クレーン
【課題】積層ゴム型免震装置の水平方向の特性を殺すことなく、当該免震装置の鉛直方向(引っ張り方向)の弱点をカバーする。
【解決手段】走行装置2にクレーン構造物3を搭載したクレーン。走行装置2上又はクレーン構造物3に、積層ゴム型免震装置4と、クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段5と、作業時にクレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段6と、地震発生時にクレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段18を設ける。
【解決手段】走行装置2にクレーン構造物3を搭載したクレーン。走行装置2上又はクレーン構造物3に、積層ゴム型免震装置4と、クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段5と、作業時にクレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段6と、地震発生時にクレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段18を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置を備えたクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行部本体に対して揺動可能に取り付けられた揺動支持脚と、前記走行部本体に固定された剛性支持脚とを具備した走行クレーンにおいて、前記剛性支持脚の先端近傍位置に、複数枚のゴム板を金属板を介して積層した積層ゴムを走行レールの方向とは直交する方向に複数個並べて配置するとともに、この複数個の積層ゴムを上下方向からゴム狭持部材によって狭持するようにした走行クレーンの耐振構造がある(特開2000−44168号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の走行クレーンの耐振構造の如く、積層ゴムを複数個使用すると、積層ゴム本来の目的である水平方向バネ定数(水平反力)の低減化が計れず、水平反力が増加し、適正な免振機能を達成できなくなる場合がある。
【0004】
本発明は、係る従来の問題に鑑みて発明したものであり、その目的とするところは、積層ゴム、すなわち、積層ゴム型免震装置の水平方向の特性を殺すことなく、積層ゴム型免震装置の鉛直方向(引っ張り方向)の弱点をカバーするようにしたクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のクレーンは、走行装置とクレーン構造物の間に免震装置を設け、該免震装置を、積層ゴム型免震装置と、前記クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段と、作業時に前記クレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段と、地震発生時に前記クレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段から構成したクレーンにおいて、前記拘束手段を、前記走行装置と前記クレーン構造物間又は前記クレーン構造物の上下ブロック間に設けた油圧シリンダと逃がし弁により構成するとともに、地震発生時に前記油圧シリンダをオイルダンパとして使用することを特徴としている。
【0006】
また、本発明のクレーンは、走行装置とクレーン構造物の間に免震装置を設け、該免震装置を、積層ゴム型免震装置と、前記クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段と、作業時に前記クレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段と、地震発生時に前記クレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段から構成したクレーンにおいて、前記浮き上がり防止手段を、前記走行装置又は前記クレーン構造物の下部ブロック側に設けたT形ブラケットと、前記クレーン構造物又は前記クレーン構造物の上部ブロック側に設けたローラより成る構造とすることを特徴としている。
【0007】
上記クレーンは、通常、積層ゴム型免震装置を拘束手段によって拘束した状態で荷役作業などの作業を行っているが、作業中に地震が発生すると、拘束解放手段が働いて積層ゴム型免震装置の拘束が自動的に解除される。そして、積層ゴム型免震装置の免震作用によってクレーン構造物が免震される。
【発明の効果】
【0008】
上記のように、本発明によれば、荷役作業時には、拘束手段によってクレーンの剛性を確保することができる。
【0009】
