える。サイレンサ1の穴部6の縮小部7に、クリップ4のクリップ本体部11を配置し、同じく穴部6の拡大部8に、クリップ4の脚部12を配置する。この状態で、クリップ4を押圧し、サイレンサ1を弾性変形させて脚部12を縮長変形させることにより、当接部5と脚部12の一対の第1脚部単体21a,21bで、穴部6の縮小部7の内周縁を挟み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部材の上に弾性変形自在な軟質材よりなるサイレンサを配置し、前記サイレンサに設けた穴部にクリップを取り付け、前記クリップによって前記サイレンサの表面側に被取付物を支持するクリップとサイレンサとの取付け構造、及びクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両(例えば、自動車)のインストゥルメントパネルの内側部分には、フェルトや発泡ウレタン等の軟質材よりなるサイレンサ(吸音材)が取り付けられていて、例えばエンジンルームの騒音が車内に及ばないようにしている。
【0003】
このサイレンサにワイヤハーネスを敷設する場合、サイレンサ用のクリップが使用される。従来のクリップ(例えば、特許文献1に開示されるクリップ)は、サイレンサを支持するベース部材に取り付けられたスタッドボルトを利用して固定したり、ベース部材に設けられた貫通孔を利用して固定したりしている。しかし、ベース部材にスタッドボルトを取り付けたり、貫通孔を設けたりしなければならないため、手間が掛かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−95369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑み、サイレンサに直接的に取り付けることができるクリップを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明は、
ベース部材の上に弾性変形自在な軟質材よりなるサイレンサを配置し、前記サイレンサに設けた穴部にクリップを取り付け、前記クリップによって前記サイレンサの前記ベース部材とは反対側の面である表面側に被取付物を支持する取付け構造であって、
前記サイレンサの穴部には、前記サイレンサの裏面側の穴形状に比べて表面側の穴形状が小さくなる縮小部と、前記縮小部に隣接する前記サイレンサの裏面側に、穴形状が前記縮小部よりも大きくなる拡大部が設けられ、
前記クリップは、前記穴部に挿入されるクリップ本体部と、前記クリップ本体部が前記穴部に挿入されたときに、前記サイレンサの表面に接する当接部と、前記クリップ本体部から前記ベース部材の側へ延設されるパンタグラフ状の伸縮部材で構成した脚部と、を備え、
前記脚部は、前記クリップ本体部が前記穴部に挿入されて前記穴部の縮小部に配置されたときにその穴部の拡大部に収納され、パンタグラフ状に折り畳まれたときに、前記クリップ本体部に形成した係止部と係止して、折畳み状態を保持する係合部が設けられ、
前記クリップは、前記当接部と折畳み状態の前記脚部とが前記穴部の縮小部を挟み込んで固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るクリップとサイレンサとの取付け構造は、上記したように構成されていて、サイレンサの穴部に挿入されたクリップの脚部がパンタグラフ状に変形することにより、クリップの当接部と脚部がサイレンサの穴部の周縁部を挟み込んで取り付けられる。即ち、クリップがサイレンサに直接的に取り付けられる。このため、サイレンサに穴部を設けるだけで済み、ベース部材に取付穴を設けたり、ベース部材にスタッドボルトを設けたりすることが不要となる。
【0008】
前記脚部は、前記クリップ本体部に設けられた一対の第1ヒンジ部を介し、それらの先端部に対称形状に連結される一対の第1脚部単体と、
前記一対の第1脚部単体のそれぞれの先端部に、一対の第2ヒンジ部を介して対称形状に連結される一対の第2脚部単体と、
