説明

クレンジング化粧料

【課題】 メークアップ化粧料を効果的に除去することができ、使用時に水が混入しても洗浄性を損なわず(耐水性)、洗い上がりのさっぱり感(すすぎ性)が良好で、かつ保存安定性が良好なクレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】クレンジング化粧料全量に対し、成分(A)を0.05〜20質量%、成分(B)を0.2〜60質量%および成分(C)を20〜80質量%含有し、成分(A)と(B)の質量比が4:1〜1:4である。
(A)一般式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体 (式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。mおよびnはそれぞれEOおよびAOの平均付加モル数で、mは0〜15、nは10〜60であり、EOとAOの合計に対するAOの質量比率が80〜100質量%である。Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。)
(B)ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれ、オキシエチレン基の平均付加モル数が5〜40モル、エステルを構成する脂肪酸残基の炭素数が8〜22であり、HLBが9〜16である非イオン性界面活性剤
(C)25℃で液状の炭化水素油

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メークアップ化粧料を効果的に除去することができ、使用時に水が混入した場合でも洗浄性を損なわず、洗い流した後のさっぱり感が良好で、なおかつ保存安定性が良好なクレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
クレンジング化粧料は、メークアップ化粧料や皮脂汚れを除去するために広く使用されている。近年、シリコーン系やフッ素系などの油剤を含有した化粧持ちに優れたメークアップ化粧料が増えており、従来の洗顔料でこれらを除去することは困難である。そのため、一般的なクレンジング化粧料にはメークアップ化粧料を溶解させるための油性成分と、油性成分および溶解させたメークアップ化粧料を乳化、分散させて洗い流すための界面活性剤が配合されている。
【0003】
クレンジング化粧料には、クリーム、乳液、ローション、オイル等の形態が存在する。一般にO/W型の乳液タイプや、界面活性剤とアルコールによって化粧料を除去するローションタイプは油性成分の配合量が少ないため化粧料に対する洗浄力が低い。そのため近年では、油性成分を高配合したクリームやオイルタイプ等の洗浄力が高い製剤が好まれる傾向にある。しかしながら、こうした多量の油分を配合したクレンジング化粧料は水によるすすぎ後も皮膚に油分が残留して油性感やべたつき感が生じるという問題があった。
【0004】
これらの状況を鑑み、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノラウリン酸ポリエチレングリコールを含有し、化粧持ちに優れたウォータープルーフのマスカラを素早く浮き上がらせることができ、油性感なくすっきりと洗い流すことができるクレンジング組成物(特許文献1)が開示されている。しかしながらこの組成物は、濡れた手や浴室での使用において水が混入した場合、増粘してメークアップ化粧料との馴染みが悪くなり、洗浄性が低下するという問題があった。
【0005】
一方、使用時に水が混入した場合にも洗浄性を損なわないクレンジング化粧料として、分子内に複数の水酸基を持つ親油性化合物と、親水性の非イオン性界面活性剤を配合した組成物がいくつか提案されている。例えば、特許文献2のクレンジング化粧料は、モノオレイン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルを含有し、使用時に水が混入しても優れたクレンジング効果を発揮し、水洗性も極めて良好である。しかしながらこの組成物は、保存安定性が十分ではなく浴室などの高温条件下での保存において白濁や分離が生じるといった問題点があった。また、ポリオキシプロピレンソルビット、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルを含有し、使用時に水が混入しても白濁や増粘がなく優れた使用感を有する油性洗浄料が開示されている(特許文献3)。しかしながら、この組成物はメークアップ化粧料に対する洗浄性が未だ十分満足できるものではなかった。
【0006】
さらに、分子内に複数の水酸基を有する親油性化合物として、親水基としてポリグリセリン骨格を有し、親油基としてポリオキシブチレン基を有する界面活性剤が開示されているが(例えば特許文献4)、クレンジング化粧料にこれらを配合しても、水が混入した際の洗浄性は十分満足できるものではなかった。
【0007】
このように、水で洗い流すタイプのクレンジング化粧料において、化粧持ちに優れた化粧料を効果的に除去でき、使用時に水が混入しても洗浄性を損なわず、洗い上がりのさっぱり感が良好で、なおかつ保存安定性を同時に満たすものの開発には至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−184413
【特許文献2】特開2008−037779
【特許文献3】特開2005−264110
【特許文献4】特開2007−031554
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、メークアップ化粧料を効果的に除去することができ、使用時に水が混入しても洗浄性を損なわず(耐水性)、洗い上がりのさっぱり感(すすぎ性)が良好で、なおかつ保存安定性が良好なクレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下に示されるものである。
(1) 化粧料全量に対し、下記の成分(A)を0.05〜20質量%、成分(B)を0.2〜60質量%、成分(C)を20〜80質量%含有し、成分(A)と(B)の質量比が4:1〜1:4であることを特徴とする、クレンジング化粧料。
(A) 下記一般式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体
【化1】


