説明

クローラユニット及びクローラ型走行ロボット

【課題】内部への異物の混入を防止するクローラユニット及びクローラ型走行ロボットを提供する。
【解決手段】複数のホイールと、複数のホイールに巻かれ且つ複数のホイールが回転するとその外周を周回するクローラベルト5とを備えたクローラユニット2が、クローラユニット2の少なくとも一方の側面を覆う側面カバー4を具備し、側面カバー4の周縁と対応するクローラベルト5の側周縁とが全周に亘って結合し、側面カバー4がクローラベルト5の周回と共に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラユニット及びクローラ型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
左右にクローラユニット(クローラ)を配置したクローラ型走行ロボットが公知である(特許文献1参照)。一般に、クローラユニットは、複数のホイールと、複数のホイールに巻かれ且つ複数のホイールが回転するとその外周を周回するクローラベルトとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−111595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のクローラ型走行ロボットに用いられるような従来のクローラユニットは、側面が覆われておらず、又は、覆われていたとしても一部しか覆われていない。そのため、ホイールとクローラベルトとの間に石等の異物が入り、それによってクローラベルトの滑らかな回転を阻害し、さらには回転が停止してしまう場合がある。これは、戦車のような大きなクローラユニットの場合は異物を破壊しながら回転するため問題とならないが、装置全体が小型になればなるほど、相対的にその影響が大きくなる。また、水たまりを走行する際など、クローラユニット内部へ汚泥が混入し、クローラベルトの回転を阻害したり錆を発生させたりする場合もある。
【0005】
本発明は、一態様において、内部への異物の混入を防止するクローラユニット及びクローラ型走行ロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、複数のホイールと、該複数のホイールに巻かれ且つ該複数のホイールが回転するとその外周を周回するクローラベルトとを備えたクローラユニットであって、該クローラユニットの少なくとも一方の側面を覆う側面カバーを具備し、該側面カバーの周縁と対応する前記クローラベルトの側周縁とが全周に亘って結合し、前記側面カバーが前記クローラベルトの周回と共に回転することを特徴とするクローラユニットが提供される。
【0007】
また、請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記側面カバーが、円形の伸縮部材であることを特徴とするクローラユニットが提供される。
【0008】
また、請求項3に記載の発明によれば請求項2に記載の発明において、前記側面カバーが、同心円状に山部及び谷部を有する蛇腹構造であることを特徴とするクローラユニットが提供される。
【0009】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか1つに記載の発明によるクローラユニットを少なくとも1つ具備することを特徴とするクローラ型走行ロボットが提供される。
【発明の効果】
【0010】
各請求項に記載の発明によれば、内部への異物の混入を防止するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一態様によるクローラユニット及びクローラ型走行ロボットの斜視図である。
【図2】図1に示されたクローラユニットに用いられる側面カバーの斜視図である。
【図3】図2に示された側面カバーの正面図である。
【図4】図2に示された側面カバーの線A−Aにおける断面図である。
【図5】図2に示された側面カバーがクローラユニットに取り付けられ、変形する様子を示す側面図である。
【図6】本発明の別の態様によるクローラユニット及びクローラ型走行ロボットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一態様によるクローラユニット2及びクローラ型走行ロボット1の斜視図である。クローラ型走行ロボット1は、ベース部3の両側に一対のクローラユニット2を有している。ベース部3は、図示しない制御装置及び駆動装置を有しており、駆動軸3aを介して各クローラユニット2内の駆動ホイールを同一方向又は異なる方向に回転させている。なお、ベース部3はロボットハンドを搭載してもよい。
【0013】
クローラユニット2は、駆動軸3aと平行な軸線を有する円筒状の駆動ホイールと、この軸線に平行な軸線を有して進行方向の前方及び後方にそれぞれ配置された円筒状の2つの遊転ホイールとを有する。しかしながら、クローラユニット2の側面は、後述する側面カバー4によって覆われているため、これらホイールは図示されていない。
