説明

グリコーゲンを含む食品製剤

本発明は、グリコーゲンと、少なくとも一つの他の可食成分とを含むグルコースの放出制御用人工食品製剤並びにその製造用グリコーゲンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコースの放出制御用食品製剤の製造におけるグリコーゲンの使用に関する。
【0002】
特に本発明は、グルコースの放出制御用人工食品製剤の製造における2,000,000ダルトンを超える平均分子量を有するグリコーゲンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
グルコース源を含む人工食品製剤は、当業界で周知である。
【0004】
これらの製剤は、様々な適用分野を有する。
【0005】
第一の適用分野は、プロ又はアマチュアアスリート用栄養補助食品としての使用に関する。
【0006】
第二の適用分野は、治療を必要とする個人が通常の胃腸管を通して食べ物を摂取できない場合の非経口投与への使用に関する。
【0007】
第三の適用分野は、カニューレを通して直接胃又は腸に投与される液体形式の腸内供給への使用に関する。
【0008】
第四の適用分野は、高いカロリー摂取量を付与することなく満腹感を誘発し得る試薬(膨張性薬剤)としての使用に関する。
【0009】
当業界で既知の人工食品製剤は、一般に澱粉又はその誘導体の加水分解により得られる。澱粉は、植物界において最も広く知られた多糖であり、グルコースのポリマー鎖を含む。澱粉は、主にアミロース(おおよそ20重量%)とアミロペクチン(おおよそ80質量%)の2種類のポリマーを含む。アミロースは、グルコース単位を共にα(1→4)グリコシド結合により結合する直鎖状のポリマーである。アミロペクチンは、アミロースに類似する構造の主鎖を有し、該主鎖上に24−30のグルコース単位毎にα(1→6)結合で分岐している側鎖を有する分岐状のポリマーである。
【0010】
欧州特許出願公開第1,548,033号又は米国特許出願公開第2005/0159329号には、90,000から150,000ダルトンの平均分子量を有する澱粉の酵素加水分解により得た高分岐多糖が記載されている。また、欧州特許出願公開第1,369,432号には、3,500から20,000ダルトンの平均分子量を有する類似の多糖が記載されている。
【0011】
欧州特許出願公開第487,187号には、100g当たり160から240kcalの低カロリー含量であるマルトデキストリンを含む食品製剤が記載されている。欧州特許出願公開第514,528号には、マルトデキストリンと、ベータ−グルカン及び/又はペントサンを含む可溶性栄養製品が記載されている。
【0012】
マルトデキストリンは、α(1→4)グリコシド結合により共に結合したグルコース分子の十分のいくつかを含む澱粉の加水分解に由来した物質の類である。澱粉を化学的/物理的又は酵素を用いた手段又はそれらの組み合わせによって行った加水分解度に応じて様々なタイプのマルトデキストリンが得られ、これらを構成するグルコース分子の数、通常2から20単位によって区別される。最小4−6から最大36−39まで及び得るデキストロース当量(DE)は、その長さに基づいて決定される。DE値が高いほど、加水分解度が大きくなり、鎖長は短くなる。その人体による消化の最終結果は常にグルコースであるが、そのプロセスが生起する速度と、結果として生ずるエネルギー生産は、DE値に依存する。
【0013】
グルコース源を含む人工食品製剤は、例えば身体的努力又は活発なスポーツ活動に付随して大量の発汗をもたらす状況で、例えば水分/塩分のバランスを復元するための他の重要な栄養素を含有する。
【0014】
オスモル濃度が、胃排出速度と、特に水と溶解分子の腸吸収に影響を与えることを考えれば、これら製剤の理想的なオスモル濃度は、血漿のもの(280−300mOsml/kg)と同等かそれより僅かに低い値であるべきであり、即ちエネルギー溶液が血液と低張性であるべきである。マルトデキストリンの場合、グルコース源に加えて他の栄養素を含む等張性製剤を製造することが可能である。
【0015】
当業界で既知のα(1→4)結合の低分子多糖を含む人工食品製剤は、急速に吸収され代謝されるグルコースの迅速な供給を付与する。
【0016】
これは、二つの主なタイプの不利な点を有する。
【0017】
第一の不利な点は、これら食品製剤が血糖値の急速な上昇(血糖症)をもたらすため、糖尿病の個人に投与できないことである。
【0018】
第二の不利な点は、大量の物質を摂取しなければエネルギー効果が長続きせず、これら物質の過剰なオスモル濃度の結果として腸で回収される水による下痢の現象をもたらすことである。
【0019】
これら不利な点を克服するための試みとして、より高い分子量と、より加水分解を困難にする結合とを有する組成物が研究されている。
【0020】
国際特許出願公開00/32064号には、澱粉又は澱粉誘導体のような炭水化物と、セルロース、増粘剤、ペクチンおよびアルギン酸塩の誘導体のような架橋多糖との混合物を含む組成物が記載されている。
