説明

クロック位相同期回路及び光受信器

【課題】光時分割多重信号受信時におけるクロック位相同期回路を、光受信器側において光受信器構成を大きく変えることなく実現し、経済的な光受信器を提供する。
【解決手段】直接変調光源203は、信号発生器202により直接周波数偏移変調された光信号を出力する。光結合器204は、クロック位相同期回路201の光信号入力部から入力された光時分割多重信号と直接変調光源203から出力された直接周波数偏移変調信号とを合波する。光検波器205は、光結合器204で合波された光時分割多重信号と直接周波数偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する。電気バンドパスフィルタ206は、光検波器205の出力の一部を透過する。強度検波器207は、電気バンドパスフィルタ206の出力を強度検波する。強度検波器207の出力によって信号発生器202の出力信号の位相を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光時分割多重信号を多重分離する際に用いられるクロック位相同期回路及び光受信器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光時分割多重信号を多重分離する際に、光周波数領域で信号処理を行うことで、高速な多重分離動作を実現することが可能となる。このような多重分離動作を実現する方法として、図1に示すような光受信器の構成が知られている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
図1Aに示すように、従来の光受信器101は、信号発生器102と、信号発生器102の出力により直接周波数偏移変調された光信号を出力する直接変調光源103と、光受信器101の光信号入力部から入力された光時分割多重信号と直接変調光源103から出力された光信号とを合波する光結合器104と、光結合器104で合波された光時分割多重信号と直接変調光源103から出力された光信号を光ヘテロダイン受信する光検波器105と、光検波器105の出力信号の一部の帯域を透過する電気バンドパスフィルタ106と、電気バンドパスフィルタ106の出力を復調し、目的の信号を出力する中間周波信号復調器107とを具える。
【0004】
ここで、図1A中の(a)、(b)、(c)、(d)における信号の時間波形と周波数成分の関係の一例を図1Bに示す。光受信器101の光信号入力部から入力される光時分割多重信号の時間波形は、図1B中の(a)であり、信号チャネルα、β、γ、δが多重されている。このとき、光時分割多重信号は、中心周波数fから変調速度fだけ周波数成分が広がっている。また、信号発生器102と直接変調光源103により、図1B(b)に示すような、中心周波数fLOかつ強度一定かつ変調速度fの1/4の速度で周波数が−Δf〜+Δfまで変動する局部発振光を出力する。次に、光時分割多重信号と局部発振光を、光結合器104を用いて合波するが、このとき、光時分割多重信号の目的の信号チャネルαと局部発振光の周波数変動が+Δfになるタイミングを一致させるように合波する。その後、光検波器105において、光ヘテロダイン受信を起こし、図1B(c)に示すような、目的の信号チャネルαが中心周波数f−fLOからΔfだけ低周波側にシフトした中間周波信号が出力される。中間周波信号の周波数成分のうち、信号チャネルαに相当する周波数成分のみを電気バンドパスフィルタ106を用いて透過することにより、図1B(d)に示すように、目的の信号チャネルαのみを多重分離することができ、多重分離した信号を中間周波信号復調器107を用いて復調することで目的の信号チャネルαを復調することができる。
【非特許文献1】成川聖、桜井尚也、木村秀明、坪川信著、“光ヘテロダイン受信を用いたOTDM信号の多重分離方式”、2007年電子情報通信学会ソサイエティ大会B−10−61(2007)、2007年9月13日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示した従来の光受信器では、簡易な構成で高速な光時分割多重信号を多重分離可能である反面、信号発生器102と直接変調光源103から出力される周波数偏移変調信号の変調のタイミングを光時分割多重信号の目的の信号チャネルと厳密に合わせる必要がある。このため、光時分割多重信号のクロック成分が必要となるが、従来の構成では光受信器側においてクロック位相同期を行っていないことから、クロック信号を光時分割多重信号とは別途送信器より伝送する必要があり、経済的に光伝送システムを構成することが困難である。
【0006】
本発明の目的は、光時分割多重信号受信時におけるクロック位相同期回路を、光受信器側において光受信器構成を大きく変えることなく実現し、経済的な光受信器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の態様は、
光時分割多重信号を多重分離受信する際に用いるクロック位相同期回路において、
信号発生手段と、
前記信号発生手段により直接周波数偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段と、
