クレーンのウィンチ取外し方法および上部旋回体
【課題】ブーム起伏ウィンチに繋がった起伏ワイヤロープを抜き取ることなく、かつブーム起伏部材を旋回フレームに付けたままの状態で、取外し対象ウィンチを取外しできるようにする。
【解決手段】マスト7を、その先端部7bを後方に倒伏した状態で、このマスト7の先端部7a側の部位とこの部位に対応する旋回フレーム2の部位とをマスト7が起立する方向に回動可能となるように連結して起立支点14を形成するとともに、このマスト7の基端部7aと旋回フレーム2との連結を解除する連結切換工程と、マスト7をその基端部7aが上昇する向きに起立支点14を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するマスト起立工程と、旋回フレーム2への取外し対象ウィンチ4、5の固定を解除する固定解除工程と、マスト7が起立姿勢にある状態で、固定を解除した取外し対象ウィンチ4、5をマスト7の下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含む。
【解決手段】マスト7を、その先端部7bを後方に倒伏した状態で、このマスト7の先端部7a側の部位とこの部位に対応する旋回フレーム2の部位とをマスト7が起立する方向に回動可能となるように連結して起立支点14を形成するとともに、このマスト7の基端部7aと旋回フレーム2との連結を解除する連結切換工程と、マスト7をその基端部7aが上昇する向きに起立支点14を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するマスト起立工程と、旋回フレーム2への取外し対象ウィンチ4、5の固定を解除する固定解除工程と、マスト7が起立姿勢にある状態で、固定を解除した取外し対象ウィンチ4、5をマスト7の下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクローラクレーンやホイールクレーン等の自走式のクレーンを構成する上部旋回体およびウィンチ取外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーンを例にとって説明する。
【0003】
クローラクレーンは、クローラ式の下部走行体上に、図9に示す上部旋回体1が縦軸まわりに旋回自在に搭載されて構成される。
【0004】
上記図9は上部旋回体を示す右側面図、図10はその平面図である。
【0005】
上部旋回体1は、旋回フレーム2をベースとして、図示しないブームを取付ける取付部3と、主巻、補巻、ブーム起伏の三つのウィンチ4,5,6と、ブームを起伏させるブーム起伏部材としてのマスト7と、その他の必要な設備が搭載されて構成される。
【0006】
上記マスト7は、基端部7aが旋回フレーム2の前側部2aに水平軸まわりに回動可能に取付けられる。上記ウィンチ4〜6は、ワイヤロープの干渉を避けるために、旋回フレーム2に対し前から順に主巻、補巻、ブーム起伏として間隔を置いて搭載される。そして、ブーム起伏ウィンチ6の起伏ワイヤロープは、旋回フレーム2の後部に設けた下部スプレッダ8のシーブと、ブーム起伏部材(マスト7)の上端部に設けた上部スプレッダ9のシーブとに簾状に掛け渡される(図10参照)。
【0007】
また、別の上部旋回体としては、図11に示すように、上記マスト7の代わりに、ガントリ圧縮部材31とガントリ引張部材32とを有するガントリ30を備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。上記ガントリ30は、ガントリ圧縮部材31の基端部31aが旋回フレーム2の前側部2aに、ガントリ引張部材32の基端部32aが旋回フレーム2の後側部2bにそれぞれ起伏方向に回動可能に連結され、ガントリ圧縮部材31の先端部31bとガントリ引張部材32の先端部32bとが相対回動可能に連結されてガントリ頂部33を構成するとともに、そのガントリ頂部33に前記ブーム起伏用ウィンチ6から引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダ(図に表れていない)がガントリ圧縮部材31の先端部31bに設けられた構成となっている。なお、図11中の3はブームを取付ける取付部、同4は主巻ウィンチ、同5は補巻ウィンチ、同6はブーム起伏ウィンチである。
【0008】
上述したようなクローラクレーンは、作業現場への移動に際して、トレーラ等による輸送のために分解される。その分解は、トレーラ等に許容される輸送重量を満足するように行われる。
【特許文献1】登録実用新案第2542385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記上部旋回体における輸送重量の軽減化のためには、重いブームを取り外すことは勿論であるが、上部旋回体が大重量となる大型や超大型のクレーンにおいては、ウィンチも取外しを必要とする場合がある。そのウィンチの取外しは、このウィンチを旋回フレームに止めた固定用ボルト4a、5aを取外し(図9参照)、前記ウィンチをクレーンで吊り降ろすように行われることになるが、このウィンチには一般に上から見てマストやガントリが一部重なるように配置されることが多く、その場合には、当該マストやガントリがウィンチを吊る作業の邪魔になるため、マストやガントリを外す必要がある。
【0010】
しかし、マストやガントリには上記ブーム起伏ウィンチ6に繋がった起伏ワイヤロープが掛け渡されているため、マストやガントリを外すに際して起伏ワイヤロープを抜き取ることが必要で非常に煩雑な長時間を要する作業が要求されるという課題があった。
【0011】
そこで本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、ブーム起伏ウィンチに繋がった起伏ワイヤロープを抜き取ることなく、かつブーム起伏部材(マストまたはガントリ)を旋回フレームに付けたままの状態で、この旋回フレームからブーム起伏ウィンチよりも前側に配置されるウィンチを取外しできるクレーンのウィンチ取外し方法およびその方法に用いられる上部旋回体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1のクレーンのウィンチ取外し方法は、ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、上記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられるとともに、基端部が上記旋回フレームの前側部に起伏方向に回動可能に連結され、上記先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するマストとを備えたクレーンの前記旋回フレームから、取外し対象ウィンチを取り外すための方法であって、前記マストを前記倒伏姿勢にした状態で、このマストの先端部側の部位とこの部位に対応する旋回フレームの部位とを当該マストが起立する方向に回動可能となるように連結して起立支点を形成するとともに、このマストの基端部と前記旋回フレームとの連結を解除する連結切換工程と、前記マストをその基端部が上昇する向きに前記起立支点を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するマスト起立工程と、前記旋回フレームへの前記取外し対象ウィンチの固定を解除する固定解除工程と、前記マストが前記起立姿勢にある状態で、前記固定を解除した前記取外し対象ウィンチを前記マストの下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項2のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立工程において前記マストを起立させる操作と、前記ウィンチ取外し工程において前記取外し対象ウィンチを前記旋回フレームから取外す操作とを共通の補助クレーンを用いて行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項2記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立工程におけるマスト起立姿勢の維持を、マストの先端部と旋回フレームの後側部とに両端部が連結されるリンクを用いて行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立工程では、前記マストと前記旋回フレームとの間にマスト起立装置を介設し、このマスト起立装置により前記マストを前記起立支点を中心として起立方向に回動させることを特徴とする。
【0016】
請求項5のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項4記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立装置として、前記マストのうち前記起立支点よりも先端部側の部位と前記旋回フレームとの間に伸縮可能な流体圧シリンダを介在させ、この流体圧シリンダの収縮によって前記マストを前記起立支点を中心として起立方向に回動させることを特徴とする。
【0017】
請求項6のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立工程では、前記マストと前記旋回フレームとの間に介設されて前記マストを起伏させるように伸縮するマスト起伏用シリンダを、前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより、当該マストの基端部を上昇させることを特徴とする。
【0018】
請求項7のクレーンの上部旋回体は、ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、上記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられるとともに、基端部が上記旋回フレームの前側部に起伏方向に回動可能に連結され、上記先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するマストと、前記マストの先端部側の部位と前記旋回フレームとにそれぞれ設けられ、前記マストを前記倒伏姿勢にした状態で前記マストが起立する方向に回動可能となるように相互連結され、その連結により前記マストの起立支点を形成する補助連結部とを備えるとともに、前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除可能となるようにこれらマストの基端部と旋回フレームとが連結され、前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除され、かつ、前記起立支点を中心として前記マストの基端部が上昇する向きに当該マストが起立方向に回動することにより、このマストの下方から前記ウィンチのうちの取外し対象ウィンチが前記マストの下方から取り去ることが可能となるように当該取外し対象ウィンチが配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8のクレーンの上部旋回体は、請求項7記載のクレーンの上部旋回体において、前記倒伏姿勢にあるマストと前記旋回フレームとの双方に着脱可能なマスト起立装置を備え、このマスト起立装置は前記マストと前記旋回フレームとの間に介在する状態で前記マストを前記起立支点を中心に起立方向に回動させるものであることを特徴とする。
【0020】
請求項9のクレーンのウィンチ取外し方法は、ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、この旋回フレームの前側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ圧縮部材及び前記旋回フレームの後側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ引張部材を有し、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記ガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されてガントリ頂部を構成するとともに、当該ガントリ頂部に前記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられ、前記ガントリ頂部が後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するガントリとを備えたクレーンの前記旋回フレームから、取外し対象ウィンチを取り外すための方法であって、前記ガントリを前記倒伏姿勢にした状態で、このガントリにおけるガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結を解除する連結切換工程と、前記ガントリ圧縮部材をその基端部が上昇する向きに前記ガントリ頂部を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するガントリ圧縮部材起立工程と、前記旋回フレームへの前記取外し対象ウィンチの固定を解除する固定解除工程と、前記ガントリ圧縮部材が前記起立姿勢にある状態で、前記固定を解除した前記取外し対象ウィンチを前記ガントリ圧縮部材の下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
請求項10のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立工程において前記ガントリ圧縮部材を起立させる操作と、前記ウィンチ取外し工程において前記取外し対象ウィンチを前記旋回フレームから取外す操作とを共通の補助クレーンを用いて行うことを特徴とする。
【0022】
請求項11のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項10記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立工程におけるガントリ圧縮部材の起立姿勢の維持を、ガントリ圧縮部材の先端部と旋回フレームの後側部とに両端部が連結されるリンクを用いて行うことを特徴とする。
【0023】
