説明

グラウト用混和材及びグラウト用のセメント組成物

【課題】グラウト用混和材及びグラウト用のセメント組成物を提供する。
【解決手段】本発明のグラウト用混和材は、減水剤、膨張材、無機微粉末、増粘剤及び発泡剤を含有してなるグラウト用混和材であって、該減水剤100質量部中のポリカルボン酸塩系減水剤が40〜70質量部、リグニンスルホン酸塩系減水剤が60〜30質量部であることを特徴とする。
【効果】本発明のグラウト用混和材及びこれを使用したグラウト用のセメント組成物は、流動性を長時間保持し、無収縮であり、ブリーディングや材料分離が無く、高強度を発現する等の効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に土木、建築業界において使用されるグラウト用セメント混和材及びグラウト用のセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラウト用のセメント混和材或いはグラウト組成物として減水剤、膨張材を主成分としているものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらのグラウト用セメント混和材或いはグラウト組成物は、グラウト(コンクリート)に流動性、無ブリーディング性、無収縮性を付与してグラウト工事の作業性とグラウトの耐久性を高めている。
しかし近年ではグラウト材を使用する用途が広がり、広範囲の温度領域で流動性を長時間保持するグラウト用のセメント混和材或いはグラウト材が求められている。グラウト用セメント混和材或いはグラウト組成物の流動保持性を高める為の提案としてCaO原料、Al原料、及びCaSO原料を含む配合物を熱処理して生成する膨張物質と、側鎖にカルボキシル基とポリアルキレンオキサイド構造を有するポリカルボン酸系重合体とを含有してなるグラウト用のセメント混和材、あるいは該膨張物質と、該ポリカルボン酸系重合体と、流動化剤と、非晶質カルシウムアルミネートとを配合してなるグラウト用のセメント混和材と、セメント等からなるセメント組成物(特許文献3参照)、セメント、細骨材、減水剤、膨張材、無機質微粉末及び発泡物質からなる組成物において、減水剤の配合量がセメント100質量部に対し0.05〜4質量部であり、該減水剤100質量部中のメラミンスルホン酸塩系減水剤が10〜30質量部、ナフタレンスルホン酸塩系減水剤が55〜85質量部、リグニンスルホン酸塩系減水剤が5〜20質量部であることを特徴とするセメント系グラウト組成物(特許文献4参照)などが提案されているが十分ではなかった。
【0003】
また、グラウト用混和材やグラウト組成物に減水剤としてポリアルキレングリコール鎖を有するポリカルボン酸系高分子化合物とポリアルキレングリコール及び炭素数8〜22の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上とを含む粒子を含有する粉末状セメント分散剤(特許文献5参照)、更には特定の分子構造を有する水溶性ビニル共重合体と特定の還元性無機化合物との水系混合物を乾燥し、粉砕した粉末状セメント分散剤(特許文献6参照)を使用すれば流動性の保持時間は長めとなるがせいぜい常温で60分程度の保持であり、特に高温時では流動性の保持に問題があった。また、これらの分散剤の使用量を増加して流動性の保持時間を延長しようとしてもセメントペーストと骨材が分離して耐久性に優れるグラウトを製造することが出来なかった。
【特許文献1】特公昭48−9331号公報
【特許文献2】特公昭56−6381号公報
【特許文献3】特開平11−79816号公報
【特許文献4】特開2003−171162号公報
【特許文献5】特開2000−26146号公報
【特許文献6】特許3490338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明が解決しようとする課題は、流動性、無ブリーディング性、無収縮性を有し、セメントペーストと骨材が分離することなく耐久性に優れ、かつ、広範囲の温度領域で流動性の低下が少ないグラウト用混和材及びグラウト用のセメント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決すべく、種々検討した結果、減水剤にポリカルボン酸塩系減水剤とリグニンスルホン酸塩系減水剤とを特定の割合で併用し、膨張材、無機微粉末、増粘剤及び発泡材を配合したグラウト用混和材或いは当該混和材に、更にセメントと細骨材とを配合したグラウトのセメント組成物が、前記課題をすべて解決できる知見を得て本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、減水剤、膨張材、無機微粉末、増粘剤及び発泡剤を含有してなるグラウト用混和材であって、該減水剤100質量部中のポリカルボン酸塩系減水剤が40〜70質量部、リグニンスルホン酸塩系減水剤が60〜30質量部であるグラウト用混和材に関する。また、本発明は、発泡剤がアルミニウム粉末、過酸化物、スルホニルヒドラジド化合物から選ばれる1種又は2種以上である前記グラウト用混和材に関する。
さらに、本発明は、セメント、減水剤、膨張材、無機微粉末、増粘剤、発泡剤及び細骨材を含有してなるグラウト用のセメント組成物であって、該減水剤100質量部中のポリカルボン酸塩系減水剤が40〜70質量部、リグニンスルホン酸塩系減水剤が60〜30質量部であり、該減水剤の配合量がセメント100質量部に対して0.2〜0.9質量部であるグラウト用のセメント組成物に関する。また、本発明は、発泡剤がアルミニウム粉末、過酸化物、スルホニルヒドラジド化合物から選ばれる1種又は2種以上である前記グラウト用のセメント組成物に関する。さらにまた、本発明は、セメント100質量部に対して膨張材の配合量が3〜15質量部、無機微粉末の配合量が0.5〜8質量部、増粘剤の配合量が0.005〜0.05質量部、細骨材の配合量が50〜300質量部である前記グラウト用のセメント組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグラウト用混和材及びこれを使用したグラウト組成物は流動性を長時間保持し、無収縮であり、ブリーディングや材料分離が無く、高強度を発現する等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0009】
