説明

グラウト充填確認方法及びグラウト充填確認装置

【課題】 シースにグラウトを注入したときに、一番残留空気が留まる箇所にグラウト充填状態を確認するためのセンサーを配設する手法及び装置を提供する。
【解決手段】 グラウト充填確認装置は、シースに設けたエア抜き穴に排気口を係合させて締結する上部ジョイント及び下部ジョイントからなり、エア抜き穴の近傍位置にセンサー埋設穴を設け、センサー埋設穴に取り付けるセンサーを上部ジョイントに備えたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウト充填確認方法及びグラウト充填確認装置に関し、詳しくは、シースに注入されたグラウトの充填状態を確認するグラウト充填確認方法及びグラウト充填確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるグラウト充填確認方法として、流量計による計測や排出口からの吐出の確認などの間接的に確認する方法が採られてきた。
【0003】
又、電気的に検出するものとして、静電容量検出センサーを用いて充填状態を確認する手法が存在する。
【0004】
これは、シースの外面に静電容量検出センサーをシース長手方向に間隔をおいて複数個貼り付け、シース内に挿入したPC鋼材にプレストレスを導入した後、シース内に充填されたグラウトの未充填部分を検出するというものである。
【0005】
このシース内の未充填部分は、グラウト注入が進行するに従ってグラウトが下部から充満してくるときに内部に閉じこめられて高い位置に集まった残留空気によるものであり、静電容量検出センサーは、シースの長手方向の上に凸の部分等における上部に配置すればよい。
【0006】
このシースの長手方向に適宜間隔をおいて複数個配置することにより、未充填部分に確実に検出できると共に長手方向の位置を特定できる。
【0007】
他の例として、シース内に線状温度センサーを配設し、このシース内に充填するグラウトの温度を非充填時のシース内温度よりも若干異なるようにして、線状温度センサーの測定変化をモニタで観察するようにしたたものが周知である。
【特許文献1】特開2004−108964号公報(第3頁〜4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術で説明した静電容量検出センサーを用いてグラウトの充填状態を検出する手法においては、静電容量検出センサーを予めシースの特定位置に位置決めして配設しておく必要があり、これが、却ってグラウトの未充填部分から外れた位置になってしまうと、肝心なグラウトの未充填部分から離れ、正確に未充填部分を検出することができないという問題がある。
【0009】
線状温度センサーを利用する手法に関しても、予めシースの特定部分に配設する手法であるため、充填不良部分がこのセンサーを配設した部分から外れてしまうと、未充填部分を検出することができないという問題がある。
【0010】
従って、シースにグラウトを注入したときに、一番残留空気が留まる箇所にグラウトの充填状態を確認するためのセンサーを配設する手法及び装置に解決しなければならない課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明のグラウト充填確認方法及びグラウト充填確認装置は、次に示す構成にすることである。
【0012】
(1)グラウト充填確認方法は、グラウトを充填するシースにおいて、充填不良箇所に圧電素子を配設して充填状態を電気的に確認するようにしたことである。
【0013】
(2)前記圧電素子を配設する箇所は、前記シースに設けられた空気排出孔の近傍であることを特徴とする(1)に記載のグラウト充填確認方法。
【0014】
(3)グラウト充填確認装置は、底部にセンサーを取り付けたカバー部材と、シースの径に合わせ、2つ割りの円弧状に形成したサドルパッドと、前記シースにセンサー埋設用穴を穿設し、該センサー埋設用穴に前記センサーを係合させて前記カバー部材を取り付け、その上部から前記サドルパッドを合わせて締め付けた構成である。
【0015】
(4)グラウト充填確認装置は、シースに設けたエア抜き穴に排気口を係合させて締結する上部ジョイント及び下部ジョイントからなり、前記エア抜き穴の近傍位置にセンサー埋設穴を設け、該センサー埋設穴に取り付けるセンサーを前記上部ジョイントに備えたことである。
【0016】
(5)前記センサーは、前記シース内へのグラウトの充填に伴う温度変化又は圧力変化を検出するセンサーであることを特徴とする(3)又は(4)に記載のグラウト充填確認装置。
【0017】
