説明

グラビア印刷用グラビアロール、グラビア印刷機、グラビア印刷方法、電磁波シールド性光透過窓材の製造方法及び電磁波シールド性光透過窓材

【課題】グラビア印刷においてドクターブレードの振動を防止すること等により、印刷品位の低下を防ぐことができるグラビアロールを提供し、更に、グラビア印刷によって高精度なパターニングを形成した電磁波シールド性光透過窓材の製造方法及び電磁波シールド性光透過窓材を提供すること。
【解決手段】グラビアロール外周面に微細な凹凸が形成された凹凸領域が設けられ、凹凸領域のグラビアロールの幅方向における長さの合計が該グラビアロールの幅の90%以上であることを特徴とするグラビアロール。また、そのグラビアロールを用いるグラビア印刷による電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷に用いられるグラビアロールに関し、更にそのグラビアロールを含むグラビア印刷機、そのグラビアロールを用いたグラビア印刷方法、電磁波シールド性光透過窓材の製造方法及び電磁波シールド性光透過窓材に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷は凹版印刷の一種であり、一般にインクが付く部分が彫り込まれているグラビアロール、余分なインクを掻き落とすドクターブレード及びグラビアロールのインクを基材に転写するためにグラビアロールに対向して配置される圧胴ロールを含む印刷機を用いて行われる。
【0003】
従来から、グラビア印刷によって導電ペーストをセラミックシート上に印刷する工程を用いるセラミック電子部品の製造方法(特許文献1、2)や、グラビア印刷を応用して透明基材上に触媒インク層等を転写する工程を用いて高精度のパターニングを形成する電磁波遮蔽膜つき透明基材の製造方法(特許文献3)が知られている。
【0004】
これらの方法によって製造された、電磁波シールド性光透過窓材は、プラズマディスプレイパネル(PDP)における不要な電磁波の輻射や赤外線の輻射を防止するフィルタや、病院等の電磁波シールドを必要とする建築物の窓に使用されている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−108307号公報
【特許文献2】特開2004−223729号公報
【特許文献3】特開2007−281290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般にグラビア印刷において、グラビアロールには基材を印刷するために必要な領域にのみパターニングが施されるため、グラビアロールに微細な凹凸が形成されている領域(「凹凸領域」という)及び凹凸領域が形成されていない領域(「非凹凸領域」という)が生じる。この場合、図8に示したようにグラビアロール11の余分なインキ22をドクターブレード20が掻き落とす際に、凹凸領域12(図8(A)参照)と非凹凸領域13(図8(B)参照)とにおいてドクターブレード20にかかる摩擦力が大きく異なるため、ドクターブレード21が振動し、印刷品位が低下することがある。更に、グラビアロール11の凹凸領域と非凹凸領域とではドクターブレード21の摩耗に差が生じるため、その境界に当たる凹凸領域の端部近傍においては印刷品位が低下する場合がある。印刷品位の低下は、特に電磁波シールド性光透過窓材の製造における高精度なパターニング形成に問題になる。
【0007】
従って、本発明の目的は、グラビア印刷においてドクターブレードの振動を防止すること等により、印刷品位の低下を防ぐことができるグラビアロールを提供することにある。
【0008】
更に、本発明の目的は、グラビアロールを用いるグラビア印刷によって高精度なパターニングを形成した電磁波シールド性光透過窓材の製造方法及び電磁波シールド性光透過窓材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、グラビア印刷に用いられるグラビアロールであって、グラビアロール外周面に微細な凹凸が形成された凹凸領域が設けられ、凹凸領域のグラビアロールの幅方向における長さの合計が該グラビアロールの幅の90%以上であることを特徴とするグラビアロールによって達成される。これにより、ドクターブレードがグラビアロールに接触する位置による摩擦力の差が軽減され、ドクターブレートの振動が抑えられ、印刷品位の低下を防止することができる。
【0010】
本発明に係るグラビアロールの好ましい態様は以下の通りである。
(1)グラビアロール外周面の凹凸領域の幅が、グラビア印刷によって印刷されるべき領域の幅より大きい。これにより、凹凸領域の端部は印刷に関わらないため、凹凸領域の端部に係る印刷品位の低下を防止することができる。
(2)グラビアロール外周面の両端部近傍に微細な凹凸領域が形成されていない非凹凸領域が設けられている
(3)グラビアロール外周面の両非凹凸領域の幅が同一である。これにより、ドクターブレードに偏りなく摩擦力がかかるため振動を更に低減できる。
(4)グラビアロール外周面の非凹凸領域の幅が20mm未満である。これにより、ドクターブレードが接触するグラビアロールの非凹凸領域の影響を更に低減することができる。
(5)グラビアロールの外周面に、凹凸領域の両端部から所定距離離れた所定位置に、その所定位置を含む非凹凸領域が設けられ、且つその所定位置が、グラビアロールに対して幅方向中心線が一致した状態で対向して使用される圧胴ロールの各端部の端部位置である。これにより、欠け・ヘタリ等で印刷品位が乱れることがある圧胴ロールの端部近傍がグラビア印刷によって印刷される被印刷基材に接する部分については、印刷されない領域(「非印刷領域」という)とすることができる。
(6)(5)におけるグラビアロール外周面の非凹凸領域の幅が1〜20mmである。これにより、圧同ロールの端部に係る被印刷基板における非印刷領域を必要最小限にすることができる。
【0011】
また、上記目的は、本発明のグラビアロール及びグラビアロールに対して幅方向中心線が一致した状態で対向して使用される圧胴ロールを含むグラビア印刷機によっても達成される。
【0012】
また、上記目的は、少なくとも本発明のグラビアロールを用いることを特徴とするグラビア印刷方法によっても達成される。
【0013】
本発明に係るグラビア印刷方法の好ましい態様は以下の通りである。
【0014】
(1)更に、グラビア印刷によって印刷される被印刷基板が、グラビアロール外周面の凹凸領域の幅より小さい幅であり、グラビアロールに対して幅方向中心線が一致した状態で対向して使用される圧胴ロールの幅が被印刷基板の幅より小さい幅である。これにより、凹凸領域の端部は被印刷基板と重ならず、印刷に関わらないため、凹凸領域の端部に係る印刷品位の低下を防止することができる。また、圧胴ロールの幅が被印刷基板の幅より小さいため、圧胴ロールがインキに汚染されず、さらに本発明のグラビアロールにより高精度に印刷することができる。
【0015】
また、上記目的は、本発明のグラビアロールを用いるグラビア印刷によって、導電層形成材料を透明基板の表面にメッシュ式でパターン印刷して導電層を形成する工程を含む電磁波シールド性光透過窓材の製造方法によって達成することができる。これにより、導電層形成材料を透明基板表面に高精度に印刷することができるため、高精度な導電層を有する電磁波シールド性光透過窓材を製造することができる。
【0016】
上記本発明の製造方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)導電層形成材料が導電性粒子及びバインダ樹脂を含む導電性インキである。
【0017】
また、上記目的は、本発明のグラビアロールを用いる製造方法を用いるグラビア印刷によって、無電解めっき前処理剤を透明基板表面にメッシュ式でパターン印刷して前処理層を形成する工程、及び前処理層上に無電解めっき処理により金属導電層を形成する工程を含む電磁波シールド性光透過窓材の製造方法によって達成することができる。これにより、無電解めっき前処理剤を高精度にパターン印刷することができ、高精度な金属導電層を有する電磁波シールド性光透過窓材を製造することができる。
【0018】
上記本発明の製造方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)無電解めっき前処理剤が、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と合成樹脂を含む液である。
(2)無電解めっき前処理剤が、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む液である。
(3)無電解めっきを行った後、更に、電解めっきを行う。これにより、更に優れた導電性が得られる。
【0019】