本発明に使用される減水剤は、リグニンスルホン酸塩系減水剤とポリカルボン酸塩系減水剤である。リグニンスルホン酸塩系減水剤としては、リグニンスルホン酸のアルカリ金属及び/又はアルカリ金属塩などが例示できる。リグニンスルホン酸塩系減水剤の形態は、液体、粉体を問わないが、一般的にグラウト用混和材やグラウト用のセメント組成物はプレミックスされた粉体の形態で提供されるので粉体が好ましい。
【0010】
本発明に使用されるポリカルボン酸塩系減水剤としては、周知のポリカルボン酸系高分子化合物が使用でき、例えば、ポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸との共重合体(例えば、特公昭59−18338号公報)、ポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸と不飽和カルボン酸のポリアルキレンオキシドを有するアミド化合物付加物との共重合体(例えば、特公平2−7897号公報)、ポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸との共重合体(例えば、特公平6−104585号公報)、不飽和結合を有するポリアルキレングリコールジエステル系単量体とアクリル酸系単量体と不飽和結合を有するポリアルキレングリコールモノエステル系単量体から選択された共重合体(例えば、特開平5−238795号公報)、オキシエチレン基が1〜10と11〜100の異なる鎖長のポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸との共重合体(例えば、特開平9−286645号公報)、ポリオキシアルキレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体(例えば、特許2541218号公報)、ポリオキシアルキレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体(例えば、特開平7−215746号公報)、アルケニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(例えば、特開平5−310458号公報)、炭素数2〜8のオレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体(例えば、特許2933994号公報)、ポリアクリル酸や炭素数2〜8のオレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸との共重合体などとの金属コンプレックス(例えば、特開昭62−83344号公報)、或いは前述の成分の併用(例えば、特許2741631号公報)、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリカルボン酸系高分子化合物とポリアルキレングリコール及び炭素数8〜22の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上とを含む粒子を含有する粉末状セメント分散剤(例えば、特開2000−26146号公報)、特定の分子構造を有する水溶性ビニル共重合体と特定の還元性無機化合物との水系混合物を乾燥し、粉砕した粉末状セメント分散剤(例えば特許3490338号公報)、ポリオキシアルキレン含有構造成分、カルボン酸モノマー及び/又は無水カルボン酸モノマー並びに場合により他のモノマーから構成されている水溶性ポリマーを5〜95質量%及び0.5〜500m/gの比表面積(BET、DIN66131)を有する微粒状の無機担体材料を95〜5質量%を含有する微粒状無機担時体材料を含有することを特徴とする、ポリエーテルカルボキシレートをベースとする粉体状のポリマー組成物(例えば、特表2002−536289号公報)などが例示できる。ポリカルボン酸塩系減水剤の形態は、液体、粉体を問わないが、一般的にグラウト用混和材やグラウト用のセメント組成物は、粉体の形態で提供されるので粉体が好ましい。
【0011】
本発明の減水剤は、該減水剤100質量部中のポリカルボン酸塩系減水剤が40〜70質量部、リグニンスルホン酸塩系減水剤が60〜30質量部である。グラウトの練り上がり温度が常温以下の場合、ポリカルボン酸塩系減水剤とリグニンスルホン酸塩系減水剤の配合割合はほぼ同等か若干リグニンスルホン酸塩系減水剤の配合割合が多くなるが、グラウトの練り上がり温度が常温より高い場合、ポリカルボン酸塩系減水剤の配合割合がリグニンスルホン酸塩系減水剤より多くなる傾向にある。これらの混合物である本発明の減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して0.2〜0.9質量部であり、好ましくは0.3〜0.75質量部である。グラウトの練り上がり温度が高くなるほどポリカルボン酸塩系減水剤とリグニンスルホン酸塩系減水剤の混合物の配合量は増加する傾向にある。
【0012】
本発明に使用する膨張材としては、特に限定されるものではなく、ブレーン値が2000〜3000cm/g程度或いは6000〜9000cm/g程度のカルシウムサルフォアルミネート系膨張材、石灰系膨張材、遊離石灰とカルシウムアルミノフェライトと無水石膏からなる膨張材などが挙げられ、また、これらの1種又は2種以上の混合使用もできる。膨張材の配合量は、セメント100質量部に対して1〜15質量部が好ましく、3〜12質量部がより好ましい。
【0013】
本発明に使用される無機微粉末としては、特に限定されるものではないが、高炉スラグ粉末、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、フライアッシュなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上の混合使用が可能である。無機微粉末の配合量は、セメント100質量部に対して0.5〜8質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0014】
