説明

クリーニング装置、成膜装置、成膜方法

【課題】成膜マスクから付着物を高効率で除去するクリーニング装置と、成膜作業を中断させずに成膜マスクのクリーニングを行う成膜装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】
クリーニング装置10は、シャワーノズル21と離間して対面する位置に処理対象物50を配置したときに、処理対象物50と接触部材23とが接触し、処理対象物50とシャワーノズル21との間の放電空間が、洗浄容器20の筒状の側壁22で取り囲まれると共に、処理対象物50と洗浄容器20との間に隙間29が形成されるように構成されている。真空排気装置12によって真空槽11内を真空排気しながら、シャワーノズル21内に反応ガスを供給し、放電空間にプラズマを発生させ、処理対象物50表面の付着物と反応ガスとの反応生成物ガスを、真空排気装置12によって、隙間29から真空排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置、成膜装置、成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELは、発光効率が高く、薄い発光装置を組み立てることができることから、近年では、大面積化する表示装置や照明機器の用途に注目されている。大面積基板に有機薄膜を均一に成膜する方法として、真空蒸着法がよく用いられている。
【0003】
図6は真空蒸着法で使われる従来の成膜装置100の一例の内部構成図を示している。成膜装置100は成膜室103a〜103cと搬送室102と封止室104と搬入出室105を有している。成膜室103a〜103cと封止室104と搬入出室105の各真空槽はそれぞれ搬送室102の真空槽に気密に接続され、各真空槽内はそれぞれ真空排気されている。
【0004】
各成膜室103a〜103cにはそれぞれ不図示の蒸発源が配置され、薄膜材料の蒸気を各真空槽内に配置された放出口から放出するように構成されている。
搬送室102の真空槽内には搬送ロボット109が配置されている。
成膜作業の前に、搬送ロボット109は搬入出室105の真空槽内に搬入された成膜マスクを、各成膜室103a〜103cの真空槽内の放出口と対面する位置に配置しておく。
【0005】
次いで搬入出室105の真空槽内に搬入された基板を、成膜室103a、103b又は103cの真空槽内に移動させ、成膜マスクと対面する位置で静止させる。放出口から薄膜材料の蒸気を放出させ、蒸気を成膜マスクの有する開口を通過させ、基板表面に到達させて、基板表面に成膜マスクの開口パターンと同じパターンの薄膜を成膜する。このとき成膜マスク表面にも薄膜材料が付着する。
【0006】
次いで、当該成膜マスクを当該真空槽内に残したまま基板を取り出し、他の成膜室103a、103b又は103cの真空槽内に移動させ、同様にして成膜作業をする。各成膜室103a〜103cで成膜した後、基板を封止室104の真空槽内で封止して完成させ、搬入出室105から搬出する。
【0007】
このようにして基板の成膜を繰り返すと、各成膜室103a〜103cの成膜マスクの表面には薄膜材料からなる付着物が堆積し、所望のパターン精度が得られなくなる。そこで、成膜マスクの表面から付着物を定期的に除去する洗浄作業(クリーニング)が必要になる。
このようなクリーニングを行うために、従来、成膜室103a〜103cの真空槽内で反応ガスのプラズマを発生させるクリーニング装置を設け、成膜マスク表面に反応ガスのプラズマを接触させ、付着物を除去するという構成が知られていた。
【0008】
しかしながら上記構成では、クリーニングの際に発生したプラズマ中のラジカルや荷電粒子(イオン)などが蒸発源内の未蒸発材料と反応し、劣化させるという問題があった。またクリーニング中に成膜マスクから剥離された付着物が次の成膜作業時まで真空排気されずに真空槽内に残留し、成膜作業中に基板の成膜面に付着して、薄膜の品質を劣化させるという虞があった。またクリーニング時に成膜マスクの表面でプラズマを発生させるためには、電極を成膜マスクと放出口との間に移動させる大がかりな装置が必要であり、大型基板に対応することが困難であった。さらに、クリーニング中は当該成膜室での成膜作業を停止しなければいけないという不都合があった。
【0009】
一方、特許文献1及び特許文献2で開示された技術では、クリーニング装置を有する洗浄室を成膜室103a〜103cとは別に搬送室102に接続し、成膜室103a〜103cから取り出した成膜マスクを洗浄室の真空槽内に搬入してクリーニングを行うことで、上記問題を回避している。
【0010】
しかしながら、特許文献1と特許文献2のどちらの装置も、洗浄室の真空槽内に導入された洗浄ガスあるいはプラズマやラジカルが洗浄室の真空槽全体に拡散し、利用されないプラズマの割合が多いという問題があった。
さらに、特許文献1記載の装置では、クリーニング効果があるイオン衝撃を利用し難い構造であり、クリーニング効率が悪いという不都合があった。また、特許文献2記載の装置では、成膜マスクの表面の近傍で高密度のプラズマを発生させることが難しく、高速にクリーニングすることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−185362号公報
【特許文献2】特開2007−173175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、成膜マスクから付着物を高効率で除去するクリーニング装置と、成膜作業を中断させずに成膜マスクのクリーニングを行う成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明はクリーニング装置であって、真空槽と、前記真空槽内に配置され、底面にシャワーノズルが設けられた洗浄容器と、前記洗浄容器に設けられた接触部材とを有し、前記シャワーノズルの前記洗浄容器の開口に向けられた面には複数の放出孔が設けられ、前記シャワーノズルと離間して対面する位置に処理対象物を配置したときに、前記接触部材の先端が前記処理対象物の内側に位置し、前記処理対象物と前記接触部材とが接触し、前記処理対象物と前記シャワーノズルとの間の放電空間が、前記洗浄容器の筒状の側壁で取り囲まれると共に、前記処理対象物と前記洗浄容器との間に隙間が形成されるように構成され、前記真空槽の壁面に設けられた排気口に真空排気装置を接続し、前記シャワーノズルに設けられた導入口にガス供給装置を接続し、前記真空排気装置によって前記真空槽内を真空排気しながら、前記ガス供給装置によって前記シャワーノズル内に反応ガスを供給し、前記シャワーノズルと前記処理対象物と前記側壁のうちの少なくとも一つと他の一つの間に電圧を印加し、前記放電空間にプラズマを発生させ、前記処理対象物表面の付着物と前記反応ガスとの反応生成物ガスを、前記真空排気装置によって、前記隙間から真空排気するように構成されたクリーニング装置である。