前記一対の第2脚部単体のそれぞれの先端部どうしを、一対の第3ヒンジ部を介して連結する連結板部と、
前記連結板部において、前記一対の第1脚部単体と前記一対の第2脚部単体との間に配置され、かつ前記クリップ本体部の係止部と対向するように設けられる係合部と、を備え、
前記脚部が折り畳まれるとき、前記一対の第1脚部単体及び前記一対の第2脚部単体は、前記第1ないし第3のヒンジ部を支点として互いに遠ざかるように回動しながら外方へ移動するとともに、前記連結板部に設けられた係合部が前記クリップ本体部に接近する方向に移動し、その係止部に入り込んで係止されるようにすることができる。
【0009】
脚部が折り畳まれた状態で、連結板部に設けられた係合部が、クリップ本体部の係止部に係止されるため、脚部の折畳み状態が保持される。この脚部は、クリップ本体部と一体に成形することが可能であり、部品点数が増加することもない。
【0010】
前記クリップ本体部において、前記当接部の裏面から前記一対の第1ヒンジ部までの長さが、前記縮小部の深さよりも短くなっていて、
前記脚部が折り畳まれたとき、前記当接部と前記一対の第1脚部単体が前記縮小部の周縁部をそれぞれ押圧する状態で挟み込む。
【0011】
そして、前記一対の第1脚部単体における前記当接部の裏面と対向する側に、先端部が鋭角状の食込み部が設けられている場合、
前記脚部が折り畳まれたとき、前記食込み部が前記縮小部における裏面側の周縁部に食い込む。
【0012】
クリップは、当接部と折畳み状態の脚部の第1脚部単体とが、サイレンサの穴部の縮小部の周縁部を押圧状態で挟み込むことによって、サイレンサに固定される。そして、第1脚部単体に設けられた食込み部が、縮小部の周縁部に食い込むことにより、より強固に取り付けられるため、クリップが外れにくくなる。
【0013】
前記穴部は底面を有し、前記穴部の拡大部に収納された脚部は、その連結板部が前記底面に当たることによって折り畳まれるようにすることができる。この底面は、穴部が裏面側に開口している場合、ベース部材とすることができる。
【0014】
このとき、前記当接部が裏面側に向かって押し込まれることにより前記サイレンサが弾性変形し、前記脚部の連結板部が前記穴部の底面に当たって該脚部が折り畳まれるようにすることができる。
【0015】
前記当接部には、前記クリップ本体部の係止部と前記係合部との係止状態を解放するための工具が挿入される工具挿入穴が、前記表面側に開口して設けられていることが望ましい。これにより、クリップにワイヤハーネス等の被取付物が取り付けられていても、それを取り外すことなく(例えば、被取付物の取付け位置をずらすだけで)、作業者がクリップ本体部の係止部を視認することができるため、クリップをサイレンサから取り外す作業が容易である。即ち、クリップから被取付物を取り外さなくても、クリップをサイレンサから取り外すこともできる。また、取り外したクリップの再利用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】クリップ4とサイレンサ1の正面図である。
【図2】クリップ4の斜視図である。
【図3】(a)はクリップ4の平面図、(b)は同じく底面図、(c)は同じく側面図である。
【図4】クリップ4のクリップ本体部11と脚部12とを、サイレンサ1の穴部6に挿入した状態の作用説明図である。
【図5】作業者がクリップ4を押圧して、脚部12を縮長変形させる状態の作用説明図である。
【図6】クリップ4の当接部5と脚部12がサイレンサ1の縮小部7の周縁部を挟み込む状態の作用説明図である。
【図7】クリップ4の突起部26を押し下げて、脚部12を伸長変形させる状態の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1はクリップ4とサイレンサ1の正面図、図2はクリップ4の斜視図、図3の(a)はクリップ4の平面図、(b)は同じく底面図、(c)は同じく側面図である。
【実施例1】
【0018】