(6)前記センサーは、熱電対又は圧電素子を含むことを特徴とする(5)に記載のグラウト充填確認装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明のように、経験により算出された充填不良箇所にピエゾ抵抗素子を配設したことにより、充填状態を的確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本願発明に係るグラウト注入確認装置について、以下、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明に係るグラウト充填確認方法及びグラウト充填確認装置は、図1に示すように、シースを配設したときに経験的に推測できるグラウト充填不良箇所に、圧電素子としてのピエゾ抵抗素子を配設して充填状態を電気的に確認するものである。
【0021】
シース11の所定位置にピエゾ抵抗素子からなるセンサー12が配置されているカバー部材(樹脂製)13が収まる穴14を穿設し、シース11の外周面のうち穴14の周囲にメッシュ材15を取り付け、最後にメッシュ材15の上に載るようにしてカバー部材13を取り付けることで、カバー部材13の底面に取り付けられているピエゾ抵抗素子であるセンサー12がシース11の管内に臨んだ状態となる。ここで、センサー12の先端面(グラウトに接触する面)が、シース11の内周面と略一致するように、センサー12を配置することが好ましい。
【0022】
メッシュ部材15は、カバー部材13をシース11のポリエチレン管に溶融溶着する際に使用するもので、電気を通すことでヒータとなり、シース11及びカバー部材13を溶融、溶着する。
【0023】
このようにしてポリエチレン管としてのシース11にピエゾ抵抗素子を管内に臨むように取り付けることができ、グラウト注入した際にそのピエゾ抵抗素子の圧力変動を電気的に検出することで、グラウトの充填状態を検知することができるのである。
【0024】
シース11のうち穴14を形成する位置、すなわち、センサー12を設ける位置は、例えば、図5に示す領域B内に設けることができる。ここで、図5(A)〜(C)は、曲がったシース11内において、グラウトが充填される経緯を示す図である。
【0025】
図5に示す形状のシース11内にグラウトを充填する場合において、図5中の左側からグラウトを注入していくと、シース11内のうち図中左側の領域からグラウトが順に充填されていく。ここで、シース11が上方(重力方向に対して反対方向)に向かって延びている領域A1では、シース11の内壁に沿って徐々にグラウトが充填されていくことになる。すなわち、領域A1内においては、グラウトの充填に伴って残留空気が発生する可能性は低い。
【0026】
一方、シース11が下方(重力方向)に向かって延びている領域A2では、シース11内の上方のスペースに残留空気が発生し易い(図5(C)参照)。また、図5では不図示であるが、シース11の折れ曲がり部分、すなわち、シース11が上方から下方に向かって曲がる部分(領域A3)にも、残留空気が発生し易い。このような現象は、充填されるグラウトが低粘性である場合に、特に発生し易い。
【0027】
このため、残留空気が発生しやすい位置、すなわち、領域A2、A3を含む領域B内に、センサー12を設けることで、シース11内におけるグラウトの充填状態を把握することができる。言い換えれば、残留空気が発生しやすい位置において、グラウトが正確に充填されていれば、シース11内の他の部分では、グラウトが正確に充填されているものと考えることができる。
【0028】
上述したようにセンサー12を設ける位置は、シース11の形状、すなわち、シース11の各部分における高低差に基づいて、決定することができる。
【0029】
センサー12であるピエゾ抵抗素子が底面に取り付けられているカバー部材13は、図2に示すように、サドルバンド16A、16Bでシース11に締め付ける構造でもよい。
【0030】
それは、先ず、シース11の所定位置にカバー部材13を取り付けるための穴14を開ける。この穴14の周囲にゴムパッキン17を載せ、その上部からセンサー12を穴14に通してカバー部材13を載せる。そして、2つ割りのサドルバンド16A、16Bをシース11の上限から挟み込んでゴムパッキン17にカバー部材13を合わせて締め付ける。この締め付けはサドルバンド16A、16Bに取り付けてあるボルト17をナット18に螺合させて廻すことで行われる。このようにしてポリエチレン管で作成されたシース11にカバー部材13が取り付けられると、カバー部材13に取り付けられているピエゾ抵抗素子であるセンサー12は穴14を通過した管内に臨んだ状態で配置されることになる。従って、シース11にグラウトが注入されたときに、そのグラウトがピエゾ抵抗素子を押圧できるほどの圧力が印加されるならば、その圧力に応じた電流が流れ、グラウトが十分に充填されていることを電気的に判断することができる。