また、上記目的は、本発明のグラビアロールを用いるグラビア印刷によって、溶剤に対して可溶な物質を透明基板の表面にドット式でパターン印刷してドットを形成する工程、透明基板の表面に溶剤に対して不溶な導電層形成材料により導電層を形成する工程、透明基板を溶剤に接触させてドット及びドット上の導電層を除去する工程を含む電磁波シールド性光透過窓材の製造方法によって達成することができる。これにより、高精度な導電層を有する電磁波シールド性光透過窓材を製造することができる。
【0020】
上記本発明の製造方法の好ましい態様は以下通りである。
(1)溶剤が水であって、溶剤に対して可溶な物質が水溶性高分子材料である。これにより、環境的、経済的に有利に製造することができる。
【0021】
更に、上記目的は本発明に係る製造方法によって製造された電磁波シールド性光透過窓材によって達成することができる。これにより、高精度な導電層を有する電磁波シールド性光透過窓剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のグラビアロールによれば、ドクターブレードにかかる摩擦力の差を軽減し、振動を抑えることができるので、高精度な印刷を可能とすることができる。更に、本発明の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法は本発明のグラビアロールを用いるグラビア印刷によって導電層のパターニングを行うので、高精度な導電層が形成された電磁波シールド性光透過窓材を得ることができる。従って、本発明の製造方法により得られる電磁波シールド性光透過窓材は高精度な導電層を有する電磁波シールド性光透過窓材であるということができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のグラビア印刷用グラビアロール、電磁波シールド性光透過窓材の製造方法及び電磁波シールド性光透過窓材について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1には本発明のグラビア印刷用グラビアロールの代表的な1例を示す。また、図2には図1に係る本発明のグラビアロールを含むグラビア印刷機におけるグラビアロール、圧胴ロール及びグラビア印刷によって印刷される被印刷基板との関係を示す。
【0025】
図1に示すように、グラビアロール11はその外周面に凹凸領域12が形成され、グラビアロールの両端部近傍は非凹凸領域13、14となっている。凹凸領域12の幅方向の長さL2は、グラビアロール11の幅L1との関係において、L2≧0.9×L1となっている。
【0026】
従来のグラビアロールにおいては、被印刷基板31に印刷する範囲にのみグラビアロール外周面に凹凸領域12が形成されるため、通常はL2<0.9×L1の関係であったため(図示していない)、前述したように凹凸領域及び非凹凸領域においてドクターブレードにかかる摩擦力の差によるドクターブレードの振動が生じることがあった。しかしながら、本発明のグラビアロールにおいては、非凹凸領域が10%以下と少ないため、ドクターブレードにかかる摩擦力の差の影響を低減することができる。
【0027】
凹凸領域12がグラビアロール外周面の全域にあって、非凹凸領域13、14が設けられていなくても良い。また、非凹凸領域は、後述するように1領域だけでも、必要に応じて3領域以上の領域があっても良く、凹凸領域の幅方向の長さの合計がグラビアロールの幅L1の90%以上であれば良い。
【0028】
また、図2に示すように、グラビア印刷機において、グラビアロール11は、被印刷基板31を挟んで対向する圧胴ロール41とともに使用される。図2においては、グラビアロール11の凹凸領域の幅方向の長さL2、被印刷基板31の幅L3、圧銅ロール41の幅L4の関係はL2>L3>L4である。これらの幅の関係は何れでも良いが、前述のドクターブレードの摩耗の違いにより印刷品位の低下する可能性がある凹凸領域の端部を印刷に係わらなくするため、凹凸領域12の幅L2はグラビア印刷により印刷されるべき領域の幅より大きくなるように、L2>L3≧L4の関係が好ましく、圧胴ロールがインキに汚染されることを防ぐためには、図2の通り、L2>L3>L4の関係が好ましい。
【0029】
また、非凹凸領域13、14の位置はグラビアロールの両端部でなく、両端部から所定距離離れた領域にあっても良い。更に、非凹凸領域13、14の幅は同一であっても、異なっていても良く、例えば、片側の非凹凸領域13のみであっても良い。偏りなく摩擦力がかかるようにして、より振動を抑えるために、図示の通り、非凹凸領域13、14はグラビアロールの両端部近傍に設けられていることが好ましく、更に、非凹凸領域13、14の幅が同一であることが好ましい。また、ドクターブレードにかかる摩擦力の差の影響を小さくし、より振動を低減するために、非凹凸領域13、14の幅は20mm未満とすることが好ましい。
【0030】
図3には本発明のグラビア印刷用グラビアロールの別の代表例を示す。また、図4には図3に係る本発明のグラビアロールを含むグラビア印刷機におけるグラビアロール、圧胴ロール及びグラビア印刷によって印刷される被印刷基板との関係を示す。
【0031】
図3に示すグラビアロール11の外周面には、凹凸領域12が形成されており、グラビアロール11の両端部近傍の非凹凸領域13、14の他に、両端部から所定距離離れた所定位置に、その所定位置を含む非凹凸領域15、16が設けられている。凹凸領域の幅方向の長さの合計はグラビアロール11の幅L1との関係において、0.9×L1となっている。
【0032】
図4に示すように、グラビア印刷機において、グラビアロール11の幅方向中心線pと、グラビアロール11と被印刷基板31を挟んで対向する圧胴ロール41の幅方向中心線qは一致した状態で使用されることが好ましい。また、非凹凸領域15、16が設けられている所定位置は、グラビアロール11が圧胴ロール41の端部位置と一致する位置a、bを含んでいる。圧銅ロール41の端部近傍は欠け・ヘタリ等が生じることがあるため、印刷品位が低下することがある。非凹凸領域15、16を設けることで、圧胴ロール41の端部近傍に接触する被印刷基板31の領域について非印刷領域とすることができる。
【0033】
非凹凸領域15、16の幅については必要に応じて任意の幅を設定することができる。圧銅ロール41の端部に係る被印刷基板の非印刷領域を必要最小限にするため、非凹凸領域15、16は、それぞれ1〜20mmの幅であることが好ましい。非印刷領域15、16の幅は同一でも異なっていても良い。偏りなく摩擦力がかかるようにして、より振動を抑えるために、非凹凸領域15、16の幅は同一であることが好ましい。
【0034】
本発明の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法は、本発明に係るグラビアロールを用いるグラビア印刷によって、好ましくは下記の3つの方法
(A)導電層形成材料を透明基板の表面にメッシュ式でパターン印刷して導電層を形成する工程を含む製造方法、
(B)無電解めっき前処理剤を透明基板表面にメッシュ式でパターン印刷して前処理層を形成する工程、及び前処理層上に無電解めっき処理により金属導電層を形成する工程を含む製造方法、及び
(C)溶剤に対して可溶な物質を透明基板の表面にドット式でパターン印刷してドットを形成する工程、透明基板の表面に溶剤に対して不溶な導電層形成材料により導電層を形成する工程、及び透明基板を溶剤に接触させてドット及びドット上の導電層を除去する工程を含む製造方法
を利用することで行うことができる。各方法について、以下に詳細に説明する。
【0035】
図5には本発明で好適な光透過性電磁波シールド性窓材の形成方法(A)を説明する概略図を示す。(A1)に示すように透明基板51上に、導電層形成材料を本発明の方法に従い、グラビア印刷によってメッシュ状に印刷することにより、メッシュ状の導電層52を形成する。本発明のグラビアロールを用いることで、高精度に導電層を形成することができる。
【0036】
導電層形成材料は本発明の目的を達成できる導電性を有する材料であれば何れでも良いが、特に導電性粒子及びバインダ樹脂を含む導電性インキが好ましい。
【0037】
上記導電性インキに使用される導電性粒子としては、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物などを挙げることができる。これらは一種段独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
なかでも、上記導電性粒子としては、銀、銅、金、ニッケル、インジウム及びスズが好ましい。これらの導電性粒子であれば、得られるメッシュ状導電層の導電性を向上させることが可能となる。
【0039】
導電性粒子の平均粒子径は、10nm〜10μm、特に10nm〜5μmであるのが好ましい。