前記光時分割多重信号と前記光信号出力手段から出力された直接周波数偏移変調信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と直接周波数偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段と、
前記光受信手段出力の一部を透過する透過手段と、
前記透過手段の出力を強度検波する強度検波手段とを具え、
前記強度検波手段の出力によって前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明による第2の態様は、
光時分割多重信号を多重分離受信する際に用いるクロック位相同期回路において、
連続光を出力する光出力手段と、
信号発生手段と、
前記信号発生手段の出力により、前記光出力手段から出力された連続光を周波数偏移変調又は位相偏移変調する光変調手段と、
前記光時分割多重信号と前記光変調手段から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段と、
前記光検波器の出力の一部を透過する透過手段と、
前記透過手段の出力を強度検波する強度検波手段とを具え、
前記強度検波手段の出力によって前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明による第3の態様は、前記光受信手段が差動受信型光検波器を有することを特徴とする。
【0010】
本発明による第4の態様は、前記透過手段の透過帯域を、前記光時分割多重信号の光周波数と局部発振光の光周波数の差から前記光時分割多重信号の信号速度の1/2だけずれた電気周波数を透過することを特徴とする。
【0011】
本発明による第5の態様は、
光時分割多重信号を多重分離受信する光受信器において、
信号発生手段と、
前記信号発生手段の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段と、
前記光時分割多重信号と前記光信号出力手段から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段と、
前記光受信手段の出力の一部を透過する第1の透過手段と、
前記第1の透過手段の出力を復調する復調手段と、
前記光受信手段の出力の一部を透過する第2の透過手段と、
前記第2の透過手段の出力を強度検波する強度検波手段とを具え、
前記強度検波手段の出力によって前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明による第6の態様は、
光時分割多重信号を多重分離受信する光受信器において、
信号発生手段と、
前記信号発生手段の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段と、
前記光時分割多重信号と前記光信号出力手段から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号の一部を光ヘテロダイン受信する第1の光受信手段と、
前記第1の光受信手段の出力の一部を透過する第1の透過手段と、
前記第1の透過手段の出力を復調する復調手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号の一部を光ヘテロダイン受信する第2の光受信手段と、
前記第2の光受信手段の出力の一部を透過する第2の透過手段と、
前記第2の透過手段の出力を強度検波する強度検波手段とを具え、
前記強度検波手段の出力によって前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明による第7の態様は、
光時分割多重信号を多重分離受信する光受信器において、
前記光時分割多重信号を分岐する第1の光分岐手段と、
信号発生手段と、
前記信号発生手段の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段と、
前記光信号出力手段の出力光信号を分岐する第2の光分岐手段と、
前記第2の光分岐手段の出力光信号に光遅延を与える光遅延手段と、
前記第2の光分岐手段及び前記光遅延手段の出力光信号と、前記第1の光分岐手段の出力光信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された出力光信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段と、
前記光受信手段の出力の一部を用いて復調する復調手段と、
前記光受信手段の出力の一部を用いて位相制御信号を抽出する位相制御信号抽出手段とを具え、
位相制御信号抽出手段の出力により前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とする。
【0014】
本発明による第8の態様は、前記光受信手段が差動受信型光検波器を有することを特徴とする。
【0015】