図1に示されるように、車両のインストゥルメントパネル(図示せず)の内側部分には、吸音のためのサイレンサ1がベース部材2に固着されている。このサイレンサ1にワイヤハーネス3を敷設する場合、予めクリップ4にワイヤハーネス3を支持させる。例えば、クリップ4の当接部5に設置したワイヤハーネス3を、図示しないテープ等によって当接部5と一体になるように巻き付ける。作業者は、この状態のクリップ4をサイレンサ1に取り付ける。
【0019】
最初に、サイレンサ1について説明する。図1及び図2に示されるように、サイレンサ1は、フェルト等の弾性変形自在な軟質材よりなり、クリップ4が取り付けられる側(以下、表面側という。)と裏面側に開口する穴部6が設けられている。穴部6について説明する。この穴部6はクリップ4に対応する形状を有し、表面側に開口し、幅W1で深さがD1の穴形状を有する縮小部7と、裏面側に開口し、縮小部7よりも大きな幅W2と深さD2の穴形状を有する拡大部8とを備える。本実施例のサイレンサ1の穴部6を構成する縮小部7と拡大部8とはいずれも方形状で、平面視においてそれらの中心位置(図示せず)を同一として互いに相似形状となるように設けられ、それらの接合部分に段差面9が形成されている。このため、正面視における穴部6(縮小部7と拡大部8)は左右対称となっている。また、サイレンサ1の裏面側にはベース部材2が固着されているため、拡大部8の裏面側の開口はベース部材2によって閉塞されている。
【0020】
次に、本実施例のクリップ4について説明する。図1ないし図3に示されるように、クリップ4は、クリップ本体部11と、クリップ本体部11の上部に設けられる当接部5と、クリップ本体部11の下部から下方に延設され、パンタグラフ状に折畳み可能な脚部12とを備える。当接部5は、短円柱形状の中央板部5aと、中央板部5aの側壁部から左右方向に対称形状で延設される一対の平板部5bとを備える。中央板部5aには、その正面部からほぼ中心部にまで達する切欠き部13が設けられている。また、一対の平板部5bの先端部は下方に向けて屈曲し、一対の平板部5bの底面(下端面)よりも下方に配置される各屈曲部14が設けられていて、サイレンサ1に設置されたときにこの屈曲部14がサイレンサ1の上面に食い込んで、クリップ4がずれることを防止する(後述)。
【0021】
クリップ本体部11は、横断面形状(クリップ4の高さ方向と直交する面の断面形状)が略U字状で、その内壁面が中央板部5aの切欠き部13の内壁面と面同一になるようにして、かつ中央板部5aの底面から垂下する形態で設けられている。クリップ本体部11の内壁面で囲まれた部分には、正面部が開口する空間部15が形成されている。空間部15の内幅は、切欠き部13の内幅と等しい。また、クリップ本体部11を構成する両サイドの壁部と、当接部5を構成する一対の平板部5bの底面との間には、各リブ16が設けられている。そして、クリップ本体部11の内壁面の下部には、その全周に亘って断面略V字状の溝部17が設けられている。
【0022】
クリップ本体部11の下部はその上部よりも厚みが薄くなっていて、下端部の外壁面(各リブ16のほぼ直下の部分)から、各ストッパ18が設けられている。ストッパ18の機能については後述する。
【0023】
クリップ本体部11の下部には、パンタグラフ状に折畳み可能な脚部12が設けられている。脚部12について説明する。脚部12は、正面視において左右対称である。このため、正面視における脚部12の右側部分を構成する部材に添字aを付し、左側部分を構成する部材に添字bを付して説明する。脚部12は、クリップ本体部11における上部と下部の段付き部分の外壁面に設けられた一対の第1ヒンジ部19a,19bを介して連結される一対の第1脚部単体21a,21bと、一対の第1脚部単体21a,21bの先端部に、一対の第2ヒンジ部22a,22bを介して連結される一対の第2脚部単体23a,23bと、一対の第2脚部単体23a,23bの先端部どうしを連結するために、一対の第3ヒンジ部24a,24bを介して連結される連結板部25と、連結板部25における長さ方向のほぼ中央部に、クリップ本体部11の空間部15と対向配置されるように設けられる突起部26と、を備えている。そして、図3に示されるように、脚部12を構成する各部材(第1ヒンジ部19a,19b、第1脚部単体21a,21b、第2ヒンジ部22a,22b、第2脚部単体23a,23b、第3ヒンジ部24a,24b及び連結部25)の奥行き方向の長さは、当接部5における平板部5bの奥行き方向の長さとほぼ同一である。