【0040】
導電性インキにおける導電性粒子の含有量は、バインダ樹脂の100質量部に対して、400〜1000質量部、特に400〜800質量部とするのが好ましい。これにより、導電性粒子同士の接触性に優れる導電層を形成することができる。
【0041】
導電性インキに用いられるバインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。更に、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0042】
導電性インキには、適度な粘度に調整するため、更に溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキルエーテルを挙げることができる。
【0043】
導電性インキは、更に、黒色着色剤を更に含有していてもよい。これにより、印刷精度の向上とともに、得られる電磁波シールド性光透過窓材において透明基板側から見た際の防眩効果を付与することができる。
【0044】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、黒鉛、および活性炭などをも用いることが好ましい。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。カーボンブラックの平均粒径は、好ましくは0.1〜1,000nm、特に好ましくは5〜500nmである。
【0045】
導電性インキにおける黒色着色剤の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。
【0046】
導電性インキは、更に、界面活性剤などの分散剤、可塑剤、消泡剤、硬化剤など、従来公知の助剤を含んでいてもよい。
【0047】
上述した導電性インキを、透明基板上にメッシュ状に印刷する場合、導電性インキの粘度は、断線の発生を抑制するために、また印刷により微細な線幅および間隙(ピッチ)を有するために、25℃において、好ましくは100〜10000cps、より好ましくは500〜5000cpsとすることが好ましい。
【0048】
メッシュ状の導電層52の線幅は、一般に20μm以下、好ましくは5〜15μmで、特に5〜12μmを有する。線のピッチは200μm以下が好ましい。また、開口率は75〜95%であることが好ましく、特に80〜95%である。なお、開口率とはメッシュの線幅と1インチ幅に存在する線の数から計算で求めたものである。
【0049】
導電層の線で囲まれた開口部の形状は、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。
【0050】
図6には本発明の導電層の形成方法(B)を説明する概略断面図を示す。まず、(B1)に示すように透明フィルム等の透明基板61上に、本発明の方法に従い、グラビア印刷によって無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷し、乾燥後、透明基板61上にメッシュ状の前処理層62を形成する。そして、(B2)に示すように前処理層62に無電解めっきを行うことにより、前記前処理層62上に金属などの導電材料からなるメッシュ状の金属導電層63を形成する。本発明のグラビアロールを用いることによって、高精度に金属導電層を形成することができる。
【0051】
無電解めっき前処理剤は本発明の目的を達成できる無電解めっき前処理剤であれば何れでも良いが、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤が好ましい。以下にこの場合の方法を詳細に説明する。
【0052】
上記複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物としては、Pd、Ag、Si、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも2種の金属元素を含むものが好ましく用いられる。より好ましくは、Pd又はAgの金属元素と、Si、Ti又はZrの金属元素とを含むものを挙げることができる。このような複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物は、高いめっき金属析出能力を有し、更に前処理剤中での安定性及び分散性に優れた特性を有する。
【0053】
なかでも、前記特性が特に優れることから、下記式(I)
1X・M22・n(H2O) ・・・(I)
(式中、M1はPd又はAgを表し、M2はSi、Ti又はZrを表し、M1がPdである場合、xは1であり、M1がAgである場合、xは2であり、nは1〜20の整数である)で表される複合金属酸化物水化物を用いることが特に好ましい。
【0054】
前記式(I)において、M1はPd又はAgであるが、Pdであることが好ましい。また、M2はSi、Ti又はZrであるが、Tiであることが好ましい。これにより、高いめっき析出能力を有する複合金属酸化物水水化物が得られる。
【0055】
前記複合金属酸化物水化物としては、例えばPdSiO3、Ag2SiO3、PdTiO3、Ag2TiO3、PdZrO3及びAg2TiO3などの水化物が挙げることができる。
【0056】
上述した複合金属酸化物水化物は、それぞれの相当する金属塩、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、相当する金属酸化物の水和物等を原料とし、これらを加熱し、加水分解する方法などを用いることによって得られる。
【0057】
また、複合金属酸化物としては、M1X・M22(M1、M2及びXについては、上記式(I)と同義である)で表されるものが好ましく用いられる。
【0058】
無電解めっき前処理剤に用いられる複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物の平均粒径は、0.01〜10μm、特に0.05〜3μmのものを用いるのが好ましい。これにより、凝集が抑制された高い分散性および触媒活性を有する複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物とすることができる。
【0059】
なお、本発明において、複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物の平均粒径は、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物を電子顕微鏡(好ましくは透過型電子顕微鏡)により倍率100万倍程度で観測し、少なくとも100個の粒子の面積円相当径を求めた数平均値とする。
【0060】
複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物の含有量は、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは10〜40質量部とするのが好ましい。含有量が、10質量部未満では十分なめっき析出能力が得られない恐れがあり、60質量部を超えるとこれらの複合金属酸化物の凝集に基づくスジやカブリが形成する恐れがある。
【0061】
無電解めっき前処理剤は、合成樹脂を含むことにより、透明基板及び導電層との密着性を向上させることができ、前処理層が剥離し難くなり、導電層をより精度よく形成することが可能となる。
【0062】
合成樹脂は、透明基板および導電層との密着性を確保できるものであれば、特に制限されない。好ましい例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、およびエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂などを挙げることができる。これらを用いることにより、透明基板および導電層との高い密着性が得られ、前処理層上に導電層を精度よく形成することができる。また、これらの合成樹脂は、1種単独で用いられてもよいほか、2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
アクリル樹脂としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル等のメタアクリル酸アルキルエステル類のホモポリマー、コポリマーが使用できるが、特にメチルメタクリレート、エチルメタクリレートまたはブチルメタクリレートなどのホモポリマー、コポリマーが好ましい。
【0064】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、2,6−ポリエチレンナフタレートなどを挙げることができる。