(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。mおよびnはそれぞれEOおよびAOの平均付加モル数で、mは0〜15、nは10〜60を満たし、EOとAOの合計に対するAOの割合は、80〜100質量%である。Rは、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基である。)
(B) ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた非イオン性界面活性剤であって、オキシエチレン基の平均付加モル数が5〜40モル、エステルを構成する脂肪酸残基の炭素数が8〜22であり、そのHLBが9〜16の範囲内である非イオン性界面活性剤
(C) 25℃で液状の炭化水素油
(2) 式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体において、AOがオキシブチレン基であることを特徴とする前記のクレンジング化粧料。
(3) 成分(B)の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれ、そのエステル化率が20〜50%であることを特徴とする前記のクレンジング化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクレンジング化粧料は、化粧持ちに優れたメークアップ化粧料を効果的に除去することができ、使用時に水が混入しても洗浄性を損なうことなく(耐水性)、洗い上がりのさっぱり感(すすぎ性)が良好で、なおかつ保存安定性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、更に詳細に本発明の説明をする。
本発明の成分(A)は、一般式(1)に示されるように、キシリトール骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体である。
キシリトール部位は隣接する4つの水酸基を有し、本発明のクレンジング化粧料に耐水性を付与する。グリセリンモノ脂肪酸エステルのように隣接する水酸基が2つの場合や、引用文献4に例示されるトリグリセリン誘導体のように4つの水酸基が隣接しておらずエーテル結合を介する場合は、耐水性が低下するため好ましくない。従って本願の課題を達成するためにはキシリトール骨格を有することが必須である。
【0013】
キシリトール部位の末端水酸基に結合している親油性のAOは、メークアップ化粧料との馴染みを良好にして洗浄性を高めると共に、耐水性を向上させる。ポリグリセリン脂肪酸エステルのように親油基として脂肪酸残基を有するものは、シリコーン系油剤との相溶性が低下して洗浄性が低下するため好ましくない。さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルの場合、工業的製法では脂肪酸残基を導入する水酸基の位置を制御することが困難であるため、隣接した水酸基を有することができず耐水性が低下する。
【0014】
式(1)に示されるポリアルキレングリコール誘導体において、EOはオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基である。AOが2種の場合は、ランダム状付加でもブロック状付加でもよい。AOとしては、炭素数3ではオキシプロピレン基、素数4ではオキシブチレン基が例示できるが、好ましくは炭素数4のオキシブチレン基で、さらに好ましくは1,2-ブチレンオキシド由来のオキシ(1-エチルエチレン)基である。
【0015】
AOの全量に対する炭素数4のオキシアルキレン基の質量比率は限定されず、AOのうち100質量%を炭素数3のオキシアルキレン基が占めていて良い。AOに占める炭素数4のオキシアルキレン基質量の比率は好ましくは80質量%以上で、更に好ましくは100質量%である。
【0016】
EOとAOの付加形態はブロック状であり、キシリトールに対してEO−AOの順に付加する。EOとAOがランダム状に付加しているとメークアップ化粧料との馴染みが悪くなり洗浄性が低下する。
EOは、キシリトール骨格の親水性を補うために必要に応じて付加できる。mはEOの平均付加モル数で0〜15である。mが15より大きいと洗浄性が低下したり、耐水性が得られない場合がある。この観点からは、mは10以下であることが更に好ましい。
【0017】
nはAOの平均付加モル数で、AOが2種以上の場合は合計平均付加モル数を示し、10〜60である。nが10より小さい場合は親油性が十分でなく、洗浄性や耐水性が得られない。nが60を超えるとすすぎ性が悪化し、保存安定性も悪化する場合がある。この観点からは、nが50以下であることが更に好ましい。
【0018】
EOとAOの合計に対する、AOの質量比率は80〜100質量%であり、好ましくは85〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、最も好ましくは100質量%である。これが80質量%より小さいと、親油性が十分でないため洗浄性が低下し、耐水性も得られない。
【0019】
1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基及びこれらの混合基などが挙げられる。R1は水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましい。
【0020】
なお、本発明の一般式(1)に示されるようなキシリトールの水酸基1つが修飾されたポリアルキレングリコール誘導体は、通常、以下の手順により製造される。
1)キシリトールを酸触媒の存在下、ケタール化剤もしくはアセタール化剤と反応させ、下記一般式(2)に示すキシリトールジケタール化合物もしくはジアセタール化合物を得る。
【化2】