【0031】
ここで、グラウトの充填をコントローラの制御によって行うようにすれば、コントローラはセンサー12の出力に基づいてグラウトの充填を制御することができる。具体的には、センサー12の出力が所定値に到達するまではグラウトの充填を継続し、センサー12の出力が所定値に達した場合にはグラウトの充填を停止させる。これにより、グラウトの充填を効率良く行うことができる。
【0032】
上述した所定値とは、シース内でのグラウトの充分な充填量に対応した値であって、シース内に残留空気が概ね発生していないものと見なせる値である。
【0033】
なお、グラウトの充填が完了した場合に、センサー12からの配線を取り外せるように構成することができる。
【0034】
本実施例では、シース11の1箇所にセンサー12を設けた場合について説明したが、シース11の複数箇所にセンサー12を設けるようにしてもよい。そして、上述したコントローラを用い、複数のセンサー12の出力に基づいて、グラウトの充填を制御するようにしてもよい。この場合には、複数のセンサー12の出力すべてが上記所定値に達した時点で、グラウトの充填を停止させる。
【0035】
上述したコントローラによる制御は、後述する実施例についても適用できるものである。
【実施例2】
【0036】
次に、ピエゾ抵抗素子の代わりに、熱電対を用いてグラウトの充填状態を電気的に検知することが可能である。これは、図3に示すように、シース11の表面に貼り付けた熱電対19の周囲をヒータ21で所定温度に暖め、その温度の変化を熱電対19で検知するというものである。すなわち、グラウトが充填されていれば熱が逃げるため、その現象を熱電対19で検知すれば、グラウトの充填状態を検知できる。逆に、高温のグラウトが充填されることによって温度が上昇する場合もあり、この場合には、熱電対19によって温度情報を検知すれば、グラウトの充填状態を検知できる。
【0037】
熱電対は、実施例1で説明した位置と同じ位置(図5に示す領域B内)に設けることができる。
【0038】
熱電対19での温度変化は、熱電対19に接続された測定手段20によって測定される。そして、熱電対19で検出される温度の変化が所定値以上の場合には、シース11内にグラウトが充分に充填されたものと判断することができる。この所定値は、予め実験によって測定しておく。
【0039】
上述した温度変化の検出は、例えば、シース11内にグラウトをある程度充填した後に、ヒータ21の駆動を停止させ、所定時間内での温度変化を検出する。ヒータ21を駆動したままでは、充填されたグラウトも暖められてしまい、グラウトの充填状態を正確に検知することができなくなってしまう。そこで、ヒータ21の駆動停止後の所定時間内での温度変化を検出することで、グラウトの充填状態を正確に検知することが可能となる。
【0040】
このセンサーの特徴は、シース11の管内までセンサーを臨ませることなく、管の表面に貼り付けるだけでよいため、装着を簡単に行うことができる。このため、シース11に穴を空けることなく簡単に取り付けることができるという長所がある。
【実施例3】
【0041】
本願発明の実施例3のグラウト充填確認装置は、図4に示すように、シース11に設けたエア抜き穴30の近傍位置にセンサー埋設穴28を設け、そのセンサー埋設穴28にセンサー26を取り付けるための2つ割の半円筒形状に形成した上部ジョイント22、下部ジョイント23からなる。
【0042】
半円筒形状に形成された上部ジョイント22は、両端側を突設させたフランジ部24を形成し、頂部端縁に空気を抜くための排気口25を備え、この排気口25の近傍にピエゾ抵抗素子からなるセンサー26を備えた構成になっている。センサー26は、上部ジョイント22の壁を通して内側に突設した状態で配設されており、この突設部位27がシース11に開けたセンサー埋設穴28に入り込み、シース11の内面に臨んだ状態で配置される。
【0043】
フランジ部24には、2つの係合穴29を設けた構造となっている。
【0044】
上部ジョイント22と同じく半円筒形状に形成された下部ジョイント23は、両端側を突設させたフランジ部31を形成し、このフランジ部31には2つの係合穴32を設けた構造となっている。
【0045】