【0065】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ウレタン樹脂 、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリエステル系ウレタン樹脂が好ましい。
【0066】
上記ポリウレタン樹脂として、例えばポリエステル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応生成物からなるポリエステル系ウレタン樹脂を使用することができる。ポリエステル系ウレタン樹脂の平均分子量は、一般的に1万〜50万である。
【0067】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば低分子ジオールとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオールや、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。なお、低分子ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、グリセリン等のトリオール、ソルビトール等のヘキサオールを挙げることができる。前記ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類、等が単独使用又は2種以上で使用される。また、前記ラクトンには、ε−カプロラクトン等が使用される。
【0068】
そして、ポリエステル系ポリオールとしては、例えばポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンヘキサブチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等を挙げることができ、これらが単独使用又は2種以上で使用される。
【0069】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネート、n−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、m−或いはp−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等);脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等);脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等)のポリイソシアネート、或いはまた、これら各種イソシアネートの付加体、又は多量体等が、単独使用又は2種以上で使用される。
【0070】
ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との使用比率は、特に限定されないが、通常はポリエステル系ポリオール:ポリイソシアネート化合物=1:0.01〜0.5程度(モル比)の範囲内において、使用する化合物の種類等に応じて適宜決定すれば良い。
【0071】
ポリエステル系ウレタン樹脂を使用する場合、無電解めっき前処理剤は、ポリイソシアネート硬化剤を更に含むのが好ましい。ポリイソシアネート硬化剤としては、上述したポリイソシアネート化合物が用いられる。硬化剤の含有量は、ポリエステル系ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部、特に0.1〜1.0質量部とするのが好ましい。
【0072】
塩化ビニル樹脂としては、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、または従来公知の各種のコポリマー樹脂が挙げられ、特に限定されるものではない。コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポリマー樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリロニトルコポリマー樹脂などを挙げることができる。特に、塩化ビニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂などを使用するのが好ましい。
【0073】
合成樹脂としては、高い密着性が得られることから、活性水素を含有する官能基を分子末端に有するものが好ましい。活性水素を含有する官能基としては、活性水素を有していれば特に制限されず、1級アミノ基、2級アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドラジド基、アミジノ基、ヒドロキシル基、ヒドロペルオキシ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルバモイル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、チオール基、チオホルミル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピペリジル基、インダゾリル基、カルバゾリル基等を挙げることができる。1級アミノ基、2級アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホン酸基またはチオール基が好ましい。特に、1級アミノ基、2級アミノ基、アミド基またはヒドロキシル基が好ましい。なお、これらの基はハロゲン原子や炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されていてもよい。なかでも、ヒドロキシル基、カルボニル基、およびアミノ基が好ましい。
【0074】
無電解めっき前処理剤における合成樹脂の含有量は、無電解めっき前処理剤の全量に対して、40〜90質量%、特に60〜80質量%とすることが好ましい。これにより、高い密着性を有する前処理層を形成することが可能となる。
【0075】
また、無電解めっき前処理剤は、更に無機微粒子を含んでいてもよい。無機微粒子を含有することにより、印刷精度を向上することができ、より精度の高い導電層を形成することが可能となる。好ましい無機微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、マイカ、ガラスフレーク、金属ウィスカー、セラミッックウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、スメクタイト等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0076】
無機微粒子の平均粒径は、0.01〜5μm、特に0.1〜3μmであることが好ましい。無機微粒子の平均粒径が、0.01μm未満であると無機微粒子の添加により所望するほどの印刷精度の向上が得られない恐れがあり、5μmを超えるとスジやカブリが発生し易くなる恐れがある。
【0077】
無電解めっき前処理剤における無機微粒子の含有量は、合成樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部、特に1〜5質量部とすることが好ましい。これにより、高い印刷適正を持った前処理剤とすることができる。
【0078】
また、無電解めっき前処理剤は、更にチキソトロピック剤を含有してもよい。前記チキソトロピック剤によれば、前処理剤の流動性を調整することにより印刷精度を向上させることができ、より精度の高い導電層を形成することが可能となる。チキソトロピック剤としては、従来公知のものであれば使用できる。好ましくは、アマイドワックス、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等を使用することができる。
【0079】
無電解めっき前処理剤におけるチキソトロピック剤の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とすることが好ましい。これにより、高い印刷適正を持った前処理剤とすることができる。
【0080】
本発明の無電解めっき前処理剤は、黒色着色剤を更に含有していてもよい。これにより、印刷精度の向上とともに、得られる光透過性電磁波シールド材において透明基板側から見た際の防眩効果を付与することができる。
【0081】
好ましい黒色着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、黒鉛、および活性炭などを挙げることができる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等を挙げることができる。カーボンブラックの平均粒径は、好ましくは0.1〜1,000nm、特に好ましくは5〜500nmである。
【0082】