【0021】
式(2)のキシリトールジケタール化物もしくはジアセタール化物は、必要に応じて、蒸留等で精製しても構わない。
【0022】
2)続いてアルカリ触媒下、オキシエチレン基および炭素数3〜4のオキシアルキレン基を付加反応し、さらに必要に応じて、アルカリ触媒下にて、アルキルハライドなどと反応させ、末端水酸基をエーテル化することもできる。
3)その後、酸の存在下で脱ケタール化もしくは脱アセタール化を行う。
【0023】
式(2)において、RおよびRは、それぞれ水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基であり、RおよびRが同時に水素原子になることはない。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できるが、好ましくはメチル基、エチル基である。R=R=メチル基の場合、ケタール化剤としてアセトン、2,2−ジメトキシプロパンが例示でき、R=水素原子、R=メチル基の場合、アセタール化剤として、アセトアルデヒドが例示できる。
【0024】
本発明にかかる成分(B)は、成分(A)と組み合わせることで本発明のクレンジング化粧料に耐水性と良好なすすぎ性を付与する。成分(B)は、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる非イオン性界面活性剤である。
【0025】
成分(B)のオキシエチレン基の平均付加モル数は5〜40モルであり、好ましくは15〜30モルであり、更に好ましくは20〜30モルである。オキシエチレン基の平均付加モル数が40モルを超えると水混入時の洗浄性が低下することがある。
【0026】
本発明では成分(B)のエステルを構成する脂肪酸残基の炭素数は8〜22であり、より好ましくは、12〜18である。これは飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸でもよいし、分岐脂肪酸およびヒドロキシル基置換脂肪酸でもよい。
【0027】
脂肪酸としては、例えばカプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、ベヘン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いても良い。なかでも保存安定性の観点からイソステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0028】
成分(B)のHLBは9〜16であり、好ましくは11〜16であり、より好ましくは12〜16である。HLBが9より小さいと、すすぎ性や保存安定性が悪化する場合があり、HLBが16より大きいと耐水性が得られない。
【0029】
ここでHLBは、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量の比率を示すものであり、新版界面活性剤ハンドブックp236(工学図書株式会社, 昭和62年)に記載されているグリフィン(Griffin)が提案した下記の方法で求めることができる。

HLB=20(1−SV/AV)
(SV:エステル化物の鹸化価 AV:原料脂肪酸の酸価)
SV、AVは日本工業規格(JIS)記載の方法に準拠して測定した。
SV ; JIS K−0070 4. 1
AV ; JIS K−0070 3. 1
【0030】
さらに成分(B)として、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれ、そのエステル化率が20〜50%である非イオン性界面活性剤を用いることで、耐水性とすすぎ性がさらに向上する。
【0031】
ここでエステル化率とは、多価アルコールの水酸基の総数のうち脂肪酸がエステル結合している水酸基の数の割合を表し、エステル化物の鹸化価(SV)水酸基価(OHV)、酸価(AV)を測定し、以下に示す方法にて算出することができる。