【0021】
国際特許出願公開第2004/023891号には、300,000から1,000,000ダルトンの分子量を有し、典型的にはデキストラン、プルランおよびアルテルナンであるα(1→6)結合の多糖を含む食品製剤が記載されている。
【0022】
欧州特許出願公開第153,013号には、ほとんど又は全く腸内で吸収されず、満腹感を誘発し得る試薬(膨張性薬剤)として作用することができる50,000から1,000,000ダルトンの分子量を有するデキストランであるα(1→6)結合の多糖に基づく製剤が記載されている。
【0023】
それゆえ、当業界で既知のα(1→6)結合の多糖を含む人工食品製剤は、鎖長が長すぎないという条件で、グルコースの逐次放出を付与することが知られており、この場合吸収が大幅に減少する。
【0024】
グリコーゲンは、5〜10個のグルコース単位毎にα−1−6グルコシド結合により形成した分岐を有し、α−1−4グルコシド結合により結合したD−グルコースの分子を大部分含む、主として動物由来の多糖である。グリコーゲンの分岐の数と程度は、それを得る動物種により異なる。天然のグリコーゲンの分子量は、ほぼ10−10ダルトン程度である。実際、グリコーゲンは常に蛋白質、グリコゲニン、細胞グリコーゲン合成の方法に関連する酵素に結合している。
【0025】
商業的なグリコーゲン誘導体の品質は、多量又は少量の蛋白質残渣(ppmで示した窒素の量に関して測定)及び還元糖の存在に由来する。欧州特許第654,048号には、低い窒素および還元糖含量で、約2,500,000ダルトンの分子量である高品質グリコーゲン誘導体が記載されている。
【0026】
グリコーゲンは、化粧品分野で皮膚軟化剤(特開昭62−178 505に記載)と水和剤(特開昭63−290 809に記載)として、食品分野で添加物として、また点眼薬中の湿潤剤や潤滑剤(WO99/47120に記載)として使用される。
【発明の概要】
【0027】
驚くべき事に、出願人は、グリコーゲン、特に欧州特許654,048号に記載されたグリコーゲンが胃腸管を模倣した生体外の系においてマルトデキストリンタイプのより低分子量の他の多糖から得たものに類似したグルコースの段階的な放出を提供し得ることを見出した。
【0028】
従って、本発明は、グルコースの放出制御用人工食品製剤の製造におけるグリコーゲンの使用に関する。
【0029】
出願人は、2,000,000ダルトンを超える高分子量にも関らず、上述のグリコーゲンが胃腸管を模倣した生体外の系において胃腸管中に存在する酵素により酵素分解を受け、グルコースを20−24時間かけて徐々に放出し得ることを見出した。
【0030】
これに加えて、出願人は、グリコーゲンが2,000,000ダルトンを超える高分子量を有するために、摂取された同量のグルコースに関するオスモル濃度がマルトデキストリンの投与と比較して非常に小さく、当業界で既知の下痢作用を有する水の回収の問題を回避することを見出した。
【0031】
出願人はまた、胃腸管中のグリコーゲンの輸送の間に観測されるグルコースの段階的かつ一定な放出が、適度に投与したグリコーゲンを糖尿病の個人用の食べ物又は飲み物として使用する可能性を有利に提供できることに気が付いた。
【0032】
他の態様において、本発明はまた、グリコーゲンと、少なくとも一つの他の可食成分、好ましくは少なくとも一つの栄養素とを含むグルコースの放出制御用人工食品製剤に関する。
【0033】
出願人は、本発明に係る人工食品製剤が当業界で既知のマルトデキストリン含有製剤よりも優れたおいしさを有することを見出した。
【0034】
特に、出願人は、本発明に係る人工食品製剤は甘味が控えめであり、より味わい深く、味覚によく許容されることを見出した。
【0035】
本発明に係る人工食品製剤は、炭水化物、蛋白質、アミノ酸と誘導体、脂質、リン脂質、ビタミンおよび無機塩を含む群から選択した少なくとも一つの栄養素を含むことが有利である。
【0036】
さらなる態様において、本発明はまた、グリコーゲンと、少なくとも一つのさらなる医薬的に許容し得る賦形剤とを含むグルコースの腸内又は非経口投与用水性製剤に関する。
【0037】
出願人は、グリコーゲン溶液の低オスモル濃度が糖や低分子量の多糖を含有する既知溶液のグルコース含量よりも高いグルコース含量を有する等張性水性製剤(300mOsm/kg)を製造するのを可能とすることを見出した。
【0038】
出願人はまた、グルコース放出が遅い他の多糖と異なり、上述したグリコーゲン溶液が高い多糖濃度でさえ生理値に近いpHの値を有していることを見出した。
【0039】
[発明の詳細な説明]
本発明は特に、グルコースの放出制御用人工食品製剤の製造におけるグリコーゲンの使用に関する。
【0040】
