説明

クロロプレンラテックス及びその製造方法

【課題】 湿潤状態における接着強度を向上させた接着剤となり、接着物性と保管安定性が良好であるクロロプレンラテックスを提供する。
【解決手段】 (8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤、並びにクロロプレン重合体及び/又はクロロプレン共重合体を含有し、カリウムの含有量が4000ppm以下であり、かつ、ナトリウムの含有量が2000ppm以下であるクロロプレンラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤状態での接着物性が良好であり、なおかつ、保管安定性に優れるクロロプレンラテックス及びその製造方法並びにそれを用いた接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴム等をベースとした溶剤系接着剤は、その良好な作業性や接着物性から各種用途に用いられてきた。しかし、使用される有機溶剤は地球環境や作業者の健康に悪影響を与え、時には作業場の火災等を引き起こす危険性を有している。そのため、脱溶剤の要求が高まっている。
【0003】
脱溶剤化の手法の一つとして、ラテックス系接着剤による代替が考えられている。
【0004】
クロロプレンラテックスとしては各種のものが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献2、および非特許文献1)。これらは、接着剤を塗布・乾燥した後で貼り合せることで、貼り合せ直後から高い接着性を発現する。
【0005】
しかし、溶剤と比較して水は乾燥速度が遅いため、接着剤を塗布してから乾燥するまでに時間がかかり、また、未乾燥状態では接着不良が生じるなどの問題があった。
【0006】
一方で、クロロプレンラテックスのpHを7〜10に調節し、湿潤状態での接着物性を向上させる方法もある(例えば、特許文献3〜特許文献4)。しかし、pHを7〜10に調節することにより、ラテックスを不安定化し、ゴムを析出しやすくさせているため、通常長期保管が可能な1液型の形態をとってはいるものの、保管安定性が悪いなどの問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−158327号公報
【特許文献2】特開平9−31429号公報
【特許文献3】特開2001−19922号公報
【特許文献4】特開2001−19923号公報
【非特許文献1】JETI Vol.44 No.12(88頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、湿潤状態における接着強度を向上させた接着剤となり、接着物性と保管安定性が良好であるクロロプレンラテックスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、このような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ラテックス中に特定の成分を有するロジン酸のアルカリ金属塩を含み、かつカリウムの含有量が4000ppm以下であり、かつ、ナトリウムの含有量が2000ppm以下であれば、接着物性および保管における安定性が良好であることを見出し本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸の金属塩からなる乳化剤、並びにクロロプレン重合体及び/又はクロロプレン共重合体を含有し、カリウムの含有量が4000ppm以下であり、かつ、ナトリウムの含有量が2000ppm以下であることを特徴とするクロロプレンラテックスである。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明のクロロプレンラテックスは、(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤を含有するものである。(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1未満のロジン酸のアルカリ金属塩を用いた場合は、保管安定性が悪く、接着強度も低くなる。アルカリ金属塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等があげられる。これらは、1種類でも良く、2種類以上を含んでいても良い。
【0012】
この乳化剤の含有量は特に限定するものではないが、ラテックスの配合における安定性や、接着物性とのバランスから、ラテックス100重量部に対して1.5〜3.5重量部が好ましい。
【0013】
本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレン重合体及び/又はクロロプレン共重合体を含有するものである。
【0014】
クロロプレン重合体は、2−クロロ−1,3−ブタジエンであるクロロプレン単量体を単独で重合して得られたものである。クロロプレン共重合体は、クロロプレン単量体と、クロロプレンと共重合可能な単量体の1種類以上とを用いて重合して得られたものである。
【0015】
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート等があげられる。
【0016】
本発明のクロロプレンラテックスは、カリウムの含有量が4000ppm以下であり、かつ、ナトリウムの含有量が2000ppm以下である。カリウムの含有量が4000ppmを超える場合、又はナトリウムの含有量が2000ppmを超える場合には接着強度および保管安定性が低下する。
【0017】
本発明のクロロプレンラテックスは、ラテックスのpH安定性確保のために、強アルカリ性物質を含むことが好ましい。強アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。
【0018】