無電解めっき前処理剤における黒色着色剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。これにより、防眩効果を有する前処理層を精度よく形成することが可能となる。
【0083】
黒色着色剤を用いる場合、市販されている墨インキを用いて無電解めっき前処理剤を調製するのが好ましい。このような墨インキとしては、東洋インキ製造株式会社製 SS8911、十条ケミカル株式会社製 EXG−3590、大日精化工業株式会社製 NTハイラミック 795R墨などがある。例えば、東洋インキ製造株式会社製 SS8911の場合、溶剤中に、カーボンブラックの他、更に塩化ビニルおよびアクリル樹脂などを含んでいる。したがって、前記した市販品であれば、合成樹脂および黒色着色剤を含む無電解めっき前処理剤の調製を容易に行うことができる。
【0084】
また、無電解めっき前処理剤は、適当な溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール、アセトン、トルエン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどを挙げることができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0085】
無電解めっき前処理剤は、必要に応じて体質顔料、界面活性剤などの各種添加剤を更に含有していてもよい。
【0086】
無電解めっき前処理剤の粘度は、印刷により断線のない微細な線幅および間隙(ピッチ)を有する前処理層を得るためには、25℃において、好ましくは500〜5000cps、より好ましくは1000〜3000cpsとすることが好ましい。
【0087】
無電解めっき前処理剤を印刷した後、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃で加熱することにより乾燥させるのが好ましい。乾燥温度が80℃未満では、溶媒の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られない恐れがあり、160℃を超えると化合物の熱分解が生じる恐れがある。塗布後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は5秒〜5分が好ましい。
【0088】
前処理層の厚さは、一般に0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmとするのがよい。これにより、透明基板および導電層との高い密着性を確保することができる。
【0089】
複合金属酸化物等を含む無電解めっき前処理層を形成させた場合、メッシュ状の金属導電層を形成する工程の前に、前処理層62に還元処理を行うことが好ましい。還元処理することにより、前処理層62に含まれる無電解めっき触媒である複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物に含まれる金属種を還元し、活性成分である金属種のみを超微粒子状で均一に析出させることができる。このように還元析出した金属種は、高い触媒活性を有し且つ安定であることから、前処理層62と透明基板との密着性及び無電解めっきの析出速度を向上させ、更には複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物の使用量を少なくすることが可能となる。
【0090】
還元処理は、前処理層に含まれる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物を還元して金属化できる方法であれば特に制限されない。具体的には、(i)前記前処理層が形成された透明基板を、還元剤を含む溶液を用いて処理する液相還元法、(ii)前記前処理層が形成された透明基板を、還元性ガスと接触させる気相還元法などを用いることが好ましい。
【0091】
液相還元法において還元剤を含む溶液を用いて処理する方法として、例えば、前処理層が形成された透明基板を還元剤を含む溶液中に浸漬させる方法、透明基板の前処理層が形成された面に還元剤を含む溶液をスプレーする方法などを用いることができる。
【0092】
還元剤を含む溶液は、所定の還元剤を水などの溶媒に分散又は溶解させて調製されるものである。前記還元剤としては、特に制限されないが、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアクリルアミド、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ブドウ糖、アミノボラン、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン(TMAB)、ヒドラジン、ジエチルアミンボラン、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、イミダゾール、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸塩、硫酸ヒドロキシルアミン、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、ハイドロサルファイト(Na224:亜二チオン酸ナトリウムともいう)等を挙げることができる。還元剤は、後工程で用いる無電解めっき浴中に含まれる還元剤と同一のものを用いると、還元処理後の前記透明基板を水洗処理することなく無電解めっきを行うことができ、また無電解めっき浴の組成を変化させる恐れも少ない。
【0093】
還元剤としては、高い還元性が得られることから、アミノボラン、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ハイドロサルファイト、及びホルマリンを用いるのが好ましい。
【0094】
還元剤を含む溶液における還元剤の含有量は、0.01〜200g/L、特に0.1〜100g/Lとすることが好ましい。還元剤の濃度が低すぎる場合には十分に還元処理を行うのに所要時間が長くなる恐れがあり、還元剤の濃度が高すぎる場合には析出させためっき触媒が脱落する恐れがある。
【0095】
液相還元法において還元剤を含む溶液を用いて処理する方法としては、前処理層に含まれる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の高い還元性が得られることから、前処理層が形成された透明基板を還元剤を含む溶液中に浸漬させる方法を用いるのが好ましい。
【0096】
透明基板を浸漬させる場合、前記還元剤を含む溶液の温度は、20〜90℃、特に40〜80℃とするのが好ましい。また、浸漬時間は、少なくとも1分以上、好ましくは1〜10分程度とすればよい。
【0097】
一方、気相還元法を用いて還元処理を行う場合、還元性ガスとしては、水素ガス、ジボランガスなど、還元性を有する気体であれば特に制限されない。還元ガスを用いた還元処理時の反応温度および反応時間は、使用する還元ガスの種類などに応じて適宜決定すればよい。
【0098】
また、無電解めっき前処理剤として、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物または反応生成物、および貴金属化合物を含む液を用いることもできる。この場合、シランカップリング剤、アゾール系化合物、および貴金属化合物が、前処理層において原子レベルで分散しているので、スジやカブリの発生がない、微細なパターンを有するメッシュ状の前処理層を精度よく形成することができる点で好ましい。以下にこの場合の方法を詳細に説明する。
【0099】
シランカップリング剤は、一分子中に金属補足能を持つ官能基を有するものを用いるのが好ましい。これにより、無電解めっき触媒である貴金属化合物の活性を効果的に発現する電子状態、配向状態とすることが可能となり、被めっき材との高い密着性が得られる。
【0100】
シランカップリング剤として、エポキシ基含有シラン化合物を挙げることができる。エポキシ基含有シラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。特に、得られる前処理層が透明基板および導電層と高い密着性を示すことから、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが好ましい。
【0101】
アゾール系化合物としては、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、ベンダゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾールなどを挙げることができる。これらに制限されるものではないが、シランカップリング剤が有するエポキシ基などの官能基および貴金属化合物との反応性に優れることから、イミダゾールが特に好ましい。