本発明で用いるグリコーゲンは、動物や菌類から抽出し得る天然グリコーゲンから得られる。軟体動物、特にイガイ(Mytilus edulisおよびMytilus gallus provincialis)は、低コストで大量に入手でき、一定量のグリコーゲン(平均で2.5重量%から3.9重量%の間)を含有するため、グリコーゲンの特に有用な給源である。グリコーゲンの他の天然の給源は、ハマグリ、カキのような他の二枚貝軟体動物、フナガイ(Crepidula fornicata)のような数種の腹足類動物又は海カタツムリ、並びに肝臓および筋肉のようなグリコーゲンの豊富な脊椎動物の器官を含む。
【0041】
本発明で使用するグリコーゲンは、2,000,000ダルトンを超える分子量、好ましくは2,000,000から5,000,000ダルトンの分子量を有するのが有利である。
【0042】
本発明で使用するグリコーゲンは、全結合数に関して、5%から15%、好ましくは8%から12%の割合のα−1−6グルコシド結合を有するのが好ましい。
【0043】
本発明で使用するグリコーゲンは、抽出処理で得たものとして使用してもよいし、その後の精製工程で処理してもよい。
【0044】
既に記載した通り、市販のグリコーゲン誘導体の品質は、多量又は少量のタンパク質残渣(ppmで示した窒素の量に関して測定)及び還元糖の存在に由来する。
【0045】
本発明の目的のために、還元糖及び窒素の含有量が低いグリコーゲン誘導体を使用するのが好ましい。本発明で好適に用いる市販品の例として、Sigma−Aldrich社により製造および流通しているグリコーゲン誘導体が挙げられる。
【0046】
本発明で使用するグリコーゲン誘導体は、F.D.Snell and Snell, “Colorimetric Methods of Analysis”, New York,1954,vol.III,p.204による方法で測定して、好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.25重量%未満の還元糖を含む。
【0047】
本発明で使用するグリコーゲン誘導体は、Kjeldahlの方法に従って測定して、好ましくは3,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、さらに好ましくは100ppm未満の窒素を含む。
【0048】
本発明で使用するグリコーゲンは、Polglumyt(商標)グリコーゲンであるのが好ましく、これはA.C.R.A.F.S.p.A.Rome,Italyによって製造及び流通している低還元糖含量を有する脱蛋白化グリコーゲンの商品名であり、欧州特許第654,048号に記載された精製処理によって得られる。
【0049】
本発明で使用するグリコーゲン誘導体は、2,000,000ダルトンを超える分子量、好ましくは2,000,000から5,000,000ダルトンの分子量と、全結合数に対し5%から15%、好ましくは8%から12%の割合のα−1−6グルコシド結合とを有するのが有利である。
【0050】
本発明に係るグルコースの放出制御用食品製剤は、グリコーゲンと、少なくとも一つの他の可食成分、好ましくは少なくとも一つの栄養素とを含む。
【0051】
本発明に係る食品製剤は、炭水化物、蛋白質、アミノ酸と誘導体、脂質、リン脂質、ビタミンおよび無機塩を含む群から選択した少なくとも一つの栄養素を含むことが有利である。
【0052】
本発明に係る食品製剤における炭水化物の摂取量は、グリコーゲンの存在によって満たされるのが好ましい。それにもかかわらず、本発明に係る食品製剤は、グリコーゲンに加えて他のタイプの炭水化物を任意に含むことができる。
【0053】
本発明に係る食品製剤に使用する蛋白質は、例えば乳蛋白質、卵蛋白質または血液蛋白質のような異なる天然給源から得ることができる。該蛋白質はまた、ペプチド又は個々のアミノ酸の加水分解形態で存在する場合がある。少なくとも蛋白質含量の半分は、無傷の蛋白質で表されることが好ましい。
【0054】
本発明に係る食品製剤に使用する脂質は、12から18個の炭素原子を有する飽和及び不飽和脂肪酸のトリグリセリドであってもよい。例えば、ω−3、ω−6およびω−9脂肪酸のような長鎖ポリ不飽和脂肪酸のトリグリセリドを使用するのが好ましい。オレイン酸、リノール酸(LA)、α−リノレン酸(ALA)、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびドコサペンタエン酸(DPA)のトリグリセリドが特に好ましい。リン脂質は、レシチン又はその等価物が好ましい。レシチンは動物又は植物由来であってもよく、主にリン酸、コリン、脂肪酸、グリセロール、糖脂質、トリグリセリド、そして例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルイノシトールのようなリン脂質を含む。
【0055】
本発明に係る食品製剤に使用するビタミンは、特に制限されず、例えばグループB(B1、B2、B3、B5、B6、B8、B9そしてB12)およびCの水溶性ビタミン、又はグループA、D、EおよびKの脂溶性ビタミンのような既知のビタミンのいずれであってもよい。コリン、アンスラニル酸、リポ酸、バイオフラボノイド、ユビキノンおよびメチルメチオニンのようなプソイドビタミンを使用してもよい。製剤のビタミン含量は、一般に1日あたりの推奨摂取量の割合又はRDA%として表わされる。