【0024】
図3の(b)に示されるように、連結板部25において、長さ方向のほぼ中央部分(狭幅部27)の幅は狭くなっていて、かつ斜めに設けられている。狭幅部27が設けられていることにより、連結板部25の幅方向の長さが長くなったり、短くなったりする。即ち、連結板部25の狭幅部27は、脚部12がパンタグラフ状に変形(縮長変形又は伸長変形)したときに、その変形に伴って生ずるねじれ等を連結板部25の長さを変化させて吸収させることにより、脚部12の変形がスムーズに行われるようにするという機能を有する。
【0025】
図1及び図2に示されるように、突起部26の基端部は左右に2つに分断されていて、その右側部分は、連結板部25における狭幅部27よりも右側部分の中央部寄りの端部に設けられ、その左側部分は、連結板部25における狭幅部27よりも左側部分の中央部寄りの端部に設けられている。そして、突起部26の先端部(上端部)には、円錐台形状の挿入案内部28が設けられている。また、突起部26の右側部分及び左側部分における高さ方向の所定位置の外周面には、全周に亘って(ただし、分断された部分を除く。)係合突部29が張り出して設けられている。係合突部29は、クリップ本体部11の溝部17の断面形状に対応する断面略三角形状を呈し、溝部17と係合したときに、突起部26が空間部15から抜け出ないようにするという機能を有する。
【0026】
クリップ4の連結板部25を、連結板部25が下方にそれ以上の移動ができないような状態(例えば、図5に示されるように、連結板部25をベース部材2に当接させた状態)にして、クリップ4の当接部5を下方に向かって押し込むと、脚部12がパンタグラフ状に縮長変形し、当接部5と連結板部25が相対的に接近する。このとき、突起部26の挿入案内部29が、クリップ本体部11の空間部15に入り込み、係合突部29が溝部17に入り込んで係合される。これにより、脚部12が折り畳まれた状態が保持される。
【0027】
図1及び図2に示されるように、一対の第1脚部単体21a,21bの外側面の先端部には、略三角柱形状の食込み部31a,31bがそれぞれ設けられている。クリップ4がサイレンサ1の穴部6に入り込んだ状態で、脚部12がパンタグラフ状に縮長変形すると、一対の第1脚部単体21a,21bは、対応する第1ヒンジ部19a,19bを中心に回動しながら上方へ移動する。そして、一対の第1脚部単体21a,21bの先端部に設けられた食込み部31a,31bが、サイレンサ1の穴部6の段差面9に食い込む。これにより、クリップ4がサイレンサ1の穴部6から外れにくくなる。
【0028】
脚部12が伸長状態に配置されているとき、一対の第1脚部単体21a,21bと一対の第2脚部単体23a,23bは少し斜めに配置されている。即ち、一対の第2ヒンジ部22a,22bが、一対の第1ヒンジ部19a,19b及び一対の第3ヒンジ部23a,23bよりも少し外側に突出している。換言すれば、一対の第1脚部単体21a,21bと一対の第2脚部単体23a,23bとが一直線状に配置されていない。この結果、伸長状態の脚部12が縮長変形しようとするときに、脚部12は必ず一対の第2ヒンジ部22a,22bがより外側に突出するように変形する。即ち、伸長状態の脚部12が縮長変形しようとするときに、一対の第2ヒンジ部22a,22bが突起部26に干渉することはない。
【0029】
そして、図1に示されるように、脚部12の伸長状態で、一対の第1脚部単体21a,21bの内側面は、クリップ本体部11に設けられた各ストッパ18と近接配置される。これにより、脚部12の伸長状態において、一対の第1脚部単体21a,21bは常に斜めに、かつ鉛直線よりも外側に配置される。即ち、各ストッパ18は、一対の第1脚部単体21a,21bが内側に回動しようとすることを阻止するという機能を有している。この結果、作業者は、伸長状態における脚部12の形態を気にかけることなく、そのままサイレンサ1の穴部6に挿入することができる。
