説明

クリーム半田の塗布方法

【課題】 貫通孔内へのクリーム半田の充填が確実で、精度の良いクリーム半田の塗布方法を提供する。
【解決手段】 本発明のクリーム半田の塗布方法は、凹部1b、及び凹部1bの底面に設けられたランド部2aを有する回路基板1と、平坦部3aに繋がって、凹部1bに対応して設けられた凸状の突出部3bを有するメタルマスク3と、メタルマスク3上を転動するローラ4とを備え、突出部3bは、平坦部3aから延びる側板3cと、この側板3cの下端部を塞ぐ底板3dと、底板3dに設けられた複数の貫通孔3eと、側板3cと底板3dとで囲まれた凹状部3fを有し、クリーム半田6がローラ4の転動によって回路基板1側に押圧されて、クリーム半田6が貫通孔3e内に確実に押し込まれて、精度の良いクリーム半田の塗布が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の電子機器や電子回路ユニット等に使用される回路基板に適用して好適なクリーム半田の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来のクリーム半田の塗布方法を示す斜視図、図7は従来のクリーム半田の塗布方法を示す断面図であり、次に、従来のクリーム半田の塗布装置の構成を図6,図7に基づいて説明すると、基板51は、幅広の上面51aと、上面51aの中央部に設けられた凹部51bを有する。
【0003】
金属板からなるメタルマスク52は、上面51a上に配置される幅広の平坦部52aと、この平坦部52aに繋がり、凹部51bに対応して設けられた凹状部52bと、この凹状部52bに設けられた貫通孔52cを有し、このメタルマスク52上には、下部に凸部53aを有するスキージ53が配置されて、従来のクリーム半田の塗布装置が形成されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
次に、従来のクリーム半田の塗布方法について説明すると、先ず、クリーム半田54がメタルマスク52の平坦部52a上に設けられ、次に、スキージ53が矢印Z方向に水平移動すると、クリーム半田54がスキージ53の凸部53aによって凹状部52b側に移動(払われるような移動)される。
【0005】
次に、スキージ53の凸部53aが凹状部52bの位置に来た時、凸部53aは、凹状部52b内に落ち込み、この状態で水平移動し、また、凸部53aが凹状部52bから抜け出ると、再び、平坦部52a上を水平移動するようになるが、凸部53aが凹状部52b内を移動することによって、クリーム半田54が貫通孔52cを通って凹部51bの底面に塗布されて、従来のクリーム半田の塗布が完了する。(例えば、特許文献1参照)
【0006】
【特許文献1】特開2003−300301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のクリーム半田の塗布方法は、クリーム半田54の塗布がスキージ53の水平方向の移動によって行われるため、貫通孔52c内へのクリーム半田54の充填が不十分となり、特に、スキージ53が最初に位置する貫通孔52cの角部でのクリーム半田54の充填不足を生じるばかりか、スキージ53の凸部53aが回路基板51の凹部51b(凹状部53b)に来た時、その段差部を飛び越して、凹状部53b内に落ち込むようになり、このため、段差部近傍における貫通孔52c内へのクリーム半田54の充填不足が生じるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は貫通孔内へのクリーム半田の充填が確実で、精度の良いクリーム半田の塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の解決手段として、一面側に設けられた凹部、及び少なくとも前記凹部の底面に設けられたランド部を有する回路基板と、平坦部に繋がって、前記凹部に対応して設けられた凸状の突出部を有するメタルマスクと、このメタルマスク上に設けられたクリーム半田を前記回路基板方向に押圧するように転動するローラとを備え、前記メタルマスクの前記突出部は、前記平坦部から下方に延びる側板と、この側板の下端部を塞ぐ底板と、この底板に設けられた貫通孔と、前記側板と前記底板とで囲まれた凹状部を有し、前記メタルマスクの前記平坦部が前記回路基板の前記一面側に載置されると共に、前記突出部が前記凹部内に載置された状態で、前記ローラの転動によって、前記メタルマスク上に設けられた前記クリーム半田が前記回路基板側に押圧され、前記クリーム半田が前記貫通孔を通して前記ランド部上に塗布された塗布方法とした。
【0010】
また、第2の解決手段として、前記メタルマスクは、電鋳法によって形成された金属板部と、レーザ加工によって形成された前記貫通孔を有し、前記メタルマスクを使用して、前記クリーム半田が前記ランド部上に塗布された塗布方法とした。
【0011】
また、第3の解決手段として、前記ローラは、円筒状の軟質弾性体で形成されると共に、前記ローラの中心部に挿通されたシャフトによって、前記ローラが保持された塗布方法とした。