本発明のクロロプレンラテックスは、ラテックスの安定性確保のために、スルホン酸のアルカリ金属塩を有する安定剤を含有しても良い。この安定剤としては、例えば、ペンタンスルホン酸のアルカリ金属塩、オクタンスルホン酸のアルカリ金属塩など炭素数8以下のアルキル鎖を有する脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、及びそれらを有する化合物、ベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、トルエンスルホン酸のアルカリ金族塩、ブチルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸塩などの芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、及びこれら芳香族スルホン酸塩を有する化合物(ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩とホルマリンの縮合物など)、ラウリル硫酸のアルカリ金属塩などのアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸のアルカリ金属塩などのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアルカリ金属塩、不飽和結合を有するスルホン酸のアルカリ金属塩とそれと共重合可能な単量体との各種共重合体等が挙げられる。ここに、不飽和結合を有するスルホン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩、アリルスルホン酸のアルカリ金属塩、メタリルスルホン酸のアルカリ金属塩、イソプレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩等があげられ、それと共重合可能な単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、メチルメタクリレート等があげられる。アルカリ金属塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等があげられる。これらは、1種類でも良く、2種類以上含んでいても良い。なかでも重合時のラテックス安定性の面からナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合物が好ましい。安定剤の含有量は特に限定するものではないが、安定性と接着物性のバランスから、ラテックス100重量部に対して0.5重量部以下が好ましい。
【0019】
本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレン単量体、又はクロロプレン単量体とクロロプレンと共重合可能なその他の単量体と、(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤を使用し、カリウムの含有量が4000ppm以下で、かつ、ナトリウムの含有量が2000ppm以下で重合を開始することで製造できる。また、重合開始時のカリウムの含有量及びナトリウムの含有量が上記以外の場合には、重合中及び/又は重合終了後に水を追加することで製造できる。カリウムの含有量及びナトリウムの含有量が上記以外のクロロプレンラテックスと、カリウムの含有量が4000ppm以下、及び/又は、ナトリウムの含有量が2000ppm以下のクロロプレンラテックスを混合することでも製造できる。
【0020】
ここに、重合とは、乳化重合のことであり、上記の単量体及び乳化剤を、重合開始剤、連鎖移動剤等と共に乳化し、所定温度にて行い、所定の転化率で重合停止剤を添加すれば良い。
【0021】
重合開始剤としては、公知のフリーラジカル性物質、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、過酸化水素、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド等の無機又は有機過酸化物等を用いることができる。また、これらは単独又は還元性物質、例えば、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、有機アミン等との併用レドックス系で用いても良い。
【0022】
連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン、ハロゲン炭化水素、アルキルキサントゲンジスルフィド、硫黄等の分子量調節剤等があげられ、これらのうち、臭気及び作業性の面からn−ドデシルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の使用量は特に限定するものではないが、通常クロロプレン単量体100重量部に対し、0.1〜0.3重量部を用いる。
【0023】
ラテックスのpH安定性確保のために、強アルカリ性物質を使用することが好ましい。強アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。
【0024】
重合温度は特に限定するものではないが、良好な接着物性を得るため10〜30℃の範囲が好ましい。
【0025】
重合終了時期は特に限定するものでないが、生産性、及び良好な接着物性を得るため、単量体の転化率が85〜95%まで重合を行うことが好ましい。
【0026】
重合停止剤としては、通常用いられる停止剤であれば特に限定するものでなく、例えば、フェノチアジン、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒドロキシルアミン等が使用できる。
【0027】
また、ラテックスの安定性を更に良好にするため、重合中、重合終了後に上記の乳化剤を1種類以上を添加しても良い。
【0028】
重合終了後に、ラテックスの固形分を調整するために濃縮しても良い。濃縮は、例えばロータリーエバポレーターなどを用いて、減圧下で水分を蒸発させることで可能である。
【0029】
本発明のクロロプレンラテックスは、単独でも接着剤として使用可能であるが、以下に掲げる粘着付与樹脂、架橋剤、増粘剤等を含有した接着剤組成物とすることができる。
【0030】
粘着付与樹脂としては特に限定するものではなく、例えば、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系炭化水素等があげられ、例えば、重合ロジン、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、アルキルフェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール、水添ロジン、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、石油樹脂、クマロン樹脂等が使用される。
【0031】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ポリアジリジン化合物、ポリオキサゾリン化合物等、クロロプレンラテックスに均一に混合できる多官能性化合物であれば何ら制限はなく使用できる。
【0032】
クロロプレンラテックスを主成分とする接着剤の粘度は、各種増粘剤、例えば、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、疎水化セルロース、会合型ノニオン界面活性剤等の水溶性ポリマー、及びカルボキシル基含有ポリマーから構成されるアルカリ可溶型の増粘剤、ヘクトライト等のシリケート化合物等の配合により所望の粘度に調整できる。
【0033】
