説明

グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3阻害剤

GSK−3の活性を阻害することができる化合物、かかる化合物を含む医薬組成物、及びGSK−3によって媒介された状態の治療におけるその使用方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)を阻害するための新規な化合物、およびGSK−3活性により媒介される生物学的状態の調節におけるその使用に関し、より具体的には、II型糖尿病、神経変性障害および神経変性疾患、ならびに情動障害などの生物学的状態の治療におけるこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、タンパク質基質をリン酸化する酵素であり、細胞外の事象を細胞質および核にシグナル伝達する際に重要な役割を果たすものであり、有糸分裂、分化およびアポトーシスを含む、細胞の生死に関係する事実上すべての事象に関与している。そのため、プロテインキナーゼは、これまで長い間、好都合な薬物標的であった。プロテインキナーゼの活性は細胞の満足すべき状態にとって極めて重要であるが、その一方で、その阻害は、多くの場合、細胞死をもたらすので、薬物標的としてのその使用は限られている。細胞死は、抗ガン薬物のための望ましい効果ではあるが、ほとんどの他の治療剤のためには大きな欠点である。
【0003】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)はプロテインキナーゼファミリーのメンバーであり、インスリンのシグナル伝達および代謝調節、および同様に、胚発達時におけるWntシグナル伝達および細胞運命スキームに関与する細胞質プロリン指向セリン−トレオニンキナーゼである。GSK−3αおよびGSK−3βと呼ばれるこの酵素の二つの類似するイソ型が同定されている。
【0004】
GSK−3は、典型的にはシグナル伝達経路によって活性化される他のプロテインキナーゼとは異なり、通常、休止細胞において活性化され、その活性は、インスリンがその細胞表面受容体に結合することにより生じるシグナル伝達経路などの特定のシグナル伝達経路の活性化によって弱められるので、これまで長い間、プロテインキナーゼファミリーの中で好都合な薬物標的であると見なされてきた。インスリン受容体の活性化はプロテインキナーゼB(PKB、これはまたAktとも呼ばれる)の活性化をもたらし、プロテインキナーゼBの活性化は次にGSK−3をリン酸化し、それによりGSK−3を不活性化する。GSK−3の阻害はグリコーゲン合成の活性化をもたらすと推定される。複雑なインスリンシグナル伝達経路は、セリン残基においてインスリン受容体基質−1をリン酸化するGSK−3自身によるインスリンシグナル伝達の負のフィードバック調節によってさらに複雑になっている(Eldar−Finkelman他、1997)。
【0005】
従って、合成されたGSK−3阻害剤は、GSK−3経路を使用する特定のホルモンおよび増殖因子(例えば、インスリンなど)の作用を模倣し得る。ある種の病理学的状態では、このスキームは、欠陥のある受容体、またはシグナル伝達機構の別の誤った成分の迂回を可能にし、その結果、インスリン非依存性II型糖尿病の場合のように、シグナル伝達カスケードのいくつかの上流側の関与体が正常でないときでさえ、生物学的シグナルが効力を生じるようにすることができる。
【0006】
細胞におけるグリコーゲン異化作用の調節は、ホルモンのインスリンを含む様々なシグナル伝達要素の複雑な配置を包括する極めて重要な生物学的機能である。様々な媒介因子を介して、インスリンは、グリコーゲンシンターゼ(GS)によるグリコーゲンの合成を増大させることによってその調節作用を発揮する。インスリン作用における重要な事象は、多数のチロシン残基におけるインスリン受容体基質(IRS−1、IRS−2)のリン酸化であり、その結果、PI3キナーゼを含む数個のシグナル伝達成分の同時活性化がもたらされる(Myers他、1992)。同様に、グリコーゲンシンターゼの活性はそのリン酸化によって抑制される。II型糖尿病患者の筋肉におけるグリコーゲンシンターゼ活性およびグリコーゲン濃度の顕著な低下が認められている(Damsbo他、1991;Nikoulina他、1997;Shulman他、1990)。
【0007】
II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)の発症に関連する最も初期の変化の一つはインスリン耐性である。インスリン耐性は、高インスリン血症および高血糖によって特徴づけられる。インスリン耐性を生じさせる正確な分子機構は不明であるが、インスリンシグナル伝達経路の下流側成分の欠陥が原因であると考えられている。
【0008】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)はインスリンシグナル伝達経路の下流側成分の一つである。GSK−3の大きな活性は、インスリン受容体基質−1(IRS−1)のセリン残基をリン酸化することによって、無傷の細胞においてインスリンの作用を損なうことが見出され(Eldar−Finkelman他、1997)、また同様に、細胞において発現する増大したGSK−3活性はグリコーゲンシンターゼ活性の抑制をもたらすことが見出された(Eldar−Finkelman他、1996)。これに関連して行われたさらなる研究により、GSK−3活性が糖尿病マウスの精巣上体脂肪組織において著しく増大していることが明らかにされた(Eldar−Finkelman他、1999)。その後、増大したGSK−3活性がII型糖尿病患者の骨格筋において検出された(Nickoulina他、2000)。さらなる近年の研究では、グリコーゲン代謝およびインスリンシグナル伝達におけるGSK−3の役割がさらに明らかにされた(総説については、Eldar−Finkelman他、2002;GrimesおよびJope、2001;Woodgett、2001を参照のこと)。それにより、GSK−3活性の阻害は、インスリン活性をインビボで増大させる方法であり得ることが示唆された。
【0009】
GSK−3はまた、アルツハイマー病の病理発生における重要な関与体であると考えられている。GSK−3が、対らせんフィラメント(PHF)の形成(アルツハイマー病の初期の特徴)に関与するタウ(微小管結合タンパク質)をリン酸化するキナーゼの一つとして同定された。外見的には、タウの異常な過剰リン酸化は、微小管の脱安定化およびPHF形成に対する原因である。いくつかのプロテインキナーゼは、タウのリン酸化を促進することが示されたという事実にもかかわらず、GSK−3のリン酸化のみが、微小管の自己アセンブリーを促進するタウの能力に直接的な影響を及ぼすことが見出された(Hanger他、1992;Mandelkow他、1992;Mulot他、1994;Mulot他、1995)。この点におけるGSK−3の役割に対するさらなる証拠が、GSK−3を過剰発現する細胞の研究からもたらされ、また、GSK−3を脳において特異的に発現する遺伝子組換えマウスからもたらされた。両方の場合において、GSK−3はPHF様エピトープのタウの生成をもたらした(Lucas他、2001)。
【0010】
GSK−3は、細胞のアポトーシスにおけるその役割によってアルツハイマー病とさらに関係づけられる。インスリンはニューロンの生存因子であるという事実(Barber他、2001)、インスリンはPI3キナーゼおよびPKBの活性化によりその抗アポトーシス作用を開始するという事実(Barber他、2001)から、これらのシグナル伝達成分による負の調節を受けるGSK−3はニューロンのアポトーシスを促進することが示唆された。いくつかの研究では、実際にこの見解が確認され、GSK−3が生死の決定において極めて重要であることが示された。その上、そのアポトーシス機能は、PI3キナーゼとは独立していることが示された。PC12細胞におけるGSK−3の過剰発現はアポトーシスを引き起こした(Pap他、1998)。小脳顆粒ニューロンにおけるGSK−3の活性化は遊走および細胞死を媒介した(Tong他、2001)。ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞において、GSK−3の過剰発現は、スタウロアポリン誘導の細胞アポトーシスを促進させた(Bijur他、2000)。
【0011】
GSK−3阻害と、細胞死の防止との関係が、Frat1(GSK−3β阻害剤)の発現が、PI3キナーゼの阻害により誘導される死からニューロンを救うために十分であることを示した研究によってさらに明らかにされている(Crowder他、2000)。
【0012】
GSK−3の別の関わりが情動障害(すなわち、双極性障害および躁うつ病)に関連して検出された。このつながりは、リチウム(双極性疾患において頻繁に使用される最初の気分安定化剤)が、臨床において使用される治療的濃度範囲でGSK−3の強い特異的な阻害剤であるという知見(Klein他、1996;Stambolic他、1996;Phiel他、2001)に基づいていた。この発見は、リチウムが細胞プロセスにおいてGSK−3活性の喪失を模倣し得るかを明らかにするために始められた一連の研究に至った。実際に、リチウムは、グリコーゲン合成の活性化(Cheng他、1983)、β−カテニンの安定化および蓄積(Stambolic他、1996)、ツメガエル(Xenopus)胚における軸複製の誘導(Klein他、1996)、ならびにニューロン死の保護(Bijur他、2000)を引き起こすことが示された。バルプロ酸(別の一般に使用されている気分安定化剤)もまた、効果的なGSK−3阻害剤であることが見出されている(Chen他、1999)。まとめると、これらの研究は、GSK−3がリチウムおよびバルプロ酸の主要なインビボ標的であり、従って、情動障害の新規な治療的治療において重要な意味を有することを示している。
【0013】
リチウムおよび他のGSK−3阻害剤が、双極性障害を治療するために作用し得る一つの機構は、神経伝達物質のグルタミン酸によって誘導される異常に高いレベルの興奮にさらされたニューロンの生存を増大させることである(Nonaka他、1998)。グルタミン酸によって誘導されるニューロンの興奮性はまた、脳虚血、外傷性脳傷害および細菌感染などにおける急性損傷に伴う神経変性の主要な原因であると考えられている。その上、グルタミン酸の過度なシグナル伝達は、アルツハイマー病、ハンチングトン病、パーキンソン病、AIDS関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AML)および多発性硬化症(MS)などの疾患において見られる慢性的なニューロン損傷における一因であると考えられている(Thomas、1995)。
【0014】
結果として、GSK−3阻害剤は、これらの神経変性障害および他の神経変性障害における有用な処置であると考えられる。実際に、GSK−3活性の調節異常が、近年、統合失調症(精神分裂病)(Beasley他、2001;Kozlovsky他、2002)、発作およびアルツハイマー病(AD)(BhatおよびBudd、2002;Hernandez他、2002;Lucas他、2001;Mandelkow他、1992)を含むいくつかのCNS障害および神経変性疾患に関係している。
【0015】
近年の研究では、GSK−3が、発達(He他、1995)、腫瘍形成(Rubinfeld他、1996)およびタンパク質合成(Welsh他、1993)を含むさらなる細胞応答に関与していることがさらに明らかにされている。重要なことは、GSK−3はこれらの経路において負の役割を果たしている。このことはさらに、GSK−3がシグナル伝達経路における細胞阻害剤であることを示唆している。
【0016】
様々なシグナル伝達経路におけるGSK−3の広範囲な関わりに照らして、GSK−3の特異的な阻害剤の開発は、基礎研究においてだけでなく、様々な治療的介入において将来有望でありかつ重要な意味を有すると考えられる。
【0017】
上記で述べられるように、一部の気分安定化剤は、GSK−3を阻害することが見出されていた。しかしながら、塩化リチウム(LiCl)によるGSK−3の阻害(PCT国際特許出願公開WO97/41854)およびプリン系阻害剤によるGSK−3の阻害(PCT国際特許出願公開WO98/16528)の両方が報告されているが、これらの阻害剤はGSK−3について特異的ではない。実際に、これらの薬物は多数のシグナル伝達経路に影響を及ぼし、イノシトールモノホスファターゼ(IMpase)およびヒストンデアセチラーゼなどの他の細胞標的を阻害することが示された(Berridge他、1989;PhielおよびKlein、2001)。
【0018】
同様に、処理されたcAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)(GSK−3の知られている基質)が、他の潜在的なGSK−3ペプチド阻害剤(Fiol他、1990)に加えて記載されている(Fiol他、1994)。しかしながら、これらの基質もまた、GSK−3活性を表面的に阻害しているにすぎない。
【0019】
他のGSK−3阻害剤が最近になって報告された。GSK−3を特異的に阻害する二つの構造的に関連する小分子(SB−216763およびSB−415286)(Glaxo SmithKlein Pharmaceutical)が開発され、これらは、グリコーゲン代謝および遺伝子転写を調節すること、ならびに、PI3キナーゼ活性の低下により誘導されるニューロン死から保護することが示された(Cross他、2001;Coghlan他、2000)。別の研究では、インジルビン(慢性骨髄性白血病に対する漢方の有効成分)がGSK−3阻害剤であることが示された。しかしながら、インジルビンはまた、サイクリン依存性プロテインキナーゼ−2(CDK−2)を阻害する(Damiens他、2001)。これらのGSK−3阻害剤はATP競合性であり、化学ライブラリーのハイスループットスクリーニングによって同定された。ATP競合性阻害剤の大きな欠点はその限られた特異性であることが一般に受け入れられている(Davies他、2000)。
【0020】
特定のペプチドおよび他のGSK−3阻害剤を開発する一般的な方法論はWO 01/49709および米国特許出願公開第20020147146号に報告されている。これらの文献は本発明者によるものであり、その内容がすべてここに記載されているかの如く参照としてここに組入れられる。この一般的な方法論は、GSK−3基質の構造的特徴を規定してこれらの特徴に従ってGSK−3阻害剤を開発することに基づいている。しかしながら、これらの文献はこれらの構造的特徴を規定しており、かつ効果的にGSK−3活性を阻害する様々な短いペプチドを教示しているが、これらの文献は、GSK−3阻害剤として役立つことができる小分子の設計および合成については教示していない。本発明者によるPCT/IL03/01057はペプチドGSK−3阻害剤の末端に疎水性部分を取付けるとその阻害活性が増大することを開示している。
【0021】
しかしながら、ペプチドは興味をそそる医薬標的であるが、それらの使用はしばしば例えば生物学的不安定性、免疫原性、細胞膜や血液脳関門(BBB)の如き生物学的膜を透過することに対する低い能力によって制限される。
【0022】
従って、上記の制限を有さない、GSK−3活性を阻害する非ペプチド化合物が必要であることが広く認識されており、従って、そのような化合物を有することは非常に好都合である。
【発明の開示】
【0023】
本発明者は、GSK−3基質の認識モチーフの特異的な特徴に従って設計された化合物はGSK−3に対して基質競合阻害活性を示し、従ってGSK−3の活性を減少させることが有利である様々な用途において有効に使用されることができることを驚くべきことに今や見出した。
【0024】
従って、本発明の一側面によれば、以下の一般式を有する化合物または医薬的に許容され得るその塩が提供される:

式中、X,Y,ZおよびWはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;
Aはアルキルであるかまたは存在せず;
Bは式