【0030】
図1に示されるように、伸長状態の脚部12の最大幅W3は、サイレンサ1の穴部6の縮小部7の内幅W1よりも僅かに小さい。図6に示されるように、縮長状態の脚部12の最大幅W4は、サイレンサ1の穴部6の拡大部8の内幅W2よりも少し大きい。また、図1に示すクリップ本体部11における当接部5の底面から一対の第1ヒンジ部19a,19bまでの高さH1は、サイレンサ1の穴部6の縮小部7の深さD1よりも少し小さい。そして、クリップ本体部11における第1ヒンジ部19a,19bまでの高さH1と伸長状態の脚部12の高さH2との和(H1+H2)は、サイレンサ1の穴部6の深さ(D1+D2)とほぼ等しい。
【0031】
本発明のクリップ4の作用について説明する。図1に示されるように、クリップ4の当接部5には、図示しない固定手段(例えば、テープ等)によって1ないし複数本のワイヤハーネス3が固着されている。ワイヤハーネス3は、その長さ方向をクリップ4の当接部5の長手方向に沿わせて固着される。また、クリップ4の脚部12は、通常の状態(脚部12に何らの力も作用していない状態)で伸長状態を呈している。作業者は、クリップ4の脚部12をサイレンサ1の穴部6に挿入する。
【0032】
図4に示されるように、クリップ4の当接部5の屈曲部14がサイレンサ1の上面に設置されると、クリップ本体部11が穴部6の縮小部7に配置され、脚部12が穴部6の拡大部8に配置される。この状態で、脚部12の連結板部25がベース部材2に近接配置される。
【0033】
図5に示されるように、作業者は、指でクリップ4を下方に押し込む。クリップ4の当接部5がサイレンサ1を押圧し、サイレンサ1を弾性変形させる。これにより、サイレンサ1が圧縮されてその厚みが薄くなる。このときの脚部12は、その連結板部25の底面がベース部材2に当接し、それ以上下方へ移動することができなくなるため、パンタグラフ状に縮長変形する(折り畳まれる)。即ち、クリップ本体部11と連結板部25が相対的に接近するのに伴い、一対の第1脚部単体21a,21bが第2ヒンジ部22a,22bに拘束されながら、第1ヒンジ部19a,19bを中心に上方へ移動するように回動するとともに、一対の第2脚部単体23a,23bが第3ヒンジ部24a,24bに拘束されながら、第2ヒンジ部22a,22bを中心に上方へ移動するように回動する。一対の第1脚部単体21a,21b及び一対の第2脚部単体23a,23bのそれそれの回動方向を矢印で示す。同時に、突起部26が、クリップ本体部11によって形成される空間部15に進入する。突起部26の挿入案内部(上端部)が先細形状となっているため、突起部26は確実に空間部15に進入する。
【0034】
図6に示されるように、突起部26の外周面に設けられた係合突部29が、クリップ本体部11の溝部17に嵌合して係止されると、脚部12は折り畳まれた状態を保持する。この状態で作業者がクリップ4を押し付けている力を解放すると、サイレンサ1は弾性復元する。そして、一対の第1脚部単体21a,21bがほぼ水平状態となり、サイレンサ1の穴部6の段差面9を押圧し、クリップ4の当接部5と一対の第1脚部単体21a,21bが穴部6の縮小部7の周縁部を挟み込む。そして、当接部5の各屈曲部14がサイレンサ1の上面に食い込むとともに、各食込み部31a,31bが段差面9に食い込む。これにより、クリップ4は、サイレンサ1に強固に保持される。
【0035】