エステル化率=[(SV−AV) /
(SV−AV+OHV)]×100

OHVは日本工業規格(JIS)記載の方法に準拠して測定した。
OHV; JIS K−1557 6. 4
【0032】
エステル化率は20〜50%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜45%である。エステル化率が20%未満であると使用時に水が混入した場合、増粘や白濁が起こる場合がある。
【0033】
本発明にかかる成分(C)の液状の炭化水素油はメークアップ化粧料を溶解し、除去するために用いられ、成分(A)のポリアルキレングリコール誘導体と組み合わせることで化粧持ちのよいメークアップ化粧料に対する洗浄性が向上する。
【0034】
成分(C)の炭化水素油は、25℃で液状の炭素原子と水素原子からなる炭化水素化合物であれば特に限定されず、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテンなどが挙げられ、好ましくは流動イソパラフィン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテンである。また、これらの1種または2種以上を用いてもよい。
【0035】
成分(A)は、クレンジング化粧料に0.05〜20質量%、好ましくは3〜12質量%、含まれる。0.05質量%未満の場合は、洗浄性や耐水性が不十分で、20質量%を超えるとすすぎ性や保存安定性が不十分である。尚、成分(A)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
成分(B)はクレンジング化粧料に0.2〜60質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%の割合で含まれる。0.2質量%未満の場合は、耐水性、すすぎ性が不十分であり、60質量%を越えるとすすぎ性が悪化する。成分(B)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
成分(A)と(B)の質量比は4:1〜1:4で、好ましくは2:1〜1:2であり、この範囲内であれば耐水性や良好なすすぎ性を得ることができる。
【0038】
成分(C)はクレンジング化粧料に20〜80質量%、好ましくは40〜60質量%含まれる。20質量%未満の場合は洗浄性が不十分であり、80質量%を超えるとすすぎ性が悪化する。
【0039】
本発明のクレンジング化粧料は、メークアップ化粧料との馴染みを良くし洗浄性を向上させるために、成分(C)以外の油剤として25℃で液状の極性油を含有することが好ましい。極性油としては、アマニ油、オリーブ油、ホホバ油、アボガド油、アルモンド油、ゴマ油、ヒマワリ油、ナタネ油、大豆油、落花生油、サフラワー油などの植物性油、ミンク油、卵黄油、馬油などの動物性油、液状ラノリンなどの液状ロウ類、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸デシル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリルなどのエステル油、イソステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸、オクチルドデカノール、オレイルアルコールなどの高級アルコールなどが挙げられる。洗浄性や製剤の保存安定性の観点から好ましくはエステル油であり、これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用して用いてもよい。
極性油はクレンジング化粧料に5〜40質量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは10〜30質量%である。極性油が5質量%未満の場合は洗浄性が悪化する場合がある。
【0040】
本発明のクレンジング化粧料はさらに、洗い流し後の保湿効果を付与するため、クレンジング料に通常使用される任意の保湿剤を含有することができる。保湿剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グルコース、メチルグルコシド、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトールなどといった多価アルコールおよびそれらのアルキレンオキシド誘導体、キトサン、尿素、ヒアルロン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アスパラギン酸、アルギン酸ナトリウム、アラニン、グリシン、シスチン、システイン、セリン、アルギニン、リシン、アロエエキス、オイスターエキス、海藻エキス、カリンエキス、キイチゴエキス、キュウリエキス、クインスシードエキス、ゼニアオイエキス、プラセンタエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、リンゴエキス、ローヤルゼリー、ラクトフェリンなどが挙げられる。好ましくは、多価アルコールであり、これらの1種または2種以上を用いてもよい。
【0041】
本発明のクレンジング化粧料は、保存安定性、すすぎ性の観点から、さらに水を含有することが好ましい。水の含有量としては、0.1〜5質量%が好ましく、5質量%を超えると、製剤の保存安定性が悪化する場合がある。
【0042】
本発明のクレンジング化粧料はさらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、化粧品に一般的に用いられている各種成分、すなわち、ビタミン類、紫外線吸収剤、水溶性高分子、酸化防止剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、金属イオン封鎖剤、エタノール、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤、防腐剤、色素、粉体類などを配合することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を説明する。
本発明にかかるポリアルキレングリコール誘導体の合成例を示す。
合成例1:ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物1)
(1)ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管及び油水分離管を取り付けた3リットルの四つ口フラスコに、キシリトール700g、2,2−ジメトキシプロパン1291g、パラトルエンスルホン酸一水和物27mgを仕込み、反応系内を60〜90℃に保持し、2時間反応させた。反応終了後、副生したメタノール及び過剰分の2,2−ジメトキシプロパンを除去し、1014gのジイソプロピリデンキシリトール(化合物1a、R=R=メチル基)を得た。水酸基価は、240KOHmg/gであった。原料のキシリトールと化合物1aのIRチャートを比較したところ、化合物1aには3500cm−1付近の水酸基のピークが小さくなっており、代わりに2960cm−1、2870cm−1、1460cm−1、1380cm−1付近のピークが出現していることを確認した。
【0044】
【化3】