請求項12のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立工程では、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記旋回フレームとの間にガントリ圧縮部材起立装置を介設し、このガントリ圧縮部材起立装置により前記ガントリ圧縮部材を前記ガントリ頂部を中心として起立方向に回動させることを特徴とする。
【0024】
請求項13のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項12記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立装置として、前記ガントリ頂部と前記旋回フレームとの間に伸縮可能な流体圧シリンダを介在させ、この流体圧シリンダの収縮によって前記ガントリ圧縮部材を前記ガントリ頂部を中心として起立方向に回動させることを特徴とする。
【0025】
請求項14のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立工程では、前記ガントリ圧縮部材と前記旋回フレームとの間に介設されて前記ガントリ全体を起伏させるように伸縮するガントリ起伏用シリンダを、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより、当該ガントリ圧縮部材の基端部を上昇させることを特徴とする。
【0026】
請求項15のクレーンの上部旋回体は、ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、この旋回フレームの前側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ圧縮部材及び前記旋回フレームの後側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ引張部材を有し、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記ガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されてガントリ頂部を構成するとともに、当該ガントリ頂部に前記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられ、前記ガントリ頂部が後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するガントリとを備えるとともに、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除可能となるようにこれらガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとが連結され、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除され、かつ、前記ガントリ頂部を中心として前記ガントリ圧縮部材の基端部が上昇する向きに当該ガントリ圧縮部材の基端部が起立方向に回動することにより、このガントリ圧縮部材の下方から前記ウィンチのうちの取外し対象ウィンチを前記ガントリ圧縮部材の下方から取り去ることが可能となるように当該取外し対象ウィンチが配置されていることを特徴とする。
【0027】
請求項16のクレーンの上部旋回体は、請求項15記載のクレーンの上部旋回体において、前記ガントリ圧縮部材と前記旋回フレームとの間に介設されて前記ガントリ全体を起伏させるように伸縮するガントリ起伏用シリンダを備え、このガントリ起伏用シリンダは、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより当該ガントリ圧縮部材の基端部を上昇させるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1のクレーンのウィンチ取外し方法および請求項7のクレーンの上部旋回体による場合には、マストの先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で、マストの基端部と旋回フレームとの連結を解除し、マストの先端部と旋回フレームとを連結して起立支点を形成する。そして、起立支点を中心としてマストを回動させて起立させ、その起立姿勢を維持させる。その後或いは以前に、取外し対象ウィンチの旋回フレームに対する固定を解除し、その固定解除された取外し対象ウィンチをマストの下方から取り去ることで、ブーム起伏ウィンチに繋がった起伏ワイヤロープを抜き取ることなく、かつマストを旋回フレームに付けたままで取外し対象ウィンチの取外しが可能となる。
【0029】
請求項2による場合には、マストを起立させて起立姿勢を維持させるのに補助クレーンを用いると、取外し対象ウィンチを持ち上げて旋回フレームから取外す操作に別のクレーンが必要となるが、マスト起立姿勢の維持を補助クレーン以外の別手段により行うことで、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を、マストを起立させるのに用いた補助クレーンで行うことができ、1つの補助クレーンで済む。
【0030】
請求項3による場合には、マスト起立姿勢の維持をリンクで行うことにより、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0031】
請求項4による場合には、マスト起立装置により、起立支点を中心としたマストの起立方向への回動と、マスト起立姿勢の維持との両方を行うことができる。よって、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を含め、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0032】
請求項5による場合には、流体圧シリンダの収縮によって起立支点を中心としたマストの起立方向への回動を行うことができ、また流体圧シリンダを一定に維持させることでマスト起立姿勢の維持を行うことができる。
【0033】
請求項6による場合には、マストをその基端部を中心として起伏させるためのマスト起伏用シリンダであっても、マストの基端部と旋回フレームとの連結が解除された状態でマスト起伏用シリンダを伸張させることにより、起立支点を中心とするマスト基端部の上昇が可能となり、マストを起立させることができる。
【0034】
請求項8による場合には、マスト起立装置により、起立支点を中心としたマストの起立方向への回動と、マスト起立姿勢の維持との両方を行うことができる。よって、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を含め、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0035】
また、請求項9のクレーンのウィンチ取外し方法および請求項15のクレーンの上部旋回体による場合には、ガントリの頂部を後方に倒伏した倒伏姿勢で、ガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとの連結を解除する。これに伴って、ガントリ圧縮部材の先端部とガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されているガントリ頂部が起立支点を形成する。そして、その起立支点を中心としてガントリ圧縮部材を回動させて起立させ、その起立姿勢を維持させる。その後或いは以前に、取外し対象ウィンチの旋回フレームに対する固定を解除し、その固定解除された取外し対象ウィンチをガントリ圧縮部材の下方から取り去ることで、ブーム起伏ウィンチに繋がった起伏ワイヤロープを抜き取ることなく、かつガントリを旋回フレームに付けたままで取外し対象ウィンチの取外しが可能となる。
【0036】
請求項10による場合には、ガントリ圧縮部材を起立させて起立姿勢を維持させるのに補助クレーンを用いると、取外し対象ウィンチを持ち上げて旋回フレームから取外す操作に別のクレーンが必要となるが、マスト起立姿勢の維持を補助クレーン以外の別手段により行うことで、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を、ガントリ圧縮部材を起立させるのに用いた補助クレーンで行うことができ、1つの補助クレーンで済む。
【0037】
請求項11による場合には、ガントリ圧縮部材の起立姿勢の維持をリンクで行うことにより、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0038】
請求項12による場合には、ガントリ圧縮部材起立装置により、ガントリ頂部を中心としたガントリ圧縮部材の起立方向への回動と、ガントリ圧縮部材起立姿勢の維持との両方を行うことができる。よって、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を含め、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0039】
請求項13による場合には、流体圧シリンダの収縮によってガントリ頂部を中心としたガントリ圧縮部材の起立方向への回動を行うことができ、また流体圧シリンダを一定に維持させることでガントリ圧縮部材起立姿勢の維持を行うことができる。
【0040】
請求項14による場合には、ガントリ圧縮部材をその基端部を中心として起伏させるためのガントリ起伏用シリンダであっても、ガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとの連結が解除された状態でガントリ起伏用シリンダを伸張させることにより、ガントリ圧縮部材の基端部を中心とするガントリ圧縮部材の基端部の上昇が可能となり、ガントリ圧縮部材を起立させることができる。
【0041】
請求項16による場合には、ガントリ圧縮部材をその基端部を中心として起伏させるためのガントリ起伏用シリンダであっても、ガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとの連結が解除された状態でガントリ起伏用シリンダを伸張させることにより、ガントリ圧縮部材の基端部を中心とするガントリ圧縮部材の基端部の上昇が可能となり、ガントリ圧縮部材を起立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施形態では、クローラクレーン用の上部旋回体を適用対象として例にとっている。
【0043】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図であり、この上部旋回体にはブーム起伏部材としてマストが設けられている。図1において図9,10に示す部分と同一部分には同一符号を付している。
【0044】
この第1実施形態の上部旋回体1は、旋回フレーム2の前端部に、図示しないブームを取付ける取付部3が設けられ、その直ぐ後側に、マスト7の基端部7aを取付けるための第1ピン結合部10が設けられ、その第1ピン結合部10よりも後側に主巻ウィンチ4、補巻ウィンチ5およびブーム起伏ウィンチ6が順に設けられている。また、旋回フレーム2の後部に下部スプレッダ8が設けられ、マスト7の先端部7bには上部スプレッダ9が設けられていて、これら下部スプレッダ8と上部スプレッダ9との間には、ブーム起伏ウィンチ6に繋がった起伏ワイヤロープが掛け渡されている。マスト7の基端部7a寄りの部分と第1ピン結合部10とには後述するマスト起伏アーム23(図5参照)の両端が連結され、そのマスト起伏アーム23と第1ピン結合部10とには、後述するマスト起伏シリンダ22(図5参照)の両端が連結されるようになっていて、マスト起伏アーム23の両端およびマスト起伏シリンダ22の両端はそれぞれ着脱可能となっている。
【0045】
上記マスト7は、例えばマスト起伏シリンダ22により後側に倒伏可能であり、その倒伏状態において、その下方に取外し対象のウィンチ4、5が配置され、取外し対象ウィンチ4、5の上方がマスト7により一部覆われる。
【0046】
上記第1ピン結合部10は、旋回フレーム2の前部上側に設けた前側部2aに形成した結合孔11と、マスト7の基端部7aに形成した結合孔12とに挿入されるピン13を有する構成となっている。ピン13は着脱可能であって、このピン13を両結合孔11、12に挿入することで、第1ピン結合部10はピン結合される。そして、この状態において、マスト7は上記マスト起伏シリンダ22により第1ピン結合部10を中心として前後方向(起伏方向)に回動可能である。つまり、第1ピン結合部10は起伏支点として機能する。
【0047】
以上の各構成部分は従来同様であるが、この第1実施形態の上部旋回体1では、従来とは異なり、ブーム起伏ウィンチ6よりも後側、図示例では旋回フレーム2のほぼ後端部に、ピン結合状態にもピン結合を解いた状態にもできる第2ピン結合部14が設けられ、かつ旋回フレーム2の後側部2bとマスト7の先端部7bとに両端が着脱可能に連結されるとともにマスト7側を非連結状態にし得るマスト起立用の液体圧シリンダ20を具備している。これら第2ピン結合部14およびシリンダ20は、取外し対象ウィンチ4、5の取外し時にのみ使用される。第2ピン結合部14は、上記取外し時に、マスト7をその基端部7aが上昇する向きに回動させる中心となる起立支点として機能するものである。また、シリンダ20は、上記起立支点を中心として起立方向にマスト7を回動させるマスト起立装置として機能する。
【0048】
上記第2ピン結合部14は、図2に示すように、旋回フレーム2に設けた固定片15に形成した結合孔15aと、マスト7に設けた固定片16に形成した結合孔16aとに挿入されるピン17を有する構成であり、マスト7の先端部7bを図1に示すように後方に倒伏させた状態で両結合孔15a、16aの位置が合いかつ両結合孔15a、16aに対してピン17が着脱可能になっている。第2ピン結合部14は、ピン17の両結合孔15a、16aへの挿着によりピン結合状態になり、前記起立支点として機能する。そして、ピン17の抜脱によりピン結合を解いた状態になる。
【0049】
