説明

クリーニング方法、それを用いたインプリント装置および物品の製造方法

【課題】型のパターン部の周辺部に付着した付着物を除去するのに有利なクリーニング方法を提供する。
【解決手段】このクリーニング方法は、凹凸パターンが形成されたパターン部7aを有する型7に付着した付着物22を除去するものである。特に、このクリーニング方法は、型7と、基板20上に塗布された光硬化性樹脂21とを押し付けるに際し、パターン部7aの形成面におけるパターン部7aの外周部7cに対応する基板20上の位置に、光硬化性樹脂21を塗布する工程と、型7と光硬化性樹脂21とを押し付ける工程と、光硬化性樹脂21を硬化させる工程と、型7と光硬化性樹脂21とを引き離す工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング方法、それを用いたインプリント装置および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加え、基板上の未硬化樹脂を型(モールド)で成形し、樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。例えば、インプリント技術の1つとして、光硬化法がある。この光硬化法を採用したインプリント装置では、まず、基板(ウエハ)上のインプリント領域であるショットに紫外線硬化樹脂(インプリント材、光硬化性樹脂)を塗布する。次に、この樹脂(未硬化樹脂)を型により成形する。そして、紫外線を照射して樹脂を硬化させたうえで引き離すことにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
【0003】
この基板上にパターンを形成するに際し、型は、基板の上方で近接した位置に配置されている。このとき、基板上には未硬化樹脂が塗布されている。したがって、この未硬化樹脂が時間と共に徐々に蒸発すると、型に付着する場合がある。通常、型に形成されたパターン部(凹凸パターン)は、インプリント処理ごとに未硬化樹脂に押し付けられるため、蒸発した樹脂成分がパターン部に堆積することは少ない。しかしながら、型におけるパターン部の周辺部は、インプリント処理時に直接基板上の未硬化樹脂と接触しないため、インプリント処理を繰り返すに伴い、この周辺部に蒸発した樹脂成分が徐々に堆積する可能性が高い。この堆積した樹脂成分は、パーティクルの発生源となり、パターン欠陥を引き起こす恐れがある。一方、型は、インプリント処理時にパターン部のみを基板上の未硬化樹脂に接触させるように、パターン部が基板に向かって凸型となるような形状を有する。したがって、インプリント処理時に基板上の未硬化樹脂が型のパターン部の側面にはみ出し、そのままパターン部の側壁部に付着することもあり得る。この場合も、インプリント処理を繰り返すに伴い、パターン部の側壁部に未硬化樹脂の付着物が堆積し、パーティクルの発生源となる恐れがある。これに対して、特許文献1は、インプリント工程中に型に付着したパーティクルを除去する工程を含むインプリント方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−266841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すインプリント方法では、型のパターン部に付着したパーティクルを除去することはできるが、上記のようなパターン部の周辺部に付着した付着物などを除去することは難しい。
【0006】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、型のパターン部の周辺部に付着した付着物を除去するのに有利なクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、凹凸パターンが形成されたパターン部を有する型に付着した付着物を除去するクリーニング方法であって、型と、基板上に塗布された光硬化性樹脂とを押し付けるに際し、パターン部の形成面におけるパターン部の外周部に対応する基板上の位置に、光硬化性樹脂を塗布する工程と、型と光硬化性樹脂とを押し付ける工程と、光硬化性樹脂を硬化させる工程と、型と光硬化性樹脂とを引き離す工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、型のパターン部の周辺部に付着した付着物を除去するのに有利なクリーニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るクリーニング方法を説明するための図である。
