説明

クリップ取付構造

【課題】被保持部材を保持したクリップ本体を車体の取付孔に容易に挿入して取り付け可能なクリップ取付構造を得る。
【解決手段】クリップ14には仮固定爪56及び本固定爪58が形成されており、取付孔22への挿入過程でワイヤーケーブルエンド26がボデーフレーム20に接触しない仮固定位置でワイヤーケーブルエンド26を仮固定できる。ワイヤーケーブルエンド26がボデーフレーム20に接触しないので、クリップ本体44を取付孔22に容易に挿入できる。挿入後は、ワイヤーケーブル24を下方に引けば、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ14から突出する本固定位置へと移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に設けられた孔部分(取付孔)に他部材を取り付ける構造として、特許文献1には、閉塞栓の押圧部を押圧して、スムーズにパネル穿孔孔を通過させるようにした構造が記載されている。
【0003】
ところで、車体の取付孔にクリップ本体を挿入して取り付けることで、このクリップ本体に保持された被保持部材を車体に固定する場合には、被保持部材がクリップ本体から突出していると、クリップ本体の取付孔への挿入時に被保持部材が車体に接触して、挿入作業が困難になることがある。
【特許文献1】実開平6−82467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、被保持部材を保持したクリップ本体を車体の取付孔に容易に挿入して取り付け可能なクリップ取付構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、車体の取付孔に挿入されて車体に取り付けられるクリップ本体と、前記クリップ本体に保持される被保持部材と、前記クリップ本体に設けられ、クリップ本体の前記取付孔への挿入過程で被保持部材が前記車体に対して非接触となる非接触位置から、前記被保持部材の少なくとも一部がクリップ本体から突出した突出位置へと移動可能に被保持部材を保持する保持手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
このクリップ取付構造では、被保持部材が保持手段によって、非接触位置から突出位置へと移動可能に保持される。非接触位置では、クリップ本体の取付孔への挿入過程で被保持部材が車体と接触しない。これにより、被保持部材を突出位置で保持した状態でクリップ本体を取付孔へ挿入する構造と比較して、被保持部材を保持した状態のクリップ本体を車体の取付孔に容易に挿入して車体に取り付けることができる。車体への取付後には、被保持部材を突出位置へと移動させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記保持手段による前記被保持部材の前記非接触位置から前記突出位置への移動方向が、被保持部材の前記クリップ本体からの突出方向と一致していることを特徴とする。
【0008】
このように被保持部材の非接触位置から突出位置への移動方向がクリップ本体からの突出方向と一致していると、非接触位置では、突出位置と比較して、被保持部材のクリップ本体からの突出量が少なくなる。これにより、非接触位置において、効率的に被保持部材をクリップ本体内へ退避させて突出量を少なくすることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記被保持部材が、ワイヤーケーブルが固定されたワイヤー固定部材であり、前記ワイヤーケーブルの前記ワイヤー固定部材からの延出方向が前記移動方向と一致していることを特徴とする。
【0010】
したがって、ワイヤーケーブルを引っ張ることで、被保持部材であるワイヤー固定部材を退避位置から突出位置へと容易に移動させることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記保持手段が、前記突出位置又は前記非接触位置のそれぞれで前記被保持部材を固定する被保持部材固定手段、を有することを特徴とする。
【0012】
これにより、被保持部材を突出位置又は非接触位置で固定することができ、クリップ本体の車体への取付作業を効率的に行うことが可能になる。なお、被保持部材固定手段は、被保持部材を突出位置で固定するものと、非接触位置で固定するもの、の双方が挙げられる。これらは、クリップ本体に対し、いずれか一方のみが備えられていてもよいし、双方が備えられていてもよい。
【0013】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記クリップ本体に設けられ前記車体への取付状態でクリップ本体から突出して車体に係止される係止爪、を有することを特徴とする。
【0014】
この係止爪により、クリップ本体を車体に取り付けた状態で係止させることができ、安定的にクリップ本体の車体への取付状態を維持できるようになる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記係止爪が、前記クリップ本体に向かって退避可能とされていることを特徴とする。
【0016】