【0056】
無機塩は、一般に一日の所要量に基づきマクロ元素(100mg超)、微量元素(1から100mg)および少数元素(1mg未満)として分類される。マクロ元素は、カルシウム、塩素、リン、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び/又は硫黄を含む塩である。微量元素は、銅、亜鉛、フッ素、ヨウ素、セレン、クロム、コバルト、マンガン、モリブデン、ケイ素、ニッケル、バナジウムを含む塩である。少数元素は、スズ、ニッケル、ゲルマニウム、バナジウムおよびタングステンを含む塩である。
【0057】
食品製剤は、完全食品、サプリメント食品、胃腸投与、例えば経鼻胃、経鼻腸の管を通して投与する腸内投与用栄養溶液、非経口投与用栄養溶液又は糖尿病個人用食品又はサプリメントの形態であってよい。
【0058】
完全食品は、物質とエネルギーの摂取量の観点から、利用者の一日の所要量を満たすのに必要な全ての栄養物質を含む。それ故、製剤は30重量%から70重量%のグリコーゲンを含む炭水化物、10重量%から30重量%の蛋白質および20重量%から40重量%の脂質を含まなければならない。
【0059】
これに加えて、製剤は一日当たり2000kcalから2900kcalを供給することが可能でなければならず、水又は他の飲料への溶解又は分散用の固体若しくは液体の形状、使用する準備ができている形状、または濃縮物でもよい。少量又は多量のエネルギー摂取量を特定の状況(食事やスポーツ療法)に付与することができる。
【0060】
サプリメント食品は、蛋白質とエネルギー摂取量の観点から、利用者の一日の所要量を満たすのに必要とされるいくつかの栄養物質のみを含有する。それ故、製剤は一日当たり1500kcal未満、好ましくは100から1000kcalを供給することが可能である。この事例では再び、製剤が固形状でも液体状でもよく、通常の食事に付け足すために又は通常の食事の一成分として上述したような固体又は液体の形状としてもよい。
【0061】
本発明に係る食品製剤は、外観、味わい深さおよび保存性を改良するための従来の食品添加物、例えば、着色剤、保存料、抗酸化剤、酸味調整剤、増粘剤、安定剤、乳化剤、調味料、香味料、保湿剤および甘味料をさらに含有してもよい。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、それに限定するものではない。
【0063】
実施例1
唾液のアルファ−アミラーゼを用いる培養の第一段階、ペプシンを用いる培養の第二段階、約7のpHでパンクレアチン、アミノグルコシダーゼおよび牛の胆液を用いる培養の第三段階からなる消化システムを模倣したモデルを実験室にて調製した。
【0064】
6gの基質を、ねじぶた付きの250mlのパイレックス(登録商標)ボトル中で100mlリン酸塩緩衝液に溶解した。
【0065】
溶液の温度を37℃まで上げ、ヒトアルファアミラーゼ溶液(溶液A)0.1mlを添加した。生成した溶液を、磁気攪拌しながら37℃の恒温槽で15分間培養した。
【0066】
該溶液をHClの1M溶液2.50mlでpH=2に調整し、NaCl溶液中のSigma P7012の懸濁液(溶液B)0.25mlを添加した。生成した溶液を、再度磁気攪拌しながら37℃の恒温槽で30分間培養した。
【0067】
かかる溶液をNaHCOの1M溶液8.67mlでpH=6.9に調整し、パンクレアチンおよびアミノグルコシダーゼの25mMのCaCl溶液(溶液C)2mlと、2.4gの牛−羊の胆液(Sigma B8381)とを添加した。生成した溶液を、攪拌しながら37℃で5分間培養した。
【0068】
該溶液を、以下のように調製した約900mlの緩衝液を37℃の温度で含有するUSP XIII溶出装置の1000mlの容器に設置した透析管(混合セルロースエステル、分画分子量3,500)に移した。
【0069】
800mlのリン酸塩緩衝液と、CaCl2HOの1mM溶液0.8mlを一緒に混合した。次いで、これをHClの1M溶液20mlでpH=2に調整し、NaCl溶液(9g/L)2mlを添加し、pHをNaHCOの1M溶液70mlで6.9に調整し、25mMのCaCl2HO溶液16mlを添加した。
【0070】
24時間の期間にわたって、1mlのサンプルを緩衝液から表2−5に示した時間で採取した。
【0071】
Polglumyt(商標)グリコーゲンとマルトデキストリンDE16.5−19.5を基質として用いた二通りでテストを実施した。Polglumyt(商標)グリコーゲンの6gサンプルは、グルコース5.220gに相当し、一方マルトデキストリンDE16.5−19.5の6gサンプルは、グルコース5.748gに相当する。
【0072】
リン酸塩緩衝液と溶液A、B、Cは以下の表1の組成を有する。
【0073】
【表1】