【0014】
クローラベルト5は、端部を連結させた環状の帯であり、駆動ホイール及び前後2つの遊転ホイールを包囲しつつこれらホイールに巻かれ、駆動ホイール又は遊転ホイールに対して係合するように当接している。従って、駆動軸3aによって駆動ホイールが回転すると、それによってクローラベルト5が回転し、遊転ホイールを回転させる。その結果、クローラベルト5は、これらホイールの外周を周回し、その外面に形成された突起によって走行面と係合し、進行することが可能となる。
【0015】
図2は、図1に示されたクローラユニット2に用いられる側面カバー4の斜視図であり、図3は、図2に示された側面カバー4の正面図であり、図4は、図2に示された側面カバー4の線A−Aにおける断面図である。図4の断面図において、図中右側がクローラユニット2のベース部3側、すなわち内側であり、図中左側が外側である。
【0016】
図2乃至図4を参照すると、側面カバー4は略円形の平板状であり、伸縮性のある弾性材料で形成されていることから、平面の任意の方向に伸縮自在となっている。さらに、側面カバー4は、複数の山部7と谷部8とが同心円状に交互に形成されており、径方向、すなわち、放射状に広がる蛇腹構造を構成している。なお、側面カバー4の周縁には、内側に開いた環状の凹部9が設けられている。
【0017】
次に、蛇腹構造について説明する。図3において、左右をX軸方向及び上下をY軸方向とする。側面カバー4に対して、例えば、円形の側面カバー4の中心を通って対向するY軸方向の圧縮力を加えると、Y軸方向に隣接する山部7と山部7とがより近接すると共に谷部8と谷部8とがより近接するよう変形する。その結果、側面カバー4は、全体としてY軸方向に収縮する。一方、この反動で、Y軸方向に対して垂直なX軸方向においては、山部7と山部7とがより離間すると共に谷部8と谷部8とがより離間し、側面カバー4は、全体としてX軸方向に膨張する。当然のことながら、加えた力を除去すると、側面カバー4は元の円形に戻る。
【0018】
また、側面カバー4に対して、例えば、円形の側面カバー4の中心を通って互いに離間するX軸方向の引っ張り力を加えると、側面カバー4は、全体としてX軸方向に膨張すると共に、その反動で全体としてY軸方向に収縮する。山部7及び谷部8のこうした伸縮動作はアコーディオンのそれと類似しており、すなわち、側面カバー4は、同心円状に山部及び谷部を有する蛇腹構造であると言える。
【0019】
図5は、図2に示された側面カバー4がクローラユニット2に取り付けられ、変形する様子を示す側面図である。この取り付けられたクローラユニット2の状態は、図1に示された状態と同様である。詳細には、側面カバー4の中心を原点とし、図5において上方をY軸、左方向をX軸とすると、側面カバー4をY軸方向には圧縮させ、X軸方向には引っ張られた状態でクローラユニット2の側面に配置させる。この状態で、側面カバー4は、その周縁の環状の凹部9がクローラベルト5の側周縁の全周に亘って嵌合することによってクローラユニット2に取り付けられている。さらに、その嵌合部では、接着剤によって側面カバー4の周縁及びクローラベルト5の側周縁が液密にシールされて結合しているため、嵌合部を通って水や粉塵等の異物がクローラユニット2内部に混入することはない。なお、図5では、説明の便宜上、クローラベルト5は省略して描かれている。
【0020】
図5においてR0で示された5つの一連のプロット点は、その挙動に着目するために選択された停止状態の側面カバー4の中心を通るY軸上の点である。クローラベルト5が、矢印Mの方向、すなわち反時計回りに回転すると、側面カバー4の周縁及びクローラベルト5の側周縁が全周に亘って接着され結合しているため、クローラベルト5の回転に合わせて側面カバー4もその中心周りに回転する。その結果、R0にあった一連のプロット点は、R1,R2,R3,R4と順に遷移する。
【0021】
図5から明らかなように、各位置における一連のプロット点を結んだ線は、R0の位置にある場合と同様に常に側面カバー4の中心を通過しており、側面カバー4の中心から放射状に延びる方向を径方向と称すると、径方向におけるプロット点の間隔が変化している。すなわち、R0にあった一連のプロット点は、R4へ向かって遷移するにつれて、その間隔が徐々に広がっている。R4の位置にある一連のプロット点は、側面カバー4の中心を通るX軸上の点であり、この状態でプロット点の間隔は最大となっている。一連のプロット点のR4以降の遷移については図示していないが、R0からR4の位置までの遷移についてのX軸及びY軸に対する鏡像となることは明らかである。
【0022】
側面カバー4の径方向の上述した変化は、蛇腹構造の伸張によって行われるため、径方向について側面カバー4を破断又は破壊させるような負荷がかかることはない。また、例えば、同一の同心円上の山部7又は谷部8にかかる周方向の引っ張り又は圧縮の負荷についても、側面カバー4の伸縮性を有する材質によって吸収可能な範囲である。従って、側面カバー4の周縁と対応するクローラベルト5の側周縁との全周に亘る液密にシールされた結合は、クローラベルト5の周回中も常に維持されることから、内部への異物の混入を防止するクローラユニット及びクローラ型走行ロボットが実現される。