したがって、クリップ本体の取付孔への挿入時には、係止爪をクリップ本体に向かって退避させることで、このように退避しない構成と比較して、挿入作業を容易に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成としたので、被保持部材を保持したクリップ本体を車体の取付孔に容易に挿入して取り付け可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1には、本発明の第1実施形態のクリップ取付構造12が、自動車の車体への適用状態で示されている。また、図2及び図3(A)には、クリップ取付構造12を構成するクリップ14が拡大して示されている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の適用対象となる自動車は、燃料タンク16の下方に、燃料タンク16を異物等から保護するプロテクタ18を有している。プロテクタ18は、図示しない取付具によって車体に取り付けられているが、その端部は燃料タンク16よりも車幅方向(又は車両前後方向)に張り出したオーバーハング部18Hとされている。
【0020】
また、自動車の車体は、上側フレーム20Uと下側フレーム20Lとで矩形断面を構成するボデーフレーム20を有している。このボデーフレーム20の下側フレーム20Lに形成された取付孔22にクリップ14が挿入されて、クリップ14がボデーフレーム20に取り付けられている。そして、ワイヤーケーブル24の上端に加締め等によって取り付けられたワイヤーケーブルエンド26を、クリップ14を介してボデーフレーム20に固定すると共に、ワイヤーケーブル24の下端を留め金28及びリベット30を介してプロテクタ18に固定することで、プロテクタ18のオーバーハング部18Hの垂れ下がりをワイヤーケーブル24によって防止している。なお、ワイヤーケーブルエンド26は、図3(B)にも詳細に示すように、ワイヤーケーブル24の上端が挿入されて固定される軸部32と、この軸部32の上端から張り出した円形のフランジ部34と、で構成されている。
【0021】
図2及び図3(A)に示すように、クリップ14は、略長円状に形成された接触板片42を有している(以下、単に「長手方向」というときは、この接触板片42の長手方向を言うものとし、図2及び図3に矢印Wで示す)。接触板片42は、図7(A)及び(B)に示すように、クリップ14のボデーフレーム20への取り付け状態では、下側フレーム20Lの上面に面接触している。
【0022】
接触板片42の長手方向の中央には、下方に向かって凹まされたクリップ本体44が形成されている。クリップ本体44は上方から見て略長円の中空状に形成されており、接触板片42の短辺42Sから下方へ連続する1対の側板46と、接触板片42の長手方向端部近傍から下方へ連続すると共に湾曲された一対の端板48、及び、接触板片42と平行な底板50、で構成されている。底板50の中央には、ワイヤーケーブルエンド26の軸部32が挿通される挿通孔52が形成されている。
【0023】
クリップ本体44内には、長手方向に一定の間隔をあけて、2枚の壁板54が平行に形成されている。クリップ本体44の側板46の内面には、壁板54の間の位置において、一対の仮固定爪56が形成され、さらに仮固定爪56よりも底板50側(下側)に、同じく1対の本固定爪58が形成されている。
【0024】
本固定爪58は、底板50と平行な係止面58Kと、この係止面58Kと反対側(上側)のテーパー面58Tと、を有している。図7(A)及び(B)に示すように、係止面58Kと底板50との間隔は、ワイヤーケーブルエンド26のフランジ部34の厚みと等しくされている。したがって、フランジ部34が係止面58Kと底板50の間で係止されることで、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ14に本固定される。以下、この状態でのワイヤーケーブルエンド26の固定を「本固定」といい、ワイヤーケーブルエンド26が本固定される位置を「本固定位置」という。この本固定位置が、本発明に係る「突出位置」となっている。
【0025】
また、仮固定爪56も、底板50と平行な係止面56Kと、その反端側(上側)のテーパー面56Tと、を有している。図5(A)、(B)、図6(A)及び(B)に示すように、本固定爪58のテーパー面58Tと、仮固定爪56の係止面56Kとの間隔は、ワイヤーケーブルエンド26のフランジ部34を挟持可能な間隔とされている。したがって、フランジ部34が係止面56Kとテーパー面58Tとの間で係止されることで、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ14に固定される。以下、この状態でのワイヤーケーブルエンド26の固定を「仮固定」といい、ワイヤーケーブルエンド26が仮固定される位置を「仮固定位置」という。この仮固定位置が、本発明に係る「非接触位置」となっている。
【0026】
そして、この仮固定の状態(図6(A)及び(B)参照)から、ワイヤーケーブルエンド26に下方への力を作用させると、テーパー面58Tによって本固定爪58が弾性的に変形して外側に広がり、ワイヤーケーブルエンド26の下方への移動が許容される。なお、ワイヤーケーブルエンド26のフランジ部34がテーパー面56Tに接触して支持されている状態においても同様に、ワイヤーケーブルエンド26に下方への力を作用させると、仮固定爪56が弾性的に広がって、ワイヤーケーブルエンド26への移動が許容される。これらの移動方向は、軸部32のクリップ14からの突出方向と一致しており、さらに、ワイヤーケーブル24の延出方向とも一致している。
