クロロトキシンとの併用化学療法
【課題】肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫の治療薬の提供。
【解決手段】クロロトキシン又はその誘導体と併用して使用される少なくとも1つの化学療法薬を特に伴う、併用化学療法のための組成物及び方法。
【解決手段】クロロトキシン又はその誘導体と併用して使用される少なくとも1つの化学療法薬を特に伴う、併用化学療法のための組成物及び方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願]
本出願は、どちらも参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、米国仮出願第60/406,033号(2002年8月27提出)及び米国仮出願第60/384,171号(2002年5月31日提出)の利益を請求する。
[発明の分野]
【0002】
本発明は一般に、細胞生理学及び腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本発明は、化学療法薬と併用したクロロトキシン及び/又はその誘導体の投与量を用いて、癌などの細胞増殖障害を治療する新規な方法に関する。
[発明の背景]
【0003】
脳組織で発生する腫瘍は、癌が脳に転移したときに発生する二次脳腫瘍に対して、原発性脳腫瘍として知られている。原発性脳腫瘍は、腫瘍が始まる組織の種類によって分類される。最も一般的な脳腫瘍は神経膠腫であり、それはグリア(支持)組織で始まる。星状細胞腫は、星状細胞と呼ばれる小型の星形細胞から生じる神経膠腫の種類である。それらは脳又は脊髄のどこでも増殖するが、ほとんどの場合、成人では大脳、小児では脳幹、大脳、及び小脳で発生する。グレードIIIの星状細胞腫は場合により未分化星状細胞腫と呼ばれるのに対して、グレードIVの星状細胞腫は通常、多形性膠芽腫と呼ばれる。脳幹神経膠腫は、脳の最も低い幹様部分に発生する。この部分の腫瘍は一般に除去できない。ほとんどの脳幹神経膠腫は、ハイグレードの星状細胞腫である。上衣腫は通常、脳室の内層に発生する神経膠腫の一種であり、脊髄にも発生することがある。これらの腫瘍はどの年齢でも発生する可能性があるが、それらは小児期及び思春期に最も多い。乏突起膠腫は、神経を保護する脂肪被膜であるミエリンを生成する細胞に発生する。これらの稀な腫瘍は通常、大脳に発生し、ゆっくり増殖し、通常は周囲の脳組織に広がらず、ほとんどの場合中年成人に発生するが、すべての年齢の人に見出されている。
【0004】
グリア組織から発生しない他の種類の脳腫瘍がある。かつて髄芽細胞腫は、グリア細胞から発生すると考えられていた。しかしながら最近の研究から、これらの腫瘍が、通常は生後に体内に残らない未分化の(発達中の)神経細胞から発生することが示唆されている。このため、髄芽細胞腫は場合により、未分化神経外胚葉性腫瘍と呼ばれる。大半の髄芽細胞腫は小脳で発生するが、しかしながらそれらは他の部分でも発生することがある。髄膜腫は、髄膜から増殖し、通常は良性である。これらの腫瘍は非常にゆっくりと増殖するため、脳はその存在に順応することが可能であり、したがってこれらの腫瘍は、症状を引き起こす前に、かなり大きく増殖することが多い。神経鞘腫は、聴神経を保護するミエリンを生成するシュワン細胞で始まる良性腫瘍である。聴神経腫は神経鞘腫の一種であり、主に成人に発生する。頭蓋咽頭腫は、視床下部付近の下垂体の領域に発生し、通常良性であるが、しかし、それらは視床下部を圧迫又は損傷し、生命機能に影響を及ぼすことがあるため、場合により悪性と見なされる。胚細胞腫瘍は、未分化(発達中の)性細胞又は胚細胞から生じる。脳における胚細胞腫瘍の最も頻度の高い種類は、胚細胞腫である。松果体部腫瘍は、脳の中心付近の小型器官である松果体の中又は付近で起こる。腫瘍は、低速増殖型(松果体細胞腫)又は高速増殖型(松果体芽細胞腫)でありうる。松果体部は到達するのが非常に困難であり、これらの腫瘍は除去できないことが多い。
【0005】
未分化神経外胚葉性腫瘍は、中枢及び末梢神経系の両方に見られる。末梢神経系にのみ見られる未分化神経外胚葉性腫瘍は、末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍と呼ばれる。未分化神経外胚葉性腫瘍は小児に特異的に現れ、各種のニューロン、星状細胞、上衣、筋肉及び黒色系に発生する能力を持つ。これらの腫瘍を共にグループ化する概念基盤は、共通の前駆細胞を共有することはもちろんのこと、同じ形態素性及び生物学的挙動の腫瘍を引き起こす同じ腫瘍性形質転換を共有することに基づいている。しかしながら、すべての未分化神経外胚葉性腫瘍を同じカテゴリに配置することには議論が残っている。
【0006】
テント上未分化神経外胚葉性腫瘍は、大脳髄芽細胞腫、大脳神経芽腫、上衣芽細胞腫及び他の未分化神経外胚葉性腫瘍、例えば松果体芽細胞腫を含む。副腎(髄質)及び交感神経系の末梢神経芽腫瘍は、中枢神経系の外部の小児癌の最も一般的な種類である。これらの未分化神経外胚葉性腫瘍の原発部位は、副腎、腹部、胸部、頚部及び骨盤交感神経節であるが、眼窩、腎臓、肺、皮膚、卵巣、精管及び膀胱などの他の原発部位も含む。これらの関連腫瘍の種名は、褐色細胞腫、パラガングリオン腫、神経芽細胞腫、神経節細胞腫、神経節芽細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫及び悪性末梢神経鞘腫である。これらはすべて神経堤に共通の起源を共有している。髄芽細胞腫は、小脳に見られる中枢神経系の高度に悪性な胎児性腫瘍として説明される未分化神経外胚葉性腫瘍の一員である。
【0007】
現在、外科手術は、中枢神経系の腫瘍で一般に好まれる治療である。外科手術は、的確な診断を提供し、腫瘍塊のかさ高性を軽減し、患者の生存を延長する。中枢神経系腫瘍に効果的に作用することが既知である唯一の術後補助治療は放射線であり、放射線は生存を延長することができる。しかしながら放射線治療は、多くの望ましくない副作用を有する。それは、神経組織を含む患者の正常組織を損傷する可能性がある。放射線は、重篤な副作用(例えば吐き気、嘔吐、脱毛)も引き起こす可能性がある。
【0008】
他の一般的な術後補助癌治療である化学療法は、神経外胚葉性腫瘍に対して相対的に有効でない。例えばニトロソウレア剤を用いた神経外胚葉性腫瘍に対する化学療法は、治癒力がない。多くの他の癌治療剤が研究及び試験されてきたが、一般に多くの薬剤が血液脳関門を通過しないために、一般にそれらは生存延長に対して最小限の効果を持つ。これらの制限された治療選択肢を考慮すると、神経外胚葉性腫瘍と診断された患者の現在の予後は好ましくない。悪性星状細胞腫と診断され、外科手術を受け補助治療を行わない患者の生存期間の中央値は、約14週間である。術後の放射線治療は、中央値を約36週間に延長する。すべての形式の治療についての現在の2年間生存率は、10パーセント未満である。
【0009】
他の種類の腫瘍も既知の癌治療によって対処することは困難である。肺癌は、次の4つの最も頻繁に診断される腫瘍を合わせたよりも、毎年多くの米国人を死なせている(Greenlee et al.(2001)CA Cancer J.Clin.51,15−36)。原発性肺腫瘍の約80パーセントが腺癌と同様に、扁平上皮癌及び大細胞癌を含む非小細胞種である。非小細胞肺癌の早期及び後期の大半の症例には、単一様式治療が適切であると見なされる。早期腫瘍は潜在的に処置、化学療法、又は放射線治療によって治癒可能であり、後期の患者は通常、化学療法又は最善の支持療法を受ける。中期又は局所的に進行した非小細胞肺癌は、全症例の25〜35パーセントを構成し、更に通例は多様式治療によって治療される。
【0010】
乳癌も既知の薬剤を用いる処置の困難さを呈している。米国での乳癌の発生率は、1980年以来、毎年約2パーセントの割合で上昇しており、米国癌学会は、2001年に192,000件の侵襲性乳癌が診断されると予測した。乳癌は通常、外科手術、放射線治療、化学療法、ホルモン治療又は各種方法の組合せによって処置される。乳癌での癌化学療法の失敗の主な理由は、細胞毒性薬への耐性の発生である。作用機構の異なる薬物を用いた併用療法は、処置された腫瘍による耐性の発生を防止する処置の許容された方法である。抗血管新生薬は、それらが腫瘍に作用しないが、正常な宿主組織に作用するために耐性を引き起こしにくいので、併用療法で特に有用である。
【0011】
神経外胚葉性腫瘍(例えば神経膠腫及び髄膜腫)を診断及び治療するための組成物(米国特許第5,905,027号を参照)及び方法(米国特許第6,028,174を参照)は、クロロトキシンが神経外胚葉性起源の腫瘍細胞に結合する能力に基づいて開発されてきた(Soroceanu et al.(1998)Cancer Res.58,4871−4879; Ullrich et al.(1996)Neuroreport 7,1020−1024;Ullrich et al.(1996)Am.J.Physiol.270,C1511−C1521)。神経外胚葉性腫瘍の診断は腫瘍細胞に結合された標識クロロトキシンの識別によって実施されるが、これに対して神経外胚葉性腫瘍の処置は、クロロトキシンに結合された細胞毒性薬によって腫瘍を標的化することによって実施される。クロロトキシンは、leiurus quinquestriatusサソリ毒素から天然由来する36アミノ酸タンパク質である(DeBin et al.(1993)Am.J.Physiol.264,C361−369)。本発明は、クロロトキシンを、他の従来の癌治療剤と併用して使用して癌を治療するための方法を提供することによって、治療学のこの分野を拡張する。
[発明の概要]
【0012】
本発明は、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体を少なくとも1つの化学療法薬と併用して投与することを含む、癌を治療するための方法を含む。一部の実施形態において、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体は化学療法薬の投与前に投与されるが、これに対して他の実施形態においては、化学療法薬と同時に投与され、これに対してなお他の実施形態においては、化学療法薬に続いて投与される。
【0013】
本発明の方法の別の実施形態において、化学療法薬は、アルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤からなる群より選択される。本発明の方法で使用されるそのような化学療法薬の例は、これに限定されるわけではないが、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドルビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、ピリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン及びアミフォスチンを含む。
【0014】
さらに別の実施形態において本発明の方法は、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される癌の種類を処置するために有用である。
【0015】
本発明は、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体及び少なくとも1つの化学療法薬を含む、癌を治療するための組成物も含む。一部の実施形態において、化学療法薬は、アルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤からなる群より選択される。本発明の組成物で使用されるそのような化学療法薬の例は、これに限定されるわけではないが、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドルビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、ピリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン及びアミフォスチンを含む。
【0016】
本発明の組成物は、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される癌の1つ以上の種類の処置に有用である。
【0017】
本発明は、標識クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体(放射性標識クロロトキシン又はその誘導体を含む)の検出可能な量を投与することを含む、患者の癌の存在を検出するための方法も含む。許容される放射性標識は、これに限定されるわけではないが、3H、14C、18F、19F、31P、32P、35S、131I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc及び177Luを含む。検出可能な癌の種類は、これに限定されるわけではないが、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫を含む。
[詳細な説明]
【0018】
本発明は、クロロトキシン又はその誘導体と併用して使用される少なくとも1つの化学療法薬を特に伴う、併用化学療法に関する。1つの態様において本発明は、癌細胞にクロロトキシンを化学療法薬と併用して最初に投与することによって、癌細胞を殺すための組成物及び方法を含む。本発明は、クロロトキシンを化学療法薬と同時に腫瘍に投与することによって、腫瘍の成長を遅延させる方法を含む。別の態様において、本発明は、最初にクロロトキシン(又はクロロトキシン誘導体)を投与すること及び続いて化学療法薬を投与することによって、癌細胞を殺す又は腫瘍の成長を遅延させるための組成物及び方法を含む。本発明は、最初に化学療法薬を投与すること及び続いてクロロトキシン(又はクロロトキシン誘導体)を投与することによって、癌細胞を殺す又は腫瘍の成長を遅延させるための方法も含む。クロロトキシン又はその誘導体の前投与、同時投与又は後投与は、好結果の治療に必要な化学療法薬の量を減少させ、それゆえ化学療法薬に関連する重篤な副作用を減少させる効果も有する。
【0019】
併用化学療法組成物
本発明は、化学療法薬と組合された、異常な細胞増殖の阻害において化学療法薬の効果を向上させるのに有効である(すなわち、化学療法薬のためのアジュバントとして作用する)クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体の量及び薬学的に許容される担体を含む、ヒトを含む哺乳動物における異常な細胞増殖の治療のための医薬組成物を含む。
【0020】
本明細書で使用される、「異常な細胞増殖」は、別途指摘しない限り、正常な調節機構に依存しない細胞増殖(例えば接触阻止の損失)を指す。これは腫瘍性疾患の良性及び悪性細胞の両方における細胞の異常な成長及び/又は増殖を含む。異常な細胞増殖の化学療法依存性阻害は、これに限定されるわけではないが、細胞死、アポトーシス、細胞分裂の阻害、転写、翻訳、形質導入などを含む各種の機構によって起こりうる。
【0021】
上記組成物の1つの実施形態において、異常な細胞増殖は癌である。本明細書で使用される、「癌」という用語は別途指摘しない限り、制御されない異常な細胞の成長及び/又は増殖を特徴とする疾患を指す。組成物が有用である癌の種類は、これに限定されるわけではないが、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫、或いは上述の癌の1又はそれ以上の組合せを含む。上記医薬組成物の別の実施形態において、上記の異常な細胞増殖は、これに限定されるわけではないが、良性前立腺肥大、過形成又は再狭窄を含む良性増殖性疾患である。
【0022】
上述のように、本発明は、少なくとも1つの化学療法薬及び薬学的に許容される担体と組み合わされた、上で定義されるクロロトキシンの量を含む、ヒトを含めた哺乳動物における異常な細胞増殖の治療のための医薬組成物を含む。本明細書で使用される、「化学療法薬」という用語は、別途指摘しない限り、異常な細胞の成長及び/又は増殖を阻害、混乱、防止又は妨害する、癌の治療で使用されるいずれかの薬剤を指す。化学療法薬の例は、これに限定されるわけではないが、アルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、ステロイドホルモン剤及び抗アンドロゲン剤を含む。一部の実施形態において、クロロトキシン又はその誘導体は、化学療法薬の単一種と併用することが可能であるが、これに対して他の実施形態において、クロロトキシンは、化学療法薬の複数種と併用することができる。
【0023】
アルキル化剤の例は、これに限定されるわけではないが、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン及びストレプトゾトシンを含む。抗生剤の例は、これに限定されるわけではないが、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン及びプリカマイシンを含む。代謝拮抗剤の例は、これに限定されるわけではないが、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、メトトレキサート及び6−チオグアニンを含む。有糸分裂阻害剤の例は、これに限定されるわけではないが、ナベルビン、パクリタキセル、ビンブラスチン及びビンクリスチンを含む。ステロイドホルモン剤及び抗アンドロゲン剤の例は、これに限定されるわけではないが、アミノグルテチミド、エストロゲン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、プレドニゾン及びタモキシフェンを含む。
【0024】
一部の態様において、本発明はコンジュゲート分子の集団を含み、上記コンジュゲート分子は少なくとも1つのクロロトキシンペプチド又はその誘導体及び少なくとも1つの化学療法薬を含み、クロロトキシン及び化学療法薬のコンジュゲーションの程度は、コンジュゲートを受ける哺乳動物における化学療法薬の効果が、化学療法薬とクロロトキシンとの混合物、又は化学療法薬単独と比較したときに向上する程度である。別の態様において、本発明は、少なくとも1つのクロロトキシンペプチド又はその誘導体が、少なくとも1つの化学療法薬及び薬学的に許容される賦形剤にコンジュゲートされる、コンジュゲート分子の集団を含む組成物を含む。一部の実施形態において、クロロトキシン又はその誘導体は、化学療法薬の単一種に結合させることができるが、これに対して他の実施形態において、クロロトキシンは化学療法薬の複数種に結合させることができる。
【0025】
本明細書で使用される、「クロロトキシン」という用語は、別途説明しない限り、配列番号1に記載の自然のクロロトキシンのアミノ酸配列を含む、Leiurus quinquestriatusサソリ毒素から天然由来の全長36アミノ酸ポリペプチドを指す(DeBin et al.(1993)Am.J.Physiol.264,C361−369)。「クロロトキシン」という用語は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている米国特許第6,319,891号で開示されているものなどの、合成又は組換えによって生成された配列番号1を含むポリペプチドを含む。
【0026】
本明細書で使用される、「クロロトキシンサブユニット」又は「クロロトキシンのサブユニット」という用語は、クロロトキシンの36未満の隣接アミノ酸を含み、癌細胞に特異的に結合できるペプチドを指す。
【0027】
本明細書で使用される、「クロロトキシン誘導体」という用語は、クロロトキシンの誘導体、類似体、変異体、ポリペプチド断片及びミメティクスを指し、正常細胞と比較したときに癌細胞に特異的に結合するなどの、クロロトキシンと同じ活性を保持する関連ペプチドも、本発明の方法を実施するために使用することができる。
【0028】
誘導体の例は、これに限定されるわけではないが、クロロトキシンのペプチド変異体、クロロトキシンのペプチド断片、例えば配列番号1、2、3、4、5、6又は7の連続する10merペプチドを含む又はそれからなる、或いは配列番号1のおおよその残基10−18又は21−30を含む断片、コア結合配列、及びペプチドミメティクスを含む。
【0029】
クロロトキシン及びそのペプチド誘導体は、当該技術分野で既知であるように、標準的な固相(又は液相)ペプチド合成方法を用いて調製することができる。加えてこれらのペプチドをコードする核酸は、市販のオリゴヌクレオチド合成機器を用いて合成され、標準的な組換え作製システムを用いて組換えにより作製される。固相ペプチド合成を用いた作製は、非遺伝子コード化アミノ酸が含まれる場合には必要とされる。本明細書で使用される、「クロロトキシン誘導体」という用語は、「変異体」と同義であり、10までの(例えば1〜7又は1〜5)のアミノ酸の1以上の欠失;クロロトキシンのアミノ酸配列の内部の合計10までの(例えば1〜5の)アミノ酸の挿入;又はクロロトキシン配列のどちらかの末端における合計100までのアミノ酸の挿入;合計15までの(例えば1〜5の)アミノ酸の保存置換による、クロロトキシン配列への修飾も含む。
【0030】
クロロトキシンの誘導体は、誘導体配列及びクロロトキシン配列が最大限に配列されたときに、少なくとも1つのアミノ酸残基の保存又は非保存置換を含むポリペプチドを含む。置換は、クロロトキシンの少なくとも1つの特性又は機能を向上させるか、クロロトキシンの少なくとも1つの特性又は機能を阻害するか、或いは1つのクロロトキシンの少なくとも1つの特性又は機能に対して中立である置換である。本明細書で使用される、クロロトキシンの「特性又は機能」は、これに限定されるわけではないが、異常な細胞増殖を停止し、被験者の麻痺、非癌細胞(すなわち正常)と比較したときの良性又は悪性癌細胞への特異的結合、良性又は悪性癌細胞の死滅を引き起こす能力からなる群より選択される少なくとも1つを含む。本開示に関して、癌細胞は、被験者、培養細胞又は細胞系からのインビボ、エキソビボ、インビトロでの、一次アイソレートでもよい。
【0031】