【図3】未硬化樹脂が塗布されたクリーニング基板を示す平面図である。
【図4】第2実施形態に係るクリーニング方法を説明するための図である。
【図5】第3実施形態に係るクリーニング方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0011】
(インプリント装置)
まず、本発明のクリーニング方法を説明するにあたり、このクリーニング方法を採用するインプリント装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。このインプリント装置は、半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用され、被処理基板であるウエハ上(基板上)の未硬化樹脂をモールド(型)で成形し、ウエハ上に樹脂のパターンを形成する装置である。なお、ここでは光硬化法を採用したインプリント装置とする。また、以下の各図においては、ウエハ上の樹脂に対して紫外線を照射する照明系の光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内に互いに直交するX軸およびY軸を取っている。インプリント装置1は、まず、光照射部2と、モールド保持機構3と、基板ステージ4と、塗布部5と、制御部6とを備える。
【0012】
光照射部2は、インプリント処理の際に、モールド7に対して紫外線を照射する。この光照射部2は、不図示であるが、光源と、該光源から出射された紫外線をインプリントに適切な光に調整するための照明光学系とを含む。光源は、例えばハロゲンランプである。また、照明光学系は、レンズ、アパーチャ、あるいは照射か遮光かを切り替えるためのシャッターなどを含む。
【0013】
モールド7は、外周が略矩形の平板部材であり、ウエハ8に対向する面の略中央部には回路パターンなどの凹凸パターンが3次元状に形成されたパターン部7aを含む。このパターン部7aの外形は、インプリント処理時にパターン部7aのみがウエハ8上に塗布された未硬化樹脂に接触するように、ウエハ8に向かって凸型となる形状である。また、モールド7の材質は、石英など、紫外線を透過させることが可能な材料である。
【0014】
モールド保持機構3は、真空吸着力や静電力によりモールド7を引きつけて保持するモールドチャック10と、不図示のモールド駆動機構とを含む。モールドチャック10(モールド保持機構3)は、光照射部2の光源から出射された紫外線がウエハ8に向けて照射されるように、内側の中心部に開口領域11を有する。また、モールドチャック10は、不図示であるが、開口領域11の外周に位置するモールド7の外縁(外周部表面)を引きつける吸着部を含む。この吸着部は、例えば、外部に設置された不図示の真空排気装置に接続されており、この真空排気装置により吸着圧が調整され、吸着のON/OFFが切り替えられる。モールド駆動機構は、具体的には、モールド7とウエハ8上の樹脂との押し付けまたは引き離しを選択的に行うように、モールド7をZ軸方向に移動させる機構である。このモールド駆動機構に採用するアクチュエータとしては、例えば、リニアモータやエアシリンダなどが採用可能である。なお、インプリント装置1における押し付けおよび引き離し動作は、上述のようにモールド7をZ軸方向に移動させることで実現してもよいが、基板ステージ4をZ軸方向に移動させることで実現してもよく、または、その双方を相対的に移動させてもよい。また、モールド保持機構3は、パターン部7aとウエハ8上の未硬化樹脂とが密着するように姿勢を変化させたり、位置合わせをしたりする倍率補正機構を備えてもよい。さらに、モールド保持機構3は、モールド7とウエハ8上の樹脂との引き離しの際にモールド7をウエハ8に向かって凸状に撓ませることで、引き離しをスムーズに実現させるための変形機構などを備えてもよい。
【0015】
ウエハ8は、例えば単結晶シリコンからなる被処理体であり、この被処理面には、モールド7に形成されたパターンにより成形される紫外線硬化樹脂(以下「樹脂」という)が塗布される。また、基板ステージ(基板保持部)4は、ウエハ8を例えば真空吸着により保持し、かつ、少なくともXY平面内で移動可能とする。この移動には、XY軸方向での精密な位置決めのためのほか、ウエハ8の表面の姿勢制御も含まれる。基板ステージ4を駆動するためのアクチュエータとしては、例えばリニアモータが採用可能である。また、基板ステージ4の位置は、この基板ステージ4の側壁部に設置されたミラー12と、後述のフレーム17に支持された干渉計(レーザー測長器)13とで構成される測長システムにより計測される。