本発明のクロロプレンラテックスを含有する接着剤組成物は、pHを7〜10に調節することで、湿潤状態における接着物性を特に向上させることができる。pHの調節方法としては、pH調節剤の添加や、pHが10未満である各種エマルションやラテックスを添加することで可能であり、これらを単独または2種類以上を併用することができる。pH調節剤としては、例えば、酢酸、クエン酸、マロン酸、メタクリル酸、リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸などの有機酸、ホウ酸、リン酸などの無機酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸などのアミノ酸等が挙げられ、pH10未満のエマルションやラテックスとしては、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルなどのアクリル系エマルション、アクリル酸やメタクリル酸の単量体をクロロプレン単量体、スチレン単量体又はブタジエン単量体と共重合した、合成ゴム系ラテックス等が挙げられるが、これ以外にもクロロプレンラテックスと任意に混合し、pHを調節できる物質であれば用いることができる。
【0034】
クロロプレンラテックスを含有する接着剤組成物は、その他必要に応じて、例えば、老化防止剤、防腐剤、凍結防止剤、造膜助剤、可塑剤、クレー等の添加剤を含有したものでも良い。
【発明の効果】
【0035】
本発明のクロロプレンラテックスは、上記の通りすることにより、pHを調節して不安定化することで湿潤状態における接着強度を向上させた接着剤組成物として用いた際に、接着物性が良好で、その良好な物性を長期間維持できるものである。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
なお、実施例及び比較例における保管期間は、23℃における6ヶ月の保管に相当する促進条件として、50℃における1ヶ月間の保管とした。
【0038】
また、(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値、カリウムおよびナトリウムのイオン含有量、湿潤状態での接着物性、保管安定性は以下の方法で測定した。
【0039】
<(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値>
使用するロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤をメチル化後、ガスクロマトグラフによる測定を実施し、各成分のピーク面積から8,15−イソピマル酸およびジヒドロピマル酸の比率[(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値]を算出した。既製品ラテックスの乳化剤分析においては、ラテックスを乾燥後、クロロホルムに溶解し、塩酸−メタノールにて再沈精製した後、ろ液を濃縮、メチル化し、ガスクロマトグラフによる測定を実施し、上記と同様に各成分のピーク面積から8,15−イソピマル酸およびジヒドロピマル酸の比率を算出した。
【0040】
使用カラム:DB−5 0.25mmφ×30m(膜厚1μm)
カラム温度:150℃→300℃(30min保持)
昇温速度:5℃/min
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
注入量:1μl
<カリウムおよびナトリウムのイオン含有量>
ラテックスを硫硝酸で分解し、誘導結合プラズマ発光分光計(ICP−AES:Optima3000DV,PerKinElmer社製)にて定量した。
【0041】
<pH>
pHメーター((株)堀場製作所製)により25℃におけるpHを測定した。
【0042】
<湿潤状態での接着物性>
マグネットスターラーにてラテックスを攪拌し、pHを確認しながらpH調節剤を添加してpHを調節した。被着体は高質ポリウレタンフォーム(密度40kg/m)を各辺が5cmの立方体状に加工したものを用いた。この一つの面(25cm)にスプレーガン(アネスト岩田株式会社製;W−101−101G)で40−80g/mとなるようpH調節済みラテックスを塗布し、各々10秒,20秒,60秒経過した後に貼り合せを行った。貼り合せは、塗布面を2つに折りたたむように行い、その状態を維持できるかどうかで判断した。
【0043】
<保管安定性>
pH調節済みのラテックスを蓋付きガラス容器に保管して封をし、50℃のギヤオーブン内部に静置保管して定期的に状態を観察した。
【0044】
実施例1
表1で示した割合のクロロプレン単量体、n−ドデシルメルカプタン、ロジン酸カリウム(商品名:バンディスT−25KP、ハリマ化成(株);(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)=6.7)、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物(商品名:デモールN、花王(株))、水酸化ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム、及び純水を攪拌機付き10Lオートクレーブ中15℃で重合を行った。重合は窒素雰囲気下で0.35重量%の過硫酸カリウム水溶液を連続的に滴下して行い、重合転化率が90%で重合停止剤として2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール0.05重量部を添加し重合を停止した。その後、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を50%に調整し、ラテックスAを得た。
【0045】
【表1】

ラテックスAのpHをpH調節剤であるホウ酸にて9に調節し、湿潤状態での接着物性の測定、および保管安定性の確認等を実施した。結果を表2に示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0046】
【表2】

実施例2
使用するロジン酸カリウムを(商品名:バンディスT−34K、ハリマ化成(株);(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)=4.2)に変更しラテックスBを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0047】
実施例3
使用するpH調節剤をホウ酸からグリシンに変更した以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0048】
実施例4
使用するpH調節剤をクロロプレンラテックス(スカイプレン(登録商標)GFL−820(pH2.5,東ソー製))に変更した以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0049】
実施例5
使用する水酸化ナトリウムの量を表1に示す量に変更し、ラテックスCを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0050】
実施例6