本発明はクリーニング装置であって、前記ガス供給装置は前記シャワーノズル内に前記反応ガスと共に放電補助ガスを供給するように構成されたクリーニング装置である。
本発明はクリーニング装置であって、前記シャワーノズルと離間して対面する位置に前記処理対象物を配置したときに、前記処理対象物の裏面と対面する位置に配置された冷却プレートと、前記冷却プレートを前記冷却プレートの表面に対して垂直な方向に移動させる移動装置と、を有し、前記移動装置によって前記冷却プレートを前記処理対象物の裏面に接触させ、前記冷却プレートとの熱伝導によって前記処理対象物を冷却するように構成されたクリーニング装置である。
本発明はクリーニング装置であって、前記冷却プレートに設けられた磁石装置を有し、前記移動装置によって前記冷却プレートを前記処理対象物の裏面に接触させたときに、前記磁石装置から印加される磁力によって前記処理対象物は前記冷却プレートに平面で密着されるように構成されたクリーニング装置である。
本発明は成膜装置であって、分離して別々に搬入された基板と成膜マスクとを、前記基板の成膜面と前記成膜マスクの裏面とが向かい合う状態で互いに固定して成膜対象物を形成する固定室と、前記固定室から搬入された前記成膜対象物に向けて薄膜材料蒸気を放出して、前記成膜対象物の前記基板の前記成膜面に前記成膜マスクの開口を通して薄膜材料を付着させる第一の成膜室と、前記第一の成膜室から搬入された前記成膜対象物を前記基板と前記成膜マスクとに分離する分離室と、を有する成膜装置上流部と、分離された前記成膜マスクの表面から薄膜材料を除去する洗浄室と、分離された前記成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入し、薄膜材料を除去された前記成膜マスクを前記洗浄室から搬出して前記搬送路に搬入する搬送ロボットを有する搬送室と、を有する成膜装置下流部と、分離された前記成膜マスクを、前記成膜装置上流部に戻して、前記固定室で固定された前記基板とは別の基板に固定されるようにする搬送路と、を有し、前記搬送ロボットは、分離された前記成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入せずに前記搬送路に搬入できるように構成された成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記成膜装置下流部は、分離された前記基板の前記成膜面に薄膜を成膜する第二の成膜室を有し、前記搬送ロボットは、分離された前記基板を前記分離室から搬出して前記第二の成膜室に搬入できるように構成された成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記成膜装置下流部は、予備の成膜マスクが保管された保管室を有し、前記搬送ロボットは、前記予備の成膜マスクを前記保管室から搬出して前記搬送路に搬入できるように構成され、かつ薄膜材料を除去された前記成膜マスクを前記洗浄室から搬出して前記保管室に搬入できるように構成された成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記洗浄室は前記クリーニング装置を有する成膜装置である。
本発明は、前記成膜装置を用いて基板の成膜面に薄膜を成膜する成膜方法であって、前記固定室で、分離して別々に搬入された前記基板と前記成膜マスクとを、前記基板の成膜面と前記成膜マスクの裏面とが向かい合う状態で互いに固定して前記成膜対象物を形成し、前記第一の成膜室で、前記成膜対象物に向けて薄膜材料蒸気を放出して、前記成膜対象物の前記基板の前記成膜面に前記成膜マスクの開口を通して薄膜材料を付着させ、前記分離室で、前記成膜対象物を前記基板と前記成膜マスクとに分離する第一の成膜工程と、前記第一の成膜工程の後、分離された前記成膜マスクを前記分離室から搬出して前記搬送路に搬入し、前記成膜装置上流部に戻す第一の搬送工程と、前記第一の成膜工程と前記第一の搬送工程とを繰り返して複数枚の前記基板を成膜した後、分離された前記成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入し、前記成膜マスクの表面から薄膜材料を除去する洗浄工程と、分離された前記成膜マスクを前記洗浄室に搬入する際に、前記予備の成膜マスクを前記保管室から搬出して前記搬送路に搬入し、前記成膜装置上流部に戻す第二の搬送工程と、前記洗浄工程の後、薄膜材料を除去された前記成膜マスクを前記洗浄室から搬出して前記保管室に搬入し、保管する保管工程と、を有する成膜方法である。
本発明は、前記固定室で第一、第二、第三の成膜マスクを第一、第二、第三の基板にそれぞれ固定して第一、第二、第三の成膜対象物を形成し、前記第一、第二、第三の成膜対象物を第一、第二、第三の順に連続して前記第一の成膜室に搬送して前記第一、第二、第三の基板を成膜し、前記分離室で前記第一、第二、第三の成膜対象物を第一、第二、第三の順に分離する成膜方法であって、前記第一、第三の成膜マスクを前記洗浄室に搬入せずに、前記第二の成膜マスクを前記洗浄室に搬入する場合には、前記第一の成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入せずに前記搬送路に搬入するより後で、かつ前記第三の成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入せずに前記搬送路に搬入するより前に、前記第二の成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入すると共に前記保管室から前記予備の成膜マスクを搬出して前記搬送路に搬入する成膜方法である。
【発明の効果】
【0014】
既存の成膜装置の搬送室に接続させることで、搬送室に接続された複数の成膜室の成膜マスクをクリーニングすることが可能になり、大量の予備のマスクを用意すること、使用済みの成膜マスクを装置内に溜めること、溜まった使用済みマスクをクリーニング工場に出すこと等の必要もなくなり、コスト面が良い。
【0015】
成膜室の真空槽内の未成膜材料を劣化させるという問題や、マスクから除去した付着物が基板の成膜面に付着するという問題は生じない。