上記シリンダ20は、第1ピン結合部10のピン結合が解除され、かつ第2ピン結合部14がピン結合状態のときに、その第2ピン結合部14を中心としてマスト7の基端部7aを昇降させるように液体圧、例えば油圧を調整する機構のもので、図示例ではシリンダブロック20aを旋回フレーム2の後側部2bに取付け、シリンダロッド20bをマスト7の先端部7bに取付けてあり、シリンダロッド20bはマスト7に対して着脱可能となっている。
【0050】
次に、このような上部旋回体1から、ブーム起伏ウィンチ6よりも前側の取外し対象のウィンチである主巻ウィンチ4および補巻ウィンチ5を取外す方法につき説明する。
【0051】
まず、図1に示す状態にする。すなわち、下部走行体(図示せず)に対して分離されている旋回フレーム2から図示しないブームを取外し、マスト7を後方に倒伏した状態にし、第2ピン結合部14の両結合孔15a、16aにピン17を挿入してマスト7の先端部7b寄りの部分と旋回フレーム2とを第2ピン結合部14によりピン結合し、旋回フレーム2にシリンダブロック20a側が予め取付けられたシリンダ20のシリンダロッド20bをマスト7の先端部7bに取付ける。このような図1に示す状態から、後側に倒伏したマスト7の基端部7a側の第1ピン結合部10のピン13を外してその基端部7aと旋回フレーム2とのピン結合を解く(連結切換工程)。
【0052】
次に、図3に示すように、シリンダ20のシリンダロッド20bを矢印方向に退入させ、これによりマスト7を、第2ピン結合部(起立支点)14を中心として回動させて、マスト7の基端部7aを旋回フレーム2から上昇させた起立姿勢、図示例では傾斜状態に維持させる(マスト起立工程)。
【0053】
次に、上記傾斜状態を保持し、マスト7の基端部7aの下方に形成されている隙間Aを利用してウィンチ4、5の旋回フレーム2に対する固定を解除、具体的にはウィンチ4、5を旋回フレーム2に固定している固定用ボルト4a、5aを外す(固定解除工程)。なお、取外し対象ウィンチ4、5の旋回フレーム2に対する固定解除がマスト7を傾斜状態としないでも可能な場合には、この固定解除工程は、マスト起立工程或いは連結切換工程より前に行ってもよい。
【0054】
次に、上記起立姿勢を保持したまま、例えば図示しない補助クレーンを用いて取外し対象ウィンチ4を吊り、その取外し対象ウィンチ4を、マスト7の基端部7aの下方および前方に形成されている開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去り、続いて、取外し対象ウィンチ5に関しても同様に、吊り上げた後に、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る(ウィンチ取外し工程)。
【0055】
その後、輸送に適するように、例えばシリンダ20を作動させてマスト7を水平に戻すことなどを行う。
【0056】
なお、上述した実施形態においては、シリンダ20に関しシリンダロッド20bをマスト7に対して着脱可能となるように構成しているが、本発明はこれに限らず、シリンダブロック20aを旋回フレーム2に対して着脱可能にしてもよく、またはシリンダブロック20a側もシリンダロッド20b側も着脱可能にしてもよい。
【0057】
(第2実施形態)
図4は、この第2実施形態に係る上部旋回体1Aを示す右側面図である。なお、図4において図1に示す部分と同一部分には同一符号を付している。
【0058】
この上部旋回体1Aは、旋回フレーム2の後部とマスト7の上端部とに両端が取付けられる一定長さのリンク21を用いてマスト起立姿勢の維持を行う構成としている。他の構成部分は、第1実施形態と同様である。
【0059】
このリンク21は、両端の片方が旋回フレーム2の後部に連結用ボルト22aにて連結され、残り片方がマスト7の先端部7bに連結用ボルト22bにて連結されるようになっている。また、少なくとも一方の連結用ボルト22aまたは22bを外し、マスト7を補助クレーンで吊ることで、ピン結合状態の第1ピン結合部10または第2ピン結合部14を中心として揺動される。このとき、第1ピン結合部10と第2ピン結合部14の一方はピン結合を解除した状態にされる。
【0060】
このような上部旋回体1Aから取外し対象ウィンチ4、5を取外す場合は、以下のように行う。
【0061】
まず、図1に示す状態(但し、本実施形態ではシリンダ20は無い)にする。つまり、下部走行体(図示せず)から分離されている旋回フレーム2から図示しないブームを取外し、マスト7を後方に倒伏した状態にし、第2ピン結合部14の両結合孔15a、16aにピン17を挿入してマスト7の先端部7b寄りの部分と旋回フレーム2とを第2ピン結合部14によりピン結合する。このような図1に示す状態から、後方に倒伏したマスト7の基端部7a側の第1ピン結合部10のピン13を外してその基端部7aと旋回フレーム2とのピン結合を解く(連結切換工程)。
【0062】
次に、図示しない補助クレーンによりマスト7を吊上げて、第2ピン結合部14を中心としてマスト7を回動させ、マスト7の基端部7aを旋回フレーム2から上昇させ、リンク21の両端を旋回フレーム2の後側部2bとマスト7の先端部7bとに連結用ボルト22a、22bにより連結し、マスト7の基端部7aが旋回フレーム2から上昇した起立姿勢、図示例では傾斜状態に維持させる(マスト起立工程)。
【0063】
次に、隙間Aを利用して取外し対象ウィンチ4、5から固定用ボルト4a、5aを外して旋回フレーム2に対する固定を解除する(固定解除工程)。なお、この固定解除工程は、前同様に、マスト起立工程或いは連結切換工程より前に行ってもよい。
【0064】
次に、上記起立姿勢を保持したまま、例えば上記マスト起立工程で用いた補助クレーンまたは別のクレーンを用いて取外し対象ウィンチ4を吊り、その取外し対象ウィンチ4を、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る。続いて、取外し対象ウィンチ5に関しても同様に、吊り上げた後に、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る(ウィンチ取外し工程)。
【0065】
その後、輸送に適するように、例えばクレーンでマスト7を吊上げてリンク21の少なくとも一方の連結用ボルト22aまたは22bを外し、マスト7を水平に戻すことなどを行う。
【0066】
(第3実施形態)
図5は、この第3実施形態に係る上部旋回体1Bを示す右側面図である。なお、図5において図1に示す部分と同一部分には同一符号を付している。
【0067】
この上部旋回体1Bは、通常の使用時にマスト7を起伏させるためのマスト起伏シリンダ22およびマスト起伏アーム23を利用してウィンチを取外す構成としている。つまり、前述したシリンダ20やリンク21を使用しない構成としている。他の構成部分は、第1実施形態と同様である。上記マスト起伏シリンダ22は、マスト起伏アーム23を介してマスト7の基端部7a寄りの部分と旋回フレーム2とに連結されていて、その伸縮により第1ピン結合部10を中心にマスト7を揺動させるものである。
【0068】
この上部旋回体1Bから取外し対象ウィンチ4、5を取外す場合につき説明する。
【0069】
まず、図1に示す状態(但し、シリンダ20は無く、マスト起伏シリンダ22およびマスト起伏アーム23は存在する)にする。つまり、下部走行体(図示せず)から分離されている旋回フレーム2から図示しないブームを取外し、マスト7を後方に倒伏した状態にし、第2ピン結合部14の両結合孔15a、16aにピン17を挿入してマスト7の先端部7b寄りの部分と旋回フレーム2とを第2ピン結合部14によりピン結合する。また、マスト起伏シリンダ22およびマスト起伏アーム23は、輸送重量軽減化のための分解に伴って上部旋回体1Bから分離させている場合には取付けておく。このような図1に示す状態から、後方に倒伏したマスト7の基端部7a側の第1ピン結合部10のピン13を外してその基端部7aと旋回フレーム2とのピン結合を解く(連結切換工程)。
【0070】
次に、マスト起伏シリンダ22を作動させて第2ピン結合部14を中心としてマスト7を回動させ、マストの基端部7aを旋回フレーム2から上昇させた起立姿勢、図示例では傾斜状態に維持させる(マスト起立工程)。つまり、マスト起伏シリンダ22は、前記マスト起立装置として機能する。
【0071】
次に、隙間Aを利用して取外し対象ウィンチ4、5から固定用ボルト4a、5aを外して旋回フレーム2に対する固定を解除する(固定解除工程)。なお、この固定解除工程は、前同様に、マスト起立工程或いは連結切換工程より前に行ってもよい。
【0072】
次に、上記起立姿勢を保持したまま、例えば図示しない補助クレーンを用いて取外し対象ウィンチ4を吊り、その取外し対象ウィンチ4を、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去り、続いて、取外し対象ウィンチ5に関しても同様に、吊上げた後に、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る(ウィンチ取外し工程)。このウィンチ取外し工程において、図6に示すようにウィンチの幅W1がマスト7の幅方向両側のフレーム7cの間隔Wよりも大きい場合には、例えば吊上げている取外し対象ウィンチ4または5を鉛直軸回りに回して開放部分Bを挿通させればよい。
【0073】
その後、輸送に適するように、マスト起伏シリンダ22を作動させてマスト7を水平に戻すことなどを行う。
【0074】
なお、この第3実施形態ではマスト起伏シリンダおよびマスト起伏アームを有する上部旋回体を例に挙げているが、本発明はこれに限らず、マスト起伏アームを省略してマスト起伏シリンダのみでマストを起伏させる構成の上部旋回体にも同様に適用することができる。
【0075】
また、上述した第1〜第3実施形態では主巻ウィンチと補巻ウィンチの取外しを行う場合につき説明しているが、本発明はこれに限らない。具体的には、ブーム起伏ウィンチよりも前側に配置される他のウィンチ、例えばサードウィンチなどについても同様に適用できる。
【0076】
更に、上述した第1〜第3実施形態では旋回フレームとマストとをピン結合させる第2ピン結合部を旋回フレームのほぼ後端部に配置しているが、本発明はこれに限らず、ブーム起伏ウィンチよりも後側の任意の位置にしてもよい。但し、マストを起立姿勢とするに際し、旋回フレームの後端部にマストの先端部が当接しても、前記開放部分Bのマスト基端部と旋回フレームとの間からウィンチを取り去ることができるような位置にする必要がある。
【0077】
更にまた、上述した第1〜第3実施形態では旋回フレームとマストとをピン結合させる第2ピン結合部として、旋回フレーム側の固定片に形成した結合孔と、マスト側の固定片に形成した結合孔とにピンを挿入する構成のものを用いているが、本発明はこれに限らず、旋回フレームおよびマストの片方にピンを設け、他方にピン受け凹部を設けた構成としてもよいことは勿論である。
【0078】
(第4実施形態)
この第4実施形態は、第1〜第3実施形態のようにブーム起伏部材にマストを備えた上部旋回体とは異なり、ブーム起伏部材にガントリを備えた上部旋回体に対し、ウィンチ取外しを行う形態である。
【0079】
図7及び図8は共に、第4実施形態に係るガントリを備えた上部旋回体1Cを示す右側面図であり、図7はガントリを後方に倒伏した状態を示し、図8はウィンチを取外す状態を示す。なお、これら図7及び図8は、図11の同一部分に同一番号を付して表している。
【0080】
この上部旋回体1Cからの取外し対象ウィンチ4、5の取外しは、以下のように行われる。
【0081】
まず、図7に示す状態にする。つまり、下部走行体(図示せず)から分離されている旋回フレーム2から図示しないブームを取外し、ガントリ30を後方に倒伏した状態にする。つまり、ガントリ圧縮部材31を後方に倒伏させ、かつガントリ引張部材32の途中を前側に折り曲げて、ガントリ頂部33を後方に倒す。このとき、ガントリ圧縮部材31の基端部31aは旋回フレーム2の前側部2aに、ガントリ引張部材32の基端部32aは旋回フレーム2の後側部2bにそれぞれ起伏方向に回動可能に連結され、ガントリ圧縮部材31の先端部31bとガントリ引張部材32の先端部32bとはガントリ頂部33で相対回動可能に連結されている。加えて、ガントリ圧縮部材31により取外し対象ウィンチ4、5の一部が覆われている。また、ガントリ圧縮部材31と旋回フレーム2とに両端が回動可能に連結されたガントリ起伏シリンダ35を残しておく。
【0082】
続いて、このような図7に示す状態から、後方に倒伏したガントリ圧縮部材31の基端部31a側の第1ピン結合部10のピン13を外してその基端部31aと旋回フレーム2とのピン結合を解く(連結切換工程)。
【0083】
次に、ガントリ起伏シリンダ35を作動させてガントリ頂部33に連結された先端部31bを中心としてガントリ圧縮部材31を回動させ、ガントリ圧縮部材31の基端部31aを旋回フレーム2から上昇させた起立姿勢、図示例では傾斜状態に維持させる(ガントリ圧縮部材起立工程)。つまり、ガントリ起伏シリンダ35は、ガントリ圧縮部材起立装置として機能する。
【0084】
次に、隙間Aを利用して取外し対象ウィンチ4、5から固定用ボルト4a、5aを外して旋回フレーム2に対する固定を解除する(固定解除工程)。なお、この固定解除工程は、前同様に、マスト起立工程或いは連結切換工程より前に行ってもよい。
【0085】
次に、上記起立姿勢を保持したまま、例えば図示しない補助クレーンを用いて取外し対象ウィンチ4を吊り、その取外し対象ウィンチ4を、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去り、続いて、取外し対象ウィンチ5に関しても同様に、吊上げた後に、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る(ウィンチ取外し工程)。このウィンチ取外し工程において、図6に示すようにウィンチの幅W1がマスト7の幅方向両側のフレーム7cの間隔Wよりも大きい場合には、例えば吊上げている取外し対象ウィンチ4または5を鉛直軸回りに回して開放部分Bを挿通させればよい。
【0086】
その後、輸送に適するように、ガントリ起伏シリンダ35を作動させてガントリ圧縮部材31を水平に戻すことなどを行う。
【0087】