使用する水酸化ナトリウムの量を表1に示す量に変更し、ラテックスDを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0051】
実施例7
使用する単量体をクロロプレン単量体単独から、クロロプレン単量体と2,3−ジクロロブタジエン単量体に変更してラテックスEを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0052】
実施例8
表1に示す量の水酸化カリウムを使用し、ラテックスFを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0053】
実施例9
水酸化ナトリウムを表1に示す量の水酸化カリウムに変更し、ラテックスGを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0054】
実施例10
純水の量を表1に示す量に変更し、重合転化率約30%にて仕込みのクロロプレン単量体100重量部に対して20重量部に相当する純水を追加しラテックスHを得て接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0055】
実施例11
ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルマリンの縮合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、純水の量を表1に示す量に変更しラテックスIを得た。重合停止時の固形分は約50%であった。その後、仕込みのクロロプレン単量体100重量部に対して15重量部に相当する純水を追加し(固形分約47%)、接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0056】
実施例12
ラテックスEとラテックスIを70:30でブレンドし、実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。表2の結果より、接着物性は良好であり、保管によるラテックスの状態変化は無かった。
【0057】
比較例1
使用するロジン酸カリウムを(ロンヂスK−25、荒川化学(株);(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)=0)に変更し、ラテックスJを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着物性は劣り、保管によりラテックスが固化した。
【0058】
【表3】

比較例2
使用する水酸化ナトリウムの量を表1に示す割合に変更し、ラテックスKを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、接着物性は劣り、保管によりラテックスが固化した。
【0059】
比較例3
使用する水酸化ナトリウムを水酸化カリウムとし、量を表1に示す割合に変更してラテックスLを得た以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、接着物性は劣り、保管によりラテックスが固化した。
【0060】
比較例4
使用するラテックスをクロロプレンラテックス(スカイプレン(登録商標)LA−660(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)=0、ナトリウムイオン1500ppm、カリウムイオン2100ppm、東ソー製))に変更した以外は実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、接着物性は劣り、保管によりラテックスが固化した。
【0061】
比較例5
ラテックスIについて、実施例1に従い接着物性および保管安定性の評価を行った。結果を表3に合わせて示す。表3の結果より、接着物性は劣り、保管によりラテックスが固化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤、並びにクロロプレン重合体及び/又はクロロプレン共重合体を含有し、カリウムの含有量が4000ppm以下であり、かつ、ナトリウムの含有量が2000ppm以下であることを特徴とするクロロプレンラテックス。
【請求項2】
クロロプレン単量体、又はクロロプレン単量体とクロロプレンと共重合可能なその他の単量体と、(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤を使用し、カリウムの含有量が4000ppm以下で、かつ、ナトリウムの含有量が2000ppm以下で重合を開始することを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンラテックスの製造方法。
【請求項3】
クロロプレン単量体、又はクロロプレン単量体とクロロプレンと共重合可能なその他の単量体と、(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤を使用し、カリウムの含有量が4000ppmを超えている、及び/又は、ナトリウムの含有量が2000ppmを超えている条件で重合を開始し、重合中及び/又は重合終了後に水を追加することを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンラテックスの製造方法。
【請求項4】
(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤、並びにカリウムの含有量が4000ppmを超えている、及び/又は、ナトリウムの含有量が2000ppm超えているクロロプレンラテックスと、(8,15−イソピマル酸の含有量)÷(ジヒドロピマル酸の含有量)の値が1以上であるロジン酸のアルカリ金属塩からなる乳化剤、並びにカリウムの含有量が4000ppm以下、及び/又は、ナトリウムの含有量が2000ppm以下のクロロプレンラテックスを混合することを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンラテックスの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のクロロプレンラテックスを含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項6】
pHが7〜10であることを特徴とする請求項5に記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−100749(P2010−100749A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274046(P2008−274046)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】