一方、地震発生時には、拘束解放手段によって拘束手段を解放し、積層ゴム型免震装置及び初期位置復帰手段兼オイルダンパによるクレーンの免震を行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明は、浮き上がり防止手段によって積層ゴム型免震装置の浮き上がりを防ぐことができるために、積層ゴム型免震装置の個数を水平バネ定数のみにより選定することができる。その結果、積層ゴム型免震装置の使用個数の最小化が可能となり、免震装置のコンパクト化を計ることができる。
【0011】
また、初期位置復帰手段兼オイルダンパを拘束手段に適用すると、リンク式の拘束手段を省略でき、部品点数を減らすことができる。
【0012】
また、油圧式の初期位置復帰手段の代わりに押しボルト式の初期位置復帰手段を設置すると、油圧式の初期位置復帰手段をオイルダンパに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るクレーンの第1の実施の態様を示す正面図である。
【図2】同クレーンの側面図である。
【図3】本発明に係るクレーンの第2の実施の態様を示す正面図である。
【図4】同クレーンの側面図である。
【図5】基本的な免震手段の一部断面を含む要部拡大側面図である。
【図6】図5のX−X断面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【図9】初期位置復帰手段兼オイルダンパの正面図である。
【図10】浮き上がり防止手段の作用説明図である。
【図11】免震手段の変形例を示す一部断面を含む拡大側面図である。
【図12】免震手段の他の変形例を示す一部断面を含む拡大側面図である。
【図13】図12のX−X断面図である。
【図14】図13のC−C断面図である。
【図15】浮き上がり防止手段の他の例を示す正面図である。
【図16】図15のX−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1及び図2は、走行装置2とクレーン構造物3の間に免震手段40を設置したクレーン1を示し、図3及び図4は、クレーン構造物3の下部ブロック35とクレーン構造物3の上部ブロック36の間に免震手段40を設置したクレーン50を示している。これらのクレーン1,50は、それぞれ、レール30に沿って2頭矢印Eの方向に走行するようになっている。
【0016】
上記免震手段40は、基本的に、複数枚のゴム板を金属板を介して積層させることによって形成されている所謂積層ゴム型免震装置(以下、免震装置と称する)4と、浮き上がり防止手段5と、拘束手段6と、拘束解放手段18から構成されている。
【0017】
図1及び図2のクレーン1の場合、免震装置4は、図7に示すように、走行装置2に設けた支持部材23とクレーン構造物3に設けた支持部材29の間に取り付けられている。また、図7に示すように、浮き上がり防止手段5は、左右一対の機械式リンク機構8,8によって構成されている。各リンク機構8は、それぞれ、幅広のリンク9(図5参照)に設けられている二つの長穴10,10に別々に通したシャフト11,12を上下のブラケット13,13′によって支持するようになっている。そして、上部ブラケット13は、クレーン構造物3の下面に固定され、下部ブラケット13′は、走行装置2の上面に固定されている。
【0018】
図5に示すように、浮き上がり防止手段5の上下2本のシャフト11,12の端部には、作業時にクレーン構造物3の水平方向の動きを拘束する拘束手段6が設けられている。この拘束手段6は、図8に示すように、斜交い状に配されているシャフト11,12間にX形に架橋した2組のリンク14,14によって構成されている。各リンク14は、それぞれ、連結板15を持っている短片部16と、連結板15を持っていない長片部17から構成されている。連結板15は、剪断ピン又は引っ張りピン18によって長片部17に連結されている。剪断ピン又は引っ張りピン18は、設計値以上の応力が作用すると破断するように設計されており、所謂拘束解除手段を構成している。
【0019】
また、図6に示すように、拘束手段6に対向する側に地震終息後にクレーン構造物3を初期位置に復帰させる初期位置復帰手段兼オイルダンパ7が設けられている。この初期位置復帰手段兼オイルダンパ7は、図9に示すように、油圧シリンダ19によって構成され、そのシリンダ部20は、走行装置2の上面に固定したブラケット22′に取り付けられ、ピストンロッド部21は、クレーン構造物3の下面に固定したブラケット22に取り付けられている。
【0020】
上記クレーン1は、通常、クレーン構造物3を拘束手段6によって拘束した状態で荷役作業を行なっている。作業中に地震が発生して拘束手段6に取り付けられている拘束解除手段、つまり、剪断ピン又は引っ張りピン18に設計値以上の応力が作用すると、剪断ピン又は引っ張りピン18が破断してクレーン構造物3の拘束が解放される。すると、免振装置4及び初期位置復帰手段兼オイルダンパ7の免震作用によってクレーン構造物3が免震される。
【0021】
地震終息後は、初期位置復帰手段兼オイルダンパ7の油圧シリンダ19によって図10のように変形した免震装置4を初期状態に復帰させる。しかる後に、新しい剪断ピン又は引っ張りピン18によって拘束手段6を構成しているリンク14の短片部の連結板15と長片部17とを互いに結合し、クレーン構造物3を拘束する。