なお、この第4実施形態ではガントリ30を起伏させるためのガントリ起伏シリンダ35を用いて、ガントリ圧縮部材31の基端部31aを旋回フレーム2から上昇させた起立姿勢にする例を挙げているが、本発明はこれに限らない。例えば、図8に二点鎖線で示すように両端をガントリ頂部33と旋回フレーム2の後端の取付部2cとに取付けた液体圧シリンダ36を、ガントリ圧縮部材起立装置として用いてもよい。或いは、補助クレーンでガントリ圧縮部材31を起立姿勢にしていき、図示しないリンクの両端を、上記ガントリ頂部33と取付部2cとに取付けて、起立姿勢の維持を行う形態としてもよい。
【0088】
また、上述した説明ではブーム起伏ウィンチよりも前側に配置されるウィンチを取外し対象としているが、本発明はこれに限らない。例えば主巻と補巻ウィンチを取外しても輸送重量制限を超過する場合には、ブーム起伏ウィンチを回転駆動してスプレッダからロープをブーム起伏ウィンチに巻取り、その後にブーム起伏ウィンチを、他の取外し対象ウィンチと同様に取外すようにしても良い。また、マストを取外す場合は、マスト上端部側の上部スプレッダがピン結合によりマストに取付けられているとき、ブーム起伏ウィンチとスプレッダとの間のロープを巻き取らずに、上部スプレッダのマストに対するピン結合部分を外し、マストを取外すようにしても良い。
【0089】
更に、上述した第1〜第4実施形態ではクローラクレーンの上部旋回体に適用しているが、本発明はこれに限らず、オルタレーンクレーンのようなホイールクレーンの上部旋回体にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図である。
【図2】図1の上部旋回体に設けた第2ピン結合部の構成を示す右側面図である。
【図3】図1の上部旋回体から対象ウィンチを取外す際の説明図(右側面図)である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図である。
【図6】ウィンチの幅とマストの幅との一関係例を示す平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図であり、ガントリを後方に倒伏した状態を示す。
【図8】本発明の第4実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図であり、ウィンチを取外す状態を示す。
【図9】従来のマストを有する上部旋回体を示す右側面図である。
【図10】従来のマストを有する上部旋回体を示す平面図である。
【図11】従来のガントリを有する上部旋回体を示す右側面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 上部旋回体
2 旋回フレーム
4 主巻ウィンチ(対象ウィンチ)
5 補巻ウィンチ(対象ウィンチ)
6 ブーム起伏ウィンチ
7 マスト
7a 下端
10 第1ピン結合部
14 第2ピン結合部(起立支点)
20 マスト起立用の液体圧シリンダ
21 リンク
22 マスト起伏シリンダ
30 ガントリ
31 ガントリ圧縮部材
32 ガントリ引張部材
33 ガントリ頂部
35 ガントリ起伏シリンダ
36 液体圧シリンダ
【技術分野】
【0001】
本発明はクローラクレーンやホイールクレーン等の自走式のクレーンを構成する上部旋回体およびウィンチ取外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーンを例にとって説明する。
【0003】
クローラクレーンは、クローラ式の下部走行体上に、図9に示す上部旋回体1が縦軸まわりに旋回自在に搭載されて構成される。
【0004】
上記図9は上部旋回体を示す右側面図、図10はその平面図である。
【0005】
上部旋回体1は、旋回フレーム2をベースとして、図示しないブームを取付ける取付部3と、主巻、補巻、ブーム起伏の三つのウィンチ4,5,6と、ブームを起伏させるブーム起伏部材としてのマスト7と、その他の必要な設備が搭載されて構成される。
【0006】
上記マスト7は、基端部7aが旋回フレーム2の前側部2aに水平軸まわりに回動可能に取付けられる。上記ウィンチ4〜6は、ワイヤロープの干渉を避けるために、旋回フレーム2に対し前から順に主巻、補巻、ブーム起伏として間隔を置いて搭載される。そして、ブーム起伏ウィンチ6の起伏ワイヤロープは、旋回フレーム2の後部に設けた下部スプレッダ8のシーブと、ブーム起伏部材(マスト7)の上端部に設けた上部スプレッダ9のシーブとに簾状に掛け渡される(図10参照)。
【0007】
また、別の上部旋回体としては、図11に示すように、上記マスト7の代わりに、ガントリ圧縮部材31とガントリ引張部材32とを有するガントリ30を備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。上記ガントリ30は、ガントリ圧縮部材31の基端部31aが旋回フレーム2の前側部2aに、ガントリ引張部材32の基端部32aが旋回フレーム2の後側部2bにそれぞれ起伏方向に回動可能に連結され、ガントリ圧縮部材31の先端部31bとガントリ引張部材32の先端部32bとが相対回動可能に連結されてガントリ頂部33を構成するとともに、そのガントリ頂部33に前記ブーム起伏用ウィンチ6から引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダ(図に表れていない)がガントリ圧縮部材31の先端部31bに設けられた構成となっている。なお、図11中の3はブームを取付ける取付部、同4は主巻ウィンチ、同5は補巻ウィンチ、同6はブーム起伏ウィンチである。
【0008】
上述したようなクローラクレーンは、作業現場への移動に際して、トレーラ等による輸送のために分解される。その分解は、トレーラ等に許容される輸送重量を満足するように行われる。
【特許文献1】登録実用新案第2542385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記上部旋回体における輸送重量の軽減化のためには、重いブームを取り外すことは勿論であるが、上部旋回体が大重量となる大型や超大型のクレーンにおいては、ウィンチも取外しを必要とする場合がある。そのウィンチの取外しは、このウィンチを旋回フレームに止めた固定用ボルト4a、5aを取外し(図9参照)、前記ウィンチをクレーンで吊り降ろすように行われることになるが、このウィンチには一般に上から見てマストやガントリが一部重なるように配置されることが多く、その場合には、当該マストやガントリがウィンチを吊る作業の邪魔になるため、マストやガントリを外す必要がある。
【0010】
しかし、マストやガントリには上記ブーム起伏ウィンチ6に繋がった起伏ワイヤロープが掛け渡されているため、マストやガントリを外すに際して起伏ワイヤロープを抜き取ることが必要で非常に煩雑な長時間を要する作業が要求されるという課題があった。
【0011】
そこで本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、ブーム起伏ウィンチに繋がった起伏ワイヤロープを抜き取ることなく、かつブーム起伏部材(マストまたはガントリ)を旋回フレームに付けたままの状態で、この旋回フレームからブーム起伏ウィンチよりも前側に配置されるウィンチを取外しできるクレーンのウィンチ取外し方法およびその方法に用いられる上部旋回体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1のクレーンのウィンチ取外し方法は、ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、上記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられるとともに、基端部が上記旋回フレームの前側部に起伏方向に回動可能に連結され、上記先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するマストとを備えたクレーンの前記旋回フレームから、取外し対象ウィンチを取り外すための方法であって、前記マストを前記倒伏姿勢にした状態で、このマストの先端部側の部位とこの部位に対応する旋回フレームの部位とを当該マストが起立する方向に回動可能となるように連結して起立支点を形成するとともに、このマストの基端部と前記旋回フレームとの連結を解除する連結切換工程と、前記マストをその基端部が上昇する向きに前記起立支点を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するマスト起立工程と、前記旋回フレームへの前記取外し対象ウィンチの固定を解除する固定解除工程と、前記マストが前記起立姿勢にある状態で、前記固定を解除した前記取外し対象ウィンチを前記マストの下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項2のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立工程において前記マストを起立させる操作と、前記ウィンチ取外し工程において前記取外し対象ウィンチを前記旋回フレームから取外す操作とを共通の補助クレーンを用いて行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項2記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立工程におけるマスト起立姿勢の維持を、マストの先端部と旋回フレームの後側部とに両端部が連結されるリンクを用いて行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立工程では、前記マストと前記旋回フレームとの間にマスト起立装置を介設し、このマスト起立装置により前記マストを前記起立支点を中心として起立方向に回動させることを特徴とする。
【0016】
請求項5のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項4記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立装置として、前記マストのうち前記起立支点よりも先端部側の部位と前記旋回フレームとの間に伸縮可能な流体圧シリンダを介在させ、この流体圧シリンダの収縮によって前記マストを前記起立支点を中心として起立方向に回動させることを特徴とする。
【0017】
請求項6のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記マスト起立工程では、前記マストと前記旋回フレームとの間に介設されて前記マストを起伏させるように伸縮するマスト起伏用シリンダを、前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより、当該マストの基端部を上昇させることを特徴とする。
【0018】
請求項7のクレーンの上部旋回体は、ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、上記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられるとともに、基端部が上記旋回フレームの前側部に起伏方向に回動可能に連結され、上記先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するマストと、前記マストの先端部側の部位と前記旋回フレームとにそれぞれ設けられ、前記マストを前記倒伏姿勢にした状態で前記マストが起立する方向に回動可能となるように相互連結され、その連結により前記マストの起立支点を形成する補助連結部とを備えるとともに、前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除可能となるようにこれらマストの基端部と旋回フレームとが連結され、前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除され、かつ、前記起立支点を中心として前記マストの基端部が上昇する向きに当該マストが起立方向に回動することにより、このマストの下方から前記ウィンチのうちの取外し対象ウィンチが前記マストの下方から取り去ることが可能となるように当該取外し対象ウィンチが配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8のクレーンの上部旋回体は、請求項7記載のクレーンの上部旋回体において、前記倒伏姿勢にあるマストと前記旋回フレームとの双方に着脱可能なマスト起立装置を備え、このマスト起立装置は前記マストと前記旋回フレームとの間に介在する状態で前記マストを前記起立支点を中心に起立方向に回動させるものであることを特徴とする。
【0020】
請求項9のクレーンのウィンチ取外し方法は、ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、この旋回フレームの前側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ圧縮部材及び前記旋回フレームの後側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ引張部材を有し、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記ガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されてガントリ頂部を構成するとともに、当該ガントリ頂部に前記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられ、前記ガントリ頂部が後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するガントリとを備えたクレーンの前記旋回フレームから、取外し対象ウィンチを取り外すための方法であって、前記ガントリを前記倒伏姿勢にした状態で、このガントリにおけるガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結を解除する連結切換工程と、前記ガントリ圧縮部材をその基端部が上昇する向きに前記ガントリ頂部を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するガントリ圧縮部材起立工程と、前記旋回フレームへの前記取外し対象ウィンチの固定を解除する固定解除工程と、前記ガントリ圧縮部材が前記起立姿勢にある状態で、前記固定を解除した前記取外し対象ウィンチを前記ガントリ圧縮部材の下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