【0102】
無電解めっき前処理剤において、シランカップリング剤およびアゾール系化合物は単に混合されているだけでもよいが、これらを予め反応させて反応生成物を形成してもよい。これにより、貴金属化合物を前処理層中に原子レベルでより高分散できるとともに、得られる前処理層の光透過性を向上させることができる。
【0103】
シランカップリング剤とアゾール系化合物とを反応させるには、例えば、80〜200℃でアゾール系化合物1モルに対して0.1〜10モルのシランカップリング剤を混合して5分〜2時間反応させるのが好ましい。その際、溶媒は、一般に不要であるが、水の他、クロロホルム、ジオキサンメタノール、エタノール等の有機溶媒を用いてもよい。このようにして得られた前記シランカップリング剤と前記アゾール系化合物との反応生成物に、貴金属化合物を混合することで、無電解めっき前処理剤が得られる。
【0104】
無電解めっき前処理剤に用いられる貴金属化合物は、無電解めっき処理において銅やアルミニウムなどの金属を選択的に析出・成長させることができる触媒効果を示すものである。例えば、高い触媒活性が得られることから、パラジウム、銀、白金、および金などの金属原子を含む化合物を用いるのが好ましい。このような化合物としては、上記金属原子の塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、アンモニウム塩などのアンミン錯体などが用いられるが、特にパラジウム化合物、中でも塩化パラジウムが好ましい。
【0105】
無電解めっき前処理剤は、アゾール系化合物および記シランカップリング剤に対し、貴金属化合物を、好ましくは0.001〜50モル%、より好ましくは0.1〜20モル%含むのがよい。貴金属化合物の濃度が、0.001モル%未満では十分な触媒活性が得られずに所望する厚さを有する導電層を形成できない恐れがあり、50モル%を超えると添加量の増加に見合った貴金属化合物による触媒効果が得られない恐れがある。
【0106】
また、無電解めっき前処理剤は、適当な溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール、アセトン、トルエン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどを挙げることができる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0107】
無電解めっき前処理剤には、必要に応じて体質顔料、界面活性剤、着色剤などの各種添加剤を更に含有させてもよい。
【0108】
無電解めっき前処理剤の粘度は、印刷により微細な線幅および間隙(ピッチ)を有する前処理層を得るためには、25℃において、好ましくは500〜5000cps、より好ましくは1000〜3000cpsとするのがよい。
【0109】
無電解めっき前処理剤を印刷した後、前述の複合金属酸化物等を含む無電解めっき前処理剤の場合と同様に乾燥する。
【0110】
次に、上記のようにして得られた無電解めっき前処理層上に無電解めっき処理することにより、メッシュ状の金属導電層を形成する工程を実施する。無電解めっき処理を行うことにより、微細な金属粒子が濃密な連続皮膜として沈積形成されて、前処理層上のみに選択的に金属導電層を得ることが可能となる。
【0111】
めっき金属は、導電性を有してめっき可能である金属であれば使用することができ、金属単体、合金、導電性金属酸化物等であってもよく、均一な金属薄膜又は一様に塗布された微細な微粒子等からなるものであってもよい。
【0112】
無電解めっきにおけるめっき金属としては、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、白金、銅、チタン、コバルト、鉛等を用いることができる。特に、高い電磁波シールド性が得られる導電層が得られることから、好ましくは、銀、銅又はアルミニウムが好ましく用いられる。これらのめっき金属を用いて形成される導電層は、前処理層との密着性に優れている上、光透過性と電磁波シールド性の両立に好適である。
【0113】
無電解めっきは、無電解めっき浴を用いて常法に従って常温または加温下で行うことができる。即ち、めっき金属塩、キレート剤、pH調整剤、還元剤などを基本組成として含むめっき液を建浴したものにめっき基材を浸漬して行うか、構成めっき液を2液以上と分けて添加方式でめっき処理を施すなど適宜選択すれば良い。
【0114】
無電解めっきとして一例を挙げると、Cuからなる導電層を形成する場合、硫酸銅等の水溶性銅塩1〜100g/L、特に5〜50g/L、ホルムアルデヒド等の還元剤0.5〜10g/L、特に1〜5g/L、EDTA等の錯化剤20〜100g/L、特に30〜70g/Lを含み、pH12〜13.5、特に12.5〜13に調整した溶液に、前処理層及びアンカーコート層を有する透明基板を50〜90℃、30秒〜60分浸漬する方法を採用することができる。
【0115】
無電解めっきをする際に、めっきされる基板を揺動、回転させたり、その近傍を空気撹拌させたりしてもよい。
【0116】
メッシュ状(格子状)の金属導電層の線幅は、一般に20μm以下、好ましくは5〜15μmで、特に5〜12μmを有する。線のピッチは200μm以下が好ましい。また、開口率は75〜95%であることが好ましく、特に80〜95%である。
【0117】
導電層の線で囲まれた開口部の形状は、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。
【0118】
更に、メッシュ状の導電層上に電気めっき処理を行って導電層上に金属めっき層を形成しても良い。また、この金属めっき層上に前述の防眩層を形成しても良いし、後述の黒化処理を行っても良い。
【0119】
めっき処理に用いる材質としては、金属めっき層が優れた電磁波シールド効果を有するものであればよく特に制限はないが、例えば、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、銀、及び、金等の金属が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上の合金として使用してもよい。
【0120】
金属めっき層の厚さは、0.1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。前記厚さが0.1μm未満であると、充分な電磁波シールド効果を付与できないことがある一方、10μmを超えると、めっきは、めっき層形成に際し、巾方向にも広がることから、線幅が太くなり、導電層の開口率が低くなってしまうことがある。
【0121】
金属めっき層における表面抵抗率としては、3Ω/□以下が好ましく、1Ω/□以下がより好ましい。メッキ層の表面抵抗率が3Ω/□を超えると、導電性が不充分で、電磁波シールド効果が不充分となることがある。
【0122】
金属めっき層を形成した後、防眩性を付与させても良い。この防眩化処理を行う場合、メッシュ状導電層の表面に黒化処理を行っても良い。例えば、導電層又はめっき層の酸化処理、硫化処理、クロム合金等の黒色めっき、黒又は暗色系のインキの塗布等を行うことができる。
【0123】
黒化処理は、導電層又はめっき層の金属の酸化処理又は硫化処理によって行うことが好ましい。特に酸化処理は、より優れた防眩効果を得ることができ、更に廃液処理の簡易性及び環境安全性の点からも好ましい。
【0124】
黒化処理として酸化処理を行う場合には、黒化処理液として、一般には次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、ペルオキソ二硫酸と水酸化ナトリウムの混合水溶液等を使用することが可能であり、特に経済性の点から、次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液を使用することが好ましい。
【0125】
黒化処理として硫化処理を行う場合には、黒化処理液として、一般には硫化カリウム、硫化バリウム及び硫化アンモニウム等の水溶液を使用することが可能であり、好ましくは、硫化カリウム及び硫化アンモニウムであり、特に低温で使用可能である点から、硫化アンモニウムを使用することが好ましい。
【0126】
黒化処理層の厚さは、特に制限されないが、一般に0.01〜1μm、好ましくは0.01〜0.5μmである。前記厚さが、0.01μm未満であると、光の防眩効果が充分でない恐れがあり、1μmを超えると、斜視した際の見かけ上の開口率が低下する恐れがある。
【0127】