クロロトキシンの誘導体は更に、配列番号1のアミノ酸残基23−29に相当する、アミノ酸配列KGRGKSY(配列番号8)を含むポリペプチドを含む。クロロトキシンの誘導体は、配列番号1のアミノ酸残基7−15に相当する、アミノ酸配列TTX1X2X3MX4X5K(配列番号13)を含むポリペプチドも含み、ここでX1は、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択される酸性アミノ酸であり;X2は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンからなる群より選択されるアミノ酸であり;X3は、アスパラギン及びグルタミンからなる群より選択されるアミドアミノ酸であり;X4は、いずれかのアミノ酸であるが、好ましい実施形態においては、セリン、トレオニン及びアラニンからなる群より選択され;X5は、ヒスチン、リジン及びアルギニンからなる群より選択される塩基性アミノ酸である。1つの実施形態において、X1はアスパラギン酸であり、X2はヒスチジン又はプロリンであり、X3はグルタミンであり、X4はアラニンであり、X5はアルギニン又はリジンである。
【0032】
クロロトキシンのペプチド変異体は、これに限定されるわけではないが、配列番号1の欠失又は保存アミノ酸置換変異体を含む。本明細書で使用されるように、保存変異体は、ペプチドの生物機能に実質的に影響を及ぼさない、アミノ酸配列における変化を指す。置換、挿入又は欠失は、変更された配列がペプチドに関連付けられた生物機能(例えば癌細胞への結合)を実質的に防止する又は破壊するときに、ペプチドに影響を及ぼすと言われる。例えばペプチドの全体的な電荷、構造又は疎水性/親水性特性は、生物活性に影響を及ぼすことなく変化させることができる。したがってアミノ酸配列は、ペプチドの生物活性に影響を及ぼすことなく、例えばペプチドを更に疎水性又は親水性にするように変更することができる。
【0033】
本発明の方法は、癌を含む、本明細書で述べる異常な細胞増殖に関連する疾患の診断及び治療のための、クロロトキシンに対する同様の又は関連する活性を示す、他のサソリ種の対応するポリペプチド毒素を含む。本明細書において、「クロロトキシンに対する同様の又は関連する活性」は、異常な細胞増殖を示す細胞(異常増殖を示す良性細胞及び悪性癌細胞を含む)への結合として定義される。そのようなポリペプチド毒素の例は、これに限定されるわけではないが、配列番号8又は配列番号13に示されるクロロトキシンの結合領域の1つ以上、及び表1に示すコンセンサス配列のいずれかを含有する毒素を含む。
【0034】
【表1−1】
【0035】
【表1−2】
【0036】
【表1−3】
【0037】
【表1−4】
【0038】
【表1−5】
【0039】
【表1−6】
【0040】
本明細書で使用される、「関連するサソリ毒素」という用語は、クロロトキシンに対するアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列の同一性を示す表1に開示されたものなどの、毒素又は関連するペプチドのいずれかを指す。関連するサソリ毒素の例は、これに限定されるわけではないが、Mesobuthus martensii由来のCTニューロトキシン(GenBank Accession AAD47373)、Buthus martenssi karsch由来のニューロトキシンBmK41−2(GenBank Accession A59356)、Buthus martenssi由来のニューロトキシンBm12−b(GenBank Accession AAK16444)、Leiurus quinquestriatus hebraeu由来のプロバブルトキシンLQH8/6(GenBank Accession P55966)、Mesobuthustanaulus sindicus由来のスモールトキシン(GenBank Accession P15229)を含み、その配列は、その全体が参照により本明細書にすべて組み入れられている。
【0041】
ヌクレオチド又はアミノ酸配列レベルでの相同又は配列同一性は、配列類似性検索に調整されている、プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxによって利用されるアルゴリズムを使用して、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)解析によって決定される(Altschul et al.(1997) Nucleic Acids Res.25,3389−3402及びKarlin et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,2264−2268、どちらも参照により全体が組み入れられている)。BLASTプログラムによって使用された手法は、最初にクエリー配列及びデータベース配列の間でギャップを有する(非連続)及びギャップを有しない(連続)同様の断片を考慮し、次に識別されたすべての一致の統計的有意性を評価し、そして最後に有意性の予備選択された閾値を満足するこれらの一致のみを要約することである。配列データベースの類似性検索における基本的課題の議論については、参照により全体が組み入れられている、Altschul et al.(1994)Nature Genetics 6,119−129を参照。histogram、descriptions、alignments、expect(例えばデータベース配列に対する一致を報告するための統計的有意性閾値)、cutoff、matrix及びfilter(low complexity)の検索パラメータは、デフォルト設定である。blastp、blastx、tblastn、及びtblastxによって使用されるデフォルトのスコアリング・マトリクスは、長さが85を超えるヌクレオチド又はアミノ酸のクエリー配列に推奨されるBLOSUM62マトリクス(Henikoff et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,10915−10919、参照により全体が組み入れられている)である。
【0042】
blastnでは、スコアリング・マトリクスは、M(すなわちマッチする残基の対の報酬スコア)のN(すなわちミスマッチする残基のペナルティスコア)に対する比によって設定され、ここでM及びNのデフォルト値はそれぞれ+5及び−4である。4個のblastnパラメータは以下のように調整した:Q=10(ギャップ作成ペナルティ);R=10(ギャップ拡張ペナルティ);wink=1(クエリーに沿ってwink番目ごとにワードヒットを生成する);及びgapw=16(ギャップ付きアライメントが生成されるウィンドウ幅を設定する)。等価のBlastpパラメータ設定はQ=9;R=2;winke=1;及びgapw=32であった。GCGパッケージversion 10.0で利用できる配列間のBestfit比較は、DNAパラメータGAP=50(ギャップ生成ペナルティ)及びLEN=3(ギャップ拡張ペナルティ)及びタンパク質比較における等価設定は、GAP=8及びLEN=2である。
【0043】
本発明は、少なくとも約75パーセントの、少なくとも約85パーセントの、少なくとも約90パーセントの配列、少なくとも約95パーセント、又は少なくとも約99パーセントの、配列番号1で示されたクロロトキシン配列全体との配列同一性のアミノ酸配列を有する、対立変異体、保存置換変異体、及びサソリ毒素ペプチドファミリーのメンバーを含む。そのような配列についての同一性又は相同性は、配列の整列後に既知のペプチドと一致する、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書では定義される。
【0044】
融合タンパク質、又はN−末端、C−末端又はペプチド配列内への内部拡張、欠失、又は挿入は、相同性に影響を及ぼすとして構築されるものではない。そのような拡張の例は、これに限定されるわけではないが、以下の配列を含む:
HHHHHHMCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR(配列番号2)、
YMCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR(配列番号3)、
YSYMCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR(配列番号4)。
【0045】
クロロトキシンペプチド変異体は、少なくとも約7、8、9、10、15、20、25、30、又は35の連続するアミノ酸残基を有する、配列番号1で示されたアミノ酸配列の断片を有するペプチドを含む。ペプチド変異体は更に、クロロトキシンの活性に関連付けられるこれらの断片を含む。ポリペプチドとも呼ばれるそのような断片は、顕著な親水性の領域と同様に、既知のペプチドドメインに一致するアミノ酸配列の領域として同定されたクロロトキシンペプチドの機能領域を含有できる。変異体は、リンカー配列によって除去又は置換された介在アミノ酸と、どんな順序でも相互に連結した少なくとも2つのコア配列を備えたペプチドも含むことができる。領域はすべて、MacVector(Oxford Molecular)などの一般に入手可能なタンパク質配列解析ソフトウェアを使用することによって容易に同定できる。
【0046】
考慮されたペプチド変異体は更に、例えば相同組換え、部位特異的又はPCR突然変異誘発による規定の変異を含有するもの、及びペプチドのファミリーの対立遺伝子又は他の自然発生変異体;及び自然発生アミノ酸以外の部分(例えば酵素又は放射性同位体などの検出可能な部分)を用いて、置換、化学、酵素又は他の適切な手段により、ペプチドが共有結合的に修飾された誘導体を含む。クロロトキシン変異体ペプチドの例は、これに限定されるわけではないが、以下の配列を含む:
MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCFGPQCLCR(配列番号5)、
RCKPCFTTDPQMSKKCADCCGGKGKGKCYGPQCLC(配列番号6)、
RCSPCFTTDQQMTKKCYDCCGGKGKGKCYGPQCICAPY(配列番号7)。
【0047】
ペプチドミメティクス
クロロトキシン誘導体の別のクラスにおいて、本発明は、クロロトキシンの三次元構造を模倣するペプチドミメティクスを含む。そのようなペプチドミメティクスは、例えばより経済的な生産、より大きい化学安定性、向上した薬理特性(半減期、吸収、効力、有効性など)、変化した特異性(例えば広範囲の生物活性)、低下した抗原性及びその他を含む、自然発生ペプチドに勝る顕著な利点を有することがある。
【0048】
1つの形式において、ミメティクスは、クロロトキシンペプチド二次構造の要素を模倣するペプチド含有分子である。ペプチドミメティクスの使用の背後にある、基礎を成す原理は、タンパク質のペプチド主鎖が主として、抗体及び抗原の分子相互作用などの、分子相互作用を促進するような方法で、アミノ酸側鎖を配向させるために存在することである。ペプチドミメティクスは、天然分子に類似した分子相互作用を許容することが期待される。別の形式において、ペプチド類似物質は、テンプレートペプチドの特性に類似した特性を備えた非ペプチド薬として、薬学業界で一般に使用される。非ペプチド化合物のこれらの種類は、ペプチドミメティクス(peptide mimetics)又はペプチドミメティクス(peptidomimetics)とも呼ばれ(参照により本明細書に組み入れられた、Fauchere(1986)Adv.Drug Res.15,29−69;Veber & Freidinger(1985)Trends Neurosci.8,392−396;Evans et al.(1987)J.Med.Chem.30,1229−1239)、通常、コンピュータ分子モデリングの補助によって開発される。
【0049】
治療的に有用なペプチドに構造的に類似しているペプチドミメティクスは、同等の治療又は予防効果を生成するために使用できる。一般にペプチドミメティクスは、パラダイムポリペプチド(すなわち生化学特性又は薬理活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、当業界の既知の方法によって場合によりある結合に置換された1つ以上のペプチド結合を有する。ペプチドミメティクスの標識化は通常、定量的構造−活性データ及び分子モデリングによって予測されるペプチドミメティクス上の非干渉位置への、直接の、又はスペーサー(例えばアミド基)を通じた1つ以上の標識の共有結合を包含する。そのような非干渉位置は一般に、治療効果を生じさせるためにペプチドミメティクスが結合するマクロ分子との直接的な接触を形成しない位置である。ペプチドミメティクスの誘導体化(例えば標識化)は、ペプチドミメティクスの所望の生物活性又は薬理活性を実質的に妨げるべきではない。
【0050】
ペプチドミメティクスの使用は、薬物ライブラリーを作成するためのコンビナトリアルケミストリーの使用によって向上させることができる。ペプチドミメティクスの設計は、例えば腫瘍細胞へのペプチドの結合を増加又は減少させるアミノ酸変異を同定することによって補助することができる。使用できる手法は、酵母ツーハイブリッド法(Chien et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,9578−9582を参照)及びファージディスプレイ法の使用を含む。ツーハイブリッド法は、酵母中のタンパク質−タンパク質相互作用を検出する(Fields et al.(1989) Nature 340,245−246)。ファージディスプレイ法は、固定化タンパク質とラムダ及びM13などのファージの表面で発現されるタンパク質との間の相互作用を検出する(Amberg et al.(1993)Strategies 6,2−4;Hogrefe et al.(1993)Gene 128,119−126)。これらの方法は、ペプチド−タンパク質相互作用の正及び負の選択並びにこれらの相互作用を決定する配列の同定を可能にする。
【0051】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮又は頬部経路を通じて投与することができる。例えば薬剤は、マイクロインジェクションにより腫瘍に局所投与される。代わりに、又は同時に、投与は経口経路によって投与される。例えばクロロトキシン又はその誘導体は、腫瘍の部位に局所的に投与可能であり、少なくとも1つの化学療法薬の経口投与が続く。クロロトキシンの事前投与は、好結果の処置に必要な化学療法薬の量を減少させ、それゆえ化学療法薬に関連する重篤な副作用を減少させる効果を有する。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康状態及び体重、もしあれば同時治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存するであろう。
【0052】
本発明は、癌の治療に有用である、クロロトキシン又はその誘導体及び1つ以上の化学療法薬を含有する組成物を更に含む。個々の要求は変化するが、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当該技術分野の技能の範囲内である。代表的な投薬量は、1.0pg/kg体重〜100mg/kg体重である。全身投与の好ましい投薬量は、100.0ng/kg体重〜10.0mg/kg体重である。マイクロインジェクションによる部位への直接投与のための好ましい投薬量は、1ng/kg体重〜1mg/kg体重である。
【0053】
クロロトキシン及び化学療法薬に加えて、本発明の組成物は、賦形剤及び作用部位への送達のために薬学的に使用できる製剤への活性化合物の処理を促進する助剤を含む適切な薬学的に許容される担体を含有する。非経口投与に適した調合物は、水溶形、例えば水溶性塩の活性化合物の水溶液を含む。加えて、適当な油性注射用懸濁物としての活性化合物の懸濁物を投与できる。適切な親油性溶媒又はビークルは、脂肪油、例えばゴマ油又は合成脂肪酸エステル(例えばエチルオレアート又はトリグリセリド)を含む。水性注射懸濁物は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及びデキストランを含む、懸濁物の粘度を上昇させる物質を含有することができる。場合により、懸濁物は、安定剤も含むことができる。細胞への送達のための薬剤をカプセル化するためにリポソームも使用できる。
【0054】
本発明による全身投与用の医薬製剤は、腸溶、非経口又は局所投与用に調合される。実際に、3種類すべての製剤が、活性成分の全身投与を達成するために同時に使用することができる。
【0055】
上述したように、局所投与を使用できる。溶液、懸濁物、ゲル、軟膏又は膏薬などの、いずれの通常の局所製剤が利用できる。そのような局所製剤の製剤は、例えばGennaro et al.(1995)Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishingに例示されているように、医薬製剤の技術分野で述べられている。局所投与のために、組成物は、パウダー又はスプレー、特にエアゾール形としても投与できる。一部の実施形態において、本発明の組成物は、吸入によって投与できる。吸入療法では、活性成分は定量吸入器による投与のために有用な溶液又は乾燥粉末吸入器に適した形である。別の実施形態において、組成物は、気管支洗浄による投与に適している。
【0056】
経口投与のための適切な製剤は、硬質又は軟質ゼラチンカプセル、丸薬、コーティング錠を含む錠剤、エリキシル、懸濁物、シロップ又は吸入及びその徐放形を含む。別の実施形態において、医薬組成物は、クロロトキシン又はその誘導体を、化学療法薬の少なくとも1つの徐放形と併用して含む。そのような製剤において、クロロトキシン又はその誘導体は、化学療法薬の放出前に体中に分布されて、化学療法薬の癌細胞への結合前に、クロロトキシンの癌細胞への結合を可能にする。そのような製剤からの化学療法薬の遅延放出時、及び癌細胞の部位への続いての分布時に、化学療法薬の効果は、クロロトキシンの癌細胞へのより早期の結合によって向上する。そのような徐放製剤は、クロロトキシンとそれに続く1つ以上の化学療法薬の連続投与と同じ効果を持つ。
【0057】
標識クロロトキシン及びクロロトキシン誘導体
本発明は、通常、自然に見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置換される1つ以上の原子を有する、同位体標識クロロトキシン又はその誘導体も含む。本発明の化合物中に組み入れることができる同位体の例は、水素、炭素、フッ素、リン、ヨウ素、銅、レニウム、インジウム、イットリウム、テクネチウム及びルテチウム(すなわち3H、14C、18F、19F、31P、32P、35S、131I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu)を含む。一部の実施形態において、金属(例えば銅、レニウム、インジウム、イットリウム、テクネチウム及びルテチウム)である同位体は、クロロトキシン又はその誘導体にキレート化によって非共有結合的に結合している。本発明に含まれるキレート化の例は、クロロトキシン又はその誘導体に融合されるポリヒスチジン(polyHis)領域への金属同位体のキレート化である。非金属同位体は、許容されるいずれかの手段を使用して、クロロトキシン又はその誘導体に共有結合される。
【0058】
本発明は、ガドリニウム(Gd)などの金属で標識されたクロロトキシン又はその誘導体も含む。一部の実施形態において、ガドリニウムなどの金属は、クロロトキシン又はその誘導体にキレート化によって共有結合的に結合している。本発明に含まれるキレート化の例は、クロロトキシン又はその誘導体に融合されたpolyHis領域へのガドリニウムなどの金属のキレート化である。
【0059】
本発明によって提供される標識クロロトキシン及びその誘導体は、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)の放射性トレーサーとしても有用である。
【0060】
上述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する、本発明の薬剤、そのプロドラッグ、及び上記薬剤又は上記プロドラッグの薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内である。トリチウム及び炭素−14同位体は、調製の容易さ及びその検出能で特に好ましい。更に重水素などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性から生じる治療上の利点、例えば延長されたインビボでの半減期又は減少した投薬量要件を与えることができ、それゆえ一部の状況において好ましい。
【0061】
クロロトキシンとの併用化学療法を用いる治療方法
本発明は、上記哺乳動物に、化学療法薬の前に、又はそれに続いて投与されるときに化学療法薬の効果を向上させるのに有効である(すなわち化学療法薬のアジュバントとして作用する)クロロトキシン又はその誘導体の量、或いはクロロトキシン又はその誘導体の量を含む医薬組成物を投与することを含む、ヒトを含む哺乳動物における異常な細胞増殖の治療のための方法も含む。この方法の1つの実施形態において、異常な細胞増殖は、これに限定されるわけではないが、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、或いは上述の癌の1つ以上の組合せを含む、癌である。上記方法の別の実施形態において、上記の異常な細胞増殖は、これに限定されるわけではないが、良性前立腺肥大、過形成又は再狭窄を含む良性増殖性疾患である。
【0062】
本発明は、異常な細胞増殖を阻害する化学療法薬の効果を向上させるのに有効である、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体及び1つ以上の化学療法薬の量を含む医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物(ヒトを含む)の異常な細胞増殖の治療のための方法も含む。これは、腫瘍性疾患の良性及び悪性細胞を含む癌細胞の異常な成長及び/又は増殖を含む。異常な細胞増殖の阻害は、これに限定されるわけではないが、細胞死、アポトーシス、細胞分裂の阻害、転写、翻訳、形質導入などを含む各種の機構によって起こりうる。
