説明

クロムメッキ上のカラークリア塗装方法

【課題】従来技術は、クロムメッキ上に2層の異なる性質の塗料の塗布を行なう必要があるため、作業工程が2倍となり、生産コストが非常に高価になるという問題点があった。
【解決手段】クロムメッキ3上に塗装するカラークリア塗装方法において、カラークリア塗料1の中に、酸化チタンの粒子3を混入してクロムメッキ3上に塗装することを特徴とするクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗装、特に自動車のラジエータグリル等の外装部品の塗装において、クロムメッキ上にカラークリア塗装を行なうクロムメッキ上のカラークリア塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体表面や外装部品は、意匠性の向上のためクロムメッキの上にアクリルシリコン系の透明性を有するカラークリア塗装を行なうことが知られている。
【0003】
しかしカラークリア塗装に使用されるアクリルシリコン系樹脂からなる塗装剤は、塗膜が硬くなるため表面に擦り傷が付きにくいという耐擦り傷性は有していたが、自動車の走行中に跳ね上げられる石ツブなどによるチッピングへの耐性は小さく脆い性質があった。
【0004】
従来、この耐チッピング性を確保するため、クロムメッキの上にプライマー塗膜を成膜し、その上に カラークリア塗装を行なうことが行なわれていた。例えば特開平8−131939号公報(従来技術1)には、「クロムメッキの表面を清浄にして、汚損しないように保護手段を講じ、2液ポリエステル系透明チッピングプライマにより、厚さ寸法10〜15μmの透明プライマ塗膜を成膜し、透明顔料で調色した2液反応型クリヤー塗料によって厚さ寸法15〜25μmのカラークリア塗膜を成膜する」塗装方法が開示されている。
【0005】
そして、図6及び図1の従来品(2)に示す模式図のような従来技術1に記載された「クロムメッキの上にプライマ塗膜」をする塗装方法は、クロムメッキ層を含め3層構造とすることで耐擦り傷性とともに耐チッピング性の性能も向上していた。これは、表面のカラークリア塗膜が硬く耐擦り傷性に優れると共に、挟まれた2層目のプライマ塗膜は相対的に柔らかく、この柔らかさによってチッピング時のクッションの役目をもって塗膜の破壊を抑制していた。
【0006】
また、特開平8-71496号公報(従来技術2)には、「クロムメッキの上を水洗し、清浄な状態で乾燥し、クロムメッキの表面を汚染しないように気をつけて、シリコン・アクリル系2液反応型塗料に透明顔料を混和して調色し、スプレーガンで塗装して厚さ寸法15〜25μmのカラークリア塗膜を成膜する」塗装方法が開示されている。
【0007】
更に、特開平10−286519号公報(従来技術3)には、「クロムメッキ面に、光輝性粒子が分散配合されたクリア塗料を塗装してベース塗膜層を形成し、次いでこのベース塗膜層上にクリア塗料を塗装してクリア塗膜層を形成する」塗装方法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−131939号公報(従来技術1)
【特許文献2】特開平8−71496号公報(従来技術2)
【特許文献3】特開平10−286519号公報(従来技術3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車の車体表面や外装部品における塗装は、耐擦り傷性と耐チッピング性が必要とされ、従来技術1はその必要性を満たしてはいる。しかし従来技術1は、クロムメッキ上に2層の異なる性質の塗料の塗布を行なう必要があるため、作業工程が2倍となり、生産コストが非常に高価になるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、クロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法において、カラークリア塗料の中に、酸化チタンの粒子を混入してクロムメッキ上に塗装することを特徴とするクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法を提案する。
【0010】
また、酸化チタンの粒径が0.1乃至0.2μmの間の粒径からなり、酸化チタンの総添加量が、塗料樹脂に対する重量濃度で0.05乃至0.1%であって、粒径の大きさと総添加量との相関関係が、粒径の大きさが大きいほど総添加量が小さくなるような反比例の関係である0009欄に記載のクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法を提案する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、クロムメッキ上のカラークリア塗装方法が、耐チッピング性を向上させるとともに、クロムメッキ上への1回の塗装で完了することができるため作業効率が向上するとともに、製造価格を低く抑えることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法に関する図1乃至図5に基づいて説明する。
【0013】
この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法は、車体等の上にクロムメッキ塗装3をした塗膜の上にカラークリア塗料1の中に、酸化チタン2の粒子を混入したカラークリア塗料1をクロムメッキ塗膜3の上に塗装して行なう。
【0014】
このカラークリア塗料1の中に混入させる酸化チタン2の粒径は、0.1乃至0.2μmの間の粒径からなり、酸化チタン2の総添加量が、塗料樹脂に対する重量濃度で0.05乃至0.1%であって、酸化チタンの粒径の大きさと酸化チタン総添加量との相関関係が、粒径の大きさが大きいほど総添加量が小さくなるような反比例の関係である。
【0015】
この酸化チタンの粒子の粒径と酸化チタンの重量濃度の相関関係を示す図2に示す。図2の斜線部分は、耐チッピング性を有しカラークリア塗装の色調を変えず白濁が発生しない範囲を示す。
【0016】
図3に、この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法と従来技術の塗装方法の耐チッピング性を比較する比較表を示す。
【0017】
図4に、この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法と従来技術の塗装方法の内部応力を比較する比較表を示す。従来技術に比較し、この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法は、内部応力が弱いため耐チッピング性が向上する。
【0018】
図5に、この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法と従来技術の塗装方法の破断応力と伸び率を比較する比較表を示す。この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法は、破断強度とともに伸び率も比較的大きい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、自動車等の外装や外装部品の塗装に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法と従来技術との比較表
【図2】この発明に使用するカラークリア塗料に混入する酸化チタンの粒子の粒径と塗料樹脂に対する重量濃度の相関関係を示す表
【図3】この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法と従来技術との耐チッピング性を比較する比較表
【図4】この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法と従来技術の塗装方法の内部応力を比較する比較表
【図5】この発明の実施形態であるクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法と従来技術の塗装方法の破断応力と伸び率を比較する比較表
【図6】従来技術の塗膜層を示す模式図
【符号の説明】
【0021】
1 カラークリア塗料
2 酸化チタン粒子
3 クロムメッキ塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法において、カラークリア塗料の中に、酸化チタンの粒子を混入してクロムメッキ上に塗装することを特徴とするクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法。
【請求項2】
酸化チタンの粒径が0.1乃至0.2μmの間の粒径からなり、酸化チタンの総添加量が、塗料樹脂に対する重量濃度で0.05乃至0.1%であって、粒径の大きさと総添加量との相関関係が、粒径の大きさが大きいほど総添加量が小さくなるような反比例の関係である請求項1に記載のクロムメッキ上に塗装するカラークリア塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−136808(P2009−136808A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317283(P2007−317283)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】