説明

グラフェン製造用銅箔及びグラフェンの製造方法

【課題】大面積のグラフェンを高品質かつ低コストで生産可能なグラフェン製造用銅箔及びそれを用いたグラフェンの製造方法を提供する。
【解決手段】表面粗さRzが0.5μm以下であり、表面において(111)面の割合が60%以上であり、Cuめっき層及び/又はCuスパッタ層からなるグラフェン製造用銅箔10であり、又、所定の室内に加熱した前記グラフェン製造用銅箔10を配置すると共に、水素ガスと炭素含有ガスを供給し、グラフェン製造用銅箔10の銅めっき層の表面にグラフェンを形成するグラフェン形成工程と、グラフェンの表面に転写シートを積層し、グラフェンを転写シート上に転写しながら、グラフェン製造用銅箔10をエッチング除去するグラフェン転写工程とを有する、グラフェン20の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンを製造するための銅箔及びグラフェンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラファイトは平らに並んだ炭素6員環の層がいくつも積み重なった層状構造をもつが、その単原子層〜数原子層程度のものはグラフェン又はグラフェンシートと呼ばれる。グラフェンシートは独自の電気的、光学的及び機械的特性を有し、特にキャリア移動速度が高速である。そのため、グラフェンシートは、例えば、燃料電池用セパレータ、透明電極、表示素子の導電性薄膜、無水銀蛍光灯、コンポジット材、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアーなど、産業界での幅広い応用が期待されている。
【0003】
グラフェンシートを製造する方法として、グラファイトを粘着テープで剥がす方法が知られているが、得られるグラフェンシートの層数が一定でなく、大面積のグラフェンシートが得難く、大量生産にも適さないという問題がある。
そこで、シート状の単結晶グラファイト化金属触媒上に炭素系物質を接触させた後、熱処理することによりグラフェンシートを成長させる技術(化学気相成長(CVD)法)が開発されている(特許文献1)。この単結晶グラファイト化金属触媒としては、Ni、Cu、Wなどの金属基板が記載されている。
同様に,NiやCuの金属箔やSi基板上に形成した銅層上に化学気相成長法でグラフェンを製膜する技術が報告されている。なお,グラフェンの製膜は1000℃程度で行われる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−143799号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】SCIENCE Vol.324 (2009) P1312-1314
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように単結晶の金属基板を製造することは容易でなく極めて高コストであり、又、大面積の基板が得られ難く、ひいては大面積のグラフェンシートが得難いという問題がある。又、Niの金属箔を用いて化学気相成長法でグラフェンを製膜すると、Ni中に炭素が固溶し、その後冷却する過程でNi中の炭素が再析出するため、グラフェンの層数が不均一になるという問題がある。
一方,非特許文献1には、Cuを基板として使用することが記載されているが,Cu箔上では短時間にグラフェンが面方向に成長せず,Si基板上に形成したCu層を焼鈍で粗大粒として基板としている。この場合、グラフェンの大きさはSi基板サイズに制約され,製造コストも高い。
そこで、本発明者はグラフェン成長用の基材である銅箔を鋭意検討した結果、銅箔表面を極めて平滑にし、かつ銅層の面方位を均一にした銅箔を発明した。上記銅箔を用いることで、グラフェンの成長を妨げる因子を抑制し、銅箔表面に均一なグラフェンが製膜されるものある。
すなわち、本発明は、大面積のグラフェンを高品質かつ低コストで生産可能なグラフェン製造用銅箔、及びグラフェンの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のグラフェン製造用銅箔は、表面粗さRzが0.5μm以下であり、表面において(111)面の割合が60%以上であり、Cuめっき層及び/又はCuスパッタ層からなる。
【0008】
本発明のグラフェン製造用銅箔は、ポリイミドフィルムのプラズマ処理された面に剥離層を形成し、該剥離層上に前記Cuめっき層及び/又は前記Cuスパッタ層を形成した後、前記ポリイミドフィルム及び前記剥離層を剥離して製造されたものであることが好ましい。