【0063】
上述したように、クロロトキシン及びその誘導体は、異常な細胞増殖(例えば癌)の治療に有用である他の化学療法薬と併用して、又は連続的に併用して提供することができる。本明細書において、2つの薬剤が同時に投与される、又は薬剤が同時に作用するような方法で独立して投与されるときに、2つの薬剤は併用して投与されると言われる。例えばクロロトキシン又はクロロトキシン誘導体は、これに限定されるわけではないが、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、インターカレーティング抗生剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤を含む以下の種類の化学療法薬から選択される1つ以上の化学療法薬と併用して使用することができる。
【0064】
アルキル化剤の例は、これに限定されるわけではないが、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン及びストレプトゾトシンを含む。抗生剤の例は、これに限定されるわけではないが、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン及びピリカマイシンを含む。代謝拮抗剤の例は、これに限定されるわけではないが、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、メトトレキサート及び6−チオグアニンを含む。有糸分裂阻害剤の例は、これに限定されるわけではないが、ナベルビン、パクリタキセル、ビンブラスチン及びビンクリスチンを含む。ステロイドホルモン及び抗アンドロゲン剤の例は、これに限定されるわけではないが、アミノグルテチミド、エストロゲン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、プレドニゾン及びタモキシフェンを含む。
【0065】
上の化学療法薬の医薬製剤の例は、これに限定されるわけではないが、BCNU(すなわちカルムスチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロウレア、BiCNU(登録商標))、シスプラチン(シス−プラチン、シス−ジアミンジクロロプラチナ、Platinol(登録商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシルダウノルビシン、Adriamycin(登録商標))、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン、Gemzar(登録商標))、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド、Hydrea(登録商標))、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、テモゾロミド(TMZ、テモダール(登録商標))、トポテカン(Hycamtin(登録商標))、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル、5−FU、Adrucil(登録商標))、ビンクリスチン(VCR、Oncovin(登録商標))及びビンブラスチン(Velbe(登録商標)又はVelban(登録商標))を含む。
【0066】
本発明の方法の実施において、クロロトキシン又はその誘導体を単独で或いは他の治療又は診断剤と併用して使用できる。ある好ましい実施形態において、クロロトキシン又はその誘導体は、一般に許容される腫瘍学の医療行為による各種の癌に通例処方される他の化学療法薬と共に同時投与できる。本発明の組成物は、普通は、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット及びマウスにおいてインビボで、又はインビトロで利用することができる。本発明は、ヒト被験者の治療に特に有用である。
【0067】
放射線と併用したクロロトキシンを使用する治療方法
本発明は、癌などの異常細胞増殖に関連する疾患の治療のための、放射線治療と併用したクロロトキシン又はその誘導体の投与を含む治療方法を含む。特に、治療は、癌細胞でのアポトーシス(細胞死)を誘導するように設計されているが、転移の発生又は回数の減少、及び腫瘍サイズの減少も考慮される。放射線治療剤に対する腫瘍細胞の抵抗力は、臨床腫瘍学において主要な問題となっている。それゆえ本発明に照らして、クロロトキシンとの併用療法は、放射線治療の有効性を向上させるために放射線耐性腫瘍に対して使用できることが、考慮される。
【0068】
上で議論したように、本発明は、癌を有する哺乳動物に、併用したときに癌細胞死が誘導されるのにどちらも十分な用量の、イオン化放射線と併用したクロロトキシン又はその誘導体の量を投与することを含む、癌を治療する方法を含む。1つの実施形態において、クロロトキシンの存在は、放射線治療単独と比較したときに、癌を治療するために必要な放射線の量を減少させる。クロロトキシン又はその誘導体は、上記放射線の前、上記放射線の後又は上記放射線と同時に提供できる。
【0069】
DNA損傷を引き起こす放射線は、広範囲に使用されており、一般にガンマ線、X線(例えば線形加速装置によって生成された外部ビーム放射線)、及び放射性同位体の腫瘍細胞への直接送達として知られるものを含む。これらの要素のすべてがDNA、DNAの前駆物質、DNAの複製及び修復、並びに染色体の集合及び維持に対して広範囲の損傷をたいてい引き起こす。クロロトキシンと併用した外部ビーム放射線治療では、処置は通常、1日につき1回の治療として与えられる。1日省略された場合、又はある癌療法適応症では、時折、1日に付き2回の治療が与えられる。標準線量は1日に付き約1.8Gy〜約2.0Gyの範囲で、週間線量は1週間あたり約9Gy〜約10Gyである。治療は通常、1週間あたり5日間与えられ、前週の治療からの回復時間として2日間は休みである。
【0070】
クロロトキシンを用いた診断の方法
本発明は、患者の臓器又は体の部分における異常な細胞増殖の存在及び位置の決定のための診断方法を含む。本方法の実施形態において、異常な細胞増殖は、これに限定されるわけではないが、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、或いは上述の癌の1つ以上の組合せを含む、癌である。
【0071】
本方法は、患者へのクロロトキシン又はその誘導体の検出可能な量を含む、組成物の検出可能な量の投与を含む。本明細書で使用される「検出可能な量」という用語は、腫瘍中の悪性癌細胞を含む1つ以上の異常な細胞への標識クロロトキシン又はその誘導体の結合を検出するために十分である、患者に投与される標識クロロトキシン又はその誘導体の量を指す。本明細書で使用される「撮影有効量」という用語は、腫瘍中の悪性癌細胞を含む1つ以上の異常な細胞への標識クロロトキシン又はその誘導体の結合を撮影するために十分である、患者に投与される標識クロロトキシン又はその誘導体の量を指す。
【0072】
本発明は、腫瘍中の悪性細胞を含む異常な細胞をインビボで同定及び定量するために、磁気共鳴分光法(MRS)又は画像法(MRI)などの非侵襲性神経画像技法、或いは陽電子放出断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などのガンマ撮影法と併せて使用される、同位体標識クロロトキシン又はその誘導体を利用する。「インビボ撮影」という用語は、上述したような標識クロロトキシン又はその誘導体の検出を可能にする、いずれかの方法を指す。ガンマ撮影では、腫瘍又は検査されている部分から放出された放射線は測定されて、全結合として、又は1つの組織における全結合が、同じインビボ撮影手順の間の同じ被験者の別の組織における全結合又は全身に正規化される(例えばそれによって割られる)割合のどちらかとして表現される。インビボでの全結合は、大過剰の未標識の、しかしそうでなければ化学的に同一の、化合物と併せた、同量の標識化合物の第二の注入による修正の必要なしに、インビボ撮影技法によって腫瘍又は組織中で検出された全体の信号として定義される。本明細書で使用される、「被験者」又は「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒト、及び最も好ましくは、腫瘍中の悪性細胞を含む異常な細胞を有することが疑われるヒトを指す。
【0073】
インビボ撮影のために、利用可能な検出装置の種類は、所与の標識の選択において主要な要素である。例えば放射性同位体は、本発明の方法において、インビボ撮影に特に適切である。使用する装置の種類は、放射性同位体の選択を左右するであろう。例えば選択された放射性同位体は、所与の種類の装置によって検出可能な崩壊の種類を有する必要がある。別の考慮事項は、放射性同位体の半減期に関連する。半減期は、標的による最大取り込み時になお検出可能であるように十分長くするべきであるが、宿主が有害な放射線を被らないように十分に短くするべきである。同位体標識クロロトキシン又はその誘導体は、適切な波長の放出されたガンマ照射が検出される場合にガンマ撮影を用いて検出できる。ガンマ撮影の方法は、これに限定されるわけではないが、陽電子放出断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)を含む。SPECT検出では好ましくは、選択された放射性標識は、微粒子放出を欠いているが、多数の光子を生成する。PET検出では、放射性標識は、PETカメラによって検出される陽電子放出型放射性同位体となるであろう。
【0074】
本発明において、腫瘍のインビボ検出及び撮影に有用であるクロロトキシン又はその誘導体が作成される。これらの化合物は、磁気共鳴分光法(MRS)又は画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影法(PET)、及び単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などの非侵襲性神経画像技法と併せて使用されるものである。本発明により、クロロトキシン又はその誘導体は、当該技術分野で既知の一般的な有機化学技法による、上述のいずれかの許容される放射性同位体によって標識できる(March(1992)Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms & Structure,Wileyを参照)。クロロトキシン及びその誘導体もPETのために、当該技術分野で周知の技法により銅、フッ素、炭素、臭素などの同位体を用いて放射性標識可能であり、述べられている(Phelps(1986)Positron Emission Tomography and Autoradiography,Raven Press pages 391−450を参照)。クロロトキシン及びその誘導体もSPECTのために、当該技術分野で既知の複数の技法によりヨウ素などの許容される同位体によって放射性標識できる(Kulkarni(1991)Int.J.Rad.Appl.Inst.18,647−648を参照)。
【0075】
例えばクロロトキシン及びその誘導体は、これに限定されるわけではないが131I又は123Iなどの、いずれかの適切な放射性ヨウ素同位体を用いて、ヨウ化ジアゾニウムを直接介したジアゾ化アミノ誘導体のヨード化によって(Greenbaum(1936)Am.J.Pharm.108,17−18を参照)、又は不安定なジアゾ化アミンの安定なトリアジンへの変換によって、又は非放射性ハロゲン化前駆物質の、次に当該技術分野で周知の複数の方法によってヨウ素化合物に変換できる安定なトリアルキルスズ誘導体への変換によって(Chumpradit et al.(1991)J.Med.Chem.34,877−878及びZhuang et al.(1994)J.Med.Chem.37,1406−1407を参照)、標識できる。
【0076】
クロロトキシン及びその誘導体は、64Cu又は99mTcなどの既知の金属放射性標識を用いても放射性標識できる。そのような金属イオンを結合するリガンドを導入する置換基の修飾は、修飾クロロトキシンペプチド又はその誘導体におけるpolyHis領域への共有結合を含む、放射性標識の当業者による必要以上の実験なしに実施することができる。金属放射性標識クロロトキシン又はその誘導体は次に、腫瘍を検出及び撮影するために使用できる。
【0077】
本発明の診断方法は、インビボ撮影及び分光法のために、核磁気共鳴分析法によって検出可能な同位体を使用できる。核磁気共鳴分析法で特に有用な元素は、これに制限されるわけではないが、19F及び13Cを含む。本発明のために適切な放射性同位体は、ベータエミッタ、ガンマエミッタ、陽電子エミッタ及びX線エミッタを含む。これらの放射性同位体は、これに限定されるわけではないが、131I、123I、18F、11C、75Br及び76Brを含む。
【0078】
本発明による磁気共鳴撮影法(MRI)又は分光法(MRS)での使用のための適切な安定同位体は、これに限定されるわけではないが、19F及び13Cを含む。組織生検又は死後組織中の腫瘍細胞を含む異常な細胞のインビトロ同定及び定量のために適切な放射性同位体は、125I、14C及び3Hを含む。好ましい放射性標識は、PETインビボ撮影での使用のための64Cu又は18F、インビボSPECT撮影での使用のための123I又は131I、MRS及びMRIのための19F、並びにインビトロ法のための3H又は14Cである。しかしながら診断プローブを可視化するためのいずれの従来の方法も、本発明に従って利用できる。
【0079】
一般に、放射性標識クロロトキシン及びその誘導体の投薬量は、年齢、症状、性別、及び患者の疾患の程度、ある場合には禁忌、当業者によって調整される併用治療及び他の変動事項によって変化するであろう。投薬量は、0.001mg/kg〜1000mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜100mg/kgの範囲である。患者への投与は、局所又は全身性であり、静脈内、動脈内、くも膜下(髄液を介して)、頭蓋内などで実施できる。投与は、検査中の体の部位に依存して、皮内又は腔内でもよい。
【0080】
標識クロロトキシン又はその誘導体が異常な細胞と結合するため十分な時間、例えば30分〜80時間が経過した後、検査中の被験者の部分は、MRS/MRI、SPECT、プラナーシンチレーション撮影、PETなどのルーチンの撮影技法、及び新しい撮影技法によっても検査される。精密なプロトコルは、上記のように患者に固有の要素に応じて、そして検査中の体の部位、投与方法及び使用した標識の種類に応じて、必然的に変化するであろう;具体的な手順の決定は、当業者にとってルーチン的である。脳撮影では好ましくは、結合した放射性標識クロロトキシン又はその誘導体の量(全結合又は特異的結合)を測定し、(比として)患者の小脳に結合した放射性標識クロロトキシン又はその誘導体の量と比較する。次に、この比を、年齢に適合した正常な脳における同じ比と比較する。
【0081】
更なる説明なしに、当業者は上の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を利用して、請求された方法を実施できることが考えられる。以下の実施例は、本発明の実施形態を説明し、決して開示の残りを制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0082】
実施例1
インビトロでの化学療法薬活性の決定
各種の化学療法薬の、複数の癌細胞系(表1を参照)に対する効果を試験するために、組織培養方法を最適化した。細胞は、具体的な細胞系に応じて、96ウェルマイクロタイター組織培養プレートに1ウェル当たり約1000〜2000細胞の密度で播種した。細胞は、5%の二酸化炭素を供給した37℃の加湿細胞培養インキュベータ内で付着させた。各細胞系での各薬物の用量反応曲線を得るために、細胞を、特定の細胞毒性化合物の減少する濃度によって2〜5日間処置した。処置の後、薬物の細胞毒性効果は、メーカーの説明書に従って、細胞カウントキット−8(CCK−8)(Dojindo Inc.)を用いて定量した。手短に言えば、細胞毒性薬による処置期間の後、細胞はCCK−8試薬とインキュベートし、特定の細胞種に応じて1〜4時間に渡って37℃にてインキュベートした。インキュベーションの後、プレートをマイクロプレートリーダーで波長490nmにて読取った。各薬物のIC50を薬物の負の対数濃度対平均光学密度のX−Y分散プロットから計算した(表2)。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
実施例2
インビトロでの化学療法薬活性に対するクロロトキシンの効果
化学療法薬に対するクロロトキシンの薬理効果の測定のために、実施例1の細胞培養方法を、以下の修正を行い利用した:IC50に接近しているが、通常そのすぐ下である、化学療法薬の濃度を各アッセイで使用した。次に、クロロトキシンの各種の量をそのIC50の付近又はそれ以下の化学療法薬の濃度と併用して測定し、化学療法薬の細胞毒性効果に対するクロロトキシンの効果を投与の2〜3日後に測定した。このアッセイで利用したクロロトキシンの濃度は、マイクロモルからナノモル濃度の範囲であった。
【0086】
D54−MG細胞増殖に対する、テモダールと併用したクロロトキシンの添加の効果を図1に示す。この実験で使用したテモダールのレベル(0.050mM)は、これらの細胞を死なせ、より低い光学密度値を生成するために必要な濃度よりも約30倍低い(表2を参照)。クロロトキシン(TM−601)単独は、細胞増殖に対して効果を持たなかった。クロロトキシンは、テモダールと同時に投与したときには一切効果を生じないが、クロロトキシンをテモダールの24時間前に添加したときは、濃度0.050mMのテモダールが30倍高いテモダール濃度で通常観察されるレベルと同等に細胞増殖を減少させた。これらの結果は、テモダールの投与の前のクロロトキシンの投与が、癌細胞をテモダールの効果に対して感作させることを証明する。
【0087】
実施例3
インビボでの化学療法薬の活性に対するクロロトキシンの効果
この研究の目的は、神経膠腫細胞系を用いたインビトロでの研究から示されるように、クロロトキシンと併用したヒドロキシウレア又はテモダールが腫瘍成長を阻害するのに十分であるかどうかを判断することである。他の研究は、ヒト癌細胞系とプレインキュベートされたクロロトキシンが細胞を、化学療法的腫瘍細胞死滅剤であるテモダールに対して大きく感作させることを示した。神経膠腫脇腹腫瘍を有するマウスにおける、クロロトキシンを用いたヒドロキシウレア又はテモダールとの併用処置を、ヒドロキシウレア又はテモダール単独及び生理食塩水単独の処置群と比較した。ヒドロキシウレア及びテモダール投薬量は、ヌードマウスでの鎌状細胞死の典型例の処置における体からのクリアランスを決定するために前の研究で使用した最低投薬量(10mg/kg体重)に基づいていた(Iyamu et al.(2001) Chemotherapy 47,270−278)。
【0088】
耳標を付け、識別番号を与えたヌードマウスは、脇腹腫瘍接種の標準操作手順に従って、軽度の麻酔下で5パーセントメチルセルロースとの混合物0.10ml中の500万個のU251神経膠腫細胞を接種した(Iyamu et al.(2001)Chemotherapy 47,270−278)。脇腹腫瘍は発生し、接種のほぼ30日後に確立された。
【0089】
脇腹腫瘍が確立したマウスはそれぞれ、生理食塩水、生理食塩水及びヒドロキシウレア又はテモダール(13.2mg/kg体重)、或いは生理食塩水、ヒドロキシウレア又はテモダール(13.2mg/kg)並びにクロロトキシン(0.080mg/kg体重)のいずれかよりなる滅菌溶液の0.100ml注射(腹腔内)で処置した。腫瘍体積は、非麻酔マウスの腫瘍の長さ×幅×高さを決定することによって、指示された日に同じセットのキャリパーによる測定値に基づいて計算した。各動物は実験の開始時に異なるサイズの腫瘍を有したため、データは注射プロトコルの最初の日からの腫瘍成長のパーセント変化として、最終形として示される。統計的有意性は、一元ANOVA試験によって決定した。テモダール単独が異種移植腫瘍の成長に対してあまり効果を持たないレベルでは、クロロトキシンと併用したテモダールは、腫瘍の成長を劇的に低下させた(図2)。
【0090】
上述したように、クロロトキシンと併用したヒドロキシウレアの効力も、神経膠腫脇腹腫瘍を確立するためにD54神経膠腫細胞を使用することを除いて、同じマウスの脇腹モデルで評価した。ヒドロキシウレアと併用したクロロトキシンで処置したマウスは、ヒドロキシウレア単独又は生理食塩水単独のどちらかで処置したマウスよりもサイズが著しく小さい腫瘍を有し(29日でp=0.01及び32日でp=0.005)、ヒドロキシウレアと併用したクロロトキシンがヒドロキシウレア単独よりも更に腫瘍成長を著しく減少させることを示した(図3)。
【0091】
実施例4
標識クロロトキシンを用いたPET撮影研究
以下の例示的な手順は、診療所内の患者に対してPET撮影研究を実施するときに利用できる。患者は、水分摂取は随意にさせて少なくとも12時間絶食させ、実験日に筋肉内注射されたアセプロマジン0.3〜0.4mlを前投与する。放射性標識クロロトキシンの投与のために、20ゲージ、2インチの静脈内カテーテルを対側尺骨静脈に挿入する。
【0092】
患者をPETカメラ内に配置し、静脈内カテーテルを介して[15O]H2Oのトレーサー線量を投与する。腫瘍を含む所望の部分の完全な結像を含めるために、そのようにして得られた画像を用いて、患者が正しく配置されるようにする。続いて[64Cu]放射性標識クロロトキシン(<20mCi)を、静脈内カテーテルを介して投与する。全放射性トレーサー画像の取込後、複数の線量率(0.1、1.0又は10mpk/日)で評価される放射性標識クロロトキシンの注入を開始する。2時間の注入後、カテーテルを介して、[64Cu]放射性標識クロロトキシンを再度注入する。画像は再度、90分まで取込む。放射性トレーサーの注入の10分以内及び撮影セッションの終了時に、放射性標識クロロトキシンの血漿濃度を決定するために、血液サンプル1.0mlを得る。