本発明に使用される増粘剤は特に限定されるものではないがセルロース系、アクリル系、グアーガム系などが使用でき、好ましくはセルロース系高分子化合物、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが例示できる。本発明ではこれらのうちの1種又は2種以上の使用が可能である。増粘剤の配合量はセメント100質量部に対して0.005〜0.05質量部が好ましく、0.01〜0.02質量部がより好ましい。
【0015】
本発明に使用される発泡剤としては、アルミニウム粉末、過酸化物、スルホニルヒドラジド化合物が挙げられる。発泡剤は、水と練り混ぜたグラウト材に気体を発生する材料であり、この発泡作用によりグラウト材の沈下を防止し、構造物との一体化をはかる目的で使用される。また、本発明においてアルミニウム粉末は常温以下では発泡作用が小さく、スルホニルヒドラジド化合物は低温から高温まで幅広く安定した発泡作用が得られるので使用が好ましい。本発明ではこれらのうちの1種又は2種以上の使用が可能である。発泡剤の配合量は、使用する物質によって大きく異なるがセメント100質量部に対して0.001〜0.25質量部が好ましい。
【0016】
本発明のグラウト用のセメント組成物に使用されるセメントとしては、一般に使用される水硬性セメントであり、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、白色セメント、石灰混合セメント、高炉セメント、コロイドセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、スラグセメント等があり、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0017】
本発明のグラウト用のセメント組成物に使用される細骨材は、珪砂、川砂、石灰砕砂、砕砂、石材破砕物、磁器破砕物、ガラス破砕物、ガラスビーズ、軽量骨材等があり、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。また、流動性に影響のない範囲で細骨材の一部を豆砂利等の粗骨材に置換することもできる。細骨材の配合量は、セメント100質量部に対して50〜300質量部が好ましく、70〜250質量部がより好ましい。
【0018】
本発明では消泡剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、凝結調整剤、セメント急硬材、ベントナイト等の粘土鉱物などのうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。また、セメント、石粉、高炉スラグ粉末を増量の目的で使用することも可能である。
【0019】
本発明のグラウト用混和材の配合量は、グラウト材としての目的を阻害しない範囲であれば特に限定されるものではなく、セメントとグラウト用混和材の総量に対する細骨材の比率により配合量を変更することが可能である。例えば、セメントとグラウト用混和材(増量材が混入されていない場合)の総量に対する細骨材の比率が1:2のグラウトの場合、セメントとグラウト用混和材の総量100質量部中、グラウト用混和材は6〜12質量部が好ましく、8〜10質量部がより好ましい。6質量部未満では流動性が悪くなり、間隙の充填が不十分となる場合があり、12質量部を超えると流動性が著しく大きくなり、グラウトの材料分離が生じやすくなる場合がある。
【0020】
本発明のグラウト用混和材を練り混ぜる際に使用する水の量は、グラウト材としての目的を阻害しない範囲であれば特に限定されるものではないが、セメントとグラウト混和材(増量材が混入されていない場合)の総量100質量部に対して、35〜55質量部が好ましく、40〜50質量部がより好ましい。35質量部未満では流動性が悪くなり、間隙の充填が不十分となる場合があり、55質量部を超えると流動性が著しく大きくなり、グラウトの材料分離が生じやすくなる場合がある。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
実施例1
表1〜3に示す質量部の膨張材、無機微粉末、増粘剤、ポリカルボン酸塩系減水剤、リグニンスルホン酸塩系減水剤、発泡剤からなり、更にこれらの合計がセメント100質量部に対して10質量部となるように増量材として普通セメントを加えて調整したグラウト用混和材を作製した。次いでセメント100質量部、グラウト用混和材10質量部、細骨材220質量部に、水を試験温度5℃のとき49.6質量部、試験温度20℃のとき48.4質量部、試験温度30℃のとき48.5質量部を加えてグラウトを練り混ぜた。流動性の評価としてJ14漏斗流下時間とフロー値を120分まで30分ごとに測定した。また、材料分離の評価としてブリーディング率を、更に初期膨張率と材齢7日における長さ変化率と材齢28日における圧縮強度を測定した。
【0023】
[使用材料]
セメント:市販普通ポルトランドセメント
膨張材:市販コンクリート用膨張材
細骨材:市販陸砂(F.M.=2.6)
減水剤:市販ポリカルボン酸塩系減水剤(太平洋マテリアル社製コアフローNF100)及び市販リグニンスルホン酸塩系減水剤(ボレガード社製ボレスパーズ)
無機微粉末:市販シリカフューム
増粘剤:市販セルロース系増粘剤
発泡剤:市販スルホニルヒドラジド化合物粉末
[試験方法]
14漏斗流下時間:土木学会試験方法JSCE−F541−1999によった。
【0024】
フロー値:JIS R 5201:1997に準じて測定した。ただし、フローテーブルを落下しないで、フローコーンを静かに鉛直に引き上げて広がったモルタルの径を測定した。
【0025】
ブリーディング率:土木学会試験方法JSCE−F542−1999のブリーディング試験方法によった。
【0026】
初期膨張率:土木学会試験方法JSCE−F542−1999の膨張率試験方法によった。
【0027】
長さ変化率:JIS A 6202−1999附属書1の膨張率試験方法に準じて測定した。
【0028】
圧縮強度:土木学会試験方法JSCE−G505−1999によった。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
【表5】