【0027】
ここで、図7(A)及び(B)に示すように、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ14に本固定されているときには、軸部32がクリップ14から下方に突出しているが、図6(A)及び(B)に示すように仮固定されているときには、軸部32を含むワイヤーケーブルエンド26の全体がクリップ14内に退避しており、外側に突出しないようになっている。換言すれば、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ14から突出しない位置となるように、仮固定の位置が設定されている。
【0028】
図3(A)及び図4に示すように、クリップ本体44の端板48には、逆U字状の切り欠きによって、係止爪60が形成されている。係止爪60には、接触板片42と対向する係止面60Kと、この係止面60Kの反対側のテーパー面60Tが形成されている。また、係止爪60の下端はヒンジ部60Hとされており、図6(A)及び(B)に示すように、ボデーフレーム20への取付過程でテーパー面60Tが取付孔22の孔縁に押されると、このヒンジ部60Hを中心として、上端側が弾性的に撓み変形する。これにより、係止爪60はクリップ本体44内に退避する。そして、図7(A)及び(B)に示すように、クリップ14がボデーフレーム20に取り付けられた状態では、係止爪60はクリップ本体44から突出し、下側フレーム20Lに形成される。これにより、係止爪60は接触板片42との間で下側フレーム20Lを挟持するようになっている。
【0029】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0030】
ワイヤーケーブル24の上端をボデーフレーム20に固定する場合、まず、ワイヤーケーブル24に取り付けられたワイヤーケーブルエンド26を、図5(A)及び(B)に示すように、クリップ14の仮固定位置で仮固定しておく。この状態では、ワイヤーケーブルエンド26はクリップ14内に退避しており、クリップ14の外側には突出していない。
【0031】
次に、クリップ14を取付孔22に下方から挿入する。このとき、クリップ14を長手方向で斜めとし、ボデーフレーム20に対して傾斜した姿勢を維持して、長手方向の一端側から矢印S方向に挿入していく。ここで、図8に示す比較例のクリップ74のように、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ74から突出した構成では、この状態で挿入作業を行うとワイヤーケーブルエンド26がボデーフレーム20(取付孔22の孔縁等)に当たってしまい、挿入できないおそれがある。
【0032】
これに対し、本実施形態では、上記したように、ワイヤーケーブルエンド26は仮固定位置で仮固定されており、クリップ14からは突出していない。このため、ワイヤーケーブルエンド26がボデーフレーム20に接触することがなく、クリップ14を取付孔22に容易に挿入することができる。また、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ14から突出していないので、挿入作業に必要なスペースも少なくて済み、作業性が向上している。挿入により、図6(A)及び(B)に示すように、クリップ14はボデーフレーム20の内側、すなわち下側フレーム20Lの上方へと貫通した位置となる。
【0033】
クリップ14が下側フレーム20Lの上方へ貫通した後は、ワイヤーケーブル24を下方に引く。これにより、ワイヤーケーブルエンド26に押されて仮固定爪56が外側へ撓み変形し、図7(A)及び(B)に示すように、ワイヤーケーブルエンド26が仮固定位置から、本固定位置へと移動する。また、これと同時に、あるいは前後して、係止爪60も取付孔22の孔縁に押されて撓み変形しつつ、クリップ14が下方へ移動する。接触板片42が下側フレーム20Lに接触すると、係止爪60は下側フレーム20Lの下方に抜け出るので、係止爪60と下側フレーム20Lとの間に接触板片42が挟持されて係止される。このように、ワイヤーケーブル24を引くだけの単一の作業で、ワイヤーケーブルエンド26のクリップ14への固定(仮固定位置から本固定位置への移動)と、クリップ14のボデーフレーム20への取り付けを行うことができる。
【0034】
また、この状態では、ワイヤーケーブルエンド26が本固定位置となっており、係止面58Kと底板50とでワイヤーケーブルエンド26がクリップ14に強く固定される。同様に、接触板片42がボデーフレーム20と係止面60Kとの間で挟持されて、クリップ14がボデーフレーム20に強固に取り付けられる。これにより、ワイヤーケーブル24のボデーフレーム20からの抜けを確実に防止することができ、ワイヤーケーブル24はワイヤーケーブルエンド26及びクリップ14を介して、ボデーフレーム20に確実に固定される。
【0035】
図9〜図11には、本発明の第2実施形態に係るクリップ取付構造を構成するクリップ114が示されている。第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0036】