を有する負に帯電した基であり、式中、Lはリン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ホウ素原子および炭素原子からなる群から選択され;Q,GおよびDはそれぞれ独立して酸素およびイオウからなる群から選択され;Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルボキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシおよびチオアリールオキシからなる群から選択されるかまたは存在せず、
Dは水素、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、ヒドラジン、アミノアルキルおよび疎水性部分からなる群から選択され;そして
,R,RおよびRはそれぞれ独立して水素、孤立電子対、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンからなる群から選択され;
ただし、X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子であるかおよび/またはR,R,RおよびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基であり、ただし、本化合物はピリドキサールリン酸ではない。
【0025】
以下に記述する本発明の好ましい態様のさらなる特徴によれば、上記式中のDは疎水性部分であり、従って、本発明の他の側面によれば、上述の式を有する化合物であってDが疎水性部分である化合物が提供される。本発明のこの側面による化合物は、疎水性部分によって置換された、上述の除外された化合物も含む。
【0026】
上述の化合物はGSK−3の活性を阻害することができる。
【0027】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、Aはアルキルである。
【0028】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、Lはリン原子である。
【0029】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、Q,GおよびDのそれぞれは酸素であり、Eは好ましくはヒドロキシである。
【0030】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子である。
【0031】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、X,Y,ZおよびWの少なくとも二つは窒素原子である。好ましくは、XとYがそれぞれ窒素原子であるかまたはZとWがそれぞれ窒素原子である。
【0032】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、R,R,RおよびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基である。
【0033】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、R,R,RおよびRの少なくとも二つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基である。好ましくはRとRがそれぞれ、またはRとRがそれぞれ少なくとも一つのアミノ部分を含む基である。
【0034】
少なくとも一つのアミノ部分を含む基の例は、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノアルキル、その類似体、その誘導体およびそれらのいかなる組合せを限定なしに含む。
【0035】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、少なくとも一つのアミノ部分を含む基は少なくとも一つの正に帯電した基を含む。
【0036】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、正に帯電した基はアンモニウムイオンを含む。代わりに、正に帯電した基は、正に帯電したアミノ酸(例えばアルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリンであるがこれらに限定されない)およびそれらのいかなる誘導体の側鎖から由来する化学構造を有する。
【0037】
Dが疎水性部分である場合、疎水性部分は脂肪酸残基、4〜30個の炭素原子を有する飽和アルキレン鎖、4〜30個の炭素原子を有する不飽和アルキレン基、アリール、シクロアルキルおよび疎水性ペプチド配列からなる群から選択されることが好ましい。
【0038】
脂肪酸は、例えばミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸またはリノレイン酸であることができる。
【0039】
本発明による好ましい化合物は、X,Y,ZおよびWのそれぞれが炭素原子であり、R,R,RおよびRの少なくとも一つが上述のような少なくとも一つのアミノ部分を含む基である化合物をさらに含む。
【0040】
さらに好ましい化合物はX,YおよびZのそれぞれが炭素原子であり、Wが窒素原子であるものである。
【0041】
本発明のなお別の側面によれば、活性な成分として、GSK−3の活性を阻害することができる上述の化合物、および医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0042】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、医薬組成物は包装用材料に詰められ、以下に詳述するようにGSK−3活性と関連する生物学的状態の治療において使用するために、包装用材料の表面またはその中での活字で識別される。
【0043】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、医薬組成物は以下に詳述するようにGSK−3の活性を変化させることができる少なくとも一つのさらなる活性な成分をさらに含む。
【0044】
本発明のなお別の側面によれば、GSK−3の活性に関連する生物学的状態を治療する方法が提供され、前記方法はその必要性のある対象に、治療効果的な量の上述のGSK−3の活性を阻害することができる化合物を投与することを含む。
【0045】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、本発明のこの側面による方法は、GSK−3の活性を変化させることができる少なくとも一つのさらなる活性な成分を同時投与することをさらに含む。
【0046】
さらなる活性な成分は、GSK−3の活性を阻害することができる活性な成分であるかまたはGSK−3の発現をダウンレギュレートすることができる活性な成分であることができる。
【0047】
本発明による生物学的状態は、肥満、インスリン非依存性糖尿病、インスリン依存性状態、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、および精神病的な疾患または障害からなる群から選択されることが好ましい。
【0048】
情動障害は、単極型障害(例えば、うつ病)または双極性障害(例えば、躁うつ病)であることができる。
【0049】
神経変性障害は、脳虚血、発作、外傷性脳傷害および細菌感染からなる群から選択される事象から生じることがあり得、または神経変性障害は、アルツハイマー病、ハンチングトン病、パーキンソン病、AIDS関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AML)および多発性硬化症からなる群から選択される疾患から生じる慢性の神経変性障害であり得る。
【0050】
本発明の追加の側面によれば、GSK−3を発現する細胞を、本発明による化合物の治療効果的な量と接触させることを含む、GSK−3の活性を阻害する方法が提供される。
【0051】
前記活性はリン酸化活性および/または自己リン酸化活性であることができる。
【0052】
本発明のなお追加の側面によれば、インスリンシグナル伝達を強化する方法であって、インスリン応答性細胞を上述の化合物の効果的な量と接触させることを含む方法が提供される。
【0053】
これらの方法のそれぞれにおいて、細胞を接触させることはインビトロまたはインビボで行われることができる。
【0054】
記述された好ましい態様におけるさらなる特徴によれば、本発明のこれらの追加の側面による方法はそれぞれ、細胞を上述の少なくとも一つのさらなる活性な成分と接触させることをさらに含む。
【0055】
本発明は、様々な生物学的状態の治療において効率的に使用することができる、GSK−3活性を阻害するための新規に設計された非ペプチド化合物を提供することによって、現在知られている形態の欠点を対処することに成功している。
【0056】
別途に定義されない場合、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と同様または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。また、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0057】
本発明は、例としてだけであるが、添付されている図面を参照して、本明細書中に記載される。次に図面を詳しく具体的に参照して、示されている細目は、例としてであり、また、本発明の好ましい実施形態の例示的な議論のためのものであり、従って、本発明の原理および概念的態様の最も有用かつ容易に理解された記述であると考えられるものを提供するために示されていることが強調される。これに関して、記述を図面と一緒に理解することにより、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具体化され得るかが当業者には明らかになるので、発明の構造的詳細を、発明の基本的な理解のために必要であるよりも詳細に示すことは試みられていない。
図面の簡単な記述
図1a−bは、2D H−NMR研究によって得られた通りのペプチドp9CREB(図1a)およびCREB(図1b)の3D構造のコンピュータ画像を表わす(水素原子は示されていない;炭素骨格は灰色であり、窒素原子は青色であり、酸素原子は赤色であり、リン原子は黄色である)。
図2は、2D H−NMR研究によって得られたペプチドの3D構造に基づくp9CREBペプチドの静電分布を示す画像である。
図3は、フェニルリン酸、ピリドキサールリン酸(P−5−P)、GS−1、GS−2、GS−3の化学構造および新規化合物GS−4、GS−5およびGS−21の化学構造を表わす。
図4a−bは、GS−21の合成の中間体である1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼンのH NMRスペクトル(図4a)および13C NMRスペクトル(図4b)を表わす。
図5a−bは、GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(ブロモメチル)ベンジルアルコールのH NMRスペクトル(図5a)および13C NMRスペクトル(図5b)を表わす。
図6a−bは、GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(シアノメチル)ベンジルアルコールのH NMRスペクトル(図6a)および13C NMRスペクトル(図6b)を表わす。
図7は、GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(アミノエチル)ベンジルアルコールのH NMRスペクトルを表わす。
図8は、GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(tert−ブトキシカルボニルアミノエチル)ベンジルアルコールのH NMRスペクトルを表わす。
図9a−cは、GS−21の合成の中間体である、保護された3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸のH NMRスペクトル(図9a)および13C NMRスペクトル(図9b)および31P NMRスペクトル(図9c)を表わす。
図10a−dは、TFA塩3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21 TFA塩)のH NMRスペクトル(図10a)および13C NMRスペクトル(図10b)および31P NMRスペクトル(図10c)およびESI−MS(図10d)を表わす。
図11a−eは、3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)のH NMRスペクトル(図11a)および13C NMRスペクトル(図11b)および31P NMRスペクトル(図11c)およびESI−MS(図11d)およびHPLC クロマトグラム(図11e)を表わす。
図12は、インビトロ阻害アッセイにおけるフェニルリン酸、GS−1、GS−2、GS−3およびピリドキサールリン酸(P−5−P)のGSK−3阻害活性を示す比較プロットを表わす。
図13は、インビトロ阻害アッセイにおけるGS−1、GS−2、GS−3、GS−5およびGS−21のGSK−3阻害活性を示す比較プロットを表わす(黒色の丸はGS−1を示し、赤色の丸はGS−2を示し、緑色の丸はGS−3を示し、青色の丸はGS−5を示し、ピンク色の丸はGS−21を示す)。
図14a−bは、ペプチドコントロール(1単位に正規化されている)で処理された細胞にわたる活性化倍率としての、GS−5およびGS−21で処理された細胞における[H]2−デオキシグルコース取込みによって表わされる、マウスの脂肪細胞におけるグルコース取込みに対するGS−21(図14b)およびGS−5(図14a)の影響を示す棒グラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明は、GSK−3活性を阻害することができ、従って、GSK−3により媒介される生物学的状態の治療において使用することができる新規な非ペプチド化合物に関する。具体的には、本発明は、(i)GSK−3基質の立体配位結合に従って設計された化合物(これは、所望により疎水性部分を結合されていてもよい)、(ii)前記化合物を含有する医薬組成物、(iii)GSK−3活性を阻害するために、およびインスリンシグナル伝達を強化するために、前記化合物を使用する方法、および(iv)肥満、インスリン非依存性糖尿病、インスリン依存性状態、情動障害、神経変性疾患および神経変性障害、ならびに精神病的な疾患または障害(これらに限定されない)などの生物学的状態の治療において前記化合物を使用する方法に関する。
【0059】
本発明の原理および操作は、図面および付随する記述を参照してより良く理解され得る。
【0060】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することが可能であり、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであり、限定であるとして見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0061】
基質−キナーゼを認識する役割を有するパラメータの一つは、基質内に位置する要素であり、これは通常、「認識モチーフ」に関連付けられている。上述の通りGSK−3は他のキナーゼとは異なり、特異的な認識モチーフを有し、これは配列番号1に規定されるアミノ酸配列SXS(p)を含み、ここでSはセリンまたはスレオニンであり、X,XおよびXのそれぞれはいかなるアミノ酸であることができ、S(p)はリン酸化セリンまたはリン酸化スレオニンである。
【0062】
WO 01/49709および米国特許出願公報第20020147146号(これらの文献は、ここに完全に記載されているように参照として組入れられる)に幅広く教示されるように、この認識モチーフに基づいて設計されかつ合成された一組の短いペプチドは、基質または阻害剤としてのそれらの活性についてテストされた。これらのアッセイに基づき、これらのペプチドをGSK−3に対して活性な基質または阻害剤にする多数の特徴が決定された。最も重要な特徴の一つは、モチーフ中のリン酸化されたセリンまたはスレオニン残基はGSK−3に対する基質および阻害剤の両方の結合に必要であるということである。これらのアッセイはさらに、これらのペプチドのうちのいくらかはGSK−3の極めて強くかつ特異的な阻害剤であることを示した。これらのペプチドは基質競合的阻害剤として規定された。
【0063】
GSK−3が予めリン酸化された基質、つまりリン酸化されたセリンまたはスレオニン残基を有する基質のみを認識するという発見に基づいて、予めリン酸化されたGSK−3基質はそれらがGSK−3の触媒コアと相互作用することを可能とする特異的な構造を有するという仮説が立てられた。さらに、この特異的な構造を決定することはGSK−3の基質競合的阻害剤として作用することができる小分子の開発を可能にするであろうという仮説が立てられた。
【0064】
従って、上述した小さいGSK−3ペプチド阻害剤の阻害活性を模倣する小分子の探求において、本発明を実施に移している間に、小さいリン酸化されたペプチド基質の三次元構造並びに特異的な構造上の特徴が決定され、これらの特徴によって特徴付けられる多数の化合物がGSK−3阻害剤としてのそれらの活性についてテストされた。
【0065】
GSK−3阻害剤の代表例として、短い予めリン酸化されたペプチドp9CREB(ILSRRPS(p)YR、配列番号2)が選択された。p9CREBの三次元構造並びに対応するリン酸化されていないペプチドCREB(ILSRRPSYR、配列番号3)の三次元構造が以下の実施例で詳述されるように2D NMRによって決定された。
【0066】
図1aおよび図1bに示されるように、リン酸化されたp9CREB基質は溶液中で規定された構造を有するが(図1a)、対応するリン酸化されていないペプチドCREBはいかなる特異的構造も示さない(図1b)。
【0067】
これらの結果に鑑みて、リン酸化されたペプチド中のリン酸基は、チロシン(Y8)とアルギニン(R4)の間の陽イオン−π相互作用を通して「ループ状」構造を有することが示唆され(表2および3)、その結果として、認識モチーフでのリン酸化されたセリンはループの外側に位置されることが示唆された。基質のかかる「曲がり」構造は、リン酸化されたセリンを、酵素の基質結合ポケットとの相互作用にアクセスできるようにする。
【0068】
この示唆に対する支持は、Dajani他(2001)によって記述されたGSK−3の最近刊行された結晶化データ中に実際に見出された。Dajani他の結晶化データは、GSK−3の基質結合部位は三つの正に帯電した残基Arg96,Arg180およびLys205を含み、これらの残基がリン酸イオンと相互作用することを示す。
【0069】
図2は、これらの発見に基づいたp9CREBペプチドの「表面」上の静電分布を表わす。
【0070】
本発明を想起しつづけている間に、上述の発見から、基質競合的阻害活性を発揮するようにGSK−3基質の構造を模倣する小分子は、以下の特徴に従って設計されるべきであるということが導き出された:
【0071】
分子は負に帯電した基、好ましくはリン酸基を含むべきであり;
【0072】
負に帯電した基は立体的に障害を受けるべきでなく;および
【0073】
負に帯電した基は、少なくともその一つの側でまたは両側で一つまたは二つの正に帯電した基によって隣接されることが好ましい。
【0074】
上述のことに基づいて、GSK−3活性を阻害するための潜在的な化合物の一般式が設計された。以下の実施例部分で記述されるように、これらの化合物の「第一世代」、つまり、この式の最も単純化された構造を有する化合物を用いて行われた予備実験は、GSK−3活性を阻害するこれらの化合物の能力を証明し、従って、かかる式を有する化合物の阻害能力の予備的な示唆を与えた。
【0075】
新規化合物を含む一層前進された世代の化合物も上述のことに基づいて設計されて合成された。以下の実施例部分で記述されるように、これらの化合物を用いて行われた実験はGSK−3活性を阻害するそれらの能力をさらに証明し、さらに、マウスの脂肪細胞においてグルコースの取込みを増大させるそれらの能力を証明し、かくして、かかる式に従って設計された化合物によって発揮される確かな阻害および治療効果を証明した。
【0076】
従って、本発明の一側面によれば、以下の一般式を有する化合物または医薬的に許容され得るその塩が提供される:

式中、X,Y,ZおよびWはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;
Aはアルキルであるかまたは存在せず;
Bは式