前記剥離層がニッケル、クロム、コバルト、ニッケル合金、クロム合金、コバルト合金のいずれか1種であることが好ましい。
【0009】
又、本発明のグラフェンの製造方法は、前記グラフェン製造用銅箔を用い、所定の室内に、加熱した前記グラフェン製造用銅箔を配置すると共に、水素ガスと炭素含有ガスを供給し、前記グラフェン製造用銅箔の前記銅めっき層の表面にグラフェンを形成するグラフェン形成工程と、前記グラフェンの表面に転写シートを積層し、前記グラフェンを前記転写シート上に転写しながら、前記グラフェン製造用銅箔をエッチング除去するグラフェン転写工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大面積のグラフェンを高品質かつ低コストで生産可能とする銅箔が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るグラフェンの製造方法を示す工程図である。
【図2】実施例1のグラフェン製造用銅箔を示す断面図である。
【図3】実施例2のグラフェン製造用銅箔を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るグラフェン製造用銅箔及びグラフェンの製造方法について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%を示すものとする。
【0013】
本発明のグラフェン製造用銅箔は、表面粗さRzが0.5μm以下であり、表面において(111)面が60%以上を占め、Cuめっき層及び/又はCuスパッタ層からなる。これは、銅箔表面が平滑であるほど、グラフェンの成長を妨げる段差が少なくなり、グラフェンが銅箔表面に均一に製膜されるためである。又、表面において(111)面の割合を60%として(111)面への配向を高くすることにより、その上にグラフェンが安定して結晶成長する。
なお、銅箔表面において(111)面の割合が70%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることがより好ましい。
なお、銅箔表面において(111)面の割合の上限は特に設ける必要は無い。
なお、RzはJIS B0601−1994に準拠して十点平均粗さを測定する。又、電解銅箔の場合、Rzはドラム回転方向に垂直な方向で測定、圧延銅箔の場合、Rzは圧延垂直方向で測定する。
また、銅箔の表面のRzは特に限定されないが、製造性等を考慮すると0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上である。
【0014】
本発明のグラフェン製造用銅箔の組成としては、純度99.8%以上であることが好ましく、又、銅箔の厚みは特に制限されないが、一般的には5〜150μmである。さらに、ハンドリング性を確保しつつ、後述するエッチング除去を容易に行うため、銅箔の厚みを12〜50μmとすると好ましい。銅箔の厚みが12μm未満であると、破断し易くなってハンドリング性に劣り、厚みが50μmを超えるとエッチング除去がし難くなる場合がある。
【0015】
ところで、銅箔単体の表面のRzを0.5μm以下に平滑にするのは容易ではない。例えば、電解銅箔のドラム面(銅箔が析出する陰極ドラム側)は反対面より平滑であるが、それでもRzが1.2〜1.4μm程度である。また、圧延銅箔のRzは0.7μm程度である。
そこで、本発明において、表面が平滑であるプラスチックフィルムの表面粗さを利用し、例えば市販のポリイミドフィルムをプラズマ処理し、そのプラズマ処理面に剥離層となる金属層をスパッタした後、更にこの剥離層(金属層)表面にCuめっき層及び/又はCuスパッタ層を形成するとよい。そして、その後、ポリイミドフィルム及び剥離層(金属層)を剥離すると、表面が平滑なCuめっき層及び/又はCuスパッタ層からなる銅箔が得られる。
【0016】
ポリイミドフィルムに使用する材料は、特に制限はない。例えば、宇部興産製ユーピレックス、DuPont/東レ・デュポン製カプトン、カネカ製アピカルなどが上市されているが、いずれのポリイミドフィルムをも適用できる。このような特定の品種に限定されるものではない。