【0074】
グルコースの放出量を求めるために二つの市販キット、Sigma GAGO20グルコース(GO)分析キットおよびSigma GAHK20 グルコース(HK)分析キット(共にSigma−Aldrichから提供)を用いてサンプルを分析した。
【0075】
第一のテストは、グルコース−オキシダーゼによるD−グルコースのD−グルコン酸と過酸化水素への酸化に基づく。放出された過酸化水素がo−ジアニシジンとペルオキシダーゼの存在下で反応して茶色の酸化生成物を形成し、硫酸の存在下でピンク色の酸化生成物を産出する。540nmで測定した色の強度は、グルコース濃度と比例した。
【0076】
得られた結果を以下の表2−5にまとめた。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
第二のテストは、ヘキソキナーゼによるATPの存在下でのグルコースのリン酸化に基づく。グルコース−6−リン酸塩を、グルコース−6−リン酸塩脱水素酵素により触媒した反応で、NAD(ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド)の存在下6−ホスホグルコン酸塩に酸化する。酸化の過程で、等モル量のNADをNADHに還元する。結果として生じる340nmでの吸収の上昇は、グルコース濃度に正比例する。
【0082】
得られた結果を以下の表6−9にまとめる。
【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
【表9】

【0087】
実施例2
Polglumyt(商標)グリコーゲンとマルトデキストリンDE16.5−19.5の6つの溶液を、濃度を増加(10、14、18、22.26そして30重量%)させて蒸留水中で調製した。
【0088】
生成した溶液を分析して、粘度、pH、導電率およびオスモル濃度を求めた。結果を、溶解時間と共に以下の表10と11に示す。粘度測定は、2°/55mmコーンプレート形状を備えるBohlin Gemini 150Rheometerを用いて行った。オスモル濃度測定は、Knauer osomometerを用いて行った。分析前に、0.2μmのMillipore Filterを用いて溶液をろ過した。
【0089】
【表10】

【0090】
【表11】

【0091】
実施例3
以下の表12、13、14に本発明に係るグリコーゲンを含む人工食品組成物の例を示す。表12は健常者用、表13は糖尿病の個人用、表14は胃腸管経由投与用の食品製剤を示す。
【0092】
【表12】

【0093】
RDA: 1日あたりの推奨摂取量
Polglumyt(商標): A.C.R.A.F.S.p.A.,Rome,Italyによって製造及び流通している減少した還元糖含量を有する脱蛋白化グリコーゲン
【0094】
【表13】