真空槽全体あるいは真空槽から離れた場所でプラズマを発生させる方法より、高効率、高速度、省ガス、省エネで成膜マスクをクリーニングすることができる。
成膜作業を中断させずにクリーニングを行うことができる。また成膜作業を停止している時間にクリーニングを行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明であるクリーニング装置の内部構成図
【図2】本発明であるクリーニング装置のA−A線切断断面図
【図3】一つの接触部材の周囲の立体的な模式図
【図4】本発明のクリーニング装置を有する成膜装置の第一例の内部構成図
【図5】本発明のクリーニング装置を有する成膜装置の第二例の内部構成図
【図6】従来の成膜装置の内部構成図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明であるクリーニング装置の構造を説明する。
図1はクリーニング装置10の内部構成図を示している。このクリーニング装置10は後述する成膜装置で使用した導電性の成膜マスク50の表面から付着物を除去するために使用するものである。
【0018】
クリーニング装置10は真空槽11と洗浄容器20を有している。洗浄容器20は真空槽11内に配置されている。
洗浄容器20の底面にはシャワーノズル21が設けられ、シャワーノズル21の洗浄容器20の開口に向けられた面には複数の放出孔21aが設けられている。
シャワーノズル21の洗浄容器20の開口に向けられた面を放出面と呼ぶと、放出面は導電性を有し、複数の放出口21aは放出面の中心から外周まで均等に配置されている。
洗浄容器20には接触部材23が設けられている。
【0019】
図2はクリーニング装置10のA−A線切断断面図を示している。
ここでは洗浄容器20の環状の開口は四角形であり、処理対象物である成膜マスク50の大きさは洗浄容器20の開口の内周より大きく、かつ洗浄容器20の開口の外周より小さい形状にされている。
【0020】
接触部材23は洗浄容器20の開口の四辺のうち互いに異なる辺にそれぞれ配置され、各接触部材23は互いに離間されている。
図3は一つの接触部材23の周囲の立体的な模式図である。ここでは洗浄容器20の開口は内周に沿って窪んだ形状であり、接触部材23は洗浄容器20の開口の窪みに嵌るように配置されている。
【0021】
後述するように不図示の搬送ロボットによってシャワーノズル21と離間して対面する位置に処理対象物である成膜マスク50を、付着物が付着している成膜マスク50の表面がシャワーノズル21と対面する向きで配置したときに、接触部材23の先端が成膜マスク50の表面の内側に位置し、成膜マスク50と接触部材23とが接触し、成膜マスク50とシャワーノズル21との間の空間を放電空間と呼ぶと、放電空間は洗浄容器20の筒状の側壁22で取り囲まれると共に、成膜マスク50と洗浄容器20との間には、成膜マスク50の外周に沿って均等に隙間29が形成されるように構成されている。
【0022】
図1を参照し、成膜マスク50の裏面と対面可能な位置には冷却プレート41が配置されている。冷却プレート41の内部には不図示の冷却媒体流路が設けられ、冷却媒体流路には温度管理された冷却媒体が循環されるように構成されている。
【0023】
冷却プレート41のうち成膜マスク50の裏面と対面可能な面を表面、その反対を裏面と呼ぶと、冷却プレート41の裏面には、裏面に対して垂直に吊り下げ軸44が固定されている。吊り下げ軸44の他端は真空槽11の内壁を気密に貫通して、真空槽11の外側に配置された移動装置43に接続されている。
【0024】
移動装置43は、真空槽11の外側に配置された制御装置45から制御信号を受けると、吊り下げ軸44と共に冷却プレート41を冷却プレート41の表面に対して垂直な方向に移動させるように構成されている。
移動装置43と吊り下げ軸44の間には絶縁性の絶縁板49が配置され、絶縁板49により移動装置43と冷却プレート41は電気的に絶縁されている。
【0025】
冷却プレート41には磁石装置42が設けられている。ここでは磁石装置42は冷却プレート41の裏面に固定されているが、本発明はこれに限定されず、磁石装置42は冷却プレート41の内部に埋め込まれていてもよい。
冷却プレート41を成膜マスク50の裏面に接触させたとき、磁石装置42は成膜マスク50に磁力を印加して成膜マスク50の裏面を冷却プレート41の表面に平面で密着させるように構成されている。
【0026】
洗浄容器20のシャワーノズル21には導入口21bが設けられ、導入口21bには接続管32が接続されている。接続管32の他端は真空槽11の内壁を気密に貫通して、真空槽11の外側まで延ばされ、真空槽11の外側に配置されたガス供給装置30に接続されている。
【0027】
接続管32の途中には絶縁性の絶縁パイプ39が配置され、絶縁パイプ39により真空槽11とシャワーノズル21は電気的に絶縁されている。
ガス供給装置30は反応ガスを放出する反応ガス源33と、放電補助ガスを放出する放電補助ガス源35を有している。
【0028】
ここでは放電補助ガスは不活性ガスであり、反応ガスは地球温暖化係数の低いフッ素系、酸素系、ハロゲン系のガスである。反応ガスには例えば、Ar、He、Ne、N2、H2、O2、O3、F、Cl2、Br2、NF3、ClF3、CF4、CHF3、C26、C38、CH22、CO2、CO、N2O、BCl3のうち少なくとも一種類のガスが使用される。
【0029】
反応ガス源33と放電補助ガス源35は、それぞれガスの流量を制御する反応ガス流量制御部34と放電補助ガス流量制御部36を介して接続管32に接続されている。
シャワーノズル21と側壁22の間には絶縁性の絶縁物24が配置され、側壁22と成膜マスク50の間に配置された接触部材23は絶縁性の材料で形成されている。従って、シャワーノズル21と側壁22と接触部材23は互いに電気的に絶縁されている。
【0030】
真空槽11の外側には電源装置19が配置されている。電源装置19はここでは冷却プレート41とシャワーノズル21に電気的に接続され、冷却プレート41に密着された成膜マスク50と、シャワーノズル21の導電性の放出面との間に交流電圧を印加して、洗浄容器20内の放電空間で放電を生じさせるように構成されている。
【0031】
次に、クリーニング装置10を用いて成膜マスク50の表面から付着物を除去するクリーニング方法を説明する。
真空槽11の壁面に設けられた排気口13に真空排気装置12を接続し、真空槽11内を真空排気する。真空槽11に真空計14を接続し、真空槽11内の圧力を測定する。以後、真空計14で真空槽11内の圧力を測定しながら、排気口13からの真空排気を継続して、真空槽11内の真空雰囲気を維持する。