本発明による第9の態様は、前記透過手段の透過帯域を、前記光時分割多重信号の光周波数と局部発振光の光周波数の差から前記光時分割多重信号の信号速度の1/2だけずれた電気周波数を透過することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明による第1の態様によれば、周波数偏移変調光を局部発振光として用いた光ヘテロダイン受信によって、高速に伝送される光時分割多重信号のクロック成分の位相誤差信号を抽出することが可能となり、この位相誤差信号を用いて信号発生手段を制御することで、目的のチャネルを安定して多重分離受信することが可能となる。
【0017】
本発明による第2の態様によれば、周波数偏移変調光又は位相偏移変調光を局部発振光として用いた光ヘテロダイン受信によって、高速に伝送される光時分割多重信号のクロック成分の位相誤差信号を抽出することが可能となり、この位相誤差信号を用いて信号発生手段を制御することで、目的のチャネルを安定して多重分離受信することが可能となる。
【0018】
本発明による第3の態様によれば、第1又は第2の態様のクロック位相同期回路において、光ヘテロダイン受信を行った際に生じる光時分割多重信号のベースバンド成分を除去することが可能となり、より受信特性の高いクロック位相同期回路を構成することが可能となる。
【0019】
本発明による第4の態様によれば、第1〜第3の態様のクロック位相同期回路において、位相誤差信号を高感度に受信することが可能となり、より精度の高いクロック位相同期動作を実現することが可能となる。
【0020】
本発明による第5の態様によれば、光受信部とクロック位相同期回路で信号発生手段と光信号出力手段を共用した構成で、光時分割多重信号の多重分離とクロック位相同期を行うことが可能となり、光増幅器や位相変調器を含むような、高価でかつ複雑な構成を用いることなく、安定な多重分離動作を実現することができる。
【0021】
本発明による第6の態様によれば、第5の態様と同様に、光受信部とクロック位相同期回路で信号発生手段と光信号出力手段を共用した構成で、光時分割多重信号の多重分離とクロック位相同期を行うことが可能となり、光増幅器や位相変調器を含むような、高価でかつ複雑な構成を用いることなく、安定な多重分離動作を実現することができる。さらに、光受信手段を複数配置することで、光受信手段の特性を信号の多重分離動作とクロック位相同期動作に個別に最適化することが可能となり、より受信特性の高い光受信器を構成することが可能となる。
【0022】
本発明による第7の態様によれば、複数の信号チャネルを同時に多重分離受信する際に、多重分離受信部に個別にクロック位相同期回路を配置する必要がないことから、経済的な多重分離動作が可能となる。
【0023】
本発明による第8の態様によれば、第5〜第7の態様の光受信器において、光ヘテロダイン受信を行った際に生じる光時分割多重信号のベースバンド成分を除去することが可能となり、より受信特性の高い光受信器を構成することが可能となる。
【0024】
本発明による第9の態様によれば、第5〜第8の態様の光受信器において、位相誤差信号を高感度に受信することが可能となり、より精度の高いクロック位相同期動作を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係わるクロック位相同期回路の構成を示す図である。第1の実施の形態に係わるクロック位相同期回路201は、図2Aに示すように、信号発生手段としての信号発生器202と、信号発生器202により直接周波数偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段としての直接変調光源203と、クロック位相同期回路201の光信号入力部から入力された光時分割多重信号と直接変調光源203から出力された直接周波数偏移変調信号とを合波する光合波手段としての光結合器204と、光結合器204で合波された光時分割多重信号と直接周波数偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段としての光検波器205と、光検波器205の出力の一部を透過する透過手段としての電気バンドパスフィルタ206と、電気バンドパスフィルタ206の出力を強度検波する強度検波手段としての強度検波器207とを具える。
【0026】
第1の実施の形態では、強度検波器207の出力によって信号発生器202の出力信号の位相を制御し、信号発生器202は、例えば発振器と電気増幅器を用いて構成することができる。
【0027】
ここで、図2A中の(a)、(b)、(c)における信号の時間波形と周波数成分の関係の一例を図2B、図2Cに示している。クロック位相同期回路201の光信号入力部から入力される光時分割多重信号の時間波形は、図2B又は図2C中の(a)であり、信号チャネルα、β、γ、δが多重されている。このとき、光時分割多重信号は、中心周波数fから変調速度fだけ周波数成分が広がっている。また、信号発生器202と直接変調光源203により、図2B又は図2Cの(b)に示すような、中心周波数fLOかつ強度一定かつ変調速度fの1/4の速度で周波数が−Δf〜+Δfまで変動する局部発振光を出力する。
【0028】