を有する負に帯電した基であり、式中、Lはリン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ホウ素原子および炭素原子からなる群から選択され;Q,GおよびDはそれぞれ独立して酸素およびイオウからなる群から選択され;Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルボキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシおよびチオアリールオキシからなる群から選択されるかまたは存在せず、
Dは水素、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキルおよび疎水性部分からなる群から選択され;そして
,R,RおよびRはそれぞれ独立して水素、孤立電子対、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンからなる群から選択される。
【0077】
示された位置に配置される置換基(例えば、D,G,EおよびR〜R)のそれぞれの実現可能性は、置換基の原子価および化学的適合性、置換位置、ならびに他の置換基に依存することが当業者によって理解される。従って、本発明は、任意の位置について、実現可能な置換基のすべてを包含することが意図される。
【0078】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキル基は、1個〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、ケトエステル、カルボニル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンであり得る。
【0079】
本明細書中で使用される用語「シクロアルキル」基は、環の一つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。シクロアルキル基の非限定な例には、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンがある。シクロアルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、ケトエステル、カルボニル、チオカルボニル、エステル、エーテル、カルボキシ、チオカルボキシ、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンであり得る。
【0080】
「アルケニル」基は、本明細書中で定義されるように、少なくとも二つの炭素原子と少なくとも一つの炭素−炭素二重結合からなるアルキル基を示す。
【0081】
「アルキニル」基は、本明細書中で定義されるように、少なくとも二つの炭素原子と少なくとも一つの炭素−炭素三重結合からなるアルキル基を示す。
【0082】
「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例には、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルがある。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、ケトエステル、カルボニル、チオカルボニル、エステル、エーテル、カルボキシ、チオカルボキシ、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンであり得る。
【0083】
用語「ヘテロアリール」基には、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(一つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基が含まれる。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、ケトエステル、カルボニル、チオカルボニル、エステル、エーテル、カルボキシ、チオカルボキシ、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンであり得る。
【0084】
「複素脂環」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(一つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、一つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、孤立電子対、アルキル、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、ケトエステル、カルボニル、チオカルボニル、エステル、エーテル、カルボキシ、チオカルボキシ、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンであり得る。代表的な例はピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノなどである。
【0085】
「孤立電子対」は結合に関与していない電子対を示す。孤立電子対はX,Y,ZまたはWが非置換の窒素原子であるときのみ存在する。
【0086】
「ヒドロキシ」基は−OH基を示す。
【0087】
「アゾ」基は−N=N基を示す。
【0088】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0089】
「アリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0090】
「チオヒドロキシ」基は−SH基を示す。
【0091】
「チオアルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−S−アルキル基および−S−シクロアルキル基の両方を示す。
【0092】
「チオアリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−S−アリール基および−S−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0093】
「カルボニル」基は、本明細書中で定義されるように、−C(=O)−R’基(式中、R’は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、(環の炭素を通して結合された)ヘテロアリール、または(環の炭素を通して結合された)ヘテロ脂環状である)を示す。
【0094】
「アルデヒド」基は、R’が水素であるカルボニル基を示す。
【0095】
「チオカルボニル」基は−C(=S)−R’基(式中、R’は本明細書中でR’として定義される通りである)を示す。
【0096】
「C−カルボキシ」基は−C(=O)−O−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0097】
「O−カルボキシ」基はR’C(=O)−O−基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0098】
「カルボン酸」基は、R’が水素であるC−カルボキシル基を示す。
【0099】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0100】
「トリハロメチル」基は−CX基(式中、Xは、本明細書中で定義されるようなハロ基である)を示す。
【0101】
「トリハロメタンスルホニル」基はXCS(=O)−基(式中、Xは、本明細書中で定義されるようなハロ基である)を示す。
【0102】
「スルフィニル」基は−S(=O)−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0103】
「スルホニル」基は−S(=O)−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0104】
「S−スルホンアミド」基は−S(=O)−NR’R”基(式中、R’は本明細書中で定義される通りであり、R”はR’として定義される通りである)を示す。
【0105】
「N−スルホンアミド」基はRR’S(=O)−NR”基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0106】
「トリハロメタンスルホンアミド」基はXCS(=O)NR’−基(式中、R’およびXは、本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0107】
「O−カルバミル」基は−OC(=O)−NR’R”−基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0108】
「N−カルバミル」基はR”OC(=O)−NR’−基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0109】
「O−チオカルバミル」基は−OC(=S)−NR’R”基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0110】
「N−チオカルバミル」基はR”OC(=S)NR’−基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0111】
「アミノ」基は−NR’R”基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0112】
「アミノアルキル」基は本明細書中で定義されるように、アミノ基で置換されたアルキルを示す。好ましくは、アルキルはアミノ基によって停止する。
【0113】
「C−アミド」基は−C(=O)−NR’R”基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0114】
「N−アミド」基はR’C(=O)−NR”基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0115】
「尿素」基は−NR’C(=O)−NR”R’’’基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りであり、R’’’はR’またはR”のいずれかとして定義される通りである)を示す。
【0116】
「グアニジノ」基は−R’NC(=NR’’’’)−NR”R’’’基(式中、R’,R”およびR’’’は本明細書中で定義される通りであり、R’’’’はR’,R”またはR’’’のいずれかとして定義される通りである)を示す。
【0117】
「グアニジノアルキル」基はグアニジノ基で置換されたアルキル基を示し、これらの用語は本明細書中で定義される通りである。好ましくは、アルキル基はグアニジノ基によって停止する。
【0118】
「グアニル」基はR’R”NC(=NR’’’’)−基(式中、R’,R”,R’’’およびR’’’’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0119】
「グアニリノアルキル」基はグアニル基で置換されたアルキル基を示し、これらの用語は本明細書中で定義される通りである。好ましくは、アルキル基はグアニル基によって停止する。
【0120】
「ニトロ」基は−NO基を示す。
【0121】
「シアノ」基は−C≡N基を示す。
【0122】
用語「ケトエステル」は−C(=O)−C(=O)−O−基を示す。
【0123】
用語「チオ尿素」は、−NR’−C(=S)−NR”−基(式中、R’およびR”は上述の通り定義される)を示す。
【0124】
用語「ヒドラジン」はNR’−NR”基(式中、R’およびR”は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0125】
用語「アンモニウムイオン」は(NR’R”R’’’)(式中、R’,R”およびR’’’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0126】
それ故、本発明の化合物は堅固な構造、即ち芳香環(X,Y,ZおよびWが全て炭素原子である場合)または複素芳香環(X,Y,ZおよびWの少なくとも一つが窒素原子である場合)に基づいており、そこに負に帯電した基が結合している。この構造は、立体的に障害されていない負に帯電した基を与えることによってGSK−3基質の特異的な構造を模倣しかつリン酸基に類似のまたはリン酸基と同一の幾何学的構造を有するので、これらの化合物はGSK−3活性を阻害することができる。
【0127】
表現「負に帯電した基」および「正に帯電した基」は、本明細書で用いられる通り、イオン化可能な基に言及し、この基はイオン化により、通常水性媒体中で、少なくとも一つの負または正の静電荷をそれぞれ有する。帯電した基は、本発明の化合物中で、それらのイオン化された形態またはイオン化される前の形態で存在することができる。
【0128】
本発明による負に帯電した基は上で規定したような構造を有し、正に帯電した基は正に帯電したイオン自体(例えばアンモニウムイオン)または正に帯電したイオン(例えば二級、三級または四級アンモニウムイオン、イオン化されたアミノアルキルなど)によって置換されたいかなる基(例えばアルキル、シクロアルキル、アリールなど)であることができる。
【0129】
好ましくは、負に帯電した基はリン酸基であり、かくして上記式中、Lはリン原子であり、Q,GおよびDのそれぞれは酸素である。さらに好ましくは、Eはヒドロキシである。代わりに、ヒドロキシ基は別の負の静電荷を有するようにイオン化されることもできる。
【0130】
代わりに、負に帯電した基は、上記式に従って、チオホスフェート基、スルフェートまたはスルホネート基、ボレートまたはボロネート基などであることができる。
【0131】
負に帯電した基はアルキル基を介してアリール/ヘテロアリール環に結合されることが好ましく、かくして上記式中、Aはアルキルであり、好ましくは非置換のアルキルであり、より好ましくはメチルである。
【0132】
負に帯電した基をアルキル基を介して環に結合させることにより、負に帯電した基は自由に回転可能な基となる。これは、負に帯電した基が環に直接結合された場合のその堅固さとは対照的である。負に帯電した基の自由回転性は有利である。なぜなら、それは負に帯電した基が酵素の結合部位と容易に相互作用することを可能とするからである。
【0133】
本発明によるリン酸またはいかなる他の負に帯電した基の芳香環または複素芳香環への直接または間接結合は簡単な手順を介して行われ、構造的に単純な化合物を生成するが、限定された数のかかる化合物しか今まで合成されていないということに注意すべきである。これらはピリドキサールリン酸、ベンジルリン酸、フェニルリン酸および限定された数のそれらの誘導体(例えば置換されたピリドキサールリン酸、ベンジルリン酸およびフェニルリン酸)を含む。今までかかる化合物にはいかなる生物学的活性も関連付けられてこなかったので、当業者はかかる化合物を提供する動機付けを与えられなかったと考えられる。しかし、本発明のこの側面による化合物は、上記式によって包含されるいかなる現在公知の化合物も除外する。
【0134】
上述の通り、本発明の化合物の基本構造は芳香環または複素芳香環である。
【0135】
しかし、負に帯電した基に隣接する正に帯電した基を一つ有することが好ましく、二つ有することがより好ましいので、環は複素芳香環であることが好ましく、X,Y,ZおよびWの少なくとも一つが窒素原子であることが好ましい。好ましくは、ZまたはWが窒素原子である。
【0136】
さらに好ましくは、X,Y,ZおよびWの少なくとも二つが窒素原子であり、より好ましくはXとYが窒素原子であるかまたはZとWが窒素原子であり、さらにより好ましくはZとWが窒素原子である。
【0137】
当該技術分野では周知であるように、芳香環内の窒素原子は通常、中性条件下では塩基性であり、従って、生物学的環境では、それはプロトン化されて正に帯電した=NH−基を生成する傾向がある。上述の通り、負に帯電した基に隣接して一つまたは二つのかかる正に帯電した基を有する化合物が好ましい。
【0138】
塩基性環内の正に帯電した窒素原子の代わりに、またはこれに追加して、R,R,RおよびRの少なくとも一つは、少なくとも一つのアミノ部分を含む基であることが好ましい。
【0139】
本明細書で用いられる通り、表現「少なくとも一つのアミノ部分を含む基」は、一以上のアミノ部分を含む上述の基(例えばアルキル、シクロアルキル、アリールなど)に言及し、アミノ部分という用語は本明細書で規定される通りのものである。
【0140】
少なくとも一つのアミノ部分を含む基の代表例は、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジン、尿素、チオ尿素、グアニル、アミド、カルバミル、グアニジノ、グアニジノアルキルおよびグアニリノアルキルを限定なしに含み、これらの用語は本明細書で規定される通りのものである。
【0141】
当該技術分野では周知であるように、遊離アミノ基は通常、中性条件下では塩基性であり、従って、生物学的環境では、それはプロトン化されて正に帯電した−NH基を例えば生成する傾向がある。上述の通り、負に帯電した基に隣接して一つまたは二つのかかる正に帯電した基を有する化合物が好ましい。
【0142】
従って、アミノ部分は容易にプロトン化される部分、即ち、アミノ窒素がかなりの部分負電荷を有する部分としてこの基中に存在することが好ましい。
【0143】
それ故、少なくとも一つのアミノ部分を含む基の好ましい代表例は、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジン、グアニル、グアニジノ、グアニジノアルキルおよびグアニリノアルキルを限定なしに含み、これらの用語は本明細書で規定される通りのものである。
【0144】
少なくとも一つのアミノ部分を含む基は、本発明の化合物中でそれ自体でまたは正に帯電した基として存在することができ、後者の場合、少なくとも一つのアミノ部分はイオン化されている。
【0145】
上述の通り、本発明による正に帯電した基は、正に帯電した基の代表例が、アンモニウムイオンそれ自体(プロトン化されたアミノ基)およびアンモニウムイオン(上で規定した通りのもの)を担持するいかなる基(例えばアンモニウムイオンで置換されたアルキル、シクロアルキル、またはアリール、グアニジノ、グアニル、ヒドラジンなど)を限定なしに含むようにアンモニウムイオンを含む。
【0146】
特に好ましいものは、正に帯電したアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリンおよびそれらの誘導体であり、このうち最初の二つのものが最も好ましい)の側鎖から由来する化学構造を有する正に帯電した基である。
【0147】
「正に帯電したアミノ酸の側鎖から由来する化学構造」により、正に帯電した基がかかる側鎖と類似のまたは同一の化学構造を有することを意味する。
【0148】
好ましくは、RとRまたはRとRは少なくとも一つのアミノ部分を含む基(例えば正に帯電した基)であり、この基は所望により負に帯電した基に隣接する。
【0149】
従って、本発明による好ましい化合物は以下の式を有するものである:

式中、mは1〜6の整数であり;QとQはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;Gおよび/またはKはそれぞれ遊離アミノ部分を含む基(例えば正に帯電した基)である。
【0150】
上述の通り、および以下の実施例部分でさらに証明されるように、多数の化合物が上述の一般式に従って設計され、成功裏に合成され、GSK−3阻害活性を発揮することが見出された。これらの化合物の化学構造は図3に示されている。GSK−3活性の阻害剤としてのこれらの化合物の効率は図12および13に示されており、マウスの脂肪細胞におけるグルコースの取込みに対するそれらの有利な効果は図14aおよび14bに示されている。
【0151】
図12および13に示されるように、および以下の実施例の部分に示される通り、テストされた化合物のいくつかは正に帯電した基を有していなかった(例えばGS−1およびGS−2)が、これらの化合物はGSK−3に対して阻害活性を発揮する。しかし、図12および13にさらに示されるように、塩基性の環内に窒素原子を有する化合物は一層活性な阻害剤であることが見出され、かくしてかかる基の有利な効果を示す。
【0152】
従って、本発明による追加の好ましい化合物は、上述の一般式に従う化合物であって、式中、X,Y,ZおよびWのそれぞれが炭素原子であり;RとRの少なくとも一つがアミノ部分を含む基(例えば正に帯電した基)であり;Dが水素またはアルキルである化合物である。より好ましい化合物は、X,YおよびZのそれぞれが炭素原子であり、Wが窒素原子である化合物である。
【0153】
本発明のこの側面の別の好ましい態様では、化合物には疎水性部分が結合されている。
【0154】
本発明者によってPCT/IL03/10157に詳述されているように、GSK−3ペプチド阻害剤のN末端に疎水性部分を結合させることはペプチドの阻害活性を増大させる。
【0155】
ペプチド阻害剤中のリン酸化された残基はそのC末端に位置するので、負に帯電した基から最も遠い位置に位置する疎水性部分を含む本発明による化合物は、ペプチド阻害剤の場合のように、増大された阻害活性を発揮するだろうと考えられる。
【0156】
従って、本発明の別の側面によれば、上述の一般式を有する化合物であって、式中、Dが疎水性部分である化合物が提供される。
【0157】
本明細書中で使用される表現「疎水性成分」は、疎水性によって特徴づけられる任意の物質またはその残基を示す。
【0158】
この分野では広く受け入れられているように、用語「残基」は、別の物質(本明細書中では、本明細書中上記で記載される化合物)に共有結合的に連結される物質の主要な部分を記載する。
【0159】
従って、本発明による疎水性成分は、好ましくは、疎水性物質の残基であり、好ましくは、本明細書中上記で記載される化合物に共有結合的に結合する。
【0160】
本発明の疎水性成分が由来し得る疎水性物質の代表的な例には、限定されないが、飽和アルキレン鎖、不飽和アルキレン鎖、アリール、環状アルキルおよび疎水性ペプチド配列が含まれる。
【0161】
本明細書中で使用される表現「アルキレン鎖」は、飽和または不飽和であることができる炭化水素の線状鎖を示す。アルキレン鎖は、上述のようにアルキル基に関して置換されているかまたは非置換であることができ、窒素、酸素、イオウ、リンなどの一以上の異種原子(heterogamons)によって中断されることができる。アルキレン鎖は、好ましくは少なくとも4個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子、さらに好ましくは少なくとも10個の炭素原子を含み、20個まで、25個まで、さらに30個までの炭素原子を有する。
【0162】
従って、本発明の疎水性成分は、本明細書中上記で記載された疎水性物質の残基を含むことができる。
【0163】
本発明のこの側面によるアルキレン鎖の好ましい例は、カルボキシル基を含むもの、即ち脂肪酸残基である。
【0164】
本発明に関連して使用可能である好ましい脂肪酸には、限定されないが、10個を超える炭素原子(好ましくは12個〜24個の炭素原子)を有する飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が含まれ、例えば、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸など(これらに限定されない)が含まれる。
【0165】
あるいは、本発明による疎水性成分は、疎水性ペプチド配列を含むことができる。本発明による疎水性ペプチド配列は、好ましくは2個〜15個のアミノ酸残基を含み、より好ましくは2個〜10個のアミノ酸残基を含み、より好ましくは2個〜5個のアミノ酸残基を含み、この場合、少なくとも一つのアミノ酸残基が疎水性アミノ酸残基である。
【0166】
疎水性アミノ酸残基の代表的な例には、限定されないが、本明細書中上記に記載されるように、アラニン残基、システイン残基、グリシン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、バリン残基、フェニルアラニン残基、チロシン残基、メチオニン残基、プロリン残基およびトリプトファン残基、または、それらの任意の修飾体が含まれる。
【0167】
あるいは、疎水性アミノ酸残基は、それに対する疎水性成分の取り込みによって修飾されている任意の他のアミノ酸残基を含むことができる。
【0168】
本明細書中で使用される表現「アミノ酸残基」は、本明細書中では交換可能に「アミノ酸」とも呼ばれるが、ポリペプチド鎖内のアミノ酸ユニットを記載する。疎水性ペプチド配列内のアミノ酸残基は天然アミノ酸残基または修飾アミノ酸残基(これらの表現は本明細書中下記で定義される)のいずれでも可能である。
【0169】
本明細書中で使用される表現「天然アミノ酸残基」は、自然界に見出される20個のアミノ酸のいずれかを含むアミノ酸残基(この用語は本明細書中上記で定義される)を記載する。
【0170】
本明細書中で使用される表現「修飾アミノ酸残基」は、その側鎖での修飾を受けた天然アミノ酸を含むアミノ酸残基(この用語は本明細書中上記で定義される)を記載する。そのような修飾はこの分野では広く知られており、これらには、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基およびリン酸基(これらに限定されない)などの機能性基の側鎖内における取り込みが含まれる。従って、この表現は、別途具体的に示されない限り、アミノ酸アナログ(例えば、ペニシラミン、3−メルカプト−D−バリンなど)を含む化学修飾されたアミノ酸、天然に存在するタンパク質非形成性のアミノ酸(例えば、ノルロイシンなど)、および、アミノ酸の特徴であることがこの分野で知られている性質を有する化学合成された化合物が含まれる。用語「タンパク質非形成性」は、アミノ酸が、広く知られている代謝経路によって細胞においてタンパク質に取り込まれ得ないことを示す。
【0171】
従って、本明細書中で使用される用語「アミノ酸(単数または複数)」は、20個の天然に存在するアミノ酸;多くの場合にはインビボで翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(これらには、例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンが含まれる);および他の非通常型アミノ酸(これには、2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンが含まれるが、これらに限定されない)を包含することが理解される。さらに、用語「アミノ酸」は、この用語が本明細書中で定義されるように少なくとも一つのさらなるアミノ酸にペプチド結合またはペプチド結合アナログによって連結されるD−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方を包含する。
【0172】
疎水性部分は増大された予測不可能な活性を提供するので、疎水性部分で置換された公知の化合物(フェニルリン酸やピリドキサールリン酸など)も本発明のこの側面の範囲に含まれる。
【0173】
上で議論し、さらに以下の実施例部分で証明されるように、上述の本発明の化合物はGSK−3基質の三次元構造に基づいて設計されており、それ故、GSK−3活性の潜在的な基質競合的阻害剤である。
【0174】
従って、本発明の別の側面によれば、GSK−3の活性を阻害する方法が提供され、この方法は、GSK−3を発現する細胞を上述の化合物の阻害効果的な量と接触させることによって達成される。
【0175】
本明細書中で使用される用語「阻害効果的な量」は、GSK−3の活性を阻害するために十分である、この分野で知られているような検討事項によって決定される量である。活性は、GSK−3のリン酸化および/または自己リン酸化活性であり得る。
【0176】
本発明のこの側面による方法は、細胞をインビトロおよび/またはインビボで化合物と接触させることによって達成することができる。この方法はさらに、本明細書中上記で記載されるように、細胞を、GSK−3の活性を変化させることができるさらなる活性な成分と接触させることによって達成することができる。
【0177】
GSK−3活性の阻害は、インスリン活性をインビボで増大させるための一つの方法である。GSK−3の大きい活性は無傷の細胞におけるインスリン作用を低下する(Eldar−Finkelman他、1997)。この低下は、インスリン受容体基質−1(IRS−1)のセリン残基がGSK−3によりリン酸化されることから生じている。II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病、NIDDM)患者において行われた研究では、グリコーゲンシンターゼ活性がこれらの患者では顕著に低下していること、および、インスリンによるプロテインキナーゼB(PKB)(GSK−3の上流側の調節因子)の低下した活性化もまた検出されることが示される(Shulman他(1990);Nikoulina他(1997);Cross他(1995))。高脂肪食により誘導される糖尿病および肥満に罹りやすいマウスは、精巣上体の脂肪組織におけるGSK−3活性が著しく増大している(Eldar−Finkelman他、1999)。増大したGSK−3活性が細胞において発現することにより、グリコーゲンシンターゼ活性の抑制が生じていた(Eldar−Finkelman他、1996)。
【0178】
従って、GSK−3活性の阻害は、インスリン依存性の状態においてインスリン活性を増大させるための有用な方法を提供する。従って、本発明の別の側面によれば、インスリンシグナル伝達を強化する方法が提供され、この方法は、インスリン応答性細胞を、本発明の化合物の、本明細書中上記で定義されるような効果的な量と接触させることによって達成される。
【0179】
本明細書中で使用される表現「インスリンシグナル伝達を強化する」には、インスリン受容体の下流側成分のリン酸化の増大、および、非治療の対象または細胞におけるグルコース取り込みと比較されるようなグルコース取り込み速度の増大が含まれる。
【0180】
本発明のこの側面による方法は、細胞をインビトロまたはインビボにおいて本発明の化合物と接触させることによって達成されることができ、細胞をインスリンとさらに接触させることによっても達成されることができる。
【0181】
本発明の化合物の投与から生じるインビボでのインスリンシグナル伝達の強化は、臨床的な終点としてモニターすることができる。原理的には、患者におけるインスリン強化を観察するための最も容易な方法は、グルコース負荷試験を行うことである。絶食後、グルコースが患者に与えられ、血液循環からのグルコースの消失(すなわち、細胞によるグルコース取り込み)が、この分野で広く知られているアッセイによって測定される。グルコースクリアランスの遅い速度(健康な対象と比較したとき)により、インスリン耐性が示される。インスリン耐性患者に対する阻害剤の投与は、非治療の患者と比較したとき、グルコース取り込み速度を増大させる。阻害剤は、より長い期間にわたってインスリン耐性患者に投与することができ、血液循環におけるインスリン濃度、グルコース濃度およびレプチン濃度(通常、これらは高い)が測定され得る。グルコース濃度の低下は、阻害剤がインスリン作用を強化したことを示す。インスリン濃度およびレプチン濃度の低下は単独では、インスリン作用の強化を必ずしも示さないことがあるが、むしろ、他の機構による疾患状態の改善を示す。
【0182】
本発明の化合物は、GSK−3に関連する任意の生物学的状態を治療するために効果的に利用することができる。
【0183】
従って、本発明の別の側面によれば、GSK−3活性に関連する生物学的状態を治療する方法が提供される。本発明のこの側面によるこの方法は、本明細書中上記で記載される本発明の化合物の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することによって達成される。
【0184】
本明細書中で使用される表現「GSK−3活性に関連する生物学的状態」は、正常なレベルまたは異常なレベルであっても、効果的なGSK−3活性が同定される任意の生物学的または医学的な状態または障害を包含する。そのような状態または障害は、GSK−3活性によって引き起こされ得るか、または、GSK−3活性によって単に特徴づけられ得る。状態がGSK−3活性に関連するということは、その状態の何らかの側面がGSK−3に活性に突き止められ得ることを意味する。
【0185】
本明細書中において、用語「治療する」は、状態または障害の進行を妨げること、実質的に阻害すること、遅くすること、または逆向きにすること、あるいは、状態または障害の臨床的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態または障害の臨床的症状の出現を実質的に妨げることを包含する。これらの効果は、本明細書中下記において詳しく記載されるように、例えば、II型糖尿病に関してグルコース取り込み速度の低下によって、または、神経変性障害に関してニューロン細胞死を停止させることによって明らかにされ得る。
【0186】
本明細書中で使用される用語「投与する」は、本発明の化合物と、状態または障害によって影響を受けた細胞とを、化合物がこれらの細胞におけるGSK−3活性に影響を及ぼし得るような様式で一緒にするための方法を記述する。本発明の化合物は、医学的に許容され得る任意の経路によって投与することができる。投与経路は、治療されている疾患、状態または傷害に依存し得る。可能な投与経路には、注射、非経口経路、例えば、血管内、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、心室内、上皮内または脳室内などの経路、ならびに、経口、鼻腔、眼、直腸または局所的な経路よるもの、または吸入によるものが含まれる。持続放出投与もまた、デポー剤注射または侵食性インプラントのような手段によって、本発明において特に含まれる。投与はまた、関節内、直腸内、腹腔内、筋肉内、皮下であり得るか、またはエアロゾル吸入剤によって行われ得る。治療が全身的であるとき、化合物は、本明細書中下記において詳しく記載されるように、標的細胞内への化合物の導入を達成するために好適な組成物で提供される限り、経口的または非経口的(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内または槽内など)に投与することができる。
【0187】
本明細書中で使用される表現「治療効果的な量」は、GSK−3活性に関連する状態の進行を妨げるか、実質的に阻害するか、遅くするか、または逆向きにするために、あるいは、そのような状態の臨床的症状を実質的に改善するために、あるいは、そのような状態の臨床的症状の出現を実質的に妨げるために十分である、個体に投与される量を記述する。GSK−3活性はGSK−3キナーゼ活性であり得る。阻害量は、GSK−3活性の阻害を測定することによって直接的に決定することができ、または、例えば、所望される効果が、GSK−3を含む経路におけるGSK−3活性の下流側の活性に対する効果である場合、阻害は、下流側の効果を測定することによって測定することができる。従って、例えば、GSK−3の阻害がグリコーゲンシンターゼのリン酸化の停止を生じさせる場合、化合物の効果には、インスリン依存的経路またはインスリンに関係した経路に対する効果が含まれることがあり、化合物は、グルコース取り込みが最適なレベルに増大するところに対して投与することができる。また、GSK−3の阻害が、さらなる生物学的活性のために要求されるタンパク質(例えば、タウタンパク質)のリン酸化の非存在を生じさせる場合、化合物は、リン酸化されたタウタンパク質の多量体化が実質的に停止されるまで投与することができる。従って、GSK−3活性の阻害は、部分的には、GSK−3活性を伴う阻害された経路またはプロセスの性質に依存し、また、GSK−3活性の阻害が特定の生物学的状況において有する効果に依存する。
【0188】
阻害量を構成する化合物の量は、化合物およびその効力、体内における化合物の半減期、治療されている疾患または生物学的状態の進行速度、治療用量または投与パターンに対する状態の応答性、配合、医学的状況の主治医による評価、および他の関連要因、ならびに一般には、患者の健康状態、および他の検討事項(例えば、他の治療剤の以前の投与、または、化合物の阻害活性に対する影響を有する何らかの治療剤の同時投与、または、GSK−3活性に対する影響を有する何らかの治療剤の同時投与、またはGSK−3活性により媒介される経路など)のようなパラメーターに依存して変化する。阻害量は、日常的な試験によって決定され得る比較的広い範囲に含まれることが予想される。
【0189】
本明細書中上記において詳しく議論されるように、GSK−3は様々な生物学的経路に関与しており、従って、本発明のこの側面による方法は、本明細書中下記において詳しく記載されるように、様々な生物学的状態の治療において使用することができる。
【0190】
GSK−3はインスリンシグナル伝達経路に関与しており、従って、一例において、本発明のこの側面による方法は、何らかのインスリン依存性の状態を治療するために使用することができる。
【0191】
GSK−3阻害剤は、前脂肪細胞の脂肪細胞への分化を阻害することが知られているので、別の例では、本発明のこの側面による方法は、肥満を治療するために使用することができる。
【0192】
さらに別の例において、本発明のこの側面による方法は、糖尿病を治療するために、特にインスリン非依存性糖尿病を治療するために使用することができる。
【0193】
糖尿病は、インスリン不足またはインスリン耐性または両者を一般には伴う多数の発症要因による炭水化物代謝の不均一な一次障害である。I型(若年性)インスリン依存性糖尿病は、内因性インスリン分泌能力をほとんど有しない患者に存在する。これらの患者は極端な高血糖症を発症し、差し迫った生存のための外因性インスリン治療に完全に依存している。II型または成人発症型またはインスリン非依存性の糖尿病は、ある程度の内因性インスリン分泌能力を保持する患者に存在する。しかし、その大多数はインスリン欠乏性およびインスリン耐性の両方である。合衆国における全糖尿病患者の約95%はインスリン非依存性のII型糖尿病(NIDDM)を有しており、従って、これは、医学的問題の大部分を占める糖尿病形態である。インスリン耐性はNIDDMの根本的な特有の特徴であり、この代謝性欠陥により、糖尿病症候群がもたらされる。インスリン耐性は、インスリン受容体の不十分な発現、低下したインスリン結合親和性、またはインスリンシグナル伝達経路に沿ったいずれかの段階における何らかの異常のためであり得る(米国特許第5861266号を参照のこと)。
【0194】
本発明の化合物は、下記のように、II型糖尿病患者においてII型糖尿病を治療するために使用することができる。この場合、治療効果的な量の化合物が患者に投与され、臨床的マーカー(例えば、血糖濃度)がモニターされる。本発明の化合物はさらに、下記のように、対象においてII型糖尿病を防止するために使用することができる。この場合、予防効果的な量の化合物が患者に投与され、臨床的マーカー(例えば、IRS−1のリン酸化)がモニターされる。
【0195】
糖尿病の治療は標準的な医学的方法によって決定される。糖尿病治療の目標は、糖濃度を、安全に可能であるように正常値の近くに低下させることである。一般に設定されている目標は、食事前において80〜120ミリグラム/デシリットル(mg/dl)であり、かつ、就寝時において100〜140mg/dlである。特定の医師は、他の要因、例えば、患者がどのくらいの頻度で低血糖反応を有するかなどに依存して、患者について異なる目標を設定することがある。有用な医学的検査には、血糖濃度を測定するための患者の血液および尿に対する検査、グリケート化ヘモグロビン濃度(HbA1c;過去2ヶ月〜3ヶ月にわたる平均血中グルコース濃度の指標、正常範囲は4%〜6%である)に対する検査、コレステロールおよび脂肪の濃度に対する検査、ならびに、尿タンパク質濃度に対する検査が含まれる。そのような検査は、当業者に知られている標準的な検査である(例えば、American Diabetes Asocciation(1998)を参照のこと)。成功する治療プログラムはまた、糖尿病性の眼疾患、腎臓疾患または神経疾患に関するプログラムを受けている患者がほとんどいないことによって決定され得る。
【0196】
従って、本発明のこの側面による方法の一つの特定の態様において、インスリン非依存性糖尿病を治療する方法が提供される。この場合、患者はインスリン非依存性糖尿病の初期段階において診断される。本発明の化合物は腸溶性カプセルに配合される。患者は、インスリンシグナル伝達経路を刺激する目的のために一錠の錠剤を各食後に服用することが指示され、それにより、グルコース代謝が、外因性インスリンの投与が必要な状態を未然に防止するレベルに制御される。
【0197】
本明細書中上記でさらに議論されるように、および本願と同日に出願された、同じ発明者による「グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3阻害剤」と題するPCT出願で証明されているように、GSK−3阻害は情動障害に関連する。従って、別の例において、本発明のこの側面による方法は、単極型障害(例えば、うつ病)および双極性障害(例えば、躁うつ病)などの情動障害を治療するために使用することができる。
【0198】
GSK−3はまた、神経変性障害および神経変性疾患の病理発生における重要な関与体であると考えられるので、本発明のこの側面による方法はさらに、様々なそのような障害および疾患を治療するために使用することができる。
【0199】
一例において、GSK−3の阻害は、ニューロン細胞死を停止させることをもたらすので、本発明のこの側面による方法は、ニューロン細胞死を引き起こす事象から生じる神経変性障害を治療するために使用することができる。そのような事象は、例えば、脳虚血、発作、外傷性脳傷害または細菌感染であり得る。
【0200】
別の例では、GSK−3活性は様々な中枢神経系の障害および神経変性疾患に関係しているので、本発明のこの側面による方法は、様々な慢性の神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチングトン病、パーキンソン病、AIDS痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AML)および多発硬化症(これらに限定されない)などを治療するために使用することができる。
【0201】
本明細書中上記で議論されるように、GSK−3活性はアルツハイマー病の病理発生に特に関係している。従って、本発明のこの側面による方法の一つの代表的な態様において、アルツハイマー病患者を治療する方法が提供される。この場合、アルツハイマー病と診断された患者に、GSK−3により媒介されるタウの過剰リン酸化を阻害する本発明の化合物が、血液脳関門(BBB)を超える配合物に調製されて投与される。患者は、患者の脳細胞から単離されたタンパク質を、疾患の存在および進行を特徴づけるために知られているSDS−PAGEゲルでのタウのリン酸化形態の存在について定期的に分析することによって、タウのリン酸化多量体についてモニターされる。化合物の投薬量は、タウタンパク質のリン酸化形態の存在を減少させるために必要に応じて調節される。
【0202】
GSK−3はまた、統合失調症などの精神病的障害に関しても関係している。従って、本発明のこの側面による方法はさらに、統合失調症などの精神病的な疾患または障害を治療するために使用することができる。
【0203】
本発明のこの側面による方法はさらに、GSK−3の活性を変化させることができる一つまたは複数のさらなる活性な成分を対象に同時投与することによって達成することができる。
【0204】
本明細書中で使用される「同時投与する」は、本発明による化合物を、さらなる活性な成分(これはまた、活性な薬剤または治療剤として本明細書中では示される)との組合せで投与することを記述する。さらなる活性な薬剤は、患者の状態を治療するために有用である任意の治療剤であり得る。同時投与は、例えば、化合物および治療剤の混合物を投与することによって同時的であり得るか、または、化合物および活性な薬剤を短い期間内などで別々に投与することによって達成することができる。同時投与にはまた、化合物と、別の治療剤の一つまたは複数との連続した投与が含まれる。さらなる治療剤(一つまたは複数)は化合物の前または後に投与することができる。投薬治療は単回用量スケジュールまたは多回用量スケジュールであり得る。
【0205】
さらなる活性な成分はインスリンであり得る。
【0206】
好ましくは、さらなる活性な成分は、本発明によるさらなる活性な成分が、本発明の化合物とは異なる任意のGSK−3阻害剤、例えばWO 01/49709、PCT/IL 03/01057および米国特許出願公報第2002014746A1に記述されているような短いペプチドGSK−3阻害剤であり得るようにGSK−3の活性を阻害することができる。あるいは、GSK−3阻害剤は例えば、リチウム、バルプロ酸および/またはリチウムイオンであり得る。
【0207】
あるいは、さらなる活性な成分は、GSK−3の発現をダウンレギュレーションすることができる活性な成分であり得る。
【0208】
GSK−3の発現をダウンレギュレーションする薬剤は、mRNAの濃度またはタンパク質の濃度のいずれかにおいてGSK−3合成に影響を及ぼす(減速させる)か、またはGSK−3分解に影響を及ぼす(促進させる)任意の薬剤を示す。例えば、GSK−3の発現をダウンレギュレーションするために設計される小さい干渉性ポリヌクレオチド分子を、本発明のこの態様によるさらなる活性な成分として使用することができる。
【0209】
GSK−3の発現をダウンレギュレーションすることができる小さい干渉性ポリヌクレオチド分子についての一例が、RNA干渉(RNAi)の以前に記載された機構(HutvagnerおよびZamore(2002)、Curr.Opin.Genetcs and Development、12:225〜232)を介してmRNAの配列特異的な分解を行わせる二重鎖オリゴヌクレオチドを含む、例えば、Munshi他(Munshi CB、Graeff R、Lee HC、J Biol Chem、2002(Dec、20):277(51):49453〜8)によって記載されるモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの小さい干渉性RNAまたはsiRNAである。
【0210】
本明細書中で使用される表現「二重鎖オリゴヌクレオチド」は、一つの自己相補性核酸鎖または少なくとも二つの相補的な核酸鎖のいずれかによって形成されるオリゴヌクレオチド構造またはその模倣体を示す。本発明の「二重鎖オリゴヌクレオチド」は、二本鎖RNA(dsRNA)、DNA−RNAハイブリッド、一本鎖RNA(ssRNA)、単離されたRNA(すなわち、部分精製されたRNA、本質的には純粋なRNA)、合成RNA、および組換え産生RNAから構成され得る。
【0211】
好ましくは、本発明の特異的な小さい干渉性二重鎖オリゴヌクレオチドは、リボ核酸から主に構成されるオリゴヌクレオチドである。
【0212】
RNA干渉を媒介することができる二重鎖オリゴヌクレオチドを作製するための説明がwww.ambion.comに示される。
【0213】
従って、本発明による小さい干渉性ポリヌクレオチド分子はRNAi分子(RNA干渉分子)であり得る。
【0214】
あるいは、小さい干渉性ポリヌクレオチド分子は、本明細書中下記においてさらに記載されるGSK−3特異的なアンチセンス分子またはリボザイム分子などのオリゴヌクレオチドであり得る。
【0215】
アンチセンス分子は、それぞれが少なくとも1個のヌクレオチドから構成される二つ以上の化学的に異なる領域を含有するオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ分解に対する増大した抵抗性、増大した細胞取り込み、および/または、標的ポリヌクレオチドに対する増大した結合親和性をオリゴヌクレオチドに付与するようにオリゴヌクレオチドが修飾されている少なくとも一つの領域を典型的には含有する。オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNA:DNAハイブリッドまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素のための基質として役立ち得る。そのような酵素についての一例が、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼであるRNaseHである。従って、RNaseHの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それにより、遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効率を大きく高める。その結果として、匹敵し得る結果を、多くの場合、キメラなオリゴヌクレオチドが使用されたとき、同じ標的領域にハイブリダイゼーションするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、より短いオリゴヌクレオチドを用いて得ることができる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動によって、また、必要な場合には、この分野で知られている会合核酸ハイブリダイゼーション技術によって、常法により検出することができる。
【0216】
本発明のアンチセンス分子は、上記で記載されたように、二つ以上のオリゴヌクレオチド(すなわち、修飾されたオリゴヌクレオチド)の複合構造体として形成され得る。そのようなハイブリッド構造体の調製を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、米国特許第5013830号、同第5149797号、同第5220007号、同第5256775号、同第5366878号、同第5403711号、同第5491133号、同第5565350号、同第5623065号、同第5652355号、同第5652356号および同第5700922号が含まれる(これらのそれぞれは全体が本明細書中に参考として組み込まれる)。
【0217】
リボザイム分子は、mRNAの切断による遺伝子発現の配列特異的な阻害のためにますます使用されている。数個のリボザイム配列を本発明のオリゴヌクレオチドに融合することができる。これらの配列には、限定されないが、凝固経路における重要な成分であるVEGF−R(血管内皮増殖因子受容体)の形成を特異的に阻害するANGIOZYME、および、C型肝炎ウイルス(HCV)RNAを選択的に破壊するために設計されたリボザイムのHEPTAZYME(Rybozyme Pharmaceuticals,Incorporated、WEBホームページ)が含まれる。
【0218】
さらにあるいは、本発明による小さい干渉性ポリヌクレオチド分子は、DNAザイムであり得る。
【0219】
DNAザイムは一本鎖の触媒作用核酸分子である。DNAザイムについての一般的なモデル(“10−23”モデル)が提案されている。“10−23”DNAザイムは、それぞれが7個〜9個のデオキシリボヌクレオチドからなる二つの基質認識ドメインが隣接する、15個のデオキシリボヌクレオチドからなる触媒作用ドメインを有する。このタイプのDNAザイムはその基質RNAをプリン:ピリミジン接合部において効果的に切断することができる(Santoro,S.W.&Joyce,G.F.Proc.Natl,Acad.Sci.USA 199;DNAザイムの総説については、Khachigian,LM Curr Opin Mol Ther 2002:4:119〜21を参照のこと)。
【0220】
一本鎖および二本鎖の標的切断部位を認識する操作された合成DNAザイムの構築および増幅の例が米国特許第6,326,174号(Joyce他)に開示されている。ヒトウロキナーゼ受容体に向けられた類似する設計のDNAザイムが、最近、ウロキナーゼ受容体の発現を阻害し、結腸ガン細胞の転移をインビボで阻害することに成功したことが観測された(Itoh他、2002、アブストラクト409、Ann Meeting Am Soc Gen Ther www.asgt.org)。別の適用において、bcr−ablガン遺伝子に対して相補的なDNAザイムは、白血病細胞におけるガン遺伝子の発現を阻害し、CMLおよびALLの場合において自家骨髄移植における再発率を小さくすることに成功した。
【0221】
本発明の教示に従って設計されたオリゴヌクレオチドは、この分野で知られている任意のオリゴヌクレオチド合成法(例えば、酵素合成または固相合成など)に従って作製することができる。固相合成を実行するための器具および試薬が、例えば、Applied Biosystemsから市販されている。そのような合成のための任意の他の手段もまた用いることができる。オリゴヌクレオチドの実際の合成は十分に当業者の能力の範囲内である。
【0222】
非常に効率的な治療剤である一方で、また、治療的適用では、多くの場合、効果的な量の活性な成分を治療されている個体に投与することが要求されるので、本発明の化合物は、好ましくは、治療されている個体に対する化合物の投与を容易にするために、また、おそらくは、標的化された組織または細胞への活性な成分の進入を容易にするために医薬的に許容され得るキャリアをさらに含む医薬組成物において、有効成分として含まれる。
【0223】
従って、本発明のなおさらなる側面によれば、有効成分としての本発明の化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0224】
以降、表現「医薬的に許容され得るキャリア」および表現「生理学的に許容され得るキャリア」は、対象に対する著しい刺激を生じさせず、投与された化合物の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。キャリアの非限定的な例には、ポリエチレングリコール、生理的食塩水、有機溶媒と水とのエマルションおよび混合物がある。
【0225】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0226】
医薬的に許容され得るキャリアにはさらに、他の薬剤、例えば、吸収遅延剤、抗菌剤、抗真菌剤、酸化防止剤、結合剤、緩衝化剤、増量剤、カチオン性脂質剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、分散剤、乳化剤、賦形剤、矯味矯臭剤、滑剤、等張剤、リポソーム、マイクロカプセル、溶媒、甘味剤、粘度改変剤、湿潤化剤および皮膚浸透増強剤など(これらに限定されない)が含まれ得る。
【0227】
薬物の配合および投与のための様々な技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.,Easton,PA,最新版)に見出され得る(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0228】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれ得る。
【0229】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0230】
従って、本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用され得る調製物への化合物の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む一つまたは複数の医薬的に許容され得るキャリアを使用して従来の様式で配合することできる。組成物は、エアロゾル送達形態物、水溶液、ボーラス剤、カプセル、コロイド、遅延放出、デポー剤、溶解可能な粉末、滴剤、エマルション、侵食性インプラント、ゲル、ゲルカプセル、顆粒剤、注射溶液、摂取可能な溶液、吸入可能な溶液、ローション、オイル溶液、ピル、坐薬、膏薬、懸濁物、持続放出、シロップ、錠剤、チンキ剤、局所用クリーム、経皮送達形態物などの送達形態物で配合することができる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0231】
注射の場合、本発明の化合物は、有機溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)を伴うか、または伴わない水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な生理的食塩水緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0232】
経口投与の場合、化合物は、化合物をこの分野で広く知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって容易に配合され得る。そのようなキャリアは、本発明の化合物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物を、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0233】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、活性な成分の量を明らかにするために、または活性な成分の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0234】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。また、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0235】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態をとることができる。
【0236】
吸入による投与の場合、本発明による化合物は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器において使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、成分および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0237】
本明細書中に記載される化合物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、また、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0238】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態での化合物の水溶液が含まれる。また、化合物の懸濁物を適切な油性の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために活性な成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0239】
あるいは、化合物は、好適なビヒクル(例えば、無菌のパイロジェン非含有水)を使用前に用いて構成される粉末形態にすることができる。
【0240】
本発明の化合物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0241】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、ゲル相キャリアまたは賦形剤の好適な固体を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0242】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、化合物が、その意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、治療されている対象の状態の症状に影響を及ぼすために効果的であるか、または、治療されている対象の生存を延ばすために効果的である、化合物の量を意味する。
【0243】
治療効果的な量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0244】
本発明の方法において使用される任意の活性な成分について、治療効果的な量または用量は、最初は細胞培養物および動物における活性アッセイから推定することができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0245】
投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”、第1章、1頁を参照のこと)。
【0246】
本発明の組成物は、所望される場合には、化合物を含有する一つ以上の単位投薬形態物を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の化合物を含む組成物はまた、適応状態を治療するために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。ラベルに示される好適な状態には、例えば、本明細書中上記で示される、GSK−3活性に関連する生物学的状態のいずれかが含まれ得る。
【0247】
従って、本発明の医薬組成物は、GSK−3に関連する生物学的状態の治療または防止における使用のために、包装用材料に詰められ、包装用材料の表面またはその中での活字で識別され得る。
【0248】
本発明の医薬組成物はさらに、本明細書中上記で記載されるように、GSK−3の活性を妨害することができるさらなる活性な成分を含むことができる。
【0249】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになる。また、本明細書中上記で説明され、請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様はそれぞれが、下記の実施例において実験的裏付けが見出される。
【実施例】
【0250】
次に、下記の実施例が参照される。下記の実施例は、上記の説明とともに、本発明を非限定的な様式で例示する。
【0251】
材料および実験方法
材料:
ペプチドは、Genemed Synthesis Inc.(San Francisco,CA)によって合成された。
【0252】
放射性物質はAmersham Ltd.から購入された。
【0253】
フェニルリン酸およびピリドキサールリン酸(P−5−Pとも称される)は、Sigma(イスラエル)から得られた。
【0254】
すべての試薬および溶媒は、商業的な源(例えばSigma,Acros,Aldrich)から得られ、特別に示さない限り、供給された通りに使用された。
【0255】
GS−1,GS−2およびGS−3は、以下に詳述される当業者には公知の手順に従って合成された。
【0256】
新規化合物GS−4,GS−5およびGS−21の合成は、以下に記述されるように設計されて実施された。
【0257】
NMR分光分析および構造計算によるGSK−3基質の3D構造の決定:
公知のGSK−3基質CREBに従ってパターン化された小さなリン酸化されたペプチド(p9CREBと名付けられた)および二つの追加のペプチド(リン酸化されていないペプチド9CREBおよびSがグルタミン酸で置換された変異体(帯電した基を模倣すると考えられる)9ECREB)がこれらの研究で用いられ、以下の表1に掲げられている。GSK−3によるペプチドリン酸化の時間推移分析は、リン酸化されたペプチドであるp9CREBのみがGSK−3のための基質であり、9CREBおよび9ECREBはGSK−3によってリン酸化されることに完全に失敗したことを確認し(データは示さず)、従ってリン酸化されたセリンはGSK−3にとって必須要件であることを再び示した。