【0023】
図6は、本発明の別の態様によるクローラユニット12及びクローラ型走行ロボット11の斜視図である。クローラ型走行ロボット11は、ロボットハンドを備えたベース部13の両側に一対のクローラユニット12を有している。ベース部13は、図示しない制御装置及び駆動装置を有しており、駆動軸13aを介して各クローラユニット12内の駆動ホイールを同一方向又は異なる方向に回転させている。
【0024】
クローラユニット12は、駆動軸13aと平行な軸線を有する円筒状の駆動ホイールと、この軸線に平行な軸線を有して進行方向の前方及び後方並びに駆動ホイールの上方にそれぞれ配置された円筒状の3つの遊転ホイールとを有する。クローラユニット12の側面は、後述する側面カバー14によって覆われているため、これらホイールは図示されていない。
【0025】
クローラベルト15は、端部を連結させた環状の帯であり、駆動ホイール及び3つの遊転ホイールを包囲しつつこれらホイールに巻かれ、駆動ホイール又は遊転ホイールに対して係合するように当接している。従って、駆動軸13aによって駆動ホイールが回転すると、それによってクローラベルト15が回転し、遊転ホイールを回転させる。その結果、クローラベルト15は、これらホイールの外周を周回し、その外面に形成された突起によって走行面と係合し、進行することが可能となる。
【0026】
側面カバー14は、図2乃至図4に示された略円形の側面カバー4と同一であり、クローラユニット12の三角形状に近い側面形状と適合するように、伸縮されつつ取り付けられている。また、その取り付け方法は、上述した側面カバー4と同様に、周縁の凹部がクローラベルト15の側周縁の全周に亘って嵌合することによってクローラユニット12に取り付けられている。さらに、その嵌合部では、接着剤によって側面カバー14の周縁及びクローラベルト15の側周縁が液密にシールされて結合しているため、嵌合部を通って水や粉塵等の異物がクローラユニット12内部に混入することはない。
【0027】
さらなるバリエーションとして、クローラユニットの側面形状が、四角形や五角形といった4つ以上の遊転ホールを有するクローラユニットが考えられる。しかしながら、いずれの場合であっても、円形の側面カバーを用いて側面を覆うことによって、クローラベルトとの嵌合部を通って水や粉塵等の異物が内部に混入することを防止することができる。
【0028】
上述の側面カバーは、中央に開口部が設けられており、そこを駆動軸が貫通していたが、駆動軸はOリングやVリングによって液密に封止されている。しかしながら、駆動軸がなく、開口部を有さない側面カバーであってもよい。さらに、上述の側面カバーは、蛇腹構造を有していたが、こうした蛇腹構造と同様の伸縮特性を有する材料、例えば生ゴムであれば、蛇腹構造を有してなくてもよい。また、側面カバーの周縁及びクローラベルトの側周縁の結合のために接着剤を使用したが、同様の液密性を確保できるのであれば、側面カバーが着脱できるような防水性のあるファスナー等その他の接着・結合手段であってもよい。また、側面カバーは、クローラユニットの片方又は両方の側面を覆うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 クローラ型走行ロボット1
2 クローラユニット
3 ベース部
4 側面カバー
5 クローラベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のホイールと、該複数のホイールに巻かれ且つ該複数のホイールが回転するとその外周を周回するクローラベルトとを備えたクローラユニットであって、該クローラユニットの少なくとも一方の側面を覆う側面カバーを具備し、該側面カバーの周縁と対応する前記クローラベルトの側周縁とが全周に亘って結合し、前記側面カバーが前記クローラベルトの周回と共に回転することを特徴とするクローラユニット。
【請求項2】
前記側面カバーが、円形の伸縮部材であることを特徴とする請求項1に記載のクローラユニット。
【請求項3】
前記側面カバーが、同心円状に山部及び谷部を有する蛇腹構造であることを特徴とする請求項2に記載のクローラユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のクローラユニットを少なくとも1つ具備することを特徴とするクローラ型走行ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−11829(P2012−11829A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148063(P2010−148063)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】