請求項10のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立工程において前記ガントリ圧縮部材を起立させる操作と、前記ウィンチ取外し工程において前記取外し対象ウィンチを前記旋回フレームから取外す操作とを共通の補助クレーンを用いて行うことを特徴とする。
【0022】
請求項11のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項10記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立工程におけるガントリ圧縮部材の起立姿勢の維持を、ガントリ圧縮部材の先端部と旋回フレームの後側部とに両端部が連結されるリンクを用いて行うことを特徴とする。
【0023】
請求項12のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立工程では、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記旋回フレームとの間にガントリ圧縮部材起立装置を介設し、このガントリ圧縮部材起立装置により前記ガントリ圧縮部材を前記ガントリ頂部を中心として起立方向に回動させることを特徴とする。
【0024】
請求項13のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項12記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立装置として、前記ガントリ頂部と前記旋回フレームとの間に伸縮可能な流体圧シリンダを介在させ、この流体圧シリンダの収縮によって前記ガントリ圧縮部材を前記ガントリ頂部を中心として起立方向に回動させることを特徴とする。
【0025】
請求項14のクレーンのウィンチ取外し方法は、請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、前記ガントリ圧縮部材起立工程では、前記ガントリ圧縮部材と前記旋回フレームとの間に介設されて前記ガントリ全体を起伏させるように伸縮するガントリ起伏用シリンダを、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより、当該ガントリ圧縮部材の基端部を上昇させることを特徴とする。
【0026】
請求項15のクレーンの上部旋回体は、ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、この旋回フレームの前側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ圧縮部材及び前記旋回フレームの後側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ引張部材を有し、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記ガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されてガントリ頂部を構成するとともに、当該ガントリ頂部に前記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられ、前記ガントリ頂部が後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するガントリとを備えるとともに、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除可能となるようにこれらガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとが連結され、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除され、かつ、前記ガントリ頂部を中心として前記ガントリ圧縮部材の基端部が上昇する向きに当該ガントリ圧縮部材の基端部が起立方向に回動することにより、このガントリ圧縮部材の下方から前記ウィンチのうちの取外し対象ウィンチを前記ガントリ圧縮部材の下方から取り去ることが可能となるように当該取外し対象ウィンチが配置されていることを特徴とする。
【0027】
請求項16のクレーンの上部旋回体は、請求項15記載のクレーンの上部旋回体において、前記ガントリ圧縮部材と前記旋回フレームとの間に介設されて前記ガントリ全体を起伏させるように伸縮するガントリ起伏用シリンダを備え、このガントリ起伏用シリンダは、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより当該ガントリ圧縮部材の基端部を上昇させるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1のクレーンのウィンチ取外し方法および請求項7のクレーンの上部旋回体による場合には、マストの先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で、マストの基端部と旋回フレームとの連結を解除し、マストの先端部と旋回フレームとを連結して起立支点を形成する。そして、起立支点を中心としてマストを回動させて起立させ、その起立姿勢を維持させる。その後或いは以前に、取外し対象ウィンチの旋回フレームに対する固定を解除し、その固定解除された取外し対象ウィンチをマストの下方から取り去ることで、ブーム起伏ウィンチに繋がった起伏ワイヤロープを抜き取ることなく、かつマストを旋回フレームに付けたままで取外し対象ウィンチの取外しが可能となる。
【0029】
請求項2による場合には、マストを起立させて起立姿勢を維持させるのに補助クレーンを用いると、取外し対象ウィンチを持ち上げて旋回フレームから取外す操作に別のクレーンが必要となるが、マスト起立姿勢の維持を補助クレーン以外の別手段により行うことで、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を、マストを起立させるのに用いた補助クレーンで行うことができ、1つの補助クレーンで済む。
【0030】
請求項3による場合には、マスト起立姿勢の維持をリンクで行うことにより、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0031】
請求項4による場合には、マスト起立装置により、起立支点を中心としたマストの起立方向への回動と、マスト起立姿勢の維持との両方を行うことができる。よって、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を含め、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0032】
請求項5による場合には、流体圧シリンダの収縮によって起立支点を中心としたマストの起立方向への回動を行うことができ、また流体圧シリンダを一定に維持させることでマスト起立姿勢の維持を行うことができる。
【0033】
請求項6による場合には、マストをその基端部を中心として起伏させるためのマスト起伏用シリンダであっても、マストの基端部と旋回フレームとの連結が解除された状態でマスト起伏用シリンダを伸張させることにより、起立支点を中心とするマスト基端部の上昇が可能となり、マストを起立させることができる。
【0034】
請求項8による場合には、マスト起立装置により、起立支点を中心としたマストの起立方向への回動と、マスト起立姿勢の維持との両方を行うことができる。よって、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を含め、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0035】
また、請求項9のクレーンのウィンチ取外し方法および請求項15のクレーンの上部旋回体による場合には、ガントリの頂部を後方に倒伏した倒伏姿勢で、ガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとの連結を解除する。これに伴って、ガントリ圧縮部材の先端部とガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されているガントリ頂部が起立支点を形成する。そして、その起立支点を中心としてガントリ圧縮部材を回動させて起立させ、その起立姿勢を維持させる。その後或いは以前に、取外し対象ウィンチの旋回フレームに対する固定を解除し、その固定解除された取外し対象ウィンチをガントリ圧縮部材の下方から取り去ることで、ブーム起伏ウィンチに繋がった起伏ワイヤロープを抜き取ることなく、かつガントリを旋回フレームに付けたままで取外し対象ウィンチの取外しが可能となる。
【0036】
請求項10による場合には、ガントリ圧縮部材を起立させて起立姿勢を維持させるのに補助クレーンを用いると、取外し対象ウィンチを持ち上げて旋回フレームから取外す操作に別のクレーンが必要となるが、マスト起立姿勢の維持を補助クレーン以外の別手段により行うことで、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を、ガントリ圧縮部材を起立させるのに用いた補助クレーンで行うことができ、1つの補助クレーンで済む。
【0037】
請求項11による場合には、ガントリ圧縮部材の起立姿勢の維持をリンクで行うことにより、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0038】
請求項12による場合には、ガントリ圧縮部材起立装置により、ガントリ頂部を中心としたガントリ圧縮部材の起立方向への回動と、ガントリ圧縮部材起立姿勢の維持との両方を行うことができる。よって、取外し対象ウィンチの旋回フレームからの取外し操作を含め、1つの補助クレーンで済ますことが可能になる。
【0039】
請求項13による場合には、流体圧シリンダの収縮によってガントリ頂部を中心としたガントリ圧縮部材の起立方向への回動を行うことができ、また流体圧シリンダを一定に維持させることでガントリ圧縮部材起立姿勢の維持を行うことができる。
【0040】
請求項14による場合には、ガントリ圧縮部材をその基端部を中心として起伏させるためのガントリ起伏用シリンダであっても、ガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとの連結が解除された状態でガントリ起伏用シリンダを伸張させることにより、ガントリ圧縮部材の基端部を中心とするガントリ圧縮部材の基端部の上昇が可能となり、ガントリ圧縮部材を起立させることができる。
【0041】
請求項16による場合には、ガントリ圧縮部材をその基端部を中心として起伏させるためのガントリ起伏用シリンダであっても、ガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとの連結が解除された状態でガントリ起伏用シリンダを伸張させることにより、ガントリ圧縮部材の基端部を中心とするガントリ圧縮部材の基端部の上昇が可能となり、ガントリ圧縮部材を起立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施形態では、クローラクレーン用の上部旋回体を適用対象として例にとっている。
【0043】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図であり、この上部旋回体にはブーム起伏部材としてマストが設けられている。図1において図9,10に示す部分と同一部分には同一符号を付している。
【0044】
この第1実施形態の上部旋回体1は、旋回フレーム2の前端部に、図示しないブームを取付ける取付部3が設けられ、その直ぐ後側に、マスト7の基端部7aを取付けるための第1ピン結合部10が設けられ、その第1ピン結合部10よりも後側に主巻ウィンチ4、補巻ウィンチ5およびブーム起伏ウィンチ6が順に設けられている。また、旋回フレーム2の後部に下部スプレッダ8が設けられ、マスト7の先端部7bには上部スプレッダ9が設けられていて、これら下部スプレッダ8と上部スプレッダ9との間には、ブーム起伏ウィンチ6に繋がった起伏ワイヤロープが掛け渡されている。マスト7の基端部7a寄りの部分と第1ピン結合部10とには後述するマスト起伏アーム23(図5参照)の両端が連結され、そのマスト起伏アーム23と第1ピン結合部10とには、後述するマスト起伏シリンダ22(図5参照)の両端が連結されるようになっていて、マスト起伏アーム23の両端およびマスト起伏シリンダ22の両端はそれぞれ着脱可能となっている。
【0045】
上記マスト7は、例えばマスト起伏シリンダ22により後側に倒伏可能であり、その倒伏状態において、その下方に取外し対象のウィンチ4、5が配置され、取外し対象ウィンチ4、5の上方がマスト7により一部覆われる。
【0046】
上記第1ピン結合部10は、旋回フレーム2の前部上側に設けた前側部2aに形成した結合孔11と、マスト7の基端部7aに形成した結合孔12とに挿入されるピン13を有する構成となっている。ピン13は着脱可能であって、このピン13を両結合孔11、12に挿入することで、第1ピン結合部10はピン結合される。そして、この状態において、マスト7は上記マスト起伏シリンダ22により第1ピン結合部10を中心として前後方向(起伏方向)に回動可能である。つまり、第1ピン結合部10は起伏支点として機能する。
【0047】
以上の各構成部分は従来同様であるが、この第1実施形態の上部旋回体1では、従来とは異なり、ブーム起伏ウィンチ6よりも後側、図示例では旋回フレーム2のほぼ後端部に、ピン結合状態にもピン結合を解いた状態にもできる第2ピン結合部14が設けられ、かつ旋回フレーム2の後側部2bとマスト7の先端部7bとに両端が着脱可能に連結されるとともにマスト7側を非連結状態にし得るマスト起立用の液体圧シリンダ20を具備している。これら第2ピン結合部14およびシリンダ20は、取外し対象ウィンチ4、5の取外し時にのみ使用される。第2ピン結合部14は、上記取外し時に、マスト7をその基端部7aが上昇する向きに回動させる中心となる起立支点として機能するものである。また、シリンダ20は、上記起立支点を中心として起立方向にマスト7を回動させるマスト起立装置として機能する。