次に、ポリイミドフィルム表面をプラズマ処理することにより、フィルム表面の汚染物質の除去と表面の改質を行い、その結果としてフィルムの表面粗さが大きくなる。プラズマ処理後のポリイミドフィルムの表面のRzは、材質の違い及び初期表面粗さの違いにもよるが、Rz=2.5〜500nmの範囲で調整することができる。又、プラズマ処理条件と表面粗さとの関係を予め取得することにより、所定の条件でプラズマ処理して所望の表面粗さを有するポリイミドフィルムを得ることができる。
【0017】
次に、ポリイミドフィルムのプラズマ処理された面にスパッタで剥離層(金属層)を形成する。ここで、剥離層(金属層)としては、ニッケル、クロム、コバルト、ニッケル合金、クロム合金、コバルト合金のいずれか1種を使用することができるが、自身の表面にめっき及び/又はスパッタが可能で表面に酸化物を形成する金属や合金であれば、この限りでない。これらはいずれもポリイミドフィルム層との密着性をプラズマ処理により高めることができる材料であり、さらに酸化すれば剥離層になることが可能である。そのため、上記以外の材料の選択は、本願発明において否定されるものでないことは理解されるべきことである。
【0018】
そして、上記剥離層(金属層)は大気中に放置することにより表面を酸化することになるが、好ましくは酸素雰囲気中に曝すことにより、表面に酸化物層を有する剥離層(金属層)とした後、その上にCuめっき層及び/又はCuスパッタ層を形成する。
Cuスパッタのスパッタ条件は例えば、Cuターゲットを用いたArガス中で、放電電圧500〜700V、放電電流15〜25A、真空度3.9〜6.7x10-2Paとすることができる。
さらに、Cuスパッタ層上にCuめっき層を形成することで所望の銅厚を得ることができる。
なお、FIB等によりCu層の断面の金属組織の観察をすることにより、Cuスパッタ層、Cuめっき層であるか否かを判定することができる。一般的にCuスパッタ層は再結晶を起こしにくいため、結晶粒は微細である。また、Cuめっき層は再結晶を起こすため、Cuめっき層の結晶粒はCuスパッタ層で観察される結晶粒よりも大きい場合が多い。
Cuめっき層は、公知の光沢銅めっきにより形成することができる。光沢銅めっきは、市販の光沢剤を含む硫酸銅めっき浴を用いて電気めっきすることにより形成することができる。めっき浴組成の一例としては、Cuイオン:70〜100g/L、硫酸:80〜100g/L、Clイオン:40〜80mg/L、ビス(3−スルフォプロピル)ジスルファイド2ナトリウム:10〜30mg/L、ジアルキルアミノ基含有重合体(重量平均分子量8500):10〜30mg/Lが挙げられる。又、めっき条件は、例えば平均電流密度:20〜100A/dm2、めっき浴温度:45〜65℃とすることができる。Cuめっき層の厚みは、例えば10〜20μmとすることができる。
【0019】
次に、ポリイミドフィルムに密着した剥離層(金属層)を剥離すると、Cuめっき層及び/又はCuスパッタ層が表面となる銅箔が残る。この剥離は、例えば剥離層を介してCuめっき層及び/又はCuスパッタ層を形成したポリイミドフィルム、又はCuスパッタ層の上にCuめっき層を形成したポリイミドフィルムを連続的に巻き取った後、巻き替え機でポリイミドフィルム及び剥離層(金属層)側と銅箔側とを剥離しながら巻き取ることでロール形態の銅箔を得ることができる。
【0020】
以上のように規定したグラフェン製造用銅箔を用いることで、大面積のグラフェンを高品質かつ低コストで生産することができる。
【0021】
<グラフェンの製造方法>
次に、図1を参照し、本発明の実施形態に係るグラフェンの製造方法について説明する。
まず、室(真空チャンバ等)100内に、上記した本発明のグラフェン製造用銅箔10を配置し、グラフェン製造用銅箔10をヒータ104で加熱すると共に、室100内を減圧又は真空引きする。そして、ガス導入口102から室100内に炭素含有ガスGを水素ガスと共に供給する(図1(a))。炭素含有ガスGとしては、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、アルコール等が挙げられるがこれらに限定されず、これらのうち1種又は2種以上の混合ガスとしてもよい。又、グラフェン製造用銅箔10の加熱温度は炭素含有ガスGの分解温度以上とすればよく、例えば1000℃以上とすることができる。又、室100内で炭素含有ガスGを分解温度以上に加熱し、分解ガスをグラフェン製造用銅箔10に接触させてもよい。このとき、グラフェン製造用銅箔10を加熱することで、銅めっき層が半溶融状態になって銅箔表面の凹部に流動し、グラフェン製造用銅箔10の最表面の凹凸が小さくなる。そして、このように平滑となったグラフェン製造用銅箔10の表面に分解ガス(炭素ガス)が接触し、グラフェン製造用銅箔10の表面にグラフェン20を形成する(図1(b))。