【0045】
(2)オキシブチレン化反応
化合物1aを235g、水酸化カリウム15.5gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2900gを滴下させ、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、2850gのポリオキシブチレン(40モル)ジイソプロピリデンキシリトール(化合物1b)を得た。水酸基価は、18.1KOHmg/gであった。
【0046】
【化4】

【0047】
(3)脱ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、化合物1bを700g、水70g、36%塩酸10gを仕込み、密閉状態で80℃、2時間脱ケタール化反応を行った後、窒素バブリングで水及びアセトンを系外に留去した。続いて10%水酸化カリウム水溶液でpH6〜7に合わせ、含有する水分を除去するために、100℃、1時間、減圧処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、650gのポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物1)を得た。
【0048】
【化5】

【0049】
なお、以上によって得られた化合物1についてGPC分析を行ったところ、メインピークの分子量は2989であった。分析条件は以下の通りである。
分析機器 :SHODEX GPC SYSTEM−11(昭和電工社製)
標準物質 :ポリエチレングリコール
サンプルサイズ :10%×100×0.001mL
溶離液 :THF
流速 :1.0mL/min
カラム :SHODEX KF804L(昭和電工社製)
カラムサイズ :I.D.8mm×30cm×3
カラム温度 :40℃
検出器 :RI×8
【0050】
また、化合物1bと化合物1のIR分析を比較すると、化合物1では3500cm−1付近の水酸基のピークが大きくなっていることから、目的物質が得られていることを確認した。
【0051】
本発明者らは、上記合成例に準じて、下記表1に示す組成のポリアルキレングリコール誘導体を調製した。
【0052】
【表1】