【0093】
実施例5
D54グリア芽腫細胞を96ウェル平底プレートに約1000細胞/ウェルの濃度で播種し、5%CO2中37℃にてインキュベートした。24時間後に、クロロトキシンを1:4制限希釈にて、最終濃度20、5、1.25、0.313、0.078、0.0195、0.0049、0.0012、0.00031又は0.00008nMまで添加した。対照細胞にはビークルのみ与えた。処置の24時間後、クロロトキシンの効果は、メーカーの説明書に従って、細胞カウントキット−8(CCK−8)(Dojindo Inc.)によりMTTミトコンドリア酵素基質を用いて定量した。手短に言えば、クロロトキシンによる処置期間の後、細胞をCCK−8試薬とインキュベートした。インキュベーションの後、プレートをマイクロプレートリーダーで波長490nmにて読取り、より高い吸収はより高い細胞生存能力を示した。図4は、クロロトキシンのインキュベーションが、より小さい数の生存細胞/ウェル対PBS対照によって証明されるように、0.00120nMまでの試験したすべての濃度においてD54細胞の増殖を阻害したことを示す。
【0094】
実施例6
D54グリア芽腫細胞を96ウェル平底プレートに約1000細胞/ウェルの濃度で播種し、5%CO2中37℃にてインキュベートした。24時間後に、クロロトキシンを1:4制限希釈にて、最終濃度20、5、1.25、0.313、0.078、0.02、0.0049、0.0012、0.0003又は0.00008nMまで添加した。対照細胞にはビークルのみ与えた。24時間後、細胞の半分をクロロトキシンがないように洗浄し、培地を新しい培地と交換した。クロロトキシンが残っている及びクロロトキシンを除去した両方の条件の細胞を、更に4日間インキュベートした。インキュベーションの後、実施例1と同様にCCK−8によりMTTミトコンドリア酵素基質を用いて、クロロトキシンの効果を定量した。図5は、長いインキュベーション時間が、追加の増殖日数によって細胞にクロロトキシンの効果を克服させ、この例ではクロロトキシンが細胞増殖を阻害するように見えないことを示している。
【0095】
実施例7
PC3前立腺癌細胞を96ウェル平底プレートに約1000細胞/ウェルの濃度で播種し、5%CO2中37℃にてインキュベートした。24時間後に、クロロトキシンを1:2制限希釈にて、最終濃度(nM)20、10、5、2.5、1.25、0.625、0.313、0.156、0.078、及び0.039まで添加した。対照細胞にはPBSビークルのみ与えた。処置の24時間後、実施例1と同様にCCK−8によりMTTミトコンドリア酵素基質を用いて、クロロトキシンの効果を定量した。図6は、クロロトキシンのインキュベーションが、より小さい数の生存細胞/ウェル対PBS対照によって証明されるように、試験したすべての濃度においてD54細胞の増殖を阻害したことを示す。
【0096】
実施例8
胸腺欠損ヌードマウス8匹の3つのグループに、右脇腹にヒトD54グリア芽腫細胞5×107の皮下注射を与えて、これらのマウスにヒト神経膠腫の脇腹への異種移植を生じさせた。グループI及びIIIの動物には、D54注射の14、21、28、35、42及び49日後に100μlのリン酸緩衝生理食塩水中のクロロトキシン(配列番号1)2.6μgを静脈内に与えた。グループII及びIIIの動物には、D54注射の15、22、29、36、43及び50日後に2Gy60C全身照射を与えた。腫瘍サイズは、週3回測定し、図7に示す。
【0097】
実施例9
胸腺欠損ヌードマウスでの頭蓋内D54MG神経膠腫異種移植は、被験者の脳へのD54MG細胞1×106個の移植によって確立させた。処置計画は、移植の14日後に、尾静脈内注射によって週2回で開始した。マウス7匹の対照グループには生理食塩水ビークルのみを投与した。動物8匹を含むマウスの第二のグループにはそれぞれ、0.2μg/用量の、低用量のクロロトキシンを投与し、動物8匹を含むマウスの第三のグループには、2.0μg/用量の、高用量のクロロトキシンを投与した。動物は死まで追跡し、生存時間をKaplan−Meierチャートにプロットして、生存期間の中央値を示した(図8)。これらの結果は、クロロトキシン単独での処置が、実質的に頭蓋内モデルの被験者の生存を延長させること、及びこの延長した生存が用量依存性であることを示している。クロロトキシンの投与は静脈内であることは注目に値し、クロロトキシンは血液脳関門を通過してその効果を発揮することが証明される。
【0098】
実施例10
別個の調査で、D54MG神経膠腫異種移植は、胸腺欠損ヌードマウスの脇腹にD54MG細胞1×106個を移植することにより、末梢的に確立した。腫瘍は14日目に触診可能であり、個々の腫瘍の体積は約43mm3であった。再び処置計画は、移植の14日後に、尾静脈内注射によって週2回で開始した。マウス7匹の対照グループには生理食塩水ビークルのみを投与した。動物8匹を含むマウスの第二のグループには、それぞれ0.2μg/用量の低用量のクロロトキシンを投与した。各注射時に腫瘍サイズを測定し、元の腫瘍サイズのパーセントとしてプロットした(図9)。静脈内処置は42日目に終了し、腫瘍の測定を数週間継続した。これらの結果は、低用量クロロトキシンが単独で、この脇腹モデルでの腫瘍成長を劇的に減少できることを証明している。
【0099】
実施例11
クロロトキシンのコア結合部位配列を同定するために、図10に示すようにペプチドのC末端から開始する、配列番号1に由来する27の重複10merを合成した。各ペプチドは、検出を促進するためにアミノ末端に結合したビオチンを有しており、架橋を防止するために各システイン残基はセリンと置換された。
【0100】
10merペプチドのPC3前立腺癌細胞へのインビトロでの結合は、培養されたPC3細胞を個々のペプチドによってインキュベートすることによって測定した。結合は、製造者の説明書に従って市販キットを使用して、ペプチド露出細胞をHRP−アビジンによってインキュベートすることにより検出及び定量した。
【0101】
図11は、配列番号1の10−merペプチド4がPC3に結合しないことを示し、ペプチド5を開始するリジン残基が結合部位の開始でなければないことを示している。ペプチド5−8は結合するが、結合はペプチド9で欠失している。このことはチロシン残基が別のキーであることを示唆しているが、チロシン残基がペプチド8に存在するがペプチド9では欠失しているためである。このことは、クロロトキシン残基の第一の結合領域が、ペプチド5−8に共通である配列番号1のアミノ酸残基23−29に存在する7mer配列KGRGKSY(配列番号8)内に存在することを示していた。
【0102】
図12は、配列番号1のペプチド19はPC3細胞と結合しないが、ペプチド20は結合することを示し、ペプチド20−24が最も強く結合するため、ペプチド20を開始するトレオニン残基が第二結合部位の開始であることを示している。結合はペプチド25において再度減少し、アルギニン残基がペプチド24に存在するが、ペプチド25で欠失しているため、ペプチド24の末端アルギニン残基が別のキーであることを示唆している。このことは、クロロトキシンの第二結合領域が、ペプチド20−24に共通である配列番号1のアミノ酸残基8−14に存在する9mer配列TDHQMAR(配列番号9)内に存在することを示している。この第二のコア配列中の結合はより広く、このことは領域の端に存在する非常に類似したアミノ酸の反映である。例えばペプチド20及び21には2つのトレオニン残基があり、アルギニン残基に隣接するペプチド22の端にリジンがある。
【0103】
実施例12
これらの同定された結合領域のインビボ活性を決定するために、配列番号1の10merペプチド5(アミノ酸残基23−32)、12(アミノ酸残基16−25;陰性対照として)及び21(アミノ酸残基7−16)を、クロロトキシンの生物活性を決定するために一般に使用されるアッセイである、ザリガニ麻痺アッセイで使用した(DeBin et al.(1993)Am.J.Physiol.264,C361−369を参照)。ペプチド5及び12は、ザリガニを麻痺させることができなかったが、一方ペプチド21は有効であり、クロロトキシンの麻痺効果に関与する部位がペプチド21によって定義された領域であることを示唆した。
【0104】
加えて、複数のクロロトキシン誘導体をそれぞれザリガニアッセイで分析し、クロロトキシンと比較した(表4)。これらの誘導体はそれぞれ、ペプチド21に相当する配列内に推定上の末端アミノ酸、T及びRを含む。
【0105】
【表4】
【0106】
実施例13
クロロトキシンは、8つのシステインを備えた36アミノ酸ペプチドであり、以下に下線を付けた実施例12の重複10merを使用して同定された、ペプチド番号8(ベータ領域ペプチド)及びペプチド番号21(アルファ領域ペプチド)の配列を用いてボールド体で以下に表す:
MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRCKCYGPQCLCR(配列番号1)
【0107】
アルファ及びベータペプチド内の同定された最小結合配列を確認するために、毎回アミノ末端における1つのアミノ酸によりペプチドのサイズを縮小するより短い配列と同様に、アミノ末端のビオチンによって、全体ペプチドを10−merとして合成した。
【0108】
ベータペプチドでは、表5に示したペプチドの配列を評価し、U251神経膠腫細胞への結合を探した:
【0109】
【表5】
【0110】
アルファペプチドでは、表6に示したペプチドの配列を評価し、U251神経膠腫細胞への結合を探した:
【0111】
【表6】
【0112】
結果は、アルファ領域ペプチドの最初のトレオニン残基が結合にとって有害であるが、第二のトレオニンが結合にとって不可欠であることを証明した。より小さいペプチドのいずれも、ペプチド21aの9merと同じくらい強力な結合を示さないことも発見された。
【0113】
実施例14
アルファペプチドの結合特性への各残基の寄与を決定するために、アラニン走査変種を、表7に示すように9merペプチドTDHQMARKS(配列番号10)の各アミノ酸を順次置換することによって合成した。ペプチド21、自然コア9mer、及び各アラニン置換9merペプチドは、アミノ末端におけるビオチンによって合成し、それらの結合対U251及びPC3細胞の両方について評価した(図13)。
【0114】
【表7】
【0115】
U251及びPC3結合のパターンは一般に類似している。9merの第二の位置におけるアスパラギン酸(D)残基の置換は、ペプチドの細胞への結合を増加させ、第四の位置におけるQ残基の置換は、ペプチドの細胞への結合を大きく増加させた。したがってペプチドTAHAMARKS(配列番号11)は、親ペプチドTDHQMARKS(配列番号10)よりも活性であるはずである。ペプチドTDHAMARKSの結合に基づき、この結合は、クロロトキシン自体と同じ又はそれより大でありうる。
【0116】
この発見に基づいて、以下の配列のクロロトキシンの変種ペプチドは、天然のクロロトキシンポリペプチドよりも結合が強力であることが予想される。
MCMPCFTTAHAMARKCDDCCGGKGRCKCYGPQCLCR(配列番号12)
【0117】
実施例15
ショートスコーピオントキシンの結合を比較するために、スモールトキシン及び考えられる毒素(Probable toxin)LQH−8/6のペプチド21に相同である領域を合成し、クロロトキシン結合アッセイでの解析のためにビオチン化した(ペプチドのアミノ酸配列については表8を参照)。
【0118】
【表8】
【0119】
図14に示すように、そして前の結果に従って、クロロトキシンは、PC3ヒト前立腺癌細胞における著しい結合(バックグラウンドレベルの221.93%)を示し、ペプチド21結合は、クロロトキシンのそれに匹敵した(バックグラウンドレベルの232.50%)。加えてスモールトキシンペプチドのペプチド21(21ST)及び考えられる毒素LQH−8/6のペプチド21(21LQ)は、全長クロロトキシンのペプチド21及びクロロトキシンペプチド21と同等の結合レベルを示した(それぞれ225.26%及び242.32%)。その上、クロロトキシンのアミノ酸26−35(配列番号1)を含有する負のペプチドは、バックグラウンドに匹敵する結合レベルを示した(110%)。D54グリア芽腫細胞において同様の結果を得た(データは示していない)。
【0120】
クロロトキシン結合アッセイを用いたこの研究からの結果は、クロロトキシン、スモールトキシンペプチド、及び考えられる毒素LQH−8/6がインビトロでヒト癌細胞に同様に結合することを示す。以下の表9は、3つの毒素ペプチドの推定上の一次結合ドメイン(アミノ酸7−16)内で保存されたアミノ酸を強調している。
【0121】
【表9】
【0122】
実施例16
この実験の目的は、D54MGグリア芽腫細胞の増殖が、3H−チミジン取込みによって測定されるように、全長クロロトキシン配列の断片である、ペプチド21によって実施されるかどうかを判定することであった。ペプチド21の配列及びそのクロロトキシンとの関係を以下の配列に示す:
クロロトキシン: MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR
ペプチド21: TTDHQMARK(配列番号82)
【0123】
ペプチド21(配列番号82)は、複数の他の報告において、全長クロロトキシンに匹敵する結合及び生物活性を有するとされてきた。
【0124】
D54MG細胞を24ウェルプレートに100,000細胞/ml/ウェルにて、各濃度に4ウェルの5列を使用して播種した。細胞を標準培地に、37℃にて及び5%二酸化炭素中で24時間付着させた。TM−701を1nMストック溶液まで希釈し、各列に0、20、80、160及び320nMの濃度で添加した。
【0125】
細胞及びペプチド21を37℃にて及び5%二酸化炭素中で24時間インキュベートした。24時間後、細胞を温PBSで2回すすいだ。標準培地を1ml/ウェルで、細胞に元通り添加した。1μCiの3H−チミジンを各ウェルに添加した(各ウェルに1mCi/ml3H−チミジン1μl)。プレートを37℃にて2時間インキュベートした。培地及びチミジンを除去し、ウェルを氷冷ホスフェート緩衝生理食塩水で3回すすいだ。各ウェルに0.3N NaOH 1mlを添加した。プレートを37℃のインキュベータで30分間インキュベートした。0.3N NaOHの各ウェルをピペットで3〜4回出し入れして、プレートから除去し、溶液をカウントのためにシンチレーションバイアルに入れた。サンプルの4倍のシンチレーション液をバイアルに添加した(4ml)。各バイアルをシンチレーションカウンター上で1分間カウントした。結果を表10及び図15に示す。データは、3H−チミジンの取込みが用量依存的に減少するという点で、ペプチド21がクロロトキシンと同様に挙動することを証明している。このデータは、ペプチド21がこれらの細胞におけるDNA合成に効果を有することも示している。
【0126】
【表10】
【0127】
本発明は上の実施例を参照して詳細に説明したが、本発明の精神から逸脱せずに実施できることは理解されている。したがって本発明は、特許請求の範囲によってのみ制限される。本出願で言及したすべての引用特許、特許出願及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】インビトロでの、クロロトキシンと併用したテモダールの効果を表す。D54神経膠腫細胞は、生理食塩水単独(対照)、テモダール単独、テモダール及びクロロトキシンでインキュベートするか、又はテモダール処置の24時間前にクロロトキシンによって前処理した。
【図2】インビボでの、テモダールの有効性に対するクロロトキシンの効果を表す。確立されたU251神経膠腫脇腹腫瘍を有するヌードマウスを、生理食塩水単独(対照)、テモダール単独、又はテモダール及びクロロトキシンで処置した。
【図3】インビボでの、ヒドロキシウレアの有効性に対するクロロトキシン前処理の効果を表す。確立されたD54神経膠腫脇腹腫瘍を有するヌードマウスを、生理食塩水単独(対照)、ヒドロキシウレア単独、又はクロロトキシン及びヒドロキシウレアで処置した。
【図4】低濃度のクロロトキシンがグリア芽腫細胞の成長及び増殖を阻害することが示される、細胞毒性アッセイを表す。
【図5】異常細胞の成長を阻害するクロロトキシンの能力に対する、4日間のインキュベーション及び洗い流しの効果を表す。
【図6】低濃度のクロロトキシンが前立腺癌細胞の成長及び増殖を阻害することが示される、細胞毒性アッセイを表す。
【図7】胸腺欠損ヌードマウスにおけるグリア芽腫腫瘍細胞の成長を阻害するクロロトキシンの能力のインビボアッセイを表す。
【図8】頭蓋内グリア芽腫腫瘍を有する胸腺欠損ヌードマウスの生存を延長するクロロトキシンの能力のインビボアッセイを表す。静脈内処置の中止を矢印で示した。
【図9】胸腺欠損ヌードマウスの脇腹におけるグリア芽腫腫瘍の成長を阻害するクロロトキシンの能力のインビボアッセイを表す。
【図10】クロロトキシンに由来する、一連の重複10merペプチドを表す。配列番号1のシステイン残基は、10merにおいて、ペプチドの架橋を防止するためにセリンに置換される。
【図11】クロロトキシン及び10merペプチド1−15の結合を表す。
【図12】クロロトキシン及び10merペプチド16−27、1、5及び10の結合を表す。
【図13】ペプチド21、未変性コア9mer、及び各アラニン置換9merペプチドの、U251及びPC3細胞の両方への結合を表す。
【図14】PC3ヒト前立腺癌細胞における短サソリ毒素の結合を表す。
【図15】ペプチド21の増加用量を細胞に添加し、その後、3H−チミジンの取込みを測定することによって研究された、D54MG細胞の増殖に対するペプチド21の効果を表す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願]
本出願は、どちらも参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、米国仮出願第60/406,033号(2002年8月27提出)及び米国仮出願第60/384,171号(2002年5月31日提出)の利益を請求する。
[発明の分野]
【0002】
本発明は一般に、細胞生理学及び腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本発明は、化学療法薬と併用したクロロトキシン及び/又はその誘導体の投与量を用いて、癌などの細胞増殖障害を治療する新規な方法に関する。
[発明の背景]
【0003】
脳組織で発生する腫瘍は、癌が脳に転移したときに発生する二次脳腫瘍に対して、原発性脳腫瘍として知られている。原発性脳腫瘍は、腫瘍が始まる組織の種類によって分類される。最も一般的な脳腫瘍は神経膠腫であり、それはグリア(支持)組織で始まる。星状細胞腫は、星状細胞と呼ばれる小型の星形細胞から生じる神経膠腫の種類である。それらは脳又は脊髄のどこでも増殖するが、ほとんどの場合、成人では大脳、小児では脳幹、大脳、及び小脳で発生する。グレードIIIの星状細胞腫は場合により未分化星状細胞腫と呼ばれるのに対して、グレードIVの星状細胞腫は通常、多形性膠芽腫と呼ばれる。脳幹神経膠腫は、脳の最も低い幹様部分に発生する。この部分の腫瘍は一般に除去できない。ほとんどの脳幹神経膠腫は、ハイグレードの星状細胞腫である。上衣腫は通常、脳室の内層に発生する神経膠腫の一種であり、脊髄にも発生することがある。これらの腫瘍はどの年齢でも発生する可能性があるが、それらは小児期及び思春期に最も多い。乏突起膠腫は、神経を保護する脂肪被膜であるミエリンを生成する細胞に発生する。これらの稀な腫瘍は通常、大脳に発生し、ゆっくり増殖し、通常は周囲の脳組織に広がらず、ほとんどの場合中年成人に発生するが、すべての年齢の人に見出されている。
【0004】
グリア組織から発生しない他の種類の脳腫瘍がある。かつて髄芽細胞腫は、グリア細胞から発生すると考えられていた。しかしながら最近の研究から、これらの腫瘍が、通常は生後に体内に残らない未分化の(発達中の)神経細胞から発生することが示唆されている。このため、髄芽細胞腫は場合により、未分化神経外胚葉性腫瘍と呼ばれる。大半の髄芽細胞腫は小脳で発生するが、しかしながらそれらは他の部分でも発生することがある。髄膜腫は、髄膜から増殖し、通常は良性である。これらの腫瘍は非常にゆっくりと増殖するため、脳はその存在に順応することが可能であり、したがってこれらの腫瘍は、症状を引き起こす前に、かなり大きく増殖することが多い。神経鞘腫は、聴神経を保護するミエリンを生成するシュワン細胞で始まる良性腫瘍である。聴神経腫は神経鞘腫の一種であり、主に成人に発生する。頭蓋咽頭腫は、視床下部付近の下垂体の領域に発生し、通常良性であるが、しかし、それらは視床下部を圧迫又は損傷し、生命機能に影響を及ぼすことがあるため、場合により悪性と見なされる。胚細胞腫瘍は、未分化(発達中の)性細胞又は胚細胞から生じる。脳における胚細胞腫瘍の最も頻度の高い種類は、胚細胞腫である。松果体部腫瘍は、脳の中心付近の小型器官である松果体の中又は付近で起こる。腫瘍は、低速増殖型(松果体細胞腫)又は高速増殖型(松果体芽細胞腫)でありうる。松果体部は到達するのが非常に困難であり、これらの腫瘍は除去できないことが多い。
【0005】
未分化神経外胚葉性腫瘍は、中枢及び末梢神経系の両方に見られる。末梢神経系にのみ見られる未分化神経外胚葉性腫瘍は、末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍と呼ばれる。未分化神経外胚葉性腫瘍は小児に特異的に現れ、各種のニューロン、星状細胞、上衣、筋肉及び黒色系に発生する能力を持つ。これらの腫瘍を共にグループ化する概念基盤は、共通の前駆細胞を共有することはもちろんのこと、同じ形態素性及び生物学的挙動の腫瘍を引き起こす同じ腫瘍性形質転換を共有することに基づいている。しかしながら、すべての未分化神経外胚葉性腫瘍を同じカテゴリに配置することには議論が残っている。
【0006】