【0022】
上記のように、本発明は、走行装置2とクレーン構造物3の間に積層ゴム型免震装置4と、クレーン構造物3の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段5と、作業時にクレーン構造物3の水平方向の動きを拘束する拘束手段6と、地震発生時にクレーン構造物3の拘束を解放する拘束解放手段18を設けたので、作業時には、拘束手段6によってクレーンの剛性を確保することができる。
【0023】
一方、地震発生時には、拘束解放手段18によって拘束手段6を解放し、積層ゴム型免震装置4及び初期位置復帰手段兼オイルダンパ7によるクレーンの免震を行うことが可能となる。
【0024】
また、本発明は、浮き上がり防止手段5によって積層ゴム型免震装置4の浮き上がりを防ぐことができるために、積層ゴム型免震装置4の個数を水平バネ定数のみにより選定することができる。その結果、積層ゴム型免震装置4の使用個数の最小化が可能となり、免震装置のコンパクト化を計ることができる。
【0025】
以上の説明では、リンク式の拘束手段6を用いた場合について説明したが、図11に示すように、初期位置復帰機構7である油圧シリンダ19を拘束手段として使用することもできる。
【0026】
すなわち、通常、油圧シリンダ19をロックした状態で作業し、地震発生時に油圧シリンダ19と図示しないオイルタンクの間に設けられている管路の逃がし弁(図示せず)のロックを解除して油圧シリンダ19をオイルダンパとして利用する。この場合は、上記の利点に加え、部品点数を少なくすることができる。その他の構成については、既に説明したクレーン1と変わりがないので、同じ部品に同じ符号を付けて詳しい説明を省略する。
【0027】
一方、初期位置復帰機構兼オイルダンパ7の代わりに図14の押しボルト式の初期位置復帰機構7′を用いると、初期位置復帰機構兼オイルダンパ7をオイルダンパだけに用いることができる。
【0028】
図14に示すように、押しボルト式の初期位置復帰機構7′は、クレーン構造物3の下面に固定した押し当て部24と、押し当て部24の両側に配した押しボルト25,26によって構成されている。一方の押しボルト25は、走行装置2の上面に固定された支持体27に螺着され、他の一方の押しボルト26は、走行装置2の上面に固定された支持体28に螺着されている。
【0029】
地震の終息後、押し当て部24と支持体27の間の間隔L1と、押し当て部24と支持体28の間の間隔L2とが互いに同じになるように、どちらか一方の押しボルト25(26)を操作してクレーン構造物3を初期位置に復帰させる。
【0030】
その他の構成については、既に説明したクレーン1と変わりがないので、同じ部品に同じ符号を付けて詳しい説明を省略する。
【0031】
上記クレーン1は、クレーン構造物3の浮き上がりを左右一対の機械式リンク機構8,8によって防止するようになっているが、図15及び図16に示すように、走行装置2の上面に設けたT形のブラケット31と、このT形ブラケット31と係合する左右の遊びローラ32,32によってクレーン構造物3の浮上がりを防止することができる。遊びローラ32は、クレーン構造物3の下面に固定したブラケット33に回転自在に設けられている。
【0032】
図3及び図4のクレーン50の場合は、図5乃至図16中の走行装置2をクレーン構造物3の下部ブロック35と見做し、クレーン構造物3をクレーン構造物3の上部ブロック36と見做すものとする。
【符号の説明】
【0033】
1,40クレーン
2走行装置
3クレーン構造物
4積層ゴム型免震装置
5浮き上がり防止手段
6拘束手段
18拘束解放手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置を備えたクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行部本体に対して揺動可能に取り付けられた揺動支持脚と、前記走行部本体に固定された剛性支持脚とを具備した走行クレーンにおいて、前記剛性支持脚の先端近傍位置に、複数枚のゴム板を金属板を介して積層した積層ゴムを走行レールの方向とは直交する方向に複数個並べて配置するとともに、この複数個の積層ゴムを上下方向からゴム狭持部材によって狭持するようにした走行クレーンの耐振構造がある(特開2000−44168号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の走行クレーンの耐振構造の如く、積層ゴムを複数個使用すると、積層ゴム本来の目的である水平方向バネ定数(水平反力)の低減化が計れず、水平反力が増加し、適正な免振機能を達成できなくなる場合がある。
【0004】