サイレンサ1に保持されたクリップ4を取り外す場合、図7に示されるように、クリップ4の当接部5に取り付けられていたワイヤハーネス3を外し、例えばマイナスドライバ32のような工具を使用して、クリップ4の突起部26を押圧する。そして、クリップ本体部11の溝部17と脚部12の突起部26の係合突部29との係止状態を解放する。クリップ4の当接部5に、工具挿入穴としての切欠き部13がその表面側(上側)に開口し、かつクリップ本体部11の空間部15と連続して設けられているため、ワイヤハーネス3を外せば(少なくともワイヤハーネスの取付け位置をずらせば)、作業者は突起部26を視認できる。このため、作業者が工具を使用して、突起部26を押圧する操作を容易に行うことができる。これにより、溝部17と突起部26の係合突部29との係止状態が解放され、脚部12が折畳み状態から伸長変形し、脚部12が伸長状態となる。作業者は、この状態のクリップ4をサイレンサ1の穴部6からそのまま引き抜くだけで、容易にクリップ4を取り外すことができる。
【0036】
クリップ4を取り外すとき、クリップ4の突起部26を押圧するだけで済むため、クリップ4が損傷することはない。これにより、取り外したクリップ4を再使用することができる。また、取り外したクリップ4を破棄する場合であっても、その処理が容易である。さらに、サイレンサ1の側にクリップ4が残ることもないので、サイレンサ1も再利用することができる。
【0037】
図1及び図2に示されるように、本実施例の穴部6の縮小部7は、クリップ4の脚部12を挿通させることができるように、伸長状態における脚部12の平面形状(投影面形状)よりも少し大きな方形状であり、同じく拡大部8は、縮小部7よりも大きな方形状である。これにより、図6に示されるように、穴部6の拡大部8に配置され、パンタグラフ状に縮長変形されて横方向(水平方向)に伸長された脚部12が、当接部5と協働して縮小部7を挟み込むことができる。しかも、挟込み状態の脚部12が、穴部6から外れにくくなるという効果が奏される。しかし、上記の要件を満たすのであれば、穴部6の縮小部7と拡大部8の平面形状が方形である必要はなく、例えば円形状(楕円形状を含む。)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のクリップは、弾性変形自在な軟質材よりなるサイレンサに被取付物(例えばワイヤハーネス)を取り付けるためのクリップとして利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 サイレンサ
2 ベース部材
3 ワイヤハーネス(被取付物)
4 クリップ
5 当接部
6 穴部
7 縮小部
8 拡大部
9 段差面
11 クリップ本体部
12 脚部
13 切欠き部(工具挿入穴)
14 空間部
16 溝部(係止部)
19a,19b 第1ヒンジ部
21a,21b 第1脚部単体
22a,22b 第2ヒンジ部
23a,23b 第2脚部単体
24a,24b 第3ヒンジ部
25 連結板部
28a,28b 食込み部
29 係合突部(係合部)
32 マイナスドライバ(工具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材の上に弾性変形自在な軟質材よりなるサイレンサを配置し、前記サイレンサに設けた穴部にクリップを取り付け、前記クリップによって前記サイレンサの前記ベース部材とは反対側の面である表面側に被取付物を支持する取付け構造であって、
前記サイレンサの穴部には、前記サイレンサの裏面側の穴形状に比べて表面側の穴形状が小さくなる縮小部と、前記縮小部に隣接する前記サイレンサの裏面側に、穴形状が前記縮小部よりも大きくなる拡大部が設けられ、
前記クリップは、前記穴部に挿入されるクリップ本体部と、前記クリップ本体部が前記穴部に挿入されたときに、前記サイレンサの表面に接する当接部と、前記クリップ本体部から前記ベース部材の側へ延設されるパンタグラフ状の伸縮部材で構成した脚部と、を備え、
前記脚部は、前記クリップ本体部が前記穴部に挿入されて前記穴部の縮小部に配置されたときにその穴部の拡大部に収納され、パンタグラフ状に折り畳まれたときに、前記クリップ本体部に形成した係止部と係止して、折畳み状態を保持する係合部が設けられ、
前記クリップは、前記当接部と折畳み状態の前記脚部とが前記穴部の縮小部を挟み込んで固定されることを特徴とするクリップとサイレンサとの取付け構造。