次に、光時分割多重信号と局部発振光を光結合器204を用いて合波するが、この際、図2B(b)のように、光時分割多重信号の目的の信号チャネルαと局部発振光の周波数変動が+Δfになるタイミングを一致させるように合波することにより、光時分割多重信号の多重分離動作を実現可能である。しかしながら、図2C(b)のように、例えば、光時分割多重信号の目的の信号チャネルαと局部発振光の周波数変動が+Δfになるタイミングが一致しておらず、局部発振光の周波数変動+Δfになるタイミングが光時分割多重信号のチャネル間隔に相当するタイミングと一致してしまっているような場合には、信号を多重分離することができない。
【0029】
このとき、図2B(c)と図2C(c)の周波数成分を比較すると、f−fLOの周波数成分又はf−fLO±fの周波数成分が、多重分離動作が実現可能な図2Bの場合には小さくなり、多重分離動作が行えない図2Cの場合には大きくなることがわかる。さらに、f−fLO±f/2の周波数成分又はf−fLO±3f/2の周波数成分が、多重分離動作が実現可能な図2Bの場合には大きくなり、多重分離動作が行えない図2Cの場合には小さくなることがわかる。
【0030】
このことから、電気バンドパスフィルタ206により、f−fLOの周波数成分、f−fLO±fの周波数成分、f−fLO±f/2の周波数成分又はf−fLO±3f/2の周波数成分のいずれかの単一周波数成分を透過し、強度検波器207により強度成分を抽出した後、この強度成分が、f−fLOの周波数成分又はf−fLO±fの周波数成分を透過した場合には最小になるように、信号発生器202の出力信号の位相を制御し、また、f−fLO±f/2の周波数成分又はf−fLO±3f/2の周波数成分を透過した場合には最大になるように、信号発生器202の出力信号の位相を制御することにより、最適のタイミングで光時分割多重信号と局部発振光を合波することが可能となる。
【0031】
なお、図2Aの構成において、図2B、図2Cは、電気バンドパスフィルタ206がf−fLO−f/2の周波数成分を透過させた場合を示している。
【0032】
第1の実施の形態のような構成とすることにより、強度検波器207の出力によって信号発生器の出力信号の位相を制御するので、高速に伝送される光時分割多重信号のクロック位相同期動作を、信号速度に比べ比較的低周波な部品を用いて実現することが可能となる。
【0033】
また、光ヘテロダイン受信を用いて光電変換を行うことから、クロック位相同期に必要な周波数成分を高感度に受信することが可能であり、光増幅器といった複雑な光部品を用いる必要がない。
【0034】
さらに、光部品に比べ経済的な電気部品を多く用いて多重分離するため、光周波数領域でクロック位相同期動作を行う必要がなく、経済的なクロック位相同期回路を構成することが可能となる。
【0035】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係わるクロック位相同期回路の構成を示す図である。第2の実施形態に係わるクロック位相同期回路301は、図3に示すように、連続光を出力する光出力手段としての光源302と、信号発生手段としての信号発生器303と、信号発生器303の出力により、光源302から出力された連続光を周波数偏移変調又は位相偏移変調する光変調手段としての光変調器304と、クロック位相同期回路301の光信号入力部から入力された光時分割多重信号と光変調器304から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段としての光結合器305と、光結合器305で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段としての光検波器306と、光検波器306の出力の一部を透過する透過手段としての電気バンドパスフィルタ307と、電気バンドパスフィルタ307の出力を強度検波する強度検波手段としての強度検波器308を具える。
【0036】
第2の実施の形態によれば、強度検波器308の出力によって信号発生器303の出力信号の位相を制御し、信号発生器303は、例えば発振器と電気増幅器を用いて構成することが可能である。
【0037】
第2の実施の形態における動作原理は第1の実施の形態の場合と同様である。第2の実施の形態のような構成とすることにより、強度検波器308の出力によって信号発生器303の出力信号の位相を制御するので、高速に伝送される光時分割多重信号のクロック位相同期動作を、信号速度に比べ比較的低周波な部品を用いて実現することが可能となる。
【0038】
また、光ヘテロダイン受信を用いて光電変換を行うことから、クロック位相同期に必要な周波数成分を高感度に受信することが可能であり、光増幅器といった複雑な光部品を用いる必要がない。
【0039】
さらに、光部品に比べ経済的な電気部品を多く用いて多重分離するため、光周波数領域でクロック位相同期動作を行う必要がなく、経済的なクロック位相同期回路を構成することが可能となる。
【0040】
また、一般的に高速変調時において強度変調成分が生じることから、変調速度が制限される直接変調光源と比較し、光部品数が増加するものの、外部変調器を用いることで、さらに高速な信号のクロック位相同期動作を実現することができる。