【0034】
【表6】

【0035】
試験結果を表4〜6に示す。表4〜6より、本発明のグラウト用混和材を使用したグラウト用のセメント組成物は各温度においてフレッシュ性状は比較例に比べてJ14漏斗流下時間或いはフロー値の経時変化が小さく、高流動性を長時間保持することが可能である。また、ブリーディングや材料分離が無く、初期膨張率や長さ変化率は膨張側で良好な寸法安定性を有している。更に、圧縮強度は高強度を発現することが分かる。
【0036】
実施例2
表7に示す膨張材、無機微粉末、増粘剤、ポリカルボン酸塩系減水剤、リグニンスルホン酸塩系減水剤、発泡剤からなり、更にこれらの合計がセメント100質量部に対して10質量部となるように増量材として普通セメントを加えて調整したグラウト用混和材を作製した。次いでセメント100質量部、グラウト用混和材10質量部、細骨材110質量部に、水を試験温度5℃のとき40.7質量部、試験温度20℃のとき39.6質量部、試験温度30℃のとき38.5質量部を加えてグラウトを練り混ぜて、流動性の評価としてJ14漏斗流下時間とフロー値を120分まで30分ごとに測定した。また、材料分離の評価としてブリーディング率を、更に初期膨張率と材齢7日における長さ変化率と材齢28日における圧縮強度を測定した。使用材料、試験方法は実施例1と同様に行った。
【0037】
【表7】