【0016】
塗布部5は、ウエハ8上に樹脂(未硬化樹脂)を塗布する。この塗布部5は、未硬化樹脂を貯留するタンク14と、このタンク14から供給された未硬化樹脂を吐出するノズル15と備える。特に、本実施形態で採用する樹脂は、紫外線を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂(インプリント材)であり、半導体デバイス製造工程などの各種条件により適宜選択される。
【0017】
制御部6は、インプリント装置1の各構成要素の動作および調整などを制御し得る。制御部6は、例えばコンピュータなどで構成され、インプリント装置1の各構成要素に回線を介して接続され、プログラムなどに従って各構成要素の制御を実行する。本実施形態の制御部6は、少なくともモールド保持機構3および基板ステージ4の動作を制御する。なお、制御部6は、インプリント装置1の他の部分と一体で構成してもよいし、インプリント装置1の他の部分とは別の場所に設置してもよい。
【0018】
また、インプリント装置1は、装置全体を支持し、また基板ステージ4の基準平面を形成する定盤16と、モールド保持機構3や塗布部5などを保持するフレーム17とを有する。フレーム17は、床面からの振動を除去する除振器18を介して定盤16に支持される。さらにインプリント装置1は、フレーム17に支持されたアライメントスコープ19を備える。アライメントスコープ19は、ウエハ8の位置決めに際し、ウエハ8上に形成された複数のアライメントマークの位置を順に計測する。
【0019】
次に、インプリント装置1によるインプリント処理について説明する。まず、制御部6は、不図示の基板搬送装置により基板ステージ4にウエハ8を載置および固定させ、基板ステージ4を塗布部5の塗布位置へ移動させる。その後、塗布部5は、塗布工程としてウエハ8の所定のショット(被処理領域)に樹脂(未硬化樹脂)を塗布する。次に、制御部6は、処理対象のショットがモールド7の直下に位置するように、基板ステージ4を移動させる。次に、制御部6は、このショットとモールド7との位置合わせ、および不図示の倍率補正機構によるモールド7の倍率補正などを実施した後、モールド駆動機構を駆動させ、ウエハ8上の樹脂にモールド7を押し付ける(押型工程)。ここで、制御部6は、押し付けの完了を、モールド保持機構3内に設置された不図示の荷重センサからの出力信号に基づいて判断する。この押し付けにより、樹脂は、モールド7に形成されたパターン部7aに充填される。この状態で、光照射部2は、硬化工程としてモールド7の背面(上面)から紫外線を照射し、モールド7を透過した紫外線により樹脂を硬化させる。そして、樹脂が硬化した後、制御部6は、モールド駆動機構を再駆動させ、モールド7をウエハ8から引き離す(離型工程)。これにより、ウエハ8上のショットの表面には、パターン部7aに倣った3次元形状の樹脂の層が形成される。インプリント装置1は、このようなインプリント処理を、全てのショットに対してステップ・アンド・リピート方式にて逐次実施する。また、インプリント装置1は、このインプリント処理を実施したウエハ8を装置外へ搬出し、次の処理対象となるウエハ8がある場合には、装置内に搬入する。
【0020】
(第1実施形態)
次に、上記インプリント装置1にて採用可能な本発明の第1実施形態に係るクリーニング方法について説明する。通常、ショットに塗布された未硬化樹脂は、塗布された瞬間から蒸発が始まる。一方、接触前のモールド7は、この未硬化樹脂に近接した位置に配置されている。したがって、この蒸発した樹脂成分は、その大半がモールド7のパターン部設置面に付着する可能性が高い。特に、パターン部7aの周辺部、例えば、パターン部設置面におけるパターン部7a以外の面は、インプリント処理時に直接未硬化樹脂と接触しないため、インプリント処理を繰り返すに伴い、この周辺部に蒸発した樹脂成分が徐々に堆積する可能性が高い。また、パターン部7aは、上記のとおりウエハ8に向かって凸型となる形状を有するため、インプリント処理時に未硬化樹脂がパターン部7aの側面にはみ出し、パターン部7aの側壁部に付着して堆積することもあり得る。結果的に、この堆積した樹脂成分は、パーティクルの発生源となる恐れがある。そこで、本実施形態では、パターン部7aの周辺部に付着した付着物(堆積物)を以下に示すようなクリーニング方法により除去する。
【0021】