【請求項2】
前記脚部は、前記クリップ本体部に設けられた一対の第1ヒンジ部を介し、それらの先端部に対称形状に連結される一対の第1脚部単体と、
前記一対の第1脚部単体のそれぞれの先端部に、一対の第2ヒンジ部を介して対称形状に連結される一対の第2脚部単体と、
前記一対の第2脚部単体のそれぞれの先端部どうしを、一対の第3ヒンジ部を介して連結する連結板部と、
前記連結板部において、前記一対の第1脚部単体と前記一対の第2脚部単体との間に配置され、かつ前記クリップ本体部の係止部と対向するように設けられる係合部と、を備え、
前記脚部が折り畳まれるとき、前記一対の第1脚部単体及び前記一対の第2脚部単体は、前記第1ないし第3のヒンジ部を支点として互いに遠ざかるように回動しながら外方へ移動するとともに、前記連結板部に設けられた係合部が前記クリップ本体部に接近する方向に移動し、その係止部に入り込んで係止されることを特徴とする請求項1に記載のクリップとサイレンサとの取付け構造。
【請求項3】
前記クリップ本体部において、前記当接部の裏面から前記一対の第1ヒンジ部までの長さが、前記縮小部の深さよりも短くなっていて、
前記脚部が折り畳まれたとき、前記当接部と前記一対の第1脚部単体が前記縮小部の周縁部をそれぞれ押圧する状態で挟み込むことを特徴とする請求項2に記載のクリップとサイレンサとの取付け構造。
【請求項4】
前記一対の第1脚部単体における前記当接部の裏面と対向する側には、先端部が鋭角状の食込み部が設けられ、
前記脚部が折り畳まれたとき、前記食込み部が前記縮小部における裏面側の周縁部に食い込むことを特徴とする請求項2又は3に記載のクリップとサイレンサとの取付け構造。
【請求項5】
前記穴部は底面を有し、前記穴部の拡大部に収納された脚部は、その連結板部が前記底面に当たることによって折り畳まれることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載のクリップとサイレンサとの取付け構造。
【請求項6】
前記当接部が裏面側に向かって押し込まれることにより前記サイレンサが弾性変形し、前記脚部の連結板部が前記穴部の底面に当たって該脚部が折り畳まれることを特徴とする請求項5に記載のクリップとサイレンサとの取付け構造。
【請求項7】
前記当接部には、前記クリップ本体部の係止部と前記係合部との係止状態を解放するための工具が挿入される工具挿入穴が、前記表面側に開口して設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のクリップとサイレンサとの取付け構造。
【請求項8】
ベース部材の上に弾性変形自在な軟質材よりなるサイレンサに設けられた穴部に、被取付物を支持するために前記サイレンサの表面側に取り付けられるクリップであって、
前記サイレンサの穴部で、裏面側の穴形状に比べて表面側の穴形状が小さい縮小部に挿入されるクリップ本体部と、
前記クリップ本体部が前記縮小部に挿入されたときに、前記サイレンサの表面に接する当接部と、
前記クリップ本体部から延設されるパンタグラフ状の伸縮部材で構成され、前記クリップ本体部が前記穴部の縮小部に挿入されたときに、前記サイレンサの穴部の裏面側に前記縮小部に隣接し、穴形状が前記縮小部よりも大きい拡大部に収納されるとともに、パンタグラフ状に折り畳まれたときに、前記クリップ本体部に形成した係止部と係止して、折畳み状態を保持する係合部が設けられた脚部と、を備え、
前記脚部が折り畳まれたとき、前記当接部と折畳み状態の前記脚部が前記穴部の縮小部を挟み込んで固定することを特徴とするクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193830(P2012−193830A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60331(P2011−60331)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】