【0041】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係わるクロック位相同期回路の構成を示す図である。第3の実施形態に係わるクロック位相同期回路401は、図4に示すように、信号発生手段としての信号発生器402と、信号発生器402により直接周波数偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段としての直接変調光源403と、クロック位相同期回路401の光信号入力部から入力された光時分割多重信号と直接変調光源403から出力された直接周波数偏移変調信号とを合波する光合波手段としての光結合器404と、光結合器404で合波された光時分割多重信号と直接周波数偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段としての差動受信型光検波器405と、差動受信型光検波器405の出力の一部を透過する透過手段としての電気バンドパスフィルタ406と、電気バンドパスフィルタ406の出力を強度検波する強度検波手段としての強度検波器407を具える。
【0042】
第3の実施の形態では、強度検波器407の出力によって信号発生器402の出力信号の位相を制御し、信号発生器402を、例えば発振器と電気増幅器を用いて構成することができる。
【0043】
第3の実施の形態における動作原理は第1の実施の形態の場合と同様である。また、第2の実施の形態と同様、直接変調光源403の代わりに、連続光源と外部変調器を用いることも可能である。
【0044】
第3の実施の形態のような構成とすることにより、高速に伝送される光時分割多重信号のクロック位相同期動作を、信号速度に比べ比較的低周波な部品を用いて実現することが可能となる。
【0045】
また、光ヘテロダイン受信を用いて光電変換を行うことから、クロック位相同期に必要な周波数成分を高感度に受信することが可能であり、光増幅器といった複雑な光部品を用いる必要がない。
【0046】
さらに、光部品に比べ経済的な電気部品を多く用いて多重分離するため、光周波数領域でクロック位相同期動作を行う必要がなく、経済的なクロック位相同期回路を構成することが可能となる。
【0047】
また、光ヘテロダイン受信時に差動受信型光検波器を用いることで、光結合器404において信号を合波する際に生じる結合損失がなくなる上、光時分割多重信号の直接受信成分を相殺することから、位相誤差信号成分を高感度に受信することができ、かつ、光検波後に生じる中間周波信号をより低周波側に寄せられることから、光検波器や電気部品の所望帯域を低減することが可能となるため、経済的な受信器構成に寄与することができる。
【0048】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係わる光受信器の構成を示す図である。第4の実施形態に係わる光受信器501は、図5に示すように、信号発生手段としての信号発生器502と、信号発生器502の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段としての変調光源503と、光受信器501の光信号入力部から入力された光時分割多重信号と変調光源503から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段としての光結合器504と、光結合器504で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段としての光検波器505と、光検波器505の出力の一部を透過する第1の透過手段としての電気バンドパスフィルタ506と、電気バンドパスフィルタ506の出力を復調する復調手段としての復調回路507と、光検波器505の出力の一部を透過する第2の透過手段としての電気バンドパスフィルタ508と、電気バンドパスフィルタ508の出力を強度検波する強度検波手段としての強度検波器509を具える。
【0049】
第4の実施の形態では、強度検波器509の出力によって信号発生器502の出力信号の位相を制御し、信号発生器502を、例えば発振器と電気増幅器を用いて構成することができる。
【0050】
また、変調光源503は、第1〜第3の実施の形態のように、直接変調光源又は連続光源と外部変調器を用いて構成することができる。また、光検波器505は、第3の実施の形態のように、光検波器の代わりに差動受信型光検波器を用いて構成することができる。
【0051】
第4の実施の形態における動作原理は、クロック位相同期回路の動作が第1の実施の形態の場合と同様であり、光時分割多重信号の多重分離動作が従来技術の場合と同様である。 第4の実施の形態のような構成とすることにより、強度検波器509の出力によって信号発生器の出力信号の位相を制御するので、クロック位相同期動作と光時分割多重信号の多重分離動作を、信号速度に比べ比較的低周波な部品を用いて、同時に実現することが可能となる。
【0052】
また、信号発生器502、変調光源503、光結合器504及び光検波器505をクロック位相同期動作と光時分割多重信号の多重分離動作で共用して行うことが可能となるため、経済的な構成により光受信器を構成することができる。