【0032】
冷却プレート41をシャワーノズル21から離間させておく。
真空槽11内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬送ロボットにより真空槽11内に、表面に付着物が付着した成膜マスク50を搬入し、冷却プレート41とシャワーノズル21の間であって、シャワーノズル21と離間して対面する位置に、成膜マスク50の表面がシャワーノズル21と対面する向きで配置する。このとき接触部材23の先端が成膜マスク50の表面の内側に位置し、成膜マスク50と接触部材23とが接触し、成膜マスク50とシャワーノズル21との間の放電空間は洗浄容器20の筒状の側壁22で取り囲まれると共に、成膜マスク50と洗浄容器20との間に隙間29が形成される。
【0033】
冷却プレート41を成膜マスク50に近づけ、成膜マスク50の裏面に接触させる。磁石装置42からの磁力により成膜マスク50の裏面は冷却プレート41の表面に平面で密着され、冷却プレート41と成膜マスク50とは電気的及び熱的に接続される。
【0034】
冷却プレート41の不図示の冷却媒体流路に、温度管理された冷却媒体を循環させ、冷却プレート41に密着された成膜マスク50を冷却し続ける。
ここでは成膜マスク50の表面が位置する平面は水平面にされている。
【0035】
成膜マスク50は中央部51が外縁部52より薄い形状に形成され、中央部51は外縁部52より強度が弱く変形しやすいため、冷却プレート41に密着される前は重力によって成膜マスク50の中央部51が下方に膨らんでいる可能性があるが、磁石装置42によって冷却プレート41に密着されることで、中央部51の平面性が維持される。
【0036】
ガス供給装置30から接続管32を介してシャワーノズル21内に反応ガスと放電補助ガスの混合ガスを供給する。シャワーノズル21内に供給された混合ガスは、シャワーノズル21の放出面に均等に設けられた複数の放出孔21aから、放出面の中心から外周まで均等な流量で、洗浄容器20の放電空間に放出される。
【0037】
電源装置19から冷却プレート41を介して成膜マスク50と、シャワーノズル21の放出面との間に交流電圧を印加すると、成膜マスク50とシャワーノズル21との間の放電空間で放電が生じる。ここでは放電空間に導入された放電補助ガスにより、容易に放電が発生し、かつ放電が持続する。
放電空間に導入された反応ガスは放電により電離されてプラズマ化し、プラズマ中の反応ガスのイオンやラジカルは成膜マスク50の表面に付着していた付着物と反応して反応生成物ガスを形成する。
【0038】
真空槽11の内部空間よりも容積の小さい洗浄容器20の放電空間でプラズマが生成されるので、生成されたプラズマのうち成膜マスク50の表面と反応するプラズマの割合は、従来のように真空槽11の内部空間全体でプラズマを生成させた場合よりも多く、従来よりも高効率でプラズマが付着物と反応する。
【0039】
このとき洗浄容器20内の放電空間よりも真空槽11の内部空間の方が圧力が低くなっているので、形成された反応生成物ガスと、反応を終えた副生成物ガスは、隙間29から成膜マスク50の外周に沿って均等な流量で、真空槽11の内部空間に放出される。
真空槽11の内部空間に放出された反応生成物ガスと副生成物ガスは排気口13から真空槽11の外側に真空排気される。
【0040】
電源装置19からの電圧印加を所定の時間継続して、成膜マスク50の表面から付着物を除去した後、電圧印加を停止する。
成膜マスク50の全体の重量は磁石装置42による磁力の大きさよりも大きくされているため、冷却プレート41を上昇させると、成膜マスク50は冷却プレート41から離間して接触部材23上に残る。
【0041】
真空槽11内の真空雰囲気を維持したまま、不図示の搬送ロボットにより、成膜マスク50を接触部材23から持ち上げ、真空槽11の外側に搬出する。
このようにして成膜マスク50のクリーニングが行われる。
【0042】
本発明は、従来のような真空槽11全体あるいは真空槽11から離れた場所でプラズマを発生させる方法より、高効率、高速度、省ガス、省エネで成膜マスク50をクリーニングすることができる。
【0043】
なお、上記実施例では、冷却プレート41に電気的に接続された成膜マスク50とシャワーノズル21との間に交流電圧を印加して放電させていたが、洗浄容器20内の放電空間で放電させることができれば本発明はこの構成に限定されず、シャワーノズル21と処理対象物である成膜マスク50と側壁22のうちの少なくとも一つと他の一つの間に直流電圧又は交流電圧を印加する場合も本発明に含まれる。
【0044】
本発明の成膜装置の第一例の構造を説明する。
図4は成膜装置1の概略構成図を示している。
成膜装置1は成膜装置上流部1aと成膜装置下流部1bと搬送路8を有している。
成膜装置上流部1aは、第一の成膜室3cと搬入室(固定室)5cと受入室(分離室)5aを有している。
搬入室5cと第一の成膜室3cと受入室5aはそれぞれ不図示の真空槽を有し、各真空槽は搬入室5c、第一の成膜室3c、受入室5aの順に並べられ、隣り合う真空槽内は互いに気密に接続されている。
【0045】
各真空槽にはそれぞれ不図示の真空排気装置が接続され、真空排気装置はそれぞれの真空槽内を真空排気可能に構成されている。
成膜装置上流部1aは不図示の搬送機構を有し、搬送機構は各真空槽内の真空雰囲気を維持したまま成膜対象物を、搬入室5c、第一の成膜室3c、受入室5aの順に搬送可能に構成されている。
【0046】
第一の成膜室3cには、ホール注入層(HIL)蒸発源4aと、ホール輸送層(HTL)蒸発源4bと、赤色(R)発光層蒸発源4cと、緑色(G)発光層蒸発源4dと、青色(B)発光層蒸発源4eとが、搬入室5cから受入室5aに向かう方向に、この順に配置されている。各蒸発源4a〜4eは、それぞれ対応する層の薄膜材料蒸気を真空槽内に設けられた放出口から放出するように構成されている。
【0047】
成膜装置下流部1bは、第二の成膜室3a、3bと搬送室2と洗浄室10と受渡室5bと保管室6a、6bを有している。
洗浄室10はここでは上述のクリーニング装置を有するので、同じ符号10を付して以下説明する。なお、本発明の成膜装置1の洗浄室10は上述のクリーニング装置を有するものに限定されず、従来の公知のクリーニング装置を有するものも本発明に含まれる。
【0048】
ここでは成膜装置下流部1bは、二つの第二の成膜室3a、3bを有し、一方(符号3a)は電子輸送層(ETL)を成膜する成膜室(以後、電子輸送層成膜室と呼ぶ)であり、他方(符号3b)は電子注入層(EIL)及び電極膜を成膜する成膜室(以後、電子注入層・電極膜成膜室と呼ぶ)である。