【0258】
2D H NMR分光分析によるp9CREB(図1a)、9CREB(図1b)および9ECREB(示されず)の3D構造は、以下の手順を用いて決定された:
【0259】
構造研究のため、それぞれのペプチドの溶液は、10%DOを含む水中に、凍結乾燥された粉末を溶解することによって調製された。2D−NMRスペクトルは、Bruker Avance DMX分光光度計で600.13MHzのHプロトン周波数で得られた。キャリア周波数は水のシグナルに設定され、WATERGATE法を適用することによって、および緩和期間中に低出力の照射を用いることによって抑制された。実験温度(280K)は、より周囲温度での速い交換による集団平均化を減少させかつ最良の可能な分光解像度を保存するために最適化された。すべての実験は、相感受性モード(TPPIまたはStates−TPPI)で実行され、12ppmのスペクトル幅、4Kの真のtデータ点および512t−増加で記録された。採取された2次元同核データは、150m秒の混合時間を有するMLEVパルス配列を用いるTOCSY、および100〜750m秒の範囲の混合時間を有するNOESY実験を含んでいた。通常、緩和遅延はTOCSYおよびNOESY実験においてそれぞれ1.5秒および2.0秒であった。ROESY測定では、スピンロックの期間は3.4KHzの出力で400m秒に設定された。すべてのスペクトルはテトラメチルシランに対して較正された。
【0260】
データはBruker XWINNMRソフトウェア(Bruker Analytische Messtechnik,GmbH,version 2.7)を用いて処理された。全てのデータ処理、計算および分析はSilicon Graphicsワークステーション(INDY R4000およびINDIGO2R10000)で行われた。両方の次元でのシフトされた二重化正弦窓関数による自由誘導遅延のアポダイゼーションおよび間接次元のゼロフィリングは、スペクトル解像度を増大させるためにフーリエ変換に先立って適用された。スペクトルは、Brukerによって開発された自動多項式基線補正を適用することによってさらに位相補正された。
【0261】
共鳴割当ては、BrukerソフトウェアプログラムAURELIA(Bruker Analytic GmbH,version 2.7)を用いてWuethrichによって開発された逐次的割当て方法に従って、同一の実験条件で測定されたTOCSYおよびNOESYスペクトルに基づいていた。
【0262】
NOE距離制約は、450m秒で記録されたNOESYスペクトルから由来していた。この最適混合時間は、100m秒〜750m秒までの範囲の混合時間を有する一連の実験において、NOEシグナル強度を比較することによってp9CREBペプチドサンプルについて決定された。選択された混合時間は、スピン拡散からの有意な寄与を有さない最大NOEビルドアップを与えた。この値は、同一の実験条件を維持するために、リン酸化されていない類似体実験のために使用された。積分されたピーク値は、r−6従属性を用いて距離制約に変換され、チロシン芳香環の二つの隣接するプロトンの間の既知の距離である2.47Åが較正のために用いられた。制約は、強い(1.8〜2.5Å)、中程度(1.8〜3.5Å)および弱い(1.8〜5.0Å)に分類された。0.5Åの経験的な補正が、メチル基を含む制約について上方結合に加えられた。
【0263】
構造は、ハイブリッド距離幾何学−XPLOR(version 3.856)を用いる動的シミュレートされたアニーリングによって計算された。NOEエネルギーは、50Kcal/mol・Åの一定の力定数を有する平方井戸ポテンシャルとして誘導された。シミュレートされたアニーリングは、1000Kでの1500 3f秒ステップおよび300Kへの冷却中の3000 1f秒ステップからなっていた。最終的に、構造は、4000回の繰返しについての共役勾配エネルギー最小化法を用いて最小化された。INSIGHTII(Molecular Modeling System version 97.0,Molecular Simulations,Inc.)は、NMRから由来された構造の可視化および分析のために用いられた。それらの質は、PROCHECKを用いて評価された。
【0264】
分析方法:
プロトン、炭素、フッ素およびリンの核磁気共鳴スペクトルは、Bruker AMX 500分光光度計またはBrucker AV 300分光光度計で得られ、ppm(σ)で報告された。テトラメチルシラン(TMS)はプロトンスペクトルについての内部標準として用いられ、リン酸はリン原子についての内部標準として用いられ、溶媒ピークは炭素およびフッ素スペクトルについての参照ピークとして用いられた。
【0265】
質量分光スペクトルは、Finnigan LCQ Duo LC−MSイオン捕獲電子散布イオン化(ESI)質量分光計で得られた。
【0266】
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Analtechシリカゲルプレートを用いて行われ、プレートをブタノール中の0.2重量%のニンヒドリンで染色することによって、または紫外(UV)光線によって可視化された。
【0267】
元素分析は、Quantitative Technologies,Inc.(Whitehouse,NJ)によって行われた。
【0268】
HPLC分析は、以下に示す標準溶媒勾配プログラムを用いて、Hypersil BDS C18 Column,4.6×150mm,5μm,Column Temperature Ambient,Detector@220nmを用いて得られた。

【0269】
インビトロ阻害アッセイ:
精製された組換えウサギGSK−3β(Eldar−Finkelman他、1996)は、示された濃度でペプチド基質PGS−1(YRRAAVPPSPSLSRHSSPSQS(p)EDEEE)(配列番号1)およびフェニルリン酸、ピリドキサールリン酸(P−5−P),GS−1,GS−2,GS−3,GS−5またはGS−21(これらの構造式は図3に示されている)とインキュベーションされた。50mMのTris(pH=7.3)、10mMのMgAc、32P[γ−ATP](100μM)、0.01%のβ−メルカプトエタノールを含む反応混合物は、30℃で10分間インキュベーションされた。反応液は、(Eldar−Finkelman他(1996)に記載されるように)ホスホセルロース紙(p81)にスポットし、100mMリン酸で洗浄し、放射能について計数した。
【0270】
単離された脂肪細胞におけるグルコース取り込み:マウス脂肪細胞は、以前の記載(Lawrence他、1977)のように、0.8mg/mlのコラーゲナーゼ(Worthington Biochemical)を用いた消化によって精巣上皮脂肪パッドから単離された。消化された脂肪パッドはナイロンメッシュに通され、細胞は、1%のウシ血清アルブミン(第V画分、Boehringer Mannheim、ドイツ)、10mMのHEPES(pH=7.3)、5mMのグルコースおよび200nMのアデノシンを含有するKrebs重炭酸塩緩衝液(pH=7.4)で3回洗浄された。細胞は、示された濃度で2.5時間、GS−5およびGS−21とインキュベーションされ、その後、2−デオキシ[H]グルコース(0.5μci/バイアル)が10分間加えられた。アッセイは、ジノニルフタレート(ICN、米国)による細胞の遠心分離によって終了された。その後、Hは液体シンチレーション分析器(Packard)によって定量された。2−デオキシ−[H]グルコースの非特異的な取り込みは、放射能物質の添加の30分前にサイトカラシンB(50μM)を加えることによって測定された。
【0271】
実験結果
GSK−3基質の3D構造の決定:
以上の表2および3は、3D構造の可視化のために構造分析ソフトウェア中に入力するために使用された構造座標データを表わす。
【0272】
図1aおよび1bに表わされる、得られた3D構造において、リン酸化されたペプチドのみが、規定された構造配座を有することが観察された。図1aに示される通り、p9CREBについて、リン酸化はペプチド骨格の有意な「曲がり」を生じ、Tyr8およびArg4を接近させ、「ループ構造」を形成させ、それによりリン酸化された残基をループの外側に向ける。この配座は、一方では正に帯電した残基(Arg4およびArg5)の、酵素の触媒結合ポケットとの干渉を最小化し、他方では、リン酸化されたセリンを酵素に容易に接近可能とする。この構造分析はGSK−3の特異的な基質認識に対する説明を与える。従って、ここに表わされた構造を模倣する小分子の設計は、GSK−3に対する潜在的な選択的阻害剤を得る方法を提供する。
【0273】
化学的分析:
p−メチルベンジルホスフェート(GS−1)の合成:
GS−1の一般的な合成は、以下の式1に表わされる。

【0274】
ジ−tert−ブチル、p−メチルベンジルリン酸の調製:
1H−テトラゾール溶液(アセトニトリル中の0.45M,20ml,9mmol,3当量)は、乾燥THF(3ml)中の4−メチルベンジルアルコール(0.4グラム、3.3mmol、1.1当量)とジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホルアミダイト(0.95ml、0.83グラム、3mmol、1当量)との撹拌された溶液に一度に添加された。混合物は15分間20℃で撹拌された。混合物は(ドライアイス/アセトニトリルにより)−40℃に冷却され、ジクロロメタン(4ml)中の85% m−クロロ過安息香酸(mCPBA)(1mlジクロロメタン中の0.81グラム、4mmol、1.3当量)の溶液は迅速に添加され、一方、反応温度は0℃以下に保持された。溶液は室温にまで暖められ、5分間20℃で撹拌された後、10%のNaHSO水溶液(10ml)が添加され、混合物はさらに10分間撹拌された。次に、混合物はエーテル(70ml)で抽出され、水性相が廃棄された。エーテル相は10%のNaHSO水溶液(2×20ml)および5%のNaHCOの飽和水溶液(2×20ml)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。有機濾過物は蒸発され、残渣はEtOAc/ヘキサン1:15の混合物を溶出液としてシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーにより精製され、生成物(ジ−tert−ブチル、p−メチルベンジルリン酸)と出発材料の混合物が得られ、これはさらなる分離なしに用いられた。