このような構造をした上部ジョイント22及び下部ジョイント23は、シース11に設けたセンサ埋設穴28、エア抜き穴30にセンサー26(突設部位27)及び排気口25を合わせるようにして上部ジョイント22を載せ、下側から下部ジョイント23を嵌め込み、係合穴29、32にボルト33を貫通させてネット34に螺合させることでシース11に取り付ける。
【0046】
そして、センサー26は図示しない測定器に接続することでシース11に注入されたグラウトが充分でないときには、管内ではセンサー26が加圧されないため、電流が発生しない。逆に充分にグラウトが注入されると、管内でグラウトがセンサー26を押圧することでセンサー26に変位が生じ、電流が流れる。この電流の流れ状態を測定器で測定すれば、グラウトの充填状態を知ることができる。
【0047】
このセンサーの特徴は、シース11にグラウトを注入した際に、予め空気が留まりやすい箇所が経験的に分かっているので、その箇所にエア抜き穴30を設ける構造のシース11であるときに、その箇所にグラウトが充填されれば他の箇所も充分にグラウトが充填されているという憶測に基づくもので、エア抜き穴30の近傍にセンサー埋設穴28を設けてセンサー26を取り付ける。
【0048】
本実施例では、上部ジョイント22及び下部ジョイント23を用いてセンサー26をシース11に固定しているが、実施例1と同様に、ヒータとしてのメッシュ材を用いてセンサー26をシース11に固定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
シースにグラウトを注入する際に、経験により算出された充填不良箇所にピエゾ抵抗素子を配設したことにより、充填状態を的確に検出することができるグラウト充填確認装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1のグラウト充填確認装置を略示的に示した説明図である。
【図2】サドルバンドで締め付ける構成のグラウト充填確認装置を略示的に示した説明図である。
【図3】本発明の実施例2のグラウト充填確認装置を略示的に示した説明図である。
【図4】本発明の実施例3のグラウト充填確認装置を略示的に示した説明図である。
【図5】シース内におけるグラウトの充填状態を示す図(A〜C)である。
【符号の説明】
【0051】
11 シース
12 センサー
13 カバー部材
14 穴
15 メッシュ部材
16A サドルバンド
16B サドルバンド
17 ボルト
18 ナット
19 熱電対
21 ヒータ
22 上部ジョイント
23 下部ジョイント
24 フランジ部
25 排気口
26 センサー
27 突設部位
28 センサー埋設穴
29 係合穴
30 エア抜き穴
31 フランジ部
32 係合穴
33 ボルト
34 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラウトを充填するシースにおいて、充填不良箇所に圧電素子を配設して充填状態を電気的に確認するようにしたグラウト充填確認方法。
【請求項2】
前記圧電素子を配設する箇所は、前記シースに設けられた空気排出孔の近傍であることを特徴とする請求項1に記載のグラウト充填確認方法。
【請求項3】
底部にセンサーを取り付けたカバー部材と、
シースの径に合わせ、2つの割りの円弧状に形成したサドルパッドと、
前記シースにセンサー埋設用穴を穿設し、該センサー埋設用穴に前記センサーを係合させて前記カバー部材を取り付け、その上部から前記サドルパッドを合わせて締め付けた構成のグラウト充填確認装置。
【請求項4】
シースに設けたエア抜き穴に排気口を係合させて締結する上部ジョイント及び下部ジョイントからなり、前記エア抜き穴の近傍位置にセンサー埋設穴を設け、該センサー埋設穴に取り付けるセンサーを前記上部ジョイントに備えたことを特徴とするグラウト充填確認装置。
【請求項5】
前記センサーは、前記シース内へのグラウトの充填に伴う温度変化又は圧力変化を検出するセンサーであることを特徴とする請求項3又は4に記載のグラウト充填確認装置。
【請求項6】
前記センサーは、熱電対又は圧電素子を含むことを特徴とする請求項5に記載のグラウト充填確認装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−108132(P2007−108132A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301876(P2005−301876)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000163110)極東鋼弦コンクリート振興株式会社 (29)
【Fターム(参考)】