また、第4の解決手段として、前記ローラは、前記メタルマスクの前記平坦部上を弾接しながら転動し、前記凹部上を通過する際においても、前記ローラは、前記平坦部上を弾接しながら転動するようにした塗布方法とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクリーム半田の塗布方法は、一面側に設けられた凹部、及び少なくとも凹部の底面に設けられたランド部を有する回路基板と、平坦部に繋がって、凹部に対応して設けられた凸状の突出部を有するメタルマスクと、このメタルマスク上に設けられたクリーム半田を回路基板方向に押圧するように転動するローラとを備え、メタルマスクの突出部は、平坦部から下方に延びる側板と、この側板の下端部を塞ぐ底板と、この底板に設けられた貫通孔と、側板と底板とで囲まれた凹状部を有し、メタルマスクの平坦部が回路基板の一面側に載置されると共に、突出部が凹部内に載置された状態で、ローラの転動によって、メタルマスク上に設けられたクリーム半田が回路基板側に押圧され、クリーム半田が貫通孔を通してランド部上に塗布された塗布方法とした。
即ち、ローラが転動すると共に、クリーム半田がローラの転動によって回路基板側に押圧されるようになるため、凹状部内にはクリーム半田が押し込まれ、且つ、凹状部内のクリーム半田が貫通孔内に押し込まれるようになって、貫通孔内へのクリーム半田の充填が確実にできると共に、貫通孔内の角部においても、クリーム半田が確実に充填できて、精度の良いクリーム半田の塗布が出来る。
【0013】
また、メタルマスクは、電鋳法によって形成された金属板部と、レーザ加工によって形成された貫通孔を有し、メタルマスクを使用して、クリーム半田がランド部上に塗布されたため、金属板部の板厚は、電鋳法によって精度の良いものが得られると共に、貫通孔は、レーザ加工によって精度の良いものが得られるため、高密度で精度の良いクリーム半田の塗布が出来る。
【0014】
また、ローラは、円筒状の軟質弾性体で形成されたため、ローラの転動が確実に行えると共に、クリーム半田の回路基板側への押圧をローラによって確実に行うことができて、貫通孔内へのクリーム半田の充填を確実に行うことができる。
【0015】
また、ローラは、メタルマスクの平坦部上を弾接しながら転動し、凹部上を通過する際においても、ローラは、平坦部上を弾接しながら転動するようにしたため、ローラの転動が確実に行えると共に、クリーム半田が凹状部内全体に充填できて、凹部内でのクリーム半田の塗布が確実に出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のクリーム半田の塗布方法に係る図面を説明すると、図1は本発明のクリーム半田の塗布方法の概要を示す側面図、図2は本発明のクリーム半田の塗布方法に係るメタルマスクの要部の拡大断面図、図3は本発明のクリーム半田の塗布方法に係り、クリーム半田の塗布後の状態を示す断面図、図4は本発明のクリーム半田の塗布方法に係り、電子部品を取り付けた状態を示す断面図、図5は本発明のクリーム半田の塗布方法によって製造された回路基板の斜視図である。
【0017】
次に、本発明のクリーム半田の塗布装置の構成を図1〜図3に基づいて説明すると、絶縁材からなる回路基板1は、単体の回路基板1,或いは複数の回路基板1を形成するための集合基板で構成されており、この実施例では、集合基板が使用されている。
そして、回路基板1は、一面(上面)1a側に設けられた複数の凹部1bと、隣り合う回路基板1間に設けられた複数の孔1cを有し、この回路基板1の凹部1bの底面には、配線パターン2の一部を構成するランド部2aが設けられている。
【0018】
この配線パターン2は、図5に示すように、回路基板1の凹部1bの底面に設けられたランド部2aと、このランド部2aに繋がった状態で、凹部1bの側壁に設けられた第1の引出部2bと、この第1の引出部2bに繋がった状態で、回路基板1の上面1aに設けられた第2の引出部2cとで形成されている。
【0019】
金属板部からなるメタルマスク3は、上面1a上に配置される幅広の平坦部3aと、この平坦部3aに繋がり、凹部1bに対応して設けられた凸状の突出部3bを有する。
この突出部3bは、平坦部3aから下方に延びる側板3cと、この側板3cの下端部を塞ぐ底板3dと、ランド部2aに対応して、底板3dに設けられた複数の貫通孔3eと、側板3cと底板3dとで囲まれた凹状部3fを有する。
そして、このメタルマスク3は、金属板部が電鋳法によって形成されると共に、貫通孔3eがレーザ加工によって形成されて、精度の良いメタルマスク3が構成されている。
【0020】
円筒状をなしたローラ4は、ウレタン、フッ素ゴム、シリコンゴム等の軟質弾性材で形成され、ショア硬度が60度程度の硬さで形成されており、このローラ4の中心部には、金属製のシャフト5が挿通されて、ローラ4がシャフト5を軸として回転可能となっている。
そして、ローラ4は、メタルマスク3上に配置されて、メタルマスク3の平坦部3a上を転動するようになって、本発明のクリーム半田の塗布装置が形成されている。
【0021】
次に、本発明のクリーム半田の塗布方法について説明すると、先ず、メタルマスク3の平坦部3aが回路基板1の一面1a上に載置されると共に、凸状の突出部3bが凹部1b内に載置した状態で、クリーム半田6がメタルマスク3の平坦部3a上に設けられ、次に、ローラ4がメタルマスク3の平坦部3a上に弾接した状態で、ローラ4側、或いは回路基板1側を移動すると、ローラ4が矢印A1方向に回転しながら矢印A2方向に平坦部3a上を転動しながら移動する。