図2は、本実施形態に係るクリーニング方法を時系列で説明する図であり、図2(a)〜図2(c)は、それぞれ、モールド7と本実施形態にて採用するクリーニング基板20との断面を示している。クリーニング基板20は、クリーニング処理時、すなわち、特にパターン部7aの側壁部7b、およびパターン部7aの周辺部7cに付着した付着物を除去する処理にて使用する基板である。パターンが成形されるウエハ8上にてクリーニング処理を実施すると付着物により樹脂のパターンに欠陥が生じる可能性があるため、本実施形態のクリーニング基板20は、被処理基板であるウエハ8とは異なるものとしている。クリーニング基板20の形状は、ウエハ8の形状と同等とするのが好適であるが、その材質は、単結晶シリコンに限定するものではなく、その他の材質でも構わない。ここで、クリーニング処理前または処理後のクリーニング基板20は、例えば、インプリント装置1内に専用の収容部(保持部)を設置して収容しておいてもよいし、通常時は装置外で保管し、クリーニング処理時にインプリント装置1内に搬入して使用してもよい。または、複数のウエハ8を収容可能なFOUPなどを採用する場合には、通常時は、例えばその収容段の1つにクリーニング基板20を収容させておいてもよい。
【0022】
まず、制御部6は、インプリント処理済みのモールド7に対してクリーニング処理を開始すると、通常のウエハ8に対するインプリント処理時と同様に、クリーニング基板20を基板ステージ4に載置し、塗布部5のノズル15の直下に移動させる。次に、制御部6は、塗布部5によりクリーニング基板20の表面上に未硬化樹脂を塗布させる。
【0023】
図3は、樹脂(未硬化樹脂)21が塗布されたクリーニング基板20の左上部を示す平面図である。クリーニング基板20上に塗布された樹脂21の平面形状は、モールド7の周辺部7cの平面形状(平面位置)に対応する矩形である。また、図3において点線の矩形で示すように、クリーニング基板20は、その表面上に樹脂21を塗布可能とする領域を複数有する。すなわち、1つの樹脂21の塗布領域は、1回のクリーニング処理に適用する場所であり、塗布領域をその都度変更することにより、1つのクリーニング基板20にて複数回のクリーニング処理が可能である。一方、図2(a)に示すように、クリーニング基板20上に塗布される樹脂21の高さ(液膜高さ)Hは、モールド7のパターン部7aの高さ(Z軸方向の段差)Hよりも高い状態とする。
【0024】
次に、制御部6は、図2(b)に示すように、モールド7をクリーニング基板20上に塗布された樹脂21に押し付ける。このとき、制御部6は、パターン部7aがクリーニング基板20に接触しないように、モールド保持機構3または基板ステージ4を制御する。次に、制御部6は、この周辺部7c(側壁部7bも含む)に樹脂21が充填された状態で紫外線の照射により樹脂21を硬化させる。次に、制御部6は、樹脂21の硬化後、図2(c)に示すように、クリーニング基板20上の樹脂21からモールド7を引き離す。これにより、周辺部7c(または側壁部7b)に付着していた付着物22は、クリーニング基板20上の樹脂21に取り込まれるので、モールド7から付着物22を除去することができる。なお、このクリーニング処理は、1つのショットに対する1回のインプリント処理が終了したモールド7に対して、その都度実施することが望ましいが、複数のショットに対する複数回(例えば2、3回)のインプリント処理後に実施してもよい。
【0025】
ここで、通常モールド7のパターン部7aの表面には、インプリント処理時の引き離しを容易とするために、予め離型剤が塗布される。本実施形態では、さらにパターン部7aの側壁部7bおよび周辺部7cに対しても予め離型剤を塗布することが望ましい。この離型剤の塗布により、樹脂21に対する周辺部7c(側壁部7b)の静的接触角は、クリーニング基板20の表面の静的接触角よりも高くなる。さらには、離型剤の塗布により、樹脂21と周辺部7c(側壁部7b)との密着力は、樹脂21とクリーニング基板20の表面との密着力よりも小さくなる。したがって、クリーニング処理時の引き離しの際に、パターン部7aの側壁部7bおよび周辺部7cとクリーニング基板20上の樹脂21とが離れやすくなるため、モールド7から付着物22をより除去しやすくなる。
【0026】
以上のように、本実施形態のクリーニング方法によれば、インプリント処理済みのモールド7を装置外に搬出することなく、モールド7におけるパターン部7aの周辺部7c(側壁部7b)に付着した付着物22を除去することができる。これは、モールド7に対するクリーニング処理時間の短縮となるため、スループットの向上にも有利である。
【0027】