【0022】
そして、グラフェン製造用銅箔10を常温に冷却し、グラフェン20の表面に転写シート30を積層し、グラフェン20を転写シート30上に転写する。次に、この積層体をシンクロール120を介してエッチング槽110に連続的に浸漬し、グラフェン製造用銅箔10をエッチング除去する(図1(c))。このようにして、所定の転写シート30上に積層されたグラフェン20を製造することができる。
さらに、グラフェン製造用銅箔10が除去された積層体を引き上げ、グラフェン20の表面に基板40を積層し、グラフェン20を基板40上に転写しながら、転写シート30を剥がすと、基板40上に積層されたグラフェン20を製造することができる。
【0023】
転写シート30としては、各種樹脂シート(ポリエチレン、ポリウレタン等のポリマーシート)を用いることができる。グラフェン製造用銅箔10をエッチング除去するエッチング液としては、例えば硫酸溶液、過硫酸ナトリウム溶液、過酸化水素、及び過硫酸ナトリウム溶液又は過酸化水素に硫酸を加えた溶液を用いることができる。又、基板40としては、例えばSi、 SiC、Ni又はNi合金を用いることができる。
【実施例】
【0024】
<実施例1>
図2に示すように、ポリイミドフィルム2(宇部興産社製のユーピレックス-Sフィルム;厚み35μm)を真空装置内にセットし、真空排気後、酸素を用いてプラズマ処理を実施した。
続いてプラズマ処理したフィルム2の片面に、Crスパッタリングにより剥離層4を10nm形成した。その後、Cr層を酸素ガス雰囲気のチャンバー内で処理し、表面にクロム酸化物を形成させた。
さらに、Cr剥離層4の表面にCuをスパッタしてCuスパッタ層10を厚み9μm形成した(図2)。スパッタ条件は、Cuターゲットを用いたArガス中で、放電電圧500V、放電電流15A、真空度5x10-2Paとした。
次に、Cuスパッタ層10を形成したポリイミドフィルムを連続的に巻き取った後、巻き替え機でポリイミドフィルム2及び剥離層4側と、Cuスパッタ層10とを剥離しながら巻き取ることで、スパッタ銅箔(Cuスパッタ層)10を得た。
【0025】
<実施例2>
図3に示すように、実施例1のCuスパッタ層10Aを厚み3μmとし、そのCuスパッタ層10A上にCuをめっきしてCuめっき層10Bを厚み9μm形成したことにより総銅厚を12μmにしたこと以外は、実施例1と同様にしてCuスパッタ/めっき銅箔10を得た(図3)。このCuめっき銅箔10は、Cuスパッタ層10AとCuめっき層10Bからなる。
めっき浴組成は、Cuイオン: 100g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、ビス(3−スルフォプロピル)ジスルファイド2ナトリウム30mg/L、ジアルキルアミノ基含有重合体(重量平均分子量8500)30mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を50A/dm2とした。
【0026】
<実施例3>
図3に示すように、実施例1のCuスパッタ層10Aを厚み3μmとし、そのCuスパッタ層10A上にCuをめっきしてCuめっき層10Bを厚み15μm形成したことにより総銅厚を18μmにしたこと以外は、実施例1と同様にしてCuめっき銅箔10を得た(図3)。このCuめっき銅箔10は、Cuスパッタ層10AとCuめっき層10Bからなる。
めっき浴組成は、Cuイオン: 90g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、ビス(3−スルフォプロピル)ジスルファイド2ナトリウム50mg/L、ジアルキルアミノ基含有重合体(重量平均分子量8500)40mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を55A/dm2とした。
【0027】
<実施例4>
図3に示すように、実施例1のCuスパッタ層10Aを厚み9μmとし、そのCuスパッタ層10A上にCuをめっきしてCuめっき層10Bを厚み12μm形成したことにより総銅厚を21μmにしたこと以外は、実施例1と同様にしてCuめっき銅箔10を得た(図3)。このCuめっき銅箔10は、Cuスパッタ層10AとCuめっき層10Bからなる。