本発明は、係る従来の問題に鑑みて発明したものであり、その目的とするところは、積層ゴム、すなわち、積層ゴム型免震装置の水平方向の特性を殺すことなく、積層ゴム型免震装置の鉛直方向(引っ張り方向)の弱点をカバーするようにしたクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のクレーンは、走行装置とクレーン構造物の間に免震装置を設け、該免震装置を、積層ゴム型免震装置と、前記クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段と、作業時に前記クレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段と、地震発生時に前記クレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段から構成したクレーンにおいて、前記拘束手段を、前記走行装置と前記クレーン構造物間又は前記クレーン構造物の上下ブロック間に設けた油圧シリンダと逃がし弁により構成するとともに、地震発生時に前記油圧シリンダをオイルダンパとして使用することを特徴としている。
【0006】
また、本発明のクレーンは、走行装置とクレーン構造物の間に免震装置を設け、該免震装置を、積層ゴム型免震装置と、前記クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段と、作業時に前記クレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段と、地震発生時に前記クレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段から構成したクレーンにおいて、前記浮き上がり防止手段を、前記走行装置又は前記クレーン構造物の下部ブロック側に設けたT形ブラケットと、前記クレーン構造物又は前記クレーン構造物の上部ブロック側に設けたローラより成る構造とすることを特徴としている。
【0007】
上記クレーンは、通常、積層ゴム型免震装置を拘束手段によって拘束した状態で荷役作業などの作業を行っているが、作業中に地震が発生すると、拘束解放手段が働いて積層ゴム型免震装置の拘束が自動的に解除される。そして、積層ゴム型免震装置の免震作用によってクレーン構造物が免震される。
【発明の効果】
【0008】
上記のように、本発明によれば、荷役作業時には、拘束手段によってクレーンの剛性を確保することができる。
【0009】
一方、地震発生時には、拘束解放手段によって拘束手段を解放し、積層ゴム型免震装置及び初期位置復帰手段兼オイルダンパによるクレーンの免震を行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明は、浮き上がり防止手段によって積層ゴム型免震装置の浮き上がりを防ぐことができるために、積層ゴム型免震装置の個数を水平バネ定数のみにより選定することができる。その結果、積層ゴム型免震装置の使用個数の最小化が可能となり、免震装置のコンパクト化を計ることができる。
【0011】
また、初期位置復帰手段兼オイルダンパを拘束手段に適用すると、リンク式の拘束手段を省略でき、部品点数を減らすことができる。
【0012】
また、油圧式の初期位置復帰手段の代わりに押しボルト式の初期位置復帰手段を設置すると、油圧式の初期位置復帰手段をオイルダンパに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るクレーンの第1の実施の態様を示す正面図である。
【図2】同クレーンの側面図である。
【図3】本発明に係るクレーンの第2の実施の態様を示す正面図である。
【図4】同クレーンの側面図である。
【図5】基本的な免震手段の一部断面を含む要部拡大側面図である。
【図6】図5のX−X断面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【図9】初期位置復帰手段兼オイルダンパの正面図である。
【図10】浮き上がり防止手段の作用説明図である。
【図11】免震手段の変形例を示す一部断面を含む拡大側面図である。
【図12】免震手段の他の変形例を示す一部断面を含む拡大側面図である。
【図13】図12のX−X断面図である。
【図14】図13のC−C断面図である。
【図15】浮き上がり防止手段の他の例を示す正面図である。
【図16】図15のX−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1及び図2は、走行装置2とクレーン構造物3の間に免震手段40を設置したクレーン1を示し、図3及び図4は、クレーン構造物3の下部ブロック35とクレーン構造物3の上部ブロック36の間に免震手段40を設置したクレーン50を示している。これらのクレーン1,50は、それぞれ、レール30に沿って2頭矢印Eの方向に走行するようになっている。
【0016】
上記免震手段40は、基本的に、複数枚のゴム板を金属板を介して積層させることによって形成されている所謂積層ゴム型免震装置(以下、免震装置と称する)4と、浮き上がり防止手段5と、拘束手段6と、拘束解放手段18から構成されている。
【0017】