なお、本実施形態では、クリーニング基板20に周辺部7cの平面形状に合わせて樹脂21を塗布するものとしているが、例えば、周辺部7cのみならず、パターン部7aに対応する領域にも樹脂を塗布してもよい。これによれば、モールド7のパターン形成面の全面に樹脂が押し付けられることになり、周辺部7c(側壁部7b)だけでなく、パターン部7aのクリーニングも同時に実施できる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るクリーニング方法について説明する。本実施形態のクリーニング方法は、第1実施形態に係るクリーニング基板20において、クリーニング基板20の表面と、その表面に塗布される樹脂21との密着性を向上させるものである。図4は、図2に対応した、本実施形態に係るクリーニング基板を説明するための断面図である。まず、図4(a)は、第1例として、本実施形態に係るクリーニング基板23の構成を示す図である。クリーニング基板23は、その表面上に、樹脂21との密着性を高める密着層31が塗布されている。この密着層31は、予め密着剤を塗布して形成させておくことが望ましい。なお、この密着剤の材質は、上記のように樹脂21との密着性を向上させることができるものであれば、特に限定するものではない。このように、密着層31を形成させておくことで、さらには、密着層31と上記実施形態にて説明した離型剤とを併用することで、クリーニング処理中のエラーの発生を、より抑制することができる。
【0029】
一方、図4(b)は、第2例として、本実施形態に係るクリーニング基板24の構成を示す図である。このクリーニング基板24は、その表面上に凹凸部25を有し、クリーニング基板24と樹脂21との接触面積を大きくさせることで、樹脂21との密着性を高める。さらに、この凹凸部25上に、樹脂21に対して親液性の高い材料を塗布しておくことも望ましい。これにより、第1例と同様に樹脂21との密着性を高めつつ、図2(a)に示す樹脂21の高さHを好適に設定する(高くする)ことができる。なお、凹凸部25は、クリーニング基板24の表面上に掘られたものでなくとも、例えば、ミクロンオーダーの表面粗さを有する凹凸面であっても同様の効果を奏する。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るクリーニング方法について説明する。本実施形態のクリーニング方法は、第1実施形態に係るクリーニング基板20において、樹脂21の高さHを好適に設定するためのものである。図5は、図2に対応した、本実施形態に係るクリーニング基板を説明するための断面図である。まず、図5(a)は、比較例として、樹脂21に対する表面の静的接触角が小さいクリーニング基板26を示す図である。図5(a)に示すように、クリーニング基板26の表面の静的接触角が小さい場合には、樹脂21の塗布量を増加させても、樹脂21の高さHをモールド7のパターン部7aの高さHよりも高くすることが難しい。そこで、本実施形態では、樹脂21の高さHを所望の高さとすることができるように、クリーニング基板を以下のような構成とする。
【0031】
図5(b)は、本実施形態に係るクリーニング基板27の構成を示す図である。このクリーニング基板27は、その表面上に樹脂21に対する静的接触角がクリーニング基板27の表面よりも高い第1領域28を有する。この第1領域28は、例えば、図5(b)に示すように、クリーニング基板27の表面上に樹脂21を塗布したときに、その液膜の底面端部が位置する部分に形成し得る。図5(c)は、第1領域28の位置を破線(太線)で記したクリーニング基板27の左上部を示す平面図である。第1領域28の形成に際しては、まず、クリーニング基板27の表面全体に、第2実施形態の第1例(図4(a))に示すような密着層29を形成する。次に、密着層29の表面のうち、上記のように樹脂21の液膜の底面端部が位置する部分を一定の幅でエッチングする。そして、エッチングにて削られた部分に、樹脂21に対する静的接触角がクリーニング基板27の表面よりも高く、かつ、密着層29の表面よりも高い材料を充填する。すなわち、この材料を樹脂21の性質に合わせて適宜選択することで、樹脂21の高さHを所望の高さに設定することができる。一方、この場合、クリーニング基板27における、樹脂21の液膜の底面中央部に位置し、第1領域28が形成されていない領域(第2領域30)は、密着層29の表面状態をそのまま維持しているため、樹脂21との密着性が保たれる。
【0032】