テント上未分化神経外胚葉性腫瘍は、大脳髄芽細胞腫、大脳神経芽腫、上衣芽細胞腫及び他の未分化神経外胚葉性腫瘍、例えば松果体芽細胞腫を含む。副腎(髄質)及び交感神経系の末梢神経芽腫瘍は、中枢神経系の外部の小児癌の最も一般的な種類である。これらの未分化神経外胚葉性腫瘍の原発部位は、副腎、腹部、胸部、頚部及び骨盤交感神経節であるが、眼窩、腎臓、肺、皮膚、卵巣、精管及び膀胱などの他の原発部位も含む。これらの関連腫瘍の種名は、褐色細胞腫、パラガングリオン腫、神経芽細胞腫、神経節細胞腫、神経節芽細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫及び悪性末梢神経鞘腫である。これらはすべて神経堤に共通の起源を共有している。髄芽細胞腫は、小脳に見られる中枢神経系の高度に悪性な胎児性腫瘍として説明される未分化神経外胚葉性腫瘍の一員である。
【0007】
現在、外科手術は、中枢神経系の腫瘍で一般に好まれる治療である。外科手術は、的確な診断を提供し、腫瘍塊のかさ高性を軽減し、患者の生存を延長する。中枢神経系腫瘍に効果的に作用することが既知である唯一の術後補助治療は放射線であり、放射線は生存を延長することができる。しかしながら放射線治療は、多くの望ましくない副作用を有する。それは、神経組織を含む患者の正常組織を損傷する可能性がある。放射線は、重篤な副作用(例えば吐き気、嘔吐、脱毛)も引き起こす可能性がある。
【0008】
他の一般的な術後補助癌治療である化学療法は、神経外胚葉性腫瘍に対して相対的に有効でない。例えばニトロソウレア剤を用いた神経外胚葉性腫瘍に対する化学療法は、治癒力がない。多くの他の癌治療剤が研究及び試験されてきたが、一般に多くの薬剤が血液脳関門を通過しないために、一般にそれらは生存延長に対して最小限の効果を持つ。これらの制限された治療選択肢を考慮すると、神経外胚葉性腫瘍と診断された患者の現在の予後は好ましくない。悪性星状細胞腫と診断され、外科手術を受け補助治療を行わない患者の生存期間の中央値は、約14週間である。術後の放射線治療は、中央値を約36週間に延長する。すべての形式の治療についての現在の2年間生存率は、10パーセント未満である。
【0009】
他の種類の腫瘍も既知の癌治療によって対処することは困難である。肺癌は、次の4つの最も頻繁に診断される腫瘍を合わせたよりも、毎年多くの米国人を死なせている(Greenlee et al.(2001)CA Cancer J.Clin.51,15−36)。原発性肺腫瘍の約80パーセントが腺癌と同様に、扁平上皮癌及び大細胞癌を含む非小細胞種である。非小細胞肺癌の早期及び後期の大半の症例には、単一様式治療が適切であると見なされる。早期腫瘍は潜在的に処置、化学療法、又は放射線治療によって治癒可能であり、後期の患者は通常、化学療法又は最善の支持療法を受ける。中期又は局所的に進行した非小細胞肺癌は、全症例の25〜35パーセントを構成し、更に通例は多様式治療によって治療される。
【0010】
乳癌も既知の薬剤を用いる処置の困難さを呈している。米国での乳癌の発生率は、1980年以来、毎年約2パーセントの割合で上昇しており、米国癌学会は、2001年に192,000件の侵襲性乳癌が診断されると予測した。乳癌は通常、外科手術、放射線治療、化学療法、ホルモン治療又は各種方法の組合せによって処置される。乳癌での癌化学療法の失敗の主な理由は、細胞毒性薬への耐性の発生である。作用機構の異なる薬物を用いた併用療法は、処置された腫瘍による耐性の発生を防止する処置の許容された方法である。抗血管新生薬は、それらが腫瘍に作用しないが、正常な宿主組織に作用するために耐性を引き起こしにくいので、併用療法で特に有用である。
【0011】
神経外胚葉性腫瘍(例えば神経膠腫及び髄膜腫)を診断及び治療するための組成物(米国特許第5,905,027号を参照)及び方法(米国特許第6,028,174を参照)は、クロロトキシンが神経外胚葉性起源の腫瘍細胞に結合する能力に基づいて開発されてきた(Soroceanu et al.(1998)Cancer Res.58,4871−4879; Ullrich et al.(1996)Neuroreport 7,1020−1024;Ullrich et al.(1996)Am.J.Physiol.270,C1511−C1521)。神経外胚葉性腫瘍の診断は腫瘍細胞に結合された標識クロロトキシンの識別によって実施されるが、これに対して神経外胚葉性腫瘍の処置は、クロロトキシンに結合された細胞毒性薬によって腫瘍を標的化することによって実施される。クロロトキシンは、leiurus quinquestriatusサソリ毒素から天然由来する36アミノ酸タンパク質である(DeBin et al.(1993)Am.J.Physiol.264,C361−369)。本発明は、クロロトキシンを、他の従来の癌治療剤と併用して使用して癌を治療するための方法を提供することによって、治療学のこの分野を拡張する。
[発明の概要]
【0012】
本発明は、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体を少なくとも1つの化学療法薬と併用して投与することを含む、癌を治療するための方法を含む。一部の実施形態において、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体は化学療法薬の投与前に投与されるが、これに対して他の実施形態においては、化学療法薬と同時に投与され、これに対してなお他の実施形態においては、化学療法薬に続いて投与される。
【0013】
本発明の方法の別の実施形態において、化学療法薬は、アルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤からなる群より選択される。本発明の方法で使用されるそのような化学療法薬の例は、これに限定されるわけではないが、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドルビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、ピリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン及びアミフォスチンを含む。
【0014】
さらに別の実施形態において本発明の方法は、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される癌の種類を処置するために有用である。
【0015】
本発明は、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体及び少なくとも1つの化学療法薬を含む、癌を治療するための組成物も含む。一部の実施形態において、化学療法薬は、アルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤からなる群より選択される。本発明の組成物で使用されるそのような化学療法薬の例は、これに限定されるわけではないが、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドルビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、ピリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン及びアミフォスチンを含む。
【0016】
本発明の組成物は、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される癌の1つ以上の種類の処置に有用である。
【0017】
本発明は、標識クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体(放射性標識クロロトキシン又はその誘導体を含む)の検出可能な量を投与することを含む、患者の癌の存在を検出するための方法も含む。許容される放射性標識は、これに限定されるわけではないが、3H、14C、18F、19F、31P、32P、35S、131I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc及び177Luを含む。検出可能な癌の種類は、これに限定されるわけではないが、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫を含む。
[詳細な説明]
【0018】
本発明は、クロロトキシン又はその誘導体と併用して使用される少なくとも1つの化学療法薬を特に伴う、併用化学療法に関する。1つの態様において本発明は、癌細胞にクロロトキシンを化学療法薬と併用して最初に投与することによって、癌細胞を殺すための組成物及び方法を含む。本発明は、クロロトキシンを化学療法薬と同時に腫瘍に投与することによって、腫瘍の成長を遅延させる方法を含む。別の態様において、本発明は、最初にクロロトキシン(又はクロロトキシン誘導体)を投与すること及び続いて化学療法薬を投与することによって、癌細胞を殺す又は腫瘍の成長を遅延させるための組成物及び方法を含む。本発明は、最初に化学療法薬を投与すること及び続いてクロロトキシン(又はクロロトキシン誘導体)を投与することによって、癌細胞を殺す又は腫瘍の成長を遅延させるための方法も含む。クロロトキシン又はその誘導体の前投与、同時投与又は後投与は、好結果の治療に必要な化学療法薬の量を減少させ、それゆえ化学療法薬に関連する重篤な副作用を減少させる効果も有する。
【0019】
併用化学療法組成物
本発明は、化学療法薬と組合された、異常な細胞増殖の阻害において化学療法薬の効果を向上させるのに有効である(すなわち、化学療法薬のためのアジュバントとして作用する)クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体の量及び薬学的に許容される担体を含む、ヒトを含む哺乳動物における異常な細胞増殖の治療のための医薬組成物を含む。
【0020】
本明細書で使用される、「異常な細胞増殖」は、別途指摘しない限り、正常な調節機構に依存しない細胞増殖(例えば接触阻止の損失)を指す。これは腫瘍性疾患の良性及び悪性細胞の両方における細胞の異常な成長及び/又は増殖を含む。異常な細胞増殖の化学療法依存性阻害は、これに限定されるわけではないが、細胞死、アポトーシス、細胞分裂の阻害、転写、翻訳、形質導入などを含む各種の機構によって起こりうる。
【0021】
上記組成物の1つの実施形態において、異常な細胞増殖は癌である。本明細書で使用される、「癌」という用語は別途指摘しない限り、制御されない異常な細胞の成長及び/又は増殖を特徴とする疾患を指す。組成物が有用である癌の種類は、これに限定されるわけではないが、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫、或いは上述の癌の1又はそれ以上の組合せを含む。上記医薬組成物の別の実施形態において、上記の異常な細胞増殖は、これに限定されるわけではないが、良性前立腺肥大、過形成又は再狭窄を含む良性増殖性疾患である。
【0022】
上述のように、本発明は、少なくとも1つの化学療法薬及び薬学的に許容される担体と組み合わされた、上で定義されるクロロトキシンの量を含む、ヒトを含めた哺乳動物における異常な細胞増殖の治療のための医薬組成物を含む。本明細書で使用される、「化学療法薬」という用語は、別途指摘しない限り、異常な細胞の成長及び/又は増殖を阻害、混乱、防止又は妨害する、癌の治療で使用されるいずれかの薬剤を指す。化学療法薬の例は、これに限定されるわけではないが、アルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、ステロイドホルモン剤及び抗アンドロゲン剤を含む。一部の実施形態において、クロロトキシン又はその誘導体は、化学療法薬の単一種と併用することが可能であるが、これに対して他の実施形態において、クロロトキシンは、化学療法薬の複数種と併用することができる。
【0023】
アルキル化剤の例は、これに限定されるわけではないが、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン及びストレプトゾトシンを含む。抗生剤の例は、これに限定されるわけではないが、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン及びプリカマイシンを含む。代謝拮抗剤の例は、これに限定されるわけではないが、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、メトトレキサート及び6−チオグアニンを含む。有糸分裂阻害剤の例は、これに限定されるわけではないが、ナベルビン、パクリタキセル、ビンブラスチン及びビンクリスチンを含む。ステロイドホルモン剤及び抗アンドロゲン剤の例は、これに限定されるわけではないが、アミノグルテチミド、エストロゲン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、プレドニゾン及びタモキシフェンを含む。
【0024】
一部の態様において、本発明はコンジュゲート分子の集団を含み、上記コンジュゲート分子は少なくとも1つのクロロトキシンペプチド又はその誘導体及び少なくとも1つの化学療法薬を含み、クロロトキシン及び化学療法薬のコンジュゲーションの程度は、コンジュゲートを受ける哺乳動物における化学療法薬の効果が、化学療法薬とクロロトキシンとの混合物、又は化学療法薬単独と比較したときに向上する程度である。別の態様において、本発明は、少なくとも1つのクロロトキシンペプチド又はその誘導体が、少なくとも1つの化学療法薬及び薬学的に許容される賦形剤にコンジュゲートされる、コンジュゲート分子の集団を含む組成物を含む。一部の実施形態において、クロロトキシン又はその誘導体は、化学療法薬の単一種に結合させることができるが、これに対して他の実施形態において、クロロトキシンは化学療法薬の複数種に結合させることができる。
【0025】
本明細書で使用される、「クロロトキシン」という用語は、別途説明しない限り、配列番号1に記載の自然のクロロトキシンのアミノ酸配列を含む、Leiurus quinquestriatusサソリ毒素から天然由来の全長36アミノ酸ポリペプチドを指す(DeBin et al.(1993)Am.J.Physiol.264,C361−369)。「クロロトキシン」という用語は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている米国特許第6,319,891号で開示されているものなどの、合成又は組換えによって生成された配列番号1を含むポリペプチドを含む。
【0026】
本明細書で使用される、「クロロトキシンサブユニット」又は「クロロトキシンのサブユニット」という用語は、クロロトキシンの36未満の隣接アミノ酸を含み、癌細胞に特異的に結合できるペプチドを指す。
【0027】
本明細書で使用される、「クロロトキシン誘導体」という用語は、クロロトキシンの誘導体、類似体、変異体、ポリペプチド断片及びミメティクスを指し、正常細胞と比較したときに癌細胞に特異的に結合するなどの、クロロトキシンと同じ活性を保持する関連ペプチドも、本発明の方法を実施するために使用することができる。
【0028】
誘導体の例は、これに限定されるわけではないが、クロロトキシンのペプチド変異体、クロロトキシンのペプチド断片、例えば配列番号1、2、3、4、5、6又は7の連続する10merペプチドを含む又はそれからなる、或いは配列番号1のおおよその残基10−18又は21−30を含む断片、コア結合配列、及びペプチドミメティクスを含む。
【0029】
クロロトキシン及びそのペプチド誘導体は、当該技術分野で既知であるように、標準的な固相(又は液相)ペプチド合成方法を用いて調製することができる。加えてこれらのペプチドをコードする核酸は、市販のオリゴヌクレオチド合成機器を用いて合成され、標準的な組換え作製システムを用いて組換えにより作製される。固相ペプチド合成を用いた作製は、非遺伝子コード化アミノ酸が含まれる場合には必要とされる。本明細書で使用される、「クロロトキシン誘導体」という用語は、「変異体」と同義であり、10までの(例えば1〜7又は1〜5)のアミノ酸の1以上の欠失;クロロトキシンのアミノ酸配列の内部の合計10までの(例えば1〜5の)アミノ酸の挿入;又はクロロトキシン配列のどちらかの末端における合計100までのアミノ酸の挿入;合計15までの(例えば1〜5の)アミノ酸の保存置換による、クロロトキシン配列への修飾も含む。
【0030】
クロロトキシンの誘導体は、誘導体配列及びクロロトキシン配列が最大限に配列されたときに、少なくとも1つのアミノ酸残基の保存又は非保存置換を含むポリペプチドを含む。置換は、クロロトキシンの少なくとも1つの特性又は機能を向上させるか、クロロトキシンの少なくとも1つの特性又は機能を阻害するか、或いは1つのクロロトキシンの少なくとも1つの特性又は機能に対して中立である置換である。本明細書で使用される、クロロトキシンの「特性又は機能」は、これに限定されるわけではないが、異常な細胞増殖を停止し、被験者の麻痺、非癌細胞(すなわち正常)と比較したときの良性又は悪性癌細胞への特異的結合、良性又は悪性癌細胞の死滅を引き起こす能力からなる群より選択される少なくとも1つを含む。本開示に関して、癌細胞は、被験者、培養細胞又は細胞系からのインビボ、エキソビボ、インビトロでの、一次アイソレートでもよい。
【0031】
クロロトキシンの誘導体は更に、配列番号1のアミノ酸残基23−29に相当する、アミノ酸配列KGRGKSY(配列番号8)を含むポリペプチドを含む。クロロトキシンの誘導体は、配列番号1のアミノ酸残基7−15に相当する、アミノ酸配列TTX1X2X3MX4X5K(配列番号13)を含むポリペプチドも含み、ここでX1は、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択される酸性アミノ酸であり;X2は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンからなる群より選択されるアミノ酸であり;X3は、アスパラギン及びグルタミンからなる群より選択されるアミドアミノ酸であり;X4は、いずれかのアミノ酸であるが、好ましい実施形態においては、セリン、トレオニン及びアラニンからなる群より選択され;X5は、ヒスチン、リジン及びアルギニンからなる群より選択される塩基性アミノ酸である。1つの実施形態において、X1はアスパラギン酸であり、X2はヒスチジン又はプロリンであり、X3はグルタミンであり、X4はアラニンであり、X5はアルギニン又はリジンである。
【0032】
クロロトキシンのペプチド変異体は、これに限定されるわけではないが、配列番号1の欠失又は保存アミノ酸置換変異体を含む。本明細書で使用されるように、保存変異体は、ペプチドの生物機能に実質的に影響を及ぼさない、アミノ酸配列における変化を指す。置換、挿入又は欠失は、変更された配列がペプチドに関連付けられた生物機能(例えば癌細胞への結合)を実質的に防止する又は破壊するときに、ペプチドに影響を及ぼすと言われる。例えばペプチドの全体的な電荷、構造又は疎水性/親水性特性は、生物活性に影響を及ぼすことなく変化させることができる。したがってアミノ酸配列は、ペプチドの生物活性に影響を及ぼすことなく、例えばペプチドを更に疎水性又は親水性にするように変更することができる。
【0033】
本発明の方法は、癌を含む、本明細書で述べる異常な細胞増殖に関連する疾患の診断及び治療のための、クロロトキシンに対する同様の又は関連する活性を示す、他のサソリ種の対応するポリペプチド毒素を含む。本明細書において、「クロロトキシンに対する同様の又は関連する活性」は、異常な細胞増殖を示す細胞(異常増殖を示す良性細胞及び悪性癌細胞を含む)への結合として定義される。そのようなポリペプチド毒素の例は、これに限定されるわけではないが、配列番号8又は配列番号13に示されるクロロトキシンの結合領域の1つ以上、及び表1に示すコンセンサス配列のいずれかを含有する毒素を含む。
【0034】
【表1−1】
【0035】
【表1−2】
【0036】
【表1−3】
【0037】
【表1−4】
【0038】
【表1−5】
【0039】
【表1−6】
【0040】
本明細書で使用される、「関連するサソリ毒素」という用語は、クロロトキシンに対するアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列の同一性を示す表1に開示されたものなどの、毒素又は関連するペプチドのいずれかを指す。関連するサソリ毒素の例は、これに限定されるわけではないが、Mesobuthus martensii由来のCTニューロトキシン(GenBank Accession AAD47373)、Buthus martenssi karsch由来のニューロトキシンBmK41−2(GenBank Accession A59356)、Buthus martenssi由来のニューロトキシンBm12−b(GenBank Accession AAK16444)、Leiurus quinquestriatus hebraeu由来のプロバブルトキシンLQH8/6(GenBank Accession P55966)、Mesobuthustanaulus sindicus由来のスモールトキシン(GenBank Accession P15229)を含み、その配列は、その全体が参照により本明細書にすべて組み入れられている。
【0041】