【0053】
図6は、本発明の第5の実施の形態に係わる光受信器の構成を示す図である。第5の実施形態に係わる光受信器601は、図6に示すように、信号発生手段としての信号発生器602と、信号発生器602の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段としての変調光源603と、光受信器601の光信号入力部から入力された光時分割多重信号と変調光源603から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段としての光結合器604と、光結合器604で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号の一部を光ヘテロダイン受信する第1の光受信手段としての光検波器605と、光検波器605の出力の一部を透過する第1の透過手段としての電気バンドパスフィルタ606と、電気バンドパスフィルタ606の出力を復調する復調手段としての復調回路607と、光結合器604で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号の一部を光ヘテロダイン受信する第2の光受信手段としての光検波器608と、光検波器608の出力の一部を透過する第2の透過手段としての電気バンドパスフィルタ609と、電気バンドパスフィルタ609の出力を強度検波する強度検波手段としての強度検波器610を具える。
【0054】
第5の実施の形態では、強度検波器610の出力によって信号発生器602の出力信号の位相を制御し、信号発生器602を、例えば発振器と電気増幅器を用いて構成することができる。
【0055】
また、変調光源603は、第1〜第4の実施の形態のように、直接変調光源又は連続光源と外部変調器を用いて構成することができる。また、光検波器605,608は、第3の実施の形態のように、光検波器の代わりに差動受信型光検波器を用いて構成することができる。
【0056】
第5の実施の形態における動作原理は、クロック位相同期回路の動作が第1の実施の形態の場合と同様であり、光時分割多重信号の多重分離動作が従来技術の場合と同様である。 第5の実施の形態のような構成とすることにより、クロック位相同期動作と光時分割多重信号の多重分離動作を、信号速度に比べ比較的低周波な部品を用いて、同時に実現することが可能となる。
【0057】
また、信号発生器502、変調光源503及び光結合器504をクロック位相同期動作と光時分割多重信号の多重分離動作で共用して行うことが可能となるため、経済的な構成により光受信器を構成することができる。
【0058】
さらに、光検波器を複数配置することで、光検波器の特性を信号の多重分離動作とクロック位相同期動作に個別に最適化することが可能となり、より受信特性の高い光受信器を構成することが可能となる。
【0059】
図7は、本発明の第6の実施の形態に係わる光受信器の構成を示す図である。第6の実施形態に係わる光受信器701は、図7に示すように、光受信器701から入力された光時分割多重信号を分岐する第1の光分岐手段としての光分岐器702と、信号発生手段としての信号発生器703と、信号発生器703の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段としての変調光源704と、変調光源704の出力光信号を分岐する第2の光信号分岐手段としての光分岐器705と、光分岐器705の出力光信号に光遅延を与える光遅延手段としての複数の光遅延器706−2〜706−4と、光分岐器702の出力光信号と光分岐器705の出力光信号とを合波する第1の光合波手段としての光結合器707−1と、光分岐器702の出力光信号と光遅延器706−2〜706−4のそれぞれの出力光信号とを合波する第2の光合波手段としての光結合器707−2〜707−4と、光結合器707−1〜707−4の出力を受信し、信号を復調する復調手段としての光受信部708−1〜708−4と、光結合器707−1〜707−4の出力のいずれかを受信し、位相制御信号を抽出する位相制御信号抽出手段としての位相制御部709とを具える。
【0060】
第6の実施の形態では、位相制御部709の出力によって信号発生器703の出力信号の位相を制御し、信号発生器703を、例えば発振器と電気増幅器を用いて構成することができる。
【0061】
また、変調光源704は、第1〜第3の実施の形態のように、直接変調光源又は連続光源と外部変調器を用いて構成することができる。また、光受信部708−1〜708−4は、第4又は第5の実施例のように、光検波器と電気バンドパスフィルタと中間周波信号復調器又は差動受信型光検波器と電気バンドパスフィルタと中間周波信号復調器を用いて構成することができ、位相制御部709は、第1〜第5の実施例のように、光検波器と電気バンドパスフィルタと強度検波器又は差動受信型光検波器と電気バンドパスフィルタと強度検波器を用いて構成することができる。
【0062】
また、図7においては、光結合器707−4の出力に位相制御部709を接続しているが、光結合器707−1〜707−3のいずれに接続しても同様の効果が得られる。
【0063】