【0049】
搬送室2と、電子輸送層成膜室3aと、電子注入層・電極膜成膜室3bと、洗浄室10と、受渡室5bと、保管室6a、6bはそれぞれ不図示の真空槽を有し、各室2、3a、3b、10、5b、6a、6bの真空槽はそれぞれ搬送室2の真空槽に気密に接続されている。各真空槽にはそれぞれ不図示の真空排気装置が接続され、真空排気装置はそれぞれの真空槽内を真空排気可能に構成されている。
【0050】
成膜装置上流部1aの受入室5aの真空槽と後述する搬送路8の真空槽も、それぞれ搬送室2の真空槽に気密に接続されている。
搬送室2の真空槽内には搬送ロボット9が配置されている。搬送ロボット9は、搬送室2に接続された各室3a、3b、5a、5b、6a、6b、10、8の真空槽のうち基板又は成膜マスクが配置された真空槽から基板又は成膜マスクを搬出し、搬出した基板又は成膜マスクを他の真空槽に搬入可能に構成されている。
【0051】
電子輸送層成膜室3aと電子注入層・電極膜成膜室3bにはそれぞれ不図示の蒸発源が配置されている。電子輸送層成膜室3aの蒸発源は、電子輸送層材料の蒸気(ここでは電子輸送性金属の蒸気と有機材料の蒸気)を真空槽内に設けられた放出口から放出するように構成され、電子注入層・電極膜成膜室3bの蒸発源は、電子注入層材料の蒸気と電極膜の蒸気とを真空槽内に設けられた放出口から放出するように構成されている。
【0052】
保管室6a、6bの真空槽内には予備の成膜マスクが配置されている。
搬送路8は細長の不図示の真空槽を有し、真空槽の一端は上述のように搬送室2の真空槽に気密に接続され、他端はここでは搬入室5cの真空槽に気密に接続されている。
搬送路8の真空槽には不図示の真空排気装置が接続され、真空排気装置は真空槽内を真空排気可能に構成されている。
搬送路8の真空槽内には不図示の搬送手段が配置されている。搬送手段は搬送室2の真空槽内から搬入された成膜マスクを、成膜装置上流部1aの搬入室5cの真空槽に搬送するように構成されている。
【0053】
なお、成膜装置上流部1aの搬入室5cより上流(搬送機構による移動の方向の始点側)にも真空槽が配置されている場合には、搬送路8は搬入室5cより上流の真空槽に気密に接続され、搬送室2の真空槽内から搬入された成膜マスクを搬入室5cより上流の真空槽に搬送するように構成されていてもよい。
【0054】
この成膜装置1を用いた成膜方法の第一例を説明する。
各真空槽内を真空排気する。以後、真空排気を継続して、各真空槽内の真空雰囲気を維持し続ける。
まず第一の成膜工程として、成膜面を有する基板を、不図示の搬入手段により搬入室5cの真空槽内に搬入する。一方、後述するように、開口と遮蔽部とを有する成膜マスクが搬送路8から搬入室5cに搬入される。
【0055】
搬入室5cの真空槽内で、分離して別々に搬入された基板と成膜マスクとを、基板の成膜面である表面と成膜マスクの裏面とが向かい合う状態で互いに固定して成膜対象物を形成する。次いで、成膜マスクの表面が第一の成膜室3cの各蒸発源4a〜4eの各放出口と対面可能な向きで、成膜対象物を第一の成膜室3cの真空槽内に搬入する。
【0056】
第一の成膜室3cの真空槽内では、成膜対象物の成膜マスクの表面が各放出口とそれぞれ対面を開始する前に、当該放出口から蒸気の放出を開始させる。成膜対象物の成膜マスクの表面が当該放出口と対面を開始すると、放出された蒸気は成膜マスク表面の開口を通過して、基板表面に到達する。成膜対象物を放出口と対面する位置を通過させる間に、基板表面に成膜マスクの開口パターンと同じパターンの薄膜が成膜される。このとき成膜マスク表面の遮蔽部にも薄膜が付着する。
【0057】
成膜対象物を各蒸発源4a〜4eの放出口と対面する位置を順に通過させながら、上述のように成膜を行うと、成膜対象物の基板表面に成膜マスクの開口パターンと同じパターンでホール注入層と、ホール輸送層と、赤、緑、青色の発光層の薄膜とがこの順に積層されると共に、成膜マスク表面の遮蔽部にも同様に薄膜が積層される。
【0058】
次いで、成膜対象物を受入室5aの真空槽内に搬入し、当該真空槽内で成膜対象物を基板と成膜マスクとに分離する。
第二の成膜工程として、分離された基板を受入室5aの真空槽から搬出して電子輸送層成膜室3aの真空槽内に搬入し、放出口と対面させながら、放出口から蒸気を放出させ、蒸気を基板表面に到達させ、基板表面に電子輸送層の薄膜を成膜する。
【0059】
電子輸送層の薄膜を成膜された基板を、電子輸送層成膜室3aの真空槽から搬出して電子注入層・電極膜成膜室3bの真空槽内に搬入し、放出口と対面させながら、放出口から蒸気を放出させ、蒸気を基板表面に到達させ、基板表面に電子注入層の薄膜を成膜し、次いで電極膜を成膜する。
【0060】
電極膜の薄膜を成膜された基板を、電子注入層・電極膜成膜室3bの真空槽から搬出して受渡室5bの真空槽内に搬入し、電極膜の成膜以後の後工程に流す。
第一の成膜工程と第二の成膜工程により、基板の成膜面に有機ELの各層が成膜される。
【0061】
また分離された基板を受入室5aの真空槽から搬出して電子輸送層成膜室3aの真空槽内に搬入する際に、第一の搬送工程として、分離された成膜マスクを、受入室5aの真空槽から搬出し搬送路8の真空槽内に搬入し、不図示の搬送手段により成膜装置上流部1aのここでは搬入室5cの真空槽内に戻す。次いで、搬入室5cの真空槽内で戻した成膜マスクを、前に固定室で固定した基板とは別の基板に固定して成膜対象物を形成し、上述の第一の成膜工程を繰り返す。
第一の成膜工程と第一の搬送工程を繰り返して複数の基板の成膜を行うと、成膜マスクの表面には薄膜材料からなる付着物が堆積する。
【0062】
成膜マスクのクリーニングについて、ここではNを3以上の自然数として、搬入室5cで第一、第二、…、第Nの成膜マスクを第一、第二、…、第Nの基板にそれぞれ固定して第一、第二、…、第Nの成膜対象物を形成し、第一、第二、…、第Nの成膜対象物を第一、第二、…、第Nの順に連続して第一の成膜室3cに搬送して第一、第二、…、第Nの基板を成膜し、受入室5aで第一、第二、…、第Nの成膜対象物を第一、第二、…、第Nの順に分離する場合であって、第一、第二、…、第Nの成膜マスクのうち第二の成膜マスク以外の成膜マスクを洗浄室10に搬入せずに、第二の成膜マスクを洗浄室10に搬入する場合を例に説明する。第二の成膜マスクを用いて複数枚の基板を成膜した後であり、第二の成膜マスクの表面には薄膜材料が堆積している。
【0063】
分離された第一の成膜マスクを受入室5aの真空槽から搬出して洗浄室10の真空槽に搬入せずに搬送路8の真空槽に搬入した後、洗浄工程として、分離された第二の成膜マスクを受入室5aの真空槽から搬出して洗浄室10の真空槽に搬入する。