ヌクレオチド又はアミノ酸配列レベルでの相同又は配列同一性は、配列類似性検索に調整されている、プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxによって利用されるアルゴリズムを使用して、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)解析によって決定される(Altschul et al.(1997) Nucleic Acids Res.25,3389−3402及びKarlin et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,2264−2268、どちらも参照により全体が組み入れられている)。BLASTプログラムによって使用された手法は、最初にクエリー配列及びデータベース配列の間でギャップを有する(非連続)及びギャップを有しない(連続)同様の断片を考慮し、次に識別されたすべての一致の統計的有意性を評価し、そして最後に有意性の予備選択された閾値を満足するこれらの一致のみを要約することである。配列データベースの類似性検索における基本的課題の議論については、参照により全体が組み入れられている、Altschul et al.(1994)Nature Genetics 6,119−129を参照。histogram、descriptions、alignments、expect(例えばデータベース配列に対する一致を報告するための統計的有意性閾値)、cutoff、matrix及びfilter(low complexity)の検索パラメータは、デフォルト設定である。blastp、blastx、tblastn、及びtblastxによって使用されるデフォルトのスコアリング・マトリクスは、長さが85を超えるヌクレオチド又はアミノ酸のクエリー配列に推奨されるBLOSUM62マトリクス(Henikoff et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,10915−10919、参照により全体が組み入れられている)である。
【0042】
blastnでは、スコアリング・マトリクスは、M(すなわちマッチする残基の対の報酬スコア)のN(すなわちミスマッチする残基のペナルティスコア)に対する比によって設定され、ここでM及びNのデフォルト値はそれぞれ+5及び−4である。4個のblastnパラメータは以下のように調整した:Q=10(ギャップ作成ペナルティ);R=10(ギャップ拡張ペナルティ);wink=1(クエリーに沿ってwink番目ごとにワードヒットを生成する);及びgapw=16(ギャップ付きアライメントが生成されるウィンドウ幅を設定する)。等価のBlastpパラメータ設定はQ=9;R=2;winke=1;及びgapw=32であった。GCGパッケージversion 10.0で利用できる配列間のBestfit比較は、DNAパラメータGAP=50(ギャップ生成ペナルティ)及びLEN=3(ギャップ拡張ペナルティ)及びタンパク質比較における等価設定は、GAP=8及びLEN=2である。
【0043】
本発明は、少なくとも約75パーセントの、少なくとも約85パーセントの、少なくとも約90パーセントの配列、少なくとも約95パーセント、又は少なくとも約99パーセントの、配列番号1で示されたクロロトキシン配列全体との配列同一性のアミノ酸配列を有する、対立変異体、保存置換変異体、及びサソリ毒素ペプチドファミリーのメンバーを含む。そのような配列についての同一性又は相同性は、配列の整列後に既知のペプチドと一致する、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書では定義される。
【0044】
融合タンパク質、又はN−末端、C−末端又はペプチド配列内への内部拡張、欠失、又は挿入は、相同性に影響を及ぼすとして構築されるものではない。そのような拡張の例は、これに限定されるわけではないが、以下の配列を含む:
HHHHHHMCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR(配列番号2)、
YMCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR(配列番号3)、
YSYMCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR(配列番号4)。
【0045】
クロロトキシンペプチド変異体は、少なくとも約7、8、9、10、15、20、25、30、又は35の連続するアミノ酸残基を有する、配列番号1で示されたアミノ酸配列の断片を有するペプチドを含む。ペプチド変異体は更に、クロロトキシンの活性に関連付けられるこれらの断片を含む。ポリペプチドとも呼ばれるそのような断片は、顕著な親水性の領域と同様に、既知のペプチドドメインに一致するアミノ酸配列の領域として同定されたクロロトキシンペプチドの機能領域を含有できる。変異体は、リンカー配列によって除去又は置換された介在アミノ酸と、どんな順序でも相互に連結した少なくとも2つのコア配列を備えたペプチドも含むことができる。領域はすべて、MacVector(Oxford Molecular)などの一般に入手可能なタンパク質配列解析ソフトウェアを使用することによって容易に同定できる。
【0046】
考慮されたペプチド変異体は更に、例えば相同組換え、部位特異的又はPCR突然変異誘発による規定の変異を含有するもの、及びペプチドのファミリーの対立遺伝子又は他の自然発生変異体;及び自然発生アミノ酸以外の部分(例えば酵素又は放射性同位体などの検出可能な部分)を用いて、置換、化学、酵素又は他の適切な手段により、ペプチドが共有結合的に修飾された誘導体を含む。クロロトキシン変異体ペプチドの例は、これに限定されるわけではないが、以下の配列を含む:
MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCFGPQCLCR(配列番号5)、
RCKPCFTTDPQMSKKCADCCGGKGKGKCYGPQCLC(配列番号6)、
RCSPCFTTDQQMTKKCYDCCGGKGKGKCYGPQCICAPY(配列番号7)。
【0047】
ペプチドミメティクス
クロロトキシン誘導体の別のクラスにおいて、本発明は、クロロトキシンの三次元構造を模倣するペプチドミメティクスを含む。そのようなペプチドミメティクスは、例えばより経済的な生産、より大きい化学安定性、向上した薬理特性(半減期、吸収、効力、有効性など)、変化した特異性(例えば広範囲の生物活性)、低下した抗原性及びその他を含む、自然発生ペプチドに勝る顕著な利点を有することがある。
【0048】
1つの形式において、ミメティクスは、クロロトキシンペプチド二次構造の要素を模倣するペプチド含有分子である。ペプチドミメティクスの使用の背後にある、基礎を成す原理は、タンパク質のペプチド主鎖が主として、抗体及び抗原の分子相互作用などの、分子相互作用を促進するような方法で、アミノ酸側鎖を配向させるために存在することである。ペプチドミメティクスは、天然分子に類似した分子相互作用を許容することが期待される。別の形式において、ペプチド類似物質は、テンプレートペプチドの特性に類似した特性を備えた非ペプチド薬として、薬学業界で一般に使用される。非ペプチド化合物のこれらの種類は、ペプチドミメティクス(peptide mimetics)又はペプチドミメティクス(peptidomimetics)とも呼ばれ(参照により本明細書に組み入れられた、Fauchere(1986)Adv.Drug Res.15,29−69;Veber & Freidinger(1985)Trends Neurosci.8,392−396;Evans et al.(1987)J.Med.Chem.30,1229−1239)、通常、コンピュータ分子モデリングの補助によって開発される。
【0049】
治療的に有用なペプチドに構造的に類似しているペプチドミメティクスは、同等の治療又は予防効果を生成するために使用できる。一般にペプチドミメティクスは、パラダイムポリペプチド(すなわち生化学特性又は薬理活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、当業界の既知の方法によって場合によりある結合に置換された1つ以上のペプチド結合を有する。ペプチドミメティクスの標識化は通常、定量的構造−活性データ及び分子モデリングによって予測されるペプチドミメティクス上の非干渉位置への、直接の、又はスペーサー(例えばアミド基)を通じた1つ以上の標識の共有結合を包含する。そのような非干渉位置は一般に、治療効果を生じさせるためにペプチドミメティクスが結合するマクロ分子との直接的な接触を形成しない位置である。ペプチドミメティクスの誘導体化(例えば標識化)は、ペプチドミメティクスの所望の生物活性又は薬理活性を実質的に妨げるべきではない。
【0050】
ペプチドミメティクスの使用は、薬物ライブラリーを作成するためのコンビナトリアルケミストリーの使用によって向上させることができる。ペプチドミメティクスの設計は、例えば腫瘍細胞へのペプチドの結合を増加又は減少させるアミノ酸変異を同定することによって補助することができる。使用できる手法は、酵母ツーハイブリッド法(Chien et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,9578−9582を参照)及びファージディスプレイ法の使用を含む。ツーハイブリッド法は、酵母中のタンパク質−タンパク質相互作用を検出する(Fields et al.(1989) Nature 340,245−246)。ファージディスプレイ法は、固定化タンパク質とラムダ及びM13などのファージの表面で発現されるタンパク質との間の相互作用を検出する(Amberg et al.(1993)Strategies 6,2−4;Hogrefe et al.(1993)Gene 128,119−126)。これらの方法は、ペプチド−タンパク質相互作用の正及び負の選択並びにこれらの相互作用を決定する配列の同定を可能にする。
【0051】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮又は頬部経路を通じて投与することができる。例えば薬剤は、マイクロインジェクションにより腫瘍に局所投与される。代わりに、又は同時に、投与は経口経路によって投与される。例えばクロロトキシン又はその誘導体は、腫瘍の部位に局所的に投与可能であり、少なくとも1つの化学療法薬の経口投与が続く。クロロトキシンの事前投与は、好結果の処置に必要な化学療法薬の量を減少させ、それゆえ化学療法薬に関連する重篤な副作用を減少させる効果を有する。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康状態及び体重、もしあれば同時治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存するであろう。
【0052】
本発明は、癌の治療に有用である、クロロトキシン又はその誘導体及び1つ以上の化学療法薬を含有する組成物を更に含む。個々の要求は変化するが、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当該技術分野の技能の範囲内である。代表的な投薬量は、1.0pg/kg体重〜100mg/kg体重である。全身投与の好ましい投薬量は、100.0ng/kg体重〜10.0mg/kg体重である。マイクロインジェクションによる部位への直接投与のための好ましい投薬量は、1ng/kg体重〜1mg/kg体重である。
【0053】
クロロトキシン及び化学療法薬に加えて、本発明の組成物は、賦形剤及び作用部位への送達のために薬学的に使用できる製剤への活性化合物の処理を促進する助剤を含む適切な薬学的に許容される担体を含有する。非経口投与に適した調合物は、水溶形、例えば水溶性塩の活性化合物の水溶液を含む。加えて、適当な油性注射用懸濁物としての活性化合物の懸濁物を投与できる。適切な親油性溶媒又はビークルは、脂肪油、例えばゴマ油又は合成脂肪酸エステル(例えばエチルオレアート又はトリグリセリド)を含む。水性注射懸濁物は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及びデキストランを含む、懸濁物の粘度を上昇させる物質を含有することができる。場合により、懸濁物は、安定剤も含むことができる。細胞への送達のための薬剤をカプセル化するためにリポソームも使用できる。
【0054】
本発明による全身投与用の医薬製剤は、腸溶、非経口又は局所投与用に調合される。実際に、3種類すべての製剤が、活性成分の全身投与を達成するために同時に使用することができる。
【0055】
上述したように、局所投与を使用できる。溶液、懸濁物、ゲル、軟膏又は膏薬などの、いずれの通常の局所製剤が利用できる。そのような局所製剤の製剤は、例えばGennaro et al.(1995)Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishingに例示されているように、医薬製剤の技術分野で述べられている。局所投与のために、組成物は、パウダー又はスプレー、特にエアゾール形としても投与できる。一部の実施形態において、本発明の組成物は、吸入によって投与できる。吸入療法では、活性成分は定量吸入器による投与のために有用な溶液又は乾燥粉末吸入器に適した形である。別の実施形態において、組成物は、気管支洗浄による投与に適している。
【0056】
経口投与のための適切な製剤は、硬質又は軟質ゼラチンカプセル、丸薬、コーティング錠を含む錠剤、エリキシル、懸濁物、シロップ又は吸入及びその徐放形を含む。別の実施形態において、医薬組成物は、クロロトキシン又はその誘導体を、化学療法薬の少なくとも1つの徐放形と併用して含む。そのような製剤において、クロロトキシン又はその誘導体は、化学療法薬の放出前に体中に分布されて、化学療法薬の癌細胞への結合前に、クロロトキシンの癌細胞への結合を可能にする。そのような製剤からの化学療法薬の遅延放出時、及び癌細胞の部位への続いての分布時に、化学療法薬の効果は、クロロトキシンの癌細胞へのより早期の結合によって向上する。そのような徐放製剤は、クロロトキシンとそれに続く1つ以上の化学療法薬の連続投与と同じ効果を持つ。
【0057】
標識クロロトキシン及びクロロトキシン誘導体
本発明は、通常、自然に見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置換される1つ以上の原子を有する、同位体標識クロロトキシン又はその誘導体も含む。本発明の化合物中に組み入れることができる同位体の例は、水素、炭素、フッ素、リン、ヨウ素、銅、レニウム、インジウム、イットリウム、テクネチウム及びルテチウム(すなわち3H、14C、18F、19F、31P、32P、35S、131I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu)を含む。一部の実施形態において、金属(例えば銅、レニウム、インジウム、イットリウム、テクネチウム及びルテチウム)である同位体は、クロロトキシン又はその誘導体にキレート化によって非共有結合的に結合している。本発明に含まれるキレート化の例は、クロロトキシン又はその誘導体に融合されるポリヒスチジン(polyHis)領域への金属同位体のキレート化である。非金属同位体は、許容されるいずれかの手段を使用して、クロロトキシン又はその誘導体に共有結合される。
【0058】
本発明は、ガドリニウム(Gd)などの金属で標識されたクロロトキシン又はその誘導体も含む。一部の実施形態において、ガドリニウムなどの金属は、クロロトキシン又はその誘導体にキレート化によって共有結合的に結合している。本発明に含まれるキレート化の例は、クロロトキシン又はその誘導体に融合されたpolyHis領域へのガドリニウムなどの金属のキレート化である。
【0059】
本発明によって提供される標識クロロトキシン及びその誘導体は、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)の放射性トレーサーとしても有用である。
【0060】
上述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する、本発明の薬剤、そのプロドラッグ、及び上記薬剤又は上記プロドラッグの薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内である。トリチウム及び炭素−14同位体は、調製の容易さ及びその検出能で特に好ましい。更に重水素などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性から生じる治療上の利点、例えば延長されたインビボでの半減期又は減少した投薬量要件を与えることができ、それゆえ一部の状況において好ましい。
【0061】
クロロトキシンとの併用化学療法を用いる治療方法
本発明は、上記哺乳動物に、化学療法薬の前に、又はそれに続いて投与されるときに化学療法薬の効果を向上させるのに有効である(すなわち化学療法薬のアジュバントとして作用する)クロロトキシン又はその誘導体の量、或いはクロロトキシン又はその誘導体の量を含む医薬組成物を投与することを含む、ヒトを含む哺乳動物における異常な細胞増殖の治療のための方法も含む。この方法の1つの実施形態において、異常な細胞増殖は、これに限定されるわけではないが、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、或いは上述の癌の1つ以上の組合せを含む、癌である。上記方法の別の実施形態において、上記の異常な細胞増殖は、これに限定されるわけではないが、良性前立腺肥大、過形成又は再狭窄を含む良性増殖性疾患である。
【0062】
本発明は、異常な細胞増殖を阻害する化学療法薬の効果を向上させるのに有効である、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体及び1つ以上の化学療法薬の量を含む医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物(ヒトを含む)の異常な細胞増殖の治療のための方法も含む。これは、腫瘍性疾患の良性及び悪性細胞を含む癌細胞の異常な成長及び/又は増殖を含む。異常な細胞増殖の阻害は、これに限定されるわけではないが、細胞死、アポトーシス、細胞分裂の阻害、転写、翻訳、形質導入などを含む各種の機構によって起こりうる。
【0063】
上述したように、クロロトキシン及びその誘導体は、異常な細胞増殖(例えば癌)の治療に有用である他の化学療法薬と併用して、又は連続的に併用して提供することができる。本明細書において、2つの薬剤が同時に投与される、又は薬剤が同時に作用するような方法で独立して投与されるときに、2つの薬剤は併用して投与されると言われる。例えばクロロトキシン又はクロロトキシン誘導体は、これに限定されるわけではないが、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、インターカレーティング抗生剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤を含む以下の種類の化学療法薬から選択される1つ以上の化学療法薬と併用して使用することができる。
【0064】
アルキル化剤の例は、これに限定されるわけではないが、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン及びストレプトゾトシンを含む。抗生剤の例は、これに限定されるわけではないが、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン及びピリカマイシンを含む。代謝拮抗剤の例は、これに限定されるわけではないが、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、メトトレキサート及び6−チオグアニンを含む。有糸分裂阻害剤の例は、これに限定されるわけではないが、ナベルビン、パクリタキセル、ビンブラスチン及びビンクリスチンを含む。ステロイドホルモン及び抗アンドロゲン剤の例は、これに限定されるわけではないが、アミノグルテチミド、エストロゲン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、プレドニゾン及びタモキシフェンを含む。
【0065】
上の化学療法薬の医薬製剤の例は、これに限定されるわけではないが、BCNU(すなわちカルムスチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロウレア、BiCNU(登録商標))、シスプラチン(シス−プラチン、シス−ジアミンジクロロプラチナ、Platinol(登録商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシルダウノルビシン、Adriamycin(登録商標))、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン、Gemzar(登録商標))、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド、Hydrea(登録商標))、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、テモゾロミド(TMZ、テモダール(登録商標))、トポテカン(Hycamtin(登録商標))、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル、5−FU、Adrucil(登録商標))、ビンクリスチン(VCR、Oncovin(登録商標))及びビンブラスチン(Velbe(登録商標)又はVelban(登録商標))を含む。
【0066】
本発明の方法の実施において、クロロトキシン又はその誘導体を単独で或いは他の治療又は診断剤と併用して使用できる。ある好ましい実施形態において、クロロトキシン又はその誘導体は、一般に許容される腫瘍学の医療行為による各種の癌に通例処方される他の化学療法薬と共に同時投与できる。本発明の組成物は、普通は、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット及びマウスにおいてインビボで、又はインビトロで利用することができる。本発明は、ヒト被験者の治療に特に有用である。
【0067】
放射線と併用したクロロトキシンを使用する治療方法
本発明は、癌などの異常細胞増殖に関連する疾患の治療のための、放射線治療と併用したクロロトキシン又はその誘導体の投与を含む治療方法を含む。特に、治療は、癌細胞でのアポトーシス(細胞死)を誘導するように設計されているが、転移の発生又は回数の減少、及び腫瘍サイズの減少も考慮される。放射線治療剤に対する腫瘍細胞の抵抗力は、臨床腫瘍学において主要な問題となっている。それゆえ本発明に照らして、クロロトキシンとの併用療法は、放射線治療の有効性を向上させるために放射線耐性腫瘍に対して使用できることが、考慮される。