【0038】
【表8】

【0039】
【表9】

【0040】
試験結果を表8、9に示す。表8、9より砂・セメント比を変化した場合も、本発明のグラウト用混和材を使用したグラウト用のセメント組成物は各温度においてフレッシュ性状は比較例に比べてJ14漏斗流下時間或いはフロー値の経時変化が小さく、高流動性を長時間保持することが可能である。また、ブリーディングや材料分離が無く、初期膨張率や長さ変化率は膨張側で良好な寸法安定性を有している。更に、圧縮強度は高強度を発現することが分かる。
【0041】
実施例3
膨張材7質量部、無機微粉末1.5質量部、増粘剤0.02質量部、発泡剤0.1質量部、リグニンスルホン酸塩系減水剤0.25質量部、表10に示すポリカルボン酸塩減水剤を配合し、更にこれらの合計がセメント100質量部に対して10質量部となるように増量材として普通セメントを加えて調整したグラウト用混和材作製した。次いでセメント100質量部、グラウト用混和材10質量部、細骨材220質量部、水48.4質量部を加えてグラウトを練り混ぜて、流動性の評価としてJ14漏斗流下時間とフロー値を120分まで30分ごとに測定した。また、材料分離の評価としてブリーディング率を、更に初期膨張率と材齢7日における長さ変化率と材齢28日における圧縮強度を測定した。ポリカルボン酸塩を除く使用材料、試験方法は実施例1と同様に行った。市販ポリカルボン酸塩減水剤は以下に示すものを使用した。
【0042】
A:太平洋セメント社製NF−100(メタクリル系ポリカルボン酸塩減水剤)
B:BASFコンストラクション社製メルフラックスAP100(ポリオキシアルキレングリコーリル−カルボキシレートをベースとしたポリカルボン酸塩減水剤)
C:BASFコンストラクション社製メルフラックス1641FとBASFコンストラクション社製メルフラックス2651Fの等量混合(ポリオキシアルキレングリコーリル−カルボキシレートをベースとしたポリカルボン酸塩減水剤)
試験結果を表11に示す。市販のポリカルボン酸塩B及びCを使用した場合でもAと同様に、本発明のグラウト用混和材を使用したグラウト組成物は各温度においてフレッシュ性状は比較例に比べてJ14漏斗流下時間或いはフロー値の経時変化が小さく、高流動性を長時間保持することが可能である。また、ブリーディングや材料分離が無く、初期膨張率や長さ変化率は膨張側で良好な寸法安定性を有している。更に、圧縮強度は高強度を発現することが分かる。
【0043】
【表10】

【0044】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のグラウト用混和材及びこれを使用したグラウト用のセメント組成物は、流動性を長時間保持し、無収縮であり、ブリーディングや材料分離が無く、高強度を発現する等の効果があり広い範囲の技術分野、特に土木、建築業界において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減水剤、膨張材、無機微粉末、増粘剤及び発泡剤を含有してなるグラウト用混和材であって、該減水剤100質量部中のポリカルボン酸塩系減水剤が40〜70質量部、リグニンスルホン酸塩系減水剤が60〜30質量部であることを特徴とするグラウト用混和材。
【請求項2】
発泡剤がアルミニウム粉末、過酸化物、スルホニルヒドラジド化合物から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のグラウト用混和材。
【請求項3】
セメント、減水剤、膨張材、無機微粉末、増粘剤、発泡剤及び細骨材を含有してなるグラウト用のセメント組成物であって、該減水剤100質量部中のポリカルボン酸塩系減水剤が40〜70質量部、リグニンスルホン酸塩系減水剤が60〜30質量部であり、該減水剤の配合量がセメント100質量部に対して0.2〜0.9質量部であることを特徴とするグラウト用のセメント組成物。
【請求項4】
発泡剤がアルミニウム粉末、過酸化物、スルホニルヒドラジド化合物から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項3に記載のグラウト用のセメント組成物。
【請求項5】
セメント100質量部に対して膨張材の配合量が3〜15質量部、無機微粉末の配合量が0.5〜8質量部、増粘剤の配合量が0.005〜0.05質量部、細骨材の配合量が50〜300質量部であることを特徴とする請求項3〜4のいずれかに記載のグラウト用のセメント組成物。

【公開番号】特開2008−189526(P2008−189526A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26493(P2007−26493)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(398012786)BASFポゾリス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】