めっき浴組成は、Cuイオン: 100g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、ビス(3−スルフォプロピル)ジスルファイド2ナトリウム30mg/L、ジアルキルアミノ基含有重合体(重量平均分子量8500)30mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を50A/dm2とした。
【0028】
<実施例5>
図3に示すように、実施例1のCuスパッタ層10Aを厚み1μmとし、そのCuスパッタ層10A上にCuをめっきしてCuめっき層10Bを厚み12μm形成したことにより総銅厚を13μmにしたこと以外は、実施例1と同様にしてCuめっき銅箔10を得た(図3)。このCuめっき銅箔10は、Cuスパッタ層10AとCuめっき層10Bからなる。
めっき浴組成は、Cuイオン: 100g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、ビス(3−スルフォプロピル)ジスルファイド2ナトリウム30mg/L、ジアルキルアミノ基含有重合体(重量平均分子量8500)30mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を48A/dm2とした。
【0029】
<比較例1>
Cuめっき浴の組成を以下のものに変更したこと以外は、実施例2と同様にしてCuめっき銅箔を得た(図3)。
めっき浴組成は、Cuイオン: 100g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、メルテックス社製カパグリームCLX(製品名、光沢剤の1種):10mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を50A/dm2とした。
【0030】
<比較例2>
Cuめっき浴の組成を以下のものに変更したこと以外は、実施例2と同様にしてCuめっき銅箔を得た(図3)。
めっき浴組成は、Cuイオン: 100g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、メルテックス社製カパグリームHGX(製品名、光沢剤の1種):10mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を50A/dm2とした。
【0031】
<比較例3>
Cuめっき浴の組成を以下のものに変更したこと以外は、実施例2と同様にしてCuめっき銅箔を得た(図3)。
めっき浴組成は、Cuイオン: 100g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、光沢剤として荏原ユージライト社製CU-BRITE RF(製品名、光沢剤の1種):10mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を50A/dm2とした。
【0032】
<比較例4>
図3に示すように、Cuスパッタ層10Aを厚み2μmとし、そのCuスパッタ層10A上にCuをめっきしてCuめっき層10Bを厚み7μm形成したことにより総銅厚を9μmにしたこと及びCuめっき浴の組成を以下のものに変更したこと以外は、実施例2と同様にしてCuめっき銅箔を得た(図3)。
めっき浴組成は、Cuイオン: 110g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、光沢剤として荏原ユージライト社製CU-BRITE RF(製品名、光沢剤の1種):10mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を53A/dm2とした。
【0033】
<比較例5>
図3に示すように、Cuスパッタ層10Aを厚み3μmとし、そのCuスパッタ層10A上にCuをめっきしてCuめっき層10Bを厚み7μm形成したことにより総銅厚を10μmにしたこと及びCuめっき浴の組成を以下のものに変更したこと以外は、実施例2と同様にしてCuめっき銅箔を得た(図3)。
めっき浴組成は、Cuイオン: 100g/L、硫酸:80g/L、Clイオン:50mg/L、光沢剤として荏原ユージライト社製CU-BRITE RF(製品名、光沢剤の1種):10mg/Lとした。
又、めっき浴温を55℃とし、めっき時の平均電流密度を53A/dm2とした。
【0034】
<表面の方位>