【0068】
上で議論したように、本発明は、癌を有する哺乳動物に、併用したときに癌細胞死が誘導されるのにどちらも十分な用量の、イオン化放射線と併用したクロロトキシン又はその誘導体の量を投与することを含む、癌を治療する方法を含む。1つの実施形態において、クロロトキシンの存在は、放射線治療単独と比較したときに、癌を治療するために必要な放射線の量を減少させる。クロロトキシン又はその誘導体は、上記放射線の前、上記放射線の後又は上記放射線と同時に提供できる。
【0069】
DNA損傷を引き起こす放射線は、広範囲に使用されており、一般にガンマ線、X線(例えば線形加速装置によって生成された外部ビーム放射線)、及び放射性同位体の腫瘍細胞への直接送達として知られるものを含む。これらの要素のすべてがDNA、DNAの前駆物質、DNAの複製及び修復、並びに染色体の集合及び維持に対して広範囲の損傷をたいてい引き起こす。クロロトキシンと併用した外部ビーム放射線治療では、処置は通常、1日につき1回の治療として与えられる。1日省略された場合、又はある癌療法適応症では、時折、1日に付き2回の治療が与えられる。標準線量は1日に付き約1.8Gy〜約2.0Gyの範囲で、週間線量は1週間あたり約9Gy〜約10Gyである。治療は通常、1週間あたり5日間与えられ、前週の治療からの回復時間として2日間は休みである。
【0070】
クロロトキシンを用いた診断の方法
本発明は、患者の臓器又は体の部分における異常な細胞増殖の存在及び位置の決定のための診断方法を含む。本方法の実施形態において、異常な細胞増殖は、これに限定されるわけではないが、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、或いは上述の癌の1つ以上の組合せを含む、癌である。
【0071】
本方法は、患者へのクロロトキシン又はその誘導体の検出可能な量を含む、組成物の検出可能な量の投与を含む。本明細書で使用される「検出可能な量」という用語は、腫瘍中の悪性癌細胞を含む1つ以上の異常な細胞への標識クロロトキシン又はその誘導体の結合を検出するために十分である、患者に投与される標識クロロトキシン又はその誘導体の量を指す。本明細書で使用される「撮影有効量」という用語は、腫瘍中の悪性癌細胞を含む1つ以上の異常な細胞への標識クロロトキシン又はその誘導体の結合を撮影するために十分である、患者に投与される標識クロロトキシン又はその誘導体の量を指す。
【0072】
本発明は、腫瘍中の悪性細胞を含む異常な細胞をインビボで同定及び定量するために、磁気共鳴分光法(MRS)又は画像法(MRI)などの非侵襲性神経画像技法、或いは陽電子放出断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などのガンマ撮影法と併せて使用される、同位体標識クロロトキシン又はその誘導体を利用する。「インビボ撮影」という用語は、上述したような標識クロロトキシン又はその誘導体の検出を可能にする、いずれかの方法を指す。ガンマ撮影では、腫瘍又は検査されている部分から放出された放射線は測定されて、全結合として、又は1つの組織における全結合が、同じインビボ撮影手順の間の同じ被験者の別の組織における全結合又は全身に正規化される(例えばそれによって割られる)割合のどちらかとして表現される。インビボでの全結合は、大過剰の未標識の、しかしそうでなければ化学的に同一の、化合物と併せた、同量の標識化合物の第二の注入による修正の必要なしに、インビボ撮影技法によって腫瘍又は組織中で検出された全体の信号として定義される。本明細書で使用される、「被験者」又は「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒト、及び最も好ましくは、腫瘍中の悪性細胞を含む異常な細胞を有することが疑われるヒトを指す。
【0073】
インビボ撮影のために、利用可能な検出装置の種類は、所与の標識の選択において主要な要素である。例えば放射性同位体は、本発明の方法において、インビボ撮影に特に適切である。使用する装置の種類は、放射性同位体の選択を左右するであろう。例えば選択された放射性同位体は、所与の種類の装置によって検出可能な崩壊の種類を有する必要がある。別の考慮事項は、放射性同位体の半減期に関連する。半減期は、標的による最大取り込み時になお検出可能であるように十分長くするべきであるが、宿主が有害な放射線を被らないように十分に短くするべきである。同位体標識クロロトキシン又はその誘導体は、適切な波長の放出されたガンマ照射が検出される場合にガンマ撮影を用いて検出できる。ガンマ撮影の方法は、これに限定されるわけではないが、陽電子放出断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)を含む。SPECT検出では好ましくは、選択された放射性標識は、微粒子放出を欠いているが、多数の光子を生成する。PET検出では、放射性標識は、PETカメラによって検出される陽電子放出型放射性同位体となるであろう。
【0074】
本発明において、腫瘍のインビボ検出及び撮影に有用であるクロロトキシン又はその誘導体が作成される。これらの化合物は、磁気共鳴分光法(MRS)又は画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影法(PET)、及び単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などの非侵襲性神経画像技法と併せて使用されるものである。本発明により、クロロトキシン又はその誘導体は、当該技術分野で既知の一般的な有機化学技法による、上述のいずれかの許容される放射性同位体によって標識できる(March(1992)Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms & Structure,Wileyを参照)。クロロトキシン及びその誘導体もPETのために、当該技術分野で周知の技法により銅、フッ素、炭素、臭素などの同位体を用いて放射性標識可能であり、述べられている(Phelps(1986)Positron Emission Tomography and Autoradiography,Raven Press pages 391−450を参照)。クロロトキシン及びその誘導体もSPECTのために、当該技術分野で既知の複数の技法によりヨウ素などの許容される同位体によって放射性標識できる(Kulkarni(1991)Int.J.Rad.Appl.Inst.18,647−648を参照)。
【0075】
例えばクロロトキシン及びその誘導体は、これに限定されるわけではないが131I又は123Iなどの、いずれかの適切な放射性ヨウ素同位体を用いて、ヨウ化ジアゾニウムを直接介したジアゾ化アミノ誘導体のヨード化によって(Greenbaum(1936)Am.J.Pharm.108,17−18を参照)、又は不安定なジアゾ化アミンの安定なトリアジンへの変換によって、又は非放射性ハロゲン化前駆物質の、次に当該技術分野で周知の複数の方法によってヨウ素化合物に変換できる安定なトリアルキルスズ誘導体への変換によって(Chumpradit et al.(1991)J.Med.Chem.34,877−878及びZhuang et al.(1994)J.Med.Chem.37,1406−1407を参照)、標識できる。
【0076】
クロロトキシン及びその誘導体は、64Cu又は99mTcなどの既知の金属放射性標識を用いても放射性標識できる。そのような金属イオンを結合するリガンドを導入する置換基の修飾は、修飾クロロトキシンペプチド又はその誘導体におけるpolyHis領域への共有結合を含む、放射性標識の当業者による必要以上の実験なしに実施することができる。金属放射性標識クロロトキシン又はその誘導体は次に、腫瘍を検出及び撮影するために使用できる。
【0077】
本発明の診断方法は、インビボ撮影及び分光法のために、核磁気共鳴分析法によって検出可能な同位体を使用できる。核磁気共鳴分析法で特に有用な元素は、これに制限されるわけではないが、19F及び13Cを含む。本発明のために適切な放射性同位体は、ベータエミッタ、ガンマエミッタ、陽電子エミッタ及びX線エミッタを含む。これらの放射性同位体は、これに限定されるわけではないが、131I、123I、18F、11C、75Br及び76Brを含む。
【0078】
本発明による磁気共鳴撮影法(MRI)又は分光法(MRS)での使用のための適切な安定同位体は、これに限定されるわけではないが、19F及び13Cを含む。組織生検又は死後組織中の腫瘍細胞を含む異常な細胞のインビトロ同定及び定量のために適切な放射性同位体は、125I、14C及び3Hを含む。好ましい放射性標識は、PETインビボ撮影での使用のための64Cu又は18F、インビボSPECT撮影での使用のための123I又は131I、MRS及びMRIのための19F、並びにインビトロ法のための3H又は14Cである。しかしながら診断プローブを可視化するためのいずれの従来の方法も、本発明に従って利用できる。
【0079】
一般に、放射性標識クロロトキシン及びその誘導体の投薬量は、年齢、症状、性別、及び患者の疾患の程度、ある場合には禁忌、当業者によって調整される併用治療及び他の変動事項によって変化するであろう。投薬量は、0.001mg/kg〜1000mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜100mg/kgの範囲である。患者への投与は、局所又は全身性であり、静脈内、動脈内、くも膜下(髄液を介して)、頭蓋内などで実施できる。投与は、検査中の体の部位に依存して、皮内又は腔内でもよい。
【0080】
標識クロロトキシン又はその誘導体が異常な細胞と結合するため十分な時間、例えば30分〜80時間が経過した後、検査中の被験者の部分は、MRS/MRI、SPECT、プラナーシンチレーション撮影、PETなどのルーチンの撮影技法、及び新しい撮影技法によっても検査される。精密なプロトコルは、上記のように患者に固有の要素に応じて、そして検査中の体の部位、投与方法及び使用した標識の種類に応じて、必然的に変化するであろう;具体的な手順の決定は、当業者にとってルーチン的である。脳撮影では好ましくは、結合した放射性標識クロロトキシン又はその誘導体の量(全結合又は特異的結合)を測定し、(比として)患者の小脳に結合した放射性標識クロロトキシン又はその誘導体の量と比較する。次に、この比を、年齢に適合した正常な脳における同じ比と比較する。
【0081】
更なる説明なしに、当業者は上の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を利用して、請求された方法を実施できることが考えられる。以下の実施例は、本発明の実施形態を説明し、決して開示の残りを制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0082】
実施例1
インビトロでの化学療法薬活性の決定
各種の化学療法薬の、複数の癌細胞系(表1を参照)に対する効果を試験するために、組織培養方法を最適化した。細胞は、具体的な細胞系に応じて、96ウェルマイクロタイター組織培養プレートに1ウェル当たり約1000〜2000細胞の密度で播種した。細胞は、5%の二酸化炭素を供給した37℃の加湿細胞培養インキュベータ内で付着させた。各細胞系での各薬物の用量反応曲線を得るために、細胞を、特定の細胞毒性化合物の減少する濃度によって2〜5日間処置した。処置の後、薬物の細胞毒性効果は、メーカーの説明書に従って、細胞カウントキット−8(CCK−8)(Dojindo Inc.)を用いて定量した。手短に言えば、細胞毒性薬による処置期間の後、細胞はCCK−8試薬とインキュベートし、特定の細胞種に応じて1〜4時間に渡って37℃にてインキュベートした。インキュベーションの後、プレートをマイクロプレートリーダーで波長490nmにて読取った。各薬物のIC50を薬物の負の対数濃度対平均光学密度のX−Y分散プロットから計算した(表2)。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
実施例2
インビトロでの化学療法薬活性に対するクロロトキシンの効果
化学療法薬に対するクロロトキシンの薬理効果の測定のために、実施例1の細胞培養方法を、以下の修正を行い利用した:IC50に接近しているが、通常そのすぐ下である、化学療法薬の濃度を各アッセイで使用した。次に、クロロトキシンの各種の量をそのIC50の付近又はそれ以下の化学療法薬の濃度と併用して測定し、化学療法薬の細胞毒性効果に対するクロロトキシンの効果を投与の2〜3日後に測定した。このアッセイで利用したクロロトキシンの濃度は、マイクロモルからナノモル濃度の範囲であった。
【0086】
D54−MG細胞増殖に対する、テモダールと併用したクロロトキシンの添加の効果を図1に示す。この実験で使用したテモダールのレベル(0.050mM)は、これらの細胞を死なせ、より低い光学密度値を生成するために必要な濃度よりも約30倍低い(表2を参照)。クロロトキシン(TM−601)単独は、細胞増殖に対して効果を持たなかった。クロロトキシンは、テモダールと同時に投与したときには一切効果を生じないが、クロロトキシンをテモダールの24時間前に添加したときは、濃度0.050mMのテモダールが30倍高いテモダール濃度で通常観察されるレベルと同等に細胞増殖を減少させた。これらの結果は、テモダールの投与の前のクロロトキシンの投与が、癌細胞をテモダールの効果に対して感作させることを証明する。
【0087】
実施例3
インビボでの化学療法薬の活性に対するクロロトキシンの効果
この研究の目的は、神経膠腫細胞系を用いたインビトロでの研究から示されるように、クロロトキシンと併用したヒドロキシウレア又はテモダールが腫瘍成長を阻害するのに十分であるかどうかを判断することである。他の研究は、ヒト癌細胞系とプレインキュベートされたクロロトキシンが細胞を、化学療法的腫瘍細胞死滅剤であるテモダールに対して大きく感作させることを示した。神経膠腫脇腹腫瘍を有するマウスにおける、クロロトキシンを用いたヒドロキシウレア又はテモダールとの併用処置を、ヒドロキシウレア又はテモダール単独及び生理食塩水単独の処置群と比較した。ヒドロキシウレア及びテモダール投薬量は、ヌードマウスでの鎌状細胞死の典型例の処置における体からのクリアランスを決定するために前の研究で使用した最低投薬量(10mg/kg体重)に基づいていた(Iyamu et al.(2001) Chemotherapy 47,270−278)。
【0088】
耳標を付け、識別番号を与えたヌードマウスは、脇腹腫瘍接種の標準操作手順に従って、軽度の麻酔下で5パーセントメチルセルロースとの混合物0.10ml中の500万個のU251神経膠腫細胞を接種した(Iyamu et al.(2001)Chemotherapy 47,270−278)。脇腹腫瘍は発生し、接種のほぼ30日後に確立された。
【0089】
脇腹腫瘍が確立したマウスはそれぞれ、生理食塩水、生理食塩水及びヒドロキシウレア又はテモダール(13.2mg/kg体重)、或いは生理食塩水、ヒドロキシウレア又はテモダール(13.2mg/kg)並びにクロロトキシン(0.080mg/kg体重)のいずれかよりなる滅菌溶液の0.100ml注射(腹腔内)で処置した。腫瘍体積は、非麻酔マウスの腫瘍の長さ×幅×高さを決定することによって、指示された日に同じセットのキャリパーによる測定値に基づいて計算した。各動物は実験の開始時に異なるサイズの腫瘍を有したため、データは注射プロトコルの最初の日からの腫瘍成長のパーセント変化として、最終形として示される。統計的有意性は、一元ANOVA試験によって決定した。テモダール単独が異種移植腫瘍の成長に対してあまり効果を持たないレベルでは、クロロトキシンと併用したテモダールは、腫瘍の成長を劇的に低下させた(図2)。
【0090】
上述したように、クロロトキシンと併用したヒドロキシウレアの効力も、神経膠腫脇腹腫瘍を確立するためにD54神経膠腫細胞を使用することを除いて、同じマウスの脇腹モデルで評価した。ヒドロキシウレアと併用したクロロトキシンで処置したマウスは、ヒドロキシウレア単独又は生理食塩水単独のどちらかで処置したマウスよりもサイズが著しく小さい腫瘍を有し(29日でp=0.01及び32日でp=0.005)、ヒドロキシウレアと併用したクロロトキシンがヒドロキシウレア単独よりも更に腫瘍成長を著しく減少させることを示した(図3)。
【0091】
実施例4
標識クロロトキシンを用いたPET撮影研究
以下の例示的な手順は、診療所内の患者に対してPET撮影研究を実施するときに利用できる。患者は、水分摂取は随意にさせて少なくとも12時間絶食させ、実験日に筋肉内注射されたアセプロマジン0.3〜0.4mlを前投与する。放射性標識クロロトキシンの投与のために、20ゲージ、2インチの静脈内カテーテルを対側尺骨静脈に挿入する。
【0092】
患者をPETカメラ内に配置し、静脈内カテーテルを介して[15O]H2Oのトレーサー線量を投与する。腫瘍を含む所望の部分の完全な結像を含めるために、そのようにして得られた画像を用いて、患者が正しく配置されるようにする。続いて[64Cu]放射性標識クロロトキシン(<20mCi)を、静脈内カテーテルを介して投与する。全放射性トレーサー画像の取込後、複数の線量率(0.1、1.0又は10mpk/日)で評価される放射性標識クロロトキシンの注入を開始する。2時間の注入後、カテーテルを介して、[64Cu]放射性標識クロロトキシンを再度注入する。画像は再度、90分まで取込む。放射性トレーサーの注入の10分以内及び撮影セッションの終了時に、放射性標識クロロトキシンの血漿濃度を決定するために、血液サンプル1.0mlを得る。
【0093】
実施例5
D54グリア芽腫細胞を96ウェル平底プレートに約1000細胞/ウェルの濃度で播種し、5%CO2中37℃にてインキュベートした。24時間後に、クロロトキシンを1:4制限希釈にて、最終濃度20、5、1.25、0.313、0.078、0.0195、0.0049、0.0012、0.00031又は0.00008nMまで添加した。対照細胞にはビークルのみ与えた。処置の24時間後、クロロトキシンの効果は、メーカーの説明書に従って、細胞カウントキット−8(CCK−8)(Dojindo Inc.)によりMTTミトコンドリア酵素基質を用いて定量した。手短に言えば、クロロトキシンによる処置期間の後、細胞をCCK−8試薬とインキュベートした。インキュベーションの後、プレートをマイクロプレートリーダーで波長490nmにて読取り、より高い吸収はより高い細胞生存能力を示した。図4は、クロロトキシンのインキュベーションが、より小さい数の生存細胞/ウェル対PBS対照によって証明されるように、0.00120nMまでの試験したすべての濃度においてD54細胞の増殖を阻害したことを示す。
【0094】
実施例6
D54グリア芽腫細胞を96ウェル平底プレートに約1000細胞/ウェルの濃度で播種し、5%CO2中37℃にてインキュベートした。24時間後に、クロロトキシンを1:4制限希釈にて、最終濃度20、5、1.25、0.313、0.078、0.02、0.0049、0.0012、0.0003又は0.00008nMまで添加した。対照細胞にはビークルのみ与えた。24時間後、細胞の半分をクロロトキシンがないように洗浄し、培地を新しい培地と交換した。クロロトキシンが残っている及びクロロトキシンを除去した両方の条件の細胞を、更に4日間インキュベートした。インキュベーションの後、実施例1と同様にCCK−8によりMTTミトコンドリア酵素基質を用いて、クロロトキシンの効果を定量した。図5は、長いインキュベーション時間が、追加の増殖日数によって細胞にクロロトキシンの効果を克服させ、この例ではクロロトキシンが細胞増殖を阻害するように見えないことを示している。
【0095】
実施例7
PC3前立腺癌細胞を96ウェル平底プレートに約1000細胞/ウェルの濃度で播種し、5%CO2中37℃にてインキュベートした。24時間後に、クロロトキシンを1:2制限希釈にて、最終濃度(nM)20、10、5、2.5、1.25、0.625、0.313、0.156、0.078、及び0.039まで添加した。対照細胞にはPBSビークルのみ与えた。処置の24時間後、実施例1と同様にCCK−8によりMTTミトコンドリア酵素基質を用いて、クロロトキシンの効果を定量した。図6は、クロロトキシンのインキュベーションが、より小さい数の生存細胞/ウェル対PBS対照によって証明されるように、試験したすべての濃度においてD54細胞の増殖を阻害したことを示す。
【0096】
実施例8
胸腺欠損ヌードマウス8匹の3つのグループに、右脇腹にヒトD54グリア芽腫細胞5×107の皮下注射を与えて、これらのマウスにヒト神経膠腫の脇腹への異種移植を生じさせた。グループI及びIIIの動物には、D54注射の14、21、28、35、42及び49日後に100μlのリン酸緩衝生理食塩水中のクロロトキシン(配列番号1)2.6μgを静脈内に与えた。グループII及びIIIの動物には、D54注射の15、22、29、36、43及び50日後に2Gy60C全身照射を与えた。腫瘍サイズは、週3回測定し、図7に示す。
【0097】
実施例9
胸腺欠損ヌードマウスでの頭蓋内D54MG神経膠腫異種移植は、被験者の脳へのD54MG細胞1×106個の移植によって確立させた。処置計画は、移植の14日後に、尾静脈内注射によって週2回で開始した。マウス7匹の対照グループには生理食塩水ビークルのみを投与した。動物8匹を含むマウスの第二のグループにはそれぞれ、0.2μg/用量の、低用量のクロロトキシンを投与し、動物8匹を含むマウスの第三のグループには、2.0μg/用量の、高用量のクロロトキシンを投与した。動物は死まで追跡し、生存時間をKaplan−Meierチャートにプロットして、生存期間の中央値を示した(図8)。これらの結果は、クロロトキシン単独での処置が、実質的に頭蓋内モデルの被験者の生存を延長させること、及びこの延長した生存が用量依存性であることを示している。クロロトキシンの投与は静脈内であることは注目に値し、クロロトキシンは血液脳関門を通過してその効果を発揮することが証明される。
【0098】
実施例10