第2実施形態のクリップ114では、クリップ本体44の側板46に、第1実施形態に係る仮固定爪56や本固定爪58は形成されておらず、これらに代えて、クリップ本体44内の壁板54に、固定爪116が形成されている。固定爪116には、クリップ本体44の底板50と平行な係止面116Kと、この係止面116Kの反対側のテーパー面116Tが形成されている。そして、図11に示すように、係止面116Kと底板50との間にワイヤーケーブルエンド26のフランジ部34が係止された位置が、ワイヤーケーブルエンド26の本固定位置となる。これに対し、図9に示すように、テーパー面116T上にフランジ部34が支持された位置が、ワイヤーケーブルエンド26の仮固定位置となる。そして、仮固定位置のワイヤーケーブルエンド26に下方への力を作用させると、固定爪116が外側へと弾性的に撓み変形して、ワイヤーケーブルエンド26が仮固定位置から本固定位置へと移動するようになっている。
【0037】
また、第2実施形態では、クリップ本体44の端板48に、薄肉ヒンジ120を介して係止爪118が形成されている。係止爪118は薄肉ヒンジ120を中心として、矢印R1方向に回動するようになっている。また、係止爪118には、クリップ本体44から外側に突出したときに下側フレーム20Lとの間で接触板片42を挟持する挟持面118Kが形成されている。
【0038】
さらに、第2実施形態では、図9〜図11に示すように、固定爪116と反対側に、係止爪118を外側へ押圧可能な押圧片122が形成されている。この押圧片122は、ワイヤーケーブルエンド26の仮固定位置から本固定位置への移動によって固定爪116が外側に撓むと係止爪118を押圧して、クリップ本体44の外側へと回動させる作用を有している。
【0039】
このような構成とされた第2実施形態においても、ワイヤーケーブル24の上端をボデーフレーム20に固定する場合には、ワイヤーケーブルエンド26を仮固定位置としておく。これにより、第1実施形態と同様に、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ114内に退避しており、クリップ114の外側に突出していないので、クリップ114を取付孔22に容易に挿入することができる。なお、図9から分かるように、クリップ114の取付孔22への挿入時には、係止爪118もクリップ本体44内に退避しており、クリップ114から突出していない。また、挿入状態では、接触板片42が下側フレーム20Lに接触している。
【0040】
クリップ114が下側フレーム20Lの上方へ貫通した後は、図10に示すようにワイヤーケーブル24を下方に引く。これにより、図11に示すように、ワイヤーケーブルエンド26が固定爪116を外側に撓ませつつ、本固定位置へ移動する。このとき、固定爪116の撓みによって係止爪118が外側に押し出される。このため、接触板片42と係止爪118によって下側フレーム20Lが挟持されて、クリップ114がボデーフレーム20に係止される。このように、第2実施形態においても、ワイヤーケーブル24を引くだけの単一の作業で、ワイヤーケーブルエンド26のクリップ114への固定(仮固定位置から本固定位置への移動)と、クリップ114のボデーフレーム20への取り付けを行うことができる。
【0041】
特に第2実施形態では、ワイヤーケーブルエンド26が固定爪116を撓ませつつ乗り越える際の力(作業負荷)で、上記したワイヤーケーブルエンド26のクリップ114への固定と、クリップ114のボデーフレーム20への取り付けを完了できるので、作業負荷が低減される。また、この状態で、第1実施形態と同様に、本固定位置にあるワイヤーケーブルエンド26が係止面116Kと底板50とでクリップ114に強く固定されると共に、接触板片42がボデーフレーム20と係止面116Kとの間で挟持されて、クリップ114がボデーフレーム20に強固に取り付けられる。これにより、ワイヤーケーブル24のボデーフレーム20からの抜けを確実に防止し、ワイヤーケーブル24をボデーフレーム20に確実に固定できる。
【0042】
なお、上記実施形態では、仮固定位置(本発明における非接触位置)でワイヤーケーブルエンド26がクリップ14、114内に完全に退避して突出しない構造のものを例に挙げたが、ワイヤーケーブルエンド26がクリップ14、114から突出していても、クリップ14、114の取付孔22への挿入過程で、ボデーフレーム20に接触しない位置に移動していればよい。したがって、たとえばワイヤーケーブルエンド26が、クリップ14、114の長手方向(図2及び図3に示す矢印W方向)に移動することで、取付孔22への挿入過程でボデーフレーム20に接触しないような構成でもよい。上記各実施形態のように、軸部32の長手方向にワイヤーケーブルエンド26が移動する構成では、ワイヤーケーブルエンド26をクリップ14、114の中央で固定(保持)できる。また、ワイヤーケーブルエンド26の仮固定位置から本固定位置への移動方向が、ワイヤーケーブルエンド26の突出方向と一致しているので、仮固定位置では、この突出方向と反対向きでクリップ14、114内に退避していることになる。すなわち、少ない移動量でワイヤーケーブルエンド26をクリップ14、114内に確実に退避させたり、突出させたりすることが可能になる。
【0043】
しかも、上記各実施形態では、ワイヤーケーブルエンド26の仮固定位置から本固定位置への移動方向が、ワイヤーケーブルエンド26からのワイヤーケーブル24の延出方向とも一致している。したがって、ワイヤーケーブル24を引っ張る力を有効に、ワイヤーケーブルエンド26の仮固定位置から本固定位置への移動力として作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態のクリップ取付構造を車体の一部と共に示す一部破断図である。