【0048】
上記第2ピン結合部14は、図2に示すように、旋回フレーム2に設けた固定片15に形成した結合孔15aと、マスト7に設けた固定片16に形成した結合孔16aとに挿入されるピン17を有する構成であり、マスト7の先端部7bを図1に示すように後方に倒伏させた状態で両結合孔15a、16aの位置が合いかつ両結合孔15a、16aに対してピン17が着脱可能になっている。第2ピン結合部14は、ピン17の両結合孔15a、16aへの挿着によりピン結合状態になり、前記起立支点として機能する。そして、ピン17の抜脱によりピン結合を解いた状態になる。
【0049】
上記シリンダ20は、第1ピン結合部10のピン結合が解除され、かつ第2ピン結合部14がピン結合状態のときに、その第2ピン結合部14を中心としてマスト7の基端部7aを昇降させるように液体圧、例えば油圧を調整する機構のもので、図示例ではシリンダブロック20aを旋回フレーム2の後側部2bに取付け、シリンダロッド20bをマスト7の先端部7bに取付けてあり、シリンダロッド20bはマスト7に対して着脱可能となっている。
【0050】
次に、このような上部旋回体1から、ブーム起伏ウィンチ6よりも前側の取外し対象のウィンチである主巻ウィンチ4および補巻ウィンチ5を取外す方法につき説明する。
【0051】
まず、図1に示す状態にする。すなわち、下部走行体(図示せず)に対して分離されている旋回フレーム2から図示しないブームを取外し、マスト7を後方に倒伏した状態にし、第2ピン結合部14の両結合孔15a、16aにピン17を挿入してマスト7の先端部7b寄りの部分と旋回フレーム2とを第2ピン結合部14によりピン結合し、旋回フレーム2にシリンダブロック20a側が予め取付けられたシリンダ20のシリンダロッド20bをマスト7の先端部7bに取付ける。このような図1に示す状態から、後側に倒伏したマスト7の基端部7a側の第1ピン結合部10のピン13を外してその基端部7aと旋回フレーム2とのピン結合を解く(連結切換工程)。
【0052】
次に、図3に示すように、シリンダ20のシリンダロッド20bを矢印方向に退入させ、これによりマスト7を、第2ピン結合部(起立支点)14を中心として回動させて、マスト7の基端部7aを旋回フレーム2から上昇させた起立姿勢、図示例では傾斜状態に維持させる(マスト起立工程)。
【0053】
次に、上記傾斜状態を保持し、マスト7の基端部7aの下方に形成されている隙間Aを利用してウィンチ4、5の旋回フレーム2に対する固定を解除、具体的にはウィンチ4、5を旋回フレーム2に固定している固定用ボルト4a、5aを外す(固定解除工程)。なお、取外し対象ウィンチ4、5の旋回フレーム2に対する固定解除がマスト7を傾斜状態としないでも可能な場合には、この固定解除工程は、マスト起立工程或いは連結切換工程より前に行ってもよい。
【0054】
次に、上記起立姿勢を保持したまま、例えば図示しない補助クレーンを用いて取外し対象ウィンチ4を吊り、その取外し対象ウィンチ4を、マスト7の基端部7aの下方および前方に形成されている開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去り、続いて、取外し対象ウィンチ5に関しても同様に、吊り上げた後に、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る(ウィンチ取外し工程)。
【0055】
その後、輸送に適するように、例えばシリンダ20を作動させてマスト7を水平に戻すことなどを行う。
【0056】
なお、上述した実施形態においては、シリンダ20に関しシリンダロッド20bをマスト7に対して着脱可能となるように構成しているが、本発明はこれに限らず、シリンダブロック20aを旋回フレーム2に対して着脱可能にしてもよく、またはシリンダブロック20a側もシリンダロッド20b側も着脱可能にしてもよい。
【0057】
(第2実施形態)
図4は、この第2実施形態に係る上部旋回体1Aを示す右側面図である。なお、図4において図1に示す部分と同一部分には同一符号を付している。
【0058】
この上部旋回体1Aは、旋回フレーム2の後部とマスト7の上端部とに両端が取付けられる一定長さのリンク21を用いてマスト起立姿勢の維持を行う構成としている。他の構成部分は、第1実施形態と同様である。
【0059】
このリンク21は、両端の片方が旋回フレーム2の後部に連結用ボルト22aにて連結され、残り片方がマスト7の先端部7bに連結用ボルト22bにて連結されるようになっている。また、少なくとも一方の連結用ボルト22aまたは22bを外し、マスト7を補助クレーンで吊ることで、ピン結合状態の第1ピン結合部10または第2ピン結合部14を中心として揺動される。このとき、第1ピン結合部10と第2ピン結合部14の一方はピン結合を解除した状態にされる。
【0060】
このような上部旋回体1Aから取外し対象ウィンチ4、5を取外す場合は、以下のように行う。
【0061】
まず、図1に示す状態(但し、本実施形態ではシリンダ20は無い)にする。つまり、下部走行体(図示せず)から分離されている旋回フレーム2から図示しないブームを取外し、マスト7を後方に倒伏した状態にし、第2ピン結合部14の両結合孔15a、16aにピン17を挿入してマスト7の先端部7b寄りの部分と旋回フレーム2とを第2ピン結合部14によりピン結合する。このような図1に示す状態から、後方に倒伏したマスト7の基端部7a側の第1ピン結合部10のピン13を外してその基端部7aと旋回フレーム2とのピン結合を解く(連結切換工程)。
【0062】
次に、図示しない補助クレーンによりマスト7を吊上げて、第2ピン結合部14を中心としてマスト7を回動させ、マスト7の基端部7aを旋回フレーム2から上昇させ、リンク21の両端を旋回フレーム2の後側部2bとマスト7の先端部7bとに連結用ボルト22a、22bにより連結し、マスト7の基端部7aが旋回フレーム2から上昇した起立姿勢、図示例では傾斜状態に維持させる(マスト起立工程)。
【0063】
次に、隙間Aを利用して取外し対象ウィンチ4、5から固定用ボルト4a、5aを外して旋回フレーム2に対する固定を解除する(固定解除工程)。なお、この固定解除工程は、前同様に、マスト起立工程或いは連結切換工程より前に行ってもよい。
【0064】
次に、上記起立姿勢を保持したまま、例えば上記マスト起立工程で用いた補助クレーンまたは別のクレーンを用いて取外し対象ウィンチ4を吊り、その取外し対象ウィンチ4を、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る。続いて、取外し対象ウィンチ5に関しても同様に、吊り上げた後に、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る(ウィンチ取外し工程)。
【0065】
その後、輸送に適するように、例えばクレーンでマスト7を吊上げてリンク21の少なくとも一方の連結用ボルト22aまたは22bを外し、マスト7を水平に戻すことなどを行う。
【0066】
(第3実施形態)
図5は、この第3実施形態に係る上部旋回体1Bを示す右側面図である。なお、図5において図1に示す部分と同一部分には同一符号を付している。
【0067】
この上部旋回体1Bは、通常の使用時にマスト7を起伏させるためのマスト起伏シリンダ22およびマスト起伏アーム23を利用してウィンチを取外す構成としている。つまり、前述したシリンダ20やリンク21を使用しない構成としている。他の構成部分は、第1実施形態と同様である。上記マスト起伏シリンダ22は、マスト起伏アーム23を介してマスト7の基端部7a寄りの部分と旋回フレーム2とに連結されていて、その伸縮により第1ピン結合部10を中心にマスト7を揺動させるものである。
【0068】
この上部旋回体1Bから取外し対象ウィンチ4、5を取外す場合につき説明する。
【0069】
まず、図1に示す状態(但し、シリンダ20は無く、マスト起伏シリンダ22およびマスト起伏アーム23は存在する)にする。つまり、下部走行体(図示せず)から分離されている旋回フレーム2から図示しないブームを取外し、マスト7を後方に倒伏した状態にし、第2ピン結合部14の両結合孔15a、16aにピン17を挿入してマスト7の先端部7b寄りの部分と旋回フレーム2とを第2ピン結合部14によりピン結合する。また、マスト起伏シリンダ22およびマスト起伏アーム23は、輸送重量軽減化のための分解に伴って上部旋回体1Bから分離させている場合には取付けておく。このような図1に示す状態から、後方に倒伏したマスト7の基端部7a側の第1ピン結合部10のピン13を外してその基端部7aと旋回フレーム2とのピン結合を解く(連結切換工程)。
【0070】
次に、マスト起伏シリンダ22を作動させて第2ピン結合部14を中心としてマスト7を回動させ、マストの基端部7aを旋回フレーム2から上昇させた起立姿勢、図示例では傾斜状態に維持させる(マスト起立工程)。つまり、マスト起伏シリンダ22は、前記マスト起立装置として機能する。
【0071】
次に、隙間Aを利用して取外し対象ウィンチ4、5から固定用ボルト4a、5aを外して旋回フレーム2に対する固定を解除する(固定解除工程)。なお、この固定解除工程は、前同様に、マスト起立工程或いは連結切換工程より前に行ってもよい。
【0072】
次に、上記起立姿勢を保持したまま、例えば図示しない補助クレーンを用いて取外し対象ウィンチ4を吊り、その取外し対象ウィンチ4を、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去り、続いて、取外し対象ウィンチ5に関しても同様に、吊上げた後に、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る(ウィンチ取外し工程)。このウィンチ取外し工程において、図6に示すようにウィンチの幅W1がマスト7の幅方向両側のフレーム7cの間隔Wよりも大きい場合には、例えば吊上げている取外し対象ウィンチ4または5を鉛直軸回りに回して開放部分Bを挿通させればよい。
【0073】
その後、輸送に適するように、マスト起伏シリンダ22を作動させてマスト7を水平に戻すことなどを行う。
【0074】
なお、この第3実施形態ではマスト起伏シリンダおよびマスト起伏アームを有する上部旋回体を例に挙げているが、本発明はこれに限らず、マスト起伏アームを省略してマスト起伏シリンダのみでマストを起伏させる構成の上部旋回体にも同様に適用することができる。
【0075】
また、上述した第1〜第3実施形態では主巻ウィンチと補巻ウィンチの取外しを行う場合につき説明しているが、本発明はこれに限らない。具体的には、ブーム起伏ウィンチよりも前側に配置される他のウィンチ、例えばサードウィンチなどについても同様に適用できる。
【0076】
更に、上述した第1〜第3実施形態では旋回フレームとマストとをピン結合させる第2ピン結合部を旋回フレームのほぼ後端部に配置しているが、本発明はこれに限らず、ブーム起伏ウィンチよりも後側の任意の位置にしてもよい。但し、マストを起立姿勢とするに際し、旋回フレームの後端部にマストの先端部が当接しても、前記開放部分Bのマスト基端部と旋回フレームとの間からウィンチを取り去ることができるような位置にする必要がある。
【0077】
更にまた、上述した第1〜第3実施形態では旋回フレームとマストとをピン結合させる第2ピン結合部として、旋回フレーム側の固定片に形成した結合孔と、マスト側の固定片に形成した結合孔とにピンを挿入する構成のものを用いているが、本発明はこれに限らず、旋回フレームおよびマストの片方にピンを設け、他方にピン受け凹部を設けた構成としてもよいことは勿論である。
【0078】
(第4実施形態)
この第4実施形態は、第1〜第3実施形態のようにブーム起伏部材にマストを備えた上部旋回体とは異なり、ブーム起伏部材にガントリを備えた上部旋回体に対し、ウィンチ取外しを行う形態である。
【0079】
図7及び図8は共に、第4実施形態に係るガントリを備えた上部旋回体1Cを示す右側面図であり、図7はガントリを後方に倒伏した状態を示し、図8はウィンチを取外す状態を示す。なお、これら図7及び図8は、図11の同一部分に同一番号を付して表している。
【0080】
この上部旋回体1Cからの取外し対象ウィンチ4、5の取外しは、以下のように行われる。
【0081】
まず、図7に示す状態にする。つまり、下部走行体(図示せず)から分離されている旋回フレーム2から図示しないブームを取外し、ガントリ30を後方に倒伏した状態にする。つまり、ガントリ圧縮部材31を後方に倒伏させ、かつガントリ引張部材32の途中を前側に折り曲げて、ガントリ頂部33を後方に倒す。このとき、ガントリ圧縮部材31の基端部31aは旋回フレーム2の前側部2aに、ガントリ引張部材32の基端部32aは旋回フレーム2の後側部2bにそれぞれ起伏方向に回動可能に連結され、ガントリ圧縮部材31の先端部31bとガントリ引張部材32の先端部32bとはガントリ頂部33で相対回動可能に連結されている。加えて、ガントリ圧縮部材31により取外し対象ウィンチ4、5の一部が覆われている。また、ガントリ圧縮部材31と旋回フレーム2とに両端が回動可能に連結されたガントリ起伏シリンダ35を残しておく。
【0082】
続いて、このような図7に示す状態から、後方に倒伏したガントリ圧縮部材31の基端部31a側の第1ピン結合部10のピン13を外してその基端部31aと旋回フレーム2とのピン結合を解く(連結切換工程)。
【0083】
次に、ガントリ起伏シリンダ35を作動させてガントリ頂部33に連結された先端部31bを中心としてガントリ圧縮部材31を回動させ、ガントリ圧縮部材31の基端部31aを旋回フレーム2から上昇させた起立姿勢、図示例では傾斜状態に維持させる(ガントリ圧縮部材起立工程)。つまり、ガントリ起伏シリンダ35は、ガントリ圧縮部材起立装置として機能する。
【0084】
次に、隙間Aを利用して取外し対象ウィンチ4、5から固定用ボルト4a、5aを外して旋回フレーム2に対する固定を解除する(固定解除工程)。なお、この固定解除工程は、前同様に、マスト起立工程或いは連結切換工程より前に行ってもよい。
【0085】