なお、上記実施形態では、インプリント装置1は、クリーニング処理に際して被処理基板であるウエハ8とは異なる各クリーニング基板を採用した。ここで、ウエハ8の表面上に、上記実施形態のような樹脂21を塗布したと仮定する。このとき、インプリント装置1が、樹脂21の高さHと比べてパターン部7aの高さHが低いモールド7を適用している場合には、上記のようなクリーニング基板を別途使用せず、ウエハ8上にクリーニング処理専用の領域を設置することもあり得る。これによれば、クリーニング処理に際し、クリーニング基板の搬送時間も短縮できるため、さらにスループットを向上させることができる。
【0033】
(物品の製造方法)
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含み得る。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりにパターンを形成された基板を加工する他の処理を含み得る。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
7 モールド
7a パターン部
7c 外周部
20 クリーニング基板
21 紫外線硬化樹脂
22 付着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸パターンが形成されたパターン部を有する型に付着した付着物を除去するクリーニング方法であって、
前記型と、基板上に塗布された光硬化性樹脂とを押し付けるに際し、前記パターン部の形成面における前記パターン部の外周部に対応する前記基板上の位置に、前記光硬化性樹脂を塗布する工程と、
前記型と前記光硬化性樹脂とを押し付ける工程と、
前記光硬化性樹脂を硬化させる工程と、
前記型と前記光硬化性樹脂とを引き離す工程と、
を含むことを特徴とするクリーニング方法。
【請求項2】
前記パターン部は、前記基板に向かう凸型の形状を有し、
前記外周部は、前記パターン部の側壁部を含むことを特徴とする請求項1に記載のクリーニング方法。
【請求項3】
前記基板は、その表面上に、前記光硬化性樹脂に対する静的接触角が異なる少なくとも2つ以上の領域を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のクリーニング方法。
【請求項4】
前記領域は、前記基板上に塗布された前記光硬化性樹脂の液膜の底面端部が位置する第1領域と、前記液膜の底面中央部が位置する第2領域とを含み、
前記第1領域での前記静的接触角は、前記第2領域での前記静的接触角よりも大きい、ことを特徴とする請求項3に記載のクリーニング方法。
【請求項5】
前記第2領域は、前記外周部と前記光硬化性樹脂との密着力よりも、前記光硬化性樹脂との密着力の方が大きくなる密着層で形成されることを特徴とする請求項4に記載のクリーニング方法。
【請求項6】
前記基板は、その表面上に、前記外周部と前記光硬化性樹脂との密着力よりも、前記光硬化性樹脂との密着力の方が大きくなる密着層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のクリーニング方法。
【請求項7】
前記基板は、その表面上に、前記光硬化性樹脂との接触面積を大きくするための凹凸部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のクリーニング方法。
【請求項8】
前記基板は、被処理基板とは異なるクリーニング基板であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のクリーニング方法。
【請求項9】
前記クリーニング基板は、その表面上に、前記光硬化性樹脂が塗布される領域を複数有することを特徴とする請求項8に記載のクリーニング方法。
【請求項10】
基板上の未硬化樹脂を型により成形して硬化させ、前記基板上に硬化した樹脂のパターンを形成するインプリント装置であって、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のクリーニング方法を採用し、前記型に付着した付着物を除去することを特徴とするインプリント装置。
【請求項11】
請求項10に記載のインプリント装置を用いて基板上に樹脂のパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8911(P2013−8911A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141743(P2011−141743)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】