【図2】本発明の第1実施形態のクリップ取付構造を構成するクリップを示す斜視図である。
【図3】(A)は、本発明の第1実施形態のクリップ取付構造を構成するクリップを示す図2のIII−III線断面図であり、(B)はワイヤーケーブルのワイヤーケーブルエンド近傍を示す正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のクリップ取付構造を構成するクリップを図2の矢印A方向から見て部分的に示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るクリップをボデーフレームに取り付ける過程を示し、(A)は図3(A)と同方向の断面で示す断面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るクリップをボデーフレームに取り付ける過程を示し、(A)は図3(A)と同方向の断面で示す断面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るクリップをボデーフレームに取り付けた状態を示し、(A)は図3(A)と同方向の断面で示す断面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図8】比較例のクリップをボデーフレームに取り付ける過程を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態のクリップ取付構造を構成するクリップの断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態のクリップ取付構造を構成するクリップの断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態のクリップ取付構造を構成するクリップをボデーフレームに取り付けた状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
12 クリップ取付構造
14 クリップ
16 燃料タンク
18 プロテクタ
18H オーバーハング部
20 ボデーフレーム(車体)
20L 下側フレーム
20U 上側フレーム
22 取付孔
24 ワイヤーケーブル
26 ワイヤーケーブルエンド(ワイヤー固定部材、被保持部材)
28 留め金
30 リベット
32 軸部
34 フランジ部
42 接触板片
42S 短辺
44 クリップ本体
46 側板
48 端板
50 底板
52 挿通孔
54 壁板
56 仮固定爪(被保持部材固定手段、保持手段)
56K 係止面
56T テーパー面
58 本固定爪(被保持部材固定手段、保持手段)
58K 係止面
58T テーパー面
60 係止爪
60K 係止面
60T テーパー面
60H ヒンジ部
114 クリップ
116 固定爪
116T テーパー面
118 係止爪
116K 係止面
118K 挟持面
120 薄肉ヒンジ
122 押圧片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の取付孔に挿入されて車体に取り付けられるクリップ本体と、
前記クリップ本体に保持される被保持部材と、
前記クリップ本体に設けられ、クリップ本体の前記取付孔への挿入過程で被保持部材が前記車体に対して非接触となる非接触位置から、前記被保持部材の少なくとも一部がクリップ本体から突出した突出位置へと移動可能に被保持部材を保持する保持手段と、
を有することを特徴とするクリップ取付構造。
【請求項2】
前記保持手段による前記被保持部材の前記非接触位置から前記突出位置への移動方向が、被保持部材の前記クリップ本体からの突出方向と一致していることを特徴とする請求項1に記載のクリップ取付構造。
【請求項3】
前記被保持部材が、ワイヤーケーブルが固定されたワイヤー固定部材であり、
前記ワイヤーケーブルの前記ワイヤー固定部材からの延出方向が前記移動方向と一致していることを特徴とする請求項2に記載のクリップ取付構造。
【請求項4】
前記保持手段が、前記突出位置又は前記非接触位置のそれぞれで前記被保持部材を固定する被保持部材固定手段、
を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のクリップ取付構造。
【請求項5】
前記クリップ本体に設けられ前記車体への取付状態でクリップ本体から突出して車体に係止される係止爪、
を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のクリップ取付構造。
【請求項6】
前記係止爪が、前記クリップ本体に向かって退避可能とされていることを特徴とする請求項5に記載のクリップ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−25653(P2008−25653A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196551(P2006−196551)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】