次に、上記起立姿勢を保持したまま、例えば図示しない補助クレーンを用いて取外し対象ウィンチ4を吊り、その取外し対象ウィンチ4を、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去り、続いて、取外し対象ウィンチ5に関しても同様に、吊上げた後に、開放部分Bを通じて旋回フレーム2から取り去る(ウィンチ取外し工程)。このウィンチ取外し工程において、図6に示すようにウィンチの幅W1がマスト7の幅方向両側のフレーム7cの間隔Wよりも大きい場合には、例えば吊上げている取外し対象ウィンチ4または5を鉛直軸回りに回して開放部分Bを挿通させればよい。
【0086】
その後、輸送に適するように、ガントリ起伏シリンダ35を作動させてガントリ圧縮部材31を水平に戻すことなどを行う。
【0087】
なお、この第4実施形態ではガントリ30を起伏させるためのガントリ起伏シリンダ35を用いて、ガントリ圧縮部材31の基端部31aを旋回フレーム2から上昇させた起立姿勢にする例を挙げているが、本発明はこれに限らない。例えば、図8に二点鎖線で示すように両端をガントリ頂部33と旋回フレーム2の後端の取付部2cとに取付けた液体圧シリンダ36を、ガントリ圧縮部材起立装置として用いてもよい。或いは、補助クレーンでガントリ圧縮部材31を起立姿勢にしていき、図示しないリンクの両端を、上記ガントリ頂部33と取付部2cとに取付けて、起立姿勢の維持を行う形態としてもよい。
【0088】
また、上述した説明ではブーム起伏ウィンチよりも前側に配置されるウィンチを取外し対象としているが、本発明はこれに限らない。例えば主巻と補巻ウィンチを取外しても輸送重量制限を超過する場合には、ブーム起伏ウィンチを回転駆動してスプレッダからロープをブーム起伏ウィンチに巻取り、その後にブーム起伏ウィンチを、他の取外し対象ウィンチと同様に取外すようにしても良い。また、マストを取外す場合は、マスト上端部側の上部スプレッダがピン結合によりマストに取付けられているとき、ブーム起伏ウィンチとスプレッダとの間のロープを巻き取らずに、上部スプレッダのマストに対するピン結合部分を外し、マストを取外すようにしても良い。
【0089】
更に、上述した第1〜第4実施形態ではクローラクレーンの上部旋回体に適用しているが、本発明はこれに限らず、オルタレーンクレーンのようなホイールクレーンの上部旋回体にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図である。
【図2】図1の上部旋回体に設けた第2ピン結合部の構成を示す右側面図である。
【図3】図1の上部旋回体から対象ウィンチを取外す際の説明図(右側面図)である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図である。
【図6】ウィンチの幅とマストの幅との一関係例を示す平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図であり、ガントリを後方に倒伏した状態を示す。
【図8】本発明の第4実施形態に係る上部旋回体を示す右側面図であり、ウィンチを取外す状態を示す。
【図9】従来のマストを有する上部旋回体を示す右側面図である。
【図10】従来のマストを有する上部旋回体を示す平面図である。
【図11】従来のガントリを有する上部旋回体を示す右側面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 上部旋回体
2 旋回フレーム
4 主巻ウィンチ(対象ウィンチ)
5 補巻ウィンチ(対象ウィンチ)
6 ブーム起伏ウィンチ
7 マスト
7a 下端
10 第1ピン結合部
14 第2ピン結合部(起立支点)
20 マスト起立用の液体圧シリンダ
21 リンク
22 マスト起伏シリンダ
30 ガントリ
31 ガントリ圧縮部材
32 ガントリ引張部材
33 ガントリ頂部
35 ガントリ起伏シリンダ
36 液体圧シリンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、上記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられるとともに、基端部が上記旋回フレームの前側部に起伏方向に回動可能に連結され、上記先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するマストとを備えたクレーンの前記旋回フレームから、取外し対象ウィンチを取り外すための方法であって、
前記マストを前記倒伏姿勢にした状態で、このマストの先端部側の部位とこの部位に対応する旋回フレームの部位とを当該マストが起立する方向に回動可能となるように連結して起立支点を形成するとともに、このマストの基端部と前記旋回フレームとの連結を解除する連結切換工程と、
前記マストをその基端部が上昇する向きに前記起立支点を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するマスト起立工程と、
前記旋回フレームへの前記取外し対象ウィンチの固定を解除する固定解除工程と、
前記マストが前記起立姿勢にある状態で、前記固定を解除した前記取外し対象ウィンチを前記マストの下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含むことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項2】
請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立工程において前記マストを起立させる操作と、前記ウィンチ取外し工程において前記取外し対象ウィンチを前記旋回フレームから取外す操作とを共通の補助クレーンを用いて行うことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項3】
請求項2記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立工程におけるマスト起立姿勢の維持を、マストの先端部と旋回フレームの後側部とに両端部が連結されるリンクを用いて行うことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項4】
請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立工程では、前記マストと前記旋回フレームとの間にマスト起立装置を介設し、このマスト起立装置により前記マストを前記起立支点を中心として起立方向に回動させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項5】
請求項4記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立装置として、前記マストのうち前記起立支点よりも先端部側の部位と前記旋回フレームとの間に伸縮可能な流体圧シリンダを介在させ、この流体圧シリンダの収縮によって前記マストを前記起立支点を中心として起立方向に回動させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項6】
請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立工程では、前記マストと前記旋回フレームとの間に介設されて前記マストを起伏させるように伸縮するマスト起伏用シリンダを、前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより、当該マストの基端部を上昇させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項7】
ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、
上記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられるとともに、基端部が上記旋回フレームの前側部に起伏方向に回動可能に連結され、上記先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するマストと、
前記マストの先端部側の部位と前記旋回フレームとにそれぞれ設けられ、前記マストを前記倒伏姿勢にした状態で前記マストが起立する方向に回動可能となるように相互連結され、その連結により前記マストの起立支点を形成する補助連結部とを備えるとともに、
前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除可能となるようにこれらマストの基端部と旋回フレームとが連結され、
前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除され、かつ、前記起立支点を中心として前記マストの基端部が上昇する向きに当該マストが起立方向に回動することにより、このマストの下方から前記ウィンチのうちの取外し対象ウィンチが前記マストの下方から取り去ることが可能となるように当該取外し対象ウィンチが配置されていることを特徴とするクレーンの上部旋回体。
【請求項8】
請求項7記載のクレーンの上部旋回体において、
前記倒伏姿勢にあるマストと前記旋回フレームとの双方に着脱可能なマスト起立装置を備え、このマスト起立装置は前記マストと前記旋回フレームとの間に介在する状態で前記マストを前記起立支点を中心に起立方向に回動させるものであることを特徴とするクレーンの上部旋回体。
【請求項9】
ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、この旋回フレームの前側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ圧縮部材及び前記旋回フレームの後側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ引張部材を有し、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記ガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されてガントリ頂部を構成するとともに、当該ガントリ頂部に前記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられ、前記ガントリ頂部が後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するガントリとを備えたクレーンの前記旋回フレームから、取外し対象ウィンチを取り外すための方法であって、
前記ガントリを前記倒伏姿勢にした状態で、このガントリにおけるガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結を解除する連結切換工程と、
前記ガントリ圧縮部材をその基端部が上昇する向きに前記ガントリ頂部を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するガントリ圧縮部材起立工程と、
前記旋回フレームへの前記取外し対象ウィンチの固定を解除する固定解除工程と、
前記ガントリ圧縮部材が前記起立姿勢にある状態で、前記固定を解除した前記取外し対象ウィンチを前記ガントリ圧縮部材の下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含むことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項10】
請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立工程において前記ガントリ圧縮部材を起立させる操作と、前記ウィンチ取外し工程において前記取外し対象ウィンチを前記旋回フレームから取外す操作とを共通の補助クレーンを用いて行うことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項11】
請求項10記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立工程におけるガントリ圧縮部材の起立姿勢の維持を、ガントリ圧縮部材の先端部と旋回フレームの後側部とに両端部が連結されるリンクを用いて行うことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項12】
請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立工程では、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記旋回フレームとの間にガントリ圧縮部材起立装置を介設し、このガントリ圧縮部材起立装置により前記ガントリ圧縮部材を前記ガントリ頂部を中心として起立方向に回動させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項13】
請求項12記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立装置として、前記ガントリ頂部と前記旋回フレームとの間に伸縮可能な流体圧シリンダを介在させ、この流体圧シリンダの収縮によって前記ガントリ圧縮部材を前記ガントリ頂部を中心として起立方向に回動させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項14】
請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立工程では、前記ガントリ圧縮部材と前記旋回フレームとの間に介設されて前記ガントリ全体を起伏させるように伸縮するガントリ起伏用シリンダを、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより、当該ガントリ圧縮部材の基端部を上昇させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項15】
ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、この旋回フレームの前側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ圧縮部材及び前記旋回フレームの後側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ引張部材を有し、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記ガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されてガントリ頂部を構成するとともに、当該ガントリ頂部に前記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられ、前記ガントリ頂部が後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するガントリとを備えるとともに、
前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除可能となるようにこれらガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとが連結され、
前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除され、かつ、前記ガントリ頂部を中心として前記ガントリ圧縮部材の基端部が上昇する向きに当該ガントリ圧縮部材の基端部が起立方向に回動することにより、このガントリ圧縮部材の下方から前記ウィンチのうちの取外し対象ウィンチを前記ガントリ圧縮部材の下方から取り去ることが可能となるように当該取外し対象ウィンチが配置されていることを特徴とするクレーンの上部旋回体。
【請求項16】
請求項15記載のクレーンの上部旋回体において、
前記ガントリ圧縮部材と前記旋回フレームとの間に介設されて前記ガントリ全体を起伏させるように伸縮するガントリ起伏用シリンダを備え、このガントリ起伏用シリンダは、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより当該ガントリ圧縮部材の基端部を上昇させるように配置されていることを特徴とするクレーンの上部旋回体。
【請求項1】
ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、上記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられるとともに、基端部が上記旋回フレームの前側部に起伏方向に回動可能に連結され、上記先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するマストとを備えたクレーンの前記旋回フレームから、取外し対象ウィンチを取り外すための方法であって、
前記マストを前記倒伏姿勢にした状態で、このマストの先端部側の部位とこの部位に対応する旋回フレームの部位とを当該マストが起立する方向に回動可能となるように連結して起立支点を形成するとともに、このマストの基端部と前記旋回フレームとの連結を解除する連結切換工程と、
前記マストをその基端部が上昇する向きに前記起立支点を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するマスト起立工程と、
前記旋回フレームへの前記取外し対象ウィンチの固定を解除する固定解除工程と、
前記マストが前記起立姿勢にある状態で、前記固定を解除した前記取外し対象ウィンチを前記マストの下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含むことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項2】
請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立工程において前記マストを起立させる操作と、前記ウィンチ取外し工程において前記取外し対象ウィンチを前記旋回フレームから取外す操作とを共通の補助クレーンを用いて行うことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項3】
請求項2記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立工程におけるマスト起立姿勢の維持を、マストの先端部と旋回フレームの後側部とに両端部が連結されるリンクを用いて行うことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項4】
請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立工程では、前記マストと前記旋回フレームとの間にマスト起立装置を介設し、このマスト起立装置により前記マストを前記起立支点を中心として起立方向に回動させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項5】
請求項4記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立装置として、前記マストのうち前記起立支点よりも先端部側の部位と前記旋回フレームとの間に伸縮可能な流体圧シリンダを介在させ、この流体圧シリンダの収縮によって前記マストを前記起立支点を中心として起立方向に回動させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項6】
請求項1記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記マスト起立工程では、前記マストと前記旋回フレームとの間に介設されて前記マストを起伏させるように伸縮するマスト起伏用シリンダを、前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより、当該マストの基端部を上昇させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項7】
ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、
上記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられるとともに、基端部が上記旋回フレームの前側部に起伏方向に回動可能に連結され、上記先端部を後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するマストと、
前記マストの先端部側の部位と前記旋回フレームとにそれぞれ設けられ、前記マストを前記倒伏姿勢にした状態で前記マストが起立する方向に回動可能となるように相互連結され、その連結により前記マストの起立支点を形成する補助連結部とを備えるとともに、
前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除可能となるようにこれらマストの基端部と旋回フレームとが連結され、
前記マストの基端部と前記旋回フレームとの連結が解除され、かつ、前記起立支点を中心として前記マストの基端部が上昇する向きに当該マストが起立方向に回動することにより、このマストの下方から前記ウィンチのうちの取外し対象ウィンチが前記マストの下方から取り去ることが可能となるように当該取外し対象ウィンチが配置されていることを特徴とするクレーンの上部旋回体。
【請求項8】
請求項7記載のクレーンの上部旋回体において、
前記倒伏姿勢にあるマストと前記旋回フレームとの双方に着脱可能なマスト起立装置を備え、このマスト起立装置は前記マストと前記旋回フレームとの間に介在する状態で前記マストを前記起立支点を中心に起立方向に回動させるものであることを特徴とするクレーンの上部旋回体。
【請求項9】
ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、この旋回フレームの前側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ圧縮部材及び前記旋回フレームの後側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ引張部材を有し、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記ガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されてガントリ頂部を構成するとともに、当該ガントリ頂部に前記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられ、前記ガントリ頂部が後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するガントリとを備えたクレーンの前記旋回フレームから、取外し対象ウィンチを取り外すための方法であって、
前記ガントリを前記倒伏姿勢にした状態で、このガントリにおけるガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結を解除する連結切換工程と、
前記ガントリ圧縮部材をその基端部が上昇する向きに前記ガントリ頂部を中心として回動させることにより起立させ、その起立姿勢を維持するガントリ圧縮部材起立工程と、
前記旋回フレームへの前記取外し対象ウィンチの固定を解除する固定解除工程と、
前記ガントリ圧縮部材が前記起立姿勢にある状態で、前記固定を解除した前記取外し対象ウィンチを前記ガントリ圧縮部材の下方から取り去るウィンチ取外し工程とを含むことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項10】
請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立工程において前記ガントリ圧縮部材を起立させる操作と、前記ウィンチ取外し工程において前記取外し対象ウィンチを前記旋回フレームから取外す操作とを共通の補助クレーンを用いて行うことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項11】
請求項10記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立工程におけるガントリ圧縮部材の起立姿勢の維持を、ガントリ圧縮部材の先端部と旋回フレームの後側部とに両端部が連結されるリンクを用いて行うことを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項12】
請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立工程では、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記旋回フレームとの間にガントリ圧縮部材起立装置を介設し、このガントリ圧縮部材起立装置により前記ガントリ圧縮部材を前記ガントリ頂部を中心として起立方向に回動させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項13】
請求項12記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立装置として、前記ガントリ頂部と前記旋回フレームとの間に伸縮可能な流体圧シリンダを介在させ、この流体圧シリンダの収縮によって前記ガントリ圧縮部材を前記ガントリ頂部を中心として起立方向に回動させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項14】
請求項9記載のクレーンのウィンチ取外し方法において、
前記ガントリ圧縮部材起立工程では、前記ガントリ圧縮部材と前記旋回フレームとの間に介設されて前記ガントリ全体を起伏させるように伸縮するガントリ起伏用シリンダを、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより、当該ガントリ圧縮部材の基端部を上昇させることを特徴とするクレーンのウィンチ取外し方法。
【請求項15】
ブーム起伏用ウィンチを含む複数のウィンチが搭載され、固定される旋回フレームと、この旋回フレームの前側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ圧縮部材及び前記旋回フレームの後側部に基端部が起伏方向に回動可能に連結されるガントリ引張部材を有し、前記ガントリ圧縮部材の先端部と前記ガントリ引張部材の先端部とが相対回動可能に連結されてガントリ頂部を構成するとともに、当該ガントリ頂部に前記ブーム起伏用ウィンチから引き出されるワイヤロープが掛けられるブーム起伏用スプレッダが先端部に設けられ、前記ガントリ頂部が後方に倒伏した倒伏姿勢で前記複数のウィンチの上方に位置するガントリとを備えるとともに、
前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除可能となるようにこれらガントリ圧縮部材の基端部と旋回フレームとが連結され、
前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除され、かつ、前記ガントリ頂部を中心として前記ガントリ圧縮部材の基端部が上昇する向きに当該ガントリ圧縮部材の基端部が起立方向に回動することにより、このガントリ圧縮部材の下方から前記ウィンチのうちの取外し対象ウィンチを前記ガントリ圧縮部材の下方から取り去ることが可能となるように当該取外し対象ウィンチが配置されていることを特徴とするクレーンの上部旋回体。
【請求項16】
請求項15記載のクレーンの上部旋回体において、
前記ガントリ圧縮部材と前記旋回フレームとの間に介設されて前記ガントリ全体を起伏させるように伸縮するガントリ起伏用シリンダを備え、このガントリ起伏用シリンダは、前記ガントリ圧縮部材の基端部と前記旋回フレームとの連結が解除された状態で伸張させることにより当該ガントリ圧縮部材の基端部を上昇させるように配置されていることを特徴とするクレーンの上部旋回体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−238262(P2007−238262A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62526(P2006−62526)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]