分離された第二の成膜マスクを受入室5aの真空槽から搬出して洗浄室10の真空槽内に搬入する際に、第二の搬送工程として、保管室6a又は6bの真空槽から予備の成膜マスクを搬出して搬送路8の真空槽に搬入する。
【0064】
次いで、第三の成膜マスクを受入室5aの真空槽から搬出して洗浄室10の真空槽に搬入せずに搬送路8の真空槽に搬入する。
このようにして、第一の成膜マスクと第三の成膜マスクとの間を開けずに、成膜装置上流部1aに予備の成膜マスクを戻すことができるので、第一の成膜室3cでの成膜作業を中断させずに第二の成膜マスクをクリーニングすることができる。
付着物を除去された第二の成膜マスクは、保管工程として、洗浄室10の真空槽から搬出して保管室6a又は6bの真空槽に搬入し、保管しておく。
【0065】
第一の成膜マスクを搬送路8に搬入してから、第三の成膜マスクを受入室5aから搬出するまでの時間に比べて洗浄室10でのクリーニング時間の方が短い場合には、第一の成膜マスクを受入室5aから搬出して洗浄室10に搬入せずに搬送路8に搬入するより後で、かつ第三の成膜マスクを受入室5aから搬出して洗浄室10に搬入せずに搬送路8に搬入するより前に、付着物を除去された第二の成膜マスクを、第二の搬送工程と保管工程の代わりに、洗浄室10の真空槽から搬出して搬送路8の真空槽に搬入してもよい。
【0066】
この成膜装置1を用いた成膜方法の第二例を説明する。
各真空槽内を真空排気する。以後、真空排気を継続して、各真空槽内の真空雰囲気を維持し続ける。
ここでは赤色の発光層の成膜に用いる開口部と遮蔽部を有する成膜マスクを、搬入室5cの真空槽内に搬入し、次いで不図示の搬送機構により、成膜マスクを第一の成膜室3cの真空槽内に移動させ、成膜マスク表面が赤色の発光層蒸発源4cの放出口と対面する位置に配置する。
【0067】
緑、青色の発光層の成膜に用いる成膜マスクも同様にそれぞれ成膜マスク表面が緑、青色の発光層蒸発源4d、4eの放出口と対面する位置に配置しておく。
基板を搬入室5cの真空槽内に搬入し、次いで、不図示の搬送機構により、当該基板を第一の成膜室3cの真空槽内に移動させ、ホール注入層の蒸発源4aと、ホール輸送層の蒸発源4bとの各放出口と対面する位置を順に通過させながら、基板表面にホール注入層とホール輸送層の薄膜を順に積層させる。
【0068】
次いで、基板を赤色発光層の成膜マスクの裏面と対面する位置に移動させ、静止させる。赤色の発光層蒸発源4cの放出口から蒸気を放出させ、蒸気を成膜マスク表面の開口を通過させ、基板表面に到達させて、基板表面に赤色発光層の成膜マスクの開口パターンと同じパターンの赤色発光層の有機薄膜を成膜する。このとき成膜マスク表面の遮蔽部にも有機薄膜が付着する。
【0069】
次いで、赤色の発光層蒸発源4cの放出口と対面する位置に赤色発光層の成膜マスクを残したまま、基板を緑色発光層の成膜マスクの裏面と対面する位置に移動させ、静止させる。放出口から蒸気を放出させ、蒸気を成膜マスク表面の開口を通過させ、基板表面に到達させて、基板表面に緑色発光層の成膜マスクの開口パターンと同じパターンの緑色発光層の有機薄膜を成膜する。このとき成膜マスク表面の遮蔽部にも有機薄膜が付着する。
【0070】
次いで、緑色の発光層蒸発源4dの放出口と対面する位置に緑色発光層の成膜マスクを残したまま、基板を青色発光層の成膜マスクの裏面と対面する位置に移動させ、静止させる。放出口から蒸気を放出させ、蒸気を成膜マスク表面の開口を通過させ、基板表面に到達させて、基板表面に青色発光層の成膜マスクの開口パターンと同じパターンの青色発光層の有機薄膜を成膜する。このとき成膜マスク表面の遮蔽部にも有機薄膜が付着する。
【0071】
次いで、青色の発光層蒸発源4eの放出口と対面する位置に青色発光層成膜マスクを残したまま、青色の発光層を成膜された基板を受入室5aの真空槽内に移動させる。
搬送ロボット9により、青色の発光層を成膜された基板を受入室5aの真空槽から搬出して、電子輸送層成膜室3aの真空槽内に搬入し、放出口と対面させながら、放出口から蒸気を放出させ、蒸気を基板表面に到達させ、基板表面に電子輸送層の薄膜を成膜させる。
【0072】
次いで、電子輸送層を成膜された基板を電子輸送層成膜室3aの真空槽から搬出して、電子注入層・電極膜成膜室3bの真空槽内に搬入し、放出口と対面させながら、放出口から蒸気を放出させ、蒸気を基板表面に到達させ、基板表面に電子注入層の薄膜を成膜させ、次いで電極膜を成膜する。
【0073】
次いで、電極膜を成膜された基板を電子注入層・電極膜成膜室3bの真空槽から搬出して受渡室5bの真空槽内に搬入し、電極膜の成膜以後の後工程に流す。
このようにして基板の成膜を繰り返すと、第一の成膜室3c室の成膜マスクの表面には有機薄膜材料からなる付着物が堆積する。
【0074】
この成膜マスクの交換方法を、赤色の発光層の成膜マスクの交換する場合を例に説明する。
所定の枚数の基板を成膜したのち、まず搬入室5cへの基板の搬入を停止する。
使用済みの成膜マスクを、不図示の搬送機構により、赤色の発光層蒸発源4cの放出口と対面する位置から移動させ、受入室5aの真空槽に搬入する。
【0075】
使用済みの成膜マスクを赤色の発光層蒸発源4cの放出口と対面する位置から移動させる際に、搬送ロボット9により、予備の赤色発光層の成膜マスクを保管室6a又は6bの真空槽内から搬出して搬送路8の真空槽内に搬入し、成膜装置上流部1aに戻す。
【0076】
搬入室5cに戻された予備の成膜マスクを第一の成膜室3cの真空槽内に搬入し、当該真空槽内の赤色の蒸発源4cの放出口と対面する位置に配置する。
このようにして赤色発光層の成膜マスクが交換される。次いで、搬入室5cへの基板の搬入を再開する。
【0077】
受入室5aの真空槽内に搬入された使用済みの成膜マスクについては、搬送ロボット9により、受入室5aの真空槽から搬出して洗浄室10の真空槽内に搬入し、上述のクリーニング方法により、成膜マスクの表面から付着物を除去する。
付着物を除去された成膜マスクを、洗浄室10の真空槽から搬出して保管室6a又は6cの真空層内に移動させ、保管する。
【0078】
緑、青色の発光層の成膜マスクも上述と同様にして保管室6a又は6bに保管されていた予備の成膜マスクと交換し、使用済みの成膜マスクは洗浄室10で洗浄した後、保管室6a又は6bに保管する。
【0079】
上記第二例の成膜方法では、上記第一例の成膜方法に比べて、成膜マスクの交換の際に第一の成膜室3cでの成膜作業を停止する必要があるが、従来の成膜方法に比べて、大量の予備のマスクを用意すること、使用済みの成膜マスクを装置内に溜めること、溜まった使用済みマスクをクリーニング工場に出すこと等の必要がなく、コスト面が良い。