図1及び図2のクレーン1の場合、免震装置4は、図7に示すように、走行装置2に設けた支持部材23とクレーン構造物3に設けた支持部材29の間に取り付けられている。また、図7に示すように、浮き上がり防止手段5は、左右一対の機械式リンク機構8,8によって構成されている。各リンク機構8は、それぞれ、幅広のリンク9(図5参照)に設けられている二つの長穴10,10に別々に通したシャフト11,12を上下のブラケット13,13′によって支持するようになっている。そして、上部ブラケット13は、クレーン構造物3の下面に固定され、下部ブラケット13′は、走行装置2の上面に固定されている。
【0018】
図5に示すように、浮き上がり防止手段5の上下2本のシャフト11,12の端部には、作業時にクレーン構造物3の水平方向の動きを拘束する拘束手段6が設けられている。この拘束手段6は、図8に示すように、斜交い状に配されているシャフト11,12間にX形に架橋した2組のリンク14,14によって構成されている。各リンク14は、それぞれ、連結板15を持っている短片部16と、連結板15を持っていない長片部17から構成されている。連結板15は、剪断ピン又は引っ張りピン18によって長片部17に連結されている。剪断ピン又は引っ張りピン18は、設計値以上の応力が作用すると破断するように設計されており、所謂拘束解除手段を構成している。
【0019】
また、図6に示すように、拘束手段6に対向する側に地震終息後にクレーン構造物3を初期位置に復帰させる初期位置復帰手段兼オイルダンパ7が設けられている。この初期位置復帰手段兼オイルダンパ7は、図9に示すように、油圧シリンダ19によって構成され、そのシリンダ部20は、走行装置2の上面に固定したブラケット22′に取り付けられ、ピストンロッド部21は、クレーン構造物3の下面に固定したブラケット22に取り付けられている。
【0020】
上記クレーン1は、通常、クレーン構造物3を拘束手段6によって拘束した状態で荷役作業を行なっている。作業中に地震が発生して拘束手段6に取り付けられている拘束解除手段、つまり、剪断ピン又は引っ張りピン18に設計値以上の応力が作用すると、剪断ピン又は引っ張りピン18が破断してクレーン構造物3の拘束が解放される。すると、免振装置4及び初期位置復帰手段兼オイルダンパ7の免震作用によってクレーン構造物3が免震される。
【0021】
地震終息後は、初期位置復帰手段兼オイルダンパ7の油圧シリンダ19によって図10のように変形した免震装置4を初期状態に復帰させる。しかる後に、新しい剪断ピン又は引っ張りピン18によって拘束手段6を構成しているリンク14の短片部の連結板15と長片部17とを互いに結合し、クレーン構造物3を拘束する。
【0022】
上記のように、本発明は、走行装置2とクレーン構造物3の間に積層ゴム型免震装置4と、クレーン構造物3の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段5と、作業時にクレーン構造物3の水平方向の動きを拘束する拘束手段6と、地震発生時にクレーン構造物3の拘束を解放する拘束解放手段18を設けたので、作業時には、拘束手段6によってクレーンの剛性を確保することができる。
【0023】
一方、地震発生時には、拘束解放手段18によって拘束手段6を解放し、積層ゴム型免震装置4及び初期位置復帰手段兼オイルダンパ7によるクレーンの免震を行うことが可能となる。
【0024】
また、本発明は、浮き上がり防止手段5によって積層ゴム型免震装置4の浮き上がりを防ぐことができるために、積層ゴム型免震装置4の個数を水平バネ定数のみにより選定することができる。その結果、積層ゴム型免震装置4の使用個数の最小化が可能となり、免震装置のコンパクト化を計ることができる。
【0025】
以上の説明では、リンク式の拘束手段6を用いた場合について説明したが、図11に示すように、初期位置復帰機構7である油圧シリンダ19を拘束手段として使用することもできる。
【0026】
すなわち、通常、油圧シリンダ19をロックした状態で作業し、地震発生時に油圧シリンダ19と図示しないオイルタンクの間に設けられている管路の逃がし弁(図示せず)のロックを解除して油圧シリンダ19をオイルダンパとして利用する。この場合は、上記の利点に加え、部品点数を少なくすることができる。その他の構成については、既に説明したクレーン1と変わりがないので、同じ部品に同じ符号を付けて詳しい説明を省略する。
【0027】
一方、初期位置復帰機構兼オイルダンパ7の代わりに図14の押しボルト式の初期位置復帰機構7′を用いると、初期位置復帰機構兼オイルダンパ7をオイルダンパだけに用いることができる。
【0028】
図14に示すように、押しボルト式の初期位置復帰機構7′は、クレーン構造物3の下面に固定した押し当て部24と、押し当て部24の両側に配した押しボルト25,26によって構成されている。一方の押しボルト25は、走行装置2の上面に固定された支持体27に螺着され、他の一方の押しボルト26は、走行装置2の上面に固定された支持体28に螺着されている。
【0029】
地震の終息後、押し当て部24と支持体27の間の間隔L1と、押し当て部24と支持体28の間の間隔L2とが互いに同じになるように、どちらか一方の押しボルト25(26)を操作してクレーン構造物3を初期位置に復帰させる。
【0030】
その他の構成については、既に説明したクレーン1と変わりがないので、同じ部品に同じ符号を付けて詳しい説明を省略する。