さらに、第5の実施例のように、光検波器を光受信部708と位相制御部709で共有することもできる。この場合、第6の実施の形態における動作原理は、クロック位相同期回路の動作は第1の実施の形態の場合と同様であり、光時分割多重信号の多重分離動作は従来技術の場合と同様である。
【0064】
光信号を受信する際に、複数の受信部に信号を分岐し、光遅延器706−2〜706−4を用いて受信したい信号チャネルに局部発振光の周波数変動のタイミングを一致させることで、複数の信号チャネルを同時に受信することが可能であり、さらに、クロック位相同期回路部は、全ての信号チャネルの受信部で一つのみ用意すればよいため、クロック位相同期回路部を共有可能であり、経済的な光受信器を構成することができる。
【0065】
上述のように、本発明は、光時分割多重信号受信時におけるクロック位相同期回路を、光領域と電気領域の信号処理を両方用いることで、部品点数の削減を可能とし、さらに、光時分割多重信号の多重分離回路と部品を共有することも可能であるため、クロック位相同期回路を含む光受信器を経済的な構成により実現することができる。
【0066】
上記第1〜第3の実施の形態のクロック位相同期回路又は上記第4〜第7の実施の形態の光受信器において、図2B(c)、図2C(c)に示すように、クロック位相同期回路に含まれる電気バンドパスフィルタの透過帯域を、f−fLO±f/2の周波数成分を透過するように設定する。
【0067】
ここで、多重分離動作が可能な場合、つまり、図2Bにあるように、光時分割多重信号の目的の信号チャネルと局部発振光の周波数変動が+Δfになるタイミングが一致した場合には、f−fLO±f/2の周波数成分が他の周波数成分よりも大きく出力され、多重分離動作が不可能な場合、つまり、光時分割多重信号の目的の信号チャネルと局部発振光の周波数変動が+Δfになるタイミングが時間的にf/2ずれている場合には、f−fLO±f/2の周波数成分が他の周波数成分よりも小さく出力される。
【0068】
そのため、f−fLO±f/2の周波数成分を電気バンドパスフィルタで透過することで、多重分離動作が可能となる場合と不可能となる場合の位相誤差信号の強度差を、他の周波数成分を透過する場合と比較し大きくとることができることから、高感度なクロック位相同期回路を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1A】従来技術を示す図である。
【図1B】従来技術の動作原理を説明する図である。
【図2A】本発明の第1の実施例を示す図である。
【図2B】第1の実施例の動作原理を説明する図である。
【図2C】第1の実施例の動作原理を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施例を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施例を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施例を示す図である。
【図6】本発明の第5の実施例を示す図である。
【図7】本発明の第6の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
101,501,601,701 光受信器
102,202,303,402,502,602,703 信号発生器
103,203,403 直接変調光源
104,204,305,404,504,604,707−1,707−2,707−3,707−4 光結合器
105,205,306,405,505,605,608 光検波器
106,206,307,406,506,508,606,609 電気バンドパスフィルタ
107,507,607 中間周波信号復調器
201,301,401 クロック位相同期回路
207,308,407,509,610 強度検波器
302 光源
304 外部変調器
503,603,704 変調光源
702,705 光分岐器
706−2,706−3,706−4 光遅延器
708−1,708−2,708−3,708−4 光受信部
709 位相制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光時分割多重信号を多重分離受信する際に用いるクロック位相同期回路において、
信号発生手段と、
前記信号発生手段により直接周波数偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段と、
前記光時分割多重信号と前記光信号出力手段から出力された直接周波数偏移変調信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と直接周波数偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段と、
前記光受信手段の出力の一部を透過する透過手段と、
前記透過手段の出力を強度検波する強度検波手段とを具え、
前記強度検波手段の出力によって前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とするクロック位相同期回路。