また、図7には本発明の導電層の形成方法(C)を説明する概略断面図を示す。まず、(C1)に示すように、本発明の方法に従い、グラビア印刷によって透明フィルム等の透明基板71上に水等の溶剤に対して可溶な物質を用いてドット72をドット状に印刷する。次いで、(C2)に示すように透明基板71のドット72上及びドット72間の透明基板露出面の全てを覆うように導電層形成材料によって導電性被覆73を形成する。次に、(C3)に示すように透明基板71を水等の溶剤によって洗浄する。この際、必要に応じて、超音波照射や、スポンジ、ブラシ等で擦るなどの溶解促進手段を併用しても良い。これにより可溶性のドット72が溶解し、このドット72上の導電層形成材料が剥がれて除去され、ドット72同士の間の領域に形成された導電層形成材料からなるメッシュ状のパターンを有する導電層74が透明基板上に残る。そして、必要に応じて、仕上げ洗浄し、乾燥することで導電層74を有する電磁波シールド性光透過窓材を製造する。本発明のグラビアロールを用いることで、高精度のドット式のパターンを印刷することができるので、高精度に導電層を形成することができる。本方法(C)では、ドット72間の間隙を狭くすることで、線幅の小さいメッシュ状の導電層が形成される。また、ドット72の面積を広くすることで、開口率の大きなメッシュ状の導電層が形成される。ドット72を形成するための水等の溶剤に可溶な物質は、微粒子を分散させる必要のないものであり、低粘性のもので良く、微細なドット状のパターン印刷をすることができる。
【0128】
使用する溶剤としてはその溶剤に対して可溶な物質との関係、及び透明基材に影響を与えない条件を満たすものであれば何れでも良い。エタノール等の有機溶剤であっても良いが、安価である点、環境への影響が小さい点から水が好ましい。水は、通常の水の他、酸、アルカリ又は界面活性剤を含んだ水溶液であっても良い。
【0129】
溶剤に対して可溶な物質としては、前記溶剤との関係で使用できるものであれば何れでも良い。溶剤を水とする場合はポリビニルアルコールなどの水溶性の高分子材料が好ましい。この物質には印刷仕上がり状況を確認し易くするため、顔料や染料を混合しても良い。
【0130】
ドット72はそれらの間の透明基板の露出領域がメッシュ状になるように印刷される。好ましくは、露出領域の線幅が30μm以下になるように印刷される。ドット72の性状は円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。ドット72の印刷厚みは、特に限定されるものではないが、通常は0.1〜5μm程度である。
【0131】
ドット状の印刷を行った後、好ましくは乾燥し、導電層形成材料によって導電性被覆73を形成する。導電層形成材料としては、特に制限はないが、アルミニウム、二ッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、錫、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属または合金、或いはITO(酸化インジウム錫)などの導電性酸化物が好ましい。
【0132】
導電性被覆73の厚さは薄過ぎると電磁波シールドの性能が不足し、厚過ぎると電磁波シールド性光透過窓材の厚さに影響を及ぼし、視野角を狭くしてしまうことから、0.5〜100μm程度とするのが好ましい。
【0133】
導電性被覆73の形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着などの気相めっき法、液相めっき(電解めっき、無電解めっき)、印刷、塗布等何れでも良いが、ドット72を破損する可能性が低い、広義の気相めっき法(スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着)又は液相めっきが好ましい。
【0134】
この導電性被覆73の形成後、前述の通り、溶剤、好ましくは水を用いてドット72を除去し必要に応じて乾燥し、導電層74を形成させる。
【0135】
本発明の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法において、導電層形成材料、無電解めっき前処理剤又は溶剤に対し可溶な物質を印刷する透明基板としては、透明性および可とう性を備え、その後の処理に耐えるものであれば特に制限はない。透明基板の材質としては、例えば、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる、これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるPET、PC、PMMAが好ましい。また、透明基板は、これらの材質からなるシート又はフィルムとして用いられる。
【0136】
透明基板の厚さは特に限定されないが、光透過性電磁波シールド材の光透過性を維持するという観点からすると薄いほど好ましく、通常は、使用時の形態や必要とされる機械的強度に応じて0.05〜5mmの範囲で適宜、厚さが設定される。
【0137】
本発明の透明基板として長尺状プラスチックフィルムを用い、ロール・トゥ・ロール方式で、長尺状プラスチックフィルムを連続的に搬送させながら、導電性インキの印刷、乾燥又は前処理層の印刷、乾燥、そして無電解めっき処理等を連続的に行うことにより、或いは溶剤に可溶な物質によるドット式印刷、導電性被覆、溶剤によるドットの除去等を連続的に行うことにより、簡便に光透過性電磁波シールド材を得ることが好ましい。
【0138】
こうして得られる光透過性電磁波シールド材は、接着剤層の他、更にハードコート層、反射防止層、色調補正フィルタ層、近赤外線吸収層などを有していてもよい。これらの各層の積層の順序は、目的に応じて決定される。また、ディスプレイ用フィルタには、電磁波シールド機能を高めるために、PDP本体のアース電極と接続するための電極を設けてもよい。
【0139】
好ましい光透過性電磁波シールド材としては、得られたメッシュ状導電層の表面に、例えば、ハードコート層、及び低屈折率層等の反射防止層が設けられ、裏面に近赤外線吸収層が設けられたもの、或いはメッシュ状導電層の表面に、粘着剤層を介して、或いは直接近赤外線吸収層が設けられ、裏面にハードコート層、及び低屈折率層等の反射防止層が設けられたものを挙げることができる。
【0140】
本発明の光透過性電磁波シールド材は、光透過性が要求される用途、例えば電磁波を発生する各種電気機器のLCD、PDP、CRT等のディスプレイ装置のディスプレイ面、又は、施設や家屋の透明ガラス面や透明パネル面に好適に適用される。本発明の光透過性電磁波シールド材は、高精度の導電層を有しているので、前述したディスプレイ装置のディスプレイ用フィルタ、特にPDP用フィルタに好適に用いられる。
【実施例】
【0141】
以下、本発明を実施例により説明する。
(1)グラビア印刷用グラビアロールの作成
(実施例1)
幅900mmのグラビア印刷用グラビアロールの外周面にメッシュ式パターンの凹凸領域を880mmで形成し、図1に示したようなグラビアロールを作製した。非凹凸領域13、14はグラビアロールの端部のみとし、両非凹凸領域の幅はどちらも10mmで同一とした。凹凸領域の幅方向の長さの合計はグラビアロールの幅の97%であった。
【0142】
(実施例2)
凹凸領域をドット式パターンで形成した他は(実施例1)と同様に作成した。
【0143】
(実施例3)
幅900mmのグラビア印刷用グラビアロールの外周面にドット式パターンの凹凸領域を一方の最端部からもう一方の最端部までの長さを880mmとして、図3に示したようなグラビアロールを作成した。グラビアロールの端部の非凹凸領域13、14の幅はどちらも10mmとし、端部から幅方向へ内側の非凹凸領域15、16は、図4に示した圧銅ロール41(幅720mm)の端部位置と一致する位置a、bを含み、15mmの幅で設けた。凹凸領域の幅方向の長さの合計はグラビアロールの幅の94%であった。
【0144】
(比較例1)
幅900mmのグラビア印刷用グラビアロールの外周面にメッシュ式パターンの凹凸領域を700mmで形成した。非凹凸領域はグラビアロールの両端部にどちらも100mmの幅で同一とした。凹凸領域の幅はグラビアロールの幅の77%であった。
【0145】
(比較例2)
凹凸領域をドット式パターンで形成した他は(比較例1)と同様に作成した。
【0146】
(2)グラビア印刷試験1
実施例1及び比較例1のグラビアロールをグラビア印刷機にセットし、印刷試験を行った。圧銅ロールは幅800mm、透明基板は幅820mm、厚さ100μmのPETフィルムを用いた。導電層形成材料は導電性インキ(DW250H7I03(東洋紡社製))を用いて、印刷速度は5m/分で印刷した。ドクターブレードの振動の発生、印刷品位を目視観察した。印刷品位については圧銅ロールの端部に係る領域及び凹凸領域の端部に係る領域の品位について3段階評価(メッシュ交点の乱れが交点100個あたり、○:10個以下、△:10個を超え20個以下、×:20個を超える)で評価した。