【0080】
本発明のクリーニング装置を有する成膜装置の第二例の構造を説明する。
図5はこの成膜装置1’の概略構成図を示している。
成膜装置1’は成膜室3a’、3b’、3c’と洗浄室10’と搬送室2’と搬入出室5’と封止室4’を有している。クリーニング装置を有する洗浄室10’は第一例の成膜装置1の洗浄室10と同じ構造である。
【0081】
各室2’、3a’、3b’、3c’、4’、5’、10’にはそれぞれ不図示の真空槽が配置され、各真空槽にはそれぞれ不図示の真空排気装置が接続されている。各真空槽に接続された真空排気装置はそれぞれの真空槽内を真空排気可能に構成されている。
成膜室3a’、3b’、3c’と洗浄室10’と搬入出室5’と封止室4’の各真空槽は、それぞれ搬送室2’の真空槽に気密に接続されている。
【0082】
搬送室2’の真空槽内には搬送ロボット9’が配置されている。搬送ロボット9’は、基板又は成膜マスクが配置された真空槽から基板又は成膜マスクを搬出して他の真空槽内に搬入可能に構成されている。
【0083】
各成膜室3a’〜3c’にはそれぞれ不図示の蒸発源又はスパッタカソードが配置されている。蒸発源には有機薄膜材料あるいは無機薄膜材料(例えばAl)が配置され、当該薄膜材料の蒸気を真空槽内に配置された放出口から放出するように構成されている。スパッタカソードには無機薄膜材料(例えばIZO電極膜)が載置され、当該薄膜材料の粒子を真空槽内に放出するように構成されている。
【0084】
この成膜装置1’を用いた成膜方法を説明する。
各真空槽内を真空排気する。以後、真空排気を継続して、各真空槽内の真空雰囲気を維持する。
不図示の搬入出手段により、ここでは有機薄膜の成膜に用いる成膜マスクを搬入出室5’の真空槽内に搬入し、次いで搬送ロボット9’により、有機薄膜を成膜する成膜室(ここでは符号3a’とする)の真空槽内に移動させ、当該真空槽内の放出口と対面する位置に配置する。
【0085】
不図示の搬入出手段により、基板を搬入出室5’の真空槽内に搬入し、次いで、搬送ロボット9’により、当該基板を有機薄膜の成膜室3a’の真空槽内に移動させ、成膜マスクと対面させながら、放出口から蒸気を放出させ、蒸気を成膜マスクの有する開口を通過させ、基板表面に到達させて、基板表面に成膜マスクの開口パターンと同じパターンの有機薄膜を成膜する。
【0086】
次いで、搬送ロボット9’により、有機薄膜を成膜された基板を有機薄膜の成膜室3a’の真空槽から搬出して電極膜の成膜室(ここでは符号3b’)の真空槽内に搬入し、スパッタカソード上の電極膜材料と対面させ、真空槽内にプラズマを発生させて電極膜材料をスパッタし、電極膜材料の粒子を基板表面に到達させ、基板表面に電極膜の薄膜を成膜させる。
【0087】
次いで、電極膜を成膜された基板を電極膜の成膜室3b’の真空槽から搬出して封止室4’の真空槽内に搬入し、基板を封止して完成させる。
封止した基板を封止室4’の真空槽から搬出して搬入出室5’の真空槽内に搬入し、後工程に流す。
このようにして基板の成膜を繰り返すと、有機薄膜の成膜室3a’の成膜マスクの表面には有機薄膜材料からなる付着物が堆積する。
【0088】
この成膜装置1’を用いた成膜マスクの交換方法を説明する。
所定の枚数の基板を成膜したのち、成膜マスクを有機薄膜の成膜室3a’の真空槽内から搬出して洗浄室10’の真空槽内に搬入し、上述したクリーニング方法により、成膜マスク表面に付着していた付着物を除去する。
【0089】
予備の成膜マスクを搬入出室5’の真空槽内に搬入しておき、成膜マスクを有機薄膜の成膜室3a’の真空槽内から搬出して洗浄室10’の真空槽内に搬入した後、予備の成膜マスクを搬入出室5’の真空槽から搬出して有機薄膜の成膜室3a’の真空槽内に移動させ、放出口と対面する位置に配置する。
【0090】
次いで、上述したように有機薄膜の成膜室3a’での成膜作業を再開する。
洗浄室10’でのクリーニングが終わったら、付着物が除去された成膜マスクを洗浄室10’の真空槽から搬出して、搬入出室5’の真空層内に搬入し、予備の成膜マスクとして再利用のために保管する。
【0091】
上述の成膜装置1、1’では洗浄室と成膜室が分離しているので、成膜マスクのクリーニングの際に発生するプラズマによって、成膜室の真空槽内の未成膜材料を劣化させるという問題や、マスクから除去した付着物が基板の成膜面に付着するという問題は生じない。
また成膜室での成膜作業を中断させずにクリーニングを行うことができる。成膜作業を停止している時間にクリーニングを行うこともできる。
【0092】
上記実施例では、成膜マスクの表面に付着した有機化合物を洗浄室で除去していたが、成膜マスクの表面の付着物は有機化合物だけではなく、無機化合物の場合や有機化合物と無機化合物の混合物の場合も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1……成膜装置
1a……成膜装置上流部
1b……成膜装置下流部
2……搬送室
3a、3b……第二の成膜室(電子輸送層成膜室、電子注入層・電極膜成膜室)
3c……第一の成膜室
5a……分離室(受入室)
5c……固定室(搬入室)
6a、6b……保管室
8……搬送路
9……搬送ロボット
10、10’……クリーニング装置(洗浄室)
12……真空排気装置
13……排気口
20……洗浄容器
21……シャワーノズル
21a……放出孔
21b……導入口
22……側壁
23……接触部材
29……隙間
30……ガス供給装置
41……冷却プレート
42……磁石装置
43……移動装置
50……処理対象物(成膜マスク)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
前記真空槽内に配置され、底面にシャワーノズルが設けられた洗浄容器と、
前記洗浄容器に設けられた接触部材とを有し、
前記シャワーノズルの前記洗浄容器の開口に向けられた面には複数の放出孔が設けられ、
前記シャワーノズルと離間して対面する位置に処理対象物を配置したときに、前記接触部材の先端が前記処理対象物の内側に位置し、前記処理対象物と前記接触部材とが接触し、前記処理対象物と前記シャワーノズルとの間の放電空間が、前記洗浄容器の筒状の側壁で取り囲まれると共に、前記処理対象物と前記洗浄容器との間に隙間が形成されるように構成され、
前記真空槽の壁面に設けられた排気口に真空排気装置を接続し、前記シャワーノズルに設けられた導入口にガス供給装置を接続し、