別個の調査で、D54MG神経膠腫異種移植は、胸腺欠損ヌードマウスの脇腹にD54MG細胞1×106個を移植することにより、末梢的に確立した。腫瘍は14日目に触診可能であり、個々の腫瘍の体積は約43mm3であった。再び処置計画は、移植の14日後に、尾静脈内注射によって週2回で開始した。マウス7匹の対照グループには生理食塩水ビークルのみを投与した。動物8匹を含むマウスの第二のグループには、それぞれ0.2μg/用量の低用量のクロロトキシンを投与した。各注射時に腫瘍サイズを測定し、元の腫瘍サイズのパーセントとしてプロットした(図9)。静脈内処置は42日目に終了し、腫瘍の測定を数週間継続した。これらの結果は、低用量クロロトキシンが単独で、この脇腹モデルでの腫瘍成長を劇的に減少できることを証明している。
【0099】
実施例11
クロロトキシンのコア結合部位配列を同定するために、図10に示すようにペプチドのC末端から開始する、配列番号1に由来する27の重複10merを合成した。各ペプチドは、検出を促進するためにアミノ末端に結合したビオチンを有しており、架橋を防止するために各システイン残基はセリンと置換された。
【0100】
10merペプチドのPC3前立腺癌細胞へのインビトロでの結合は、培養されたPC3細胞を個々のペプチドによってインキュベートすることによって測定した。結合は、製造者の説明書に従って市販キットを使用して、ペプチド露出細胞をHRP−アビジンによってインキュベートすることにより検出及び定量した。
【0101】
図11は、配列番号1の10−merペプチド4がPC3に結合しないことを示し、ペプチド5を開始するリジン残基が結合部位の開始でなければないことを示している。ペプチド5−8は結合するが、結合はペプチド9で欠失している。このことはチロシン残基が別のキーであることを示唆しているが、チロシン残基がペプチド8に存在するがペプチド9では欠失しているためである。このことは、クロロトキシン残基の第一の結合領域が、ペプチド5−8に共通である配列番号1のアミノ酸残基23−29に存在する7mer配列KGRGKSY(配列番号8)内に存在することを示していた。
【0102】
図12は、配列番号1のペプチド19はPC3細胞と結合しないが、ペプチド20は結合することを示し、ペプチド20−24が最も強く結合するため、ペプチド20を開始するトレオニン残基が第二結合部位の開始であることを示している。結合はペプチド25において再度減少し、アルギニン残基がペプチド24に存在するが、ペプチド25で欠失しているため、ペプチド24の末端アルギニン残基が別のキーであることを示唆している。このことは、クロロトキシンの第二結合領域が、ペプチド20−24に共通である配列番号1のアミノ酸残基8−14に存在する9mer配列TDHQMAR(配列番号9)内に存在することを示している。この第二のコア配列中の結合はより広く、このことは領域の端に存在する非常に類似したアミノ酸の反映である。例えばペプチド20及び21には2つのトレオニン残基があり、アルギニン残基に隣接するペプチド22の端にリジンがある。
【0103】
実施例12
これらの同定された結合領域のインビボ活性を決定するために、配列番号1の10merペプチド5(アミノ酸残基23−32)、12(アミノ酸残基16−25;陰性対照として)及び21(アミノ酸残基7−16)を、クロロトキシンの生物活性を決定するために一般に使用されるアッセイである、ザリガニ麻痺アッセイで使用した(DeBin et al.(1993)Am.J.Physiol.264,C361−369を参照)。ペプチド5及び12は、ザリガニを麻痺させることができなかったが、一方ペプチド21は有効であり、クロロトキシンの麻痺効果に関与する部位がペプチド21によって定義された領域であることを示唆した。
【0104】
加えて、複数のクロロトキシン誘導体をそれぞれザリガニアッセイで分析し、クロロトキシンと比較した(表4)。これらの誘導体はそれぞれ、ペプチド21に相当する配列内に推定上の末端アミノ酸、T及びRを含む。
【0105】
【表4】
【0106】
実施例13
クロロトキシンは、8つのシステインを備えた36アミノ酸ペプチドであり、以下に下線を付けた実施例12の重複10merを使用して同定された、ペプチド番号8(ベータ領域ペプチド)及びペプチド番号21(アルファ領域ペプチド)の配列を用いてボールド体で以下に表す:
MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRCKCYGPQCLCR(配列番号1)
【0107】
アルファ及びベータペプチド内の同定された最小結合配列を確認するために、毎回アミノ末端における1つのアミノ酸によりペプチドのサイズを縮小するより短い配列と同様に、アミノ末端のビオチンによって、全体ペプチドを10−merとして合成した。
【0108】
ベータペプチドでは、表5に示したペプチドの配列を評価し、U251神経膠腫細胞への結合を探した:
【0109】
【表5】
【0110】
アルファペプチドでは、表6に示したペプチドの配列を評価し、U251神経膠腫細胞への結合を探した:
【0111】
【表6】
【0112】
結果は、アルファ領域ペプチドの最初のトレオニン残基が結合にとって有害であるが、第二のトレオニンが結合にとって不可欠であることを証明した。より小さいペプチドのいずれも、ペプチド21aの9merと同じくらい強力な結合を示さないことも発見された。
【0113】
実施例14
アルファペプチドの結合特性への各残基の寄与を決定するために、アラニン走査変種を、表7に示すように9merペプチドTDHQMARKS(配列番号10)の各アミノ酸を順次置換することによって合成した。ペプチド21、自然コア9mer、及び各アラニン置換9merペプチドは、アミノ末端におけるビオチンによって合成し、それらの結合対U251及びPC3細胞の両方について評価した(図13)。
【0114】
【表7】
【0115】
U251及びPC3結合のパターンは一般に類似している。9merの第二の位置におけるアスパラギン酸(D)残基の置換は、ペプチドの細胞への結合を増加させ、第四の位置におけるQ残基の置換は、ペプチドの細胞への結合を大きく増加させた。したがってペプチドTAHAMARKS(配列番号11)は、親ペプチドTDHQMARKS(配列番号10)よりも活性であるはずである。ペプチドTDHAMARKSの結合に基づき、この結合は、クロロトキシン自体と同じ又はそれより大でありうる。
【0116】
この発見に基づいて、以下の配列のクロロトキシンの変種ペプチドは、天然のクロロトキシンポリペプチドよりも結合が強力であることが予想される。
MCMPCFTTAHAMARKCDDCCGGKGRCKCYGPQCLCR(配列番号12)
【0117】
実施例15
ショートスコーピオントキシンの結合を比較するために、スモールトキシン及び考えられる毒素(Probable toxin)LQH−8/6のペプチド21に相同である領域を合成し、クロロトキシン結合アッセイでの解析のためにビオチン化した(ペプチドのアミノ酸配列については表8を参照)。
【0118】
【表8】
【0119】
図14に示すように、そして前の結果に従って、クロロトキシンは、PC3ヒト前立腺癌細胞における著しい結合(バックグラウンドレベルの221.93%)を示し、ペプチド21結合は、クロロトキシンのそれに匹敵した(バックグラウンドレベルの232.50%)。加えてスモールトキシンペプチドのペプチド21(21ST)及び考えられる毒素LQH−8/6のペプチド21(21LQ)は、全長クロロトキシンのペプチド21及びクロロトキシンペプチド21と同等の結合レベルを示した(それぞれ225.26%及び242.32%)。その上、クロロトキシンのアミノ酸26−35(配列番号1)を含有する負のペプチドは、バックグラウンドに匹敵する結合レベルを示した(110%)。D54グリア芽腫細胞において同様の結果を得た(データは示していない)。
【0120】
クロロトキシン結合アッセイを用いたこの研究からの結果は、クロロトキシン、スモールトキシンペプチド、及び考えられる毒素LQH−8/6がインビトロでヒト癌細胞に同様に結合することを示す。以下の表9は、3つの毒素ペプチドの推定上の一次結合ドメイン(アミノ酸7−16)内で保存されたアミノ酸を強調している。
【0121】
【表9】
【0122】
実施例16
この実験の目的は、D54MGグリア芽腫細胞の増殖が、3H−チミジン取込みによって測定されるように、全長クロロトキシン配列の断片である、ペプチド21によって実施されるかどうかを判定することであった。ペプチド21の配列及びそのクロロトキシンとの関係を以下の配列に示す:
クロロトキシン: MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR
ペプチド21: TTDHQMARK(配列番号82)
【0123】
ペプチド21(配列番号82)は、複数の他の報告において、全長クロロトキシンに匹敵する結合及び生物活性を有するとされてきた。
【0124】
D54MG細胞を24ウェルプレートに100,000細胞/ml/ウェルにて、各濃度に4ウェルの5列を使用して播種した。細胞を標準培地に、37℃にて及び5%二酸化炭素中で24時間付着させた。TM−701を1nMストック溶液まで希釈し、各列に0、20、80、160及び320nMの濃度で添加した。
【0125】
細胞及びペプチド21を37℃にて及び5%二酸化炭素中で24時間インキュベートした。24時間後、細胞を温PBSで2回すすいだ。標準培地を1ml/ウェルで、細胞に元通り添加した。1μCiの3H−チミジンを各ウェルに添加した(各ウェルに1mCi/ml3H−チミジン1μl)。プレートを37℃にて2時間インキュベートした。培地及びチミジンを除去し、ウェルを氷冷ホスフェート緩衝生理食塩水で3回すすいだ。各ウェルに0.3N NaOH 1mlを添加した。プレートを37℃のインキュベータで30分間インキュベートした。0.3N NaOHの各ウェルをピペットで3〜4回出し入れして、プレートから除去し、溶液をカウントのためにシンチレーションバイアルに入れた。サンプルの4倍のシンチレーション液をバイアルに添加した(4ml)。各バイアルをシンチレーションカウンター上で1分間カウントした。結果を表10及び図15に示す。データは、3H−チミジンの取込みが用量依存的に減少するという点で、ペプチド21がクロロトキシンと同様に挙動することを証明している。このデータは、ペプチド21がこれらの細胞におけるDNA合成に効果を有することも示している。
【0126】
【表10】
【0127】
本発明は上の実施例を参照して詳細に説明したが、本発明の精神から逸脱せずに実施できることは理解されている。したがって本発明は、特許請求の範囲によってのみ制限される。本出願で言及したすべての引用特許、特許出願及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】インビトロでの、クロロトキシンと併用したテモダールの効果を表す。D54神経膠腫細胞は、生理食塩水単独(対照)、テモダール単独、テモダール及びクロロトキシンでインキュベートするか、又はテモダール処置の24時間前にクロロトキシンによって前処理した。
【図2】インビボでの、テモダールの有効性に対するクロロトキシンの効果を表す。確立されたU251神経膠腫脇腹腫瘍を有するヌードマウスを、生理食塩水単独(対照)、テモダール単独、又はテモダール及びクロロトキシンで処置した。
【図3】インビボでの、ヒドロキシウレアの有効性に対するクロロトキシン前処理の効果を表す。確立されたD54神経膠腫脇腹腫瘍を有するヌードマウスを、生理食塩水単独(対照)、ヒドロキシウレア単独、又はクロロトキシン及びヒドロキシウレアで処置した。
【図4】低濃度のクロロトキシンがグリア芽腫細胞の成長及び増殖を阻害することが示される、細胞毒性アッセイを表す。
【図5】異常細胞の成長を阻害するクロロトキシンの能力に対する、4日間のインキュベーション及び洗い流しの効果を表す。
【図6】低濃度のクロロトキシンが前立腺癌細胞の成長及び増殖を阻害することが示される、細胞毒性アッセイを表す。
【図7】胸腺欠損ヌードマウスにおけるグリア芽腫腫瘍細胞の成長を阻害するクロロトキシンの能力のインビボアッセイを表す。
【図8】頭蓋内グリア芽腫腫瘍を有する胸腺欠損ヌードマウスの生存を延長するクロロトキシンの能力のインビボアッセイを表す。静脈内処置の中止を矢印で示した。
【図9】胸腺欠損ヌードマウスの脇腹におけるグリア芽腫腫瘍の成長を阻害するクロロトキシンの能力のインビボアッセイを表す。
【図10】クロロトキシンに由来する、一連の重複10merペプチドを表す。配列番号1のシステイン残基は、10merにおいて、ペプチドの架橋を防止するためにセリンに置換される。
【図11】クロロトキシン及び10merペプチド1−15の結合を表す。
【図12】クロロトキシン及び10merペプチド16−27、1、5及び10の結合を表す。
【図13】ペプチド21、未変性コア9mer、及び各アラニン置換9merペプチドの、U251及びPC3細胞の両方への結合を表す。
【図14】PC3ヒト前立腺癌細胞における短サソリ毒素の結合を表す。
【図15】ペプチド21の増加用量を細胞に添加し、その後、3H−チミジンの取込みを測定することによって研究された、D54MG細胞の増殖に対するペプチド21の効果を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体を少なくとも1つの化学療法薬と併用して投与することを含む、癌を治療する方法。
【請求項2】
化学療法薬の投与前に、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学療法薬の投与に続いて、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体が、化学療法薬と同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化学療法薬がアルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化学療法薬が、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドルビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、ピリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン及びアミフォスチンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
癌が神経外胚葉性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
癌が、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体及び少なくとも1つの化学療法薬を含む、癌を治療するための組成物。
【請求項10】
化学療法薬がアルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤からなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
化学療法薬が、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドルビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、ピリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン及びアミフォスチンからなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
癌が神経外胚葉性癌である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
癌が、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
標識クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体の検出可能量を投与することを含む、患者における癌の存在を検出するための方法。
【請求項15】
癌が、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
標識が放射性標識である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
放射性標識が3H、14C、18F、19F、31P、32P、35S、131I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc及び177Luからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項1】
クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体を少なくとも1つの化学療法薬と併用して投与することを含む、癌を治療する方法。
【請求項2】
化学療法薬の投与前に、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学療法薬の投与に続いて、クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体が、化学療法薬と同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化学療法薬がアルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化学療法薬が、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドルビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、ピリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン及びアミフォスチンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
癌が神経外胚葉性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
癌が、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体及び少なくとも1つの化学療法薬を含む、癌を治療するための組成物。
【請求項10】
化学療法薬がアルキル化剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、植物アルカロイド、インターカレーティング抗生剤、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、成長因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答調節物質、抗ホルモン剤及び抗アンドロゲン剤からなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
化学療法薬が、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビンホスフェート、クラドルビン、ペントスタチン、フルオロウラシル、シタラビン、アザシチジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、ピリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン及びアミフォスチンからなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
癌が神経外胚葉性癌である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
癌が、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
標識クロロトキシン又はクロロトキシン誘導体の検出可能量を投与することを含む、患者における癌の存在を検出するための方法。
【請求項15】
癌が、肺癌、骨肉腫、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉性癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
標識が放射性標識である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
放射性標識が3H、14C、18F、19F、31P、32P、35S、131I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc及び177Luからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−153149(P2011−153149A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52039(P2011−52039)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2004−508829(P2004−508829)の分割
【原出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【出願人】(504440649)トランスモルキュラー インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2004−508829(P2004−508829)の分割
【原出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【出願人】(504440649)トランスモルキュラー インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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