【0147】
(3)グラビア印刷試験2
実施例2、実施例3及び比較例2のグラビアロールをグラビア印刷機にセットし、印刷試験を行った。圧銅ロールの幅は720mm、透明基板は幅740mm、厚さ100μmのPETフィルムを用いた。ドット形成するための溶剤(水)に可溶な物質として20質量%ポリビニルアルコール水溶液(印刷仕上がりの確認のため、黒色着色剤(カーボンブラック)1質量%添加)を用いて、印刷速度70m/分で印刷した。ドクターブレードの振動の発生、印刷品位を目視観察した。印刷品位については圧銅ロールの端部に係る領域及び凹凸領域の端部に係る領域の品位について3段階評価(ドットの乱れがドット100個あたり、○:10個以下、△:10個を超え20個以下、×:20個を超える)で評価した。
【0148】
(4)グラビア印刷試験結果
表1にグラビア印刷試験結果を示した。メッシュ式の印刷試験においては比較例1でドクターブレードの振動が発生したのに対し、実施例1では振動が発生しなかった。印刷品位は比較例1において凹凸領域の端部においてやや印刷品位が乱れるところがあったが、実施例1では印刷品位の乱れは発生しなかった。
【0149】
ドット式の印刷試験においては比較例2ではドクターブレードの振動が発生したのに対し、実施例2、実施例3では振動が発生しなかった。印刷品位は比較例1において凹凸領域の端部において印刷品位の乱れが発生した。実施例2では圧銅ロールの端部に係る領域においてやや乱れがあったが、実施例3では印刷品位の乱れは発生しなかった。
【0150】
【表1】

【0151】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明のグラビア印刷用グラビアロールの実施形態の1例を示す正面図である。
【図2】図1に係る本発明のグラビアロールを含むグラビア印刷機における、グラビアロール、圧胴ロール及びグラビア印刷によって印刷される被印刷基板との関係を示す斜視図である。
【図3】本発明のグラビア印刷用グラビアロールの実施形態の別の1例を示す正面図である。
【図4】図3に係る本発明のグラビアロールを含むグラビア印刷機における、グラビアロール、圧胴ロール及びグラビア印刷によって印刷される被印刷基板との関係を示す斜視図である。
【図5】本発明の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法の実施形態の1例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法の別の1例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法の別の1例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の課題を説明するため、グラビア印刷機において、グラビアロールの(A)凹凸領域、(B)非凹凸領域における、ドクターブレードとの関係を示す参考図である。
【符号の説明】
【0153】
11 グラビアロール
12 凹凸領域
13、14、15、16 非凹凸領域
21 ドクターブレード
22 インキ
31 被印刷基板
41 圧胴ロール
51、61、71 透明基板17 凸部表面
52、74 導電層
62 前処理層
63 金属導電層
72 ドット
73 導電性被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア印刷に用いられるグラビアロールであって、該グラビアロールの外周面に微細な凹凸が形成された凹凸領域が設けられ、該凹凸領域のグラビアロールの幅方向における長さの合計が該グラビアロールの幅の90%以上であることを特徴とするグラビアロール。
【請求項2】
前記グラビアロール外周面の凹凸領域の幅が、グラビア印刷によって印刷されるべき領域の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載のグラビアロール。
【請求項3】
前記グラビアロール外周面の両端部近傍に微細な凹凸領域が形成されていない非凹凸領域が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグラビアロール。
【請求項4】
前記グラビアロール外周面の両非凹凸領域の幅が同一であることを特徴とする請求項3に記載のグラビアロール。
【請求項5】
前記グラビアロール外周面の非凹凸領域の幅が20mm未満であることを特徴とする請求項3又は4に記載のグラビアロール。
【請求項6】
前記グラビアロール外周面に、凹凸領域の両端部から所定距離離れた所定位置に、その所定位置を含む非凹凸領域が設けられ、且つその所定位置が、グラビアロールに対して幅方向中心線が一致した状態で対向して使用される圧胴ロールの各端部の端部位置である請求項1〜5のいずれか1項に記載のグラビアロール。
【請求項7】
前記グラビアロール外周面の非凹凸領域の幅が1〜20mmである請求項6に記載のグラビアロール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のグラビアロール及びグラビアロールに対して幅方向中心線が一致した状態で対向して使用される圧胴ロールを含むグラビア印刷機。
【請求項9】
少なくとも請求項1〜7いずれか1項に記載のグラビアロールを用いることを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項10】
更に、グラビア印刷によって印刷される被印刷基板が、前記グラビアロール外周面の凹凸領域の幅より小さい幅であり、前記グラビアロールに対して幅方向中心線が一致した状態で対向して使用される圧胴ロールの幅が前記被印刷基板の幅より小さい幅であることを特徴とする請求項9に記載のグラビア印刷方法。
【請求項11】
少なくとも請求項1〜7いずれか1項に記載のグラビアロールを用いるグラビア印刷によって、導電層形成材料を透明基板の表面にメッシュ式でパターン印刷して導電層を形成する工程を含む電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項12】
前記導電層形成材料が導電性粒子及びバインダ樹脂を含む導電性インキである請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
少なくとも請求項1〜7いずれか1項に記載のグラビアロールを用いるグラビア印刷によって、無電解めっき前処理剤を透明基板表面にメッシュ式でパターン印刷して前処理層を形成する工程、及び、
前処理層上に無電解めっき処理により金属導電層を形成する工程、
を含む電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項14】
前記無電解めっき前処理剤が、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と合成樹脂を含む液である請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記無電解めっき前処理剤が、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む液である請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
無電解めっきを行った後、更に、電解めっきを行う請求項13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
少なくとも請求項1〜7いずれか1項に記載のグラビアロールを用いるグラビア印刷によって、溶剤に対して可溶な物質を透明基板の表面にドット式でパターン印刷してドットを形成する工程、
前記透明基板の表面に該溶剤に対して不溶な導電層形成材料により導電層を形成する工程、及び
前記透明基板を該溶剤に接触させて該ドット及びドット上の導電層を除去する工程、
を含む電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項18】
前記溶剤が水であって、前記溶剤に対して可溶な物質が水溶性高分子材料である請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された電磁波シールド性光透過窓材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−269304(P2009−269304A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122250(P2008−122250)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】