前記真空排気装置によって前記真空槽内を真空排気しながら、前記ガス供給装置によって前記シャワーノズル内に反応ガスを供給し、前記シャワーノズルと前記処理対象物と前記側壁のうちの少なくとも一つと他の一つの間に電圧を印加し、前記放電空間にプラズマを発生させ、前記処理対象物表面の付着物と前記反応ガスとの反応生成物ガスを、前記真空排気装置によって、前記隙間から真空排気するように構成されたクリーニング装置。
【請求項2】
前記ガス供給装置は前記シャワーノズル内に前記反応ガスと共に放電補助ガスを供給するように構成された請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記シャワーノズルと離間して対面する位置に前記処理対象物を配置したときに、前記処理対象物の裏面と対面する位置に配置された冷却プレートと、
前記冷却プレートを前記冷却プレートの表面に対して垂直な方向に移動させる移動装置と、
を有し、
前記移動装置によって前記冷却プレートを前記処理対象物の裏面に接触させ、前記冷却プレートとの熱伝導によって前記処理対象物を冷却するように構成された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記冷却プレートに設けられた磁石装置を有し、
前記移動装置によって前記冷却プレートを前記処理対象物の裏面に接触させたときに、前記磁石装置から印加される磁力によって前記処理対象物は前記冷却プレートに平面で密着されるように構成された請求項3記載のクリーニング装置。
【請求項5】
分離して別々に搬入された基板と成膜マスクとを、前記基板の成膜面と前記成膜マスクの裏面とが向かい合う状態で互いに固定して成膜対象物を形成する固定室と、前記固定室から搬入された前記成膜対象物に向けて薄膜材料蒸気を放出して、前記成膜対象物の前記基板の前記成膜面に前記成膜マスクの開口を通して薄膜材料を付着させる第一の成膜室と、前記第一の成膜室から搬入された前記成膜対象物を前記基板と前記成膜マスクとに分離する分離室と、を有する成膜装置上流部と、
分離された前記成膜マスクの表面から薄膜材料を除去する洗浄室と、分離された前記成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入し、薄膜材料を除去された前記成膜マスクを前記洗浄室から搬出して前記搬送路に搬入する搬送ロボットを有する搬送室と、を有する成膜装置下流部と、
分離された前記成膜マスクを、前記成膜装置上流部に戻して、前記固定室で固定された前記基板とは別の基板に固定されるようにする搬送路と、
を有し、
前記搬送ロボットは、分離された前記成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入せずに前記搬送路に搬入できるように構成された成膜装置。
【請求項6】
前記成膜装置下流部は、分離された前記基板の前記成膜面に薄膜を成膜する第二の成膜室を有し、
前記搬送ロボットは、分離された前記基板を前記分離室から搬出して前記第二の成膜室に搬入できるように構成された請求項5記載の成膜装置。
【請求項7】
前記成膜装置下流部は、予備の成膜マスクが保管された保管室を有し、
前記搬送ロボットは、前記予備の成膜マスクを前記保管室から搬出して前記搬送路に搬入できるように構成され、かつ薄膜材料を除去された前記成膜マスクを前記洗浄室から搬出して前記保管室に搬入できるように構成された請求項5又は請求項6のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項8】
前記洗浄室は請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のクリーニング装置を有する請求項5乃至請求項6のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8のいずれか1項記載の成膜装置を用いて基板の成膜面に薄膜を成膜する成膜方法であって、
前記固定室で、分離して別々に搬入された前記基板と前記成膜マスクとを、前記基板の成膜面と前記成膜マスクの裏面とが向かい合う状態で互いに固定して前記成膜対象物を形成し、前記第一の成膜室で、前記成膜対象物に向けて薄膜材料蒸気を放出して、前記成膜対象物の前記基板の前記成膜面に前記成膜マスクの開口を通して薄膜材料を付着させ、前記分離室で、前記成膜対象物を前記基板と前記成膜マスクとに分離する第一の成膜工程と、
前記第一の成膜工程の後、分離された前記成膜マスクを前記分離室から搬出して前記搬送路に搬入し、前記成膜装置上流部に戻す第一の搬送工程と、
前記第一の成膜工程と前記第一の搬送工程とを繰り返して複数枚の前記基板を成膜した後、分離された前記成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入し、前記成膜マスクの表面から薄膜材料を除去する洗浄工程と、
分離された前記成膜マスクを前記洗浄室に搬入する際に、前記予備の成膜マスクを前記保管室から搬出して前記搬送路に搬入し、前記成膜装置上流部に戻す第二の搬送工程と、
前記洗浄工程の後、薄膜材料を除去された前記成膜マスクを前記洗浄室から搬出して前記保管室に搬入し、保管する保管工程と、
を有する成膜方法。
【請求項10】
Nを3以上の自然数として、前記固定室で第一、第二、…、第Nの成膜マスクを第一、第二、…、第Nの基板にそれぞれ固定して第一、第二、…、第Nの成膜対象物を形成し、前記第一、第二、…、第Nの成膜対象物を第一、第二、…、第Nの順に連続して前記第一の成膜室に搬送して前記第一、第二、…、第Nの基板を成膜し、前記分離室で前記第一、第二、…、第Nの成膜対象物を第一、第二、…、第Nの順に分離する請求項9記載の成膜方法であって、
前記第一、第二、…、第Nの成膜マスクのうち前記第二の成膜マスク以外の成膜マスクを前記洗浄室に搬入せずに、前記第二の成膜マスクを前記洗浄室に搬入する場合には、
前記第一の成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入せずに前記搬送路に搬入するより後で、かつ前記第三の成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入せずに前記搬送路に搬入するより前に、前記第二の成膜マスクを前記分離室から搬出して前記洗浄室に搬入すると共に前記保管室から前記予備の成膜マスクを搬出して前記搬送路に搬入する成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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