【0053】
<実施例1〜6および比較例1〜8>
表3、表4に示した成分を所定の比率で配合し、さらに共通添加成分として表2に示す共通添加成分を配合したクレンジング化粧料を下記の方法で調製した。
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
<調製法>
成分(A)、(B)、(C)、共通添加成分を表2、3、4に示した質量比率となるように室温にて均一になるまで混合し、透明液状のクレンジング化粧料を得た。
<評価法>
(a)洗浄性
パネラー10名の上腕内側部に化粧持ちに優れた口紅(INTEGRATE GRACY 資生堂社製)を直径2cmの円になるよう均一に塗布し、25℃、相対湿度50%の恒温恒湿室にて30分乾燥させた。本発明品および比較品50mgを5秒間指でなじませ、口紅の落ち具合をパネラー各人が下記評価基準にて4段階に評価した。10名のパネラーの評価の平均が3.0以上を◎、2.0以上3.0未満を○、1.0以上2.0未満を△、1.0未満を×とした。ただし、2名以上のパネラーが0点の評点をつけた場合は×とした。
4: 口紅との馴染みが良好で、かつ浮きが早いと判断。
3: 口紅との馴染みが良好と判断。
2: 口紅との馴染みがやや良好であると判断。
1: 口紅との馴染みがやや不良であると判断。
0: 口紅との馴染みが不良であると判断
(b)耐水性
上記(a)の評価を行う際、水に濡れた手で本発明品を使用した際の口紅の落ち具合をパネラー各人が下記評価基準で評価し、評点をつけた。10名のパネラーの評価の平均が3.0以上を◎、2.0以上3.0未満を○、1.0以上2.0未満を△、1.0未満を×とした。ただし、2名以上のパネラーが0点の評点をつけた場合は×とした。
4: 増粘や白濁が全く見られず、口紅との馴染みが良好であると判断。
3: 増粘や白濁がほとんど見られず、口紅との馴染みが良好であると判断。
2: やや増粘や白濁が見られるが、口紅との馴染みが良好であると判断。
1: 増粘や白濁が起こり、口紅との馴染みがやや不良であると判断。
0: 増粘や白濁により口紅との馴染みが不良であると判断。
(c)すすぎ性
上記(a)の評価を行った後、ぬるま湯で5秒間洗い流した直後の状態をパネラー各人が下記評価基準にて4段階に評価し、評点をつけた。10名のパネラーの評価の平均が3.0以上を◎、2.0以上3.0未満を○、1.0以上2.0未満を△、1.0未満を×とした。ただし、2名以上のパネラーが0点の評点をつけた場合は×とした。
4: 油分が完全に洗い流され、非常にさっぱりした感触であると判断。
3: 油分がほとんど洗い流され、さっぱりした感触であると判断。
2: 油分が多少残っており、ややべたつく感触であると判断。
1: 油分がかなり残っており、べたつく感触であると判断。
0: 油分を全く洗い流すことができず、かなりべたつく感触であると判断。
(d)保存安定性
組成物50gを100ml容スクリュー管に入れ、常温もしくは40℃の恒温槽で1ヶ月間静置した際の外観状態を目視にて観察し、以下の基準で判断した。
○: いずれの温度でも、分離や白濁が起こらず透明である。
×: いずれかの温度で、分離もしくは白濁が起こる。
【0058】
実施例1〜6より、本発明のクレンジング化粧料は、いずれもメークアップ化粧料を効果的に除去することができ、使用時に水が混入しても洗浄性を損なわず、洗い上がりのさっぱり感が良好で、保存安定性も良好であった。
【0059】
一方、比較例1〜8では十分な効果が得られていない。比較例1では、成分(A)の配合量が20質量%を超えており、成分(A)と成分(B)の質量比が4:1〜1:4の範囲外であるため、洗浄性には優れるものの耐水性、すすぎ性、保存安定性が不十分であった。比較例2では、成分(A’)のAO付加モル数nが10未満であるため洗浄性、耐水性が十分満足できるものではなかった。比較例3では、成分(A’)のEOとAOの合計に対するAOの割合が80質量%未満であるため、洗浄性、耐水性が不十分であった。比較例4では、AOの付加モル数nが60を超えているため、良好なすすぎ性が得られず、耐水性、保存安定性も十分満足できるものではなかった。比較例5では、成分(A’)が、トリグリセリン誘導体で4つの隣接する水酸基を有していないため、耐水性が十分ではなかった。比較例6では、成分(A’)が本発明品以外のポリオキシプロピレンソルビットで、4つの隣接する水酸基を有していないため、良好な洗浄性が得られず、耐水性も十分満足できるものではなかった。比較例7では、成分(A’)が本発明品以外のモノイソステアリン酸ジグリセリルで、4つの隣接する水酸基を有しておらず、親油基が脂肪酸残基であるため、洗浄性、耐水性は十分満足できるものではなかった。比較例8では成分(B)のHLBが9より小さいため、使用時に水が混入した場合白濁が生じ、耐水性、すすぎ性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料全量に対し、下記の成分(A)を0.05〜20質量%、成分(B)を0.2〜60質量%および成分(C)を20〜80質量%含有し、前記成分(A)と(B)の質量比が4:1〜1:4であることを特徴とする、クレンジング化粧料。
(A) 下記一般式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体
【化6】


(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。
mおよびnはそれぞれEOおよびAOの平均付加モル数で、mは0〜15、nは10〜60であり、EOとAOの合計に対するAOの質量比率が80〜100質量%である。
は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
(B) ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた非イオン性界面活性剤であって、オキシエチレン基の平均付加モル数が5〜40モル、エステルを構成する脂肪酸残基の炭素数が8〜22であり、HLBが9〜16である非イオン性界面活性剤
(C) 25℃で液状の炭化水素油
【請求項2】
前記成分(A)において、AOがオキシブチレン基であることを特徴とする、請求項1に記載のクレンジング化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)が、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれ、前記成分(B)のエステル化率が20〜50%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のクレンジング化粧料。

【公開番号】特開2012−158550(P2012−158550A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19418(P2011−19418)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】