【0275】
p−メチルベンジルリン酸の調製:HCl(ジオキサン中の4M、2ml、8mmol、2.6当量)とジオキサン(6ml)の溶液が、得られたジ−tert−ブチル、p−メチルベンジルリン酸に20℃で添加され、反応はTLCによって監視された。一旦加水分解が完了すると、ジオキサンは減圧下で蒸発され、残渣は水(15ml)に溶解され、エーテル(2×15ml)で洗浄されて過剰のベンジルアルコール出発材料が除去された。次に溶媒は減圧下で蒸発され、生じた清澄な油は、延長された高減圧乾燥により無色の固体へとゆっくりと変化し、0.18グラム(30%)の最終生成物を生じた。

【0276】
ベンジルリン酸(GS−2)の合成:
ベンジルリン酸の一般的な合成は、以下の式2に表わされる。

【0277】
ジ−tert−ブチルベンジルリン酸の調製:
1H−テトラゾール溶液(アセトニトリル中の0.45M,20ml,9mmol,3当量)は、乾燥THF(3ml)中のベンジルアルコール(0.34ml、3.3mmol、1.1当量)とジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホルアミダイト(0.95ml、0.83グラム、3mmol、1当量)との撹拌された溶液に一度に添加された。混合物は15分間20℃で撹拌され、その後、混合物は(ドライアイス/アセトニトリルにより)−40℃に冷却された。ジクロロメタン(DCM)(4ml)中の85% mCPBA(1mlジクロロメタン中の0.81グラム、4mmol、1.3当量)の溶液は迅速に添加され、一方、反応温度は0℃以下に保持された。溶液は室温にまで暖められ、5分間20℃で撹拌された後、10%のNaHSO水溶液(10ml)が添加され、混合物はさらに10分間撹拌された。次に、混合物はエーテル(70ml)で抽出され、水性相が廃棄された。エーテル相は10%のNaHSO水溶液(2×20ml)および5%のNaHCOの飽和水溶液(2×20ml)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。有機層は蒸発され、残渣はEtOAc/ヘキサン1:15の混合物を溶出液としてシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーにより精製され、生成物(ジ−tert−ブチルベンジルリン酸)と出発材料の混合物が得られ、これはさらなる精製なしに用いられた。

【0278】
ベンジルリン酸の調製:HCl(ジオキサン中の4M、2ml、8mmol、2.6当量)とジオキサン(6ml)の溶液が、得られたジ−tert−ブチルベンジルリン酸に20℃で添加され、反応はTLCによって監視された。一旦加水分解が完了すると、ジオキサンは減圧下で蒸発され、残渣は水(15ml)に溶解され、エーテル(2×15ml)で洗浄されて過剰のベンジルアルコール出発材料が除去された。次に溶媒は減圧下で蒸発され、生じた清澄な油は、延長された高減圧乾燥により無色の固体へとゆっくりと変化し、0.17グラム(30%)の最終生成物を生じた。

【0279】
3−ピリジルメチルリン酸(GS−3)の合成:
3−ピリジルメチルリン酸の一般的な合成は、以下の式3に表わされる。

【0280】
ジ−tert−ブチル3−ピリジルメチルリン酸の調製:
1H−テトラゾール溶液(アセトニトリル中の0.45M,20ml,9mmol,3当量)は、乾燥THF(3ml)中の3−ピリジルメタノール(0.31ml、3.3mmol、1.1当量)とジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホルアミダイト(0.95ml、0.83グラム、3mmol、1当量)との撹拌された溶液に一度に添加された。混合物は15分間20℃で撹拌され、その後、混合物は(ドライアイス/アセトニトリルにより)−40℃に冷却された。DCM(4ml)中の85% mCPBA(1mlDCM中の0.81グラム、4mmol、1.3当量)の溶液は次に迅速に添加され、一方、反応温度は0℃以下に保持された。溶液は室温にまで暖められ、5分間20℃で撹拌された後、10%のNaHSO水溶液(10ml)が添加され、混合物はさらに10分間撹拌された。次に、混合物はエーテル(70ml)で抽出され、水性相が廃棄された。エーテル相は10%のNaHSO水溶液(2×20ml)および5%のNaHCOの飽和水溶液(2×20ml)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。有機濾過物は蒸発され、残渣はCHCl/ヘキサン1:1の混合物を溶出液としてシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーにより精製され、生成物(ジ−tert−ブチル3−ピリジルメチルリン酸)と出発材料の混合物が得られ、これはさらなる精製なしに用いられた。

【0281】
3−ピリジルメチルリン酸の調製:HCl(ジオキサン中の4M、2ml、8mmol、2.6当量)とジオキサン(6ml)の溶液が、得られたジ−tert−ブチル3−ピリジルメチルリン酸に20℃で添加され、反応はTLCによって監視された。一旦加水分解が完了すると、ジオキサンは減圧下で蒸発され、残渣は水(15ml)に溶解され、エーテル(2×15ml)で洗浄された。次に溶媒は減圧下で蒸発され、0.19グラム(30%)の最終生成物を生じた。

【0282】
3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)の合成:
以下の式4に表わされるGS−21の合成の一般的な方法、並びに最終生成物の精製プロトコールが設計されて実行された。3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)は8段階の合成により5%の全収量で得られた。対応するトリフルオロ酢酸塩も調製された。

【0283】
ベンジルアルコール中間体(式4参照)は、以下に詳述するように、および式5に表わされるように、安価な出発材料であるトリメチル1,3,5−ベンゼントリカルボキシレートから4段階で得ることができる重要な中間体として同定された。

【0284】
リン酸部分は次に、Johnsの方法(Tetrahedron Lett.1988,29,2369−2372)に従って、テトラゾールの存在下で、アルコールをジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホルアミダイトと反応させることによって導入された。m−クロロ過安息香酸(mCPBA)により、ホスファイトの単離なしで直ちに酸化することにより、対応するホスフェートエステルが生成された。アミンおよびホスフェートの全体的な脱保護は、制御された条件下でトリフルオロ酢酸を用いることによって達成された。次に、材料はそのトリフルオロ酢酸塩として得られた。後者は、イオン交換樹脂による処理前に再結晶化され、以下の式6に表わされるように適切な純度(通常、約90%)(HPLCによるAUC)を有する望ましい生成物を生じた。

【0285】
以下は、合成の詳細な記述である。
1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼンの調製:オーバーヘッド式撹拌器、追加の濾斗および還流冷却器を備えた3リットルの丸底フラスコに、リチウムアルミニウム水素化物(49.7グラム、1.31mol)および無水THF(500ml)が窒素雰囲気下で充填された。生じた懸濁液はゆっくりと加熱されて還流され、無水THF(1.0リットル)中のトリメチル−1,3,5−ベンゼントリカルボキシレート(100.0グラム、0.40mol)の溶液がそこに滴下され、一方、おだやかな還流状態に維持された(3時間)。生じた灰色の懸濁液は還流下でさらに7時間撹拌され、外部氷水浴で冷却された。過剰のリチウムアルミニウム水素化物は水(50ml、45分)、および次に15%NaOH(50ml、遅い流れ)、および最後に一層多くの水(150ml、遅い流れ)の滴下により加水分解された。生じた懸濁液は周囲温度で14時間撹拌された。固型分は濾過され、濾過物は高真空化で濃縮されて無色の油が得られ、これはゆっくりと固化して、白色固体としての1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン(62.3グラム、94%)を生じた。図4a−bに表わされるH NMRおよび13C NMRスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。
【0286】
3,5−ビス(ブロモメチル)ベンジルアルコールの調製:磁気撹拌棒および追加の濾斗を備えた2リットルの丸底フラスコに、1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン(33.7グラム、0.20mol)および無水アセトニトリル(750ml)が充填された。生じた懸濁液に、ブロモトリメチルシラン(TMSBr)(979.0ml、0.60mol)が遅い流れとして撹拌されつつ添加された。白色スラリーは茶色に変色し、粘度も生じた。次に、反応混合物は40℃に25分間加熱され、清澄な溶液を生じた。反応の完了は、TLC分析(90:10塩化メチレン/メタノール、UVによる可視化、出発材料のRfは0.07、生成物のRfは0.77)によって判断された。溶媒は減圧下で除去されて茶色のペーストを生じた。粗材料はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0−5% MeOH/CHCl)によって精製された。3,5−ビス(ブロモメチル)ベンジルアルコール(33.5グラム、57%)は白色固体として得られた。図5a−bに表わされるH NMRおよび13C NMRスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。
【0287】
3,5−ビス(シアノメチル)ベンジルアルコールの調製:オーバーヘッド式撹拌器、追加の濾斗および還流冷却器を備えた1リットルの丸底フラスコに、3,5−ビス(ブロモメチル)ベンジルアルコール(33.1グラム、0.11mol)およびメタノール(400ml)が充填された。生じた清澄な溶液は加熱されて還流された。水(25ml)中のシアン化ナトリウム(16.2グラム、0.33mol)の溶液がゆっくりと添加された。加熱は還流下で6時間続けられ、その後、反応の完了は、TLC分析(95:5塩化メチレン/メタノール、UVによる可視化、出発材料のRfは0.62、生成物のRfは0.38)によって判断された。反応混合物は周囲温度に冷却され、溶媒は減圧下で除去されて茶色のペーストを生じた。後者はMTBE(6×100ml)で粉砕された。MTBE抽出物は組合され、溶媒は減圧下で除去された。かくして得られた黄色の油は次にカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0−5% MeOH/CHCl)によって精製された。3,5−ビス(シアノメチル)ベンジルアルコール(18.7グラム、89%)は薄茶色の油として得られ、これはワックス状の白色固体へとゆっくりと変化した。1グラムのサンプルが除去され、カラムクロマトグラフィーを介して精製され、精製されたサンプルを与えた。図6a−bに表わされるH NMRおよび13C NMRスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。
【0288】
3,5−ビス(アミノエチル)ベンジルアルコールの調製:3,5−ビス(シアノメチル)ベンジルアルコール(8.0グラム、0.04mol)のサンプルが3分割され、それぞれ2.5〜3.0グラムの部分が別個のParrボトルに充填され、次にエタノール(100ml)およびNaOH水溶液(5mlの水中の1.2グラム)が充填された。生じた溶液にラネーNi(水中の50%懸濁液、1.2グラム)が添加された。混合物は30psiでParrシェーカー上で水素添加された。反応はH NMRによって監視され、3時間後に完了したと判断された。触媒は珪藻土のパッドで濾過され、珪藻土のパッドはエタノール(200ml)で洗浄された。すべての三つの反応からの濾過物は組合され、溶媒は減圧下で除去されて、茶色のペーストとしての3,5−ビス(アミノエチル)ベンジルアルコール(14.16グラム)を得た。図7に表わされる生成物のH NMRスペクトルは、25%(w/w)のエタノールの存在を示す。エタノール含有量における顕著な変化は、延長された時間の間、高真空下でサンプルが乾燥されるときに観察されなかった。この材料は、いかなるさらなる精製なしで合成の次の段階で用いられた。
【0289】
3,5−ビス(tert−ブトキシカルボニルアミノエチル)ベンジルアルコールの調製:磁気撹拌棒、温度計およびガス入口アダプターを備えた三つ口の3リットルの丸底フラスコに、THF(590ml)中に溶解された3,5−ビス(アミノエチル)−1−ヒドロキシメチルベンジルアルコール(29.4グラム)および2NのNaOH水溶液(590ml)が充填された。撹拌された混合物に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(59.4グラム、272mmol)が一度に添加された。混合物は45℃に4時間加熱された。生じた溶液は周囲温度に冷却され、揮発性有機物は真空によって除去された。生じた水混合物にメタノール(600ml)が添加された。撹拌された溶液は45℃に2日間加熱され、カーバメートを保存しながらtert−ブトキシカーボネート部分が選択的に加水分解された。周囲温度に冷却された後、溶液は揮発性成分を除去され、水性混合物はクロロホルム(3×600ml)で抽出された。有機層は組合され、塩水(600ml)で洗浄され、濃縮された。高真空下で乾燥された後、粗3,5−ビス(tert−ブトキシカルボニルアミノエチル)ベンジルアルコール(24.88グラム)が真っ白の固体として67%の収量で得られた。図8に表わされるH NMRスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。粗材料はさらなる精製なしで用いられた。
【0290】
保護された3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸の調製:磁気撹拌棒および追加の濾斗を備えた500mlの丸底フラスコに、3,5−ビス(tert−ブトキシカルボニルアミノエチル)ベンジルアルコール(2.3グラム、0.0058mol)および無水塩化メチレン(45ml)が充填された。生じた溶液は約5℃に氷水浴中で冷却された。無水アセトニトリル(45ml)中のジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホルアミダイト(4.5ml、0.0144mol)が追加の濾斗からの遅い流れとして添加された。次に、無水アセトニトリル/無水塩化メチレンの1:1混合物(90ml)中のテトラゾール(1.0グラム、0.0144mol)の溶液がゆっくりと添加された(15分間)。生じた白色懸濁液は約5℃で1時間撹拌され、反応の完了は、TLC分析(95:5クロロホルム/イソプロピルアルコール、ニンヒドリン中での染色による可視化、出発材料のRfは0.23、生成物のRfは0.30)によって判断された。溶媒は減圧下で除去されてペーストを生じ、これは無水塩化メチレン(75ml)中に溶解され、ドライアイス/アセトニトリル浴中で冷却された。無水塩化メチレン(50ml)中のmCPBA(1.3グラム、0.0144mol)の溶液が一度に添加された。生じた混合物は1時間撹拌され、周囲温度に暖められ(1時間)、さらに30分間撹拌された。次に反応混合物は1.0Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液(100ml)および飽和された二炭酸ナトリウム(2×100ml)で連続的に洗浄された。有機抽出物は無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。溶媒は減圧下で除去されて黄色の油としての粗リン酸塩を与え、これは次にカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0−5% MeOH/CHCl)によって精製された。保護された3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(2.1グラム、61%)は、粘性のある無色の油として得られた。図9a−cに表わされるそのH NMR,13C NMRおよび31P NMRスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。
【0291】
3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸TFA塩の調製:磁気撹拌棒を備えた250mlの丸底フラスコに、保護されたリン酸塩(2.9グラム、0.0049mol)、無水ジクロロメタン(30ml)およびトリフルオロ酢酸(30ml)が充填された。生じた清澄な溶液は周囲温度で3時間撹拌された。反応の完了はH NMRおよび31P NMR分析によって判断された。減圧下で溶媒を除去することにより、粘性のあるオレンジ色の油が得られ、これはメタノール(7.5ml)中に溶解され、ジエチルエーテル(500ml)に撹拌しながら添加され、生成物の沈殿を生じた。生じたスラリーは周囲温度で1時間撹拌され、次に固体は沈殿させられた。清澄な溶液は上部からデカントされ、生成物はエーテル(2×100ml)で粉砕された。固体が沈殿させられる度に清澄な溶液はデカントされた。生成物は最終的に真空オーブンで108時間55℃で乾燥され、次にさらに192時間65℃で乾燥され、白色固体としての3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸TFA塩(1.78グラム、71%)を生じた。図10a−cに表わされるH NMR,13C NMRおよび31P NMRスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。H NMRスペクトルは、生成物中の8.5%(w/w)のエーテルの存在を示した。このエーテルは除去することが極めて困難であることが証明され、材料は吸湿性であると特徴付けられた。図10dに表わされる生成物の質量スペクトルは、m/z 275[C1119P+H]に分子ピークを示した。
【0292】
3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)の調製:オーバーヘッド式機械撹拌器、温度計、1リットルの追加の圧力均等化濾斗およびガス入口アダプターを備えた三つ口の5リットルの丸底フラスコに、窒素雰囲気下で無水ジクロロメタン(1l)中の3,5−ビス(tert−ブトキシカルボニルアミノエチル)ベンジルアルコール(24.88グラム、63.15mmol)の溶液が充填された。反応混合物は氷/塩水浴で冷却された。無水アセトニトリル(1リットル)中のジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホルアミダイト(49.8ml、157.9mmol)が、反応温度が6℃未満に維持されるような速度で、圧力均等化濾斗を介して添加された。テトラゾール(アセトニトリル中の0.45M溶液の351ml、157.9mmol)は無水アセトニトリル(150ml)および無水ジクロロメタン(500ml)で希釈され、温度が6℃未満に維持されるような速度で、圧力均等化濾斗を介して添加された。添加が完了した後、フラスコは冷浴中に移動され、反応混合物は1時間撹拌された。次にフラスコはドライアイス/アセトニトリル浴によって−35℃に冷却された。無水ジクロロメタン(500ml)中の3−クロロ過酸化安息香酸(18.4グラム、82.1mmol)の溶液が一度に添加された。混合物は周囲温度に暖められ、その後2時間撹拌された。溶液は、水(1.5リットル)中のNa(20グラム)およびKCO(50グラム)の溶液中に注入された。生じた二相混合物は11のpHを有していた。15分間撹拌した後、揮発性の有機物は真空中で除去され、水層はクロロホルム(4×750ml)で抽出された。組合された有機層は硫酸マグネシウム上で乾燥され、濾過され、黄色の油(69グラム)に濃縮された。粗材料はカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MTBE/ヘプタン、6:4)によって精製された。生成物を含む混合された画分は組合され、濃縮されて薄黄色の油(32.6グラム)を生じた。この油のうち28.6グラムがジクロロメタン(287ml、10容量)中に溶解され、500mlの追加の圧力均等化濾斗および磁気撹拌棒を備えた1リットルの丸底フラスコ中に充填された。トリフルオロ酢酸(287ml、10容量)は追加の圧力均等化濾斗を介して迅速に添加された。生じた溶液は5時間撹拌された。濃縮されて高真空下で一晩乾燥された後、濃いオレンジ色の油(37.88グラム)が得られた。残渣は水(57ml、1.5容量)中に溶解され、撹拌されているメタノール(90容量)中に滴下され、沈殿物を生じた。30分間撹拌した後、固体は1時間沈殿させられ、液体はデカントされた。残りの液体は真空中で除去され、13.72グラムの固体を与えた。材料は水(68ml、5容量)中に溶解され、Dowex 50WX8−200イオン交換樹脂(137グラム)中に添加された。カラムは水(550ml、40容量)で洗浄された。生成物は3:1のMeOH/NHOH水溶液(2リットル、145容量)で溶離された。メタノール画分は減圧下で濃縮されて真っ白の固体を生じた。固体は最小量の水に溶解され、撹拌されているメタノール(40容量)中に添加された。沈澱は濾過を介して収集され、真空下で一晩乾燥された。生じた粉末は水(7容量)で粉砕された。濾過および高真空下での乾燥後、最終生成物(2.0グラム)は白色粉末として得られた。濾過物は濃縮され、残渣は水(5容量)で粉砕された。濾過および高真空下での乾燥後、生成物の第二群(0.9グラム)が得られた。二つのロットは組合され、10分間ブレンドされた。3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)は白色粉末として得られた。図11a−cに表わされる生成物のH NMR,31P NMRおよび13C NMRスペクトルは、割り当てられた構造と一致した。図11dに表わされる質量スペクトルは、275[C1119P+H]に分子ピークを示した。図11eに表わされるHPLCクロマトグラム(上述の方法Aを用いて得られる)は、生成物の96.7%の純度を示した。最終生成物は非吸湿性であるとして特徴付けられた。
【0293】
同様の方法を用いて、新規化合物GS−4およびGS−5が以下のようにして合成された:
3−(グアニジノメチル)ベンジルリン酸(GS−4)の合成:
トリフルオロ酢酸塩としてのGS−4の一般的な合成は以下の式7に表される:

【0294】
3−(アミノメチル)ベンジルアルコールの調製:THF中の3−(ヒドロキシメチル)ベンゾニトリルの溶液は、激しく撹拌されているTHF中のLiAlHの還流溶液中にゆっくりと添加され、窒素雰囲気下で維持された。溶液は還流状態で一晩加熱され、その後、水がゆっくりと滴下されて反応を停止させた(Hのさらなる発生が明らかにならなくなるまで)。THFは減圧下で蒸発され、エーテル/酸性化水が添加された。エーテル相は廃棄された。水性相はエーテルで洗浄され、有気相は廃棄された。水性相のpHがpH7に達するまでNaOHが添加された。溶液はTHFで3回抽出され、MgSO上で乾燥され、減圧下で蒸発されて薄黄色の残渣を生じ、これは、酢酸エチルから始まり酢酸エチル:MeOHの1:1混合物で終わる勾配溶離剤を用いてシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーによって精製され、中間体を40%の収量で与えた。

【0295】
3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノメチル)ベンジルアルコールの調製:乾燥DMF中の3−(アミノメチル)ベンジルアルコール、3−(N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−S−メチルイソチオ尿素およびトリエチルアミノの溶液は、室温で一晩撹拌された。次にエーテル/水の混合物が添加され、有機層が分離され、一方、水性層はエーテルで抽出された。組合された有機抽出物は水で洗浄され、MgSO上で乾燥され、減圧下で蒸発された。粗生成物は、ヘキサンから始まり酢酸エチル:ヘキサンの1:5混合物で終わる勾配溶離剤を用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製され、85%の収量を生じた。

【0296】
ジ−tert−ブチル3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノメチル)ベンジルリン酸の調製:
1H−テトラゾール溶液(アセトニトリル中の0.45M,20ml,9mmol,3当量)は、乾燥THF(3ml)中の3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノメチル)ベンジルアルコール(1当量)とジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホルアミダイト(1.42ml、1.24グラム、4.5mmol、1.5当量)との撹拌された溶液に一度に添加された。混合物は30分間20℃で撹拌され、次に混合物は(ドライアイス/アセトニトリルにより)−40℃に冷却された。DCM(4ml)中の85% mCPBA(1.5mlDCM中の1.25グラム、6.15mmol、2.0当量)の溶液は迅速に添加され、一方、反応温度は0℃以下に保持された。溶液は室温にまで暖められ、20分間撹拌された後、10%のNaHSO水溶液(10ml)が添加され、混合物はさらに5分間撹拌された。次に、混合物はエーテル(70ml)で抽出され、水性相が廃棄された。エーテル相は10%のNaHSO水溶液(2×20ml)および5%のNaHCOの飽和水溶液(2×20ml)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。有機濾過物は蒸発され、残渣はEtOAc/ヘキサン1:9から1:5の勾配溶離剤を用いてシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーにより精製され、リン酸エステル生成物とベンジルアルコール出発材料の混合物が得られ、これはCHCl:MeOH 30:1から20:1の勾配溶離剤を用いてシリカゲルカラム上でクロマトフラフィーによってさらに精製され、純粋なジ−tret−ブチル3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノメチル)ベンジルリン酸を70%の収量で与えた。

【0297】
3−(グアニジノメチル)ベンジルリン酸トリフルオロ酢酸塩の調製:DCM中の25%トリフルオロ酢酸(TFA)の溶液が、ジ−tert−ブチル3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノメチル)ベンジルリン酸に20℃で添加され、反応混合物は18時間撹拌された。溶媒とTFAはその後、減圧下で蒸発され、残渣は水に溶解され、エーテルで洗浄された。次に溶媒は減圧下で蒸発され、純粋な生成物を60%の収量で与えた。

【0298】
3−グアニジノベンジルリン酸(GS−5)の合成:
トリフルオロ酢酸塩としてのGS−5の一般的な合成は、以下の式8に表わされる:

【0299】
3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノ)ベンジルアルコールの調製:N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−S−メチルイソチオ尿素(1.32グラム、4.4mmol、1.1当量)、塩化水銀(1.22グラム、4.4mmol、1.1当量)およびトリエチルアミン(1.72ml、12mmol、3当量)の溶液が、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)中の3−アミノベンジルアルコール(0.5グラム、4mmol、1.0当量)に添加され、反応混合物は室温で5時間撹拌された。その後、混合物はエーテル/水で抽出され、有機層は飽和されたNHCl水溶液および塩水で洗浄された。水性層はエーテルで抽出された。組合されたエーテル溶液はMgSO上で乾燥され、減圧下で蒸発された。粗生成物は、ヘキサンから40:60の酢酸エチル:ヘキサンまでの勾配溶離剤を用いてシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製され、中間体を60%の収量で与えた。

【0300】
ジ−tert−ブチル3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノ)ベンジルリン酸の調製:
1H−テトラゾール溶液(アセトニトリル中の0.45M,18.4ml,8.3mmol,3当量)は、乾燥THF(3ml)中の3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノ)ベンジルアルコール(1グラム、2.8mmol、1当量)とジ−tert−ブチルジイソプロピルホスホルアミダイト(1.13ml、3.6mmol、1.3当量)との撹拌された溶液に一度に添加された。混合物は20℃で30分間撹拌され、その後、混合物は(ドライアイス/アセトニトリルにより)−40℃に冷却された。DCM(4ml)中の85% mCPBA(1.5ml DCM中の0.85グラム、4.20mmol、1.5当量)の溶液は迅速に添加され、一方、反応温度は0℃以下に保持された。溶液は室温にまで暖められ、20分間撹拌された後、10%のNaHSO水溶液(10ml)が添加され、混合物はさらに10分間撹拌された。次に、混合物はエーテル(50ml)で抽出され、水性相が廃棄された。エーテル相は10%のNaHSO水溶液(2×20ml)およびNaHCOの飽和水溶液(2×20ml)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過された。溶媒は蒸発され、残渣はEtOAc/ヘキサン10:90から30:70の勾配溶離剤を用いてシリカゲルカラム上でクロマトグラフィーにより精製され、保護された生成物を60%の収量で与えた。

【0301】
3−グアニジノベンジルリン酸のトリフルオロ酢酸塩の調製:DCM(4.5ml)中の25%TFA(1.5ml)の溶液が、ジ−tert−ブチル−3−(N,N’−ビス−BOC−グアニジノ)ベンジルリン酸(0.3グラム、0.54mmol、1当量)に20℃で添加され、反応混合物は18時間撹拌された。溶媒およびTFAはその後、減圧下で蒸発され、残渣は水に溶解され、エーテルで洗浄された。溶媒は減圧下(凍結乾燥器)で蒸発され、純粋な生成物を40%の収量で与えた(C1013P;Mw=359.2グラム/mol)。

【0302】
インビトロ阻害アッセイ:
予備的な阻害アッセイにおいて、公知化合物であるフェニルリン酸、ピリドキサールリン酸、GS−1,GS−2およびGS−3のGSK−3阻害活性が上述の通りテストされた。図12に表わされる結果は、すべてのテストされた化合物が、GSK−3に対する阻害活性を発揮し、ピリジンのリン酸塩誘導体、即ちピリドキサールリン酸、およびGS−3がフェニルのリン酸塩誘導体(フェニルリン酸、GS−1およびGS−2)よりも活性であったことを示した。
【0303】
さらなる阻害アッセイにおいて、GS−1,GS−2,GS−3,GS−5およびGS−21のGSK−3阻害活性がテストされた。PGS−1ペプチド基質をリン酸化するGSK−3の活性は、これらの化合物の示された濃度の存在下で測定された。図13に示される結果は、阻害剤を有さないコントロールのインキュベーションと比較したGSK−3活性の割合を表わし、二つの独立した実験の平均±SEMであり、各点は3回アッセイされた。
【0304】
図13に示されるように、テストされた化合物はGSK−3活性を阻害することにおいて極めて活性であることが見出され(1〜5mMのIC50値)、GS−3およびGS−5が最も活性な化合物であった。これらの結果は、環中のまたはそれに隣接した位置(例えば環原子に直接結合された位置)での一以上の窒素原子の存在は、新規に設計された小分子のGSK−3阻害活性に影響を与えうる(GSK−3阻害活性を増大させうる)特徴であるということを示唆する。
【0305】
グルコース取込み:
新規に設計された化合物GS−5およびGS−21の、グルコース取込みを促進させる能力が、マウスの始原脂肪細胞で上述のようにしてテストされた。非処理の脂肪細胞で観察された相対的な[H]2−デオキシグルコースの取込みは、1単位に正規化され、GS−5またはGS−21で処理された脂肪細胞における[H]2−デオキシグルコースについて得られた値は、ペプチドコントロールで処理された細胞に対する活性化倍率として表わされ、六つの独立した実験の平均±SEMであり、各点は3回アッセイされた。
【0306】
図14a(GS−5)および図14b(GS−21)に表わされる結果は、GS−21は5μMおよび0.5μMの濃度でグルコース取込みをそれぞれ2.5倍および1.7倍に増大したことを示す。いくらか減少された効果はGS−5の存在下で観察され、これは10μMの濃度でグルコース取込みを約2倍に増大した。図14aおよび14bにさらに示されるように、GS−5およびGS−21によって達成されるグルコース取込みの活性化は、100nMのインスリンの存在下で達成される活性化に匹敵していた。これらの結果は、これらの新規に設計された化合物が、インスリンシグナル伝達を増大することにおいて、および糖尿病の如きGSK−3によって媒介される病気を治療することにおいて、インスリンの模倣体として作用する能力を有することをさらに証明する。








【0307】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0308】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0309】









【図面の簡単な説明】
【0310】
【図1】図1a−bは、2D H−NMR研究によって得られた通りのペプチドp9CREB(図1a)およびCREB(図1b)の3D構造のコンピュータ画像を表わす。
【図2】2D H−NMR研究によって得られたペプチドの3D構造に基づくp9CREBペプチドの静電分布を示す画像である。
【図3】フェニルリン酸、ピリドキサールリン酸(P−5−P)、GS−1、GS−2、GS−3の化学構造および新規化合物GS−4、GS−5およびGS−21の化学構造を表わす。
【図4a】図4aは、GS−21の合成の中間体である1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼンのH NMRスペクトルを表わす。
【図4b】図4bは、GS−21の合成の中間体である1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼンの13C NMRスペクトルを表わす。
【図5a】図5aは、GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(ブロモメチル)ベンジルアルコールのH NMRスペクトルを表わす。
【図5b】図5bは、GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(ブロモメチル)ベンジルアルコールの13C NMRスペクトルを表わす。
【図6a】図6aは、GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(シアノメチル)ベンジルアルコールのH NMRスペクトルを表わす。
【図6b】図6bは、GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(シアノメチル)ベンジルアルコールの13C NMRスペクトルを表わす。
【図7】GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(アミノエチル)ベンジルアルコールのH NMRスペクトルを表わす。
【図8】GS−21の合成の中間体である3,5−ビス(tert−ブトキシカルボニルアミノエチル)ベンジルアルコールのH NMRスペクトルを表わす。
【図9a】図9aは、GS−21の合成の中間体である、保護された3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸のH NMRスペクトルを表わす。
【図9b】図9bは、GS−21の合成の中間体である、保護された3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸の13C NMRスペクトルを表わす。
【図9c】図9cは、GS−21の合成の中間体である、保護された3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸の31P NMRスペクトルを表わす。
【図10a】図10aは、TFA塩3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21 TFA塩)のH NMRスペクトルを表わす。
【図10b】図10bは、TFA塩3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21 TFA塩)の13C NMRスペクトルを表わす。
【図10c】図10cは、TFA塩3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21 TFA塩)の31P NMRスペクトルを表わす。
【図10d】図10dは、TFA塩3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21 TFA塩)のESI−MS(図10d)を表わす。
【図11a】図11aは、3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)のH NMRスペクトルを表わす。
【図11b】図11bは、3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)の13C NMRスペクトルを表わす。
【図11c】図11cは、3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)の31P NMRスペクトルを表わす。
【図11d】図11dは、3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)のESI−MSを表わす。
【図11e】図11eは、3,5−ビス(2−アミノエチル)ベンジルリン酸(GS−21)のHPLC クロマトグラムを表わす。
【図12】インビトロ阻害アッセイにおけるフェニルリン酸、GS−1、GS−2、GS−3およびピリドキサールリン酸(P−5−P)のGSK−3阻害活性を示す比較プロットを表わす。
【図13】インビトロ阻害アッセイにおけるGS−1、GS−2、GS−3、GS−5およびGS−21のGSK−3阻害活性を示す比較プロットを表わす。
【図14】図14a−bは、ペプチドコントロール(1単位に正規化されている)で処理された細胞にわたる活性化倍率としての、GS−5およびGS−21で処理された細胞における[H]2−デオキシグルコース取込みによって表わされる、マウスの脂肪細胞におけるグルコース取込みに対するGS−21(図14b)およびGS−5(図14a)の影響を示す棒グラフである。
【配列表フリーテキスト】
【0311】
配列番号1は、GSK−3の認識モチーフコンセンサスである。
配列番号2〜4は、合成ペプチドの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式を有する化合物または医薬的に許容され得るその塩:

式中、X,Y,ZおよびWはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;
Aはアルキルであるかまたは存在せず;
Bは式

を有する負に帯電した基であり、式中、Lはリン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ホウ素原子および炭素原子からなる群から選択され;Q,GおよびDはそれぞれ独立して酸素およびイオウからなる群から選択され;Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルボキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシおよびチオアリールオキシからなる群から選択されるかまたは存在せず;
Dは水素、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、ヒドラジン、アミノアルキルおよび疎水性部分からなる群から選択され;そして
,R,RおよびRはそれぞれ独立して水素、孤立電子対、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンからなる群から選択され;
ただし、X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子であるかおよび/またはR,R,RおよびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基であり、ただし、本化合物はピリドキサールリン酸ではない。
【請求項2】
GSK−3の活性を阻害することができる請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aはアルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Lはリン原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Q,GおよびDのそれぞれは酸素である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Eはヒドロキシである請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
X,Y,ZおよびWの少なくとも二つは窒素原子である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
XとYがそれぞれ窒素原子である請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
ZとWがそれぞれ窒素原子である請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
,R,RおよびRの少なくとも二つは前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
Dは疎水性部分である請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
前記疎水性部分は脂肪酸残基、4〜30個の炭素原子を有する飽和アルキレン鎖、4〜30個の炭素原子を有する不飽和アルキレン基、アリール、シクロアルキルおよび疎水性ペプチド配列からなる群から選択される請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記脂肪酸は、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸およびリノレイン酸からなる群から選択される請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Aがアルキルであり、X,Y,ZおよびWのそれぞれが炭素原子であり、RおよびRの少なくとも一つが前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項5に記載の化合物。
【請求項18】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジン、グアニル、グアニリノアルキルおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は少なくとも一つの正に帯電した基を含む請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
前記少なくとも一つの正に帯電した基はアンモニウムイオンを含む請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記少なくとも一つの正に帯電した基は正に帯電したアミノ酸の側鎖から由来する化学構造を有する請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
前記正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
X,YおよびZのそれぞれが炭素原子であり、Wが窒素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
以下の一般式を有する化合物または医薬的に許容され得るその塩:

式中、X,Y,ZおよびWはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;
Aはアルキルであるかまたは存在せず;
Bは式