【0095】
【表14】

【0096】
実施例4
以下の表15に、本発明に係るグリコーゲンを含む非経口投与用組成物の一例を示す。
【0097】
【表15】

【0098】
実施例5
以下の表16に、本発明に係るグリコーゲンを含む注射用製剤用の水100mlに溶解するための粉末状組成物の一例を示す。
【0099】
【表16】

【0100】
実施例6
以下の表17にグルコース、マルトデキストリン(DE16.5−19.5)およびPolglumyt(商標)グリコーゲンの5%溶液のオスモル濃度の値を示す。
【0101】
【表17】

【0102】
表17に示した結果は、約5%のD−グルコースを含有する製剤が既に等浸透圧の溶液であり、マルトデキストリン(DE16.5−19.5)の5%溶液が55mOsm/kgのオスモル濃度(グルコースと比較して約1/5)を有し、一方Polglumyt(商標)グリコーゲンの5%溶液が1mOsm/kg未満のオスモル濃度(グルコースの約300分の1)を有することを明らかに示す。
【0103】
従って、表17に示すように、Polglumyt(商標)グリコーゲン含有製剤は、より高いグルコース含量及び/又はより高い重要な栄養素(例えば、ビタミン、アミノ酸、無機塩、等)の含量を有する製剤を調製することを可能とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコーゲンと、少なくとも一つの他の可食成分とを含むグルコースの放出制御用人工食品製剤で、前記グリコーゲンが2,000,000ダルトンを超える分子量と、全結合数に対し5%から15%のα−1−6グルコシド結合の割合を有することを特徴とする人工食品製剤。
【請求項2】
前記グリコーゲンが、2,000,000から5,000,000ダルトンの分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の食品製剤。
【請求項3】
前記グリコーゲンが、全結合数に対し8%から12%のα−1−6グルコシド結合の割合を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の食品製剤。
【請求項4】
前記グリコーゲンが、1重量%未満、好ましくは0.25重量%未満の還元糖を含むことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の食品製剤。
【請求項5】
前記グリコーゲンが、3,000ppm未満の窒素、好ましくは1,000ppm未満の窒素を含むことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の食品製剤。
【請求項6】
前記グルコースの放出制御が、約50%のグルコースを1時間以上、好ましくは3時間以上、更に好ましくは5時間以上で放出するようなものであることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の食品製剤。
【請求項7】
前記グルコースの放出制御が、約80%のグルコースを6時間以上、好ましくは9時間以上、更に好ましくは12時間以上で放出するようなものであることを特徴とする請求項6に記載の食品製剤。
【請求項8】
前記可食成分が、栄養素であることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の食品製剤。
【請求項9】
前記栄養素が、炭水化物、蛋白質、アミノ酸およびその誘導体、脂質、リン脂質、ビタミンおよび無機塩を含む群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の食品製剤。
【請求項10】
前記製剤が、30重量%から70重量%のグリコーゲン含む炭水化物と、10重量%から30重量%の蛋白質と、20重量%から40重量%の脂質とを含むことを特徴とする請求項8に記載の食品製剤。
【請求項11】
前記製剤が、固体形状又は水性溶液であることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の食品製剤。
【請求項12】
前記食品製剤が、完全食品、サプリメント食品、胃腸投与用栄養溶液、非経口投与用栄養溶液、又は糖尿病個人用食品若しくはサプリメントを含む群から選択されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の食品製剤。
【請求項13】
グルコースの放出制御用人工食品製剤の製造におけるグリコーゲンの使用。
【請求項14】
前記グリコーゲンが、請求項2から7のいずれか一つの特性を有することを特徴とする請求項13に記載のグリコーゲンの使用。
【請求項15】
前記食品製剤が、固体形状又は水性溶液であることを特徴とする請求項13又は14に記載のグリコーゲンの使用。
【請求項16】
前記食品製剤が、完全食品、サプリメント食品、胃腸投与用栄養溶液、非経口投与用栄養溶液、又は糖尿病個人用食品若しくはサプリメントを含む群から選択されることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載のグリコーゲンの使用。

【公表番号】特表2013−501021(P2013−501021A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523292(P2012−523292)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061002
【国際公開番号】WO2011/015509
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(592160973)アジェンデ・キミケ・リウニテ・アンジェリニ・フランチェスコ・ア・チ・エレ・ア・エフェ・ソシエタ・ペル・アチオニ (36)
【氏名又は名称原語表記】AZIENDE CHIMICHE RIUNITE ANGELINI FRANCESCO A.C.R.A.F.SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】