【請求項2】
光時分割多重信号を多重分離受信する際に用いるクロック位相同期回路において、
連続光を出力する光出力手段と、
信号発生手段と、
前記信号発生手段の出力により、前記光出力手段から出力された連続光を周波数偏移変調又は位相偏移変調する光変調手段と、
前記光時分割多重信号と前記光変調手段から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段と、
前記光検波器の出力の一部を透過する透過手段と、
前記透過手段の出力を強度検波する強度検波手段とを具え、
前記強度検波手段の出力によって前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とするクロック位相同期回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクロック位相同期回路において、前記光受信手段が差動受信型光検波器を有することを特徴とするクロック位相同期回路。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のクロック位相同期回路において、前記透過手段の透過帯域を、前記光時分割多重信号の光周波数と局部発振光の光周波数の差から前記光時分割多重信号の信号速度の1/2だけずれた電気周波数を透過することを特徴とするクロック位相同期回路。
【請求項5】
光時分割多重信号を多重分離受信する光受信器において、
信号発生手段と、
前記信号発生手段の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段と、
前記光時分割多重信号と前記光信号出力手段から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段と、
前記光受信手段の出力の一部を透過する第1の透過手段と、
前記第1の透過手段の出力を復調する復調手段と、
前記光受信手段の出力の一部を透過する第2の透過手段と、
前記第2の透過手段の出力を強度検波する強度検波手段とを具え、
前記強度検波手段の出力によって前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とする光受信器。
【請求項6】
光時分割多重信号を多重分離受信する光受信器において、
信号発生手段と、
前記信号発生手段の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段と、
前記光時分割多重信号と前記光信号出力手段から出力された周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号の一部を光ヘテロダイン受信する第1の光受信手段と、
前記第1の光受信手段の出力の一部を透過する第1の透過手段と、
前記第1の透過手段の出力を復調する復調手段と、
前記光合波手段で合波された光時分割多重信号と周波数偏移変調信号又は位相偏移変調信号の一部を光ヘテロダイン受信する第2の光受信手段と、
前記第2の光受信手段の出力の一部を透過する第2の透過手段と、
前記第2の透過手段の出力を強度検波する強度検波手段とを具え、
前記強度検波手段の出力によって前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とする光受信器。
【請求項7】
光時分割多重信号を多重分離受信する光受信器において、
前記光時分割多重信号を分岐する第1の光分岐手段と、
信号発生手段と、
前記信号発生手段の出力により周波数偏移変調又は位相偏移変調された光信号を出力する光信号出力手段と、
前記光信号出力手段の出力光信号を分岐する第2の光分岐手段と、
前記第2の光分岐手段の出力光信号に光遅延を与える光遅延手段と、
前記第2の光分岐手段及び前記光遅延手段の出力光信号と、前記第1の光分岐手段の出力光信号とを合波する光合波手段と、
前記光合波手段で合波された出力光信号を光ヘテロダイン受信する光受信手段と、
前記光受信手段の出力の一部を用いて復調する復調手段と、
前記光受信手段の出力の一部を用いて位相制御信号を抽出する位相制御信号抽出手段とを具え、
位相制御信号抽出手段の出力により前記信号発生手段の出力信号の位相を制御することを特徴とする光受信器。
【請求項8】
請求項5から7のうちのいずれか1項に記載の光受信器において、前記光受信手段が差動受信型光検波器を有することを特徴とする光受信器。
【請求項9】
請求項5から8のうちのいずれか1項に記載の光受信器において、前記透過手段の透過帯域を、前記光時分割多重信号の光周波数と局部発振光の光周波数の差から前記光時分割多重信号の信号速度の1/2だけずれた電気周波数を透過することを特徴とする光受信器。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−118089(P2009−118089A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287735(P2007−287735)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】