得られた試料の表面の(111)、(200)、(311)、(220)面のX線回折積分強度をそれぞれ測定した。測定は、リガク製RINT2500を使用し、X線照射条件はCo管球を使用し、管電圧25KV、管電流20mAとした。
そして、表面の(111)面の割合を以下の式で算出した。
表面の(111)面の割合(%)=(111)面のX線回折積分強度(−)/{(111)面のX線回折積分強度(−)+(200)面のX線回折積分強度(−)+(311)面のX線回折積分強度(−)+(220)面の回折積分強度(−)} × 100
【0035】
<表面粗さ(Rz)の測定>
得られた試料の表面粗さを測定した。
非接触のレーザー表面粗さ計(コンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製HD100D)を使用し、JIS B0601−1994に準拠して十点平均粗さ(Rz)を測定した。測定基準長さ0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ値0.8mm、送り速さ0.1mm/秒の条件で測定位置を変えて10回行ない、10回の測定値の平均値を求めた。なお、測定方向はランダム(任意)とした。
【0036】
<グラフェンの製造>
各実施例のグラフェン製造用銅箔(縦横100X100mm)を真空チャンバーに設置し、1000℃に加熱した。真空(圧力:0.2Torr)下でこの真空チャンバーに水素ガスとメタンガスを供給し(供給ガス流量:10〜100cc/min)、銅箔を1000℃まで30分で昇温した後、1時間保持し、銅箔表面にグラフェンを成長させた。
グラフェンが表面に成長した銅箔のグラフェン側にPETフィルムを張り合わせ、銅箔を酸でエッチング除去した後、四探針法でグラフェンのシート抵抗を測定した。なお、エッチングの反応時間は予め反応時間とシート抵抗との関係を調査し、シート抵抗が安定するために必要な時間とした。
グラフェンのシート抵抗が400Ω/□以下であれば、実用上問題はない。
【0037】
得られた結果を表に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から明らかなように、表面粗さRzが0.5μm以下であり、表面において(111)面が60%以上を占める各実施例の場合、グラフェンのシート抵抗が400Ω/□以下となり、グラフェンの品質が優れていた。
【0040】
一方、表面粗さRzが0.5μmを超え及び/又は表面において(111)面が60%未満の比較例1〜5の場合、グラフェンのシート抵抗が400Ω/□を超え、グラフェンの品質が劣った。
【符号の説明】
【0041】
10 グラフェン製造用銅箔(Cuスパッタ/めっき銅箔、Cuスパッタ銅箔)
20 グラフェン
30 転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さRzが0.5μm以下であり、表面において(111)面の割合が60%以上であり、Cuめっき層及び/又はCuスパッタ層からなるグラフェン製造用銅箔。
【請求項2】
ポリイミドフィルムのプラズマ処理された面に剥離層を形成し、該剥離層上に前記Cuめっき層及び/又は前記Cuスパッタ層を形成した後、前記ポリイミドフィルム及び前記剥離層を剥離して製造された請求項1に記載のグラフェン製造用銅箔。
【請求項3】
前記剥離層がニッケル、クロム、コバルト、ニッケル合金、クロム合金、コバルト合金のいずれか1種である請求項2に記載のグラフェン製造用銅箔。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のグラフェン製造用銅箔を用いたグラフェンの製造方法であって、
所定の室内に、加熱した前記グラフェン製造用銅箔を配置すると共に水素ガスと炭素含有ガスを供給し、前記グラフェン製造用銅箔の前記銅めっき層の表面にグラフェンを形成するグラフェン形成工程と、
前記グラフェンの表面に転写シートを積層し、前記グラフェンを前記転写シート上に転写しながら、前記グラフェン製造用銅箔をエッチング除去するグラフェン転写工程と、を有するグラフェンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−107789(P2013−107789A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253508(P2011−253508)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】