【0031】
上記クレーン1は、クレーン構造物3の浮き上がりを左右一対の機械式リンク機構8,8によって防止するようになっているが、図15及び図16に示すように、走行装置2の上面に設けたT形のブラケット31と、このT形ブラケット31と係合する左右の遊びローラ32,32によってクレーン構造物3の浮上がりを防止することができる。遊びローラ32は、クレーン構造物3の下面に固定したブラケット33に回転自在に設けられている。
【0032】
図3及び図4のクレーン50の場合は、図5乃至図16中の走行装置2をクレーン構造物3の下部ブロック35と見做し、クレーン構造物3をクレーン構造物3の上部ブロック36と見做すものとする。
【符号の説明】
【0033】
1,40クレーン
2走行装置
3クレーン構造物
4積層ゴム型免震装置
5浮き上がり防止手段
6拘束手段
18拘束解放手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置とクレーン構造物の間に免震装置を設け、該免震装置を、積層ゴム型免震装置と、前記クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段と、作業時に前記クレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段と、地震発生時に前記クレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段から構成したクレーンにおいて、前記拘束手段を、前記走行装置と前記クレーン構造物間又は前記クレーン構造物の上下ブロック間に設けた油圧シリンダと逃がし弁により構成するとともに、地震発生時に前記油圧シリンダをオイルダンパとして使用することを特徴とするクレーン。
【請求項2】
走行装置とクレーン構造物の間に免震装置を設け、該免震装置を、積層ゴム型免震装置と、前記クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段と、作業時に前記クレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段と、地震発生時に前記クレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段から構成したクレーンにおいて、前記浮き上がり防止手段を、前記走行装置又は前記クレーン構造物の下部ブロック側に設けたT形ブラケットと、前記クレーン構造物又は前記クレーン構造物の上部ブロック側に設けたローラより成る構造とすることを特徴とするクレーン。
【請求項1】
走行装置とクレーン構造物の間に免震装置を設け、該免震装置を、積層ゴム型免震装置と、前記クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段と、作業時に前記クレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段と、地震発生時に前記クレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段から構成したクレーンにおいて、前記拘束手段を、前記走行装置と前記クレーン構造物間又は前記クレーン構造物の上下ブロック間に設けた油圧シリンダと逃がし弁により構成するとともに、地震発生時に前記油圧シリンダをオイルダンパとして使用することを特徴とするクレーン。
【請求項2】
走行装置とクレーン構造物の間に免震装置を設け、該免震装置を、積層ゴム型免震装置と、前記クレーン構造物の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段と、作業時に前記クレーン構造物の水平方向の動きを拘束する拘束手段と、地震発生時に前記クレーン構造物の拘束を解放する拘束解放手段から構成したクレーンにおいて、前記浮き上がり防止手段を、前記走行装置又は前記クレーン構造物の下部ブロック側に設けたT形ブラケットと、前記クレーン構造物又は前記クレーン構造物の上部ブロック側に設けたローラより成る構造とすることを特徴とするクレーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−102194(P2011−102194A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11767(P2011−11767)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願2000−157081(P2000−157081)の分割
【原出願日】平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願2000−157081(P2000−157081)の分割
【原出願日】平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【Fターム(参考)】
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