【0022】
すると、クリーム半田6がローラ4の円周面で回路基板1側に押圧され、押圧されたクリーム半田6は、凹状部3f内に押し込まれると共に、凹状部3f内のクリーム半田6が貫通孔3e内に押し込まれて、クリーム半田6が貫通孔3e内に充填される。
また、ローラ4が凹部1b(突出部3b)上を通過する際においても、ローラ4は、平坦部3a上を弾接しながら転動して、クリーム半田6が凸状の突出部3b内に押し込まれて充填されるようになって、図3に示すように、クリーム半田6がランド部2a上に塗布されて、本発明のクリーム半田の塗布が完了する。
【0023】
そして、クリーム半田6が塗布された後は、図4に示すように、例えば、回路基板1の凹部1b内には、IC部品の能動部品やチップ部品等からなる電子部品7が収納された状態で、電子部品7の端子部7aがクリーム半田6上に載置され、しかる後、これ等がリフロー炉内に搬送されて、クリーム半田6を溶融して、電子部品7がランド部2aに半田付けされるようになっている。
【0024】
その結果、図4に示すように、電子部品7の全体が凹部1b内に収納された状態で、電子部品7が回路基板1に取り付けられる。
また、この実施例のように集合基板を用いたものでは、ここでは図示しないが、メタルマスク3の平坦部3aには、孔1cに対応した位置に貫通孔3eが設けられると共に、ローラ4によって、孔1c内にもクリーム半田6が充填され、そして、リフロー炉内に搬送した後、隣り合う回路基板1間(孔1cの位置)で、集合基板が切断されて、図5に示すように、個々の回路基板1が形成された時、回路基板1の側面には、第2の引出部2cに接続されたサイド電極8が形成されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のクリーム半田の塗布方法の概要を示す側面図。
【図2】本発明のクリーム半田の塗布方法に係るメタルマスクの要部の拡大断面図。
【図3】本発明のクリーム半田の塗布方法に係り、クリーム半田の塗布後の状態を示す断面図。
【図4】本発明のクリーム半田の塗布方法に係り、電子部品を取り付けた状態を示す断面図。
【図5】本発明のクリーム半田の塗布方法によって製造された回路基板の斜視図。
【図6】従来のクリーム半田の塗布方法を示す斜視図。
【図7】従来のクリーム半田の塗布方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0026】
1:回路基板
1a:一面(上面)
1b:凹部
1c:孔
2:配線パターン
2a:ランド部
2b:第1の引出部
2c:第2の引出部
3:メタルマスク
3a:平坦部
3b突出部
3c:側板
3d:底板
3e:貫通孔
3f:凹状部
4:ローラ
5:シャフト
6:クリーム半田
7:電子部品
7a:端子部
8:サイド電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に設けられた凹部、及び少なくとも前記凹部の底面に設けられたランド部を有する回路基板と、平坦部に繋がって、前記凹部に対応して設けられた凸状の突出部を有するメタルマスクと、このメタルマスク上に設けられたクリーム半田を前記回路基板方向に押圧するように転動するローラとを備え、前記メタルマスクの前記突出部は、前記平坦部から下方に延びる側板と、この側板の下端部を塞ぐ底板と、この底板に設けられた貫通孔と、前記側板と前記底板とで囲まれた凹状部を有し、前記メタルマスクの前記平坦部が前記回路基板の前記一面側に載置されると共に、前記突出部が前記凹部内に載置された状態で、前記ローラの転動によって、前記メタルマスク上に設けられた前記クリーム半田が前記回路基板側に押圧され、前記クリーム半田が前記貫通孔を通して前記ランド部上に塗布されたことを特徴とするクリーム半田の塗布方法。
【請求項2】
前記メタルマスクは、電鋳法によって形成された金属板部と、レーザ加工によって形成された前記貫通孔を有し、前記メタルマスクを使用して、前記クリーム半田が前記ランド部上に塗布されたことを特徴とする請求項1記載のクリーム半田の塗布方法。
【請求項3】
前記ローラは、円筒状の軟質弾性体で形成されると共に、前記ローラの中心部に挿通されたシャフトによって、前記ローラが保持されたことを特徴とする請求項1、又は2記載のクリーム半田の塗布方法。
【請求項4】
前記ローラは、前記メタルマスクの前記平坦部上を弾接しながら転動し、前記凹部上を通過する際においても、前記ローラは、前記平坦部上を弾接しながら転動するようにしたことを特徴とする請求項3記載のクリーム半田の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−332254(P2006−332254A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152560(P2005−152560)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】