を有する負に帯電した基であり、式中、Lはリン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ホウ素原子および炭素原子からなる群から選択され;Q,GおよびDはそれぞれ独立して酸素およびイオウからなる群から選択され;Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルボキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシおよびチオアリールオキシからなる群から選択されるかまたは存在せず;
Dは疎水性部分であり;そして
,R,RおよびRはそれぞれ独立して水素、孤立電子対、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、ヒドラジン、アミノアルキルおよびアンモニウムイオンからなる群から選択される。
【請求項25】
GSK−3の活性を阻害することができる請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
前記疎水性部分は脂肪酸残基、4〜30個の炭素原子を有する飽和アルキレン鎖、4〜30個の炭素原子を有する不飽和アルキレン基、アリール、シクロアルキルおよび疎水性ペプチド配列からなる群から選択される請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
前記脂肪酸は、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸およびリノレイン酸からなる群から選択される請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
Aはアルキルである請求項24に記載の化合物。
【請求項29】
Lはリン原子である請求項24に記載の化合物。
【請求項30】
Q,GおよびDのそれぞれは酸素である請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
Eはヒドロキシである請求項29に記載の化合物。
【請求項32】
X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子である請求項24に記載の化合物。
【請求項33】
X,Y,ZおよびWの少なくとも二つは窒素原子である請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
XとYがそれぞれ窒素原子である請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
ZとWがそれぞれ窒素原子である請求項33に記載の化合物。
【請求項36】
Wが窒素原子である請求項32に記載の化合物。
【請求項37】
,R,RおよびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項24に記載の化合物。
【請求項38】
,R,RおよびRの少なくとも二つは前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項38に記載の化合物。
【請求項41】
Aはアルキルである請求項30に記載の化合物。
【請求項42】
X,Y,ZおよびWのそれぞれが炭素原子である請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
X,YおよびZのそれぞれが炭素原子でありWが窒素原子である請求項41に記載の化合物。
【請求項45】
およびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項42に記載の化合物。
【請求項46】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジン、グアニル、グアニリノアルキルおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項37〜40および45のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項47】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は少なくとも一つの正に帯電した基を含む請求項37〜40および45のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
前記少なくとも一つの正に帯電した基はアンモニウムイオンを含む請求項47に記載の化合物。
【請求項49】
前記少なくとも一つの正に帯電した基は正に帯電したアミノ酸の側鎖から由来する化学構造を有する請求項47に記載の化合物。
【請求項50】
前記正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
活性な成分として、以下の一般式を有する化合物であってGSK−3の活性を阻害することができる化合物または医薬的に許容され得るその塩、および医学的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物:

式中、X,Y,ZおよびWはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;
Aはアルキルであるかまたは存在せず;
Bは式

を有する負に帯電した基であり、式中、Lはリン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ホウ素原子および炭素原子からなる群から選択され;Q,GおよびDはそれぞれ独立して酸素およびイオウからなる群から選択され;Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルボキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシおよびチオアリールオキシからなる群から選択されるかまたは存在せず;
Dは水素、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、ヒドラジン、アミノアルキルおよび疎水性部分からなる群から選択され;そして
,R,RおよびRはそれぞれ独立して水素、孤立電子対、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンからなる群から選択される。
【請求項52】
Aはアルキルである請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
Lはリン原子である請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項54】
Q,GおよびDのそれぞれは酸素である請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
Eはヒドロキシである請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子である請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項57】
X,Y,ZおよびWの少なくとも二つは窒素原子である請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
XとYがそれぞれ窒素原子である請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
ZとWがそれぞれ窒素原子である請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項60】
Dは疎水性部分である請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記疎水性部分は脂肪酸残基、4〜30個の炭素原子を有する飽和アルキレン鎖、4〜30個の炭素原子を有する不飽和アルキレン基、アリール、シクロアルキルおよび疎水性ペプチド配列からなる群から選択される請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記脂肪酸は、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸およびリノレイン酸からなる群から選択される請求項61に記載の医薬組成物。
【請求項63】
Aはアルキルである請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項64】
X,Y,ZおよびWのそれぞれが炭素原子である請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
D,R,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
Dがアルキルであり、R,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項67】
X,YおよびZのそれぞれが炭素原子であり、Wが窒素原子である請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項68】
,R,RおよびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項51〜67のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項69】
,R,RおよびRの少なくとも二つは前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項68に記載の医薬組成物。
【請求項70】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項71】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項72】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジン、グアニル、グアニリノアルキルおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項68〜71のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項73】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は少なくとも一つの正に帯電した基を含む請求項68〜71のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記少なくとも一つの正に帯電した基はアンモニウムイオンを含む請求項73に記載の医薬組成物。
【請求項75】
前記正に帯電した基は正に帯電したアミノ酸の側鎖から由来する化学構造を有する請求項73に記載の医薬組成物。
【請求項76】
前記正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項75に記載の医薬組成物。
【請求項77】
GSK−3活性と関連する生物学的状態の治療において使用するために、包装用材料に詰められ、前記包装用材料の表面またはその中での活字で識別される請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項78】
前記生物学的状態は、肥満、インスリン非依存性糖尿病、インスリン依存性状態、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、および精神病的な疾患または障害からなる群から選択される請求項77に記載の医薬組成物。
【請求項79】
前記情動障害は、単極型障害および双極性障害からなる群から選択される請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項80】
前記単極型障害がうつ病である請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項81】
前記双極性障害が躁うつ病である請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項82】
前記神経変性障害は脳虚血、発作、外傷性脳傷害および細菌感染からなる群から選択される事象から生じる請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項83】
前記神経変性障害は慢性の神経変性障害である請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項84】
前記慢性の神経変性障害はアルツハイマー病、ハンチングトン病、パーキンソン病、AIDS関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AML)および多発性硬化症からなる群から選択される疾患から生じる請求項83に記載の医薬組成物。
【請求項85】
GSK−3の活性を変化させることができる少なくとも一つのさらなる活性な成分をさらに含む請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項86】
前記さらなる活性な成分はGSK−3の活性を阻害することができる請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項87】
前記さらなる活性な成分はGSK−3の発現をダウンレギュレートすることができる請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項88】
GSK−3を発現する細胞を、以下の一般式を有する化合物であってGSK−3の活性を阻害することができる化合物または医薬的に許容され得るその塩の治療効果的な量と接触させることを含む、GSK−3の活性を阻害する方法:

式中、X,Y,ZおよびWはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;
Aはアルキルであるかまたは存在せず;
Bは式

を有する負に帯電した基であり、式中、Lはリン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ホウ素原子および炭素原子からなる群から選択され;Q,GおよびDはそれぞれ独立して酸素およびイオウからなる群から選択され;Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルボキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシおよびチオアリールオキシからなる群から選択されるかまたは存在せず;
Dは水素、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよび疎水性部分からなる群から選択され;そして
,R,RおよびRはそれぞれ独立して水素、孤立電子対、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンからなる群から選択される。
【請求項89】
Aはアルキルである請求項88に記載の方法。
【請求項90】
Lはリン原子である請求項88に記載の方法。
【請求項91】
Q,GおよびDのそれぞれは酸素である請求項90に記載の方法。
【請求項92】
Eはヒドロキシである請求項91に記載の方法。
【請求項93】
X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子である請求項88に記載の方法。
【請求項94】
X,Y,ZおよびWの少なくとも二つは窒素原子である請求項93に記載の方法。
【請求項95】
XとYがそれぞれ窒素原子である請求項94に記載の方法。
【請求項96】
ZとWがそれぞれ窒素原子である請求項94に記載の方法。
【請求項97】
Dは疎水性部分である請求項88に記載の方法。
【請求項98】
前記疎水性部分は脂肪酸残基、4〜30個の炭素原子を有する飽和アルキレン鎖、4〜30個の炭素原子を有する不飽和アルキレン基、アリール、シクロアルキルおよび疎水性ペプチド配列からなる群から選択される請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記脂肪酸は、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸およびリノレイン酸からなる群から選択される請求項98に記載の方法。
【請求項100】
Aはアルキルである請求項91に記載の方法。
【請求項101】
X,Y,ZおよびWのそれぞれが炭素原子である請求項100に記載の方法。
【請求項102】
D,R,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項101に記載の方法。
【請求項103】
Dがアルキルであり、R,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項101に記載の方法。
【請求項104】
X,YおよびZのそれぞれが炭素原子であり、Wが窒素原子である請求項100に記載の方法。
【請求項105】
,R,RおよびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項88〜104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
,R,RおよびRの少なくとも二つは前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項105に記載の方法。
【請求項107】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項106に記載の方法。
【請求項108】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジン、グアニル、グアニリノアルキルおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項105〜108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は少なくとも一つの正に帯電した基を含む請求項105〜108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記少なくとも一つの正に帯電した基はアンモニウムイオンを含む請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記正に帯電した基は正に帯電したアミノ酸の側鎖から由来する化学構造を有する請求項110に記載の方法。
【請求項113】
前記正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記活性はリン酸化活性および/または自己リン酸化活性である請求項88に記載の方法。
【請求項115】
前記細胞を接触させることはインビトロで行われる請求項88に記載の方法。
【請求項116】
前記細胞を接触させることはインビボで行われる請求項88に記載の方法。
【請求項117】
前記細胞をGSK−3の活性を変化させることができる少なくとも一つのさらなる活性な成分と接触させることをさらに含む請求項88に記載の方法。
【請求項118】
前記さらなる活性な成分はGSK−3の活性を阻害することができる請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記さらなる活性な成分はGSK−3の発現をダウンレギュレートすることができる請求項117に記載の方法。
【請求項120】
インスリンシグナル伝達を強化する方法であって、インスリン応答性細胞を以下の一般式を有する化合物であってGSK−3の活性を阻害することができる化合物または医薬的に許容され得るその塩の効果的な量と接触させることを含む方法:

式中、X,Y,ZおよびWはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;
Aはアルキルであるかまたは存在せず;
Bは式

を有する負に帯電した基であり、式中、Lはリン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ホウ素原子および炭素原子からなる群から選択され;Q,GおよびDはそれぞれ独立して酸素およびイオウからなる群から選択され;Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルボキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシおよびチオアリールオキシからなる群から選択されるかまたは存在せず;
Dは水素、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよび疎水性部分からなる群から選択され;そして
,R,RおよびRはそれぞれ独立して水素、孤立電子対、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンからなる群から選択される。
【請求項121】
Aはアルキルである請求項120に記載の方法。
【請求項122】
Lはリン原子である請求項120に記載の方法。
【請求項123】
Q,GおよびDのそれぞれは酸素である請求項122に記載の方法。
【請求項124】
Eはヒドロキシである請求項122に記載の方法。
【請求項125】
X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子である請求項120に記載の方法。
【請求項126】
X,Y,ZおよびWの少なくとも二つは窒素原子である請求項125に記載の方法。
【請求項127】
XとYがそれぞれ窒素原子である請求項126に記載の方法。
【請求項128】
ZとWがそれぞれ窒素原子である請求項126に記載の方法。
【請求項129】
Dは疎水性部分である請求項120に記載の方法。
【請求項130】
前記疎水性部分は脂肪酸残基、4〜30個の炭素原子を有する飽和アルキレン鎖、4〜30個の炭素原子を有する不飽和アルキレン基、アリール、シクロアルキルおよび疎水性ペプチド配列からなる群から選択される請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記脂肪酸は、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸およびリノレイン酸からなる群から選択される請求項130に記載の方法。
【請求項132】
Aはアルキルである請求項123に記載の方法。
【請求項133】
X,Y,ZおよびWのそれぞれが炭素原子である請求項132に記載の方法。
【請求項134】
D,R,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項133に記載の方法。
【請求項135】
Dがアルキルであり、R,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項133に記載の方法。
【請求項136】
X,YおよびZのそれぞれが炭素原子であり、Wが窒素原子である請求項132に記載の方法。
【請求項137】
,R,RおよびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項120〜136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
,R,RおよびRの少なくとも二つは前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項137に記載の方法。
【請求項139】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項138に記載の方法。
【請求項140】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項138に記載の方法。
【請求項141】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジン、グアニル、グアニリノアルキルおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項137〜140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は少なくとも一つの正に帯電した基を含む請求項137〜140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記少なくとも一つの正に帯電した基はアンモニウムイオンを含む請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記正に帯電した基は正に帯電したアミノ酸の側鎖から由来する化学構造を有する請求項142に記載の方法。
【請求項145】
前記正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記細胞をインスリンと接触させることをさらに含む請求項120に記載の方法。
【請求項147】
前記細胞を接触させることはインビトロで行われる請求項120に記載の方法。
【請求項148】
前記細胞を接触させることはインビボで行われる請求項120に記載の方法。
【請求項149】
GSK−3の活性に関連する生物学的状態を治療する方法であって、その必要性がある対象に、以下の一般式を有する化合物であってGSK−3の活性を阻害することができる化合物または医薬的に許容され得るその塩の治療効果的な量を投与することを含む方法:

式中、X,Y,ZおよびWはそれぞれ独立して炭素原子または窒素原子であり;
Aはアルキルであるかまたは存在せず;
Bは式

を有する負に帯電した基であり、式中、Lはリン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ホウ素原子および炭素原子からなる群から選択され;Q,GおよびDはそれぞれ独立して酸素およびイオウからなる群から選択され;Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルボキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシおよびチオアリールオキシからなる群から選択されるかまたは存在せず;
Dは水素、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよび疎水性部分からなる群から選択され;そして
,R,RおよびRはそれぞれ独立して水素、孤立電子対、アルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、ケトエステル、チオカルボニル、エステル、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、グアニル、グアニリノアルキル、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジンおよびアンモニウムイオンからなる群から選択される。
【請求項150】
Aはアルキルである請求項149に記載の方法。
【請求項151】
Lはリン原子である請求項149に記載の方法。
【請求項152】
Q,GおよびDのそれぞれは酸素である請求項151に記載の方法。
【請求項153】
Eはヒドロキシである請求項152に記載の方法。
【請求項154】
X,Y,ZおよびWの少なくとも一つは窒素原子である請求項149に記載の方法。
【請求項155】
X,Y,ZおよびWの少なくとも二つは窒素原子である請求項154に記載の方法。
【請求項156】
XとYがそれぞれ窒素原子である請求項155に記載の方法。
【請求項157】
ZとWがそれぞれ窒素原子である請求項155に記載の方法。
【請求項158】
Dは疎水性部分である請求項149に記載の方法。
【請求項159】
前記疎水性部分は脂肪酸残基、4〜30個の炭素原子を有する飽和アルキレン鎖、4〜30個の炭素原子を有する不飽和アルキレン基、アリール、シクロアルキルおよび疎水性ペプチド配列からなる群から選択される請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記脂肪酸は、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸およびリノレイン酸からなる群から選択される請求項159に記載の方法。
【請求項161】
Aはアルキルである請求項152に記載の方法。
【請求項162】
X,Y,ZおよびWのそれぞれが炭素原子である請求項161に記載の方法。
【請求項163】
D,R,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項162に記載の方法。
【請求項164】
Dがアルキルであり、R,R,RおよびRのそれぞれが水素である請求項162に記載の方法。
【請求項165】
X,YおよびZのそれぞれが炭素原子であり、Wが窒素原子である請求項161に記載の方法。
【請求項166】
,R,RおよびRの少なくとも一つは少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項149〜165のいずれか一項に記載の方法。
【請求項167】
,R,RおよびRの少なくとも二つは前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項166に記載の方法。
【請求項168】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項167に記載の方法。
【請求項169】
とRがそれぞれ前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基である請求項167に記載の方法。
【請求項170】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は、グアニジノ、グアニジノアルキル、アミノ、アミノアルキル、ヒドラジン、グアニル、グアニリノアルキルおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項166〜169のいずれか一項に記載の方法。
【請求項171】
前記少なくとも一つのアミノ部分を含む基は少なくとも一つの正に帯電した基を含む請求項166〜169のいずれか一項に記載の方法。
【請求項172】
前記少なくとも一つの正に帯電した基はアンモニウムイオンを含む請求項171に記載の方法。
【請求項173】
前記正に帯電した基は正に帯電したアミノ酸の側鎖から由来する化学構造を有する請求項171に記載の方法。
【請求項174】
前記正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される請求項173に記載の方法。
【請求項175】
前記生物学的状態は、肥満、インスリン非依存性糖尿病、インスリン依存性状態、情動障害、神経変性疾患または神経変性障害、および精神病的な疾患または障害からなる群から選択される請求項149に記載の方法。
【請求項176】
前記情動障害は、単極型障害および双極性障害からなる群から選択される請求項175に記載の方法。
【請求項177】
前記単極型障害がうつ病である請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記双極性障害が躁うつ病である請求項176に記載の方法。
【請求項179】
前記神経変性障害は脳虚血、発作、外傷性脳傷害および細菌感染からなる群から選択される事象から生じる請求項175に記載の方法。
【請求項180】
前記神経変性障害は慢性の神経変性障害である請求項175に記載の方法。
【請求項181】
前記慢性の神経変性障害はアルツハイマー病、ハンチングトン病、パーキンソン病、AIDS関連痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AML)および多発性硬化症からなる群から選択される疾患から生じる請求項180に記載の方法。
【請求項182】
前記精神病的な障害が精神分裂病である請求項175に記載の方法。
【請求項183】
前記対象にGSK−3の活性を変化させることができる少なくとも一つのさらなる活性な成分を同時投与することをさらに含む請求項149に記載の方法。
【請求項184】
前記さらなる活性な成分はGSK−3の活性を阻害することができる請求項183に記載の方法。
【請求項185】
前記さらなる活性な成分はGSK−3の発現をダウンレギュレートすることができる請求項183に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−527859(P2007−527859A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516816(P2006−516816)
【出願日】平成16年6月27日(2004.6.27)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000570
【国際公開番号】WO2005/000192
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504292015)テル アヴィヴ ユニヴァーシティ フューチャー テクノロジー ディヴェロップメント エル.ピー. (7)
【Fターム(参考)】